説明

車両用変速機

【課題】最小の部品を使用し、比較的簡単な構成の前進11速及び後進3速の変速段を備える車両用変速機を提供する。
【解決手段】第1遊星ギア装置と第2遊星ギア装置が結合されてなる第1複合遊星ギア装置と、第3遊星ギア装置と第4遊星ギア装置が結合されてなり、少なくとも一つの回転要素が第1複合遊星ギア装置の回転要素に連結される第2複合遊星ギア装置と、二つの経路を介して第1複合遊星ギア装置の回転要素に連結され、二つの経路を介して第2複合遊星ギア装置の回転要素に連結された入力軸と、第2複合遊星ギア装置の一回転要素に連結された出力軸と、第1複合遊星ギア装置の回転要素を固定する第1ブレーキ及び第2ブレーキと、第2複合遊星ギア装置の回転要素を固定する第3ブレーキと、第1遊星ギア装置と第2遊星ギア装置の回転要素の間を選択的に連結する第1クラッチと、を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用変速機に係り、より詳しくは前進11速及び後進3速の変速比を具現化した車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にはその運転状況に応じてエンジン等の動力源から発生した動力を駆動輪に適切な回転速度及びトルクに変換して供給するための変速機が備えられる。
上記の車両用変速機は最大登板力を満たすための最大変速比から車両の最高速度を達成するための最小変速比までの間に多数の変速段を備えることが一般的であり、理論的には変速段数が多いほどエンジンの最適運転点の確保に有利であって車両の燃費向上に寄与する。
特許文献1〜3には前進10速及び後進2速の変速段を具現化した変速機が開示されているが、それ以上の変速段を有する変速機については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】大韓民国特許公開第10−2010−0097706号明細書
【特許文献2】特開2009−47303号公報
【特許文献3】特開2009−63031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、最小の部品を使用し、比較的簡単な構成で前進11速及び後進3速の変速段を備え、車両の燃費を向上させ、円滑な走行性能を確保することができる車両用変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の車両用変速機は、第1遊星ギア装置と第2遊星ギア装置が結合されてなる第1複合遊星ギア装置と、第3遊星ギア装置と第4遊星ギア装置が結合されてなり、少なくとも一つの回転要素が第1複合遊星ギア装置の回転要素に連結された第2複合遊星ギア装置と、少なくとも二つの経路を介して第1複合遊星ギア装置の回転要素に連結されるとともに少なくとも二つの経路を介して第2複合遊星ギア装置の回転要素に連結された入力軸と、第2複合遊星ギア装置の一回転要素に連結された出力軸と、第1複合遊星ギア装置の回転要素をそれぞれ固定する第1ブレーキ及び第2ブレーキと、第2複合遊星ギア装置の回転要素を固定する第3ブレーキと、第1遊星ギア装置と第2遊星ギア装置の回転要素の間を選択的に連結する第1クラッチと、を含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は最小の部品を使用して比較的簡単な構成を持つとともに、前進11速及び後進3速の変速段を備えて、変速機に連結されるエンジンの運転状態を一層最適化することができるようにすることで、車両の燃費を向上させ、円滑な走行性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による車両用変速機構造を示す図である。
【図2】図1の変速機の作動要素の作動表である。
【図3】図1の変速機の作動を説明したレバーダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に本発明による車両用変速機構造を示した。図2は図1の変速機の作動要素の作動表であり、図3は図1の変速機の作動を説明したレバーダイアグラムである。
図1〜図3を参照して、本発明について詳細に説明する。
本発明の実施例による車両用変速機は、第1遊星ギア装置PG1と第2遊星ギア装置PG2が結合されてなる第1複合遊星ギア装置CG1と、第3遊星ギア装置PG3と第4遊星ギア装置PG4が結合されてなり、少なくとも一つ以上の回転要素が第1複合遊星ギア装置CG1の回転要素に連結される第2複合遊星ギア装置CG2と、少なくとも二つの経路を介して第1複合遊星ギア装置CG1の回転要素に連結されるとともに少なくとも二つの経路を介して第2複合遊星ギア装置CG2の回転要素に連結されるように設置された入力軸INと、第2複合遊星ギア装置CG2の一回転要素に連結された出力軸OUTと、第1複合遊星ギア装置CG1の回転要素をそれぞれ固定する第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2と、第2複合遊星ギア装置CG2の回転要素を固定する第3ブレーキB3と、第1遊星ギア装置PG1と第2遊星ギア装置PG2の回転要素の間を選択的に連結する第1クラッチCL1と、を含んでなる。
【0009】
入力軸INは第2遊星ギア装置PG2の第1回転要素に直接連結され、入力軸INは第3遊星ギア装置PG3の第1回転要素及び第4遊星ギア装置PG4の第1回転要素に第2クラッチCL2で選択的に連結され、入力軸INは第3遊星ギア装置PG3の第2回転要素に第3クラッチCL3で選択的に連結され、入力軸INは第1遊星ギア装置PG1の第1回転要素に第4クラッチCL4で選択的に連結される。
また、出力軸OUTは第4遊星ギア装置PG4の第2回転要素に連結され、第1遊星ギア装置PG1の第3回転要素は第3遊星ギア装置PG3の第3回転要素に直接連結され、第1クラッチCL1は第1遊星ギア装置PG1の第3回転要素と第2遊星ギア装置PG2の第2回転要素を選択的に連結させる。
【0010】
第1複合遊星ギア装置CG1は、第1遊星ギア装置PG1の第2回転要素と第2遊星ギア装置PG2の第3回転要素が直接連結され、第1遊星ギア装置PG1の第3回転要素と第2遊星ギア装置PG2の第2回転要素の間を第1クラッチCL1で選択的に連結する。
第2複合遊星ギア装置CG2は、第3遊星ギア装置PG3の第1回転要素と第4遊星ギア装置PG4の第1回転要素が直接連結され、第3遊星ギア装置PG3の第2回転要素と第4遊星ギア装置PG4の第3回転要素が直接連結される。
ここで、第1遊星ギア装置PG1の第1回転要素、第2要素、第3回転要素は順に第1太陽ギアS1、第1キャリアC1、第1リングギアR1に相当し、第2遊星ギア装置PG2の第1回転要素、第2要素、第3回転要素は順に第2太陽ギアS2、第2キャリアC2、第2リングギアR2に相当し、第3遊星ギア装置PG3の第1回転要素、第2要素、第3回転要素は順に第3太陽ギアS3、第3キャリアC3、第3リングギアR3に相当し、第4遊星ギア装置PG4の第1回転要素、第2要素、第3回転要素は順に第4太陽ギアS4、第4キャリアC4、第4リングギアR4に相当する。
【0011】
したがって、第1複合遊星ギア装置CG1は、第1キャリアC1と第2リングギアR2が直接連結され、第1リングギアR1が第2キャリアC2に第1クラッチCL1で選択的に連結されることで、第1クラッチCL1が連結されるとCR−CR式複合遊星ギア装置を構成する。
第2複合遊星ギア装置CG2は、第3太陽ギアS3と第4太陽ギアS4が直接連結され、第3キャリアC3と第4リングギアR4が直接連結されてシンプスン式複合遊星ギア装置を構成する。
入力軸INは第2太陽ギアS2に直接連結され、第3太陽ギアS3と第4太陽ギアS4の連結体に第2クラッチCL2で選択的に連結され、第3キャリアC3と第4リングギアR4の連結体に第3クラッチCL3で選択的に連結され、第1太陽ギアS1に第4クラッチCL4で選択的に連結される。
【0012】
出力軸OUTは第4キャリアC4に連結され、第3リングギアR3は第1リングギアR1に直接連結される。
第1ブレーキB1は第1キャリアC1と第2リングギアR2の連結体を選択的に固定し、第2ブレーキB2は第1太陽ギアS1を選択的に固定し、第3ブレーキB3は第3キャリアC3と第4リングギアR4の連結体を選択的に固定する。
また、第1キャリアC1と第2リングギアR2の連結体が逆回転することを防止するワンウェイクラッチF1が備えられる。
【0013】
上記のとおり構成された本発明の車両用変速機は、図2の作動表によって第1クラッチCL1〜第4クラッチCL4と第1ブレーキB1〜第3ブレーキB3が作動して前進1速(1st)〜11速(11th)の変速段と後進3速(Rev1〜Rev3)の変速段を具現化する。図3のレバーダイアグラムに本発明の前進11速、後進3速の作動状態を示した。
すなわち、第1複合遊星ギア装置CG1は、図3の左側に図示した、二つの順方向減速比、一つの逆方向減速比、一つの増速比、一つの1:1比及び一つのゼロ比を具現化し、この変速比に変速された動力を受け、第2複合遊星ギア装置CG2は図3の右側に示した前進11速と後進3速の変速比を具現化する。
【0014】
以上、本発明を特定の実施例に基づいて説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるのではなく、特許請求の範囲によって解釈されなければならない。また、この技術分野で通常の知識を習得した者なら、本発明の技術的範囲内で多くの修正と変形ができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、前進11速及び後進3速の変速比を具現する変速機に適用可能である。
【符号の説明】
【0016】
B1 第1ブレーキ
B2 第2ブレーキ
B3 第3ブレーキ
C1 第1キャリア
C2 第2キャリア
C3 第3キャリア
C4 第4キャリア
CG1 第1複合遊星ギア装置
CG2 第2複合遊星ギア装置
CL1 第1クラッチ(PG1の第2回転要素)
CL2 第2クラッチ(PG2の第2回転要素)
CL3 第3クラッチ(PG3の第2回転要素)
CL4 第4クラッチ(PG4の第2回転要素)
F1 ワンウェイクラッチ
IN 入力軸
OUT 出力軸
PG1 第1遊星ギア装置
PG2 第2遊星ギア装置
PG3 第3遊星ギア装置
PG4 第4遊星ギア装置
R1 第1リングギア(PG1の第3回転要素)
R2 第2リングギア(PG2の第3回転要素)
R3 第3リングギア(PG3の第3回転要素)
R4 第4リングギア(PG4の第3回転要素)
S1 第1太陽ギア(PG1の第1回転要素)
S2 第2太陽ギア(PG2の第1回転要素)
S3 第3太陽ギア(PG3の第1回転要素)
S4 第4太陽ギア(PG4の第1回転要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1遊星ギア装置(PG1)と第2遊星ギア装置(PG2)が結合されてなる第1複合遊星ギア装置(CG1)と、
第3遊星ギア装置(PG3)と第4遊星ギア装置(PG4)が結合されてなり、少なくとも一つの回転要素が前記第1複合遊星ギア装置(CG1)の回転要素に連結された第2複合遊星ギア装置(CG2)と、
少なくとも二つの経路を介して前記第1複合遊星ギア装置(CG1)の回転要素に連結されるとともに少なくとも二つの経路を介して前記第2複合遊星ギア装置(CG2)の回転要素に連結された入力軸(IN)と、
前記第2複合遊星ギア装置(CG2)の一回転要素に連結された出力軸(OUT)と、
前記第1複合遊星ギア装置(CG1)の回転要素をそれぞれ固定する第1ブレーキ(B1)及び第2ブレーキ(B2)と、
前記第2複合遊星ギア装置(CG2)の回転要素を固定する第3ブレーキ(B3)と、
前記第1遊星ギア装置(PG1)と前記第2遊星ギア装置(PG2)の回転要素の間を選択的に連結する第1クラッチ(CL1)と、
を含んでなることを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記入力軸(IN)は前記第2遊星ギア装置(PG2)の第1回転要素に直接連結され、
前記入力軸(IN)は前記第3遊星ギア装置(PG3)の第1回転要素及び第4遊星ギア装置(PG4)の第1回転要素に第2クラッチ(CL2)で選択的に連結され、
前記入力軸(IN)は前記第3遊星ギア装置(PG3)の第2回転要素に第3クラッチ(CL3)で選択的に連結され、
前記入力軸(IN)は前記第1遊星ギア装置(PG1)の第1回転要素に第4クラッチ(CL4)で選択的に連結されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項3】
前記出力軸(OUT)は前記第4遊星ギア装置(PG4)の第2回転要素に連結され、
前記第1遊星ギア装置(PG1)の第3回転要素は前記第3遊星ギア装置(PG3)の第1回転要素に直接連結され、
前記第1クラッチ(CL1)は前記第1遊星ギア装置(PG1)の第3回転要素と前記第2遊星ギア装置(PG2)の第2回転要素を選択的に連結することを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項4】
前記第1複合遊星ギア装置(CG1)は前記第1遊星ギア装置(PG1)の前記第2回転要素と前記第2遊星ギア装置(PG2)の第3回転要素が直接連結され、前記第1遊星ギア装置(PG1)の第3回転要素と前記第2遊星ギア装置(PG2)の第2回転要素の間を前記第1クラッチ(CL1)で選択的に連結することを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項5】
前記第2複合遊星ギア装置(CG2)は前記第3遊星ギア装置(PG3)の第1回転要素と前記第4遊星ギア装置(PG4)の第1回転要素を直接連結し、前記第3遊星ギア装置(PG3)の第2回転要素と前記第4遊星ギア装置(PG4)の第3回転要素を直接連結したことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項6】
前記第1遊星ギア装置(PG1)の第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素は順に第1太陽ギア(S1)、第1キャリア(C1)、第1リングギア(R1)に相当し、
前記第2遊星ギア装置(PG2)の第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素は順に第2太陽ギア(S2)、第2キャリア(C2)、第2リングギア(R2)に相当し、
前記第3遊星ギア装置(PG3)の第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素は順に第3太陽ギア(S3)、第3キャリア(C3)、第3リングギア(R3)に相当し、
前記第4遊星ギア装置(PG4)の第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素は順に第4太陽ギア(S4)、第4キャリア(C4)、第4リングギア(R4)に相当し、
前記第1複合遊星ギア装置(CG1)は、前記第1キャリア(C1)と前記第2リングギア(R2)が直接連結され、前記第1リングギア(R1)が前記第2キャリア(C2)に前記第1クラッチ(CL1)で選択的に連結されることで、前記第1クラッチ(CL1)が連結されればCR−CR式複合遊星ギア装置を構成することを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項7】
前記第2複合遊星ギア装置(CG2)は、前記第3太陽ギア(S3)と前記第4太陽ギア(S4)が直接連結され、前記第3キャリア(C3)と前記第4リングギア(R4)が直接連結されてシンプスン式複合遊星ギア装置を構成し、
前記第3リングギア(R3)は前記第1リングギア(R1)に直接連結されたことを特徴とする請求項6に記載の車両用変速機。
【請求項8】
前記入力軸(IN)は前記第2太陽ギア(S2)に直接連結され、前記第3太陽ギア(S3)と前記第4太陽ギア(S4)の連結体に前記第2クラッチ(CL2)で選択的に連結され、前記第3キャリア(C3)と前記第4リングギア(R4)の連結体に前記第3クラッチ(CL3)で選択的に連結され、前記第1太陽ギア(S1)に前記第4クラッチ(CL4)で選択的に連結され、
前記出力軸(OUT)は前記第4キャリア(C4)に連結されたことを特徴とする請求項7に記載の車両用変速機。
【請求項9】
前記第1ブレーキ(B1)は前記第1キャリア(C1)と前記第2リングギア(R2)の連結体を選択的に固定するように設置され、
前記第2ブレーキ(B2)は前記第1太陽ギア(S1)を選択的に固定するように設置され、
前記第3ブレーキ(B3)は前記第3キャリア(C3)と前記第4リングギア(R4)の連結体を選択的に固定することを特徴とする請求項8に記載の車両用変速機。
【請求項10】
前記第1キャリア(C1)と前記第2リングギア(R2)の連結体が逆回転することを防止するワンウェイクラッチ(F1)をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の車両用変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−68320(P2013−68320A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255299(P2011−255299)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】