説明

車両用外界表示装置

【課題】予測軌跡の見誤りが発生することを抑制し、画面表示が煩雑となることを防止する。
【解決手段】車両用外界表示装置10のECU14は、舵角センサ12により検出された実舵角に応じて予測した移動軌跡と、所定実舵角に応じて予測した所定移動軌跡とを、カメラ11により撮像された車両の進行方向の外界領域の画像上に重畳してモニタ13に表示可能であって、舵角センサ12により検出された実舵角と所定実舵角との差が所定値未満である場合には、移動軌跡および所定移動軌跡のうちの何れか一方(例えば、所定移動軌跡)をモニタ13に表示させることを禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用外界表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の後方視界が表示される画面に、実舵角に対応した第1の後方移動予想軌跡が重畳表示されると共に、車両の最大許容舵角より所定角だけ小さい所定の舵角に対応した修正操舵が可能な第2の後方移動予想軌跡が重畳表示される後方視界表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3619753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術の一例に係る後方視界表示装置においては、表示画面に、第1の後方移動軌跡と第2の後方移動軌跡が常に表示され、第1の後方移動予測軌跡が第2の後方移動予想軌跡に近づいた時、両軌跡がほぼ同様の経路表示になる為、運転者が第1の後方移動予測軌跡と第2の後方移動予想軌跡とを見誤ったり、複数の移動経路が表示されて煩雑になるという問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、予測軌跡の見誤りが発生することを抑制し、画面表示が煩雑となることを防止することが可能な車両用外界表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る車両用外界表示装置は、自車両の進行方向の外界領域を撮像する撮像手段(例えば、実施の形態でのカメラ11)と、前記撮像手段により撮像された画像を表示する表示手段(例えば、実施の形態でのモニタ13)とを備える車両用外界表示装置であって、自車両の実舵角に係る舵角状態量を検出する舵角状態量検出手段(例えば、実施の形態での舵角センサ12)と、前記舵角状態量検出手段により検出された前記舵角状態量に応じて自車両の移動軌跡を予測する移動軌跡予測手段(例えば、実施の形態でのECU14)と、所定実舵角での自車両の移動軌跡である所定移動軌跡を予測する所定移動軌跡予測手段(例えば、実施の形態でのECU14が兼ねる)と、前記撮像手段により撮像された前記画像上に前記移動軌跡予測手段により予測された前記移動軌跡と前記所定移動軌跡予測手段により予測された前記所定移動軌跡とを重畳して前記表示手段に表示可能な制御手段(例えば、実施の形態でのECU14が兼ねる)とを備え、前記制御手段は、前記舵角状態量検出手段により検出された前記舵角状態量に応じた前記実舵角と前記所定実舵角との差が所定値未満である場合には、前記撮像手段により撮像された前記画像上に前記移動軌跡および前記所定移動軌跡のうちの何れか一方を前記表示手段に表示させることを禁止する。
【0005】
さらに、本発明の第2態様に係る車両用外界表示装置では、前記所定移動軌跡予測手段は、前記所定実舵角を、右旋回側の最大実舵角および左旋回側の最大実舵角および直進時実舵角のうちの少なくとも何れか1つとする。
【0006】
さらに、本発明の第3態様に係る車両用外界表示装置では、前記制御手段は、前記移動軌跡および前記所定移動軌跡の何れか一方を前記表示手段に表示させることを禁止している状態で、前記舵角状態量検出手段により検出された前記舵角状態量に応じた前記実舵角と前記所定実舵角との差が所定値以上となった場合には、前記移動軌跡および前記所定移動軌跡の何れか一方を前記表示手段に表示させることを許可し、前記撮像手段により撮像された前記画像上に前記移動軌跡と前記所定移動軌跡とを重畳して前記表示手段に表示させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用外界表示装置によれば、舵角状態量検出手段により検出された舵角状態量に応じた実舵角と所定実舵角との差が所定値未満となることによって移動軌跡予測手段により予測された移動軌跡と所定移動軌跡予測手段により予測された所定移動軌跡とが略同等となる場合には、移動軌跡および所定移動軌跡の何れか一方の表示を禁止することから、実舵角に応じた移動軌跡と所定移動軌跡との見誤りが発生することを抑制し、画面表示が煩雑となることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用外界表示装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両用外界表示装置10は、車両に搭載され、例えば図1に示すように、車両の外界を撮像可能なカメラ11と、車両の実舵角(転舵角)あるいは実舵角(転舵角)に係る操舵角(運転者が入力した操舵角度の方向と大きさ)を検出する舵角センサ12と、モニタ13と、車両の移動軌跡を予測して表示するためにCPU等を含む電子回路により構成された制御装置(ECU)14とを備えて構成されている。
【0009】
カメラ11は、例えば可視光領域や赤外線領域にて撮像可能とされ、車両の外界として、車両の後進時の進行方向の所定外界領域を撮像し、撮像して得た画像に対して、例えばフィルタリングや二値化処理等の所定の画像処理を行い、二次元配列の画素からなる画像データを生成してECU14へ出力する。
【0010】
舵角センサ12は、例えばステアリングシャフト(図示略)に設けられたロータリエンコーダ等からなり、運転者が入力した操舵角度の方向と大きさ(操舵角)を検出し、操舵角に基づき車両の実舵角(転舵角)を検出する。
【0011】
モニタ13は、ECU14の制御により、カメラ11により撮像された画像上に、舵角センサ12により検出された車両の実舵角(転舵角)に応じて予測された車両の移動軌跡と、所定実舵角に応じて予測された車両の所定移動軌跡とを重畳して、表示可能とされている。
【0012】
ECU14は、舵角センサ12により検出された車両の実舵角(転舵角)に基づき車両の移動軌跡(例えば、図2に示す移動経路TP(実舵角))を予測すると共に、所定実舵角(例えば、右旋回側の右最大舵角と、左旋回側の左最大舵角と、直進時舵角であるゼロ)での車両の所定移動軌跡(例えば、図2に示す移動経路TR(右最大舵角)、移動経路TL(左最大舵角)、移動経路TC(直進時舵角))を予測する。
【0013】
ECU14は、カメラ11により撮像された画像上に、予測した移動軌跡および所定移動軌跡を重畳してモニタ13に表示可能であり、例えば舵角センサ12により検出された車両の実舵角(転舵角)と所定実舵角との差が所定値(例えば、45°など)以上である場合には、例えば図2に示すように、カメラ11により撮像された画像上に、予測した移動軌跡および所定移動軌跡を重畳してモニタ13に表示する。
【0014】
そして、ECU14は、例えば舵角センサ12により検出された車両の実舵角(転舵角)と所定実舵角との差が所定値(例えば、45°など)未満である場合には、カメラ11により撮像された画像上に移動軌跡および所定移動軌跡の何れか一方(例えば、所定移動軌跡)を表示させることを禁止する。
【0015】
例えば図3(a)に示すように、舵角センサ12により検出された車両の実舵角(検出値)と所定実舵角(例えば、直進時舵角であるゼロ)との差が所定値(例えば、45°)未満である場合には、例えば図4(a)に示すように、移動経路TP(実舵角)と移動経路TC(直進時舵角)とが略同等となり、運転者による見誤りが発生する虞があることから、例えば、図4(b)に示すように、移動経路TP(実舵角)および移動経路TC(直進時舵角)の何れか一方つまり移動経路TC(直進時舵角)を画像上に重畳してモニタ13に表示させることを禁止し、移動経路TP(実舵角)と移動経路TR(右最大舵角)と移動経路TL(左最大舵角)のみをカメラ11により撮像された画像上に重畳してモニタ13に表示させる。
【0016】
同様にして、例えば図3(b)に示すように、舵角センサ12により検出された車両の実舵角(検出値)と所定実舵角(例えば、右旋回側の右最大舵角)との差が所定値(例えば、45°)未満である場合には、例えば図4(c)に示すように、移動経路TP(実舵角)と移動経路TR(右最大舵角)とが略同等となり、運転者による見誤りが発生する虞があることから、例えば図4(d)に示すように、移動経路TP(実舵角)および移動経路TR(右最大舵角)の何れか一方つまり移動経路TR(右最大舵角)を画像上に重畳してモニタ13に表示させることを禁止し、移動経路TP(実舵角)と移動経路TC(直進時舵角)と移動経路TL(左最大舵角)のみをカメラ11により撮像された画像上に重畳してモニタ13に表示させる。
【0017】
同様にして、例えば図3(c)に示すように、舵角センサ12により検出された車両の実舵角(検出値)と所定実舵角(例えば、左旋回側の左最大舵角)との差が所定値(例えば、45°)未満である場合には、例えば図4(e)に示すように、移動経路TP(実舵角)と移動経路TL(左最大舵角)とが略同等となり、運転者による見誤りが発生する虞があることから、例えば図4(f)に示すように、移動経路TP(実舵角)および移動経路TL(左最大舵角)の何れか一方つまり移動経路TL(左最大舵角)を画像上に重畳してモニタ13に表示させることを禁止し、移動経路TP(実舵角)と移動経路TC(直進時舵角)と移動経路TR(右最大舵角)のみをカメラ11により撮像された画像上に重畳してモニタ13に表示させる。
【0018】
また、ECU14は、移動軌跡および所定移動軌跡の何れか一方をモニタ13に表示させることを禁止している状態で、舵角センサ12により検出された実舵角と所定実舵角との差が所定値(例えば、45°)以上となった場合には、移動軌跡および所定移動軌跡の何れか一方をモニタ13に表示させることを許可し、カメラ11により撮像された画像上に移動軌跡と所定移動軌跡とを重畳してモニタ13に表示させる。
【0019】
本実施の形態による車両用外界表示装置10は上記構成を備えており、次に、この車両用外界表示装置10の動作について説明する。
【0020】
例えば図5に示すステップS01においては、舵角センサ12により検出された車両の実舵角と所定実舵角(直進時舵角であるゼロ)との差が所定値(例えば、45°)未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS03に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
そして、ステップS02においては、移動経路TP(実舵角)および移動経路TC(直進時舵角)の何れか一方つまり移動経路TC(直進時舵角)を画像上に重畳してモニタ13に表示させることを禁止し、移動経路TP(実舵角)と移動経路TR(右最大舵角)と移動経路TL(左最大舵角)のみをカメラ11により撮像された画像上に重畳してモニタ13に表示させ、エンドに進み、処理を終了する。
【0021】
そして、ステップS03においては、舵角センサ12により検出された車両の実舵角と所定実舵角(右旋回側の右最大舵角)との差が所定値(例えば、45°)未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS05に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS04に進む。
そして、ステップS04においては、移動経路TP(実舵角)および移動経路TR(右最大舵角)の何れか一方つまり移動経路TR(右最大舵角)を画像上に重畳してモニタ13に表示させることを禁止し、移動経路TP(実舵角)と移動経路TC(直進時舵角)と移動経路TL(左最大舵角)のみをカメラ11により撮像された画像上に重畳してモニタ13に表示させ、エンドに進み、処理を終了する。
【0022】
そして、ステップS05においては、舵角センサ12により検出された車両の実舵角と所定実舵角(左旋回側の左最大舵角)との差が所定値(例えば、45°)未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS07に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
そして、ステップS06においては、移動経路TP(実舵角)および移動経路TL(左最大舵角)の何れか一方つまり移動経路TL(左最大舵角)を画像上に重畳してモニタ13に表示させることを禁止し、移動経路TP(実舵角)と移動経路TC(直進時舵角)と移動経路TR(右最大舵角)のみをカメラ11により撮像された画像上に重畳してモニタ13に表示させ、エンドに進み、処理を終了する。
また、ステップS07においては、所定移動軌跡を画像上に重畳してモニタ13に表示させることを許可し、移動経路TP(実舵角)と移動経路TC(直進時舵角)と移動経路TR(右最大舵角)と移動経路TL(左最大舵角)をカメラ11により撮像された画像上に重畳してモニタ13に表示させ、エンドに進み、処理を終了する。
【0023】
上述したように、本実施の形態による車両用外界表示装置10によれば、舵角センサ12により検出された実舵角と所定実舵角との差が所定値未満となることによって移動軌跡と所定移動軌跡とが略同等となる場合には、移動軌跡および所定移動軌跡の何れか一方の表示を禁止することから、実舵角に応じた移動軌跡と所定移動軌跡との見誤りが発生することを抑制し、画面表示が煩雑となることを防止することができる。
【0024】
なお、上述した実施の形態において、ECU14は、実舵角(検出値)と所定実舵角との差が所定値(例えば、45°など)未満である場合には、カメラ11により撮像された画像上に所定移動軌跡を表示させることを禁止するとしたが、これに限定されず、所定移動軌跡の代わりに、実舵角(検出値)に応じた移動軌跡を表示させることを禁止してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用外界表示装置の構成図である。
【図2】図1に示すモニタの画面の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る実舵角(検出値)と、所定実舵角(例えば、右旋回側の右最大舵角と、左旋回側の左最大舵角と、直進時舵角であるゼロ)との、対応関係を示す図である。
【図4】図1に示すモニタの画面の例を示す図である。
【図5】図1に示す車両用外界表示装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
10 車両用外界表示装置
11 カメラ(撮像手段)
12 舵角センサ(舵角状態量検出手段)
13 モニタ(表示手段)
14 ECU(移動軌跡予測手段、所定移動軌跡予測手段、制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向の外界領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像を表示する表示手段とを備える車両用外界表示装置であって、
自車両の実舵角に係る舵角状態量を検出する舵角状態量検出手段と、
前記舵角状態量検出手段により検出された前記舵角状態量に応じて自車両の移動軌跡を予測する移動軌跡予測手段と、
所定実舵角での自車両の移動軌跡である所定移動軌跡を予測する所定移動軌跡予測手段と、
前記撮像手段により撮像された前記画像上に前記移動軌跡予測手段により予測された前記移動軌跡と前記所定移動軌跡予測手段により予測された前記所定移動軌跡とを重畳して前記表示手段に表示可能な制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記舵角状態量検出手段により検出された前記舵角状態量に応じた前記実舵角と前記所定実舵角との差が所定値未満である場合には、前記撮像手段により撮像された前記画像上に前記移動軌跡および前記所定移動軌跡のうちの何れか一方を前記表示手段に表示させることを禁止することを特徴とする車両用外界表示装置。
【請求項2】
前記所定移動軌跡予測手段は、前記所定実舵角を、右旋回側の最大実舵角および左旋回側の最大実舵角および直進時実舵角のうちの少なくとも何れか1つとすることを特徴とする請求項1に記載の車両用外界表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記移動軌跡および前記所定移動軌跡の何れか一方を前記表示手段に表示させることを禁止している状態で、前記舵角状態量検出手段により検出された前記舵角状態量に応じた前記実舵角と前記所定実舵角との差が所定値以上となった場合には、前記移動軌跡および前記所定移動軌跡の何れか一方を前記表示手段に表示させることを許可し、前記撮像手段により撮像された前記画像上に前記移動軌跡と前記所定移動軌跡とを重畳して前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項2に記載の車両用外界表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−166663(P2009−166663A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6840(P2008−6840)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】