説明

車両用天井構造

【課題】人が乗車しているか否か等を勘案し、居住性と断熱性とを適宜調整することができる車両用天井構造を提供する。
【解決手段】ルーフパネルと、ルーフパネルよりも車室内側に配されたルーフトリム2と、を備え、ルーフトリム2には、ルーフパネルとの離隔距離が可変するように移動可能な移動天井部2aが設けられている車両用天井構造100であり、移動天井部2aのルーフパネルとの離隔距離は、車両に人が乗車している場合には、車両に人が乗車していない場合と比べて、小さくなるように移動天井部2aが移動するように制御されており、ルーフパネルと、ルーフトリム2との間には気体保持空間3が配され、気体保持空間3の内部の気体量を調整して気体保持空間3の厚みを変化させることにより、離隔距離を可変とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用天井構造に関する。更に詳しくは、本発明は、ルーフトリムに、ルーフパネルとの離隔距離が可変するように移動可能な移動天井部が設けられているため、乗車している人の頭上の空間、及びルーフパネルとルーフトリムとの間の空間、を広くしたり狭くしたりすることができ、人が乗車しているか否か等を勘案し、居住性と断熱性とを適宜調整することができる車両用天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ルーフパネルと、このルーフパネルの車室内側に配設され、ルーフパネルに固定されているルーフトリムとを備える車両用天井構造が知られている。このような車両用天井構造では、乗員の頭上の空間が広いほど居住性が向上するが、ルーフパネルとルーフトリムとが近接すると、これらの間の空間が小さくなり、車室内の温度が外部からの伝熱等の影響を受け易くなる。また、このような外部雰囲気の影響を軽減し、快適な室内温度を維持するための空調により多くのエネルギーを必要とすることになる。
【0003】
前記のような問題に対処するため、ルーフパネルの車室内側の面に低放射率フィルムを設けてなる車両天井構造が知られており(例えば、特許文献1参照。)、この低放射率フィルムにより、ルーフパネルから車室内への熱の侵入が抑えられるとともに、車室内から車室外への熱の放出が促進され、夏期であっても車室内の昇温が抑えられる。更に、ルーフパネルと内装基材との間に赤外線反射部材が配置されるとともに、内装基材と赤外線反射部材との間に制振部材が配置された車室用内装材が知られており(例えば、特許文献2参照。)、車室側への伝熱が遮断されるとともに、赤外線は赤外線反射部材により反射され、且つ制振部材により遮音され、車室内の静粛性が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−136849号公報
【特許文献2】特開2009−126496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された車両天井構造では、内装トリム材と低放射率フィルムとの間には空間が形成されているのみであり、車室内から車室外への放熱を促進させる構造であるため、冬季、車室内を暖房したときに車室内の熱が車室外へ散逸してしまうことがある。また、特許文献2に記載された車両用内装材では、車室側への伝熱の遮断は、ルーフパネルと内装基材との間の空気層によりなされており、伝熱を十分に遮断するためには空気層を厚くする必要があるが、空気層を厚くすれば乗員の頭上の空間が小さくなり、居住性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、ルーフトリムに、ルーフパネルとの離隔距離が可変するように移動可能な移動天井部が設けられているため、乗車している人の頭上の空間、及びルーフパネルとルーフトリムとの間の空間、を広くしたり狭くしたりすることができ、人が乗車しているか否か等を勘案し、居住性と断熱性とを適宜調整することができる車両用天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
1.ルーフパネルと、
前記ルーフパネルよりも車室内側に配されたルーフトリムと、を備える車両用天井構造であって、
前記ルーフトリムには、前記ルーフパネルとの離隔距離が可変するように移動可能な移動天井部が設けられていることを特徴とする車両用天井構造。
2.前記移動天井部の前記ルーフパネルとの離隔距離は、車両に人が乗車している場合には、前記車両に人が乗車していない場合と比べて、小さくなるように前記移動天井部が移動するように制御されている前記1.に記載の車両用天井構造。
3.前記ルーフパネルと、前記ルーフトリムとの間には気体保持空間が配され、
前記気体保持空間の内部の気体量を調整して前記気体保持空間の厚みを変化させることにより、前記離隔距離を可変とする前記1.又は2.に記載の車両用天井構造。
4.前記ルーフトリムは、芯材部と、前記芯材部に積層された表皮部とを備え、
前記ルーフトリムの前記移動天井部と、前記ルーフトリムのうち前記移動天井部以外の非移動天井部との連結部分は、前記芯材部が取り除かれた前記表皮部とされている前記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の車両用天井構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用天井構造では、ルーフトリムに、ルーフパネルとの離隔距離が可変するように移動可能な移動天井部が設けられており、この移動天井部を移動させることにより、乗車している人の頭上の空間、及びルーフパネルとルーフトリムとの間の空間、をそれぞれ広くしたり狭くしたりすることができ、人が乗車しているときの居住性、及び駐車しているときの断熱性等を適宜調整することができる。
また、移動天井部のルーフパネルとの離隔距離が、車両に人が乗車している場合には、車両に人が乗車していない場合と比べて、小さくなるように移動天井部が移動するように制御されている場合は、人が乗車しているときは、移動天井部をルーフパネル側に移動させ、頭上の空間を広くすることによって居住性を向上させることができる。一方、人が乗車していないときは、移動天井部をルーフパネルと離隔した位置に移動させてルーフパネルとルーフトリムとの間の空間を広くすることにより、断熱性を向上させ、外部からの伝熱等による車室内の温度変化を抑えることができる。
更に、ルーフパネルと、ルーフトリムとの間には気体保持空間が配され、気体保持空間の内部の気体量を調整して気体保持空間の厚みを変化させることにより、離隔距離を可変とする場合は、機械的な手段により離隔距離を可変とするときに比べて、特段の装置等を必要最小限とすることができ、簡易な構成とすることができるとともに、操作も簡便であって、容易に離隔距離を可変とすることができる。
また、ルーフトリムは、芯材部と、芯材部に積層された表皮部とを備え、ルーフトリムの移動天井部と、ルーフトリムのうち移動天井部以外の非移動天井部との連結部分が、芯材部が取り除かれた表皮部とされている場合は、特に他の部材を必要とすることなく、移動天井部と非移動天井部とを有するルーフトリムとすることができ、表皮部は柔軟であるため、移動天井部を容易に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】人が乗車しているときに、移動天井部がルーフパネルと近接した位置に移動している状態を説明するための模式図である。
【図2】人が乗車していないときに、移動天井部がルーフパネルと離隔した位置に移動している状態を説明するための模式図である。
【図3】移動天井部と非移動天井部とが、ルーフトリムが備える表皮部により連結されている状態を説明するための模式図である。
【図4】本発明の車両用天井構造の一実施形態の一部断面を含む斜視図である(但し、ルーフパネルは図示していない。)。
【図5】図4の車両用天井構造を側方からみたときの断面の模式図である。
【図6】気体保持空間が袋状部材により構成されている車両用天井構造の他の実施形態の断面の模式図である(但し、ルーフパネルは図示していない。)。
【図7】樹脂ボードが配設されておらず、袋状部材がルーフパネルに直接取り付けられる車両用天井構造の更に他の実施形態の断面の模式図である(但し、ルーフパネルは図示していない。)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図1〜7を参照しながら詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
本発明の一実施形態に係る車両用天井構造100(図1、2、4参照、但し、図4ではルーフパネルは図示していない。)は、ルーフパネル1と、ルーフパネル1よりも車室内側に配されたルーフトリム2と、を備え、ルーフトリム2には、ルーフパネル1との離隔距離が可変するように移動可能な移動天井部2a(図3、4、5参照)が設けられている。
【0012】
前記「車両用天井構造100」は、各種の車両の天井構造に適用することができる。この車両としては、例えば、乗用車、バス等の人の移動に用いられる自動車、及びトラック等の貨物自動車などの自動車の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両等が挙げられる。これらの車両のうちで、本発明の車両用天井構造とすることで、特に居住性及び断熱性を向上させることができるのは自動車であり、自動車のうちでも、車体の小さい乗用車及び小型トラック、特に快適な居住空間であることが重要な乗用車に適用した場合に、特段の作用効果が奏される。
【0013】
前記「ルーフパネル1」は、車両の天井の外板であり(図1〜3参照)、その構造、形状、寸法、材質等は特に限定されない。このルーフパネル1としては、例えば、鋼板製、アルミニウム製等の金属製、及び繊維強化プラスチック製等の樹脂製のルーフパネル1が挙げられる。また、ルーフパネル1の車室内側の面とルーフトリム2のルーフパネル1側の面との離隔距離(以下、「離隔距離」は、ルーフパネル1の車室内側の面とルーフトリム2のルーフパネル1側の面との離隔距離を意味する。)は、例えば、自動車、特に乗用車の場合、通常、5〜50mm、特に20〜30mmである。本発明の車両用天井構造100においても、ルーフパネル1と非移動天井部2b(図3、4、5参照)との離隔距離(ルーフパネル1への取り付け部の近傍を除く、間隔が略一定となった部分の離隔距離)、及び移動天井部2aがルーフパネル1側へ移動したときの、ルーフパネル1と移動天井部2aとの離隔距離は前記の距離とすることができる。
【0014】
前記「ルーフトリム2」は、ルーフパネル1の車室内側に配設される天井材であり、その構造、形状、寸法、材質等は特に限定されない。ルーフトリム2は、芯材部21と、この芯材部21に積層された表皮部22とを備え(図3、4、5参照)、芯材部21がルーフパネル1側になるとともに、表皮部22が車室内側の意匠面を形成するように配設される。芯材部21は、例えば、各種の不織布、及び発泡又は非発泡樹脂シート等を用いて形成することができる。また、表皮部22は、例えば、各種の不織布、織布、編布、塩化ビニルレザーシート等、又はエラストマーシートなどを用いて形成することができる。更に、芯材部21と表皮部22とは熱融着等により直接積層されていてもよいし、樹脂発泡層等を介して間接的に積層されていてもよい。
【0015】
ルーフトリム2は、ルーフパネル1に固定された前記「非移動天井部2b」と、ルーフパネル1側へ移動したときの位置と、離隔した位置との間で移動可能である前記「移動天井部2a」と、を備える。移動天井部2aがルーフパネル1側へ移動したときの位置、及び離隔した位置は特に限定されないが、ルーフパネル1側へ移動したときの位置は、ルーフパネル1の車室内側の面と、移動天井部2aのルーフパネル1側の面とが前記の離隔距離となる位置であればよい。また、離隔する位置は、ルーフパネル1の車室内側の面と移動天井部2aのルーフパネル1側の面との離隔距離が、断熱性を十分に向上させることができる距離となる位置であればよい。尚、樹脂ボード5が介装されるときも、前記の離隔距離とすることができるが、この場合、樹脂ボード5は移動天井部2aを支持することができる厚さであればよく、この厚さは適宜設定することができる。
【0016】
更に、ルーフトリム2の移動天井部2a及び非移動天井部2bの、ルーフトリム2全体の平面方向における各々の配設位置は特に限定されず、居住性と断熱性との観点で、適宜設定することができるが、通常、周縁部はルーフパネル1に固定された非移動天井部2bであり、中心部が移動天井部2aであることが好ましい。また、中心部の全体が1個の移動天井部2aであってもよく、複数の移動天井部2aに分割されていてもよい。
【0017】
複数の移動天井部2aに分割されている場合、例えば、乗用車の前席と後席とに対応する移動天井部2aを想定し、ルーフトリム2のうちのルーフパネル1に固定された周縁部を除く中心部を前後に略2分割し、2個の移動天井部2aを形成するとともに、それぞれの移動天井部2aの境界部をルーフパネル1に固定してなる車両用天井構造とすることができる。また、前席及び後席の各々の左右に略4分割し、4個の移動天井部2aを形成するとともに、それぞれの移動天井部2aの境界部をルーフパネル1に固定してなる車両用天井構造とすることもできる。また、車両が乗用車である場合、その大きさ及び乗車する人員数によって、複数、例えば、2〜8個、特に2〜6個、更に2〜4個の移動天井部2aに分割することができる。
【0018】
更に、移動天井部2aの面積のルーフトリム2の全面積に対する割合(平面視したときの面積割合であり、凹凸は考慮しない。)は、特に限定されず、移動天井部2aを設けることによる作用効果が十分に奏される面積割合とすることができる。尚、この面積割合は、前記のように、分割された複数の移動天井部2aが形成されている場合は、それらの合計面積のルーフトリム2の全面積に対する割合であるとする。
【0019】
また、ルーフトリム2に設けられた移動天井部2aを、どのように移動させるかは特に限定されないが、通常、車両に人が乗車しているときに、車両に人が乗車していないときと比べて、移動天井部2aとルーフパネル1との離隔距離が小さくなるように制御される。このようにして制御することにより、人が乗車しているときの居住性を向上させることができる。
【0020】
ルーフトリム2の移動天井部2aを、ルーフパネル1に近接する位置と離隔する位置との間で移動させる移動手段は特に限定されず、例えば、モーターを用いた駆動手段によって移動させる移動手段等が挙げられる。また、移動手段としては、ルーフパネル1と、ルーフトリム2との間に配された気体保持空間3(図1〜5参照)内の気体量を調整して気体保持空間3の厚みを変化させる移動手段が挙げられる。尚、気体保持空間3内の気体の種類は特に限定されず、空気、窒素ガス等の危険性のない気体などであればよいが、特に特殊な気体を用いる必要はなく、通常、この気体は空気である。
【0021】
前記の気体保持空間3としては、例えば、図3、4のように、樹脂ボード5と、空間形成用軟質部材31と、移動天井部2aと、により形成された気体保持空間3が挙げられる。より具体的には、樹脂、ゴム等からなる一面側と他面側のシートの周縁部が閉止され、且つ中央部が開口部となっている空間形成用軟質部材31の、一面側のシートの開口部の周縁と樹脂ボード5の周縁とが接合され、且つ他面側のシートの開口部の周縁と移動天井部2aの周縁とが接合されて形成された気体保持空間3が挙げられる。このような気体保持空間3では、樹脂ボード5を、そのルーフパネル1側の面に設けられたクリップ51によりルーフパネル1に固定することにより、樹脂ボード5,空間形成用軟質部材31及び移動天井部2aを、ルーフパネル1に取り付けることができる。
【0022】
更に、気体保持空間3は、通常、平面視で略矩形状をなし、その一辺、特に車両の前後方向の一辺、更に車両の前方向の一辺の近傍に、内部の気体を吸引するための吸引孔3aを設け(図4参照)、この吸引孔3aから内部の気体を吸引することにより、気体保持空間3の厚みを減じることができる。これにより、人が乗車したときに、頭上の空間を広くすることができ、居住性を向上させることができる。吸引孔3aは、矩形状の一辺の中央部に設けてもよいが、角部近傍に設けることが好ましい。吸引孔3aを角部近傍、特に車両の前方向の角部近傍に設ければ、下記のように、車両のエンジンルーム内の何らかの装置において発生する負圧を吸引手段として利用する場合に、例えば、吸引孔3aからエンジンルーム内へとホース7(図4参照)を配設するときに、フロントピラー内を挿通させて容易に配設することができる。
【0023】
気体保持空間3内の気体を吸引する吸引手段も特に限定されず、この気体の吸引のための別段の手段、例えば、減圧ポンプ等を用いてもよいが、コスト等の観点で、車両が元々有している何らかの装置において発生する負圧を吸引手段として利用する形態であることが好ましい。この負圧としては、エンジンの吸気による負圧などが挙げられ、このような負圧を利用することにより、低コストで、且つ効率よく気体を吸引し、移動天井部2aをルーフパネル1の側へと移動させることができる。
【0024】
また、気体保持空間3は、内部の気体を吸引するための吸引孔3aを備え、この場合、吸引孔3aを除く他部は、通気性を有していなくてもよく、通気性を有していてもよい。気体保持空間3が通気性を有していないときは(通気性を有していないとは、下記の方法により通気量を測定した場合に、測定限界値以下であることを意味する。)、気体保持空間3内の気体をより効率よく吸引することができ、移動天井部2aをルーフパネル1の側により容易に移動させることができる。更に、気体保持空間3には、吸引孔3aを設けるとともに、吸引孔3aが設けられた一辺又は角部と対向する位置の他の辺又は角部の近傍に、外部から気体を取り入れるための気体取入孔を設けてもよい。このようにすれば、吸引孔3aからの気体の吸引と、気体取入孔からの気体保持空間3内への気体の流入とで、移動天井部2aをルーフパネル1側の所定位置に容易に保持することができる。
【0025】
更に、気体保持空間3の吸引孔3aを除く他部が通気性を有している場合、通気の程度は特に限定されず、例えば、吸引孔3aを除く他部の通気量(JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定することができる。)が、吸引孔3aからの気体の吸引と、気体保持空間3の吸引孔3aを除く他部からの気体保持空間3内への気体の流入とで、移動天井部2aをルーフパネル1側の所定位置に容易に保持することができる程度の通気量であればよい。
【0026】
また、吸引孔3aから吸引される気体の流路に弁を配設することもでき、この弁の開度によって気体の吸引量を調整することができる。より具体的には、例えば、乗員の体格等を考慮した居住性の観点で、弁の開度により移動天井部2aの最適な位置を容易に設定することができ、居住性をより容易に向上させることができる。この場合、気体の吸引は、弁を所定の開度として継続されるが、気体保持空間3が十分に気密な空間であれば、気体を吸引し、移動天井部2aをルーフパネル1側に移動させた後、弁を閉止し、吸引を停止してもよい。
【0027】
本発明の車両用天井構造では、気体保持空間3を、ルーフパネル1と移動天井部2aとの間に介装させた袋状部材32によって形成した他の実施形態とすることもできる(図6参照)。この場合、袋状部材32の一面を樹脂ボード5に接合させ、他面を移動天井部2aに接合させることにより、樹脂ボード5と、空間形成用軟質部材31と、移動天井部2aとにより形成された前記の気体保持空間3と同様の作用を有する気体保持空間3とすることができる。
【0028】
尚、他の実施形態において前記の一実施形態と同じ構成については、同一の符号を付する。更に、この袋状部材32によって気体保持空間3を形成する場合、移動天井部2aがルーフパネル1側へ移動したときの位置、及び離隔した位置、吸引孔を設けること、吸引孔の位置、吸引手段、吸引孔を除く他部が通気性を有していなくてもよいこと、通気性を有していてもよいこと、気体取入孔を設けてもよいこと、並びに吸引孔から吸引される気体の流路に弁を配設すること、及びこの弁の操作については、樹脂ボード5と、空間形成用軟質部材31と、移動天井部2aとにより形成された気体保持空間3における各々の記載をそのまま適用することができる。
【0029】
袋状部材32の材質は特に限定されないが、軽量であって、容易に破損することのない強度を有し、且つ柔軟であって気体の出入りにより変形し易く、厚さが容易に増減する袋状部材32であることが好ましい。このような袋状部材32は、各種の樹脂フィルム、及び樹脂が含浸された各種の織布、不織布等を用いて形成することができる。
【0030】
気体保持空間3を袋状部材32により形成する場合、樹脂ボード5を用いない更に他の形態とすることもできる(図7参照)。即ち、袋状部材32をルーフパネル1の車室内側の面に接合等の方法により取り付けてもよい。但し、ルーフパネル1の車室内側の面は、特に夏期等には相当な高温になるため、樹脂ボード5を用いないときは、十分な耐熱性を有する袋状部材32を用いる必要がある。また、袋状部材32を用いる場合、吸引孔を除く他部が前記のように通気性を有していてもよく、このような袋状部材32として、エアバッグの作製に用いられる所定の通気性を有する基布(例えば、樹脂ボード5と、空間形成用軟質部材31と、移動天井部2aと、により形成された前記の気体保持空間3と同程度の通気量を有する基布)を用いてなる袋状部材32を使用することもできる。尚、この更に他の形態の場合も、前記の一実施形態と同じ構成については、同一の符号を付する。
【0031】
更に、気体保持空間3の厚みを増加させ、ルーフパネル1と移動天井部2aとを離隔させる場合、気体保持空間3に気体を流入させて増加させることもできるが、そのような特段の手段は必ずしも必要ではない。気体保持空間3の厚みは、移動天井部2a等の自量により増加させることができ、これにより、移動天井部2aをルーフパネル1と離隔する側に移動させることができる。この場合、気体保持空間3内に気体が流入することになるが、この気体の流入には、前記の吸引孔3a及び気体取入孔を利用することができる。また、気体保持空間3の厚みは急激に増加させる必要はないため、気体保持空間3の吸引孔3aを除く他部が通気性を有しているときは、この他部からの気体の流入により、気体保持空間3の厚みを徐々に増加させることもできる。
【0032】
また、移動天井部2aがルーフパネル1側へと移動し、ルーフパネル1と移動天井部2aとが近接して、これらの間の空間が小さくなれば、通常、断熱性が低下する。しかし、気体保持空間3内の気体を吸引して移動天井部2aを移動させることにより、気体保持空間3内を減圧状態とすることができ、これにより空間内の熱伝導性が小さくなるため、断熱性の低下を十分に抑えることができる。
【0033】
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施形態を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、各種の車両、特に乗用車の天井構造として利用することができ、居住性と断熱性とをともに向上させることができるため、特に乗用車等の快適な車室内空間が必要とされる車両の天井構造として有用である。
【符号の説明】
【0035】
100;車両用天井構造、1;ルーフパネル、2;ルーフトリム、21;芯材部、22;表皮部、2a;移動天井部、2b;非移動天井部、3;気体保持空間、3a;吸引孔、31;空間形成用軟質部材、32;袋状部材、4;接合部、5;樹脂ボード、51;クリップ、6;位置決めピン、7;吸引用ホース、81;前席シートバック、82;後席シートバック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルと、
前記ルーフパネルよりも車室内側に配されたルーフトリムと、を備える車両用天井構造であって、
前記ルーフトリムには、前記ルーフパネルとの離隔距離が可変するように移動可能な移動天井部が設けられていることを特徴とする車両用天井構造。
【請求項2】
前記移動天井部の前記ルーフパネルとの離隔距離は、車両に人が乗車している場合には、前記車両に人が乗車していない場合と比べて、小さくなるように前記移動天井部が移動するように制御されている請求項1に記載の車両用天井構造。
【請求項3】
前記ルーフパネルと、前記ルーフトリムとの間には気体保持空間が配され、
前記気体保持空間の内部の気体量を調整して前記気体保持空間の厚みを変化させることにより、前記離隔距離を可変とする請求項1又は2に記載の車両用天井構造。
【請求項4】
前記ルーフトリムは、芯材部と、前記芯材部に積層された表皮部とを備え、
前記ルーフトリムの前記移動天井部と、前記ルーフトリムのうち前記移動天井部以外の非移動天井部との連結部分は、前記芯材部が取り除かれた前記表皮部とされている請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の車両用天井構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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