車両用後方視認装置
【課題】視野範囲を広げつつ乗員に煩わしさを感じさせない車両用後方視認装置を提供する。
【解決手段】車両用後方視認装置は、車両の乗員の後方死角を視認可能とする鏡体3に、後方死角の通常領域を視認するための一般鏡面部4と、一般鏡面部4よりも小さい曲率半径に形成された特定鏡面部5と、を設け、特定鏡面部5を介した後方視認を可能とする視認可能状態と特定鏡面部5を介した後方視認を不可とする視認不可状態のいずれかの状態に切り換える調光素子6と、車両の状態を検知する検知手段の検知結果に基づいて調光素子6を視認可能状態または視認不可状態に切り換える制御手段と、を備える。
【解決手段】車両用後方視認装置は、車両の乗員の後方死角を視認可能とする鏡体3に、後方死角の通常領域を視認するための一般鏡面部4と、一般鏡面部4よりも小さい曲率半径に形成された特定鏡面部5と、を設け、特定鏡面部5を介した後方視認を可能とする視認可能状態と特定鏡面部5を介した後方視認を不可とする視認不可状態のいずれかの状態に切り換える調光素子6と、車両の状態を検知する検知手段の検知結果に基づいて調光素子6を視認可能状態または視認不可状態に切り換える制御手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアミラーなどの車両用後方視認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドアミラーには、鏡面の一部領域の曲率半径を、他の領域の曲率半径よりも小さくすることによって、視野範囲を拡大し、使い勝手を向上させたものがある。例えば、鏡面の下部領域の曲率半径を上部領域の曲率半径よりも小さくすることによって、車両後退時に車両後端からリヤタイヤにかけての領域を視認可能にしたり、鏡面の車幅方向外側領域の曲率半径を内側領域の曲率半径よりも小さくすることによって、車両側方の視野範囲を広げ、死角を小さくできるようにしたドアミラーが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−251677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、鏡面の下部領域の曲率半径を上部領域の曲率半径よりも小さくした場合には、車両前進時にも鏡面の下部領域にリヤタイヤ周辺の路面が映り、映った像が流れるので、前進時にドアミラーを見るときには却って乗員に煩わしく感じられるという課題がある。
【0004】
なお、鏡面の曲率半径を部分的に変えない通常の鏡体を用い、且つ、鏡体をモータにより姿勢変更可能とし、前進時には鏡体を後方遠方に向け、後退時に鏡体を下方に回転させて、リヤタイヤ周辺を視認可能にしたドアミラーも考えられており、このドアミラーの場合には上記課題は生じない。しかしながら、このドアミラーの場合には、車両後退を検知してからモータが作動し、且つ、鏡体の姿勢変更完了までに時間を要するので、後退動作と同時にリヤタイヤ周辺を確認することができない。また、大出力のモータを用いて高速で鏡体の姿勢変更を行えば、瞬時にリヤタイヤ周辺を視認可能になるが、これでは消費電力が多くなり、重量も増大するなど、別の課題が生じる。
【0005】
また、鏡面の車幅方向外側領域の曲率半径を内側領域の曲率半径よりも小さくすることによって車両側方の視野範囲を広げた場合は、曲率半径の小さい車幅方向外側領域の鏡面において像の歪みが大きいため、自車両の側方に車両が存在しないときにドアミラーを見たときには、鏡面の車幅方向外側領域に周囲の景色が歪んで映り、その歪んだ像の流れが乗員の目に入って煩わしく感じるという課題がある。
【0006】
そこで、この発明は、視野範囲を広げつつ乗員に煩わしさを感じさせない車両用後方視認装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両用後方視認装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両の乗員の後方死角を視認可能とする鏡体(例えば、後述する実施例における鏡体3)に、後方死角の通常領域を視認するための一般鏡面部(例えば、後述する実施例における一般鏡面部4,24)と、該一般鏡面部よりも小さい曲率半径に形成された特定鏡面部(例えば、後述する実施例における特定鏡面部5,25)と、を設け、前記特定鏡面部を介した後方視認を可能とする視認可能状態と前記特定鏡面部を介した後方視認を不可とする視認不可状態のいずれかの状態に切り換える切り換え手段(例えば、後述する実施例における調光素子6,6L,6R,26,26L,26R)と、車両の状態を検知する検知手段(例えば、後述する実施例におけるギヤポジションセンサ11、ヘッドライトスイッチ12、スモールライトスイッチ13、方向指示器14L,14R、車速センサ15、BSDユニット16)の検知結果に基づいて前記切り換え手段を視認可能状態または視認不可状態に切り換える制御手段(例えば、後述する実施例における調光制御装置10)と、を備えることを特徴とする車両用後方視認装置である。
このように構成することにより、特定鏡面部を視認可能状態と視認不可状態のいずれかに選択することができるので、車両状態に応じて視認不可状態とすることで特定鏡面部の存在による煩わしさを解消することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記特定鏡面部を前記一般鏡面部の車幅方向外側に設け、前記検知手段は車両の側方に存在する物体を検知するものであり、前記制御手段は、前記検知手段が物体の存在を検知しないときには前記切り換え手段を視認不可状態に切り換え、前記検知手段が物体を検知したときには前記切り換え手段を視認可能状態に切り換えることを特徴とする。
このように構成することにより、車両の側方に物体が存在するときに特定鏡面部を視認可能状態にすることができ、車幅方向の視野範囲を拡大することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記検知手段は、車両の側方領域であって前記一般鏡面部の視認範囲である前記通常領域から外れた領域に存在する物体を検知するものであることを特徴とする。
このように構成することにより、通常領域から外れた死角に物体が存在するときに、特定鏡面部を視認可能状態にすることができ、車幅方向の視野範囲を拡大することができる。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記検知手段は、車両の後退動作、車輪の角度、方向指示器の操作の少なくともいずれか1つを検知するものを含むことを特徴とする。
このように構成することにより、車両の後退時、右左折時、あるいは車線変更等するときに、特定鏡面部を視認可能状態にすることができ、車幅方向の視野範囲を拡大することができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記特定鏡面部を前記一般鏡面部の車両上下方向の下側に設け、前記検知手段は、車両の後退動作、低速走行、方向指示器の操作の少なくともいずれか1つを検知するものであり、前記制御手段は、前記検知手段が検知しないときには前記切り換え手段を視認不可状態に切り換え、前記検知手段が検知したときには前記切り換え手段を視認可能状態に切り換えることを特徴とする。
このように構成することにより、車両の後退時、低速走行時、あるいは右左折時に、特定鏡面部を視認可能状態にすることができ、車両上下方向の視野範囲を拡大することができる。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記切り換え手段は、透明度が変更可能な調光素子(例えば、後述する実施例における調光素子6,6L,6R,26,26L,26R)により構成したことを特徴とする。
このように構成することにより、特定鏡面部の視認可能状態と視認不可状態の切り換えが容易に且つ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、特定鏡面部を視認可能状態と視認不可状態のいずれかに選択することができるので、車両状態に応じて視認不可状態とすることで、特定鏡面部の存在による煩わしさを解消することができ、鏡体の使い勝手が向上する。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、車両の側方に物体が存在するときに、特定鏡面部を視認可能状態にして車幅方向の視野範囲を拡大することができるので、鏡体を介して前記物体を確認することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、通常領域から外れた死角に物体が存在するときに、特定鏡面部を視認可能状態にして車幅方向の視野範囲を拡大することができるので、鏡体を介して前記物体を確認することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、車両の後退時、右左折時、あるいは車線変更等するときに、特定鏡面部を視認可能状態にして車幅方向の視野範囲を拡大することができるので、後退時や右左折時や車線変更時に周囲の状況を確認し易くなる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、車両の後退時、低速走行時、あるいは右左折時に、特定鏡面部を視認可能状態にして車両上下方向の視野範囲を拡大することができるので、後退時や低速走行時や右左折時に周囲の状況を確認し易くなる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、特定鏡面部の視認可能状態と視認不可状態の切り換えが容易に且つ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明に係る車両用後方視認装置の実施例を図1から図12の図面を参照して説明する。なお、以下に記載する各実施例における車両用後方視認装置は、車両のフロントドアに設けられたドアミラーに用いられる態様である。
<実施例1>
初めに、この発明に係る車両用後方視認装置の実施例1を図1から図5の図面を参照して説明する。
図3に示すように、車両Vの左右のフロントドア1L,1Rには、運転者が後方死角を視認するために左右のドアミラー2L,2Rがそれぞれ設置されている。図1、図2は、右ドアミラー2Rにおける鏡体3の正面図であり、鏡体3は視野範囲を拡大するため凸面鏡で構成されている。鏡体3は、車両上下方向の上側約2/3強の領域が一般鏡面部4とされ、一般鏡面部4よりも下側の領域(すなわち、車両上下方向の下側約1/3弱の領域)が特定鏡面部5とされている。なお、一般鏡面部4と特定鏡面部5の面積比率は一例であり、この比率に限定されるものではない。
【0020】
一般鏡面部4は、運転者が前進走行時に一般鏡面部4を介して後側方の死角を視認して、例えば後側方を走行する他車両の存在を確認するのに好適な曲率半径の凸曲面に形成されている。なお、この実施例1においては、一般鏡面部4を介して視認可能な死角が、「後方死角の通常領域」となる。
特定鏡面部5は、一般鏡面部4の曲率半径よりも小さい曲率半径の凸曲面に形成されており、運転者が特定鏡面部5を介して後方死角を視認したときに、自車両Vの車両後端からリヤタイヤ周辺にかけての特定領域を視認するのに好適な曲率半径の凸曲面に形成されている。
【0021】
また、この右ドアミラー2Rには、特定鏡面部5の表面上に、特定鏡面部5の全体を覆うように、調光素子(切り換え手段)6が設けられており、この調光素子6を制御することにより、特定鏡面部5を介した後方視認を可能とする視認可能状態(図1に示される状態)と、特定鏡面部5を介した後方視認を不可とする視認不可状態(図2に示される状態)とのいずれかに切り換えることができるように構成されている。なお、視認不可状態とは、調光素子6を完全に遮光状態にして特定鏡面部5による後方視認を全く不可能にする場合を含むことは勿論であるが、例えば調光素子6の光の透過率を低くして特定鏡面部5に映る像が運転者に煩わしくない程度に見え難くする場合を含む。
【0022】
調光素子6としては、液晶に印加する電圧を変えることにより液晶の色や光の透過率(透明度)を可変にする液晶シャッターや、印加電圧に応じて色(周波数透過性)や光の透過率(透明度)を変えることができる電気色素素子などを例示することができる。このようにすると、特定鏡面部5の視認可能状態と視認不可状態の切り換えが容易に且つ迅速に行うことができる。
【0023】
左ドアミラー2Lも右ドアミラー2Rと同様に構成されており、このドアミラー2L,2Rでは、調光素子6が視認可能状態にされているときには、運転者は、一般鏡面部4を介して後方死角の通常領域を視認することができるとともに、特定鏡面部5を介して自車両Vの車両後端からリヤタイヤ周辺にかけての特定領域を視認することができる。つまり、ドアミラー2L,2Rを介しての視野範囲を上下方向(この実施例1では下方向)に拡大することができる。したがって、車庫入れなど車両を後退走行させるときに調光素子6を視認可能状態にすると、運転者は特定鏡面部5を介して自車両Vの車両後端からリヤタイヤ周辺を視認することができるので、後退時の使い勝手が向上する。また、右左折時に対応する側のドアミラー2L,2Rの調光素子6を視認可能状態にすると、運転者は特定鏡面部5を介して自車両Vの車両後端からリヤタイヤ周辺を視認することができるので、右左折時にリヤタイヤの位置を確認しながら走行することができ、使い勝手が向上する。
【0024】
一方、調光素子6が視認不可状態にされているときには、運転者は、一般鏡面部4を介して後方死角の通常領域を視認することができるだけで、特定鏡面部5を介して後方死角を視認することはできない(換言すると、特定鏡面部5には何も映らない)。したがって、前進走行など通常の走行時に調光素子6を視認不可状態にすると、特定鏡面部5は鏡面として機能せず、何も映らないので、運転者が一般鏡面部4を介して後方死角の通常領域を視認する際に、特定鏡面部5が煩わしく感じられることがない。すなわち、特定鏡面部5の存在による煩わしさを解消することができる。
【0025】
次に、図4、図5を参照して、実施例1のドアミラー2L,2Rを備えた車両用後方視認装置100の制御例を説明する。図4に示すように、車両用後方視認装置100は、電子制御装置からなる調光制御装置(制御手段)10と、左ドアミラー2L用の調光素子(左ドアミラー用調光素子:切り換え手段)6Lと、右ドアミラー2R用の調光素子(右ドアミラー用調光素子:切り換え手段)6Rと、リヤアンダーミラー用調光素子7と、自車両の状態を検知する種々の検知手段を備えて構成されている。なお、左ドアミラー用調光素子6L、および、右ドアミラー用調光素子6Rは、前述した調光素子6に対応する。
【0026】
前記検知手段は、自車両のギヤポジションを検出するギヤポジションセンサ11、ヘッドライトをON/OFFするヘッドライトスイッチ12、スモールライトをON/OFFするスモールライトスイッチ13、方向指示器14L,14R、自車両の車速を検出する車速センサ15などからなり、調光制御装置10には、ギヤポジションセンサ11から出力されるバックギヤ信号、ヘッドライトスイッチ12から出力されるライトON信号、スモールライトスイッチ13から出力されるライトON信号、方向指示器14L、14Rから出力される方向指示器信号、車速センサ15から出力される車速信号などが入力される。
【0027】
なお、リヤアンダーミラーは、例えば自車両のリヤウインドガラスの車内側上部に配置されるハイマウントストップランプに設置されたミラーからなり、運転者はリヤアンダーミラー7を介し、リヤウインドガラスを透して自車両の後部下部を視認することができるようにしたものである。この実施例の車両では、このリヤアンダーミラーの表面にもリヤアンダーミラー用調光素子7を設け、左右ドアミラー用調光素子6L,6Rと同様に、リヤアンダーミラー用調光素子7を視認可能状態と視認不可状態に切り換えるようにしている。
【0028】
次に、この実施例1における調光制御について、図5のフローチャートに従って説明する。
図5のフローチャートに示す調光制御ルーチンは、調光制御装置10によって繰り返し実行される。
まず、ステップS101において、バックギヤ信号の入力の有無に基づいて、ギヤポジションがバックギヤであるか否かを判定する。
ステップS101における判定結果が「YES」である場合には、ステップS102に進み、左右ドアミラー用調光素子6L,6Rとリヤアンダーミラー用調光素子7をONとし、これら全てを視認可能状態とする。
【0029】
次に、ステップS103に進み、タイマーをONとして、視認可能状態を所定時間(例えば、2秒間)保持し、唐突に視認不可状態に変化しないようにして、リターンする。これにより、自車両を後退させている間、左右のドアミラー2L,2Rの特定鏡面部5で自車両の車両後端からリヤタイヤ周辺を視認し、且つ、リヤアンダーミラーで自車両の後部下部を視認することができる。
【0030】
一方、ステップS101における判定結果が「NO」である場合(すなわち、前進時や停止時)には、ステップS104に進み、ヘッドライトON信号およびスモールライトON信号の入力の有無に基づいて、ヘッドライトあるいはスモールライトがON(点灯)であるか否かを判定する。
ステップS104における判定結果が「YES」である場合には、ステップS102に進む。すなわち、ヘッドライトがONである場合は夜間やトンネル内であると判断し、また、スモールライトがONである場合は朝方あるいは夕方であると判断して、左右ドアミラー用調光素子6L,6Rとリヤアンダーミラー用調光素子7を視認可能状態とし、左右のドアミラー2L,2Rの特定鏡面部5で自車両の車両後端からリヤタイヤ周辺を視認可能にして、自車両の周囲状況を確認し易くする。
【0031】
ステップS104における判定結果が「NO」である場合には、ステップS105に進み、車速センサ15から入力した車速信号に基づいて、車速が所定速度(例えば10km/h)以下であるか否かを判定する。
ステップS105における判定結果が「YES」である場合には、ステップS102に進む。すなわち、車速が10km/h以下の低速である場合には、左右ドアミラー用調光素子6L,6Rとリヤアンダーミラー用調光素子7を視認可能状態とし、左右のドアミラー2L,2Rの特定鏡面部5で自車両の車両後端からリヤタイヤ周辺を視認可能にして、自車両の周囲状況を確認し易くする。なお、車速が低速であれば、特定鏡面部5にリヤタイヤ周辺の路面が映り、映った像が流れても、像が流れる速度も遅いので、一般鏡面部4を介して後方死角の通常領域を視認している運転者が、特定鏡面部5に映る流れる像を煩わしく感じることはない。
【0032】
ステップS105における判定結果が「NO」である場合には、ステップS106に進み、右方向指示器14Rのライトオン信号の入力の有無に基づいて、右方向指示器14RがONであるか否かを判定する。
ステップS106における判定結果が「YES」である場合には、ステップS107に進み、右ドアミラー用調光素子6RをONにして視認可能状態とするとともに、左ドアミラー用調光素子6Lおよびリヤアンダーミラー用調光素子7をOFFにして視認不可状態として、ステップS103に進む。これにより、自車両を右折させている間、右ドアミラー2Rの特定鏡面部5で自車両右側の車両後端から右リヤタイヤ周辺を視認しながら、走行することが可能となる。
【0033】
ステップS106における判定結果が「NO」である場合には、ステップS108に進み、左方向指示器14Lのライトオン信号の入力の有無に基づいて、左方向指示器14LがONであるか否かを判定する。
ステップS108における判定結果が「YES」である場合には、ステップS109に進み、左ドアミラー用調光素子6LをONにして視認可能状態とするとともに、右ドアミラー用調光素子6Rおよびリヤアンダーミラー用調光素子7をOFFにして視認不可状態として、ステップS103に進む。これにより、自車両を左折させている間、左ドアミラー2Lの特定鏡面部5で自車両左側の車両後端から左リヤタイヤ周辺を視認しながら、走行することが可能となる。
【0034】
ステップS108における判定結果が「NO」である場合には、ステップS110に進み、左右ドアミラー用調光素子6L,6Rおよびリヤアンダーミラー用調光素子7をOFFにして視認不可状態として、リターンする。
【0035】
なお、図5に示すフローチャートの調光制御は一例を示したものであり、他の車両状態を検知する検知手段の検知結果に基づいて左右ドアミラー用調光素子6L,6RのON/OFFを制御することも可能である。
例えば、車両に設けた日照センサの検出結果に基づいて、日照量が所定値以下である場合には、夜間あるいはトンネル内を走行中と判断して、左右ドアミラー用調光素子6L,6RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。
【0036】
また、車両に設けた舵角センサの検出結果に基づいて、舵角(車輪の角度)が所定角度(例えば、±45度)以上である場合には、車庫入れや右左折中であると判断して、ドアミラー用調光素子6L,6RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。
さらに、車両に設けたヨーレートセンサの検出結果に基づいて、ヨーレートが所定値以上である場合には、車庫入れや右左折中であると判断して、ドアミラー用調光素子6L,6RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。
【0037】
<実施例2>
次に、この発明に係る車両用後方視認装置の実施例2を、図3を援用するとともに、図6から図12の図面を参照して説明する。
実施例1における車両用後方視認装置の左右ドアミラー2L,2Rでは、鏡面3の上側に一般鏡面部4が形成され、下側に特定鏡面部5が形成されていたが、実施例2の車両用後方視認装置におけるドアミラー2L,2Rでは、鏡面3が車幅方向内側と外側で曲率半径を異にしており、内側に一般鏡面部が形成され、外側に特定鏡面部が形成されている。以下、これについて詳述する。
【0038】
図6、図8は実施例2の車両用後方視認装置における左ドアミラー2Lにおける鏡体3の正面図であり、鏡体3は視野範囲を拡大するため凸面鏡で構成されている。鏡体3は、車幅方向内側(車体に近い側)約2/3強の領域が一般鏡面部24とされ、一般鏡面部24よりも車幅方向外側(車体から遠い側)の領域(すなわち、車幅方向外側約1/3弱の領域)が特定鏡面部25とされている。なお、一般鏡面部24と特定鏡面部25の面積比率は一例であり、この比率に限定されるものではない。
【0039】
一般鏡面部24は、運転者が一般鏡面部24を介して後側方遠方の死角(図7における視野角α)を視認して、例えば後側方を走行する他車両の存在を確認するのに好適な曲率半径の凸曲面に形成されている。なお、この実施例2においては、一般鏡面部24を介して視認可能な領域、すなわち一般鏡面部24による視認範囲(図7における視野角α、例えばα=13度)が、「後方死角の通常領域」となる。
【0040】
特定鏡面部25は、一般鏡面部24の曲率半径よりも小さい曲率半径の凸曲面に形成されており、運転者が鏡体3の一般鏡面部24および特定鏡面部25の両方を介して後方死角を視認したときに、図9に示すように、一般鏡面部24だけによる視野角αよりも車幅方向外側へ視野範囲が拡大し、自車両Vにより近い後側方領域の死角も視野範囲に入いる視野角(図9における視野角β、例えばβ=33度)となるように、特定鏡面部25の凸曲面の曲率半径が設定されている。これにより、例えば図9に示すように、自車両Vに極めて近い後側方を走行する他車両VTの存在を確認することができる。なお、図7および図9において、視野角γは、車両正面を向いて運転している自車両Vの運転者の視野範囲のうち左フロントドア1Lのドアウィンドガラス越しに見える視野角を示している。
【0041】
また、特定鏡面部25の表面上には、特定鏡面部25の全体を覆うように、調光素子(切り換え手段)26が設けられており、この調光素子26を制御することにより、特定鏡面部25を介した後方視認を可能とする視認可能状態(図8に示される状態)と、特定鏡面部25を介した後方視認を不可とする視認不可状態(図6に示される状態)とのいずれかに切り換えることができるように構成されている。なお、視認不可状態とは、実施例1の場合と同様、調光素子26を完全に遮光状態にして特定鏡面部25による後方視認を全く不可能にする場合を含むことは勿論であるが、例えば調光素子26の光の透過率を低くして特定鏡面部25に映る像が運転者に煩わしくない程度に見え難くする場合を含む。調光素子26としては、実施例1の場合と同様に、液晶シャッターや電気色素素子などを例示することができ、これにより、特定鏡面部5の視認可能状態と視認不可状態の切り換えが容易に且つ迅速に行うことができる。
【0042】
右ドアミラー2Rも右ドアミラー2Lと同様に構成されており、このドアミラー2L,2Rでは、調光素子26が視認可能状態にされているときには、運転者は、一般鏡面部24および特定鏡面部25を介して、一般鏡面部24だけによる視野角αよりも車幅方向外側へ視野範囲が拡大された視野角β内の死角を視認することができる。したがって、調光素子26を視認可能状態にすると、図8に示すように、運転者は自車両Vにより近い後側方領域の死角に存在する他車両VTを確認することができ、後方視認性が向上する。
【0043】
一方、調光素子26が視認不可状態にされているときには、運転者は、一般鏡面部24を介して後方死角の通常領域(視野角α)を視認することができるだけで、特定鏡面部25を介して後方死角を視認することはできない(換言すると、特定鏡面部25には図6に示すように何も映らない)。したがって、走行時に調光素子26を視認不可状態にすると、特定鏡面部25は鏡面として機能しないので、運転者が一般鏡面部24を介して後方死角を視認する際に、特定鏡面部25が煩わしく感じられることがない。詳述すると、特定鏡面部25は曲率半径が小さいので、特定鏡面部25に映る像の歪みが大きく、自車両の側方に車両が存在しないときに特定鏡面部25を見たときには、特定鏡面部25に周囲の景色が歪んで映り、その歪んだ像が流れていくので、運転者には煩わしく感じられる場合があるが、実施例2のドアミラー2L,2Rでは、調光素子26を視認不可状態にしたときには特定鏡面部25が鏡面として機能しないので、運転者が特定鏡面部25を煩わしく感じることがない。すなわち、特定鏡面部25の存在による煩わしさを解消することができる。
【0044】
次に、図10から図12を参照して、実施例2のドアミラー2L,2Rを備えた車両用後方視認装置100の制御例を説明する。図10に示すように、車両用後方視認装置100は、電子制御装置からなる調光制御装置10と、左ドアミラー2L用の調光素子(左ドアミラー用調光素子:切り換え手段)26Lと、右ドアミラー2R用の調光素子(右ドアミラー用調光素子:切り換え手段)26Rと、自車両の状態を検知する種々の検知手段を備えて構成されている。なお、左ドアミラー用調光素子26L、および、右ドアミラー用調光素子26Rは、前述した調光素子26に対応する。
前記検知手段は、ヘッドライトをON/OFFするヘッドライトスイッチ12、スモールライトをON/OFFするスモールライトスイッチ13、方向指示器14L,14R、自車両の車速を検出する車速センサ15、BSDユニット(ブラインドスポット警報装置)16などからなる。
【0045】
BSDユニット16は、自車両に搭載された左右のレーダー17L、17R(あるいは左右のカメラ)により、自車両の運転者の直接視界(図7、図9における視野角γ)とドアミラー2L,2Rの鏡体3の一般鏡面部24による視認範囲(図7、図9における視野角α)との間の死角(以下、側方死角と称す)に車両が存在するか否かを検知し、この側方死角に車両の存在を検知した場合に、光や音などの警報手段(図示略)により運転者に報知するように構成されている。
【0046】
調光制御装置10には、ヘッドライトスイッチ12から出力されるライトON信号、スモールライトスイッチ13から出力されるライトON信号、方向指示器14L、14Rから出力される方向指示器信号、車速センサ15から出力される車速信号、BSDユニット16から出力される死角車両情報などが入力される。BSDユニット16から入力される死角車両情報とは、自車両の左側の側方死角に車両が存在する場合には「左死角車両あり」の情報、自車両の右側の側方死角に車両が存在する場合には「右死角車両あり」の情報である。
【0047】
次に、この実施例2における調光制御について、図11および図12のフローチャートに従って説明する。
図11のフローチャートに示す調光制御ルーチンは、都市部のように走行車両が多い地域(あるいは路線)やビルなどが乱立していて周辺視界が煩雑な地域を走行する都市走行モードの調光制御を示しており、図12のフローチャートに示す調光制御ルーチンは、郊外のように走行車両が少ない地域(あるいは路線)や建物などが少なくて周辺視界が煩雑でない地域を走行する郊外走行モードの調光制御を示している。
【0048】
都市走行モードの調光制御と郊外走行モードの調光制御のいずれを選択するかは、乗員の切り換え操作により手動で行ってもよいし、あるいは、車両に搭載されているナビゲーション装置の地図情報や、インターネットなどを介して取得した交通情報等に基づいて調光制御装置10が判定し自動で選択するようにしてもよい。
【0049】
初めに、都市走行モードの調光制御を図11のフローチャートに従って説明する。
まず、ステップS201において、ヘッドライトON信号およびスモールライトON信号の入力の有無に基づいて、ヘッドライトあるいはスモールライトがON(点灯)であるか否かを判定する。
ステップS201における判定結果が「YES」である場合には、ステップS202に進み、左右ドアミラー用調光素子26L,26RをONとし、これらを視認可能状態とする。
【0050】
次に、ステップS203に進み、タイマーをONとして、視認可能状態を所定時間(例えば、2秒間)保持し、唐突に視認不可状態に変化しないようにして、リターンする。
つまり、ヘッドライトがONである場合は夜間やトンネル内であると判断し、また、スモールライトがONである場合は朝方あるいは夕方であると判断して、これらのときには特定鏡面部25に像が映っても運転者には煩わしく感じられないので、特定鏡面部5を介した後方視認を可能にし、運転者に積極的に自車両の後方を広角に視認させる。
【0051】
一方、ステップS201における判定結果が「NO」である場合には、ステップS204に進み、車速センサ15から入力した車速信号に基づいて、車速が所定速度(例えば15km/h)以下であるか否かを判定する。
ステップS204における判定結果が「YES」である場合には、ステップS202に進む。すなわち、車速が15km/h以下の低速である場合には、特定鏡面部25に建物や車両等の像が映っても運転者には煩わしく感じられないので、特定鏡面部5を介した後方視認を可能にし、運転者に積極的に自車両の後方を広角に視認させる。
【0052】
ステップS204における判定結果が「NO」である場合には、ステップS205に進み、BSDユニット16から死角車両情報を取得する。
次に、ステップS206に進み、BSDユニット16から取得した死角車両情報が「右死角車両あり」であり、且つ、右方向指示器14Rのライトオン信号を入力したか(すなわち右方向指示器14RがONか)を判定する。
【0053】
ステップS206における判定結果が「YES」である場合には、ステップS207に進み、右ドアミラー用調光素子26RをONにして視認可能状態とするとともに、左ドアミラー用調光素子26LをOFFにして視認不可状態として、ステップS203に進む。つまり、この場合には、自車両の右側の側方死角に他車両が存在し、且つ、自車両が右側車線に車線変更しようとしているので、運転者に右ドアミラー2Rの一般鏡面部24と特定鏡面部25を介して自車両の右後側方の死角を広角に視認し易くし、BSDユニット16により検出した車両を含む周囲の状況を確認し易くする。なお、右側車線への車線変更時には、左ドアミラー2Lにより左後側方を広角で視認するには及ばないので、左ドアミラー用調光素子26Lは視認不可状態とする。
【0054】
ステップS206における判定結果が「NO」である場合には、ステップS208に進み、BSDユニット16から取得した死角車両情報が「左死角車両あり」であり、且つ、左方向指示器14Lのライトオン信号を入力したか(すなわち左方向指示器14LがONか)を判定する。
【0055】
ステップS208における判定結果が「YES」である場合には、ステップS209に進み、左ドアミラー用調光素子26LをONにして視認可能状態とするとともに、右ドアミラー用調光素子26RをOFFにして視認不可状態として、ステップS203に進む。つまり、この場合には、自車両の左側の側方死角に他車両が存在し、且つ、自車両が左側車線に車線変更しようとしているので、運転者に左ドアミラー2Lの一般鏡面部24と特定鏡面部25を介して自車両の左後側方の死角を広角に視認し易くし、BSDユニット16により検出した車両を含む周囲の状況を確認し易くする。なお、左側車線への車線変更時には、右ドアミラー2Rにより右後側方を広角で視認するには及ばないので、右ドアミラー用調光素子26Rは視認不可状態とする。
【0056】
ステップS208における判定結果が「NO」である場合には、ステップS210に進み、左右ドアミラー用調光素子26L,26RをOFFにして視認不可状態として、リターンする。つまり、この場合には、自車両の左側の側方死角にも右側の側方死角にも他車両が存在しないし、且つ、自車両は車線変更しようとしていないので、左右のドアミラー2L,2Rの特定鏡面部25を鏡面として機能させないようにすることで、運転者に特定鏡面部25に像が見えるときの煩わしさをなくすることができる。
【0057】
次に、郊外走行モードの調光制御を図12のフローチャートに従って説明する。
まず、ステップS301において、ヘッドライトON信号およびスモールライトON信号の入力の有無に基づいて、ヘッドライトあるいはスモールライトがON(点灯)であるか否かを判定する。
ステップS301における判定結果が「YES」である場合には、ステップS302に進み、左右ドアミラー用調光素子26L,26RをONとし、これらを視認可能状態とする。
【0058】
次に、ステップS303に進み、タイマーをONとして、視認可能状態を所定時間(例えば、2秒間)保持し、唐突に視認不可状態に変化しないようにして、リターンする。
つまり、ヘッドライトがONである場合は夜間やトンネル内であると判断し、また、スモールライトがONである場合は朝方あるいは夕方であると判断して、これらのときには特定鏡面部25に像が映っても運転者には煩わしく感じられないので、特定鏡面部5を介した後方視認を可能にし、運転者に積極的に自車両の後方を広角に視認させる。
【0059】
一方、ステップS301における判定結果が「NO」である場合には、ステップS304に進み、車速センサ15から入力した車速信号に基づいて、車速が所定速度(例えば80km/h)以下であるか否かを判定する。
ステップS304における判定結果が「YES」である場合には、ステップS302に進む。すなわち、郊外走行モードでは特定鏡面部25に映り込む建物や車両が少ないので、車速が80km/h以下の中低速のときには、特定鏡面部25に像が映っても運転者には煩わしく感じられないので、特定鏡面部25を介した後方視認を可能にし、自車両の後方を広角に視認可能にする。
【0060】
ステップS304における判定結果が「NO」(車速が80km/h以上の高速)である場合には、ステップS305に進み、BSDユニット16から死角車両情報を取得する。
次に、ステップS306に進み、BSDユニット16から取得した死角車両情報が「右死角車両あり」か否かを判定する。
【0061】
ステップS306における判定結果が「YES」である場合には、ステップS307に進んで、右ドアミラー用調光素子26RをONにして視認可能状態とし、さらにステップS309に進む。つまり、この場合には、自車両の右側の側方死角に他車両が存在するので、運転者に右ドアミラー2Rの一般鏡面部24と特定鏡面部25を介して自車両の右後側方の死角を広角に視認し易くし、BSDユニット16により検出した車両を含む周囲の状況を確認し易くする。
【0062】
ステップS306における判定結果が「NO」である場合には、ステップS308に進んで、右ドアミラー用調光素子26RをOFFにして視認不可状態とし、さらにステップS309に進む。つまり、この場合には、自車両の右側の側方死角に他車両が存在しないので、右ドアミラー2Rの特定鏡面部25を鏡面として機能させないようにすることで、運転者に右ドアミラー2Rの特定鏡面部25に像が見えるときの煩わしさをなくすることができる。
【0063】
そして、ステップS309において、BSDユニット16から取得した死角車両情報が「左死角車両あり」か否かを判定する。
ステップS309における判定結果が「YES」である場合には、ステップS310に進んで、左ドアミラー用調光素子26LをONにして視認可能状態とし、さらにステップS303に進む。つまり、この場合には、自車両の左側の側方死角に他車両が存在するので、運転者に左ドアミラー2Lの一般鏡面部24と特定鏡面部25を介して自車両の左後側方の死角を広角に視認し易くし、BSDユニット16により検出した車両を含む周囲の状況を確認し易くする。
【0064】
ステップS309における判定結果が「NO」である場合には、ステップS311に進んで、左ドアミラー用調光素子26LをOFFにして視認不可状態とし、さらにステップS303に進む。つまり、この場合には、自車両の左側の側方死角に他車両が存在しないので、左ドアミラー2Lの特定鏡面部25を鏡面として機能させないようにすることで、運転者に左ドアミラー2Rの特定鏡面部25に像が見えるときの煩わしさをなくすることができる。
【0065】
なお、図11、図12に示すフローチャートの調光制御は一例を示したものであり、実施例1の場合と同様に、他の車両状態を検知する検知手段の検知結果に基づいて左右ドアミラー用調光素子26L,26RのON/OFFを制御することも可能である。
【0066】
例えば、車両に設けた日照センサの検出結果に基づいて、日照量が所定値以下であると判定したときには、夜間あるいはトンネル内を走行中と判断して、左右ドアミラー用調光素子26L,26RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。
【0067】
また、実施例1のときと同様に、ギヤポジションセンサからバックギヤ信号が入力された場合に、自車両が後退動作していると判断して、左右ドアミラー用調光素子26L,26RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。このようにすると、後退時に、左右ドアミラー2L,2Rを介しての車幅方向の視野範囲を拡大することができ、後退操作がし易くなる。
【0068】
また、車両に設けた舵角センサの検出結果に基づいて、舵角(車輪の角度)が所定角度以上である場合には、自車両が右左折中あるいは車線変更中であると判断して、対応する側のドアミラー用調光素子26Lあるいは26RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。このようにすると、右左折時および車線変更時に、左右ドアミラー2L,2Rを介しての車幅方向の視野範囲を拡大することができる。
【0069】
さらに、車両に設けたヨーレートセンサの検出結果に基づいて、ヨーレートが所定値以上である場合には、自車両が右左折中あるいは車線変更中であると判断して、対応する側のドアミラー用調光素子26Lあるいは26RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。このようにすると、右左折時および車線変更時に、左右ドアミラー2L,2Rを介しての車幅方向の視野範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明に係る車両用後方視認装置の実施例1における右ドアミラーの鏡体の正面図であり、特定鏡面部を視認可能状態としたときの図である。
【図2】実施例1における右ドアミラーの鏡体の正面図であり、特定鏡面部を視認不可状態としたときの図である。
【図3】実施例1の車両用後方視認装置を備えた車両を駐車区域に駐車したときの平面図である。
【図4】実施例1の車両用後方視認装置の構成図である。
【図5】実施例1の車両用後方視認装置の調光制御を示すフローチャートである。
【図6】この発明に係る車両用後方視認装置の実施例2における左ドアミラーの鏡体の正面図であり、特定鏡面部を視認不可状態としたときの図である。
【図7】実施例2の左ドアミラーにおいて特定鏡面部を視認不可状態としたときの視野角を示す平面図である。
【図8】実施例2における左ドアミラーの鏡体の正面図であり、特定鏡面部を視認可能状態としたときの図である。
【図9】実施例2の左ドアミラーにおいて特定鏡面部を視認可能状態としたときの視野角を示す平面図である。
【図10】実施例2の車両用後方視認装置の構成図である。
【図11】実施例2の車両用後方視認装置において都市走行モードでの調光制御を示すフローチャートである。
【図12】実施例2の車両用後方視認装置において郊外走行モードでの調光制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
2L,2R ドアミラー
3 鏡体
4,24 一般鏡面部
5,25 特定鏡面部
6,6L,6R,26,26L,26R 調光素子(切り換え手段)
10 調光制御装置(制御手段)
11 ギヤポジションセンサ(検知手段)
12 ヘッドライトスイッチ(検知手段)
13 スモールライトスイッチ(検知手段)
14 方向指示器(検知手段)
15 車速センサ(検知手段)
16 BSDユニット(検知手段)
100 車両用後方視認装置
V 車両
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアミラーなどの車両用後方視認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドアミラーには、鏡面の一部領域の曲率半径を、他の領域の曲率半径よりも小さくすることによって、視野範囲を拡大し、使い勝手を向上させたものがある。例えば、鏡面の下部領域の曲率半径を上部領域の曲率半径よりも小さくすることによって、車両後退時に車両後端からリヤタイヤにかけての領域を視認可能にしたり、鏡面の車幅方向外側領域の曲率半径を内側領域の曲率半径よりも小さくすることによって、車両側方の視野範囲を広げ、死角を小さくできるようにしたドアミラーが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−251677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、鏡面の下部領域の曲率半径を上部領域の曲率半径よりも小さくした場合には、車両前進時にも鏡面の下部領域にリヤタイヤ周辺の路面が映り、映った像が流れるので、前進時にドアミラーを見るときには却って乗員に煩わしく感じられるという課題がある。
【0004】
なお、鏡面の曲率半径を部分的に変えない通常の鏡体を用い、且つ、鏡体をモータにより姿勢変更可能とし、前進時には鏡体を後方遠方に向け、後退時に鏡体を下方に回転させて、リヤタイヤ周辺を視認可能にしたドアミラーも考えられており、このドアミラーの場合には上記課題は生じない。しかしながら、このドアミラーの場合には、車両後退を検知してからモータが作動し、且つ、鏡体の姿勢変更完了までに時間を要するので、後退動作と同時にリヤタイヤ周辺を確認することができない。また、大出力のモータを用いて高速で鏡体の姿勢変更を行えば、瞬時にリヤタイヤ周辺を視認可能になるが、これでは消費電力が多くなり、重量も増大するなど、別の課題が生じる。
【0005】
また、鏡面の車幅方向外側領域の曲率半径を内側領域の曲率半径よりも小さくすることによって車両側方の視野範囲を広げた場合は、曲率半径の小さい車幅方向外側領域の鏡面において像の歪みが大きいため、自車両の側方に車両が存在しないときにドアミラーを見たときには、鏡面の車幅方向外側領域に周囲の景色が歪んで映り、その歪んだ像の流れが乗員の目に入って煩わしく感じるという課題がある。
【0006】
そこで、この発明は、視野範囲を広げつつ乗員に煩わしさを感じさせない車両用後方視認装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両用後方視認装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両の乗員の後方死角を視認可能とする鏡体(例えば、後述する実施例における鏡体3)に、後方死角の通常領域を視認するための一般鏡面部(例えば、後述する実施例における一般鏡面部4,24)と、該一般鏡面部よりも小さい曲率半径に形成された特定鏡面部(例えば、後述する実施例における特定鏡面部5,25)と、を設け、前記特定鏡面部を介した後方視認を可能とする視認可能状態と前記特定鏡面部を介した後方視認を不可とする視認不可状態のいずれかの状態に切り換える切り換え手段(例えば、後述する実施例における調光素子6,6L,6R,26,26L,26R)と、車両の状態を検知する検知手段(例えば、後述する実施例におけるギヤポジションセンサ11、ヘッドライトスイッチ12、スモールライトスイッチ13、方向指示器14L,14R、車速センサ15、BSDユニット16)の検知結果に基づいて前記切り換え手段を視認可能状態または視認不可状態に切り換える制御手段(例えば、後述する実施例における調光制御装置10)と、を備えることを特徴とする車両用後方視認装置である。
このように構成することにより、特定鏡面部を視認可能状態と視認不可状態のいずれかに選択することができるので、車両状態に応じて視認不可状態とすることで特定鏡面部の存在による煩わしさを解消することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記特定鏡面部を前記一般鏡面部の車幅方向外側に設け、前記検知手段は車両の側方に存在する物体を検知するものであり、前記制御手段は、前記検知手段が物体の存在を検知しないときには前記切り換え手段を視認不可状態に切り換え、前記検知手段が物体を検知したときには前記切り換え手段を視認可能状態に切り換えることを特徴とする。
このように構成することにより、車両の側方に物体が存在するときに特定鏡面部を視認可能状態にすることができ、車幅方向の視野範囲を拡大することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記検知手段は、車両の側方領域であって前記一般鏡面部の視認範囲である前記通常領域から外れた領域に存在する物体を検知するものであることを特徴とする。
このように構成することにより、通常領域から外れた死角に物体が存在するときに、特定鏡面部を視認可能状態にすることができ、車幅方向の視野範囲を拡大することができる。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記検知手段は、車両の後退動作、車輪の角度、方向指示器の操作の少なくともいずれか1つを検知するものを含むことを特徴とする。
このように構成することにより、車両の後退時、右左折時、あるいは車線変更等するときに、特定鏡面部を視認可能状態にすることができ、車幅方向の視野範囲を拡大することができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記特定鏡面部を前記一般鏡面部の車両上下方向の下側に設け、前記検知手段は、車両の後退動作、低速走行、方向指示器の操作の少なくともいずれか1つを検知するものであり、前記制御手段は、前記検知手段が検知しないときには前記切り換え手段を視認不可状態に切り換え、前記検知手段が検知したときには前記切り換え手段を視認可能状態に切り換えることを特徴とする。
このように構成することにより、車両の後退時、低速走行時、あるいは右左折時に、特定鏡面部を視認可能状態にすることができ、車両上下方向の視野範囲を拡大することができる。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記切り換え手段は、透明度が変更可能な調光素子(例えば、後述する実施例における調光素子6,6L,6R,26,26L,26R)により構成したことを特徴とする。
このように構成することにより、特定鏡面部の視認可能状態と視認不可状態の切り換えが容易に且つ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、特定鏡面部を視認可能状態と視認不可状態のいずれかに選択することができるので、車両状態に応じて視認不可状態とすることで、特定鏡面部の存在による煩わしさを解消することができ、鏡体の使い勝手が向上する。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、車両の側方に物体が存在するときに、特定鏡面部を視認可能状態にして車幅方向の視野範囲を拡大することができるので、鏡体を介して前記物体を確認することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、通常領域から外れた死角に物体が存在するときに、特定鏡面部を視認可能状態にして車幅方向の視野範囲を拡大することができるので、鏡体を介して前記物体を確認することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、車両の後退時、右左折時、あるいは車線変更等するときに、特定鏡面部を視認可能状態にして車幅方向の視野範囲を拡大することができるので、後退時や右左折時や車線変更時に周囲の状況を確認し易くなる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、車両の後退時、低速走行時、あるいは右左折時に、特定鏡面部を視認可能状態にして車両上下方向の視野範囲を拡大することができるので、後退時や低速走行時や右左折時に周囲の状況を確認し易くなる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、特定鏡面部の視認可能状態と視認不可状態の切り換えが容易に且つ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明に係る車両用後方視認装置の実施例を図1から図12の図面を参照して説明する。なお、以下に記載する各実施例における車両用後方視認装置は、車両のフロントドアに設けられたドアミラーに用いられる態様である。
<実施例1>
初めに、この発明に係る車両用後方視認装置の実施例1を図1から図5の図面を参照して説明する。
図3に示すように、車両Vの左右のフロントドア1L,1Rには、運転者が後方死角を視認するために左右のドアミラー2L,2Rがそれぞれ設置されている。図1、図2は、右ドアミラー2Rにおける鏡体3の正面図であり、鏡体3は視野範囲を拡大するため凸面鏡で構成されている。鏡体3は、車両上下方向の上側約2/3強の領域が一般鏡面部4とされ、一般鏡面部4よりも下側の領域(すなわち、車両上下方向の下側約1/3弱の領域)が特定鏡面部5とされている。なお、一般鏡面部4と特定鏡面部5の面積比率は一例であり、この比率に限定されるものではない。
【0020】
一般鏡面部4は、運転者が前進走行時に一般鏡面部4を介して後側方の死角を視認して、例えば後側方を走行する他車両の存在を確認するのに好適な曲率半径の凸曲面に形成されている。なお、この実施例1においては、一般鏡面部4を介して視認可能な死角が、「後方死角の通常領域」となる。
特定鏡面部5は、一般鏡面部4の曲率半径よりも小さい曲率半径の凸曲面に形成されており、運転者が特定鏡面部5を介して後方死角を視認したときに、自車両Vの車両後端からリヤタイヤ周辺にかけての特定領域を視認するのに好適な曲率半径の凸曲面に形成されている。
【0021】
また、この右ドアミラー2Rには、特定鏡面部5の表面上に、特定鏡面部5の全体を覆うように、調光素子(切り換え手段)6が設けられており、この調光素子6を制御することにより、特定鏡面部5を介した後方視認を可能とする視認可能状態(図1に示される状態)と、特定鏡面部5を介した後方視認を不可とする視認不可状態(図2に示される状態)とのいずれかに切り換えることができるように構成されている。なお、視認不可状態とは、調光素子6を完全に遮光状態にして特定鏡面部5による後方視認を全く不可能にする場合を含むことは勿論であるが、例えば調光素子6の光の透過率を低くして特定鏡面部5に映る像が運転者に煩わしくない程度に見え難くする場合を含む。
【0022】
調光素子6としては、液晶に印加する電圧を変えることにより液晶の色や光の透過率(透明度)を可変にする液晶シャッターや、印加電圧に応じて色(周波数透過性)や光の透過率(透明度)を変えることができる電気色素素子などを例示することができる。このようにすると、特定鏡面部5の視認可能状態と視認不可状態の切り換えが容易に且つ迅速に行うことができる。
【0023】
左ドアミラー2Lも右ドアミラー2Rと同様に構成されており、このドアミラー2L,2Rでは、調光素子6が視認可能状態にされているときには、運転者は、一般鏡面部4を介して後方死角の通常領域を視認することができるとともに、特定鏡面部5を介して自車両Vの車両後端からリヤタイヤ周辺にかけての特定領域を視認することができる。つまり、ドアミラー2L,2Rを介しての視野範囲を上下方向(この実施例1では下方向)に拡大することができる。したがって、車庫入れなど車両を後退走行させるときに調光素子6を視認可能状態にすると、運転者は特定鏡面部5を介して自車両Vの車両後端からリヤタイヤ周辺を視認することができるので、後退時の使い勝手が向上する。また、右左折時に対応する側のドアミラー2L,2Rの調光素子6を視認可能状態にすると、運転者は特定鏡面部5を介して自車両Vの車両後端からリヤタイヤ周辺を視認することができるので、右左折時にリヤタイヤの位置を確認しながら走行することができ、使い勝手が向上する。
【0024】
一方、調光素子6が視認不可状態にされているときには、運転者は、一般鏡面部4を介して後方死角の通常領域を視認することができるだけで、特定鏡面部5を介して後方死角を視認することはできない(換言すると、特定鏡面部5には何も映らない)。したがって、前進走行など通常の走行時に調光素子6を視認不可状態にすると、特定鏡面部5は鏡面として機能せず、何も映らないので、運転者が一般鏡面部4を介して後方死角の通常領域を視認する際に、特定鏡面部5が煩わしく感じられることがない。すなわち、特定鏡面部5の存在による煩わしさを解消することができる。
【0025】
次に、図4、図5を参照して、実施例1のドアミラー2L,2Rを備えた車両用後方視認装置100の制御例を説明する。図4に示すように、車両用後方視認装置100は、電子制御装置からなる調光制御装置(制御手段)10と、左ドアミラー2L用の調光素子(左ドアミラー用調光素子:切り換え手段)6Lと、右ドアミラー2R用の調光素子(右ドアミラー用調光素子:切り換え手段)6Rと、リヤアンダーミラー用調光素子7と、自車両の状態を検知する種々の検知手段を備えて構成されている。なお、左ドアミラー用調光素子6L、および、右ドアミラー用調光素子6Rは、前述した調光素子6に対応する。
【0026】
前記検知手段は、自車両のギヤポジションを検出するギヤポジションセンサ11、ヘッドライトをON/OFFするヘッドライトスイッチ12、スモールライトをON/OFFするスモールライトスイッチ13、方向指示器14L,14R、自車両の車速を検出する車速センサ15などからなり、調光制御装置10には、ギヤポジションセンサ11から出力されるバックギヤ信号、ヘッドライトスイッチ12から出力されるライトON信号、スモールライトスイッチ13から出力されるライトON信号、方向指示器14L、14Rから出力される方向指示器信号、車速センサ15から出力される車速信号などが入力される。
【0027】
なお、リヤアンダーミラーは、例えば自車両のリヤウインドガラスの車内側上部に配置されるハイマウントストップランプに設置されたミラーからなり、運転者はリヤアンダーミラー7を介し、リヤウインドガラスを透して自車両の後部下部を視認することができるようにしたものである。この実施例の車両では、このリヤアンダーミラーの表面にもリヤアンダーミラー用調光素子7を設け、左右ドアミラー用調光素子6L,6Rと同様に、リヤアンダーミラー用調光素子7を視認可能状態と視認不可状態に切り換えるようにしている。
【0028】
次に、この実施例1における調光制御について、図5のフローチャートに従って説明する。
図5のフローチャートに示す調光制御ルーチンは、調光制御装置10によって繰り返し実行される。
まず、ステップS101において、バックギヤ信号の入力の有無に基づいて、ギヤポジションがバックギヤであるか否かを判定する。
ステップS101における判定結果が「YES」である場合には、ステップS102に進み、左右ドアミラー用調光素子6L,6Rとリヤアンダーミラー用調光素子7をONとし、これら全てを視認可能状態とする。
【0029】
次に、ステップS103に進み、タイマーをONとして、視認可能状態を所定時間(例えば、2秒間)保持し、唐突に視認不可状態に変化しないようにして、リターンする。これにより、自車両を後退させている間、左右のドアミラー2L,2Rの特定鏡面部5で自車両の車両後端からリヤタイヤ周辺を視認し、且つ、リヤアンダーミラーで自車両の後部下部を視認することができる。
【0030】
一方、ステップS101における判定結果が「NO」である場合(すなわち、前進時や停止時)には、ステップS104に進み、ヘッドライトON信号およびスモールライトON信号の入力の有無に基づいて、ヘッドライトあるいはスモールライトがON(点灯)であるか否かを判定する。
ステップS104における判定結果が「YES」である場合には、ステップS102に進む。すなわち、ヘッドライトがONである場合は夜間やトンネル内であると判断し、また、スモールライトがONである場合は朝方あるいは夕方であると判断して、左右ドアミラー用調光素子6L,6Rとリヤアンダーミラー用調光素子7を視認可能状態とし、左右のドアミラー2L,2Rの特定鏡面部5で自車両の車両後端からリヤタイヤ周辺を視認可能にして、自車両の周囲状況を確認し易くする。
【0031】
ステップS104における判定結果が「NO」である場合には、ステップS105に進み、車速センサ15から入力した車速信号に基づいて、車速が所定速度(例えば10km/h)以下であるか否かを判定する。
ステップS105における判定結果が「YES」である場合には、ステップS102に進む。すなわち、車速が10km/h以下の低速である場合には、左右ドアミラー用調光素子6L,6Rとリヤアンダーミラー用調光素子7を視認可能状態とし、左右のドアミラー2L,2Rの特定鏡面部5で自車両の車両後端からリヤタイヤ周辺を視認可能にして、自車両の周囲状況を確認し易くする。なお、車速が低速であれば、特定鏡面部5にリヤタイヤ周辺の路面が映り、映った像が流れても、像が流れる速度も遅いので、一般鏡面部4を介して後方死角の通常領域を視認している運転者が、特定鏡面部5に映る流れる像を煩わしく感じることはない。
【0032】
ステップS105における判定結果が「NO」である場合には、ステップS106に進み、右方向指示器14Rのライトオン信号の入力の有無に基づいて、右方向指示器14RがONであるか否かを判定する。
ステップS106における判定結果が「YES」である場合には、ステップS107に進み、右ドアミラー用調光素子6RをONにして視認可能状態とするとともに、左ドアミラー用調光素子6Lおよびリヤアンダーミラー用調光素子7をOFFにして視認不可状態として、ステップS103に進む。これにより、自車両を右折させている間、右ドアミラー2Rの特定鏡面部5で自車両右側の車両後端から右リヤタイヤ周辺を視認しながら、走行することが可能となる。
【0033】
ステップS106における判定結果が「NO」である場合には、ステップS108に進み、左方向指示器14Lのライトオン信号の入力の有無に基づいて、左方向指示器14LがONであるか否かを判定する。
ステップS108における判定結果が「YES」である場合には、ステップS109に進み、左ドアミラー用調光素子6LをONにして視認可能状態とするとともに、右ドアミラー用調光素子6Rおよびリヤアンダーミラー用調光素子7をOFFにして視認不可状態として、ステップS103に進む。これにより、自車両を左折させている間、左ドアミラー2Lの特定鏡面部5で自車両左側の車両後端から左リヤタイヤ周辺を視認しながら、走行することが可能となる。
【0034】
ステップS108における判定結果が「NO」である場合には、ステップS110に進み、左右ドアミラー用調光素子6L,6Rおよびリヤアンダーミラー用調光素子7をOFFにして視認不可状態として、リターンする。
【0035】
なお、図5に示すフローチャートの調光制御は一例を示したものであり、他の車両状態を検知する検知手段の検知結果に基づいて左右ドアミラー用調光素子6L,6RのON/OFFを制御することも可能である。
例えば、車両に設けた日照センサの検出結果に基づいて、日照量が所定値以下である場合には、夜間あるいはトンネル内を走行中と判断して、左右ドアミラー用調光素子6L,6RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。
【0036】
また、車両に設けた舵角センサの検出結果に基づいて、舵角(車輪の角度)が所定角度(例えば、±45度)以上である場合には、車庫入れや右左折中であると判断して、ドアミラー用調光素子6L,6RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。
さらに、車両に設けたヨーレートセンサの検出結果に基づいて、ヨーレートが所定値以上である場合には、車庫入れや右左折中であると判断して、ドアミラー用調光素子6L,6RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。
【0037】
<実施例2>
次に、この発明に係る車両用後方視認装置の実施例2を、図3を援用するとともに、図6から図12の図面を参照して説明する。
実施例1における車両用後方視認装置の左右ドアミラー2L,2Rでは、鏡面3の上側に一般鏡面部4が形成され、下側に特定鏡面部5が形成されていたが、実施例2の車両用後方視認装置におけるドアミラー2L,2Rでは、鏡面3が車幅方向内側と外側で曲率半径を異にしており、内側に一般鏡面部が形成され、外側に特定鏡面部が形成されている。以下、これについて詳述する。
【0038】
図6、図8は実施例2の車両用後方視認装置における左ドアミラー2Lにおける鏡体3の正面図であり、鏡体3は視野範囲を拡大するため凸面鏡で構成されている。鏡体3は、車幅方向内側(車体に近い側)約2/3強の領域が一般鏡面部24とされ、一般鏡面部24よりも車幅方向外側(車体から遠い側)の領域(すなわち、車幅方向外側約1/3弱の領域)が特定鏡面部25とされている。なお、一般鏡面部24と特定鏡面部25の面積比率は一例であり、この比率に限定されるものではない。
【0039】
一般鏡面部24は、運転者が一般鏡面部24を介して後側方遠方の死角(図7における視野角α)を視認して、例えば後側方を走行する他車両の存在を確認するのに好適な曲率半径の凸曲面に形成されている。なお、この実施例2においては、一般鏡面部24を介して視認可能な領域、すなわち一般鏡面部24による視認範囲(図7における視野角α、例えばα=13度)が、「後方死角の通常領域」となる。
【0040】
特定鏡面部25は、一般鏡面部24の曲率半径よりも小さい曲率半径の凸曲面に形成されており、運転者が鏡体3の一般鏡面部24および特定鏡面部25の両方を介して後方死角を視認したときに、図9に示すように、一般鏡面部24だけによる視野角αよりも車幅方向外側へ視野範囲が拡大し、自車両Vにより近い後側方領域の死角も視野範囲に入いる視野角(図9における視野角β、例えばβ=33度)となるように、特定鏡面部25の凸曲面の曲率半径が設定されている。これにより、例えば図9に示すように、自車両Vに極めて近い後側方を走行する他車両VTの存在を確認することができる。なお、図7および図9において、視野角γは、車両正面を向いて運転している自車両Vの運転者の視野範囲のうち左フロントドア1Lのドアウィンドガラス越しに見える視野角を示している。
【0041】
また、特定鏡面部25の表面上には、特定鏡面部25の全体を覆うように、調光素子(切り換え手段)26が設けられており、この調光素子26を制御することにより、特定鏡面部25を介した後方視認を可能とする視認可能状態(図8に示される状態)と、特定鏡面部25を介した後方視認を不可とする視認不可状態(図6に示される状態)とのいずれかに切り換えることができるように構成されている。なお、視認不可状態とは、実施例1の場合と同様、調光素子26を完全に遮光状態にして特定鏡面部25による後方視認を全く不可能にする場合を含むことは勿論であるが、例えば調光素子26の光の透過率を低くして特定鏡面部25に映る像が運転者に煩わしくない程度に見え難くする場合を含む。調光素子26としては、実施例1の場合と同様に、液晶シャッターや電気色素素子などを例示することができ、これにより、特定鏡面部5の視認可能状態と視認不可状態の切り換えが容易に且つ迅速に行うことができる。
【0042】
右ドアミラー2Rも右ドアミラー2Lと同様に構成されており、このドアミラー2L,2Rでは、調光素子26が視認可能状態にされているときには、運転者は、一般鏡面部24および特定鏡面部25を介して、一般鏡面部24だけによる視野角αよりも車幅方向外側へ視野範囲が拡大された視野角β内の死角を視認することができる。したがって、調光素子26を視認可能状態にすると、図8に示すように、運転者は自車両Vにより近い後側方領域の死角に存在する他車両VTを確認することができ、後方視認性が向上する。
【0043】
一方、調光素子26が視認不可状態にされているときには、運転者は、一般鏡面部24を介して後方死角の通常領域(視野角α)を視認することができるだけで、特定鏡面部25を介して後方死角を視認することはできない(換言すると、特定鏡面部25には図6に示すように何も映らない)。したがって、走行時に調光素子26を視認不可状態にすると、特定鏡面部25は鏡面として機能しないので、運転者が一般鏡面部24を介して後方死角を視認する際に、特定鏡面部25が煩わしく感じられることがない。詳述すると、特定鏡面部25は曲率半径が小さいので、特定鏡面部25に映る像の歪みが大きく、自車両の側方に車両が存在しないときに特定鏡面部25を見たときには、特定鏡面部25に周囲の景色が歪んで映り、その歪んだ像が流れていくので、運転者には煩わしく感じられる場合があるが、実施例2のドアミラー2L,2Rでは、調光素子26を視認不可状態にしたときには特定鏡面部25が鏡面として機能しないので、運転者が特定鏡面部25を煩わしく感じることがない。すなわち、特定鏡面部25の存在による煩わしさを解消することができる。
【0044】
次に、図10から図12を参照して、実施例2のドアミラー2L,2Rを備えた車両用後方視認装置100の制御例を説明する。図10に示すように、車両用後方視認装置100は、電子制御装置からなる調光制御装置10と、左ドアミラー2L用の調光素子(左ドアミラー用調光素子:切り換え手段)26Lと、右ドアミラー2R用の調光素子(右ドアミラー用調光素子:切り換え手段)26Rと、自車両の状態を検知する種々の検知手段を備えて構成されている。なお、左ドアミラー用調光素子26L、および、右ドアミラー用調光素子26Rは、前述した調光素子26に対応する。
前記検知手段は、ヘッドライトをON/OFFするヘッドライトスイッチ12、スモールライトをON/OFFするスモールライトスイッチ13、方向指示器14L,14R、自車両の車速を検出する車速センサ15、BSDユニット(ブラインドスポット警報装置)16などからなる。
【0045】
BSDユニット16は、自車両に搭載された左右のレーダー17L、17R(あるいは左右のカメラ)により、自車両の運転者の直接視界(図7、図9における視野角γ)とドアミラー2L,2Rの鏡体3の一般鏡面部24による視認範囲(図7、図9における視野角α)との間の死角(以下、側方死角と称す)に車両が存在するか否かを検知し、この側方死角に車両の存在を検知した場合に、光や音などの警報手段(図示略)により運転者に報知するように構成されている。
【0046】
調光制御装置10には、ヘッドライトスイッチ12から出力されるライトON信号、スモールライトスイッチ13から出力されるライトON信号、方向指示器14L、14Rから出力される方向指示器信号、車速センサ15から出力される車速信号、BSDユニット16から出力される死角車両情報などが入力される。BSDユニット16から入力される死角車両情報とは、自車両の左側の側方死角に車両が存在する場合には「左死角車両あり」の情報、自車両の右側の側方死角に車両が存在する場合には「右死角車両あり」の情報である。
【0047】
次に、この実施例2における調光制御について、図11および図12のフローチャートに従って説明する。
図11のフローチャートに示す調光制御ルーチンは、都市部のように走行車両が多い地域(あるいは路線)やビルなどが乱立していて周辺視界が煩雑な地域を走行する都市走行モードの調光制御を示しており、図12のフローチャートに示す調光制御ルーチンは、郊外のように走行車両が少ない地域(あるいは路線)や建物などが少なくて周辺視界が煩雑でない地域を走行する郊外走行モードの調光制御を示している。
【0048】
都市走行モードの調光制御と郊外走行モードの調光制御のいずれを選択するかは、乗員の切り換え操作により手動で行ってもよいし、あるいは、車両に搭載されているナビゲーション装置の地図情報や、インターネットなどを介して取得した交通情報等に基づいて調光制御装置10が判定し自動で選択するようにしてもよい。
【0049】
初めに、都市走行モードの調光制御を図11のフローチャートに従って説明する。
まず、ステップS201において、ヘッドライトON信号およびスモールライトON信号の入力の有無に基づいて、ヘッドライトあるいはスモールライトがON(点灯)であるか否かを判定する。
ステップS201における判定結果が「YES」である場合には、ステップS202に進み、左右ドアミラー用調光素子26L,26RをONとし、これらを視認可能状態とする。
【0050】
次に、ステップS203に進み、タイマーをONとして、視認可能状態を所定時間(例えば、2秒間)保持し、唐突に視認不可状態に変化しないようにして、リターンする。
つまり、ヘッドライトがONである場合は夜間やトンネル内であると判断し、また、スモールライトがONである場合は朝方あるいは夕方であると判断して、これらのときには特定鏡面部25に像が映っても運転者には煩わしく感じられないので、特定鏡面部5を介した後方視認を可能にし、運転者に積極的に自車両の後方を広角に視認させる。
【0051】
一方、ステップS201における判定結果が「NO」である場合には、ステップS204に進み、車速センサ15から入力した車速信号に基づいて、車速が所定速度(例えば15km/h)以下であるか否かを判定する。
ステップS204における判定結果が「YES」である場合には、ステップS202に進む。すなわち、車速が15km/h以下の低速である場合には、特定鏡面部25に建物や車両等の像が映っても運転者には煩わしく感じられないので、特定鏡面部5を介した後方視認を可能にし、運転者に積極的に自車両の後方を広角に視認させる。
【0052】
ステップS204における判定結果が「NO」である場合には、ステップS205に進み、BSDユニット16から死角車両情報を取得する。
次に、ステップS206に進み、BSDユニット16から取得した死角車両情報が「右死角車両あり」であり、且つ、右方向指示器14Rのライトオン信号を入力したか(すなわち右方向指示器14RがONか)を判定する。
【0053】
ステップS206における判定結果が「YES」である場合には、ステップS207に進み、右ドアミラー用調光素子26RをONにして視認可能状態とするとともに、左ドアミラー用調光素子26LをOFFにして視認不可状態として、ステップS203に進む。つまり、この場合には、自車両の右側の側方死角に他車両が存在し、且つ、自車両が右側車線に車線変更しようとしているので、運転者に右ドアミラー2Rの一般鏡面部24と特定鏡面部25を介して自車両の右後側方の死角を広角に視認し易くし、BSDユニット16により検出した車両を含む周囲の状況を確認し易くする。なお、右側車線への車線変更時には、左ドアミラー2Lにより左後側方を広角で視認するには及ばないので、左ドアミラー用調光素子26Lは視認不可状態とする。
【0054】
ステップS206における判定結果が「NO」である場合には、ステップS208に進み、BSDユニット16から取得した死角車両情報が「左死角車両あり」であり、且つ、左方向指示器14Lのライトオン信号を入力したか(すなわち左方向指示器14LがONか)を判定する。
【0055】
ステップS208における判定結果が「YES」である場合には、ステップS209に進み、左ドアミラー用調光素子26LをONにして視認可能状態とするとともに、右ドアミラー用調光素子26RをOFFにして視認不可状態として、ステップS203に進む。つまり、この場合には、自車両の左側の側方死角に他車両が存在し、且つ、自車両が左側車線に車線変更しようとしているので、運転者に左ドアミラー2Lの一般鏡面部24と特定鏡面部25を介して自車両の左後側方の死角を広角に視認し易くし、BSDユニット16により検出した車両を含む周囲の状況を確認し易くする。なお、左側車線への車線変更時には、右ドアミラー2Rにより右後側方を広角で視認するには及ばないので、右ドアミラー用調光素子26Rは視認不可状態とする。
【0056】
ステップS208における判定結果が「NO」である場合には、ステップS210に進み、左右ドアミラー用調光素子26L,26RをOFFにして視認不可状態として、リターンする。つまり、この場合には、自車両の左側の側方死角にも右側の側方死角にも他車両が存在しないし、且つ、自車両は車線変更しようとしていないので、左右のドアミラー2L,2Rの特定鏡面部25を鏡面として機能させないようにすることで、運転者に特定鏡面部25に像が見えるときの煩わしさをなくすることができる。
【0057】
次に、郊外走行モードの調光制御を図12のフローチャートに従って説明する。
まず、ステップS301において、ヘッドライトON信号およびスモールライトON信号の入力の有無に基づいて、ヘッドライトあるいはスモールライトがON(点灯)であるか否かを判定する。
ステップS301における判定結果が「YES」である場合には、ステップS302に進み、左右ドアミラー用調光素子26L,26RをONとし、これらを視認可能状態とする。
【0058】
次に、ステップS303に進み、タイマーをONとして、視認可能状態を所定時間(例えば、2秒間)保持し、唐突に視認不可状態に変化しないようにして、リターンする。
つまり、ヘッドライトがONである場合は夜間やトンネル内であると判断し、また、スモールライトがONである場合は朝方あるいは夕方であると判断して、これらのときには特定鏡面部25に像が映っても運転者には煩わしく感じられないので、特定鏡面部5を介した後方視認を可能にし、運転者に積極的に自車両の後方を広角に視認させる。
【0059】
一方、ステップS301における判定結果が「NO」である場合には、ステップS304に進み、車速センサ15から入力した車速信号に基づいて、車速が所定速度(例えば80km/h)以下であるか否かを判定する。
ステップS304における判定結果が「YES」である場合には、ステップS302に進む。すなわち、郊外走行モードでは特定鏡面部25に映り込む建物や車両が少ないので、車速が80km/h以下の中低速のときには、特定鏡面部25に像が映っても運転者には煩わしく感じられないので、特定鏡面部25を介した後方視認を可能にし、自車両の後方を広角に視認可能にする。
【0060】
ステップS304における判定結果が「NO」(車速が80km/h以上の高速)である場合には、ステップS305に進み、BSDユニット16から死角車両情報を取得する。
次に、ステップS306に進み、BSDユニット16から取得した死角車両情報が「右死角車両あり」か否かを判定する。
【0061】
ステップS306における判定結果が「YES」である場合には、ステップS307に進んで、右ドアミラー用調光素子26RをONにして視認可能状態とし、さらにステップS309に進む。つまり、この場合には、自車両の右側の側方死角に他車両が存在するので、運転者に右ドアミラー2Rの一般鏡面部24と特定鏡面部25を介して自車両の右後側方の死角を広角に視認し易くし、BSDユニット16により検出した車両を含む周囲の状況を確認し易くする。
【0062】
ステップS306における判定結果が「NO」である場合には、ステップS308に進んで、右ドアミラー用調光素子26RをOFFにして視認不可状態とし、さらにステップS309に進む。つまり、この場合には、自車両の右側の側方死角に他車両が存在しないので、右ドアミラー2Rの特定鏡面部25を鏡面として機能させないようにすることで、運転者に右ドアミラー2Rの特定鏡面部25に像が見えるときの煩わしさをなくすることができる。
【0063】
そして、ステップS309において、BSDユニット16から取得した死角車両情報が「左死角車両あり」か否かを判定する。
ステップS309における判定結果が「YES」である場合には、ステップS310に進んで、左ドアミラー用調光素子26LをONにして視認可能状態とし、さらにステップS303に進む。つまり、この場合には、自車両の左側の側方死角に他車両が存在するので、運転者に左ドアミラー2Lの一般鏡面部24と特定鏡面部25を介して自車両の左後側方の死角を広角に視認し易くし、BSDユニット16により検出した車両を含む周囲の状況を確認し易くする。
【0064】
ステップS309における判定結果が「NO」である場合には、ステップS311に進んで、左ドアミラー用調光素子26LをOFFにして視認不可状態とし、さらにステップS303に進む。つまり、この場合には、自車両の左側の側方死角に他車両が存在しないので、左ドアミラー2Lの特定鏡面部25を鏡面として機能させないようにすることで、運転者に左ドアミラー2Rの特定鏡面部25に像が見えるときの煩わしさをなくすることができる。
【0065】
なお、図11、図12に示すフローチャートの調光制御は一例を示したものであり、実施例1の場合と同様に、他の車両状態を検知する検知手段の検知結果に基づいて左右ドアミラー用調光素子26L,26RのON/OFFを制御することも可能である。
【0066】
例えば、車両に設けた日照センサの検出結果に基づいて、日照量が所定値以下であると判定したときには、夜間あるいはトンネル内を走行中と判断して、左右ドアミラー用調光素子26L,26RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。
【0067】
また、実施例1のときと同様に、ギヤポジションセンサからバックギヤ信号が入力された場合に、自車両が後退動作していると判断して、左右ドアミラー用調光素子26L,26RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。このようにすると、後退時に、左右ドアミラー2L,2Rを介しての車幅方向の視野範囲を拡大することができ、後退操作がし易くなる。
【0068】
また、車両に設けた舵角センサの検出結果に基づいて、舵角(車輪の角度)が所定角度以上である場合には、自車両が右左折中あるいは車線変更中であると判断して、対応する側のドアミラー用調光素子26Lあるいは26RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。このようにすると、右左折時および車線変更時に、左右ドアミラー2L,2Rを介しての車幅方向の視野範囲を拡大することができる。
【0069】
さらに、車両に設けたヨーレートセンサの検出結果に基づいて、ヨーレートが所定値以上である場合には、自車両が右左折中あるいは車線変更中であると判断して、対応する側のドアミラー用調光素子26Lあるいは26RをONに制御し、視認可能状態にしてもよい。このようにすると、右左折時および車線変更時に、左右ドアミラー2L,2Rを介しての車幅方向の視野範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明に係る車両用後方視認装置の実施例1における右ドアミラーの鏡体の正面図であり、特定鏡面部を視認可能状態としたときの図である。
【図2】実施例1における右ドアミラーの鏡体の正面図であり、特定鏡面部を視認不可状態としたときの図である。
【図3】実施例1の車両用後方視認装置を備えた車両を駐車区域に駐車したときの平面図である。
【図4】実施例1の車両用後方視認装置の構成図である。
【図5】実施例1の車両用後方視認装置の調光制御を示すフローチャートである。
【図6】この発明に係る車両用後方視認装置の実施例2における左ドアミラーの鏡体の正面図であり、特定鏡面部を視認不可状態としたときの図である。
【図7】実施例2の左ドアミラーにおいて特定鏡面部を視認不可状態としたときの視野角を示す平面図である。
【図8】実施例2における左ドアミラーの鏡体の正面図であり、特定鏡面部を視認可能状態としたときの図である。
【図9】実施例2の左ドアミラーにおいて特定鏡面部を視認可能状態としたときの視野角を示す平面図である。
【図10】実施例2の車両用後方視認装置の構成図である。
【図11】実施例2の車両用後方視認装置において都市走行モードでの調光制御を示すフローチャートである。
【図12】実施例2の車両用後方視認装置において郊外走行モードでの調光制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
2L,2R ドアミラー
3 鏡体
4,24 一般鏡面部
5,25 特定鏡面部
6,6L,6R,26,26L,26R 調光素子(切り換え手段)
10 調光制御装置(制御手段)
11 ギヤポジションセンサ(検知手段)
12 ヘッドライトスイッチ(検知手段)
13 スモールライトスイッチ(検知手段)
14 方向指示器(検知手段)
15 車速センサ(検知手段)
16 BSDユニット(検知手段)
100 車両用後方視認装置
V 車両
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の後方死角を視認可能とする鏡体に、後方死角の通常領域を視認するための一般鏡面部と、該一般鏡面部よりも小さい曲率半径に形成された特定鏡面部と、を設け、
前記特定鏡面部を介した後方視認を可能とする視認可能状態と前記特定鏡面部を介した後方視認を不可とする視認不可状態のいずれかの状態に切り換える切り換え手段と、
車両の状態を検知する検知手段の検知結果に基づいて前記切り換え手段を視認可能状態または視認不可状態に切り換える制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用後方視認装置。
【請求項2】
前記特定鏡面部を前記一般鏡面部の車幅方向外側に設け、
前記検知手段は車両の側方に存在する物体を検知するものであり、
前記制御手段は、前記検知手段が物体の存在を検知しないときには前記切り換え手段を視認不可状態に切り換え、前記検知手段が物体を検知したときには前記切り換え手段を視認可能状態に切り換えることを特徴とする請求項1に記載の車両用後方視認装置。
【請求項3】
前記検知手段は、車両の側方領域であって前記一般鏡面部の視認範囲である前記通常領域から外れた領域に存在する物体を検知するものであることを特徴とする請求項2に記載の車両用後方視認装置。
【請求項4】
前記検知手段は、車両の後退動作、車輪の角度、方向指示器の操作の少なくともいずれか1つを検知するものを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用後方視認装置。
【請求項5】
前記特定鏡面部を前記一般鏡面部の車両上下方向の下側に設け、
前記検知手段は、車両の後退動作、低速走行、方向指示器の操作の少なくともいずれか1つを検知するものであり、
前記制御手段は、前記検知手段が検知しないときには前記切り換え手段を視認不可状態に切り換え、前記検知手段が検知したときには前記切り換え手段を視認可能状態に切り換えることを特徴とする請求項1に記載の車両用後方視認装置。
【請求項6】
前記切り換え手段は、透明度が変更可能な調光素子により構成したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用後方視認装置。
【請求項1】
車両の乗員の後方死角を視認可能とする鏡体に、後方死角の通常領域を視認するための一般鏡面部と、該一般鏡面部よりも小さい曲率半径に形成された特定鏡面部と、を設け、
前記特定鏡面部を介した後方視認を可能とする視認可能状態と前記特定鏡面部を介した後方視認を不可とする視認不可状態のいずれかの状態に切り換える切り換え手段と、
車両の状態を検知する検知手段の検知結果に基づいて前記切り換え手段を視認可能状態または視認不可状態に切り換える制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用後方視認装置。
【請求項2】
前記特定鏡面部を前記一般鏡面部の車幅方向外側に設け、
前記検知手段は車両の側方に存在する物体を検知するものであり、
前記制御手段は、前記検知手段が物体の存在を検知しないときには前記切り換え手段を視認不可状態に切り換え、前記検知手段が物体を検知したときには前記切り換え手段を視認可能状態に切り換えることを特徴とする請求項1に記載の車両用後方視認装置。
【請求項3】
前記検知手段は、車両の側方領域であって前記一般鏡面部の視認範囲である前記通常領域から外れた領域に存在する物体を検知するものであることを特徴とする請求項2に記載の車両用後方視認装置。
【請求項4】
前記検知手段は、車両の後退動作、車輪の角度、方向指示器の操作の少なくともいずれか1つを検知するものを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用後方視認装置。
【請求項5】
前記特定鏡面部を前記一般鏡面部の車両上下方向の下側に設け、
前記検知手段は、車両の後退動作、低速走行、方向指示器の操作の少なくともいずれか1つを検知するものであり、
前記制御手段は、前記検知手段が検知しないときには前記切り換え手段を視認不可状態に切り換え、前記検知手段が検知したときには前記切り換え手段を視認可能状態に切り換えることを特徴とする請求項1に記載の車両用後方視認装置。
【請求項6】
前記切り換え手段は、透明度が変更可能な調光素子により構成したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用後方視認装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−248814(P2009−248814A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100600(P2008−100600)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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