説明

車両用扉の補助開閉装置

【課題】 配置上の制約や荷物積載上の制約といった問題を回避すべく、弾性部の配置がフレキシブルに対応できる車両用扉の補助開閉装置を提供する。
【解決手段】 車両に搭載された荷箱本体A内に取り付けられ、荷箱本体Aの開口部Bに上端部が枢着される扉体Cを付勢することで、扉体Cのはね上げに伴って生じる自重によるモーメントを減少せしめるよう構成された車両用扉の補助開閉装置1において、長手方向に弾性力が作用するように構成され、且つ長手方向が開口部Bに沿うようにして荷箱本体A内に配置される長尺な弾性部2と、弾性部2の弾性力が作用する方向を方向転換して伝達可能な方向転換部3と、方向転換部3から伝達される弾性部2の弾性力により扉体Cを付勢可能なリンク機構4とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された荷箱本体内に取り付けられる車両用扉の補助開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10に示すように、車両に搭載された荷箱本体内に取り付けられ、荷箱本体Aの開口部Bに上端部が枢着される扉体Cを付勢することで、扉体Cのはね上げに伴って生じる自重によるモーメントを減少せしめるよう構成された車両用扉の補助開閉装置100が知られている。かかる補助開閉装置100は、長手方向に弾性力が作用するように構成されて、且つ長手方向が開口部Bと直交するようにして荷箱本体A内に配置される長尺な弾性部101と、弾性部101における筒状の弾性体102の弾性力を扉体Cに付勢可能なリンク機構103とを備える(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−108669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる補助開閉装置100は、長尺に構成される弾性部101の長手方向が奥行方向(開口部Bと直交する方向)に向いて配置されるため、例えば、荷箱本体Aの内部形状(上面内側に設けられる凸部など)によって、配置に制約が生じることがある。また、例えば、荷箱本体Aの内部に荷物を積載するのに、奥行方向に伸びた弾性部101が障害となり、所望の荷物の積載ができないこともある。
【0004】
よって、本発明は、かかる事情に鑑み、配置上の制約や荷物積載上の制約といった問題を回避すべく、弾性部の配置がフレキシブルに対応できる車両用扉の補助開閉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる車両用扉の補助開閉装置は、車両に搭載された荷箱本体内に取り付けられ、荷箱本体の開口部に上端部が枢着される扉体を付勢することで、扉体のはね上げに伴って生じる自重によるモーメントを減少せしめるよう構成された車両用扉の補助開閉装置において、長手方向に弾性力が作用するように構成され、且つ長手方向が開口部に沿うようにして荷箱本体内に配置される長尺な弾性部と、弾性部の弾性力が作用する方向を方向転換して伝達可能な方向転換部と、方向転換部から伝達される弾性部の弾性力により扉体を付勢可能なリンク機構とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、開口部に沿って弾性部の弾性力が作用すると、方向転換部が弾性力の作用する方向を方向転換してリンク機構に伝達し、リンク機構が伝達された弾性力により扉体を付勢する。それにより、荷箱本体の開口部に上端部が枢着される扉体を付勢するため、扉体のはね上げに伴って生じる自重によるモーメントが減少し、扉体を容易に開くことができる。したがって、長尺な弾性部が開口部に沿って配置できるため、奥行方向に小型化でき、その結果、配置上や荷物積載上の制約といった問題を回避できる。
【0007】
本発明にかかる車両用扉の補助開閉装置においては、弾性部は、長手方向が開口部の上枠部材の内側に沿うようにして荷箱本体内に配置されてもよい。かかる構成によれば、弾性部が上枠部材の内側に沿うようにして荷箱本体内に配置されるため、開口部の開口の位置に配置される弾性部の部位の面積をなくす又は小さくでき、その結果、弾性部によって開口部の開口面積が減少するのを防止又は抑制できる。
【0008】
本発明にかかる車両用扉の補助開閉装置においては、リンク機構は、開口部と略直交する荷箱本体の壁面部に沿うようにして配置されてもよい。かかる構成によれば、リンク機構が開口部と略直交する壁面部に沿って配置されるため、開口部の開口の位置に配置されるリンク機構の部位の面積を小さくし、その結果、リンク機構によって開口部の開口面積が減少するのを抑制できる。
【0009】
本発明にかかる車両用扉の補助開閉装置においては、方向転換部は、可撓性を有し、且つ一端部が弾性部に接続されると共に他端部がリンク機構に接続される長尺な伝達部材と、伝達部材を案内する少なくとも一つの案内部材とを備えてもよい。かかる構成によれば、可撓性を有する長尺な伝達部材が案内部材で案内されるため、一端部が接続される弾性部における弾性力が、作用する方向を方向転換して、他端部が接続されるリンク機構に伝達される。したがって、弾性部の配置をさらにフレキシブルに対応できる。
【0010】
本発明にかかる車両用扉の補助開閉装置においては、案内部材は、少なくとも一つが弾性部に隣設され、伝達部材は、弾性部に隣設される案内部材を介して、他端部側が壁面部に沿って配置されてもいい。かかる構成によれば、伝達部材が、弾性部に隣設される案内部材からリンク機構に接続される他端部まで壁面部に沿って配置されるため、開口部の開口の位置に配置される伝達部材の部位の面積を小さくし、その結果、伝達部材によって開口部の開口面積が減少するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の荷箱によれば、長尺な弾性部が開口部に沿って配置できるため、配置上や荷物積載上の制約といった問題を回避すべく、弾性部の配置がフレキシブルに対応できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかる荷箱における一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、車両に搭載された荷箱本体A内に取り付けられ、荷箱本体Aの開口部Bに上端部が枢着される扉体Cを付勢することで、扉体Cのはね上げに伴って生じる自重によるモーメントを減少せしめるように構成される。荷箱本体Aは、開口部Bと略直交して配置される壁面部Dを備える。具体的には、荷箱本体Aは、略直方体状(略六面体状)に構成され、一対の壁面部D,D(以下、「側面部」ともいう)、上面部E、下面部(図示しない)、前面部(図示しない)及び後面部(採番しない)を備えて構成される。また、荷箱本体Aは、後面部に開口部Bが設けられている。
【0014】
開口部Bは、上枠部材B1、一対の側枠部材B2,B2、及び下枠部材(図示しない)を備える。なお、上枠部材B1、一対の側枠部材B2,B2、及び下枠部材(図示しない)は、補強フレームである。また、開口部Bは、上枠部材B1に扉体Cが上端部で枢着される。なお、下枠部材にも、別途設けられる扉体(採番しない)が下端部で枢着される。
【0015】
扉体Cは、図2に示すように、一対のヒンジ部材F1,F2(上ヒンジ部材F1及び下ヒンジ部材F2)を介して、開口部Bに回動可能に取り付けられる。具体的には、扉体Cは、上端部に下ヒンジ部材F2が固定され、下ヒンジ部材F2が上枠部材B1の下方側に固定される上ヒンジ部材F1と摺動することにより、回動可能に構成される。なお、上枠部材B1は、荷箱本体Aが扉体Cの自重を支持できるように補強すべく、略L字形状の断面形状である剛体が扉体Cの上端部に沿って延伸して配置されている。
【0016】
車両用扉の補助開閉装置1(以下、単に「補助開閉装置」という)は、図2〜3に示すように、長手方向に弾性力が作用するように構成され、且つ長手方向が開口部Bに沿うようにして荷箱本体A内に配置される長尺な弾性部2と、弾性部2の弾性力が作用する方向を方向転換して伝達可能な方向転換部3と、方向転換部3から伝達される弾性部2の弾性力により扉体Cを付勢可能なリンク機構4とを備える。また、補助開閉装置1は、方向転換部3の一部及びリンク機構4の一部を収容可能であって、荷箱本体Aや開口部Bに固定される基部5を備える。
【0017】
弾性部2は、長手方向が開口部Bの上枠部材B1の内側に沿うようにして荷箱本体A内に配置される。具体的には、弾性部2は、長手方向が開口部B(後面部)及び上面部Eに沿って配置される。また、弾性部2は、開口部Bの開口面積が減少するのを防止すべく、幅寸法が上枠部材B1の幅寸法より小さく構成される。
【0018】
弾性部2は、軸線方向が開口部Bに沿った筒状の弾性体6を備える。また、弾性部2は、弾性体6に挿入して、且つ開口部Bに沿って変位可能なシャフト部材7を備える。具体的には、弾性部2は、円筒状の弾性体6と、近接する荷箱本体Aの側面部Dの反対側から弾性体6に挿入するシャフト部材7とを備え、弾性体6及びシャフト部材7は、互いの軸線方向が略一致するように配置される。
【0019】
弾性体6は、軸線方向の一端部がシャフト部材7に固定される保持部材8に当接され、軸線方向の他端側が基部5に当接されることで保持される。具体的には、弾性体6は、軸線方向の一端側の孔部が保持部材8の突起部8aに嵌合されると共に、軸線方向の他端側の孔部が基部5に設けられる突起部5aに嵌合されて保持される。
【0020】
そして、弾性体6は、伸縮することで、保持部材8を介してシャフト部材7を軸線方向に変位可能、即ち、シャフト部材7を付勢可能に構成される。さらに、弾性体6は、伸長する力(シャフト部材7を近接する側面部Dから離間させる力)を常に作用すべく、扉体Cの開閉に関わらず、無負荷状態に対して常に縮小した状態で保持されている。そして、シャフト部材7は、弾性体6に挿入している側の端部が方向転換部3に接続(枢着)される。
【0021】
方向転換部3は、可撓性を有し、且つ一端部が弾性部2に接続されると共に他端部がリンク機構4に接続される長尺な伝達部材9と、伝達部材9を案内する二つの案内部材10(10a),10(10b)とを備える。具体的には、方向転換部3は、伝達部材9が弾性部2に隣設される案内部材10a(本発明にかかる「弾性部に隣設される案内部材」に相当し、以下「第1案内部材」という)に案内されて、開口部Bに沿った方向から開口部Bと交差する方向に弾性部2の弾性力を方向転換可能に構成され、さらに、側面部Dに沿って配置される案内部材10b(以下、「第2案内部材」という)に案内されて、弾性部2の弾性力をリンク機構4に伝達可能に構成される。
【0022】
伝達部材9は、第1案内部材10a(弾性部2に隣設される案内部材10a)を介して、他端部側が側面部Dに沿って配置される。また、伝達部材9は、第1案内部材10aを介して、一端部側が開口部Bに沿って配置される。具体的には、伝達部材9は、第1案内部材10aを介して、一端部側が弾性部2(弾性体6)内に配置される。
【0023】
また、伝達部材9は、細長い形状、即ち、紐状に形成される。具体的には、伝達部材9は、二つの長尺なローラチェーン9a,9aが互いの幅方向(プレートを枢着するピンの軸線方向)を直交させるように接続されて構成される。なお、ローラチェーン9aは、交互に連続して配置される一対の内プレート及び一対の外プレートと、両プレートを枢着するピンと、ピンに挿通されるローラとを備えて構成される。
【0024】
第1案内部材10aは、略楕円形状の一部位の板状に形成されると共に、第1案内部材10aより下方側に配置される第2案内部材10bは、略円形状の板状に形成され、さらに、両案内部材10a,10bは、伝達部材9を円弧状の外周部で案内可能に構成される。具体的には、第1案内部材10aは、伝達部材9を約90度方向転換するように、即ち、伝達部材9を開口部Bに沿う方向から側面部Dに沿う方向に案内し、第2案内部材10bは、側面部Dに沿って約180度方向転換するように、即ち、リンク機構4に向けて案内するように構成される。また、案内部材10は、案内する伝達部材9との摩擦力を低減すべく、外周部がローラチェーン9aのローラと接触して伝達部材9を案内する。
【0025】
リンク機構4は、開口部Bと略直交する荷箱本体Aの側面部Dに沿うようにして配置される。さらに、リンク機構4は、弾性部2より側面部D側に配置される。また、リンク機構4は、伝達部材9に第1部位11aにて接続(枢着)される第1連結部材11と、第1連結部材11の第2部位11bに第1部位12aにて接続(枢着)される回動部材12と、回動部材12の第2部位12bに第1部位13aにて接続(枢着)される第2連結部材13とを備える。そして、回動部材12は、第3部位12cを中心に回動可能に構成され、さらに、第2連結部材13は、第2部位13bにて扉体Cに接続(枢着)されて構成される。
【0026】
具体的には、回動部材12は、第3部位12cにて基部5に枢着され、第2連結部材13は、第2部位13bにて扉体Cに設けられる接続部C1に枢着される。また、第1連結部材11は、回動部材12の第3部位13cが基部5に枢着するための軸(ピン)と干渉するのを防止すべく、湾曲した板状、具体的には、略「C」字状(略「く」字状)に形成される。
【0027】
基部5は、側面部Dに沿って配置される一対の板部材5b,5bを備えて構成される。そして、基部5は、方向転換部3における側面部Dに沿った部位及びリンク機構4における一部位を収容可能に構成される。具体的には、基部5は、伝達部材9における側面部Dに沿った部位(第1案内部材10aからリンク機構4に接続される他端部側の部位)、第2案内部材10b、第1連結部材11、及び回動部材12を収容可能に構成される。また、基部5は、一方の板部材5bが開口部B(側枠部材B2)と接触(密着)するようにして、開口部B(上枠部B1及び側枠部B2)に固定される。
【0028】
なお、補助開閉装置1は、開く扉体Cの回動を規制すべく、規制手段14を備える。具体的には、基部5に固定されるピン状の規制手段14を備え、規制手段14は、リンク機構4(回動部材12)を係止して、扉体Cの回動を規制し、扉体Cを開いた状態で保持する。
【0029】
本実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1の構成は以上の通りであり、次に、車両用扉の補助開閉装置1の作用について説明する。
【0030】
まず、伝達部材9の一端部が接続される弾性部2における弾性力は、可撓性を有する長尺な伝達部材9が案内部材10で案内されることにより、作用する方向を方向転換して、伝達部材9の他端部が接続されるリンク機構4に伝達される。しかし、図2に示すように、扉体Cが閉じているとき、即ち、開口部Bと扉体Cとが略平行である(一致している)とき、弾性部2の弾性力が扉体Cに対して閉じる方向(図2において時計回り方向)に作用するため、扉体Cが開くことはない。
【0031】
そして、図4に示すように、扉体Cを徐々に開いていくと、弾性部2の弾性力が扉体Cに対して開く方向(図4において反時計回り方向)に作用する。具体的には、第2連結部材13の第1部位13aから第2部位13bに向けた方向(図4において矢印Xの方向)が、扉体Cが回動する軸心に対して扉体C側(図4において軸心Yに対して下方側)であるときに、弾性部2の弾性力は、扉体Cが開くように付勢される。より具体的には、扉体Cを閉じた状態から15〜25度回動させると、弾性部2の弾性力は、扉体Cが開くよう付勢されるように設計されている。
【0032】
このとき、弾性体6は、保持部材8を介してシャフト部材7を付勢して、開口部Bに沿って変位、具体的には、側面部Dから離間するように変位させる。なお、シャフト部材7は、軸線方向が弾性体6の軸線方向と略一致して配置されているため、弾性体6の弾性力が安定して付勢され、弾性体6やシャフト部材7が揺動するのを規制できる。そして、シャフト部材7に接続される伝達部材9が、案内部材10a,10bに案内されて変位する。したがって、開口部Bに沿って作用する弾性部2の弾性力は、伝達部材9(方向転換部3)により、側面部D沿った方向に方向転換される。
【0033】
そして、第1連結部材11を介して伝達部材9に接続される回動部材12が回動すると、回動部材12に接続される第2連結部材13が扉体C側に変位して、扉体Cが付勢される。したがって、開口部Bに沿って弾性部2の弾性力が作用すると、方向転換部3が弾性力の作用する方向を方向転換してリンク機構4に伝達し、リンク機構4が伝達された弾性力により扉体Cを付勢する。
【0034】
さらに、扉体Cが開いていくと、扉体Cに対する弾性部2の弾性力によるモーメントが、扉体Cの自重によるモーメントより大きくなるため、弾性部2の弾性力のみで扉体Cが回動して開いていく。具体的には、扉体Cを閉じた状態から30〜50度回動させると、弾性部2の弾性力のみで扉体Cが回動して開くように設計されている。そして、規制手段14が回動部材12を係止することにより、扉体Cは、回動を規制され、開いた状態で保持される。したがって、荷箱本体Aの開口部Bに上端部が枢着される扉体Cを付勢することで、扉体Cのはね上げに伴って生じる自重によるモーメントを減少させ、扉体Cを容易に開くことができる。
【0035】
以上より、本実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、長尺な弾性部2を開口部Bに沿って配置して、弾性部2の弾性力により扉体Cを付勢できるため、弾性部2の配置をフレキシブルに対応できる。したがって、補助開閉装置1が奥行方向に小型化できるため、配置上や荷物積載上の制約といった問題を回避できる。
【0036】
また、本実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、弾性部2が上枠部材B1の内側に沿うようにして荷箱本体A内に配置され、しかも、上枠部材B1の幅寸法が弾性部2の幅寸法よりも大きいため、開口部Bの開口の位置に配置される弾性部2の部位の面積をなくすことができる。したがって、弾性部2によって開口部Bの開口面積が減少するのを防止できるため、開口部Bを有効活用することができる。
【0037】
また、本実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、リンク機構4が開口部Bと略直交する側面部Dに沿って配置されるため、開口部Bの開口の位置に配置されるリンク機構4の部位の面積を小さくできる。したがって、リンク機構4によって開口部Bの開口面積が減少するのを抑制できるため、開口部Bをさらに有効活用することができる。
【0038】
また、本実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、可撓性を有する長尺な伝達部材9が案内部材10に案内されることで、弾性部2の弾性力が作用する方向を方向転換してリンク機構4に伝達できるため、弾性部2の配置をよりフレキシブルに対応できる。例えば、伝達部材9及び案内部材10の巻き掛け伝動により、弾性部2の弾性力をリンク機構4に伝達するため、リンク機構4を側面部Dと干渉しない程度に、側面部Dの近傍に配置することができる。
【0039】
具体的には、方向変換部3を用いないとき、図10に示すように、設計強度を確保すべく、側面部Dに沿って配置されるリンク機構103の幅方向の略中心(面)上に、筒状の弾性体102(弾性体102内に配置されて付勢されるシャフト部材)の軸線が配置される必要があり、リンク機構103の幅方向の中心(面)が弾性体102の径寸法より小さい距離で側面部Dに接近させることができない。しかし、本実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、弾性部2及びリンク機構4間に方向転換部3を配置させることにより、設計強度を確保するのにかかる制約が必要なく、図3に示すように、リンク機構4が側面部Dに限りなく接近させて配置できる。即ち、リンク機構4は、幅方向の中心(面)が弾性体6の径寸法より小さい距離で側面部Dに接近させて配置することもできる。
【0040】
また、本実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、第1案内部材10aからリンク機構4に接続される他端部までにおける伝達部材9が側面部Dに沿って配置されるため、開口部Bの開口の位置に配置される伝達部材9の部位の面積を小さくし、その結果、伝達部材9によって開口部Bの開口面積が減少するのを抑制できる。
【0041】
また、本実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、第1案内部材10aから弾性部2に接続される一端部までの伝達部材9が筒状の弾性体6内に配置されるため、伝達部材9の一端部側を弾性部2内に効率的に配置させることができ、その結果、弾性部2内に配置される伝達部材9によって開口部Bの開口面積が減少するのを防止できる。
【0042】
なお、本発明の車両用扉の補助開閉装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0043】
例えば、本発明にかかる車両用扉の補助開閉装置においては、図5に示すように、方向転換部20は、伝達部材21と、三つの案内部材22a,22b,22cとを備えて構成されてもよい。さらに、リンク機構23は、伝達部材21に第1部位24aにて枢着される第1回動部材24と、第1回動部材24の第2部位24bに第1部位25aにて枢着される第1連結部材25と、第1連結部材25の第2部位25bに第1部位26aにて枢着される第2回動部材26と、第2回動部材26の第2部位26bに第1部位27aにて枢着される第2連結部材27とを備えて構成され、第1回動部材24及び第2回動部材26は、それぞれ第3部位24c,26cを中心に回動可能に構成されると共に、第2連結部材27は、第2部位27bにて扉体Cに枢着されて構成されてもよい。
【0044】
かかる第1回動部材24及び第2回動部材26は、それぞれ第3部位24c,26cにて基部28に枢着して構成される。さらに、かかる第1回転部材24は、略扇形状に形成され、伝達部材21を円弧状の外周部で案内するため、伝達部材21から受けるモーメント(「力の大きさ」と「その点から力の作用線までの距離」との積)における「その点から力の作用線までの距離」を一定にすることができる。なお、本発明にかかる補助開閉装置においては、かかる方向転換部20及びかかるリンク機構23の少なくとも何れか一方を採用することができる。具体的には、図6に示すように、かかる方向転換部20だけを採用することもできる。
【0045】
また、本発明にかかる車両用扉の補助開閉装置においては、図7に示すように、方向転換部30は、伝達部材31と、二つの案内部材32a,32bとを備えて構成されてもよい。さらに、リンク機構33は、伝達部材31に第1部位34aにて枢着される第1連結部材34と、第1連結部材34の第2部位34bに第1部位35aにて枢着される第1回動部材35と、第1回動部材35の第2部位35bに第1部位36aにて枢着される第2連結部材36と、第2連結部材36の第2部位36bに第1部位37aにて枢着される第2回動部材37と、第2回動部材37の第2部位37bに第1部位38aにて枢着される第3連結部材38と、第3連結部材38の第2部位38bに第1部位39aにて枢着される第3回動部材39とを備えて構成され、第1回動部材35と第2回動部材37と第3回動部材39とは、それぞれ第3部位35c,37c,39cを中心に回動可能に構成されると共に、第3回動部材39は、第2部位39bにて扉体Cに枢着されて構成されてもよい。
【0046】
かかる第2連結部材36は、可撓性を有し、且つ長尺に構成される。また、かかる第3回動部材39は、扉体Cを付勢するのに、第2部位39bが扉体Cに接触(摺動)して付勢可能に構成される。具体的には、第3回動部材39の第2部位39bに設けられるローラが扉体Cに案内されつつ扉体Cを付勢してもよい。また、扉体Cには、ローラを案内する溝状の案内部C2が設けられてもよい。なお、本発明にかかる補助開閉装置においては、かかる方向転換部30及びかかるリンク機構33の少なくとも何れか一方を採用することができ、さらに、かかる方向転換部30及びかかるリンク機構33の各構成を適宜選択して部分的に採用することもできる。
【0047】
また、本発明にかかる車両用扉の補助開閉装置においては、図8に示すように、方向転換部40は、伝達部材41と、三つの案内部材42a,42b,42cとを備えて構成されてもよい。さらに、リンク機構43は、伝達部材41に第1部位44aにて枢着される第1回動部材44と、第1回動部材44の第2部位44bに第1部位45aにて枢着される第1連結部材45と、第1連結部材45の第2部位45bに第1部位46aにて枢着され、且つ可撓性を有する長尺な第2回動部材46と、第2回動部材46の第2部位46bに第1部位47aにて枢着される第2連結部材47と、第1部位48aで枢着されて且つ外周部で第1連結部材45を案内可能な第3回動部材48とを備えて構成され、第1回動部材44及び第2回動部材46は、それぞれ第3部位44c,46cを中心に回動可能に構成されると共に、第2連結部材47は、第2部位47bにて扉体Cに枢着されて構成されてもよい。
【0048】
かかる第3回動部材48は、第1連結部材45を案内する外周部に複数の歯を備えるスプロケットカムである。なお、本発明にかかる補助開閉装置においては、かかる方向転換部40及びかかるリンク機構43の少なくとも何れか一方を採用することができ、さらに、かかる方向転換部40及びかかるリンク機構43の各構成を適宜選択して部分的に採用することもできる。
【0049】
また、本発明にかかる車両用扉の補助開閉装置においては、規制手段14が基部5に固定される位置を変更可能に構成されてもよい。具体的には、規制手段14は、係止するリンク機構4(回動部材12)に対して配置変更可能に構成され、扉体Cの最大開き角度(扉体Cが開いて保持される角度)を調整可能に構成されてもよい。したがって、例えば、規制手段14が、上端部が下端部よりも高い位置となるように扉体Cを開いて保持することにより、扉体Cに落ちた雨水が扉体Cの勾配に従って下端部側に流れるため、荷箱本体A側に雨水が流れるのを防止することもできる。
【0050】
また、上記実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、方向転換部3が可撓性を有する長尺な伝達部材9と、伝達部材9を案内する案内部材10とを備えて構成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、ギア機構やカム機構を備えて構成されてもよい。
【0051】
また、上記実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、弾性部2が、開口部B及び荷箱本体Aの上面部Eに沿うように配置される場合を説明したが、かかる場合に限られず、長手方向が開口部B及び荷箱本体Aの側面部Dに沿うように配置される場合でもよい。要するに、弾性部2は、長手方向が開口部Cに沿って配置されていればよい。
【0052】
また、上記実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、荷箱本体Aが略直方体状、即ち、開口部B(後面部)と上面部Eとが略直交する場合を説明したが、かかる場合に限られず、開口部B(後面部)と上面部Eとが傾斜して交差する場合でもよい。
【0053】
また、上記実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、荷箱本体Aの後面部に開口部B及び扉体Cを備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、荷箱本体Aの側面部Dに開口部B及び扉体Cを備える場合でもよい。かかる場合、壁面部は、前面部又は後面部が該当する。
【0054】
また、上記実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、伝達部材9がローラチェーン9aで構成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、ワイヤやベルトの場合でもよい。しかし、伝達部材9が(ローラ)チェーンである方が、使用(経年)による伸びを抑制できるため好ましい。
【0055】
また、上記実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、案内部材10a,10bが略楕円形状の一部や略円形状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、図9に示すように、案内部材50が略小判形に形成される場合でもよい。
【0056】
また、上記実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、案内部材10a,10bを二つ備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、案内部材を一つ又は三つ以上備える場合でもよい。
【0057】
また、上記実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、リンク機構4が第1連結部材11を備える場合を説明したが、図9に示すように、第1連結部材11は必須の構成ではない。しかし、上記実施形態にかかる車両用扉の補助開閉装置1は、回動部材12の第3部位13cが基部5に枢着するための軸(ピン)と干渉するのを防止すべく、湾曲した板状に形成される第1連結部材11が設けられるため、伝達部材9の配置(回動部材12に接続する傾斜角度)をよりフレキシブルに対応できる。したがって、第1連結部材11を備えない場合に対して、第2案内部材10bをより開口部B側に配置することもできるため、より奥行方向に小型化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態にかかる補助開閉装置を採用した車両の全体図であって、斜視図を示す。
【図2】同実施形態にかかる補助開閉装置の全体図であって、側方側面図を示す。
【図3】同実施形態にかかる補助開閉装置の全体図であって、(a)は平面図、(b)は後方側面図を示す。
【図4】同実施形態にかかる補助開閉装置の全体図であって、(a)は扉体が開き始めた状態における側方側面図、(b)は扉体が完全に開いた状態における側方側面図を示す。
【図5】本発明にかかる他の実施形態にかかる補助開閉装置の全体図であって、側方側面図を示す。
【図6】同実施形態かかる方向転換部のみを採用した場合の補助開閉装置の全体図であって、側方側面図を示す。
【図7】本発明のさらに他の実施形態にかかる補助開閉装置の全体図であって、側方側面図を示す。
【図8】本発明のさらに他の実施形態にかかる補助開閉装置の全体図であって、側方側面図を示す。
【図9】本発明のさらに他の実施形態にかかる補助開閉装置の全体図であって、側方側面図を示す。
【図10】従来における補助開閉装置の全体図であって、(a)は側方側面図、(b)は後方側面図を示す。
【符号の説明】
【0059】
1…補助開閉装置、2…弾性部、3…方向転換部、4…リンク機構、9…伝達部材、10…案内部材、A…荷箱本体、B…開口部、B1…上枠部材、C…扉体、D…壁面部(側面部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された荷箱本体内に取り付けられ、荷箱本体の開口部に上端部が枢着される扉体を付勢することで、扉体のはね上げに伴って生じる自重によるモーメントを減少せしめるよう構成された車両用扉の補助開閉装置において、長手方向に弾性力が作用するように構成され、且つ長手方向が開口部に沿うようにして荷箱本体内に配置される長尺な弾性部と、弾性部の弾性力が作用する方向を方向転換して伝達可能な方向転換部と、方向転換部から伝達される弾性部の弾性力により扉体を付勢可能なリンク機構とを備えることを特徴とする車両用扉の補助開閉装置。
【請求項2】
弾性部は、長手方向が開口部の上枠部材の内側に沿うようにして荷箱本体内に配置される請求項1に記載の車両用扉の補助開閉装置。
【請求項3】
リンク機構は、開口部と略直交する荷箱本体の壁面部に沿うようにして配置される請求項1又は2に記載の車両用扉の補助開閉装置。
【請求項4】
方向転換部は、可撓性を有し、且つ一端部が弾性部に接続されると共に他端部がリンク機構に接続される長尺な伝達部材と、伝達部材を案内する少なくとも一つの案内部材とを備える請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用扉の補助開閉装置。
【請求項5】
案内部材は、少なくとも一つが弾性部に隣設され、伝達部材は、弾性部に隣設される案内部材を介して、他端部側が壁面部に沿って配置される請求項4に記載の車両用扉の補助開閉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−29341(P2009−29341A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197409(P2007−197409)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(598051082)日本ボデーパーツ工業株式会社 (9)
【出願人】(507257105)合資会社富士機械研究所 (1)
【Fターム(参考)】