車両用操舵装置
【課題】衝撃吸収機構を備える操作部材格納式の車両用操舵装置を提供すること。
【解決手段】車両用操舵装置100は、操作部材2をインストルメントパネル14の内部の格納位置およびインストルメントパネル14の外部の操作位置の間に移動可能に支持するリンク機構16と、操作部材2を格納位置および操作位置に駆動する駆動機構18と、操作部材2の操作に応じて車輪を転舵する転舵機構とを備えている。リンク機構16は、操作部材2の移動に伴って変位する第1および第2のリンクアーム20,21と、これらのリンクアーム20,21間を連結する第3のリンクアーム22とを含む。衝撃吸収のときに、第3のリンクアーム22による第1および第2のリンクアーム20,21間の連結位置が変更される。
【解決手段】車両用操舵装置100は、操作部材2をインストルメントパネル14の内部の格納位置およびインストルメントパネル14の外部の操作位置の間に移動可能に支持するリンク機構16と、操作部材2を格納位置および操作位置に駆動する駆動機構18と、操作部材2の操作に応じて車輪を転舵する転舵機構とを備えている。リンク機構16は、操作部材2の移動に伴って変位する第1および第2のリンクアーム20,21と、これらのリンクアーム20,21間を連結する第3のリンクアーム22とを含む。衝撃吸収のときに、第3のリンクアーム22による第1および第2のリンクアーム20,21間の連結位置が変更される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両に用いられる車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に用いられる車両用操舵装置には、いわゆる二次衝突のときの衝撃を吸収するための衝撃吸収機構を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、車両用操舵装置として、操作部材をインストルメントパネル内に格納できる操作部材格納式の車両用操舵装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−111059号公報
【特許文献2】特開2004−182141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
操作部材格納式の車両用操舵装置においても、安全性を高めるために、衝撃吸収機構を設けることが好ましい。
この発明は、かかる背景のもとになされたものであり、衝撃吸収機構を備える操作部材格納式の車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための本発明は、操作部材(2)をインストルメントパネル(14)の内部の格納位置およびインストルメントパネルの外部の操作位置の間に移動可能に支持する支持機構(16,52,319)と、操作部材を格納位置および操作位置に駆動する駆動機構(18,53)と、操作部材の操作に応じて車輪(3)を転舵する転舵機構(4)とを備え、上記支持機構および駆動機構の少なくとも一方が、車両の二次衝突のときの衝撃を吸収する衝撃吸収機構(18,26,27,28,29,53)を含むことを特徴とする車両用操舵装置(100,200,300,400)である。本発明では、操作部材をインストルメントパネルの内部の格納位置と外部の操作位置とに移動させるための構造に衝撃吸収機構を付加することができる。
【0005】
また、上記支持機構は、操作部材の移動に伴って変位する複数のリンクアーム(20,21)と、これらのリンクアームのうち対応するリンクアーム間を連結する連結部材(22)とを含み、衝撃吸収のときに、連結部材による対応するリンクアーム間の連結位置が変更されるようにしてある場合がある(請求項2)。この場合、衝撃吸収のときに、支持機構のリンクアーム間の連結位置が変更されることにより、リンクアームの移動の自由度を高くすることができ、その結果、十分な衝撃吸収ストロークを得ることが可能となる。
【0006】
また、上記支持機構の変位を規制する規制部材(49)を備え、衝撃吸収のときに、規制部材による支持機構の変位の規制が解除されるようにしてある場合がある(請求項3)。この場合、規制部材による規制の解除により、支持機構の可動範囲を大きくでき、結果として、十分な衝撃吸収ストロークを得ることが可能となる。
また、上記支持機構は、湾曲状のガイド(52)と、操作部材を支持し、上記ガイドに沿って案内される湾曲部(54)を含む支持アーム(319)とを含み、上記支持アームが上記駆動機構によって駆動される場合がある(請求項4)。この場合、操作部材を支持する支持アームが湾曲状の軌跡を描くようにしたので、インストルメントパネル内に複雑な支持機構を設ける必要がない。これにより、操作部材を格納位置および操作位置に変位させるときの可動部分の占めるスペースを削減することができる。
【0007】
また、上記駆動機構は電動モータ(53)を含み、衝撃吸収のときに、上記電動モータが発電することにより、衝撃を吸収するようにしてある場合がある(請求項5)。この場合、通常は操作部材を駆動する電動モータを発電機として作動させることにより、衝突の運動エネルギを電気エネルギに変換して吸収することができる。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下では、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用操舵装置100の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、車両用操舵装置100は、操作部材2と、操作部材2の操作に応じて転舵輪3(車輪)を転舵する転舵機構4とを備えている。この実施形態に係る車両用操舵装置100は、操作部材2と転舵機構4とが機械的に連結されていない、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置である。操作部材2の操作(回転操作)に応じて駆動される転舵用アクチュエータ5の動作を、転舵軸6の直線運動(車幅方向への直線運動)に変換し、この転舵軸6の直線運動を舵取り用の左右の転舵輪3の転舵運動に変換することにより転舵が達成される。
【0009】
転舵用アクチュエータ5は、例えばブラシレスモータ等の電動モータを含む構成である。転舵用アクチュエータ5の駆動力は、図示しない運動変換機構(例えばボールねじ機構)により、転舵軸6の軸方向(車幅方向)への直線運動に変換される。転舵軸6の直線運動がタイロッド7に伝達されることにより、ナックルアーム8の回動が引き起こされる。これにより、ナックルアーム8に連結された転舵輪3の転舵が達成される。
【0010】
操作部材2は、回転シャフト9の一端部(図1では上端部)に連結されている。回転シャフト9は、車体(図示せず)に対して回転可能に支持されている。回転シャフト9の他端部(図1では下端部)には、操作部材2に操舵反力を与えるための反力用アクチュエータ10が連結されている。反力用アクチュエータ10としては、例えばブラシレスモータ等の電動モータを用いることができる。
【0011】
操作部材2の操舵角は、操舵角センサ11によって検出される。また、操作部材2に加えられた操舵トルクは、トルクセンサ12によって検出される。図示はしないが、これらのセンサ11,12の他にも、転舵輪3の転舵角を検出するための転舵角センサや、車速を検出するための車速センサ等が設けられている。上記のセンサ類の各検出信号は、マイクロコンピュータを含む制御装置13に入力される。制御装置13は、入力された検出信号に基づいて転舵用アクチュエータ5や反力用アクチュエータ10を制御する。制御装置13は、操作部材2の操作方向とは逆方向の適当な反力が発生されるように反力用アクチュエータ10を制御する。
【0012】
図2は、車両用操舵装置100の要部の図解的な側面図である。図2は、車両用操舵装置100が車両に取り付けられた状態を示している。図2では、操作部材2がインストルメントパネル14の内部の格納位置に配置されている。図2において、運転席は操作部材2の左側に位置している。図2における右方が車両の前方側であり、図2における左方が車両の後方側である。このような方向の定義は、他の図(図8、図9、図10、図12および図14)においても適用される。
【0013】
図2を参照して、車両用操舵装置100は、インストルメントパネル14内に操作部材2を格納可能な操作部材格納式の車両用操舵装置である。車両用操舵装置100は、リンク機構16(支持機構)と、駆動機構18とを備えている。操作部材2は、支持アーム19等を介してリンク機構16に支持されている。リンク機構16は、操作部材2をインストルメントパネル14の内部の格納位置(図2に示す位置)およびインストルメントパネル14の外部の操作位置(図8参照)の間に移動可能に支持している。また、駆動機構18は、操作部材2を格納位置と操作位置との間で移動させることができる。
【0014】
リンク機構16は、第1の端部20aおよび第2の端部20bを有する第1のリンクアーム20(リンクアーム)と、第1の端部21aおよび第2の端部21bを有する第2のリンクアーム21(リンクアーム)と、第1の端部22aおよび第2の端部22bを有する第3のリンクアーム22(連結部材)とを備えている。
また、駆動機構18は、例えば直動形モータその他の直動形アクチュエータである。駆動機構18は、本体部23と、この本体部23に保持されたロッド24とを有している。本体部23の一端部23aは、支軸23bを介して固定部材A1に回動可能に支持されている。駆動機構18は、支軸23bの回りに回動可能となっている。固定部材A1は、ベースとしての車体側部材B1に固定されている。
【0015】
駆動機構18は、本体部23に対してロッド24を直線的に移動させることができる。ロッド24の先端は、第1のリンクアーム20の途中部に回転可能に連結されている。駆動機構18は、本体部23に対してロッド24を進退させることによりリンク機構16を駆動することができる。駆動機構18は、制御装置13(図1参照)によって制御される。
【0016】
図3は、リンク機構16の図解的な平面図である。
図2および図3を参照して、第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21は、それぞれ一対設けられている。一対の第1のリンクアーム20は、図3に示すように、リンク機構16の幅方向(図3における左右方向)に間隔を隔てて配置されている。同様に、一対の第2のリンクアーム21は、リンク機構16の幅方向に間隔を隔てて配置されている。第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21は、車両の前後方向に並んで配置されている。第1のリンクアーム20は、第2のリンクアーム21に対して車両の後方側に配置されている。
【0017】
各第1のリンクアーム20の第1の端部20aは、車体側部材B1に固定されたベース25に回転可能に連結されている。また、各第2のリンクアーム21の第1の端部21aは、ベース25に回転可能に連結されている。第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21は、それぞれ第1の端部20aおよび第1の端部21aを支点として回動可能にベース25に連結されている。
【0018】
また、図2に示すように、各第1のリンクアーム20の第2の端部20bには、第1のリンクアーム20の長手方向に延びる第1の長孔26が形成されている。各第1の長孔26の上端部には、第1の連結軸27が嵌合されている。第1の連結軸27は、各第1のリンクアーム20に回転可能に保持されている。一対の第1のリンクアーム20の第2の端部20bは、第1の連結軸27を介して互いに連結されている。第1の連結軸27としては、例えば断面円形の丸棒が用いられている。
【0019】
同様に、各第2のリンクアーム21の第2の端部21bには、第2のリンクアーム21の長手方向に延びる第2の長孔28が形成されている。各第2の長孔28の上端部には、第2の連結軸29が嵌合されている。第2の連結軸29は、各第2のリンクアーム21に回転可能に保持されている。一対の第2のリンクアーム21の第2の端部21bは、第2の連結軸29を介して互いに連結されている。第2の連結軸29としては、例えば断面円形の丸棒が用いられている。
【0020】
一方、第3のリンクアーム22は、図3に示すように、第1の連結軸27と第2の連結軸29との間を掛け渡すようにリンク機構16の前後方向(車両の前後方向)配置されている。第3のリンクアーム22の第1の端部22aは、一対の第1のリンクアーム20間に位置しており、第1の連結軸27に回転可能に連結されている。また、第3のリンクアーム22の第2の端部22bは、一対の第2のリンクアーム21間に位置しており、第2の連結軸29に回転可能に連結されている。第3のリンクアーム22は、第1の連結軸27および第2の連結軸29を介して、第1のリンクアーム20の第2の端部20bと第2のリンクアーム21の第2の端部21bとを連結している。
【0021】
また、第3のリンクアーム22の第1の端部22aには、支持アーム19の第1の端部19aが固定されている。支持アーム19は、第3のリンクアーム22の第1の端部22aから車両の後方側に延びている。支持アーム19は、第3のリンクアーム22に対して所定の角度をなしている。図2に示すように、支持アーム19には、第1の支持フレーム30、第2の支持フレーム31およびカバー32が固定されている。
【0022】
第1の支持フレーム30は、支持アーム19の第2の端部19bに固定されている。また、第2の支持フレーム31は、支持アーム19の第2の端部19bに近接した位置に固定されている。第1の支持フレーム30および第2の支持フレーム31は、それぞれ平板状の部材である。第1の支持フレーム30と第2の支持フレーム31との間には支持アーム19の長手方向に間隔が設けられている。操作部材2の一部は、第1の支持フレーム30と第2の支持フレーム31との間に配置されている。操作部材2は、第2の支持フレーム31に回転可能に支持されている。
【0023】
また、第1の支持フレーム30の運転席側には、フロントパネル33が固定されている。フロントパネル33は、側面視において例えば湾曲状をなしている。フロントパネル33は、インストルメントパネル14に形成された開口14aを覆うことができる形状にされている。インストルメントパネル14は、側面視において例えばフロントパネル33に滑らかに連なる湾曲状をなしている。
【0024】
図2に示すように、操作部材2が格納位置にあるとき、フロントパネル33は、開口14aの概ね全域を覆っている。また、操作部材2が格納位置にあるとき、インストルメントパネル14およびフロントパネル33の運転席側の表面(図2では左側の表面)は、滑らかに連なっている。
一方、カバー32は、支持アーム19の第1の端部19aよりの位置に固定されている。カバー32は、フロントパネル33と概ね等しい形状にされている。カバー32は、開口14aの大部分の領域を覆うことができる形状にされている。図示はしないが、カバー32には、支持アーム19が挿通する挿通孔が形成されている。カバー32は、上記挿通孔に支持アーム19が挿通した状態で当該支持アーム19に固定されている。
【0025】
図4は、第1のリンクアーム20の第1の端部20aを拡大した図解的な側面図である。
図4を参照して、第1の長孔26は、その上端部に位置する嵌合部34と、この嵌合部34から第1のリンクアーム20の長手方向に延びる延設部35とを有している。嵌合部34は、側面視において概ね円形をなしている。嵌合部34の直径は、第1の連結軸27の外径と概ね等しくされている。また、延設部35の幅H1(長手方向と直交する方向への長さ)は、第1の連結軸27の外径よりも短くされている。延設部35の幅H1は、第1のリンクアーム20の長手方向に沿って一定とされている。
【0026】
第1の連結軸27は、嵌合部34に嵌合されている。第1の連結軸27は、嵌合部34内で回転可能に保持されている。第1の連結軸27に所定値以上の下向きの荷重が加えられると、第1の連結軸27は、嵌合部34から外れて延設部35に移動するようになっている。第1の連結軸27は、車両用操舵装置100の通常使用時において、嵌合部34において回転可能に保持される。
【0027】
また図示はしないが、第2のリンクアーム21に形成された第2の長孔28は、第1の長孔26と概ね同じ形状にされている。すなわち、第2の長孔28は、その上端部に位置する嵌合部と、この嵌合部から第2のリンクアーム21の長手方向に延びる延設部とを有している。第2の長孔28の嵌合部の直径は、第2の連結軸29の外径と概ね等しくされている。また、第2の長孔28の延設部の幅(長手方向と直交する方向への長さ)は、第2の連結軸29の外径よりも短くされている。第2の長孔28の延設部の幅は、第2のリンクアーム21の長手方向に沿って一定とされている。
【0028】
第2の連結軸29は、第2の長孔28の嵌合部に嵌合されている。第2の連結軸29は、第2の長孔28の嵌合部内で回転可能に保持されている。第2の連結軸29に所定値以上の下向きの荷重が加えられると、第2の連結軸29は、第2の長孔28の嵌合部から外れて第2の長孔28の延設部に移動するようになっている。第2の連結軸29は、車両用操舵装置100の通常使用時において、第2の長孔28の嵌合部において回転可能に保持される。
【0029】
図5は、フロントパネル33の図解的な正面図である。
図5を参照して、フロントパネル33は、正面視において概ね矩形をなしている。フロントパネル33の正面には、操作部36と表示部37とが設けられている。操作部36は、例えば非常点滅表示灯(いわゆるハザードランプ)用ボタンやパーキングブレーキ用ボタン等を含む複数のボタン38により構成されている。また、表示部37は、例えば、エンジン回転数表示部39および車速表示部40を含む。
【0030】
エンジン回転数表示部39は、例えば、フロントパネル33の幅方向(図5における左右方向)に配列された複数の矩形の点灯部39aにより構成されている。エンジン回転数が上昇すると、各点灯部39aは、図5における左端から順番にエンジン回転数に対応する個数だけ点灯する。
また、車速表示部40は、例えば、フロントパネル33の幅方向に配列された複数の棒状の点灯部40aにより構成されている。各点灯部40aは長さが異なっており、フロントパネル33の高さ方向(図5における上下方向)に延びている。各点灯部40aの長さは、図5における右方に行くにしたがって長くなっている。各点灯部40aの下端の位置は揃えられており、各点灯部40aの上端の位置は図5における右方に行くにしたがって高くなっている。車速が上昇すると、各点灯部40aは、図5における左端から順番に車速に対応する個数だけ点灯する。
【0031】
図6は、操作部材2の図解的な正面図である。また、図7は、フロントパネル33等を含む操作部材2の図解的な側面図である。図7では、操作部材2の一部(後述の一対の回動アーム43および一対の把持部44)の図示を省略している。
図6および図7を参照して、操作部材2は、操作部材本体42と、この操作部材本体42に回転可能に支持された一対の回動アーム43と、一対の回動アーム43にそれぞれ固定された運転者把持用の一対の把持部44とを備えている。一対の把持部44には、方向指示器点灯用のボタン45がそれぞれ設けられている。
【0032】
操作部材本体42は、図7に示すように、回転シャフト9を介して第2の支持フレーム31に回転可能に連結されている。操作部材本体42は、第2の支持フレーム31および支持アーム19等を介してリンク機構16に連結されている。上述の反力用アクチュエータ10は、第2の支持フレーム31に固定されている。反力用アクチュエータ10は、複数の歯車を介して回転シャフト9に連結されている。
【0033】
操作部材本体42には、一対の回転軸46が保持されている。各回転軸46は、操作部材本体42の高さ方向(図6および図7における上下方向)に延びている。各回転軸46は、その中心軸線を回転軸線L1として回転可能に操作部材本体42に保持されている。
また、各回転軸46には、把持部駆動用アクチュエータ47が連結されている。各把持部駆動用アクチュエータ47は操作部材本体42に保持されている。把持部駆動用アクチュエータ47は、対応する回転軸46をその回転軸線L1まわりに回転させることができる。把持部駆動用アクチュエータ47としては、例えば電動モータが用いられている。
【0034】
各回動アーム43の一端は、対応する回転軸46の途中部に固定されている。また、一対の把持部44は、それぞれ一対の回動アーム43の他端に固定されている。把持部駆動用アクチュエータ47によって回転軸46が回転軸線L1まわりに回動されると、当該回転軸46に対応する回動アーム43および把持部44が当該回転軸線L1まわりに一体的に回動される。これにより、一対の回動アーム43が折りたたまれた状態である非使用位置(図2に示す位置)と、一対の回動アーム43が開かれた状態である使用位置(図6に示す位置)との間で、一対の回動アーム43および一対の把持部44を移動させることができる。
【0035】
各把持部駆動用アクチュエータ47による回転軸46の回転位置は、各回転軸46の先端に連結された例えば光学式のロータリエンコーダ等の位置検出装置48によって検出される。各位置検出装置48の検出信号は、制御装置13(図1参照)に入力される。制御装置13は、入力された検出信号に基づいて把持部駆動用アクチュエータ47を制御する。制御装置13は、例えば、一対の回動アーム43の動作が同期するように一対の把持部駆動用アクチュエータ47を制御する。
【0036】
図8は、車両用操舵装置100の要部の図解的な側面図である。図8では、操作部材2がインストルメントパネル14の外部の操作位置に配置されている。以下では、操作部材2が格納位置から操作位置に移動するときの動作の一例について説明する。
図2および図8を参照して、操作部材2が格納位置に配置され、一対の回動アーム43および一対の把持部44が非使用位置にある状態(図2に示す状態)で、車両が始動(例えばエンジンが始動またはバッテリからの電力の供給が開始)されると、制御装置13は、駆動機構18を制御して、ロッド24を本体部23に対して進出させる。これにより、第1のリンクアーム20に回転力が与えられ、第1のリンクアーム20がその第1の端部20aを支点として車両の後方側に回動する。また、第1のリンクアーム20の回動に伴って、第2のリンクアーム21および第3のリンクアーム22が車両の後方側に回動し、操作部材2が円弧状の軌跡を描きながら車両の後方側に移動する。これにより、操作部材2が操作位置に移動される。
【0037】
操作部材2が操作位置に配置されることで、支持アーム19の途中部に固定されたカバー32は、インストルメントパネル14の開口14a内に配置される。これにより、インストルメントパネル14の開口14aの少なくとも一部がカバー32によって覆われる。インストルメントパネル14の開口14aの少なくとも一部をカバー32によって覆うことにより、当該開口14aからインストルメントパネル14内に物が入ったり、インストルメントパネル14の内部に存在する異物等が当該開口14aから車内空間に進入したりすることを防止することができる。また、上述のように、カバー32はフロントパネル33と概ね等しい形状(側面視において湾曲状)にされているので、操作部材2が操作位置にあるとき、インストルメントパネル14およびカバー32の運転席側の表面(図8では左側の表面)は、滑らかに連なっている。
【0038】
次いで、制御装置13は、各把持部駆動用アクチュエータ47(図6および図7参照)を制御して、一対の回動アーム43および一対の把持部44を回動させる。これにより、一対の回動アーム43および一対の把持部44が使用位置に配置され、車両用操舵装置100が図8に示す状態となる。一対の回動アーム43および一対の把持部44の非使用位置から使用位置への移動は、操作部材2が操作位置に配置されてから行われてもよく、操作部材2が格納位置から操作位置に移動される途中で行われてもよい。
【0039】
図9は、車両用操舵装置100の要部の図解的な側面図である。図9は、車両の衝突により運転者がフロントパネル33に衝突(いわゆる二次衝突)した後の状態を示している。図9において、二次衝突が起こる前の操作部材2等の位置を二点鎖線で示す。以下では、二次衝突による衝撃の吸収について説明する。
図9を参照して、運転者がフロントパネル33に衝突(いわゆる二次衝突)すると、二次衝突の衝撃がフロントパネル33から支持アーム19等を介して第3のリンクアーム22に伝達される。これにより、第3のリンクアーム22が車両の前方側に押されて、第1のリンクアーム20を車両の前方側に回動させる力が第1のリンクアーム20に働く。
【0040】
第1のリンクアーム20に働く力(第1のリンクアーム20を車両の前方側に回動させる力)が、駆動機構18が第1のリンクアーム20を車両の後方側に押す力よりも大きければ、第1のリンクアーム20はその第1の端部20aを支点として車両の前方側に回動する。またそれに伴って、第2のリンクアーム21および第3のリンクアーム22が車両の前方側に回動し、フロントパネル33や操作部材2等が円弧状の軌跡を描きながら車両の前方側に移動する。
【0041】
二次衝突によりフロントパネル33に加えられた衝撃の一部は、駆動機構18によって吸収される。すなわち、二次衝突によりフロントパネル33に加えられた衝撃の一部は、本体部23に対してロッド24を進出させる力に反して当該ロッド24を本体部23に押し込む力となって駆動機構18に吸収される。駆動機構18は、二次衝突による衝撃を吸収するための衝撃吸収機構として機能する。
【0042】
一方、二次衝突の衝撃が第3のリンクアーム22に伝達されると、第1の連結軸27および第2の連結軸29には下向きの力が働く。第1の連結軸27に働く力が所定値よりも大きければ、第1の連結軸27は第1の長孔26の嵌合部34から外れて延設部35に移動する。同様に、第2の連結軸29に働く力が所定値よりも大きい場合には、第2の連結軸29は第2の長孔28の嵌合部から外れて延設部に移動する。これにより、第3のリンクアーム22が第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21に対して下方に移動し、第3のリンクアーム22による第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21の連結位置が変更される(連結位置が下方に移動する)。フロントパネル33や操作部材2等は、第3のリンクアーム22の移動に連動して下方に移動する。
【0043】
上述のように、第1の長孔26の延設部35の幅H1は、第1の連結軸27の外径よりも短くされている。したがって、第1の連結軸27が第1の長孔26の嵌合部34から延設部35に移動するとき、第1の長孔26の延設部35は第1の連結軸27によって押し広げられる。そのため、第1の連結軸27が第1の長孔26の嵌合部34から延設部35に移動するとき、第1の連結軸27にはその移動方向と反対方向の抵抗が加わる。また、第1の連結軸27が第1の長孔26の延設部35に沿って移動するとき、第1の連結軸27は第1の長孔26の延設部35を押し広げながら移動していく。したがって、第1の連結軸27は、その移動方向と反対方向の抵抗を受けながら第1の長孔26の延設部35に沿って移動していく。
【0044】
二次衝突によりフロントパネル33に加えられた衝撃の一部は、第1の連結軸27が第1の長孔26の延設部35を押し広げる力となって吸収される。同様に、二次衝突によりフロントパネル33に加えられた衝撃の一部は、第2の連結軸29が第2の長孔28の延設部を押し広げる力となって吸収される。第1の連結軸27および第1の長孔26、ならびに第2の連結軸29および第2の長孔28は、二次衝突による衝撃を吸収するための衝撃吸収機構として機能する。
【0045】
以上のように本実施形態では、二次衝突のときに、第1のリンクアーム20等を車両の前方側に回動させることにより、フロントパネル33や操作部材2等を円弧状の軌跡に沿って車両の前方側に移動させつつ、二次衝突による衝撃の一部を吸収することができる。また、二次衝突のときに、第3のリンクアーム22による第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21の連結位置を変更させることにより、フロントパネル33や操作部材2等を下方に移動させつつ、二次衝突による衝撃の一部を吸収することができる。これにより、二次衝突のときの衝撃を確実に吸収することができる。また、二次衝突のときに、フロントパネル33や操作部材2等を円弧状に移動させたり、下方に移動させたりすることができるので、フロントパネル33や操作部材2等の移動の自由度が高められており、その結果、十分な衝撃吸収ストロークが得られている。
【0046】
図10は、この発明の第2の実施形態に係る車両用操舵装置200の要部の図解的な側面図である。また、図11は、この発明の第2の実施形態に係るリンク機構16およびそれに関連する構成の図解的な平面図である。この図10および図11において、上述の図1〜9等に示された各部と同等の構成部分については、図1〜9等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0047】
この第2の実施形態と上述の第1の実施形態との主要な相違点は、リンク機構16の変位を規制する規制部材49がインストルメントパネル14の内部に設けられていることにある。
図10および図11を参照して、規制部材49は、例えばリンク機構16の一部を挟持して、当該リンク機構16の変位を規制する構成である。規制部材49は、一対の固定部50と、各固定部50から突出する可動部51とを有している。一対の固定部50は、フレームF1を介してインストルメントパネル14の内側に固定されている。規制部材49は、制御装置13(図1参照)によって制御される。
【0048】
図11に示すように、一対の固定部50は、平面視においてリンク機構16がその間に位置するようにリンク機構16の幅方向に並んで配置されている。各可動部51は、対応する固定部50に対してリンク機構16側に配置されている。各可動部51は、操作部材2が操作位置にある状態で、第3のリンクアーム22に水平に対向する位置に配置されている。可動部51は、固定部50に対してリンク機構16の幅方向に進退可能とされている。
【0049】
制御装置13は、操作部材2が操作位置にある状態で、各固定部50に対して可動部51を進出させる。これにより、第3のリンクアーム22の一部が一対の可動部51によって挟持され、リンク機構16の変位が規制される。また、制御装置13は、リンク機構16の変位が規制されている状態で例えば車両の衝突などにより車両に大きな衝撃が加わると、各可動部51を対応する固定部50内に退避させる。これにより、リンク機構16の変位の規制が解除される。
【0050】
この第2の実施形態によれば、操作部材2が操作位置にあるときに、規制部材49によってリンク機構16の変位を規制して、フロントパネル33や操作部材2等の位置を安定させることができる。さらに、車両の衝突などのときに、規制部材49によるリンク機構16の規制を解除させて、上述の第1の実施形態と同様に、リンク機構16の可動範囲を大きくすることができる。その結果、十分な衝撃吸収ストロークを得ることができる。
【0051】
なお、規制部材49としては、上述の構成のものに限られない。すなわち、規制部材49は、リンク機構16の変位を規制できるものであればよい。また、上述の説明では、第3のリンクアーム22を挟持してリンク機構16の変位を規制する場合について説明したが、リンク機構16における第3のリンクアーム22以外の部分を挟持して、リンク機構16の変位を規制してもよい。
【0052】
図12は、この発明の第3の実施形態に係る車両用操舵装置300の要部の図解的な側面図である。また、図13は、図12の一部の拡大図である。この図12および図13において、上述の図1〜9等に示された各部と同等の構成部分については、図1〜9等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第3の実施形態と上述の第1の実施形態との主要な相違点は、第1の実施形態では、リンク機構16によって操作部材2等が支持されていたのに対し、この第3の実施形態では、ガイド52および支持アーム319によって操作部材2等が支持されていることにある。すなわち、この第3の実施形態では、ガイド52および支持アーム319が支持機構として機能している。また、上述の第1の実施形態では、駆動機構18としての直動形アクチュエータによって操作部材2等が駆動されていたが、この第3の実施形態では、駆動機構としての電動モータ53によって操作部材2等が駆動される。
【0053】
図12を参照して、ガイド52は、その下端が車体側部材B1に固定されている。ガイド52は、車体側部材B1から上方に延びている。ガイド52の上端部は、インストルメントパネル14の近傍に達している。ガイド52は、側面視において車両の前方側に凸となる緩やかな湾曲状をなしている。
一方、支持アーム319は、取付機構55によってガイド52に取り付けられている。支持アーム319には、ガイド52に沿って案内される湾曲部54が設けられている。支持アーム319は、ガイド52に沿って移動可能となっている。湾曲部54は、ガイド52に対応する形状(側面視において車両の前方側に凸となる緩やかな湾曲形状)とされている。上述のフロントパネル33や操作部材2等は、支持アーム319の第2の端部319b(図12では上端部)に固定されている。
【0054】
取付機構55は、支持アーム319に固定された複数の保持部材56と、複数のローラ57とを備えている。複数の保持部材56は、支持アーム319の長手方向に間隔を隔てて配置されている。各保持部材56の一部は、支持アーム319から車両の後方側に延びている。各保持部材56の一部には、一対のローラ57が保持されている。各保持部材56に保持された一対のローラ57は、保持部材56の長手方向に間隔を隔てて配置されている。各ローラ57は、その中心軸線まわりに回転可能に保持されている。
【0055】
支持アーム319は、対となるローラ57によってガイド52が挟まれた状態でガイド52に取り付けられている。支持アーム319は、各ローラ57の回転によりガイド52に沿って滑らかに案内される。支持アーム319がガイド52に沿って案内されることで、当該支持アーム319に固定されたフロントパネル33や操作部材2等が湾曲状の軌跡を描きながら車両の前後方向に移動される。支持アーム319は、上述の電動モータ53によって駆動される。
【0056】
電動モータ53は、支持アーム319を駆動することにより、フロントパネル33や操作部材2等を湾曲状の軌跡に沿って車両の前後方向に移動させることができる。これにより、格納位置と操作位置との間で操作部材2を移動させることができる。電動モータ53は、格納位置と操作位置との間の任意の位置に操作部材2を配置させることができる。したがって、操作部材2の位置を所定の範囲内において調節することができ、操作部材2の位置の自由度が高められている。電動モータ53は、制御装置13(図1参照)によって制御される。
【0057】
図13を参照して、電動モータ53は出力軸58を有している。電動モータ53は、出力軸58が車幅方向(図13では紙面に垂直な方向)と平行になるように配置されている。出力軸58には、ピニオン59が同行回転可能に連結されている。電動モータ53のモータハウジング53aは、例えば車体に固定された固定部材A2に固定されている。
また、支持アーム319の上側面には、ピニオン59に噛み合うラック60が形成されている。電動モータ53の駆動力は、ピニオン59およびラック60を介して支持アーム319に伝達される。すなわち、出力軸58の回転は、ピニオン59およびラック60によって、支持アーム319の長手方向に沿う運動に変換される。電動モータ53の駆動力を支持アーム319に伝達することにより、支持アーム319をガイド52に沿って移動させることができる。
【0058】
電動モータ53は、操作部材2を格納位置および操作位置に駆動する駆動機構として機能する。また、電動モータ53は、車両の衝突時において、二次衝突のときの衝撃を吸収する衝撃吸収機構として機能する。
すなわち、運転者がフロントパネル33に衝突(いわゆる二次衝突)すると、二次衝突の衝撃がフロントパネル33から支持アーム319に伝達され、支持アーム319を車両の前方側に押す力が支持アーム319に働く。このとき、支持アーム319に働く力が所定値よりも大きければ、支持アーム319はガイド52に沿って車両の前方側に移動する。またその一方で、支持アーム319に働く力がピニオン59およびラック60によって電動モータ53の出力軸58に伝達され、当該出力軸58が回転する。
【0059】
電動モータ53は、出力軸58の回転により発電機として作動して、二次衝突によりフロントパネル33に加えられた衝撃の一部を吸収する。すなわち、二次衝突の運動エネルギが電動モータ53によって電気エネルギに変換され吸収される。
この第3の実施形態によれば、通常は操作部材2を駆動する電動モータ53を発電機として作動させることにより、二次衝突の運動エネルギを電気エネルギに変換して吸収することができる。また、車両の衝突時に、制御装置13によって操作部材2等が引き込む(操作部材2等が格納位置側に移動する)ように電動モータ53を制御することにより、二次衝突のときに運転者が受ける衝撃を和らげることができる。さらに、この第3の実施形態によれば、操作部材2を支持する支持アーム319が湾曲状の軌跡を描くようにしたので、インストルメントパネル14内に複雑な支持機構を設ける必要がない。これにより、操作部材2を格納位置および操作位置に変位させるときの可動部分の占めるスペースを削減することができる。
【0060】
図14は、この発明の第4の実施形態に係る車両用操舵装置400の要部の図解的な側面図である。また、図15は、この発明の第4の実施形態に係る操作部材2およびこれに関連する構成の図解的な平面図である。この図14および図15において、上述の図1〜9等に示された各部と同等の構成部分については、図1〜9等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0061】
この第4の実施形態と上述の第1の実施形態との主要な相違点は、第1の実施形態では、リンク機構16および駆動機構18が車体側部材B1に固定されていたのに対し、この第4の実施形態では、ベースとしての車体側部材B2に対して車両の前後方向に移動可能な例えば板状のスライダ61にリンク機構16および駆動機構18が固定されていることにある。また、この第4の実施形態では、支持アーム419の途中部が上下方向に屈曲可能とされている。
【0062】
図14を参照して、車体側部材B2には、車両の前後方向に延びる例えばスライド溝からなる案内部62が形成されている。スライダ61は、案内部62によって車両の前後方向に案内される。
また、スライダ61には、スライダ移動機構70が結合されている。スライダ61は、このスライダ移動機構70によって車両の前後方向に駆動される。スライダ移動機構70としては、例えば直動モータなどの直動形アクチュエータを用いることができる。具体的には、スライダ移動機構70は、車体側部材B2に固定された固定部70aと、この固定部70aによって進退駆動される可動部70bとを備えている。スライダ移動機構70は、このような構成に限らず、回転形モータ(図示せず)と、この回転形モータの回転をスライダ61に連結されたロッド(図示せず)の直線運動に変換する運動変換機構(図示せず)とを備えるものであってもよい。スライダ移動機構70は、制御装置13(図1参照)によって制御される。
【0063】
図14および図15を参照して、支持アーム419は、第1のアーム63および第2のアーム64を有している。第1のアーム63および第2のアーム64は、上下方向に屈曲可能に連結されている。上述のフロントパネル33や操作部材2等は、第2のアーム64に固定されている。
第1のアーム63の一端部は、第3のリンクアーム22の第1の端部22aに固定されている。第1のアーム63は、第3のリンクアーム22の第1の端部22aから車両の後方側に延びている。第1のアーム63は、第3のリンクアーム22に対して所定の角度をなしている。
【0064】
また、図15に示すように、第1のアーム63の他端部には、凹部66が形成されている。凹部66は、上下に開放されており、その左右には一対の対向板65が配置されている。第2のアーム64の一端部は凹部66に嵌合されている。
図15に示すように、一方の対向板65には、第1のアーム63に対して第2のアーム64を屈曲させるための電動モータ67のモータハウジング67aが固定されている。電動モータ67の出力軸68は、車幅方向(図15では左右方向)に第1のアーム63および第2のアーム64を挿通している。電動モータ67の出力軸68は、一対の対向板65に対して回転可能とされている。また、電動モータ67の出力軸68は、第2のアーム64の一端部に同行回転可能に連結されている。電動モータ67を駆動することで、第1のアーム63に対して第2のアーム64を屈曲させることができる。電動モータ67は、制御装置13(図1参照)によって制御される。
【0065】
この第4の実施形態によれば、スライダ61を車両の前後方向に移動させることにより、フロントパネル33や操作部材2等を車両の前後方向に移動させることができる。これにより、車両の前後方向に関して操作部材2の位置を調節することができる。また、スライダ61を車両の前後方向に移動させることにより、二次衝突のときの衝撃吸収ストロークを大きくすることができる。さらに、この第4の実施形態によれば、電動モータ67によって第1のアーム63に対して第2のアーム64を屈曲させることにより、操作部材2の角度を所定の範囲内で調節することができる。これにより、操作部材2の位置の自由度が高められている。
【0066】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、上述の第1〜第4の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上述の第1、第2および第4の実施形態では、第1のリンクアーム20に形成された第1の長孔26の延設部35の幅H1が一定である場合について説明したが、これに限られない。すなわち、第1の長孔26の延設部35の幅H1は、例えば第1の長孔26の長手方向に関する一端26aから他端26aに向かうに従って減少されていてもよい。
【0067】
具体的には、例えば図16に示すように、第1の長孔26の延設部35の幅H1は、第1の長孔26の一端26aから他端26aに向かうに従って連続的に減少されていてもよい。また、例えば図17に示すように、第1の長孔26の延設部35の幅H1は、第1の長孔26の一端26aから他端26aに向かうに従って段階的に減少されていてもよい。第1の長孔26の延設部35の幅H1を第1の長孔26の一端26aから他端26aに向かうに従って減少させることにより、第1の長孔26に沿って第1の連結軸27を移動させて二次衝突による衝撃を吸収するときに、第1の連結軸27に加わる抵抗を増加させていくことができる。これにより、二次衝突による衝撃を確実に吸収することができる。図示はしないが、第2の長孔28も第1の長孔26と同様の変更が可能である。
【0068】
また、第1の長孔26は、図4に示す形状に限られない。すなわち、例えば図18に示すように、第1の長孔26は、その幅H1(長手方向と直交する方向への長さ)が一定とされており、その上端部に、内側に突出する一対の突起69が設けられていてもよい。一対の突起69は、第1の長孔26の幅方向に間隔を隔てて対向している。一対の突起69の間隔は、第1の連結軸27の外径よりも小さくされている。第1の連結軸27は、一対の突起69によって第1の長孔26の上端部に保持されている。
【0069】
なお、一対の突起69の何れか一方を廃止してもよい。また、第2の長孔28も第1の長孔26と同様の変更が可能である。
また、上述の第1〜第4の実施形態では、車両用操舵装置が、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置である場合について説明したが、本発明に係る車両用操舵装置は、ステアバイワイヤ式の車両用操舵装置に限らず電動式や油圧式等のその他の車両用操舵装置であってもよい。また、本発明に係る車両用操舵装置は、一対のケーブルを用いて操作部材の動作を転舵機構に伝達するケーブル式の車両用操舵装置であってもよい。
【0070】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図3】リンク機構の図解的な平面図である。
【図4】第1のリンクアームの第1の端部を拡大した図解的な側面図である。
【図5】フロントパネルの図解的な正面図である。
【図6】操作部材の図解的な正面図である。
【図7】フロントパネル等を含む操作部材の図解的な側面図である。
【図8】車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図9】車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図10】この発明の第2の実施形態に係る車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図11】この発明の第2の実施形態に係るリンク機構およびそれに関連する構成の図解的な平面図である。
【図12】この発明の第3の実施形態に係る車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図13】図12の一部の拡大図である。
【図14】この発明の第4の実施形態に係る車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図15】この発明の第4の実施形態に係る操作部材およびこれに関連する構成の図解的な平面図である。
【図16】第1の長孔の他の形状を説明するための第1のリンクアームの図解的な側面図である。
【図17】第1の長孔のさらに他の形状を説明するための第1のリンクアームの図解的な側面図である。
【図18】第1の長孔のさらに他の形状を説明するための第1のリンクアームの図解的な側面図である。
【符号の説明】
【0072】
2・・・操作部材、3・・・転舵輪(車輪)、4・・・転舵機構、14・・・インストルメントパネル、16・・・リンク機構(支持機構)、18・・・駆動機構(衝撃吸収機構)、20・・・第1のリンクアーム(リンクアーム)、21・・・第2のリンクアーム(リンクアーム)、22・・・第3のリンクアーム(連結部材)、26・・・第1の長孔(衝撃吸収機構)、27・・・第1の連結軸(衝撃吸収機構)、28・・・第2の長孔(衝撃吸収機構)、29・・・第2の連結軸(衝撃吸収機構)、49・・・規制部材、52・・・ガイド(支持機構)、53・・・電動モータ(駆動機構、衝撃吸収機構)、54・・・湾曲部、100・・・車両用操舵装置、200・・・車両用操舵装置、300・・・車両用操舵装置、319・・・支持アーム(支持機構)、400・・・車両用操舵装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両に用いられる車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に用いられる車両用操舵装置には、いわゆる二次衝突のときの衝撃を吸収するための衝撃吸収機構を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、車両用操舵装置として、操作部材をインストルメントパネル内に格納できる操作部材格納式の車両用操舵装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−111059号公報
【特許文献2】特開2004−182141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
操作部材格納式の車両用操舵装置においても、安全性を高めるために、衝撃吸収機構を設けることが好ましい。
この発明は、かかる背景のもとになされたものであり、衝撃吸収機構を備える操作部材格納式の車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための本発明は、操作部材(2)をインストルメントパネル(14)の内部の格納位置およびインストルメントパネルの外部の操作位置の間に移動可能に支持する支持機構(16,52,319)と、操作部材を格納位置および操作位置に駆動する駆動機構(18,53)と、操作部材の操作に応じて車輪(3)を転舵する転舵機構(4)とを備え、上記支持機構および駆動機構の少なくとも一方が、車両の二次衝突のときの衝撃を吸収する衝撃吸収機構(18,26,27,28,29,53)を含むことを特徴とする車両用操舵装置(100,200,300,400)である。本発明では、操作部材をインストルメントパネルの内部の格納位置と外部の操作位置とに移動させるための構造に衝撃吸収機構を付加することができる。
【0005】
また、上記支持機構は、操作部材の移動に伴って変位する複数のリンクアーム(20,21)と、これらのリンクアームのうち対応するリンクアーム間を連結する連結部材(22)とを含み、衝撃吸収のときに、連結部材による対応するリンクアーム間の連結位置が変更されるようにしてある場合がある(請求項2)。この場合、衝撃吸収のときに、支持機構のリンクアーム間の連結位置が変更されることにより、リンクアームの移動の自由度を高くすることができ、その結果、十分な衝撃吸収ストロークを得ることが可能となる。
【0006】
また、上記支持機構の変位を規制する規制部材(49)を備え、衝撃吸収のときに、規制部材による支持機構の変位の規制が解除されるようにしてある場合がある(請求項3)。この場合、規制部材による規制の解除により、支持機構の可動範囲を大きくでき、結果として、十分な衝撃吸収ストロークを得ることが可能となる。
また、上記支持機構は、湾曲状のガイド(52)と、操作部材を支持し、上記ガイドに沿って案内される湾曲部(54)を含む支持アーム(319)とを含み、上記支持アームが上記駆動機構によって駆動される場合がある(請求項4)。この場合、操作部材を支持する支持アームが湾曲状の軌跡を描くようにしたので、インストルメントパネル内に複雑な支持機構を設ける必要がない。これにより、操作部材を格納位置および操作位置に変位させるときの可動部分の占めるスペースを削減することができる。
【0007】
また、上記駆動機構は電動モータ(53)を含み、衝撃吸収のときに、上記電動モータが発電することにより、衝撃を吸収するようにしてある場合がある(請求項5)。この場合、通常は操作部材を駆動する電動モータを発電機として作動させることにより、衝突の運動エネルギを電気エネルギに変換して吸収することができる。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下では、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用操舵装置100の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、車両用操舵装置100は、操作部材2と、操作部材2の操作に応じて転舵輪3(車輪)を転舵する転舵機構4とを備えている。この実施形態に係る車両用操舵装置100は、操作部材2と転舵機構4とが機械的に連結されていない、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置である。操作部材2の操作(回転操作)に応じて駆動される転舵用アクチュエータ5の動作を、転舵軸6の直線運動(車幅方向への直線運動)に変換し、この転舵軸6の直線運動を舵取り用の左右の転舵輪3の転舵運動に変換することにより転舵が達成される。
【0009】
転舵用アクチュエータ5は、例えばブラシレスモータ等の電動モータを含む構成である。転舵用アクチュエータ5の駆動力は、図示しない運動変換機構(例えばボールねじ機構)により、転舵軸6の軸方向(車幅方向)への直線運動に変換される。転舵軸6の直線運動がタイロッド7に伝達されることにより、ナックルアーム8の回動が引き起こされる。これにより、ナックルアーム8に連結された転舵輪3の転舵が達成される。
【0010】
操作部材2は、回転シャフト9の一端部(図1では上端部)に連結されている。回転シャフト9は、車体(図示せず)に対して回転可能に支持されている。回転シャフト9の他端部(図1では下端部)には、操作部材2に操舵反力を与えるための反力用アクチュエータ10が連結されている。反力用アクチュエータ10としては、例えばブラシレスモータ等の電動モータを用いることができる。
【0011】
操作部材2の操舵角は、操舵角センサ11によって検出される。また、操作部材2に加えられた操舵トルクは、トルクセンサ12によって検出される。図示はしないが、これらのセンサ11,12の他にも、転舵輪3の転舵角を検出するための転舵角センサや、車速を検出するための車速センサ等が設けられている。上記のセンサ類の各検出信号は、マイクロコンピュータを含む制御装置13に入力される。制御装置13は、入力された検出信号に基づいて転舵用アクチュエータ5や反力用アクチュエータ10を制御する。制御装置13は、操作部材2の操作方向とは逆方向の適当な反力が発生されるように反力用アクチュエータ10を制御する。
【0012】
図2は、車両用操舵装置100の要部の図解的な側面図である。図2は、車両用操舵装置100が車両に取り付けられた状態を示している。図2では、操作部材2がインストルメントパネル14の内部の格納位置に配置されている。図2において、運転席は操作部材2の左側に位置している。図2における右方が車両の前方側であり、図2における左方が車両の後方側である。このような方向の定義は、他の図(図8、図9、図10、図12および図14)においても適用される。
【0013】
図2を参照して、車両用操舵装置100は、インストルメントパネル14内に操作部材2を格納可能な操作部材格納式の車両用操舵装置である。車両用操舵装置100は、リンク機構16(支持機構)と、駆動機構18とを備えている。操作部材2は、支持アーム19等を介してリンク機構16に支持されている。リンク機構16は、操作部材2をインストルメントパネル14の内部の格納位置(図2に示す位置)およびインストルメントパネル14の外部の操作位置(図8参照)の間に移動可能に支持している。また、駆動機構18は、操作部材2を格納位置と操作位置との間で移動させることができる。
【0014】
リンク機構16は、第1の端部20aおよび第2の端部20bを有する第1のリンクアーム20(リンクアーム)と、第1の端部21aおよび第2の端部21bを有する第2のリンクアーム21(リンクアーム)と、第1の端部22aおよび第2の端部22bを有する第3のリンクアーム22(連結部材)とを備えている。
また、駆動機構18は、例えば直動形モータその他の直動形アクチュエータである。駆動機構18は、本体部23と、この本体部23に保持されたロッド24とを有している。本体部23の一端部23aは、支軸23bを介して固定部材A1に回動可能に支持されている。駆動機構18は、支軸23bの回りに回動可能となっている。固定部材A1は、ベースとしての車体側部材B1に固定されている。
【0015】
駆動機構18は、本体部23に対してロッド24を直線的に移動させることができる。ロッド24の先端は、第1のリンクアーム20の途中部に回転可能に連結されている。駆動機構18は、本体部23に対してロッド24を進退させることによりリンク機構16を駆動することができる。駆動機構18は、制御装置13(図1参照)によって制御される。
【0016】
図3は、リンク機構16の図解的な平面図である。
図2および図3を参照して、第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21は、それぞれ一対設けられている。一対の第1のリンクアーム20は、図3に示すように、リンク機構16の幅方向(図3における左右方向)に間隔を隔てて配置されている。同様に、一対の第2のリンクアーム21は、リンク機構16の幅方向に間隔を隔てて配置されている。第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21は、車両の前後方向に並んで配置されている。第1のリンクアーム20は、第2のリンクアーム21に対して車両の後方側に配置されている。
【0017】
各第1のリンクアーム20の第1の端部20aは、車体側部材B1に固定されたベース25に回転可能に連結されている。また、各第2のリンクアーム21の第1の端部21aは、ベース25に回転可能に連結されている。第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21は、それぞれ第1の端部20aおよび第1の端部21aを支点として回動可能にベース25に連結されている。
【0018】
また、図2に示すように、各第1のリンクアーム20の第2の端部20bには、第1のリンクアーム20の長手方向に延びる第1の長孔26が形成されている。各第1の長孔26の上端部には、第1の連結軸27が嵌合されている。第1の連結軸27は、各第1のリンクアーム20に回転可能に保持されている。一対の第1のリンクアーム20の第2の端部20bは、第1の連結軸27を介して互いに連結されている。第1の連結軸27としては、例えば断面円形の丸棒が用いられている。
【0019】
同様に、各第2のリンクアーム21の第2の端部21bには、第2のリンクアーム21の長手方向に延びる第2の長孔28が形成されている。各第2の長孔28の上端部には、第2の連結軸29が嵌合されている。第2の連結軸29は、各第2のリンクアーム21に回転可能に保持されている。一対の第2のリンクアーム21の第2の端部21bは、第2の連結軸29を介して互いに連結されている。第2の連結軸29としては、例えば断面円形の丸棒が用いられている。
【0020】
一方、第3のリンクアーム22は、図3に示すように、第1の連結軸27と第2の連結軸29との間を掛け渡すようにリンク機構16の前後方向(車両の前後方向)配置されている。第3のリンクアーム22の第1の端部22aは、一対の第1のリンクアーム20間に位置しており、第1の連結軸27に回転可能に連結されている。また、第3のリンクアーム22の第2の端部22bは、一対の第2のリンクアーム21間に位置しており、第2の連結軸29に回転可能に連結されている。第3のリンクアーム22は、第1の連結軸27および第2の連結軸29を介して、第1のリンクアーム20の第2の端部20bと第2のリンクアーム21の第2の端部21bとを連結している。
【0021】
また、第3のリンクアーム22の第1の端部22aには、支持アーム19の第1の端部19aが固定されている。支持アーム19は、第3のリンクアーム22の第1の端部22aから車両の後方側に延びている。支持アーム19は、第3のリンクアーム22に対して所定の角度をなしている。図2に示すように、支持アーム19には、第1の支持フレーム30、第2の支持フレーム31およびカバー32が固定されている。
【0022】
第1の支持フレーム30は、支持アーム19の第2の端部19bに固定されている。また、第2の支持フレーム31は、支持アーム19の第2の端部19bに近接した位置に固定されている。第1の支持フレーム30および第2の支持フレーム31は、それぞれ平板状の部材である。第1の支持フレーム30と第2の支持フレーム31との間には支持アーム19の長手方向に間隔が設けられている。操作部材2の一部は、第1の支持フレーム30と第2の支持フレーム31との間に配置されている。操作部材2は、第2の支持フレーム31に回転可能に支持されている。
【0023】
また、第1の支持フレーム30の運転席側には、フロントパネル33が固定されている。フロントパネル33は、側面視において例えば湾曲状をなしている。フロントパネル33は、インストルメントパネル14に形成された開口14aを覆うことができる形状にされている。インストルメントパネル14は、側面視において例えばフロントパネル33に滑らかに連なる湾曲状をなしている。
【0024】
図2に示すように、操作部材2が格納位置にあるとき、フロントパネル33は、開口14aの概ね全域を覆っている。また、操作部材2が格納位置にあるとき、インストルメントパネル14およびフロントパネル33の運転席側の表面(図2では左側の表面)は、滑らかに連なっている。
一方、カバー32は、支持アーム19の第1の端部19aよりの位置に固定されている。カバー32は、フロントパネル33と概ね等しい形状にされている。カバー32は、開口14aの大部分の領域を覆うことができる形状にされている。図示はしないが、カバー32には、支持アーム19が挿通する挿通孔が形成されている。カバー32は、上記挿通孔に支持アーム19が挿通した状態で当該支持アーム19に固定されている。
【0025】
図4は、第1のリンクアーム20の第1の端部20aを拡大した図解的な側面図である。
図4を参照して、第1の長孔26は、その上端部に位置する嵌合部34と、この嵌合部34から第1のリンクアーム20の長手方向に延びる延設部35とを有している。嵌合部34は、側面視において概ね円形をなしている。嵌合部34の直径は、第1の連結軸27の外径と概ね等しくされている。また、延設部35の幅H1(長手方向と直交する方向への長さ)は、第1の連結軸27の外径よりも短くされている。延設部35の幅H1は、第1のリンクアーム20の長手方向に沿って一定とされている。
【0026】
第1の連結軸27は、嵌合部34に嵌合されている。第1の連結軸27は、嵌合部34内で回転可能に保持されている。第1の連結軸27に所定値以上の下向きの荷重が加えられると、第1の連結軸27は、嵌合部34から外れて延設部35に移動するようになっている。第1の連結軸27は、車両用操舵装置100の通常使用時において、嵌合部34において回転可能に保持される。
【0027】
また図示はしないが、第2のリンクアーム21に形成された第2の長孔28は、第1の長孔26と概ね同じ形状にされている。すなわち、第2の長孔28は、その上端部に位置する嵌合部と、この嵌合部から第2のリンクアーム21の長手方向に延びる延設部とを有している。第2の長孔28の嵌合部の直径は、第2の連結軸29の外径と概ね等しくされている。また、第2の長孔28の延設部の幅(長手方向と直交する方向への長さ)は、第2の連結軸29の外径よりも短くされている。第2の長孔28の延設部の幅は、第2のリンクアーム21の長手方向に沿って一定とされている。
【0028】
第2の連結軸29は、第2の長孔28の嵌合部に嵌合されている。第2の連結軸29は、第2の長孔28の嵌合部内で回転可能に保持されている。第2の連結軸29に所定値以上の下向きの荷重が加えられると、第2の連結軸29は、第2の長孔28の嵌合部から外れて第2の長孔28の延設部に移動するようになっている。第2の連結軸29は、車両用操舵装置100の通常使用時において、第2の長孔28の嵌合部において回転可能に保持される。
【0029】
図5は、フロントパネル33の図解的な正面図である。
図5を参照して、フロントパネル33は、正面視において概ね矩形をなしている。フロントパネル33の正面には、操作部36と表示部37とが設けられている。操作部36は、例えば非常点滅表示灯(いわゆるハザードランプ)用ボタンやパーキングブレーキ用ボタン等を含む複数のボタン38により構成されている。また、表示部37は、例えば、エンジン回転数表示部39および車速表示部40を含む。
【0030】
エンジン回転数表示部39は、例えば、フロントパネル33の幅方向(図5における左右方向)に配列された複数の矩形の点灯部39aにより構成されている。エンジン回転数が上昇すると、各点灯部39aは、図5における左端から順番にエンジン回転数に対応する個数だけ点灯する。
また、車速表示部40は、例えば、フロントパネル33の幅方向に配列された複数の棒状の点灯部40aにより構成されている。各点灯部40aは長さが異なっており、フロントパネル33の高さ方向(図5における上下方向)に延びている。各点灯部40aの長さは、図5における右方に行くにしたがって長くなっている。各点灯部40aの下端の位置は揃えられており、各点灯部40aの上端の位置は図5における右方に行くにしたがって高くなっている。車速が上昇すると、各点灯部40aは、図5における左端から順番に車速に対応する個数だけ点灯する。
【0031】
図6は、操作部材2の図解的な正面図である。また、図7は、フロントパネル33等を含む操作部材2の図解的な側面図である。図7では、操作部材2の一部(後述の一対の回動アーム43および一対の把持部44)の図示を省略している。
図6および図7を参照して、操作部材2は、操作部材本体42と、この操作部材本体42に回転可能に支持された一対の回動アーム43と、一対の回動アーム43にそれぞれ固定された運転者把持用の一対の把持部44とを備えている。一対の把持部44には、方向指示器点灯用のボタン45がそれぞれ設けられている。
【0032】
操作部材本体42は、図7に示すように、回転シャフト9を介して第2の支持フレーム31に回転可能に連結されている。操作部材本体42は、第2の支持フレーム31および支持アーム19等を介してリンク機構16に連結されている。上述の反力用アクチュエータ10は、第2の支持フレーム31に固定されている。反力用アクチュエータ10は、複数の歯車を介して回転シャフト9に連結されている。
【0033】
操作部材本体42には、一対の回転軸46が保持されている。各回転軸46は、操作部材本体42の高さ方向(図6および図7における上下方向)に延びている。各回転軸46は、その中心軸線を回転軸線L1として回転可能に操作部材本体42に保持されている。
また、各回転軸46には、把持部駆動用アクチュエータ47が連結されている。各把持部駆動用アクチュエータ47は操作部材本体42に保持されている。把持部駆動用アクチュエータ47は、対応する回転軸46をその回転軸線L1まわりに回転させることができる。把持部駆動用アクチュエータ47としては、例えば電動モータが用いられている。
【0034】
各回動アーム43の一端は、対応する回転軸46の途中部に固定されている。また、一対の把持部44は、それぞれ一対の回動アーム43の他端に固定されている。把持部駆動用アクチュエータ47によって回転軸46が回転軸線L1まわりに回動されると、当該回転軸46に対応する回動アーム43および把持部44が当該回転軸線L1まわりに一体的に回動される。これにより、一対の回動アーム43が折りたたまれた状態である非使用位置(図2に示す位置)と、一対の回動アーム43が開かれた状態である使用位置(図6に示す位置)との間で、一対の回動アーム43および一対の把持部44を移動させることができる。
【0035】
各把持部駆動用アクチュエータ47による回転軸46の回転位置は、各回転軸46の先端に連結された例えば光学式のロータリエンコーダ等の位置検出装置48によって検出される。各位置検出装置48の検出信号は、制御装置13(図1参照)に入力される。制御装置13は、入力された検出信号に基づいて把持部駆動用アクチュエータ47を制御する。制御装置13は、例えば、一対の回動アーム43の動作が同期するように一対の把持部駆動用アクチュエータ47を制御する。
【0036】
図8は、車両用操舵装置100の要部の図解的な側面図である。図8では、操作部材2がインストルメントパネル14の外部の操作位置に配置されている。以下では、操作部材2が格納位置から操作位置に移動するときの動作の一例について説明する。
図2および図8を参照して、操作部材2が格納位置に配置され、一対の回動アーム43および一対の把持部44が非使用位置にある状態(図2に示す状態)で、車両が始動(例えばエンジンが始動またはバッテリからの電力の供給が開始)されると、制御装置13は、駆動機構18を制御して、ロッド24を本体部23に対して進出させる。これにより、第1のリンクアーム20に回転力が与えられ、第1のリンクアーム20がその第1の端部20aを支点として車両の後方側に回動する。また、第1のリンクアーム20の回動に伴って、第2のリンクアーム21および第3のリンクアーム22が車両の後方側に回動し、操作部材2が円弧状の軌跡を描きながら車両の後方側に移動する。これにより、操作部材2が操作位置に移動される。
【0037】
操作部材2が操作位置に配置されることで、支持アーム19の途中部に固定されたカバー32は、インストルメントパネル14の開口14a内に配置される。これにより、インストルメントパネル14の開口14aの少なくとも一部がカバー32によって覆われる。インストルメントパネル14の開口14aの少なくとも一部をカバー32によって覆うことにより、当該開口14aからインストルメントパネル14内に物が入ったり、インストルメントパネル14の内部に存在する異物等が当該開口14aから車内空間に進入したりすることを防止することができる。また、上述のように、カバー32はフロントパネル33と概ね等しい形状(側面視において湾曲状)にされているので、操作部材2が操作位置にあるとき、インストルメントパネル14およびカバー32の運転席側の表面(図8では左側の表面)は、滑らかに連なっている。
【0038】
次いで、制御装置13は、各把持部駆動用アクチュエータ47(図6および図7参照)を制御して、一対の回動アーム43および一対の把持部44を回動させる。これにより、一対の回動アーム43および一対の把持部44が使用位置に配置され、車両用操舵装置100が図8に示す状態となる。一対の回動アーム43および一対の把持部44の非使用位置から使用位置への移動は、操作部材2が操作位置に配置されてから行われてもよく、操作部材2が格納位置から操作位置に移動される途中で行われてもよい。
【0039】
図9は、車両用操舵装置100の要部の図解的な側面図である。図9は、車両の衝突により運転者がフロントパネル33に衝突(いわゆる二次衝突)した後の状態を示している。図9において、二次衝突が起こる前の操作部材2等の位置を二点鎖線で示す。以下では、二次衝突による衝撃の吸収について説明する。
図9を参照して、運転者がフロントパネル33に衝突(いわゆる二次衝突)すると、二次衝突の衝撃がフロントパネル33から支持アーム19等を介して第3のリンクアーム22に伝達される。これにより、第3のリンクアーム22が車両の前方側に押されて、第1のリンクアーム20を車両の前方側に回動させる力が第1のリンクアーム20に働く。
【0040】
第1のリンクアーム20に働く力(第1のリンクアーム20を車両の前方側に回動させる力)が、駆動機構18が第1のリンクアーム20を車両の後方側に押す力よりも大きければ、第1のリンクアーム20はその第1の端部20aを支点として車両の前方側に回動する。またそれに伴って、第2のリンクアーム21および第3のリンクアーム22が車両の前方側に回動し、フロントパネル33や操作部材2等が円弧状の軌跡を描きながら車両の前方側に移動する。
【0041】
二次衝突によりフロントパネル33に加えられた衝撃の一部は、駆動機構18によって吸収される。すなわち、二次衝突によりフロントパネル33に加えられた衝撃の一部は、本体部23に対してロッド24を進出させる力に反して当該ロッド24を本体部23に押し込む力となって駆動機構18に吸収される。駆動機構18は、二次衝突による衝撃を吸収するための衝撃吸収機構として機能する。
【0042】
一方、二次衝突の衝撃が第3のリンクアーム22に伝達されると、第1の連結軸27および第2の連結軸29には下向きの力が働く。第1の連結軸27に働く力が所定値よりも大きければ、第1の連結軸27は第1の長孔26の嵌合部34から外れて延設部35に移動する。同様に、第2の連結軸29に働く力が所定値よりも大きい場合には、第2の連結軸29は第2の長孔28の嵌合部から外れて延設部に移動する。これにより、第3のリンクアーム22が第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21に対して下方に移動し、第3のリンクアーム22による第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21の連結位置が変更される(連結位置が下方に移動する)。フロントパネル33や操作部材2等は、第3のリンクアーム22の移動に連動して下方に移動する。
【0043】
上述のように、第1の長孔26の延設部35の幅H1は、第1の連結軸27の外径よりも短くされている。したがって、第1の連結軸27が第1の長孔26の嵌合部34から延設部35に移動するとき、第1の長孔26の延設部35は第1の連結軸27によって押し広げられる。そのため、第1の連結軸27が第1の長孔26の嵌合部34から延設部35に移動するとき、第1の連結軸27にはその移動方向と反対方向の抵抗が加わる。また、第1の連結軸27が第1の長孔26の延設部35に沿って移動するとき、第1の連結軸27は第1の長孔26の延設部35を押し広げながら移動していく。したがって、第1の連結軸27は、その移動方向と反対方向の抵抗を受けながら第1の長孔26の延設部35に沿って移動していく。
【0044】
二次衝突によりフロントパネル33に加えられた衝撃の一部は、第1の連結軸27が第1の長孔26の延設部35を押し広げる力となって吸収される。同様に、二次衝突によりフロントパネル33に加えられた衝撃の一部は、第2の連結軸29が第2の長孔28の延設部を押し広げる力となって吸収される。第1の連結軸27および第1の長孔26、ならびに第2の連結軸29および第2の長孔28は、二次衝突による衝撃を吸収するための衝撃吸収機構として機能する。
【0045】
以上のように本実施形態では、二次衝突のときに、第1のリンクアーム20等を車両の前方側に回動させることにより、フロントパネル33や操作部材2等を円弧状の軌跡に沿って車両の前方側に移動させつつ、二次衝突による衝撃の一部を吸収することができる。また、二次衝突のときに、第3のリンクアーム22による第1のリンクアーム20および第2のリンクアーム21の連結位置を変更させることにより、フロントパネル33や操作部材2等を下方に移動させつつ、二次衝突による衝撃の一部を吸収することができる。これにより、二次衝突のときの衝撃を確実に吸収することができる。また、二次衝突のときに、フロントパネル33や操作部材2等を円弧状に移動させたり、下方に移動させたりすることができるので、フロントパネル33や操作部材2等の移動の自由度が高められており、その結果、十分な衝撃吸収ストロークが得られている。
【0046】
図10は、この発明の第2の実施形態に係る車両用操舵装置200の要部の図解的な側面図である。また、図11は、この発明の第2の実施形態に係るリンク機構16およびそれに関連する構成の図解的な平面図である。この図10および図11において、上述の図1〜9等に示された各部と同等の構成部分については、図1〜9等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0047】
この第2の実施形態と上述の第1の実施形態との主要な相違点は、リンク機構16の変位を規制する規制部材49がインストルメントパネル14の内部に設けられていることにある。
図10および図11を参照して、規制部材49は、例えばリンク機構16の一部を挟持して、当該リンク機構16の変位を規制する構成である。規制部材49は、一対の固定部50と、各固定部50から突出する可動部51とを有している。一対の固定部50は、フレームF1を介してインストルメントパネル14の内側に固定されている。規制部材49は、制御装置13(図1参照)によって制御される。
【0048】
図11に示すように、一対の固定部50は、平面視においてリンク機構16がその間に位置するようにリンク機構16の幅方向に並んで配置されている。各可動部51は、対応する固定部50に対してリンク機構16側に配置されている。各可動部51は、操作部材2が操作位置にある状態で、第3のリンクアーム22に水平に対向する位置に配置されている。可動部51は、固定部50に対してリンク機構16の幅方向に進退可能とされている。
【0049】
制御装置13は、操作部材2が操作位置にある状態で、各固定部50に対して可動部51を進出させる。これにより、第3のリンクアーム22の一部が一対の可動部51によって挟持され、リンク機構16の変位が規制される。また、制御装置13は、リンク機構16の変位が規制されている状態で例えば車両の衝突などにより車両に大きな衝撃が加わると、各可動部51を対応する固定部50内に退避させる。これにより、リンク機構16の変位の規制が解除される。
【0050】
この第2の実施形態によれば、操作部材2が操作位置にあるときに、規制部材49によってリンク機構16の変位を規制して、フロントパネル33や操作部材2等の位置を安定させることができる。さらに、車両の衝突などのときに、規制部材49によるリンク機構16の規制を解除させて、上述の第1の実施形態と同様に、リンク機構16の可動範囲を大きくすることができる。その結果、十分な衝撃吸収ストロークを得ることができる。
【0051】
なお、規制部材49としては、上述の構成のものに限られない。すなわち、規制部材49は、リンク機構16の変位を規制できるものであればよい。また、上述の説明では、第3のリンクアーム22を挟持してリンク機構16の変位を規制する場合について説明したが、リンク機構16における第3のリンクアーム22以外の部分を挟持して、リンク機構16の変位を規制してもよい。
【0052】
図12は、この発明の第3の実施形態に係る車両用操舵装置300の要部の図解的な側面図である。また、図13は、図12の一部の拡大図である。この図12および図13において、上述の図1〜9等に示された各部と同等の構成部分については、図1〜9等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第3の実施形態と上述の第1の実施形態との主要な相違点は、第1の実施形態では、リンク機構16によって操作部材2等が支持されていたのに対し、この第3の実施形態では、ガイド52および支持アーム319によって操作部材2等が支持されていることにある。すなわち、この第3の実施形態では、ガイド52および支持アーム319が支持機構として機能している。また、上述の第1の実施形態では、駆動機構18としての直動形アクチュエータによって操作部材2等が駆動されていたが、この第3の実施形態では、駆動機構としての電動モータ53によって操作部材2等が駆動される。
【0053】
図12を参照して、ガイド52は、その下端が車体側部材B1に固定されている。ガイド52は、車体側部材B1から上方に延びている。ガイド52の上端部は、インストルメントパネル14の近傍に達している。ガイド52は、側面視において車両の前方側に凸となる緩やかな湾曲状をなしている。
一方、支持アーム319は、取付機構55によってガイド52に取り付けられている。支持アーム319には、ガイド52に沿って案内される湾曲部54が設けられている。支持アーム319は、ガイド52に沿って移動可能となっている。湾曲部54は、ガイド52に対応する形状(側面視において車両の前方側に凸となる緩やかな湾曲形状)とされている。上述のフロントパネル33や操作部材2等は、支持アーム319の第2の端部319b(図12では上端部)に固定されている。
【0054】
取付機構55は、支持アーム319に固定された複数の保持部材56と、複数のローラ57とを備えている。複数の保持部材56は、支持アーム319の長手方向に間隔を隔てて配置されている。各保持部材56の一部は、支持アーム319から車両の後方側に延びている。各保持部材56の一部には、一対のローラ57が保持されている。各保持部材56に保持された一対のローラ57は、保持部材56の長手方向に間隔を隔てて配置されている。各ローラ57は、その中心軸線まわりに回転可能に保持されている。
【0055】
支持アーム319は、対となるローラ57によってガイド52が挟まれた状態でガイド52に取り付けられている。支持アーム319は、各ローラ57の回転によりガイド52に沿って滑らかに案内される。支持アーム319がガイド52に沿って案内されることで、当該支持アーム319に固定されたフロントパネル33や操作部材2等が湾曲状の軌跡を描きながら車両の前後方向に移動される。支持アーム319は、上述の電動モータ53によって駆動される。
【0056】
電動モータ53は、支持アーム319を駆動することにより、フロントパネル33や操作部材2等を湾曲状の軌跡に沿って車両の前後方向に移動させることができる。これにより、格納位置と操作位置との間で操作部材2を移動させることができる。電動モータ53は、格納位置と操作位置との間の任意の位置に操作部材2を配置させることができる。したがって、操作部材2の位置を所定の範囲内において調節することができ、操作部材2の位置の自由度が高められている。電動モータ53は、制御装置13(図1参照)によって制御される。
【0057】
図13を参照して、電動モータ53は出力軸58を有している。電動モータ53は、出力軸58が車幅方向(図13では紙面に垂直な方向)と平行になるように配置されている。出力軸58には、ピニオン59が同行回転可能に連結されている。電動モータ53のモータハウジング53aは、例えば車体に固定された固定部材A2に固定されている。
また、支持アーム319の上側面には、ピニオン59に噛み合うラック60が形成されている。電動モータ53の駆動力は、ピニオン59およびラック60を介して支持アーム319に伝達される。すなわち、出力軸58の回転は、ピニオン59およびラック60によって、支持アーム319の長手方向に沿う運動に変換される。電動モータ53の駆動力を支持アーム319に伝達することにより、支持アーム319をガイド52に沿って移動させることができる。
【0058】
電動モータ53は、操作部材2を格納位置および操作位置に駆動する駆動機構として機能する。また、電動モータ53は、車両の衝突時において、二次衝突のときの衝撃を吸収する衝撃吸収機構として機能する。
すなわち、運転者がフロントパネル33に衝突(いわゆる二次衝突)すると、二次衝突の衝撃がフロントパネル33から支持アーム319に伝達され、支持アーム319を車両の前方側に押す力が支持アーム319に働く。このとき、支持アーム319に働く力が所定値よりも大きければ、支持アーム319はガイド52に沿って車両の前方側に移動する。またその一方で、支持アーム319に働く力がピニオン59およびラック60によって電動モータ53の出力軸58に伝達され、当該出力軸58が回転する。
【0059】
電動モータ53は、出力軸58の回転により発電機として作動して、二次衝突によりフロントパネル33に加えられた衝撃の一部を吸収する。すなわち、二次衝突の運動エネルギが電動モータ53によって電気エネルギに変換され吸収される。
この第3の実施形態によれば、通常は操作部材2を駆動する電動モータ53を発電機として作動させることにより、二次衝突の運動エネルギを電気エネルギに変換して吸収することができる。また、車両の衝突時に、制御装置13によって操作部材2等が引き込む(操作部材2等が格納位置側に移動する)ように電動モータ53を制御することにより、二次衝突のときに運転者が受ける衝撃を和らげることができる。さらに、この第3の実施形態によれば、操作部材2を支持する支持アーム319が湾曲状の軌跡を描くようにしたので、インストルメントパネル14内に複雑な支持機構を設ける必要がない。これにより、操作部材2を格納位置および操作位置に変位させるときの可動部分の占めるスペースを削減することができる。
【0060】
図14は、この発明の第4の実施形態に係る車両用操舵装置400の要部の図解的な側面図である。また、図15は、この発明の第4の実施形態に係る操作部材2およびこれに関連する構成の図解的な平面図である。この図14および図15において、上述の図1〜9等に示された各部と同等の構成部分については、図1〜9等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0061】
この第4の実施形態と上述の第1の実施形態との主要な相違点は、第1の実施形態では、リンク機構16および駆動機構18が車体側部材B1に固定されていたのに対し、この第4の実施形態では、ベースとしての車体側部材B2に対して車両の前後方向に移動可能な例えば板状のスライダ61にリンク機構16および駆動機構18が固定されていることにある。また、この第4の実施形態では、支持アーム419の途中部が上下方向に屈曲可能とされている。
【0062】
図14を参照して、車体側部材B2には、車両の前後方向に延びる例えばスライド溝からなる案内部62が形成されている。スライダ61は、案内部62によって車両の前後方向に案内される。
また、スライダ61には、スライダ移動機構70が結合されている。スライダ61は、このスライダ移動機構70によって車両の前後方向に駆動される。スライダ移動機構70としては、例えば直動モータなどの直動形アクチュエータを用いることができる。具体的には、スライダ移動機構70は、車体側部材B2に固定された固定部70aと、この固定部70aによって進退駆動される可動部70bとを備えている。スライダ移動機構70は、このような構成に限らず、回転形モータ(図示せず)と、この回転形モータの回転をスライダ61に連結されたロッド(図示せず)の直線運動に変換する運動変換機構(図示せず)とを備えるものであってもよい。スライダ移動機構70は、制御装置13(図1参照)によって制御される。
【0063】
図14および図15を参照して、支持アーム419は、第1のアーム63および第2のアーム64を有している。第1のアーム63および第2のアーム64は、上下方向に屈曲可能に連結されている。上述のフロントパネル33や操作部材2等は、第2のアーム64に固定されている。
第1のアーム63の一端部は、第3のリンクアーム22の第1の端部22aに固定されている。第1のアーム63は、第3のリンクアーム22の第1の端部22aから車両の後方側に延びている。第1のアーム63は、第3のリンクアーム22に対して所定の角度をなしている。
【0064】
また、図15に示すように、第1のアーム63の他端部には、凹部66が形成されている。凹部66は、上下に開放されており、その左右には一対の対向板65が配置されている。第2のアーム64の一端部は凹部66に嵌合されている。
図15に示すように、一方の対向板65には、第1のアーム63に対して第2のアーム64を屈曲させるための電動モータ67のモータハウジング67aが固定されている。電動モータ67の出力軸68は、車幅方向(図15では左右方向)に第1のアーム63および第2のアーム64を挿通している。電動モータ67の出力軸68は、一対の対向板65に対して回転可能とされている。また、電動モータ67の出力軸68は、第2のアーム64の一端部に同行回転可能に連結されている。電動モータ67を駆動することで、第1のアーム63に対して第2のアーム64を屈曲させることができる。電動モータ67は、制御装置13(図1参照)によって制御される。
【0065】
この第4の実施形態によれば、スライダ61を車両の前後方向に移動させることにより、フロントパネル33や操作部材2等を車両の前後方向に移動させることができる。これにより、車両の前後方向に関して操作部材2の位置を調節することができる。また、スライダ61を車両の前後方向に移動させることにより、二次衝突のときの衝撃吸収ストロークを大きくすることができる。さらに、この第4の実施形態によれば、電動モータ67によって第1のアーム63に対して第2のアーム64を屈曲させることにより、操作部材2の角度を所定の範囲内で調節することができる。これにより、操作部材2の位置の自由度が高められている。
【0066】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、上述の第1〜第4の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上述の第1、第2および第4の実施形態では、第1のリンクアーム20に形成された第1の長孔26の延設部35の幅H1が一定である場合について説明したが、これに限られない。すなわち、第1の長孔26の延設部35の幅H1は、例えば第1の長孔26の長手方向に関する一端26aから他端26aに向かうに従って減少されていてもよい。
【0067】
具体的には、例えば図16に示すように、第1の長孔26の延設部35の幅H1は、第1の長孔26の一端26aから他端26aに向かうに従って連続的に減少されていてもよい。また、例えば図17に示すように、第1の長孔26の延設部35の幅H1は、第1の長孔26の一端26aから他端26aに向かうに従って段階的に減少されていてもよい。第1の長孔26の延設部35の幅H1を第1の長孔26の一端26aから他端26aに向かうに従って減少させることにより、第1の長孔26に沿って第1の連結軸27を移動させて二次衝突による衝撃を吸収するときに、第1の連結軸27に加わる抵抗を増加させていくことができる。これにより、二次衝突による衝撃を確実に吸収することができる。図示はしないが、第2の長孔28も第1の長孔26と同様の変更が可能である。
【0068】
また、第1の長孔26は、図4に示す形状に限られない。すなわち、例えば図18に示すように、第1の長孔26は、その幅H1(長手方向と直交する方向への長さ)が一定とされており、その上端部に、内側に突出する一対の突起69が設けられていてもよい。一対の突起69は、第1の長孔26の幅方向に間隔を隔てて対向している。一対の突起69の間隔は、第1の連結軸27の外径よりも小さくされている。第1の連結軸27は、一対の突起69によって第1の長孔26の上端部に保持されている。
【0069】
なお、一対の突起69の何れか一方を廃止してもよい。また、第2の長孔28も第1の長孔26と同様の変更が可能である。
また、上述の第1〜第4の実施形態では、車両用操舵装置が、いわゆるステアバイワイヤ式の車両用操舵装置である場合について説明したが、本発明に係る車両用操舵装置は、ステアバイワイヤ式の車両用操舵装置に限らず電動式や油圧式等のその他の車両用操舵装置であってもよい。また、本発明に係る車両用操舵装置は、一対のケーブルを用いて操作部材の動作を転舵機構に伝達するケーブル式の車両用操舵装置であってもよい。
【0070】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図3】リンク機構の図解的な平面図である。
【図4】第1のリンクアームの第1の端部を拡大した図解的な側面図である。
【図5】フロントパネルの図解的な正面図である。
【図6】操作部材の図解的な正面図である。
【図7】フロントパネル等を含む操作部材の図解的な側面図である。
【図8】車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図9】車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図10】この発明の第2の実施形態に係る車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図11】この発明の第2の実施形態に係るリンク機構およびそれに関連する構成の図解的な平面図である。
【図12】この発明の第3の実施形態に係る車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図13】図12の一部の拡大図である。
【図14】この発明の第4の実施形態に係る車両用操舵装置の要部の図解的な側面図である。
【図15】この発明の第4の実施形態に係る操作部材およびこれに関連する構成の図解的な平面図である。
【図16】第1の長孔の他の形状を説明するための第1のリンクアームの図解的な側面図である。
【図17】第1の長孔のさらに他の形状を説明するための第1のリンクアームの図解的な側面図である。
【図18】第1の長孔のさらに他の形状を説明するための第1のリンクアームの図解的な側面図である。
【符号の説明】
【0072】
2・・・操作部材、3・・・転舵輪(車輪)、4・・・転舵機構、14・・・インストルメントパネル、16・・・リンク機構(支持機構)、18・・・駆動機構(衝撃吸収機構)、20・・・第1のリンクアーム(リンクアーム)、21・・・第2のリンクアーム(リンクアーム)、22・・・第3のリンクアーム(連結部材)、26・・・第1の長孔(衝撃吸収機構)、27・・・第1の連結軸(衝撃吸収機構)、28・・・第2の長孔(衝撃吸収機構)、29・・・第2の連結軸(衝撃吸収機構)、49・・・規制部材、52・・・ガイド(支持機構)、53・・・電動モータ(駆動機構、衝撃吸収機構)、54・・・湾曲部、100・・・車両用操舵装置、200・・・車両用操舵装置、300・・・車両用操舵装置、319・・・支持アーム(支持機構)、400・・・車両用操舵装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材をインストルメントパネルの内部の格納位置およびインストルメントパネルの外部の操作位置の間に移動可能に支持する支持機構と、
操作部材を格納位置および操作位置に駆動する駆動機構と、
操作部材の操作に応じて車輪を転舵する転舵機構とを備え、
上記支持機構および駆動機構の少なくとも一方が、車両の二次衝突のときの衝撃を吸収する衝撃吸収機構を含むことを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、上記支持機構は、操作部材の移動に伴って変位する複数のリンクアームと、これらのリンクアームのうち対応するリンクアーム間を連結する連結部材とを含み、
衝撃吸収のときに、連結部材による対応するリンクアーム間の連結位置が変更されるようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1または2において、上記支持機構の変位を規制する規制部材を備え、
衝撃吸収のときに、規制部材による支持機構の変位の規制が解除されるようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項1において、上記支持機構は、湾曲状のガイドと、操作部材を支持し、上記ガイドに沿って案内される湾曲部を含む支持アームとを含み、上記支持アームが上記駆動機構によって駆動されることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項4において、上記駆動機構は電動モータを含み、
衝撃吸収のときに、上記電動モータが発電することにより、衝撃を吸収するようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項1】
操作部材をインストルメントパネルの内部の格納位置およびインストルメントパネルの外部の操作位置の間に移動可能に支持する支持機構と、
操作部材を格納位置および操作位置に駆動する駆動機構と、
操作部材の操作に応じて車輪を転舵する転舵機構とを備え、
上記支持機構および駆動機構の少なくとも一方が、車両の二次衝突のときの衝撃を吸収する衝撃吸収機構を含むことを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、上記支持機構は、操作部材の移動に伴って変位する複数のリンクアームと、これらのリンクアームのうち対応するリンクアーム間を連結する連結部材とを含み、
衝撃吸収のときに、連結部材による対応するリンクアーム間の連結位置が変更されるようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1または2において、上記支持機構の変位を規制する規制部材を備え、
衝撃吸収のときに、規制部材による支持機構の変位の規制が解除されるようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項1において、上記支持機構は、湾曲状のガイドと、操作部材を支持し、上記ガイドに沿って案内される湾曲部を含む支持アームとを含み、上記支持アームが上記駆動機構によって駆動されることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項4において、上記駆動機構は電動モータを含み、
衝撃吸収のときに、上記電動モータが発電することにより、衝撃を吸収するようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−292265(P2009−292265A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147031(P2008−147031)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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