説明

車両用断熱材

【課題】車両の振動などにより他部品と干渉しても、その摩擦や衝撃による劣化による断熱性能の低下や騒音の発生を防止できる車両用断熱材を提供する。
【解決手段】真空断熱材1は、芯材をガスバリア性の外皮材で被包してその内部を減圧密封したものである。本発明の車両用断熱材は、真空断熱材1の少なくとも一つの面に配置された硬質シート2と、硬質シート2の真空断熱材1に接している面とは反対側の面に配置され硬質シート2よりもより軟質な材料で構成された軟質シート3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材を用いた車両用断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用断熱材としては、特許文献1に記載された保冷車の荷箱用断熱パネルが知られている。この断熱パネルは、硬質ウレタンフォーム等で成る断熱材内に真空断熱材を埋め込んで芯材を形成し、この芯材の両面に外板及び内板を取り付けてパネル材としたものである。
【0003】
また、真空断熱材を用いた冷蔵庫用箱体として、特許文献2に記載された技術が知られている。この技術によれば、真空断熱材を硬質ウレタンフォーム中に埋設して、真空断熱材の気密性能を長期間保持している。
【特許文献1】特開平10−114245号公報(第2頁、図1)
【特許文献2】特開平5−157446号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例においては、この真空断熱材を硬質ウレタンフォームに埋め込んでいるか、または、真空断熱材の周囲に硬質ウレタンフォームを充填しているため、燃料電池車両に適用しようとすると、ハーネスや配管、その他の部品と近接してレイアウトされるような用途では、車両の振動などにより他部品と干渉し、その摩擦や衝撃で、欠け、割れなどの破損による断熱性能の低下や騒音が発生したりするという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、本発明は、芯材をガスバリア性の外皮材で被包してその内部を減圧密封した真空断熱材と、該真空断熱材の少なくとも一つの面に配置された硬質シートと、該硬質シートの前記真空断熱材に接している面とは反対側の面に配置され該硬質シートよりもより軟質な材料で構成された軟質シートと、を備えたことを要旨とする車両用断熱材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、真空断熱材を硬質シートで保護するとともに、他部品と接触する可能性の有る外層を軟質シートとしたので、真空断熱材を飛び石等から保護しつつ、他の部品等との干渉による真空断熱材の破損を防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の一形態の車両用断熱材の断面を図示したものである。図2は、真空断熱材の断面を図示したものである。
【0008】
図2において、真空断熱材1は、芯材5を、ガスバリア性フィルムを袋状にした外皮材6に封入し、袋内を真空引きして開口部を溶着したものである。芯材5に使用する材料は特に限定するものではなく、一般的には、グラスウール,セラミックファイバー,ロックウール等の無機繊維が使用されることが多い。
【0009】
また、外皮材6についても使用する材料や構造は特に限定するものではなく、一般的には、最外層には保護用のポリエチレンテレフタラート(PET)、最内層には密閉のための溶着用のポリエチレン(PE)、中間層にガスバリア性を高めるためのアルミニウム(Al)箔を使用した3層構造のフィルムなどが良く使用される。
【0010】
図1において、硬質シート2は、真空断熱材1の外皮材よりも突き刺しや擦れに強い材料を薄板状にしたものである。たとえば、ポリプロピレン(PP)やPETなどの樹脂が軽量で熱伝導率も低く好適であるが、突き刺しや擦れなどの外力が大きい用途ではアルミ製や鉄製の薄板を使用しても良い。真空断熱材1の外皮材は、真空引きしたときに芯材に密着するよう、柔軟性のある材料が使用されるが、硬質シート2については、外力からの保護のため、より強度の高い材料を使用するのが望ましい。
【0011】
軟質シート3は、柔軟性を有し、周囲の部品と接触しても容易に変形し、周囲の部品を傷つけたり、変形させたりすることのない材料をシート状に形成したものである。軟質シート3に使用する材料としては、前記の性質を有するものであれば特に限定するものではないが、発泡ポリエチレン(PE)や発泡EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)ゴムなどの発泡材をシート状に形成したものは、気泡が内部に存するため、断熱性能が高く、かつ、軽量であるため、好適である。
【0012】
更に、気泡が互いに連通していない独立気泡型の発泡材であれば、外部からの水掛かりが生じた場合でも水の浸透が無く、真空断熱材のラミネートフィルムに使用されるアルミ箔や、金属で構成された硬質シート2などに腐食を発生させる懸念を減ずることができ、一層好適である。
【0013】
真空断熱材1と硬質シート2、および、硬質シート2と軟質シート3は、それぞれ、接着剤や両面粘着テープで貼り合わされる。
【0014】
真空断熱材1と硬質シート2と軟質シート3の厚さは、それぞれ、以下のように設定される。
【0015】
車両用断熱材、特に燃料電池車両用断熱材においては、車両の限られた空間を有効に利用するため、各部品は占有体積が小さいほど好ましい。そのため、断熱材に対しては、少ない厚さで可能な限り高い断熱性を有することが望まれる。すなわち、断熱材に与えられる厚さの内訳を、断熱性の高いものをできるだけ厚く、断熱性の低いものをできるだけ薄くするのが好ましい。
【0016】
本発明の車両用断熱材を構成する真空断熱材1と硬質シート2と軟質シート3との3者の中では、真空断熱材1が最も断熱性が高く、続いて、軟質シート3、硬質シート2の順となるのが一般的である。
【0017】
そこで、まず、硬質シート2を可能な限り薄く構成する。例えば、車輪により巻き上げられた小石などが当たっても、貫通されて真空断熱材1に損傷を与えない最小の厚さとする。具体的には、PET樹脂フィルムであれば、厚さ0.2[mm]程度で構成すれば十分と考えられる。
【0018】
続いて、軟質シート3を可能な限り薄く構成する。例えば、隣接する部品に段差1〜2[mm]程度の凸部が有る場合、すき間が生じると空気の流れにより放熱が促進されるため、この段差を吸収できるような厚さとする。材料の種類や密度によって異なるが、密度0.12の発泡EPDMシートであれば、5[mm]程度の厚さが必要となる。
【0019】
そして、断熱材の設置可能な厚さから、硬質シート2および軟質シート3の厚さを除いた分の厚さを真空断熱材1の厚さとする。このようにして、必要な機能を有し、かつ断熱性能が高くなるような厚さの設定が可能となる。従って、断熱性能が高い材料をより厚肉にすることになるので、断熱材全体の厚さが同一でもより保温性能を高めることができるという効果がある。
【0020】
なお、システムによっては、揺動する部品の角部が直近に有るなど、より厳しい外力の入力が想定される場合も有るが、そのような場合にも同様のプロセスでそれぞれの厚さを設定すれば良い。
【0021】
走行風や、冠水路を走行する際の水の流れは、一般に車両の前方から後方に向かう場合が多いため、部品からの放熱は、車両後方側よりも空気や水の流れが直接当たる車両前方側からの方が多い。
【0022】
そのため、図3に示すように、前記のようにして構成された断熱材62を用いて、車両用部品、例えば燃料電池スタック60の保温を行う場合、車両前方側の断熱材の厚さt1[mm]を車両後方側の断熱材の厚さt2[mm]より厚くする(t1>t2)。これにより、同じ量の断熱材を使用して良好な保温性能が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る車両用断熱材の実施例を説明する側面図である。
【図2】真空断熱材の構造を説明する断面図である。
【図3】燃料電池車両の前方と後方における断熱材の厚さの設定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0024】
1…真空断熱材
2…硬質シート
3…軟質シート
4…断熱対象部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材をガスバリア性の外皮材で被包してその内部を減圧密封した真空断熱材と、
該真空断熱材の少なくとも一つの面に配置された硬質シートと、
該硬質シートの前記真空断熱材に接している面とは反対側の面に配置され該硬質シートよりもより軟質な材料で構成された軟質シートと、
を備えたことを特徴とする車両用断熱材。
【請求項2】
前記軟質シートが発泡体で構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用断熱材。
【請求項3】
前記発泡体は独立気泡型の発泡体であることを特徴とする請求項2に記載の車両用断熱材。
【請求項4】
前記真空断熱材と前記硬質シートと前記軟質シートの厚さの設定方法として、前記硬質シートを薄くすることが最優先され、次に前記軟質シートを薄くすることが優先されることを特徴とする請求項3に記載の車両用断熱材。
【請求項5】
前記断熱材の厚さが、車両前方側が厚く、車両後方側が薄く構成されることを特徴とする請求項4に記載の車両用断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−132464(P2007−132464A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327755(P2005−327755)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】