説明

車両用暖房システム

【課題】燃費悪化を招くことなく、暖房性能向上を図ることができる車両用暖房システムを提供すること。
【解決手段】エンジン1の排気管26を流れる排気ガスの一部を吸気管13に還流させるEGR管31と、EGR管31の途中部分に設けられ、排気ガスが通過する間に冷却空気と熱交換させることにより排気ガスを冷却する空冷式EGRクーラ34と、エバポレータ43とヒータコア44とを内部に備え、内気または外気を取り込んで車室内に送り出す空調装置2とを備え、車室内の温度を目標温度に近づけるよう空調装置2を制御する車両用暖房システムにおいて、空冷式EGRクーラ34によって排気ガスと熱交換された後の冷却空気を空調装置2内に導入させる外気導入ダクト66を備えたものから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用暖房システムに関し、特に排気還流管を流れる排気を冷却した後の冷却空気を暖房制御に用いるのに好適な車両用暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関の燃費の向上を図るために希薄燃焼の内燃機関が実用化されている。この希薄燃焼の内燃機関においては、希薄燃焼によって排気ガス中の酸素濃度が高くなると、触媒の浄化効率が低下し窒素酸化物(NOx)の発生量が増加するという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、排気系から排気ガスの一部を吸気系に戻し、内燃機関の燃焼温度を下げて窒素酸化物(NOx)の発生を低減する排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)が行われている。この排気ガス再循環は、内燃機関の排気系と吸気系とを排気還流管としてのEGR管で連通し、このEGR管の途中部分に冷却部としての水冷式のEGRクーラおよび空冷式のEGRクーラを設けることで実現されており、EGR管を介して吸気系に還流される排気ガスを冷却して、内燃機関の燃焼温度を低下させてNOxの発生を低減するとともに燃費を向上している。
【0004】
一方、車両には、車室内の暖房を制御する車両用暖房システムが搭載されている。従来、この種の車両用暖房システムとして、内燃機関の冷却水を暖房に利用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用暖房システムは、内燃機関の冷却水路にヒータコアが設けられており、このヒータコアにおいて内燃機関を通過して温められた冷却水とブロアによって送風された空気とを熱交換させて、ヒータコア通過後の暖められた空気を車室内に送風している。このような、車両用暖房システムは、排気ガス再循環を行う車両にも当然のことながら設けられている。
【特許文献1】特開平8−216660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような車両用暖房システムにあっては、排気ガス再循環を行う車両に搭載されながら、空冷式のEGRクーラによって排気ガスと熱交換した後の暖められた冷却空気が車外に廃棄されており、車室内の暖房に有効的に活用されていなかった。また、内燃機関の冷却水を暖房に利用しているため、外気温が著しく低く、高い暖房性能が必要な場合には、強制的に内燃機関を駆動させなければならず、燃費が悪化するという問題があった。
【0006】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、燃費悪化を招くことなく、暖房性能向上を図ることができる車両用暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用暖房システムは、上記目的を達成するため、(1)内燃機関の排気管を流れる排気ガスの一部を吸気管に還流させる排気還流管と、前記排気還流管の途中部分に設けられ、前記排気ガスが通過する間に冷却空気と熱交換させることにより前記排気ガスを冷却する冷却部と、冷房用熱交換器と暖房用熱交換器とを内部に備え、内気または外気を取り込んで車室内に送り出す空調部と、車室内の温度を目標温度に近づけるよう前記空調部を制御する空調制御手段とを備えた車両用暖房システムにおいて、前記冷却部によって前記排気ガスと熱交換された後の冷却空気を前記空調部内に導入させる導入部を備えたものから構成されている。
【0008】
この構成により、冷却部において排気ガスと熱交換された後の冷却空気が導入部を介して空調部内に導入されるため、熱交換後の暖かい空気を空調部の暖房に利用することができる。
したがって、内燃機関を強制的に駆動させることなく、暖かい空気を空調部内に導入することができるため、燃費悪化を招くことなく、暖房性能向上を図ることができる。
【0009】
上記(1)に記載の車両用暖房システムにおいて、(2)車外から前記導入部に外気を導入する外気導入部と、前記冷却部から前記導入部に前記排気ガスと熱交換された後の冷却空気を導入する冷却空気導入部と、前記外気導入部および前記冷却空気導入部のいずれか一方と前記導入部との連通状態を切り換える切換部とを備え、前記空調制御手段が、前記車室内の温度を前記目標温度に近づくように前記切換部を切り換えるものから構成されている。
【0010】
この構成により、切換部によって外気導入部および冷却空気導入部のいずれか一方と導入部との連通状態が切り換えられるため、例えば、車室内の温度が目標温度よりも高い場合等の熱交換後の冷却空気を空調部内に導入する必要がないときに、冷却空気導入部から熱交換後の冷却空気が導入部に導入されないように、切換部により外気導入部と導入部とを連通させ、熱交換後の冷却空気の空調部への影響を抑制することができる。
一方、例えば、車室内の温度が目標温度よりも低い場合等の熱交換後の冷却空気を空調部内に導入する必要があるときに、切換部により冷却空気導入部と導入部とを連通させて空調部の暖房性能を向上させることができる。
【0011】
また、上記(1)または(2)に記載の車両用暖房システムにおいて、(3)前記冷却部を通過する排気ガスの流量を調整する流量調整部を備え、前記空調制御手段が、前記車室内の温度を前記目標温度に近づくように前記流量調整部を調整するものから構成されている。
【0012】
この構成により、冷却部を通過する排気ガスの流量を調整することにより、冷却部において熱交換後の冷却空気の温度上昇を制御することができる。したがって、車室内の温度が目標温度よりも高い場合等の熱交換後の冷却空気を空調部内に導入する必要がないときに、冷却部を通過する排気ガスの流量を減少させて冷却空気の温度上昇を抑え、熱交換後の冷却空気の空調部への影響を抑制することができる。
一方、車室内の温度が目標温度よりも低い場合等の熱交換後の冷却空気を空調部内に導入する必要があるときに、冷却部を通過する排気ガスの流量を増加させて冷却空気の温度を上昇させ、空調部の暖房性能を向上させることができる。
なお、冷却部を通過する排気ガスの流量は、内燃機関の運転状態に影響を与えない範囲で調整されることが好ましい。
【0013】
また、上記(3)に記載の車両用暖房システムにおいて、(4)前記流量調整部が、前記排気還流管を流れる排気ガスの流量を調整する環流量調整バルブを有するものから構成されている。
【0014】
この構成により、環流量調整バルブによって排気還流管を流れる排気ガスの流量が調整されることにより、冷却部を通過する排気ガスの流量が調整され、冷却部における熱交換後の冷却空気の温度上昇を制御することができる。
【0015】
また、上記(3)または(4)に記載の車両用暖房システムにおいて、(5)前記流量調整部が、前記冷却部を迂回するように前記排気還流管の前記冷却部の上流側部分と下流側部分とを連通するバイパス管と、前記バイパス管に流入する排気ガスの流量を調整するバイパスバルブとを有するものから構成されている。
【0016】
この構成により、バイパスバルブによってバイパス管に流入する排気ガスの流量が調整されることにより、冷却部を通過する排気ガスの流量が調整され、冷却部における熱交換後の冷却空気の温度上昇を制御することができる。
【0017】
また、上記(1)から(5)に記載の車両用暖房システムにおいて、(6)前記導入部を閉鎖または開放する内外気ダンパと、前記内燃機関の運転状態に応じて、前記冷却部に排気ガスが流れ込んでいるか否かを判定する判定手段とを備え、冷房時に前記判定手段により前記冷却部に排気ガスが流れ込んでいると判定された場合に、前記空調制御手段が、前記内外気ダンパによって前記導入部を閉鎖するものから構成されている。
【0018】
この構成により、冷房時に判定手段によって冷却部に排気ガスが流れ込んでいると判定された場合に、内外気ダンパによって導入部が閉鎖されることにより、冷房時に熱交換後の冷却空気が空調部に導入されるのが防止されるため、排気還流管を流れる排気ガスの流量を減らすことなく、熱交換後の冷却空気の空調部への影響を抑制できる。また、排気還流管を流れる排気ガスの流量を減らす必要がないため、NOxの低減および燃費の向上を図ることができる。
【0019】
また、上記(1)から(6)に記載の車両用暖房システムにおいて、(7)車両のフードパネルの後端部とフロントガラスの下端部との間に配設され、前記車両の幅方向に延在するカウルルーバを備え、前記冷却空気は、車外から前記カウルルーバを介して前記冷却部に導入されるものから構成されている。
【0020】
この構成により、カウルルーバを介して冷却空気として外気を導入できるため、専用の冷却ファンを設ける構成と比較して冷却部を簡易な構成にすることができるとともに、コストを低減することができる。また、カウルルーバを介してフードパネルの後端部とフロントガラスの下端部との間から外気を導入するため、床下から外気を導入する構成と比較して埃の進入や臭いの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、燃費悪化を招くことなく、暖房性能向上を図ることができる車両用暖房システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、構成について説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用暖房システムの概略構成図であり、本発明に係る車両用暖房システムをディーゼルエンジンに適用した例を示している。
【0024】
車両用暖房システムは、内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)1と、車室内の空調を行う空調部としての空調装置2と、エンジン1および空調装置2とを駆動制御する空調制御手段としてのECU(Electrical Control Unit)3とを含んで構成されている。
【0025】
エンジン1は、各気筒内の図示しない燃焼室に空気を吸入させる吸気装置4と、燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射装置5と、燃焼後の排気ガスを排気させる排気装置6と、排気装置6の排気エネルギを利用して吸気装置4内の空気を燃焼室に過給するターボ過給機8と、排気ガスの一部を吸気装置4に還流させて再循環させるEGR装置(Exhaust Gas Recirculation)9とを備えている。
【0026】
吸気装置4は、空気取入口11と、エアクリーナ12と、吸気管13と、吸気マニホールド14とを有し、吸気管13にはエアフローメータ15と、インタークーラ16と、スロットルバルブ17とが設けられている。
【0027】
空気取入口11は、吸気装置4の最上流の位置に設けられており、外部から空気を取り込み、エアクリーナ12に送り込むようになっている。
エアクリーナ12は、上流側が空気取入口11に接続され、下流側が吸気管13に接続されており、内部に設けたフィルタにより空気取入口11に取り込まれた空気中に含まれる塵や埃等の異物の混入を防止し、空気を吸気管13に送り込むようになっている。
【0028】
吸気マニホールド14は、上流側が吸気管13に接続され、下流側が気筒数分の枝管に分岐してシリンダ24に接続され、吸気管13から送り込まれた空気を分流して燃焼室に送り込むようになっている。
すなわち、空気取入口11、エアクリーナ12、吸気管13および吸気マニホールド14が接続されることにより、外部の空気を燃焼室に送り込むための吸気通路が構成されるようになっている。
【0029】
エアフローメータ15は、エアクリーナ12の近傍の吸気管13に設けられ、吸気通路内の吸入空気量を検出して電気信号に変換し、ECU3に出力するようになっている。
インタークーラ16は、ターボ過給機8の下流側の吸気管13に設けられ、ターボ過給機8により圧縮されて暖められた空気の温度を低下させるようになっている。
スロットルバルブ17は、インタークーラ16の下流側の吸気管13に設けられ、図示しないアクセルペダルに接続され、アクセルペダルの踏込量に応じて開閉することにより、燃焼室内に送り込む吸入空気量を調整するようになっている。
【0030】
燃料噴射装置5は、サプライポンプ21と、コモンレール22と、複数の燃料噴射弁23とを有している。
【0031】
サプライポンプ21は、エンジン1の動力を駆動源とし、図示しない燃料タンクから燃料を汲み上げて加圧し、コモンレール22に燃料を供給するようになっている。
コモンレール22は、複数の燃料噴射弁23に接続されており、サプライポンプ21から供給された燃料を、圧力を均等に保ちながら複数の燃料噴射弁23に分配供給するようになっている。
【0032】
複数の燃料噴射弁23は、複数の気筒に対応して設けられており、ECU3の指令により電磁駆動されるニードル弁で構成されている。
そして、図示しないピストンにより燃焼室内の空気が高温になるまで圧縮されると、ECU3から燃料噴射弁23に噴射指令が出力され、燃料噴射弁23が高温になった空気に燃料を噴射することにより、燃料に着火させて燃焼させるようになっている。
【0033】
排気装置6は、排気マニホールド25と、排気管26とを有し、排気マニホールド25には燃料供給弁27が設けられ、排気管26には排気後処理装置28と、空燃比センサ29とが設けられている。
【0034】
排気マニホールド25は、上流側が気筒の数分の枝管に分岐してシリンダ24に接続され、下流側が各枝管を接合して1本の排気管26に接続されており、各気筒の燃焼室から排出された排気ガスを合流させて排気管26を通じて外部に排出するようになっている。
【0035】
燃料供給弁27は、コモンレール22に接続されており、サプライポンプ21が汲み上げた燃料の一部を排気マニホールド25内に供給するようになっている。燃料供給弁27は、電磁駆動されるニードル弁で構成されており、ECU3からの指令に対応するタイミング及び供給量で還元剤としての燃料を排気マニホールド25内に供給して、排気ガスに燃料を混合するようになっている。
【0036】
排気後処理装置28は、ターボ過給機8の下流側の排気管26に設けられ、内部にパラジウムや白金等の酸化触媒を有しており、この酸化触媒の酸化作用により、炭化水素HCや一酸化炭素COを酸化させて水HOや二酸化炭素COにするようになっている。また、排気後処理装置28は、内部にさらにNO吸蔵還元触媒を有しており、排気ガスの酸素濃度が高いときに窒素酸化物NOを吸蔵し、排気ガスの酸素濃度が低いときに吸蔵していた窒素酸化物を炭化水素HCや一酸化炭素COと反応させてNに還元するようになっている。
【0037】
すなわち、排気後処理装置28においては、燃料供給弁27によって排気ガスに燃料が供給されることにより、排気ガス中の酸素濃度が低下されて、窒素酸化物の還元が促進されるようになっている。
【0038】
空燃比センサ29は、排気後処理装置28の下流側の排気管26に設けられ、排気後処理装置28から排出された排気ガスの空燃比を検出してECU3に出力するようになっている。そして、ECU3は、空燃比センサ29から出力された空燃比が目標空燃比に近づくように燃料噴射弁23から噴射される燃料噴射量および燃料供給弁27から供給される燃料供給量を制御するようになっている。
【0039】
ターボ過給機8は、互いに回転方向一体に連結された吸入空気コンプレッサ37および排気タービン38を有し、排気タービン38を排気エネルギにより回転させて吸入空気コンプレッサ37を回転させるもので、エンジン1に空気を送り込むことができるようになっている。
【0040】
EGR装置9は、燃焼室をバイパスして排気マニホールド25内の排気通路と吸気マニホールド14内の吸気通路とを連通させる排気還流管としてのEGR管31を有しており、このEGR管31には、排気ガスの還流量を調整する流量調整部の一例である還流量調整バルブとしてのEGRバルブ32と、EGR管31を通って還流する排気ガスを冷却する水冷式EGRクーラ33および冷却部としての空冷式EGRクーラ34とが設けられている。
【0041】
EGRバルブ32は、EGR管31の管内通路と吸気通路とを連通させる開弁状態と、EGR管31の管内通路と吸気通路との連通を制限または遮断する閉弁状態とに切り換え可能になっており、ECU3からの指令により、開度を制御することができるようになっている。このように、EGRバルブ32の開度制御により、吸気通路に還流される排気ガスの還流量が調整されるようになっている。
【0042】
また、EGRバルブ32には、EGRバルブ開度センサ35が設けられており、EGRバルブ開度センサ35は、EGRバルブ32の開度を検出して電気信号に変換し、ECU3に出力するようになっている。
【0043】
水冷式EGRクーラ33は、EGR管31の途中部分に設けられ、EGR管31の管内通路に連通するガス通路と、エンジンからの冷却水の一部が供給される冷却水路とを内部に有している。水冷式EGRクーラ33は、冷却水路を流れる冷却水とガス通路を流れる排気ガスとを熱交換させることにより排気ガスを冷却するようになっている。
【0044】
空冷式EGRクーラ34は、水冷式EGRクーラ33の下流においてEGR管31の途中部分に設けられ、EGR管31の管内通路に連通するガス通路を内部に有し、フィン状の放熱部材を外面に有している。また、詳細は後述するが、空冷式EGRクーラ34は、車両前方のカウル61内に収納されており、カウルルーバ65を介して流入した外気とガス通路を流れる排気ガスとを熱交換させることにより排気ガスを冷却するようになっている。
【0045】
図2を参照して空調装置2について説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る空調装置2の概略構成図である。
【0046】
空調装置2は、後述する導入部としての外気導入ダクト66に接続される筒状のケース41を有し、ケース41内には車室内に空気を吸入するブロワ42と、ブロワ42の下流に設けられた冷房用熱交換器としてのエバポレータ43と、エバポレータ43の下流に設けられた暖房用熱交換器としてのヒータコア44とが設けられている。
【0047】
ケース41の最上流は、外気が導入される外気導入口41aおよび内気が導入される内気導入口41bが形成されており、外気導入口41aは外気導入ダクト66に接続され、内気導入口41bは車室内側に向けて開口されている。
また、ケース41内の外気導入口41aおよび内気導入口41bの近傍には、内外気ダンパ45が回動自在に設けられており、内外気ダンパ45は、ECU3の指令により図示しないアクチュエータが駆動されて外気導入口41aおよび内気導入口41bを選択的に開閉するようになっている。
【0048】
外気導入口41aおよび内気導入口41bとブロワ42との間には、フィルタ46が設けられており、外気導入口41aおよび内気導入口41bから導入された空気中に含まれる塵や埃等の異物の混入を防止するようになっている。
【0049】
ブロワ42は、遠心式の送風ファン51と、送風ファン51の回転軸に連結されたブロワモータ52とを有し、送風ファン51を回転させることにより外気導入口41aおよび内気導入口41bのうち内外気ダンパ45により開放されている側からケース41内に空気を導入するようになっている。
【0050】
エバポレータ43は、図示しないコンプレッサ、コンデンサ、レシーバ、膨張弁等と冷凍サイクルを構成しており、エバポレータ43内には、コンプレッサ、コンデンサ、レシーバ、膨張弁等により低温低圧にされた冷媒が送り込まれるようになっている。そして、エバポレータ43内を流れる冷媒がブロワ42により送風された空気と熱交換することにより、エバポレータ43を通過した空気が冷却されるようになっている。
【0051】
ヒータコア44は、図示しないエンジン1の冷却水路等と加熱サイクルを構成しており、ヒータコア44内には、エンジン1を通過して温められた冷却水が内部に送り込まれるようになっている。そして、ヒータコア44内を流れる冷却水がブロワ42により送風された空気と熱交換することにより、ヒータコア44を通過した空気が暖められるようになっている。
【0052】
エバポレータ43とヒータコア44との間には、エアミックスドア47が回動自在に設けられており、エアミックスドア47は、ECU3の指令により図示しないアクチュエータが駆動されて開度が調整されるようになっている。このように、エアミックスドア47の開度が調整されることにより、ヒータコア44を通過する空気とヒータコア44を迂回する空気との割合が調整され、車室内に吹出す空気の温度が制御されるようになっている。
【0053】
ケース41の最下流は、フロントガラス63の内側に吹き出すデフロスター吹出口41cと、搭乗者の上半身に吹き出すフェイス吹出口41dと、搭乗者の足元に吹出すフット吹出口41eとが形成されており、各吹出口41c、41d、41eの近傍には各吹出口41c、41d、41eを開閉するドア53、54、55が設けられている。
【0054】
これらのドア53、54、55は、ECU3の指令により図示しないアクチュエータが駆動されて各吹出口41c、41d、41eを開閉するようになっており、各種吹出モードに応じて吹出し位置が選択されるようになっている。
【0055】
次に、本発明の特徴部分である空気導入ダクトの周辺部分について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る車両の前方部の部分模式図である。
【0056】
図3に示すように、車両の前方部は、フードパネル62と、フロントガラス63と、フードパネル62の後端部とフロントガラス63の下端部との間に設けられたカウル61と、カウル61の後部に接続されたダッシュパネル64と、ダッシュパネル64に設けられた空調装置2と、カウル61と空調装置2とを接続する外気導入ダクト66とを含んで構成されている。また、フードパネル62の下方にはエンジンルーム67が形成されており、このエンジンルーム67と車室内とがダッシュパネル64により仕切られている。
【0057】
カウル61は、車幅方向に延在しており、カウル61の上方にはカウル61を覆うようにカウルルーバ65が設けられている。カウルルーバ65には、スリットが形成されており、このスリットを介して外気がカウル61内に導入されるようになっている。また、カウルルーバ65の車両の前後方向の中間部分には、仕切板68が車幅方向に延設され、仕切板68によりカウル61内が前後に仕切られている。
【0058】
仕切板68に仕切られたカウル61の前方部は、空冷式EGRクーラ34が収納され、空冷式EGRクーラ34を通過した冷却空気を導入する冷却空気導入部71となっており、カウルルーバ65を介して外気を空冷式EGRクーラ34の冷却空気として導入するようになっている。
また、仕切板68に仕切られたカウル61の後方部は、車外から外気を導入する外気導入部72となっており、空冷式EGRクーラ34の冷却空気として利用されていない外気を導入するようになっている。
【0059】
カウル61の下部には、連通路74が形成されており、連通路74は、冷却空気導入部71と外気導入部72とを連通するように車両の前後方向に延在している。また、連通路74の延在方向の中間位置におけるカウル61の底部には、開口が形成されており、連通路74は、この開口を介して外気導入ダクト66内と連通している。
また、冷却空気導入部71側のカウル61の底部には、冷却空気導入部71とエンジンルーム67とを連通する連通孔73が形成されており、空冷式EGRクーラ34に導入された冷却空気は、連通孔73を介してエンジンルーム67または連通路74を介して外気導入ダクト66に導入されるようになっている。
【0060】
連通路74には、切換部としての第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78が回動自在に設けられており、第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78の回動動作に応じて、冷却空気導入部71または外気導入部72のいずれか一方から外気導入ダクト66に外気が導入されるようになっている。
【0061】
具体的には、第1切換ダンパ77は、連通孔73を閉鎖するともに冷却空気導入部71と外気導入ダクト66とを連通させる連通位置と、冷却空気導入部71とエンジンルーム67とを連通させるとともに、冷却空気導入部71と外気導入ダクト66とを遮断する遮断位置との間で回動するようになっており、冷却空気導入部71とエンジンルーム67または冷却空気導入部71と外気導入ダクト66との連通状態を選択的に切り換えるようになっている。
【0062】
また、第2切換ダンパ78は、外気導入部72と外気導入ダクト66とを連通する連通位置と、外気導入部72と外気導入ダクト66とを遮断する遮断位置との間で回動するようになっており、外気導入部72と外気導入ダクト66との連通状態を切り換えるようになっている。
【0063】
そして、第1切換ダンパ77が矢印Aに示すように回動し、第2切換ダンパ78が矢印Cに示すように回動することにより、冷却空気導入部71と外気導入ダクト66内とが連通路74を介して連通し、空冷式EGRクーラ34によって熱交換された後の冷却空気が外気導入ダクト66を通じて空調装置2内に導入されるようになっている。
【0064】
一方、第1切換ダンパ77が矢印Bに示すように回動し、第2切換ダンパ78が矢印Dに示すように回動することにより、冷却空気導入部71とエンジンルーム67とが連通するとともに、外気導入部72と外気導入ダクト66内とが連通路74を介して連通する。すなわち、空冷式EGRクーラ34によって熱交換された後の冷却空気がエンジンルーム67に抜け、空冷式EGRクーラ34によって熱交換されていない外気が外気導入ダクト66を通じて空調装置2内に導入されるようになっている。
【0065】
図1に戻り、ECU3は、CPU(Central Processing Unit)84、ROM(Read Only Memory)85、RAM(Random Access Memory)86、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)87、A/D変換器やバッファ等を含む入力インターフェース回路88および駆動回路を含む出力インターフェース回路89を有して構成されている。
【0066】
ECU3の入力インターフェース回路88には、エアフローメータ15、空燃比センサ29、EGRバルブ開度センサ35、内気センサ91、外気センサ92、日射センサ93、エバポレータ温度センサ94、水温センサ95等がそれぞれ接続されており、これらのセンサ15、29、35、91、92、93、94、95からの情報がECU3に取り込まれるようになっている。
【0067】
内気センサ91は、車室内の内気温度を検出して電気信号に変換し、ECU3に出力するようになっている。
外気センサ92は、車外の外気温度を検出して電気信号に変換し、ECU3に出力するようになっている。
日射センサ93は、車室内に入射される日射量を検出して電気信号に変換し、ECU3に出力するようになっている。
【0068】
エバポレータ温度センサ94は、エバポレータ43から吹出される空気温度を検出して電気信号に変換し、ECU3に出力するようになっている。
水温センサ95は、ヒータコア44を循環するエンジン1の冷却水温度を検出して電気信号に変換し、ECU3に出力するようになっている。
【0069】
また、ECU3の入力インターフェース回路88には、空調装置2のON/OFFを切り換える空調スイッチ96と、空調装置2の動作モードを切り換えるモード切換スイッチ97とが接続されている。
モード切換スイッチ97は、動作モードとして内気循環モードと外気導入モードとを有しており、運転者の操作により2つのモードを選択的に切り換えることができるようになっている。
【0070】
モード切換スイッチ97が操作されて空調装置2が内気循環モードに切り換えられると、図2に示す内外気ダンパ45が外気導入口41aを閉鎖するように回動し、空調装置2内と車室内とが連通され、空調装置2内に外気が導入されるのが防止される。一方、モード切換スイッチ97が操作されて空調装置2が外気導入モードに切り換えられると、内外気ダンパ45が内気導入口41bを閉鎖するように回動し、外気導入ダクト66内と空調装置2内とが連通され、車室内に外気が導入される。
【0071】
ECU3の出力インターフェース回路89には、図示しないそれぞれの駆動回路を介してサプライポンプ21、複数の燃料噴射弁23、燃料供給弁27、EGRバルブ32、空調装置2、第1切換ダンパ77、第2切換ダンパ78が接続されており、ECU3からの指令に基づいて、各装置21、23、27、32、2、77、78が駆動制御されている。
【0072】
次に動作について説明する。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る空調制御処理を示すフローチャートである。
【0073】
空調装置2の空調スイッチ96がONになると(ステップS11でYes)、ECU3により予め設定された車室内の目標温度と、内気センサ91、外気センサ92、日射センサ93、エバポレータ温度センサ94、水温センサ95から取得した内気温度、外気温度、日射量、エバポレータ43から吹出される空気温度、冷却水温度とに基づいて、ブロワ42の送風ファン51の回転数やエアミックスドア47の開度が制御され、車室内の温度が目標温度に近づくように調整される。
【0074】
次に、ECU3により空調装置2の動作モードが外気導入モードか内気循環モードかが判定される(ステップS12)。ECU3により空調装置2の動作モードが内気循環モードと判定されると(ステップS12でNo)、ステップS16に移行する。一方、ECU3により空調装置2の動作モードが外気導入モードと判定されると(ステップS12でYes)、ECU3により車室内の温度が目標温度より低いか否かが判定される(ステップS13)。
【0075】
次に、ECU3により車室内の温度が目標温度よりも低いと判定されると(ステップ13でYes)、第1切換ダンパ77が冷却空気導入部71と外気導入ダクト66とを連通させる位置まで回動するとともに、第2切換ダンパ78が外気導入部72と外気導入ダクト66とを遮断させる位置まで回動し、空冷式EGRクーラ34によって熱交換された後の冷却空気が冷却空気導入部71から外気導入ダクト66を通じて空調装置2内に導入される(ステップS14)。
【0076】
一方、ECU3により車室内の温度が目標温度以上と判定されると(ステップS13でNo)、第1切換ダンパ77が冷却空気導入部71と外気導入ダクト66とを遮断させる位置まで回動するとともに、第2切換ダンパ78が外気導入部72と外気導入ダクト66とを連通させる位置まで回動し、空冷式EGRクーラ34によって熱交換されていない外気が外気導入部72から外気導入ダクト66を通じて空調装置2内に導入される(ステップS15)。
【0077】
次に、ステップS14、ステップS15において切換ダンパによる切換動作の終了、またはステップS12において空調装置2が内気循環モードと判定された場合、空調装置2の空調スイッチ96がOFFにされるまでステップS12からステップS15までの処理が繰り返される(ステップS16)。
【0078】
以上のように、本実施の形態では、EGR管31と、EGR管31の途中部分に設けられた空冷式EGRクーラ34と、内気または外気を取り込んで車室内に送り出す空調装置2と、車室内の温度を目標温度に近づけるよう空調装置2を制御するECU3とを備えた車両用暖房システムにおいて、空冷式EGRクーラ34によって排気ガスと熱交換された後の冷却空気を空調装置2内に導入させる外気導入ダクト66を備えたものから構成されている。
【0079】
よって、空冷式EGRクーラ34において排気ガスと熱交換された後の冷却空気が外気導入ダクト66を介して空調装置2内に導入されるため、熱交換後の暖かい空気を空調装置2の暖房に利用することができる。
したがって、エンジン1を強制的に駆動させることなく、暖かい空気を空調装置2内に導入することができるため、燃費悪化を招くことなく、暖房性能向上を図ることができる。
【0080】
また、本実施の形態では、第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78によって冷却空気導入部71および外気導入部72と外気導入ダクト66内との連通状態が切り換えられるため、例えば、車室内の温度が目標温度よりも高い場合等の熱交換後の冷却空気を空調装置2内に導入する必要がないときに、冷却空気導入部71から熱交換後の冷却空気が外気導入ダクト66に導入されないように、第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78により冷却空気導入部71と外気導入ダクト66内とを遮断して、熱交換後の冷却空気の空調装置2への影響を抑制することができる。
一方、例えば、車室内の温度が目標温度よりも低い場合等の熱交換後の冷却空気を空調装置2内に導入する必要があるときに、第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78により冷却空気導入部71と外気導入ダクト66内とを連通させて空調装置2の暖房性能を向上させることができる。
【0081】
なお、本実施の形態では、車室内の温度が目標温度よりも低い場合に、第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78を駆動して、空冷式EGRクーラ34によって熱交換された後の冷却空気を空調装置2内に導入するようにしたが、ECU3に目標温度よりも低い設定温度を予め記憶しておき、車室内の温度が設定温度よりも低い場合に、第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78を駆動するようにしてもよい。これにより、車室内の温度が目標温度を超過することを原因とした制御誤差を考慮して設定温度を設定することにより、車室内の温度が目標温度を超過してから安定するまでの時間を減少させて、より精度よく空調制御を行うことができる。
【0082】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る車両用暖房システムは、上述した第1の実施の形態に係る車両用暖房システムと同一の構成であり、第1の実施の形態とはEGRバルブ32によって空冷式EGRクーラ34を通過する排気ガスの流量を調整することにより暖房制御の補助を行う点についてのみ相違する。したがって、同一の構成については、第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0083】
ECU3は、水温センサ95から取得した冷却水の温度等からエンジン1の運転状態を推定するとともに、推定したエンジン1の運転状態と空調装置2の運転状態とに基づいてEGRバルブ32の開度を調整するようになっている。
【0084】
一般に、ECU3は、シリンダ24側の冷却水の温度が高い場合にEGR管31を通過する排気ガスの流量を増加させるようにEGRバルブ32の開度を調整して、水冷式EGRクーラ33および空冷式EGRクーラ34に冷却された排気ガスを多量に燃焼室に導入し、酸素濃度の低下とも相まって燃焼温度を低下しているが、本実施形態では、車室内の温度が目標温度を超えない程度にEGRバルブ32の開度を調整している。
【0085】
すなわち、ECU3により車室内の温度が目標温度以上と判定されると、EGRバルブ32の開度が小さくなるように調整され、EGR管31を流れる排気ガスの流量が減少されるため、空冷式EGRクーラ34に供給される冷却空気の温度上昇が抑制される。
【0086】
以上のように、本実施の形態では、車室内の温度が目標温度よりも高い場合等の熱交換後の冷却空気を空調装置2内に導入する必要がないときに、空冷式EGRクーラ34を通過する排気ガスの流量を減少させて冷却空気の温度上昇を抑え、熱交換後の冷却空気の空調装置2への影響を抑制することができる。
一方、車室内の温度が目標温度よりも低い場合等の熱交換後の冷却空気を空調装置2内に導入する必要があるときに、空冷式EGRクーラ34を通過する排気ガスの流量を増加させて冷却空気の温度を上昇させて空調装置2の暖房性能を向上させることができる。
【0087】
なお、この構成の場合、空調装置2の動作モードを内気循環モードにすることにより、内外気ダンパ45により外気導入口41aを閉鎖して、外気導入ダクト66を通じて空調装置2に導入される外気による空調制御に与える影響を防止することも可能である。これにより、EGR管31を流れる排気ガスの流量を減らすことなく、熱交換後の冷却空気の空調装置2への影響を抑制できる。また、EGR管31を流れる排気ガスの流量を減らす必要がないため、NOxの低減および燃費の向上を図ることができる。
【0088】
さらに、第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78により冷却空気導入部71と外気導入ダクト66内とを遮断することにより、空冷式EGRクーラ34により暖められた冷却空気が外気導入ダクト66を通じて空調装置2内に導入されないため、空調装置2に導入される外気による空調制御に与える影響を防止することも可能である。これにより、空調装置2の動作モードを内気循環モードにすることなく、熱交換後の冷却空気の空調装置2への影響を抑制できる。
【0089】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る車両用暖房システムは、上述した第1の実施の形態に係る車両用暖房システムとは、バイパス管98に排気ガスを流すことによって空冷式EGRクーラ34を通過する排気ガスの流量を調整することにより暖房制御の補助を行う点についてのみ相違する。したがって、同一の構成については、第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る車両用暖房システムの概略構成図である。
【0090】
図5に示すように、EGR管31には、水冷式EGRクーラ33の下流側に空冷式EGRクーラ34を迂回するように空冷式EGRクーラ34の上流側部分と下流側部分とを接続する流量調整部としてのバイパス管98が設けられており、バイパス管98の上流側にはバイパスバルブ99が設けられている。
【0091】
ECU3は、水温センサ95から取得した冷却水の温度等からエンジン1の運転状態を推定するとともに、推定したエンジン1の運転状態と空調制御時の車室内の温度および目標温度とに基づいてバイパスバルブ99の開度を調整するようになっている。
【0092】
すなわち、ECU3により車室内の温度が目標温度以上と判定されると、バイパスバルブ99の開度がバイパス管98を流れる排気ガス量が多くなるよう調整されるため、空冷式EGRクーラ34のガス通路を流れる排気ガスの流量が減少し、空冷式EGRクーラ34に供給される冷却空気の温度上昇が抑制され、外気導入ダクト66を通じて空調装置2に導入される外気が空調制御に与える影響を低減している。
【0093】
以上のように、本実施の形態では、バイパスバルブ99によってバイパス管98に流入する排気ガスの流量を調整することにより、空冷式EGRクーラ34を通過する排気ガスの流量を調整して、空冷式EGRクーラ34における熱交換後の冷却空気の温度上昇を制御することができる。
【0094】
なお、この構成の場合も、本発明の第2の実施の形態と同様に、内外気ダンパ45や第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78を駆動することにより、空調装置2に導入される外気が空調制御に与える影響を防止することも可能である。
【0095】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る車両用暖房システムは、上述した第1の実施の形態に係る車両用暖房システムと同一の構成であり、第1の実施の形態とは空調装置2を強制内気モードにする点についてのみ相違する。したがって、同一の構成については、第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0096】
強制内気モードは、モード切換スイッチ97により選択された動作モードにかかわらず、エンジン1の運転状態、空調装置2の運転状態に基づいて強制的に内外気ダンパ45により外気導入口41aを閉鎖するようになっている。
具体的には、判定手段としてのECU3により水温センサ95から取得した冷却水の温度からEGR管31に排気ガスが流れているか否かが判定されるとともに、車室内の温度と目標温度とから空調装置2が冷房運転か暖房運転かが判定される。そして、ECU3によりECU制御を行うと判定され、かつ冷房運転と判定された場合に、空調装置2の動作モードが強制内気モードに切り換えられ、内外気ダンパ45により外気導入口41aが閉鎖される。
【0097】
以上のように、本実施の形態では、冷房時に空冷式EGRクーラ34において熱交換された冷却空気が空調装置2に導入されるのが防止されるため、EGR管31を流れる排気ガスの流量を減らすことなく、熱交換後の冷却空気の空調装置2への影響を抑制できる。また、EGR管31を流れる排気ガスの流量を減らす必要がないため、NOxの低減および燃費の向上を図ることができる。
【0098】
なお、本実施形態においては、図6に示すように第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78を設けずに、第2の実施の形態および第3の実施形態のように空冷式EGRクーラ34を通過する排気ガスの流量を調整することにより空調制御の補助を行うようにしてもよい。
【0099】
この構成により、夏季は冷房運転により空調装置2が内気循環モードで運転されることが多く、外気導入ダクト66を通じて空調装置2に外気が導入されないため、空冷式EGRクーラ34を流れる排気ガスの流量を抑制する頻度は低く、冬季は暖房運転されることが多く、空冷式EGRクーラ34を流れる排気ガスの流量を抑制する頻度は低く、さらにエンジン1の運転状態や空調装置2の運転状態に基づいて強制内気モードに切り換えられるため、第1切換ダンパ77および第2切換ダンパ78を設けて空調装置2の空調補助を行う構成と比較して、簡易な構成とするとともに低コストで同様な効果を得ることができる。
【0100】
また、上記した各実施の形態においては、空冷式EGRクーラ34に導入される冷却空気を、カウルルーバ65を介して車外から導入しているため、専用の冷却ファンを設ける構成と比較して空冷式EGRクーラ34を簡易な構成にすることができるとともに、コストを低減することができる。また、カウルルーバ65を介してフードパネル62の後端部とフロントガラス63の下端部との間から外気を導入するため、床下から外気を導入する構成と比較して埃の進入や臭いの発生を防止することができる。
【0101】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0102】
以上説明したように、本発明は、燃費悪化を招くことなく、暖房性能向上を図ることができるものであり、特に排気還流管を流れる排気を冷却した後の冷却空気を暖房制御に用いるのに好適な車両用暖房システムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用暖房システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る空調装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る車両の前方部の部分模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る空調制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る車両用暖房システムの概略構成図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る車両用暖房システムの変形例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0104】
1 エンジン(内燃機関)
2 空調装置(空調部)
3 ECU(空調制御手段、判定手段)
4 吸気装置
5 燃料噴射装置
6 排気装置
8 ターボ過給機
9 EGR装置
13 吸気管
26 排気管
31 EGR管(排気還流管)
32 EGRバルブ(還流量調整バルブ)
33 水冷式EGRクーラ
34 空冷式EGRクーラ(冷却部)
41a 外気導入口
41b 内気導入口
43 エバポレータ(冷房用熱交換器)
44 ヒータコア(暖房用熱交換器)
45 内外気ダンパ
61 カウル
62 フードパネル
63 フロントガラス
65 カウルルーバ
66 外気導入ダクト(導入部)
71 冷却空気導入部
72 外気導入部
77 第1切換ダンパ(切換部)
78 第2切換ダンパ(切換部)
98 バイパス管
99 バイパスバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管を流れる排気ガスの一部を吸気管に還流させる排気還流管と、
前記排気還流管の途中部分に設けられ、前記排気ガスが通過する間に冷却空気と熱交換させることにより前記排気ガスを冷却する冷却部と、
冷房用熱交換器と暖房用熱交換器とを内部に備え、内気または外気を取り込んで車室内に送り出す空調部と、
車室内の温度を目標温度に近づけるよう前記空調部を制御する空調制御手段とを備えた車両用暖房システムにおいて、
前記冷却部によって前記排気ガスと熱交換された後の冷却空気を前記空調部内に導入させる導入部を備えたことを特徴とする車両用暖房システム。
【請求項2】
車外から前記導入部に外気を導入する外気導入部と、
前記冷却部から前記導入部に前記排気ガスと熱交換された後の冷却空気を導入する冷却空気導入部と、
前記外気導入部および前記冷却空気導入部のいずれか一方と前記導入部との連通状態を切り換える切換部とを備え、
前記空調制御手段が、前記車室内の温度を前記目標温度に近づくように前記切換部を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の車両用暖房システム。
【請求項3】
前記冷却部を通過する排気ガスの流量を調整する流量調整部を備え、
前記空調制御手段が、前記車室内の温度を前記目標温度に近づくように前記流量調整部を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用暖房システム。
【請求項4】
前記流量調整部が、前記排気還流管を流れる排気ガスの流量を調整する環流量調整バルブを有することを特徴とする請求項3に記載の車両用暖房システム。
【請求項5】
前記流量調整部が、前記冷却部を迂回するように前記排気還流管の前記冷却部の上流側部分と下流側部分とを連通するバイパス管と、
前記バイパス管に流入する排気ガスの流量を調整するバイパスバルブとを有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両用暖房システム。
【請求項6】
前記導入部を閉鎖または開放する内外気ダンパと、
前記内燃機関の運転状態に応じて、前記冷却部に排気ガスが流れ込んでいるか否かを判定する判定手段とを備え、
冷房時に前記判定手段により前記冷却部に排気ガスが流れ込んでいると判定された場合に、前記空調制御手段が、前記内外気ダンパによって前記導入部を閉鎖することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載の車両用暖房システム。
【請求項7】
車両のフードパネルの後端部とフロントガラスの下端部との間に配設され、前記車両の幅方向に延在するカウルルーバを備え、
前記冷却空気は、車外から前記カウルルーバを介して前記冷却部に導入されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1の請求項に記載の車両用暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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