車両用温度調節装置
【課題】搭載作業が容易な車両用温度調節装置を提供する。
【解決手段】車両用温度調節装置1は、電池2の温度を調節する。装置1は、冷却水が循環する一次系統3と、冷媒が循環する二次系統4とを備える。一次系統3は、電池2と冷却水とを熱交換させる熱交換器31と、冷却水と外気とを熱交換させる熱交換器32とを備える。二次系統4は、冷凍サイクルである。冷凍サイクルの高温側の熱交換器42と低温側の熱交換器44とは、それらの両方が、一次系統3と熱的に結合している。このため、外気との熱交換は、熱交換器32だけが提供する。一次系統3のポンプ33は、冷却水の循環方向を切換えることができる。装置1は、電池2と冷凍サイクルとを含む主ユニット6を構成して、車両に搭載されている。制御装置5は、冷却運転および加熱運転を実行するように機器を制御する。
【解決手段】車両用温度調節装置1は、電池2の温度を調節する。装置1は、冷却水が循環する一次系統3と、冷媒が循環する二次系統4とを備える。一次系統3は、電池2と冷却水とを熱交換させる熱交換器31と、冷却水と外気とを熱交換させる熱交換器32とを備える。二次系統4は、冷凍サイクルである。冷凍サイクルの高温側の熱交換器42と低温側の熱交換器44とは、それらの両方が、一次系統3と熱的に結合している。このため、外気との熱交換は、熱交換器32だけが提供する。一次系統3のポンプ33は、冷却水の循環方向を切換えることができる。装置1は、電池2と冷凍サイクルとを含む主ユニット6を構成して、車両に搭載されている。制御装置5は、冷却運転および加熱運転を実行するように機器を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルなどの冷熱機器によって車両の熱負荷の温度を調節する車両用温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2、および特許文献3は、車両の室内および車両に搭載された電池の温度を調節する車両用温度調節装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3149493号
【特許文献2】特開2002−352867号公報
【特許文献3】特開2010−64651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、電池を空気、または冷却水によって冷却する装置を開示している。さらに、この文献には、電池を冷却するための空気または冷却水を、冷凍サイクルなどの熱機器によって冷却する装置も開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1の装置では、車両の外部の空気と電池との間の熱交換を実現するために、冷却水用の熱交換器と、冷凍サイクルの熱交換器、すなわち凝縮器とを、車両の外部の空気と熱交換するように車両に搭載する必要があった。このため、温度調節装置としての構成が複雑化するという問題点があった。また、車両に2つの外気用熱交換器を搭載する必要があるという問題点があった。
【0006】
特許文献2も、電池を冷却するための冷却水回路と、冷凍サイクルとを備える温度調節装置を開示している。しかし、この構成でも、冷却水用の熱交換器と、冷凍サイクルの凝縮器とを設ける必要があった。
【0007】
特許文献3も、電池を冷却するための冷却水回路と、冷凍サイクルとを備える温度調節装置を開示している。この構成では、電池を冷却する冷却水は、冷凍サイクルだけと熱交換するように構成されている。このため、車両には、冷凍サイクルの凝縮器だけが設けられる。しかし、この構成では、電池の温度を調節するためには、必ず冷凍サイクルを運転する必要がある。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両への搭載が容易な、簡単な構成の車両用温度調節装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、単一の外気用熱交換器を備える車両用温度調節装置を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、簡単な構成によって車両の熱負荷を加熱および冷却することができる車両用温度調節装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0012】
請求項1に記載の発明は、車両に搭載された熱負荷(2、602)と、熱輸送媒体が循環する一次系統(3)であって、熱負荷と熱輸送媒体とを熱交換させる熱負荷用熱交換器(31)、および外気と熱輸送媒体とを熱交換させる外気用熱交換器(32)を備える一次系統(3)と、熱輸送媒体と熱交換する高温側熱交換器(42)、および熱輸送媒体と熱交換する低温側熱交換器(44)とを備え、高温側熱交換器と低温側熱交換器との間に温度差を提供する冷熱機器(4、504)とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、一次系統によって熱負荷の熱を外気へ放熱することができる。さらに、冷熱機器によって熱輸送媒体を加熱、または冷却することができるから、冷熱機器は一次系統を介して熱負荷の温度を調節することができる。しかも、冷熱機器は、その高温側熱交換器と低温側熱交換器との両方が一次系統と熱的に結合されている。このため、外気との熱交換を提供する熱交換器は、一次系統の外気用熱交換器だけである。したがって、簡単な構成の車両用温度調節装置が提供される。
【0014】
請求項2に記載の発明は、一次系統は、高温側熱交換器により加熱された熱輸送媒体を熱負荷用熱交換器へ供給する運転状態と、低温側熱交換器により冷却された熱輸送媒体を熱負荷用熱交換器へ供給する運転状態とを切換える切換装置(33)を備えることを特徴とする。この構成によると、高温側熱交換器により加熱された熱輸送媒体、または低温側熱交換器により冷却された熱輸送媒体が、熱負荷用熱交換器へ供給される。この結果、熱負荷の冷却と、熱負荷の加熱とを切換えることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、高温側熱交換器(42)は、一次系統における熱負荷用熱交換器(31)の一方に設けられ、低温側熱交換器(44)は、一次系統における熱負荷用熱交換器(31)の他方に設けられ、切換装置は、熱輸送媒体の循環方向を第1方向と、この第1方向とは反対の第2方向とに切換えることを特徴とする。この構成によると、一次系統を循環する熱輸送媒体の流れ方向を切換えることにより、熱負荷の冷却と、熱負荷の加熱とを切換えることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、冷熱機器(4)は、電動型の圧縮機(41)を備え、高温側熱交換器(42)を放熱器とし、低温側熱交換器(44)を蒸発器とする蒸気圧縮式の冷凍サイクルであり、さらに、圧縮機を停止または作動させるとともに、熱輸送媒体の循環方向を切換えるように切換装置を制御する制御装置(5)を備え、制御装置は、圧縮機を作動させるとともに、熱輸送媒体の循環方向を第1方向とするように切換装置を制御することにより、冷凍サイクルにより熱負荷を冷却する冷却運転と、圧縮機を作動させるとともに、熱輸送媒体の循環方向を第2方向とするように切換装置を制御することにより、冷凍サイクルにより熱負荷を加熱する加熱運転とを提供することを特徴とする。この構成によると、一次系統における熱輸送媒体の循環方向の切換えによって、熱負荷の冷却と、熱負荷の加熱とが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、制御装置は、さらに、圧縮機を停止させるとともに、熱輸送媒体の循環方向を第1方向または第2方向とするように切換装置を制御することにより、熱負荷の熱を一次系統によって外気へ放熱する放熱運転を提供することを特徴とする。この構成によると、一次系統における熱輸送媒体の循環方向の切換えと、冷凍サイクルの停止/作動の切換えとによって、3つの運転状態を提供することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、熱負荷と冷熱機器とは、一体のユニットとして車両に搭載可能に構成されていることを特徴とする。この構成によると、熱負荷の温度を調節するための冷熱機器が、熱負荷と一体のユニットとして構成される。このため、熱負荷と冷熱機器とを、ユニットとして車両に搭載することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、熱負荷は、車両の走行用の電動機に給電する電池(2)であることを特徴とする。この構成によると、車両の走行用の電動機に給電する電池の温度を調節することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、熱負荷は、空調装置(602)であることを特徴とする。この構成によると、車両の室内の温度を調節することができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、一次系統は、外気用熱交換器(32)または熱負荷用熱交換器(31)を通過する熱輸送媒体の流量を調節する流量制御装置(36)を備えることを特徴とする。この構成によると、外気用熱交換器または熱負荷用熱交換器(31)を通過する熱輸送媒体の流量が調節される。この結果、外気と熱輸送媒体との間の熱交換量、または熱負荷と熱輸送媒体との間の熱交換量を調節することができる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、さらに、熱輸送媒体を加熱する熱源装置(37)を備えることを特徴とする。この構成によると、熱源装置によって電池を加熱することができる。
【0023】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。
【図5】第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。
【図7】本発明を適用した第2実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【図8】本発明を適用した第3実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【図9】本発明を適用した第4実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【図10】本発明を適用した第5実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【図11】本発明を適用した第5実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百の位だけが異なる参照符号を付加することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る車両用温度調節装置1を示すブロック図である。車両用温度調節装置1は、車両における熱負荷である電池(BATT)2の温度を冷凍サイクルなどの冷熱機器によって調節する。熱負荷は、電池2である。電池2は、車両の走行用の電動機に給電する二次電池である。電池2は、リチウムイオン電池などによって提供することができる。電池2は数百ボルトの出力を供給する。
【0027】
車両用温度調節装置1は、電池2と熱交換するための熱輸送媒体が循環する一次系統3を有する。熱輸送媒体は、不凍液入りの冷却水である。一次系統3は、冷却水サイクルとも呼ばれる。一次系統3は、熱負荷用の熱交換器31、外気用の熱交換器32、および双方向型の電動のポンプ33を備える。一次系統3は、熱交換器31、熱交換器32、およびポンプ33を直列接続した冷却水の循環路34を構成する。熱負荷用の熱交換器31は、電池2と冷却水との間の熱交換を可能とする。外気用の熱交換器32は、車両の外部の空気と冷却水との間の熱交換を可能とする。外気用の熱交換器32は、車両用温度調節装置1における唯一の外気用熱交換器である。熱交換器32の近傍には、熱交換器32を通過するように外気を流す送風機32aを設けることができる。熱交換器32は、ラジエータとも呼ばれる。ポンプ33は、一次系統3内に冷却水を循環させる。ポンプ33は、冷却水の循環方向を、第1方向と、第1方向とは反対の第2方向とに切換え可能である。ポンプ33は、モータの回転方向を切換えることにより送水方向を切換える逆転型のポンプによって提供することができる。ポンプ33は、熱輸送媒体の循環方向を切換える切換装置を提供する。
【0028】
一次系統3は、電池2と外気との間の熱交換を提供する。一次系統3は、電池2から外気への放熱を主として提供する。一次系統3は、熱的な条件が満たされると、外気から電池2への熱の移動、すなわち電池2の加熱を行う場合がある。
【0029】
一次系統3は、熱交換器32をバイパスして冷却水を流すためのバイパス通路35を備える。バイパス通路35は、熱交換器32と並列に設けられている。バイパス通路35と循環路34とは、分岐部によって接続されている。一方の分岐部には、三方弁36が設けられている。三方弁36は、冷却水の流路を、熱交換器32だけを通過する流路と、バイパス通路35だけを通過する流路とに、少なくとも切換えることができる。さらに、三方弁36は、熱交換器32を通過する流量と、バイパス通路35を通過する流量との比を調節することができる。三方弁36は、外気用の熱交換器32を通過する冷却水の流量を調節する流量制御装置を提供する。三方弁36により、外気と冷却水との間の熱交換量が調節される。バイパス通路35には、補助的な熱源装置37が設けられている。熱源装置37は、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータである。熱源装置37は、通電されると、バイパス通路35を流れる冷却水を加熱することができる。
【0030】
車両用温度調節装置1は、一次系統3だけと熱的に結合された二次系統4を有する。二次系統4は、高温側の熱交換器42と低温側の熱交換器44とを有し、それら熱交換器42、44の間に温度差を作り出す装置を含む。二次系統4は、冷熱機器4によって提供される。二次系統4は、冷凍機器とも呼ぶことができる。高温側の熱交換器42は一次系統3の冷却水とだけ熱交換する。低温側の熱交換器44は一次系統3の冷却水とだけ熱交換する。高温側の熱交換器42と低温側の熱交換器44とは、それらの両方が、一次系統3と熱的に結合している。
【0031】
冷熱機器4は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルである。冷熱機器4は、圧縮機41、放熱器42、減圧器43、および蒸発器44を備える。圧縮機41は、電動型の圧縮機である。圧縮機41は、蒸発器44から出た低圧冷媒を圧縮し、放熱器42に高圧冷媒を供給する。放熱器42は、高圧冷媒の熱によって冷却水を暖める。放熱器42は、一次系統3と二次系統4との間の熱交換を提供する第1の熱交換器である。放熱器42は、高温側の熱交換器42とも呼ばれる。放熱器42は、冷却水と冷媒との間の熱交換を提供するから、水−冷媒熱交換器とも呼ぶことができる。凝縮性の冷媒が用いられる場合、放熱器42は、凝縮器とも呼ばれる。減圧器43は、放熱器42から出た高圧冷媒を減圧する。蒸発器44は、減圧器43によって減圧された冷媒を蒸発させる。蒸発器44は、冷媒の蒸発によって冷却水を冷却する。蒸発器44は、一次系統3と二次系統4との間の熱交換を提供する第2の熱交換器である。蒸発器44は、低温側の熱交換器44とも呼ばれる。蒸発器44は、冷却水と冷媒との間の熱交換を提供するから、水−冷媒熱交換器とも呼ぶことができる。
【0032】
熱交換器42は、一次系統3における熱交換器31の一方に設けられている。言い換えると、熱交換器42は、熱交換器31と熱交換器32との間の2つの通路のうちの一方の通路に設けられている。熱交換器44は、一次系統3における熱交換器31の他方に設けられている。言い換えると、熱交換器44は、熱交換器31と熱交換器32との間の2つの通路のうちの他方の通路に設けられている。この構成では、一次系統3における熱交換器44と熱交換器31との位置は、ポンプ33が冷却水を第1方向に流すときに、熱交換器44から熱交換器31へ冷却水が流れるように設定されている。また、一次系統3における熱交換器42と熱交換器31との位置は、ポンプ33が冷却水を第2方向に流すときに、熱交換器42から熱交換器31へ冷却水が流れるように設定されている。
【0033】
車両用温度調節装置1は、制御装置(CNTL)5を備える。制御装置5は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体は、メモリによって提供されうる。プログラムは、制御装置5によって実行されることによって、制御装置5をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置5を機能させる。制御装置5が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0034】
制御装置5は、電気的に制御可能な機器、例えばポンプ33、圧縮機41、および三方弁36を制御する。制御装置5は、車両用温度調節装置1の温度情報、例えば電池2の温度、および外気の温度に応じて、電池2の温度を目標温度に一致させるように機器を制御する。目標温度は、電池2が所定の機能を発揮するために望ましい温度帯として設定することができる。制御装置5は、電池2の温度が目標温度より高いとき、冷却運転を実行するように機器を制御する。冷却運転においては、電池2が冷却される。電池2を冷却するための熱的な負荷が大きくなるにしたがって、第1の冷却運転、または第2の冷却運転が実行される。制御装置5は、電池2の温度が目標温度より低いとき、加熱運転を実行するように機器を制御する。加熱運転においては、電池2が加熱される。電池2を加熱するための熱的な負荷が大きくなるにしたがって、第1の加熱運転、第2の加熱運転、または第3の加熱運転が実行される。加熱運転は、暖機運転とも呼ぶことができる。
【0035】
車両用温度調節装置1は、熱負荷である電池2を含む主ユニット6と、主ユニット6から離れて車両に搭載された熱交換器ユニット7とを備える。主ユニット6は、少なくとも電池2と冷熱機器4とを一体の機器として取り扱うことができるように、かつそれらを一体のユニットとして車両に搭載することができるように組み合わせた装置である。主ユニット6は、負荷ユニット6、または電池ユニット6とも呼ばれる。主ユニット6は、少なくとも電池2と、冷熱機器4とを、共通のシャーシに搭載するか、または共通の容器に収容して構成されている。主ユニット6は、さらにポンプ33、バイパス通路35、三方弁36、熱源装置37、および制御装置5を含む。主ユニット6は、電池2のための複数の端子と、電池2および制御装置5のための制御信号端子と、制御装置5および電動ポンプ33などの低電圧機器のための電源端子とを備えることができる。なお、主ユニット6に降圧型電源装置を設けて、電池2から制御装置5、ポンプ33、および圧縮機41などに電力を供給してもよい。
【0036】
主ユニット6は、車両の後部など適切な位置に設置されている。熱交換器ユニット7は、熱交換器32に外気を供給するために有利な位置、例えば車両の前部に設置されている。車両用温度調節装置1における外気との熱交換は、熱交換器32だけが提供する。
【0037】
主ユニット6は、車両用温度調節装置1の取り扱いを容易にする。また、この構成によると、車両への搭載作業が容易になる。主ユニット6には、電池2の温度を調節するための主要な構成要素の多くが含まれる。このため、温度調節機能付きの電池2を提供することができる。また、利用者などは、主ユニット6の内部構造、あるいは個々の部品の性能に過剰に注意を払うことなく、温度調節機能付きの電池を入手し、利用することができる。
【0038】
電池2の温度は、電池2が使用されると上昇する。例えば、電池2への充電、または電池2からの放電によって電池2の温度が上昇する。このため、電池2の温度が望ましい温度帯を上回ると、電池2の温度を低下させるために、電池2を冷却する必要がある。一方、外気温度が低いときに車両の運転を開始する場合、電池2の温度も外気温度とほぼ等しくなっている。このような場合、電池2の温度は、望ましい温度帯を下回ることがある。このため、電池2が自己発熱によって望ましい温度帯に到達する前の期間において、電池2を暖機する必要がある。そこで制御装置5は、冷却運転と加熱運転とを提供するように、車両用温度調節装置1の機器を制御する。
【0039】
図2は、第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。図中には、各部の温度が例示されている。なお、図中における温度は発明者らが想定した一例である。制御装置5は、外気の温度が電池2を十分に冷却することができる第1温度帯にあるとき、第1の冷却運転を実行する。第1の冷却運転は、電池2からの熱の放出を促進するだけである。よって、この運転状態は、放熱運転とも呼ばれる。制御装置5は、圧縮機41を停止させることによって冷熱機器4を停止させるとともに、ポンプ33をいずれかの方向に回転させる。この実施形態では、ポンプ33は、第1方向に回転する。冷却水は熱交換器32に導かれ、外気によって冷却される。外気によって冷却された冷却水は、熱交換器31に供給される。この結果、電池2の熱は、一次系統3だけによって外気に放熱され、電池2の過剰な温度上昇が回避される。
【0040】
図3は、第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。図中には、各部の温度が例示されている。制御装置5は、外気の温度が電池2を十分に冷却できない第2温度帯にあるとき、第2の冷却運転を実行する。例えば、外気温度が30°Cであるとき、上述の放熱運転では電池2の温度上昇を阻止できない。制御装置5は、圧縮機41を作動させることによって冷熱機器4を作動させるとともに、ポンプ33を第1方向に回転させる。冷却水の循環方向は、冷却水が熱交換器31、放熱器42、熱交換器32、蒸発器44の順に流れる第1方向である。このとき、熱交換器31から出た冷却水は、放熱器42によってさらに加熱された後に、熱交換器32に供給される。熱交換器32には、冷却水より温度が低い外気が流れるから、冷却水は熱交換器32において外気によって冷却される。よって、冷熱機器4は、冷却水を加熱することにより、高い外気温度においても外気への放熱を可能とする。外気によって冷却された冷却水は、蒸発器44によってさらに冷却された後に、熱交換器31に供給される。この結果、電池2の熱が外気に放熱され、電池2の過剰な温度上昇が回避される。この構成では、冷熱機器4によって供給される冷熱が電池2の温度を調節するために利用される。
【0041】
図4は、第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。図中には、各部の温度が例示されている。制御装置5は、電池2を暖めるための熱を冷熱機器4が外気から汲み上げることができるとき、すなわち外気の温度が第3温度帯にあるとき、第1の加熱運転を実行する。制御装置5は、圧縮機41を作動させることによって冷熱機器4を作動させるとともに、ポンプ33を第2方向に回転させる。冷却水の循環方向は、冷却水が熱交換器31、蒸発器44、熱交換器32、放熱器42の順に流れる第2方向である。このとき、熱交換器31から出た冷却水は、蒸発器44によってさらに冷却された後に、熱交換器32に供給される。熱交換器32には、冷却水より温度が高い外気が流れるから、冷却水は熱交換器32において外気によって加熱される。よって、冷熱機器4は、冷却水を冷却することにより、低い外気温度においても外気からの熱の汲み上げを可能とする。外気によって加熱された冷却水は、放熱器42によってさらに加熱された後に、熱交換器31に供給される。さらに、制御装置5は、冷却水の一部がバイパス通路35を通るように三方弁36を制御することができる。これにより、三方弁36の下流における冷却水の温度が調節される。この構成では、冷熱機器4によって外気から汲み上げられる熱と、冷熱機器4によって供給される温熱とが電池2の温度を調節するために利用される。
【0042】
図5は、第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。図中には、各部の温度が例示されている。制御装置5は、電池2を暖めるための熱を冷熱機器4が外気から汲み上げることができないとき、すなわち外気の温度が第4温度帯にあるとき、第2の加熱運転を実行する。制御装置5は、冷熱機器4を作動させるとともに、ポンプ33を第2方向に回転させる。ポンプ33の送水方向は、第2方向である。さらに、制御装置5は、熱交換器32をバイパスするように三方弁36を制御する。このとき、熱交換器31から出た冷却水は、蒸発器44によってさらに冷却された後に、熱交換器32をバイパスして、放熱器42に供給される。熱交換器32には、冷却水と温度が等しいか、または低い外気が流れている。よって、冷却水の温度低下を回避するために、熱交換器32がパイパスされる。冷却水は、放熱器42によって加熱された後に、熱交換器31に供給される。この構成では、冷熱機器4によって供給される温熱が電池2の温度を調節するために利用される。
【0043】
図6は、第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。図中には、各部の温度が例示されている。制御装置5は、電池2を暖めるための熱を冷熱機器4だけでは供給できないとき、すなわち外気の温度が第5温度帯にあるとき、第3の加熱運転を実行する。制御装置5は、冷熱機器4を作動させるとともに、ポンプ33を第2方向に回転させる。制御装置5は、熱交換器32をバイパスするように三方弁36を制御する。さらに、制御装置5は、熱源装置37に通電し活性化することにより熱源装置37によって冷却水を加熱する。このとき、熱交換器31から出た冷却水は、蒸発器44によってさらに冷却された後に、熱交換器32をバイパスして、熱源装置37に供給される。冷却水は、熱源装置37によって加熱された後に、さらに放熱器42によって加熱され、その後に、熱交換器31に供給される。この構成では、冷熱機器4によって供給される温熱と、熱源装置37によって供給される温熱とが、電池2の温度を調節するために利用される。
【0044】
この実施形態によると、車両への搭載が容易な、簡単な構成の車両用温度調節装置1が提供される。この実施形態によると、一次系統3による電池(熱負荷)2からの放熱と、冷熱機器4による電池2の冷却と、冷熱機器4による電池2の加熱との3つの運転状態を提供することができる。この実施形態によると、冷熱機器4の高温側の熱交換器42と低温側の熱交換器44との両方が一次系統3の冷却水(熱輸送媒体)と熱交換するように配置されている。車両用温度調節装置1は、単一の外気用の熱交換器を備える。このため、構成が簡単である。また、車両への搭載作業が容易になる。
【0045】
また、高温側の熱交換器42と低温側の熱交換器44とが、一次系統3における電池2のための熱交換器31の両側に配置されている。さらに、一次系統3における冷却水の流れ方向が切換え可能に構成されている。このため、簡単な構成で電池2の冷却と、電池2の加熱とを切換えることができる。
【0046】
(第2実施形態)
図7は、本発明を適用した第2実施形態に係る車両用温度調節装置201を示すブロック図である。上記実施形態では、熱源装置37を設けることにより第3の加熱運転を提供した。これに代えて、熱源装置37を設けず、第3の加熱運転を実行しない車両用温度調節装置201を採用することができる。
【0047】
(第3実施形態)
図8は、本発明を適用した第3実施形態に係る車両用温度調節装置301を示すブロック図である。上記実施形態では、バイパス通路35を設けることにより第2の加熱運転と第3の加熱運転とを提供した。これに代えて、バイパス通路35を設けず、第2および第3の加熱運転を実行しない車両用温度調節装置301を採用することができる。この構成においては、第2の加熱運転に代えて、送風機32aを停止する運転を実行してもよい。具体的には、具体的には、制御装置5は、電池2を暖めるための熱を冷熱機器4が外気から汲み上げることができるとき、すなわち外気の温度が第3温度帯にあるとき、送風機32aを作動させる。そして、制御装置5は、電池2を暖めるための熱を冷熱機器4が外気から汲み上げることができないとき、すなわち外気の温度が第4温度帯にあるとき、送風機32aを停止させる。
【0048】
(第4実施形態)
図9は、本発明を適用した第4実施形態に係る車両用温度調節装置401を示すブロック図である。上記実施形態では、主ユニット6と熱交換器ユニット7とを構成して、装置を車両に搭載した。これに代えて、この実施形態では、複数の構成要素をユニット化することなく、車両に分散して搭載する。
【0049】
(第5実施形態)
図10は、本発明を適用した第5実施形態に係る車両用温度調節装置501を示すブロック図である。上記実施形態では、冷熱機器4は、基本的な構成をもつ冷凍サイクルであった。これに代えて、ホットガスバイパス機能を有する冷凍サイクルからなる冷熱機器504を採用することができる。冷熱機器504は、放熱器42を出た冷媒を、蒸発器44を通すことなく圧縮機41の吸入側に直接的に戻すホットガスバイパス装置545を備える。ホットガスバイパス装置545は、ホットガスバイパス通路と、その通路を開閉する弁とを備えることができる。この構成では、制御装置5は、加熱運転において、冷熱機器504がホットガスサイクルとして運転されるようにホットガスバイパス装置545を制御する。
【0050】
(第6実施形態)
図11は、本発明を適用した第6実施形態に係る車両用温度調節装置601を示すブロック図である。上記実施形態では、温度調節の対象、すなわち熱負荷は、電池2であった。これに代えて、温度調節が必要な種々の機器を熱負荷として採用することができる。例えば、図示の例においては、車両用温度調節装置601は、室内の空気の温度を調節する。すなわち、車両用温度調節装置601の熱負荷は、空調装置(HVAC)602である。
【0051】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0052】
例えば、上記実施形態では、熱負荷として電池2および/または空調装置を採用した。これに代えて、車両に搭載された種々の機器の温度を調節するように構成してもよい。例えば、電池2に代えて、燃料電池を採用することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、冷熱機器4として蒸気圧縮式の冷凍サイクルを採用した。これに代えて、ペルチェ効果を利用した熱電効果型の冷凍装置を採用してもよい。また、磁気熱量効果素子を利用した磁気熱量効果型の冷凍装置を採用してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、熱交換器32を通過する冷却水の流量を調節する三方弁36を設けた。これに代えて、熱交換器31をバイパスする通路を設け、この熱交換器31を通過する流量を調節する弁装置を採用してもよい。この場合、熱負荷と冷却水との間の熱交換量が調節される。
【0055】
また、上記実施形態では、熱源装置37として電気的なヒータを採用した。これに代えて、車両に搭載された種々の発熱機器を用いることができる。例えば、電動機への電力を制御するインバータ回路を熱源装置37としてもよい。また、熱源装置37は、バイパス通路35に代えて、循環路34に設けてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、熱交換器31の一方に高温側の熱交換器42を設け、他方に低温側の熱交換器44を設けるとともに、双方向型の電動のポンプ33を採用することにより、冷却運転と暖気運転とを切換えた。これに代えて、種々の切換装置を採用することができる。例えば、ポンプ33に代えて、第1方向専用のポンプと、第2方向専用のポンプとを並列に接続し、それらポンプを切換えて運転してもよい。また、熱交換器31の入口と出口とを入れ替える弁機構を設けてもよい。いずれの構成においても、切換装置は、熱交換器42により加熱された熱輸送媒体を熱交換器31へ供給する運転状態と、熱交換器44により冷却された熱輸送媒体を熱交換器31へ供給する運転状態とを切換える。
【0057】
また、上記実施形態では、ひとつの熱負荷、例えば電池2、または空調装置602の温度を調節する装置を説明した。これに代えて、複数の熱負荷の温度を調節するように車両用温度調節装置を構成してもよい。例えば、電池2と空調装置602とを並列に接続してもよい。また、一次系統3において得られる低温の冷却水を冷房に利用するように空調用熱交換器を設けてもよい。また、一次系統3において得られる高温の冷却水を暖房に利用するように空調用熱交換器を設けてもよい。
【0058】
また、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、201、301、401、501、601 車両用温度調節装置、 2 電池(熱負荷)、 3 一次系統、 31 熱負荷用の熱交換器、 32 外気用の熱交換器、 32a 送風機、 33 ポンプ、 34 循環路、 35 バイパス通路、 36 三方弁、 37 熱源装置、 4 二次系統(冷熱機器、冷凍サイクル)、 41 圧縮機、 42 放熱器(高温側の熱交換器)、 43 減圧器、 44 蒸発器(低温側の熱交換器)、 5 制御装置、 6 主ユニット、 7 熱交換器ユニット、 504 二次系統(冷熱機器、冷凍サイクル)、 545 ホットガスバイパス装置、 602 空調装置(熱負荷)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルなどの冷熱機器によって車両の熱負荷の温度を調節する車両用温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2、および特許文献3は、車両の室内および車両に搭載された電池の温度を調節する車両用温度調節装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3149493号
【特許文献2】特開2002−352867号公報
【特許文献3】特開2010−64651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、電池を空気、または冷却水によって冷却する装置を開示している。さらに、この文献には、電池を冷却するための空気または冷却水を、冷凍サイクルなどの熱機器によって冷却する装置も開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1の装置では、車両の外部の空気と電池との間の熱交換を実現するために、冷却水用の熱交換器と、冷凍サイクルの熱交換器、すなわち凝縮器とを、車両の外部の空気と熱交換するように車両に搭載する必要があった。このため、温度調節装置としての構成が複雑化するという問題点があった。また、車両に2つの外気用熱交換器を搭載する必要があるという問題点があった。
【0006】
特許文献2も、電池を冷却するための冷却水回路と、冷凍サイクルとを備える温度調節装置を開示している。しかし、この構成でも、冷却水用の熱交換器と、冷凍サイクルの凝縮器とを設ける必要があった。
【0007】
特許文献3も、電池を冷却するための冷却水回路と、冷凍サイクルとを備える温度調節装置を開示している。この構成では、電池を冷却する冷却水は、冷凍サイクルだけと熱交換するように構成されている。このため、車両には、冷凍サイクルの凝縮器だけが設けられる。しかし、この構成では、電池の温度を調節するためには、必ず冷凍サイクルを運転する必要がある。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両への搭載が容易な、簡単な構成の車両用温度調節装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、単一の外気用熱交換器を備える車両用温度調節装置を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、簡単な構成によって車両の熱負荷を加熱および冷却することができる車両用温度調節装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0012】
請求項1に記載の発明は、車両に搭載された熱負荷(2、602)と、熱輸送媒体が循環する一次系統(3)であって、熱負荷と熱輸送媒体とを熱交換させる熱負荷用熱交換器(31)、および外気と熱輸送媒体とを熱交換させる外気用熱交換器(32)を備える一次系統(3)と、熱輸送媒体と熱交換する高温側熱交換器(42)、および熱輸送媒体と熱交換する低温側熱交換器(44)とを備え、高温側熱交換器と低温側熱交換器との間に温度差を提供する冷熱機器(4、504)とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、一次系統によって熱負荷の熱を外気へ放熱することができる。さらに、冷熱機器によって熱輸送媒体を加熱、または冷却することができるから、冷熱機器は一次系統を介して熱負荷の温度を調節することができる。しかも、冷熱機器は、その高温側熱交換器と低温側熱交換器との両方が一次系統と熱的に結合されている。このため、外気との熱交換を提供する熱交換器は、一次系統の外気用熱交換器だけである。したがって、簡単な構成の車両用温度調節装置が提供される。
【0014】
請求項2に記載の発明は、一次系統は、高温側熱交換器により加熱された熱輸送媒体を熱負荷用熱交換器へ供給する運転状態と、低温側熱交換器により冷却された熱輸送媒体を熱負荷用熱交換器へ供給する運転状態とを切換える切換装置(33)を備えることを特徴とする。この構成によると、高温側熱交換器により加熱された熱輸送媒体、または低温側熱交換器により冷却された熱輸送媒体が、熱負荷用熱交換器へ供給される。この結果、熱負荷の冷却と、熱負荷の加熱とを切換えることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、高温側熱交換器(42)は、一次系統における熱負荷用熱交換器(31)の一方に設けられ、低温側熱交換器(44)は、一次系統における熱負荷用熱交換器(31)の他方に設けられ、切換装置は、熱輸送媒体の循環方向を第1方向と、この第1方向とは反対の第2方向とに切換えることを特徴とする。この構成によると、一次系統を循環する熱輸送媒体の流れ方向を切換えることにより、熱負荷の冷却と、熱負荷の加熱とを切換えることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、冷熱機器(4)は、電動型の圧縮機(41)を備え、高温側熱交換器(42)を放熱器とし、低温側熱交換器(44)を蒸発器とする蒸気圧縮式の冷凍サイクルであり、さらに、圧縮機を停止または作動させるとともに、熱輸送媒体の循環方向を切換えるように切換装置を制御する制御装置(5)を備え、制御装置は、圧縮機を作動させるとともに、熱輸送媒体の循環方向を第1方向とするように切換装置を制御することにより、冷凍サイクルにより熱負荷を冷却する冷却運転と、圧縮機を作動させるとともに、熱輸送媒体の循環方向を第2方向とするように切換装置を制御することにより、冷凍サイクルにより熱負荷を加熱する加熱運転とを提供することを特徴とする。この構成によると、一次系統における熱輸送媒体の循環方向の切換えによって、熱負荷の冷却と、熱負荷の加熱とが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、制御装置は、さらに、圧縮機を停止させるとともに、熱輸送媒体の循環方向を第1方向または第2方向とするように切換装置を制御することにより、熱負荷の熱を一次系統によって外気へ放熱する放熱運転を提供することを特徴とする。この構成によると、一次系統における熱輸送媒体の循環方向の切換えと、冷凍サイクルの停止/作動の切換えとによって、3つの運転状態を提供することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、熱負荷と冷熱機器とは、一体のユニットとして車両に搭載可能に構成されていることを特徴とする。この構成によると、熱負荷の温度を調節するための冷熱機器が、熱負荷と一体のユニットとして構成される。このため、熱負荷と冷熱機器とを、ユニットとして車両に搭載することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、熱負荷は、車両の走行用の電動機に給電する電池(2)であることを特徴とする。この構成によると、車両の走行用の電動機に給電する電池の温度を調節することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、熱負荷は、空調装置(602)であることを特徴とする。この構成によると、車両の室内の温度を調節することができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、一次系統は、外気用熱交換器(32)または熱負荷用熱交換器(31)を通過する熱輸送媒体の流量を調節する流量制御装置(36)を備えることを特徴とする。この構成によると、外気用熱交換器または熱負荷用熱交換器(31)を通過する熱輸送媒体の流量が調節される。この結果、外気と熱輸送媒体との間の熱交換量、または熱負荷と熱輸送媒体との間の熱交換量を調節することができる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、さらに、熱輸送媒体を加熱する熱源装置(37)を備えることを特徴とする。この構成によると、熱源装置によって電池を加熱することができる。
【0023】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。
【図5】第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。
【図7】本発明を適用した第2実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【図8】本発明を適用した第3実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【図9】本発明を適用した第4実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【図10】本発明を適用した第5実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【図11】本発明を適用した第5実施形態に係る車両用温度調節装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百の位だけが異なる参照符号を付加することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る車両用温度調節装置1を示すブロック図である。車両用温度調節装置1は、車両における熱負荷である電池(BATT)2の温度を冷凍サイクルなどの冷熱機器によって調節する。熱負荷は、電池2である。電池2は、車両の走行用の電動機に給電する二次電池である。電池2は、リチウムイオン電池などによって提供することができる。電池2は数百ボルトの出力を供給する。
【0027】
車両用温度調節装置1は、電池2と熱交換するための熱輸送媒体が循環する一次系統3を有する。熱輸送媒体は、不凍液入りの冷却水である。一次系統3は、冷却水サイクルとも呼ばれる。一次系統3は、熱負荷用の熱交換器31、外気用の熱交換器32、および双方向型の電動のポンプ33を備える。一次系統3は、熱交換器31、熱交換器32、およびポンプ33を直列接続した冷却水の循環路34を構成する。熱負荷用の熱交換器31は、電池2と冷却水との間の熱交換を可能とする。外気用の熱交換器32は、車両の外部の空気と冷却水との間の熱交換を可能とする。外気用の熱交換器32は、車両用温度調節装置1における唯一の外気用熱交換器である。熱交換器32の近傍には、熱交換器32を通過するように外気を流す送風機32aを設けることができる。熱交換器32は、ラジエータとも呼ばれる。ポンプ33は、一次系統3内に冷却水を循環させる。ポンプ33は、冷却水の循環方向を、第1方向と、第1方向とは反対の第2方向とに切換え可能である。ポンプ33は、モータの回転方向を切換えることにより送水方向を切換える逆転型のポンプによって提供することができる。ポンプ33は、熱輸送媒体の循環方向を切換える切換装置を提供する。
【0028】
一次系統3は、電池2と外気との間の熱交換を提供する。一次系統3は、電池2から外気への放熱を主として提供する。一次系統3は、熱的な条件が満たされると、外気から電池2への熱の移動、すなわち電池2の加熱を行う場合がある。
【0029】
一次系統3は、熱交換器32をバイパスして冷却水を流すためのバイパス通路35を備える。バイパス通路35は、熱交換器32と並列に設けられている。バイパス通路35と循環路34とは、分岐部によって接続されている。一方の分岐部には、三方弁36が設けられている。三方弁36は、冷却水の流路を、熱交換器32だけを通過する流路と、バイパス通路35だけを通過する流路とに、少なくとも切換えることができる。さらに、三方弁36は、熱交換器32を通過する流量と、バイパス通路35を通過する流量との比を調節することができる。三方弁36は、外気用の熱交換器32を通過する冷却水の流量を調節する流量制御装置を提供する。三方弁36により、外気と冷却水との間の熱交換量が調節される。バイパス通路35には、補助的な熱源装置37が設けられている。熱源装置37は、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータである。熱源装置37は、通電されると、バイパス通路35を流れる冷却水を加熱することができる。
【0030】
車両用温度調節装置1は、一次系統3だけと熱的に結合された二次系統4を有する。二次系統4は、高温側の熱交換器42と低温側の熱交換器44とを有し、それら熱交換器42、44の間に温度差を作り出す装置を含む。二次系統4は、冷熱機器4によって提供される。二次系統4は、冷凍機器とも呼ぶことができる。高温側の熱交換器42は一次系統3の冷却水とだけ熱交換する。低温側の熱交換器44は一次系統3の冷却水とだけ熱交換する。高温側の熱交換器42と低温側の熱交換器44とは、それらの両方が、一次系統3と熱的に結合している。
【0031】
冷熱機器4は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルである。冷熱機器4は、圧縮機41、放熱器42、減圧器43、および蒸発器44を備える。圧縮機41は、電動型の圧縮機である。圧縮機41は、蒸発器44から出た低圧冷媒を圧縮し、放熱器42に高圧冷媒を供給する。放熱器42は、高圧冷媒の熱によって冷却水を暖める。放熱器42は、一次系統3と二次系統4との間の熱交換を提供する第1の熱交換器である。放熱器42は、高温側の熱交換器42とも呼ばれる。放熱器42は、冷却水と冷媒との間の熱交換を提供するから、水−冷媒熱交換器とも呼ぶことができる。凝縮性の冷媒が用いられる場合、放熱器42は、凝縮器とも呼ばれる。減圧器43は、放熱器42から出た高圧冷媒を減圧する。蒸発器44は、減圧器43によって減圧された冷媒を蒸発させる。蒸発器44は、冷媒の蒸発によって冷却水を冷却する。蒸発器44は、一次系統3と二次系統4との間の熱交換を提供する第2の熱交換器である。蒸発器44は、低温側の熱交換器44とも呼ばれる。蒸発器44は、冷却水と冷媒との間の熱交換を提供するから、水−冷媒熱交換器とも呼ぶことができる。
【0032】
熱交換器42は、一次系統3における熱交換器31の一方に設けられている。言い換えると、熱交換器42は、熱交換器31と熱交換器32との間の2つの通路のうちの一方の通路に設けられている。熱交換器44は、一次系統3における熱交換器31の他方に設けられている。言い換えると、熱交換器44は、熱交換器31と熱交換器32との間の2つの通路のうちの他方の通路に設けられている。この構成では、一次系統3における熱交換器44と熱交換器31との位置は、ポンプ33が冷却水を第1方向に流すときに、熱交換器44から熱交換器31へ冷却水が流れるように設定されている。また、一次系統3における熱交換器42と熱交換器31との位置は、ポンプ33が冷却水を第2方向に流すときに、熱交換器42から熱交換器31へ冷却水が流れるように設定されている。
【0033】
車両用温度調節装置1は、制御装置(CNTL)5を備える。制御装置5は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体は、メモリによって提供されうる。プログラムは、制御装置5によって実行されることによって、制御装置5をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置5を機能させる。制御装置5が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0034】
制御装置5は、電気的に制御可能な機器、例えばポンプ33、圧縮機41、および三方弁36を制御する。制御装置5は、車両用温度調節装置1の温度情報、例えば電池2の温度、および外気の温度に応じて、電池2の温度を目標温度に一致させるように機器を制御する。目標温度は、電池2が所定の機能を発揮するために望ましい温度帯として設定することができる。制御装置5は、電池2の温度が目標温度より高いとき、冷却運転を実行するように機器を制御する。冷却運転においては、電池2が冷却される。電池2を冷却するための熱的な負荷が大きくなるにしたがって、第1の冷却運転、または第2の冷却運転が実行される。制御装置5は、電池2の温度が目標温度より低いとき、加熱運転を実行するように機器を制御する。加熱運転においては、電池2が加熱される。電池2を加熱するための熱的な負荷が大きくなるにしたがって、第1の加熱運転、第2の加熱運転、または第3の加熱運転が実行される。加熱運転は、暖機運転とも呼ぶことができる。
【0035】
車両用温度調節装置1は、熱負荷である電池2を含む主ユニット6と、主ユニット6から離れて車両に搭載された熱交換器ユニット7とを備える。主ユニット6は、少なくとも電池2と冷熱機器4とを一体の機器として取り扱うことができるように、かつそれらを一体のユニットとして車両に搭載することができるように組み合わせた装置である。主ユニット6は、負荷ユニット6、または電池ユニット6とも呼ばれる。主ユニット6は、少なくとも電池2と、冷熱機器4とを、共通のシャーシに搭載するか、または共通の容器に収容して構成されている。主ユニット6は、さらにポンプ33、バイパス通路35、三方弁36、熱源装置37、および制御装置5を含む。主ユニット6は、電池2のための複数の端子と、電池2および制御装置5のための制御信号端子と、制御装置5および電動ポンプ33などの低電圧機器のための電源端子とを備えることができる。なお、主ユニット6に降圧型電源装置を設けて、電池2から制御装置5、ポンプ33、および圧縮機41などに電力を供給してもよい。
【0036】
主ユニット6は、車両の後部など適切な位置に設置されている。熱交換器ユニット7は、熱交換器32に外気を供給するために有利な位置、例えば車両の前部に設置されている。車両用温度調節装置1における外気との熱交換は、熱交換器32だけが提供する。
【0037】
主ユニット6は、車両用温度調節装置1の取り扱いを容易にする。また、この構成によると、車両への搭載作業が容易になる。主ユニット6には、電池2の温度を調節するための主要な構成要素の多くが含まれる。このため、温度調節機能付きの電池2を提供することができる。また、利用者などは、主ユニット6の内部構造、あるいは個々の部品の性能に過剰に注意を払うことなく、温度調節機能付きの電池を入手し、利用することができる。
【0038】
電池2の温度は、電池2が使用されると上昇する。例えば、電池2への充電、または電池2からの放電によって電池2の温度が上昇する。このため、電池2の温度が望ましい温度帯を上回ると、電池2の温度を低下させるために、電池2を冷却する必要がある。一方、外気温度が低いときに車両の運転を開始する場合、電池2の温度も外気温度とほぼ等しくなっている。このような場合、電池2の温度は、望ましい温度帯を下回ることがある。このため、電池2が自己発熱によって望ましい温度帯に到達する前の期間において、電池2を暖機する必要がある。そこで制御装置5は、冷却運転と加熱運転とを提供するように、車両用温度調節装置1の機器を制御する。
【0039】
図2は、第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。図中には、各部の温度が例示されている。なお、図中における温度は発明者らが想定した一例である。制御装置5は、外気の温度が電池2を十分に冷却することができる第1温度帯にあるとき、第1の冷却運転を実行する。第1の冷却運転は、電池2からの熱の放出を促進するだけである。よって、この運転状態は、放熱運転とも呼ばれる。制御装置5は、圧縮機41を停止させることによって冷熱機器4を停止させるとともに、ポンプ33をいずれかの方向に回転させる。この実施形態では、ポンプ33は、第1方向に回転する。冷却水は熱交換器32に導かれ、外気によって冷却される。外気によって冷却された冷却水は、熱交換器31に供給される。この結果、電池2の熱は、一次系統3だけによって外気に放熱され、電池2の過剰な温度上昇が回避される。
【0040】
図3は、第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。図中には、各部の温度が例示されている。制御装置5は、外気の温度が電池2を十分に冷却できない第2温度帯にあるとき、第2の冷却運転を実行する。例えば、外気温度が30°Cであるとき、上述の放熱運転では電池2の温度上昇を阻止できない。制御装置5は、圧縮機41を作動させることによって冷熱機器4を作動させるとともに、ポンプ33を第1方向に回転させる。冷却水の循環方向は、冷却水が熱交換器31、放熱器42、熱交換器32、蒸発器44の順に流れる第1方向である。このとき、熱交換器31から出た冷却水は、放熱器42によってさらに加熱された後に、熱交換器32に供給される。熱交換器32には、冷却水より温度が低い外気が流れるから、冷却水は熱交換器32において外気によって冷却される。よって、冷熱機器4は、冷却水を加熱することにより、高い外気温度においても外気への放熱を可能とする。外気によって冷却された冷却水は、蒸発器44によってさらに冷却された後に、熱交換器31に供給される。この結果、電池2の熱が外気に放熱され、電池2の過剰な温度上昇が回避される。この構成では、冷熱機器4によって供給される冷熱が電池2の温度を調節するために利用される。
【0041】
図4は、第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。図中には、各部の温度が例示されている。制御装置5は、電池2を暖めるための熱を冷熱機器4が外気から汲み上げることができるとき、すなわち外気の温度が第3温度帯にあるとき、第1の加熱運転を実行する。制御装置5は、圧縮機41を作動させることによって冷熱機器4を作動させるとともに、ポンプ33を第2方向に回転させる。冷却水の循環方向は、冷却水が熱交換器31、蒸発器44、熱交換器32、放熱器42の順に流れる第2方向である。このとき、熱交換器31から出た冷却水は、蒸発器44によってさらに冷却された後に、熱交換器32に供給される。熱交換器32には、冷却水より温度が高い外気が流れるから、冷却水は熱交換器32において外気によって加熱される。よって、冷熱機器4は、冷却水を冷却することにより、低い外気温度においても外気からの熱の汲み上げを可能とする。外気によって加熱された冷却水は、放熱器42によってさらに加熱された後に、熱交換器31に供給される。さらに、制御装置5は、冷却水の一部がバイパス通路35を通るように三方弁36を制御することができる。これにより、三方弁36の下流における冷却水の温度が調節される。この構成では、冷熱機器4によって外気から汲み上げられる熱と、冷熱機器4によって供給される温熱とが電池2の温度を調節するために利用される。
【0042】
図5は、第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。図中には、各部の温度が例示されている。制御装置5は、電池2を暖めるための熱を冷熱機器4が外気から汲み上げることができないとき、すなわち外気の温度が第4温度帯にあるとき、第2の加熱運転を実行する。制御装置5は、冷熱機器4を作動させるとともに、ポンプ33を第2方向に回転させる。ポンプ33の送水方向は、第2方向である。さらに、制御装置5は、熱交換器32をバイパスするように三方弁36を制御する。このとき、熱交換器31から出た冷却水は、蒸発器44によってさらに冷却された後に、熱交換器32をバイパスして、放熱器42に供給される。熱交換器32には、冷却水と温度が等しいか、または低い外気が流れている。よって、冷却水の温度低下を回避するために、熱交換器32がパイパスされる。冷却水は、放熱器42によって加熱された後に、熱交換器31に供給される。この構成では、冷熱機器4によって供給される温熱が電池2の温度を調節するために利用される。
【0043】
図6は、第1実施形態の作動状態を示すブロック図である。図中には、各部の温度が例示されている。制御装置5は、電池2を暖めるための熱を冷熱機器4だけでは供給できないとき、すなわち外気の温度が第5温度帯にあるとき、第3の加熱運転を実行する。制御装置5は、冷熱機器4を作動させるとともに、ポンプ33を第2方向に回転させる。制御装置5は、熱交換器32をバイパスするように三方弁36を制御する。さらに、制御装置5は、熱源装置37に通電し活性化することにより熱源装置37によって冷却水を加熱する。このとき、熱交換器31から出た冷却水は、蒸発器44によってさらに冷却された後に、熱交換器32をバイパスして、熱源装置37に供給される。冷却水は、熱源装置37によって加熱された後に、さらに放熱器42によって加熱され、その後に、熱交換器31に供給される。この構成では、冷熱機器4によって供給される温熱と、熱源装置37によって供給される温熱とが、電池2の温度を調節するために利用される。
【0044】
この実施形態によると、車両への搭載が容易な、簡単な構成の車両用温度調節装置1が提供される。この実施形態によると、一次系統3による電池(熱負荷)2からの放熱と、冷熱機器4による電池2の冷却と、冷熱機器4による電池2の加熱との3つの運転状態を提供することができる。この実施形態によると、冷熱機器4の高温側の熱交換器42と低温側の熱交換器44との両方が一次系統3の冷却水(熱輸送媒体)と熱交換するように配置されている。車両用温度調節装置1は、単一の外気用の熱交換器を備える。このため、構成が簡単である。また、車両への搭載作業が容易になる。
【0045】
また、高温側の熱交換器42と低温側の熱交換器44とが、一次系統3における電池2のための熱交換器31の両側に配置されている。さらに、一次系統3における冷却水の流れ方向が切換え可能に構成されている。このため、簡単な構成で電池2の冷却と、電池2の加熱とを切換えることができる。
【0046】
(第2実施形態)
図7は、本発明を適用した第2実施形態に係る車両用温度調節装置201を示すブロック図である。上記実施形態では、熱源装置37を設けることにより第3の加熱運転を提供した。これに代えて、熱源装置37を設けず、第3の加熱運転を実行しない車両用温度調節装置201を採用することができる。
【0047】
(第3実施形態)
図8は、本発明を適用した第3実施形態に係る車両用温度調節装置301を示すブロック図である。上記実施形態では、バイパス通路35を設けることにより第2の加熱運転と第3の加熱運転とを提供した。これに代えて、バイパス通路35を設けず、第2および第3の加熱運転を実行しない車両用温度調節装置301を採用することができる。この構成においては、第2の加熱運転に代えて、送風機32aを停止する運転を実行してもよい。具体的には、具体的には、制御装置5は、電池2を暖めるための熱を冷熱機器4が外気から汲み上げることができるとき、すなわち外気の温度が第3温度帯にあるとき、送風機32aを作動させる。そして、制御装置5は、電池2を暖めるための熱を冷熱機器4が外気から汲み上げることができないとき、すなわち外気の温度が第4温度帯にあるとき、送風機32aを停止させる。
【0048】
(第4実施形態)
図9は、本発明を適用した第4実施形態に係る車両用温度調節装置401を示すブロック図である。上記実施形態では、主ユニット6と熱交換器ユニット7とを構成して、装置を車両に搭載した。これに代えて、この実施形態では、複数の構成要素をユニット化することなく、車両に分散して搭載する。
【0049】
(第5実施形態)
図10は、本発明を適用した第5実施形態に係る車両用温度調節装置501を示すブロック図である。上記実施形態では、冷熱機器4は、基本的な構成をもつ冷凍サイクルであった。これに代えて、ホットガスバイパス機能を有する冷凍サイクルからなる冷熱機器504を採用することができる。冷熱機器504は、放熱器42を出た冷媒を、蒸発器44を通すことなく圧縮機41の吸入側に直接的に戻すホットガスバイパス装置545を備える。ホットガスバイパス装置545は、ホットガスバイパス通路と、その通路を開閉する弁とを備えることができる。この構成では、制御装置5は、加熱運転において、冷熱機器504がホットガスサイクルとして運転されるようにホットガスバイパス装置545を制御する。
【0050】
(第6実施形態)
図11は、本発明を適用した第6実施形態に係る車両用温度調節装置601を示すブロック図である。上記実施形態では、温度調節の対象、すなわち熱負荷は、電池2であった。これに代えて、温度調節が必要な種々の機器を熱負荷として採用することができる。例えば、図示の例においては、車両用温度調節装置601は、室内の空気の温度を調節する。すなわち、車両用温度調節装置601の熱負荷は、空調装置(HVAC)602である。
【0051】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0052】
例えば、上記実施形態では、熱負荷として電池2および/または空調装置を採用した。これに代えて、車両に搭載された種々の機器の温度を調節するように構成してもよい。例えば、電池2に代えて、燃料電池を採用することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、冷熱機器4として蒸気圧縮式の冷凍サイクルを採用した。これに代えて、ペルチェ効果を利用した熱電効果型の冷凍装置を採用してもよい。また、磁気熱量効果素子を利用した磁気熱量効果型の冷凍装置を採用してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、熱交換器32を通過する冷却水の流量を調節する三方弁36を設けた。これに代えて、熱交換器31をバイパスする通路を設け、この熱交換器31を通過する流量を調節する弁装置を採用してもよい。この場合、熱負荷と冷却水との間の熱交換量が調節される。
【0055】
また、上記実施形態では、熱源装置37として電気的なヒータを採用した。これに代えて、車両に搭載された種々の発熱機器を用いることができる。例えば、電動機への電力を制御するインバータ回路を熱源装置37としてもよい。また、熱源装置37は、バイパス通路35に代えて、循環路34に設けてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、熱交換器31の一方に高温側の熱交換器42を設け、他方に低温側の熱交換器44を設けるとともに、双方向型の電動のポンプ33を採用することにより、冷却運転と暖気運転とを切換えた。これに代えて、種々の切換装置を採用することができる。例えば、ポンプ33に代えて、第1方向専用のポンプと、第2方向専用のポンプとを並列に接続し、それらポンプを切換えて運転してもよい。また、熱交換器31の入口と出口とを入れ替える弁機構を設けてもよい。いずれの構成においても、切換装置は、熱交換器42により加熱された熱輸送媒体を熱交換器31へ供給する運転状態と、熱交換器44により冷却された熱輸送媒体を熱交換器31へ供給する運転状態とを切換える。
【0057】
また、上記実施形態では、ひとつの熱負荷、例えば電池2、または空調装置602の温度を調節する装置を説明した。これに代えて、複数の熱負荷の温度を調節するように車両用温度調節装置を構成してもよい。例えば、電池2と空調装置602とを並列に接続してもよい。また、一次系統3において得られる低温の冷却水を冷房に利用するように空調用熱交換器を設けてもよい。また、一次系統3において得られる高温の冷却水を暖房に利用するように空調用熱交換器を設けてもよい。
【0058】
また、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、201、301、401、501、601 車両用温度調節装置、 2 電池(熱負荷)、 3 一次系統、 31 熱負荷用の熱交換器、 32 外気用の熱交換器、 32a 送風機、 33 ポンプ、 34 循環路、 35 バイパス通路、 36 三方弁、 37 熱源装置、 4 二次系統(冷熱機器、冷凍サイクル)、 41 圧縮機、 42 放熱器(高温側の熱交換器)、 43 減圧器、 44 蒸発器(低温側の熱交換器)、 5 制御装置、 6 主ユニット、 7 熱交換器ユニット、 504 二次系統(冷熱機器、冷凍サイクル)、 545 ホットガスバイパス装置、 602 空調装置(熱負荷)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された熱負荷(2、602)と、
熱輸送媒体が循環する一次系統(3)であって、前記熱負荷と前記熱輸送媒体とを熱交換させる熱負荷用熱交換器(31)、および外気と前記熱輸送媒体とを熱交換させる外気用熱交換器(32)を備える一次系統(3)と、
前記熱輸送媒体と熱交換する高温側熱交換器(42)、および前記熱輸送媒体と熱交換する低温側熱交換器(44)とを備え、前記高温側熱交換器と前記低温側熱交換器との間に温度差を提供する冷熱機器(4、504)とを備えることを特徴とする車両用温度調節装置。
【請求項2】
前記一次系統は、前記高温側熱交換器により加熱された前記熱輸送媒体を前記熱負荷用熱交換器へ供給する運転状態と、前記低温側熱交換器により冷却された前記熱輸送媒体を前記熱負荷用熱交換器へ供給する運転状態とを切換える切換装置(33)を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用温度調節装置。
【請求項3】
前記高温側熱交換器(42)は、前記一次系統における前記熱負荷用熱交換器(31)の一方に設けられ、
前記低温側熱交換器(44)は、前記一次系統における前記熱負荷用熱交換器(31)の他方に設けられ、
前記切換装置は、前記熱輸送媒体の循環方向を第1方向と、この第1方向とは反対の第2方向とに切換えることを特徴とする請求項2に記載の車両用温度調節装置。
【請求項4】
前記冷熱機器(4)は、電動型の圧縮機(41)を備え、前記高温側熱交換器(42)を放熱器とし、前記低温側熱交換器(44)を蒸発器とする蒸気圧縮式の冷凍サイクルであり、
さらに、前記圧縮機を停止または作動させるとともに、前記熱輸送媒体の循環方向を切換えるように前記切換装置を制御する制御装置(5)を備え、
前記制御装置は、
前記圧縮機を作動させるとともに、前記熱輸送媒体の循環方向を前記第1方向とするように前記切換装置を制御することにより、前記冷凍サイクルにより前記熱負荷を冷却する冷却運転と、
前記圧縮機を作動させるとともに、前記熱輸送媒体の循環方向を前記第2方向とするように前記切換装置を制御することにより、前記冷凍サイクルにより前記熱負荷を加熱する加熱運転とを提供することを特徴とする請求項3に記載の車両用温度調節装置。
【請求項5】
前記制御装置は、さらに、
前記圧縮機を停止させるとともに、前記熱輸送媒体の循環方向を前記第1方向または前記第2方向とするように前記切換装置を制御することにより、前記熱負荷の熱を前記一次系統によって外気へ放熱する放熱運転を提供することを特徴とする請求項4に記載の車両用温度調節装置。
【請求項6】
前記熱負荷と前記冷熱機器とは、一体のユニットとして車両に搭載可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両用温度調節装置。
【請求項7】
前記熱負荷は、車両の走行用の電動機に給電する電池(2)であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両用温度調節装置。
【請求項8】
前記熱負荷は、空調装置(602)であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の車両用温度調節装置。
【請求項9】
前記一次系統は、前記外気用熱交換器(32)または前記熱負荷用熱交換器(31)を通過する前記熱輸送媒体の流量を調節する流量制御装置(36)を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の車両用温度調節装置。
【請求項10】
さらに、前記熱輸送媒体を加熱する熱源装置(37)を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の車両用温度調節装置。
【請求項1】
車両に搭載された熱負荷(2、602)と、
熱輸送媒体が循環する一次系統(3)であって、前記熱負荷と前記熱輸送媒体とを熱交換させる熱負荷用熱交換器(31)、および外気と前記熱輸送媒体とを熱交換させる外気用熱交換器(32)を備える一次系統(3)と、
前記熱輸送媒体と熱交換する高温側熱交換器(42)、および前記熱輸送媒体と熱交換する低温側熱交換器(44)とを備え、前記高温側熱交換器と前記低温側熱交換器との間に温度差を提供する冷熱機器(4、504)とを備えることを特徴とする車両用温度調節装置。
【請求項2】
前記一次系統は、前記高温側熱交換器により加熱された前記熱輸送媒体を前記熱負荷用熱交換器へ供給する運転状態と、前記低温側熱交換器により冷却された前記熱輸送媒体を前記熱負荷用熱交換器へ供給する運転状態とを切換える切換装置(33)を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用温度調節装置。
【請求項3】
前記高温側熱交換器(42)は、前記一次系統における前記熱負荷用熱交換器(31)の一方に設けられ、
前記低温側熱交換器(44)は、前記一次系統における前記熱負荷用熱交換器(31)の他方に設けられ、
前記切換装置は、前記熱輸送媒体の循環方向を第1方向と、この第1方向とは反対の第2方向とに切換えることを特徴とする請求項2に記載の車両用温度調節装置。
【請求項4】
前記冷熱機器(4)は、電動型の圧縮機(41)を備え、前記高温側熱交換器(42)を放熱器とし、前記低温側熱交換器(44)を蒸発器とする蒸気圧縮式の冷凍サイクルであり、
さらに、前記圧縮機を停止または作動させるとともに、前記熱輸送媒体の循環方向を切換えるように前記切換装置を制御する制御装置(5)を備え、
前記制御装置は、
前記圧縮機を作動させるとともに、前記熱輸送媒体の循環方向を前記第1方向とするように前記切換装置を制御することにより、前記冷凍サイクルにより前記熱負荷を冷却する冷却運転と、
前記圧縮機を作動させるとともに、前記熱輸送媒体の循環方向を前記第2方向とするように前記切換装置を制御することにより、前記冷凍サイクルにより前記熱負荷を加熱する加熱運転とを提供することを特徴とする請求項3に記載の車両用温度調節装置。
【請求項5】
前記制御装置は、さらに、
前記圧縮機を停止させるとともに、前記熱輸送媒体の循環方向を前記第1方向または前記第2方向とするように前記切換装置を制御することにより、前記熱負荷の熱を前記一次系統によって外気へ放熱する放熱運転を提供することを特徴とする請求項4に記載の車両用温度調節装置。
【請求項6】
前記熱負荷と前記冷熱機器とは、一体のユニットとして車両に搭載可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両用温度調節装置。
【請求項7】
前記熱負荷は、車両の走行用の電動機に給電する電池(2)であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両用温度調節装置。
【請求項8】
前記熱負荷は、空調装置(602)であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の車両用温度調節装置。
【請求項9】
前記一次系統は、前記外気用熱交換器(32)または前記熱負荷用熱交換器(31)を通過する前記熱輸送媒体の流量を調節する流量制御装置(36)を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の車両用温度調節装置。
【請求項10】
さらに、前記熱輸送媒体を加熱する熱源装置(37)を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の車両用温度調節装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−1160(P2013−1160A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131414(P2011−131414)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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