説明

車両用灯具の点灯制御装置

【課題】 個々のLEDの耐熱性、耐久性の低下を防止すると共にランプユニットの軽量化、小型化および低コスト化を図る。
【解決手段】 点灯制御装置1は、LED40−1〜40−N(Nは1以上の整数)へ駆動電流を供給するM(Mは1以上の整数)個のスイッチングレギュレータと、それぞれ前記駆動電流を検出する第1〜第Nのシャント抵抗RSHと、それぞれ第1〜第Nのスイッチ部とを含み、それぞれ前記各電流検出部によって検出された前記駆動電流の大きさに応じて前記各スイッチ部のオン・オフ動作を行う第1〜第Nの電流駆動手段30−1〜30−Nと、温度検出器23と、温度検出器23からの温度検出信号を受けて前記各LEDに供給する駆動電流を減少させるように前記電流駆動手段30−1〜30−Nを制御する制御回路25とを有する。制御回路25は前記駆動電流を減少させる前記各半導体光源の優先順位を設定し、前記優先順位が高い半導体光源から順に前記駆動電流を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の点灯制御装置に関し、半導体発光素子で構成された半導体光源の点灯を制御する車両用灯具の点灯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具として、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの半導体発光素子を半導体光源として用いたものが知られており、この種の車両用灯具には、LEDの点灯を制御するための点灯制御装置が実装されている。
【0003】
上記点灯制御装置には、単一のスイッチングレギュレータと、複数の電流駆動部と、制御部を含んで構成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
単一のスイッチングレギュレータは、トランス、コンデンサ、ダイオード、NMOS(Negative Channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタおよび制御回路を含んで構成されている。単一のスイッチングレギュレータは、複数のLEDへ駆動電流を供給するための電流供給手段として機能している。
【0005】
車載バッテリから入力された直流電圧は、トランスの一次側で交流電圧に変換される。変換された交流電圧は、ダイオードによって整流され、整流された電流はコンデンサによって平滑化される。このようにして平滑化された直流電圧は前記各LEDに供給される。
【0006】
各電流駆動部は、それぞれ比較増幅器、NMOSトランジスタ、PMOS(Positive Channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタおよびLED駆動電流を検出するシャント抵抗を含んで構成され、LEDの点消灯および調光を定電流制御する機能を有している。また、電流駆動部に点消灯制御する機能を追加し、点消灯のデューティ比を変化させる制御をすることもできる。
【0007】
【特許文献1】特開2006−103477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LEDは半導体光源であるので、高温化したフィラメントの熱により発光するハロゲンなどのフィラメント光源や、放電現象を利用して発光を行うHID(High Intensity Discharge)ランプのように高温状態を長時間維持することは不可能である。したがって、LEDから発生する熱を放出する放熱部材が必要になる。
【0009】
ここで、放熱部材を大きくすれば熱の放出量が大きくなるのでLEDの高温状態を長時間維持することは可能であるが、放熱部材が大きくなると車両用灯具の重量の増加やコストの上昇を来たす。そこで、一定期間LEDの性能が低下しない程度に放熱部材の大きさを調整している。
【0010】
しかしながら、車種が異なればLEDを有して構成された車両用灯具の形状や放熱部材の形状も異なることが多い。したがって、放熱部材の大きさを調整したとしても、車両用灯具の形状や放熱部材の形状の相違により、LEDの放熱性および耐久性(長期信頼性)を含む熱的環境性能に相違(バラツキ)が生じてしまう。
【0011】
また、車両用灯具の形状や放熱部材の形状の相違に伴い各LEDの配置が変化した場合には、各LEDの温度も異なってしまうため、各LEDの熱的環境性能の相違が一層大きくなってしまう。
【0012】
さらに、LEDを異なる用途、例えば、ハイビーム、ロービーム、クリアランスランプ、ターンシグナルランプ等の用途に用いて車両用灯具を構成した場合には、LEDごとに発熱量およびそれに伴う耐久性が異なってしまうため、以下のように、各LEDの熱的環境性能にも相違が生じてしまう。
【0013】
クリアランスランプ用のLEDについては、LEDの光量は少なくてもよく、LEDに供給する平均電流を減ずる処理、例えば、オンデューティ10%で点灯させればよいので、熱的環境性能は高い。
【0014】
ターンシグナルランプ用のLEDについても、オンデューティ50%で点滅させればよいので、熱的環境性能は高い。
【0015】
一方、ロービーム用のLEDについては大きな光量を必要とし、点灯頻度も高く、ハイビーム用のLEDについては大きな光量を必要とする。したがって、ロービーム用およびハイビーム用のLEDについては熱的環境性能が低い。
【0016】
以上に記載したように、車両用灯具や放熱部材の形状の相違、これらの相違に伴う各LEDの配置の変化およびLEDを異なる用途に用いたことにより、各LEDの熱的環境性能に相違が生じてしまう。しかし、上記従来技術の構成では、熱的環境性能の相違に応じた各LEDへの電流駆動制御が行われていないため、各LEDの温度および耐久性が低下してしまうという問題が生じる。
【0017】
そこで、個々のLEDに供給する駆動電流を小さくしてLEDの数の増加したり、ヒートパイプ等の高価な熱輸送デバイスを用いることにより、各LEDの温度を下げ耐久性の低下を防止することは可能である。しかし、LEDの数を増加や熱輸送デバイスの使用という方策では車両用灯具の小型化および低コスト化を図ることはできない。
【0018】
そこで、本発明に係る車両用灯具の点灯制御装置は、個々のLEDの性能および耐久性の低下を防止すると共にランプユニットの軽量化、小型化および低コスト化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様による車両用灯具の点灯制御装置は、第1〜第N(Nは1以上の整数)の半導体光源へ駆動電流を供給するM(Mは1以上の整数)個のスイッチングレギュレータと、それぞれ前記各半導体光源に接続され前記駆動電流を検出する第1〜第Nの電流検出部と、それぞれ前記各半導体光源に接続された第1〜第Nのスイッチ部とを含み、それぞれ前記各電流検出部によって検出された前記駆動電流の大きさに応じて前記各スイッチ部の動作を行う第1〜第Nの電流駆動手段と、温度を検出し、検出された温度が予め規定された温度以上になったとき温度検出信号を送出する温度検出器と、前記温度検出信号を受けて前記各半導体光源に供給する前記駆動電流を減少させるように前記各電流駆動手段を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記駆動電流を減少させる前記各半導体光源の優先順位を設定し、前記優先順位が高い半導体光源から順に前記駆動電流を減少させるようにしたものである。
【0020】
したがって、車両用灯具の点灯制御装置にあっては、前記制御手段が前記温度検出信号を受けて前記優先順位に基づいて各半導体光源に供給する駆動電流を減少させるように前記電流駆動手段をオン・オフ動作させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明車両用灯具の点灯制御装置は、第1〜第N(Nは1以上の整数)の半導体光源へ駆動電流を供給するM(Mは1以上の整数)個のスイッチングレギュレータと、それぞれ前記各半導体光源に接続され前記駆動電流を検出する第1〜第Nの電流検出部と、それぞれ前記各半導体光源に接続された第1〜第Nのスイッチ部とを含み、それぞれ前記各電流検出部によって検出された前記駆動電流の大きさに応じて前記各スイッチ部のオン・オフ動作を行う第1〜第Nの電流駆動手段と、温度を検出し、検出された温度が予め規定された温度以上になったとき温度検出信号を送出する温度検出器と、前記温度検出信号を受けて前記各半導体光源に供給する前記駆動電流を減少させるように前記各電流駆動手段を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記駆動電流を減少させる前記各半導体光源の優先順位を設定し、前記優先順位が高い半導体光源から順に前記駆動電流を減少させることを特徴とする。
【0022】
したがって、本発明によれば、前記各半導体光源の機能、用途の相違(バラツキ)に応じた半導体光源への電流駆動制御が行われ、各半導体光源の性能および耐久性の低下を防止すると共に軽量化、小型化、低コスト化を図ることができる。
【0023】
請求項2に記載した発明にあっては、前記優先順位が予め設定された前記各半導体光源の耐熱性に関する情報を含む熱的環境情報に基づいて設定されるので、個々の半導体光源の熱環境情報の相違(バラツキ)に応じた半導体光源への電流駆動制御が行われ、各半導体光源の耐熱性および耐久性の低下を防止すると共に軽量化、小型化、低コスト化を図ることができる。
【0024】
請求項3に記載した発明にあっては、前記熱的環境情報が前記各半導体光源の用途を含む光源機能情報に基づいて設定されているので、より詳細な熱的環境情報に基づいて個々の半導体光源に供給する駆動電流を減少させる制御が行われ、半導体光源の用途に合致させたより精度の高い駆動制御を行うことができ、より高いレベルで半導体光源の耐久性および安全性の向上を図ることができる。
【0025】
請求項4に記載した発明にあっては、前記光源機能情報が前記各半導体光源の点灯頻度および点灯時における光量の内の少なくとも一つの情報であるので、さらに詳細な熱的環境情報に基づいて個々の半導体光源に供給する駆動電流を減少させる制御が行われ、半導体光源の用途に合致させたさらに精度の高い駆動制御を行うことができ、さらに高いレベルで半導体光源の耐久性および安全性の向上を図ることができる。
【0026】
請求項5に記載した発明にあっては、前記スイッチングレギュレータを複数設け、前記各半導体光源の内、前記優先順位の最も高い半導体光源と二番目に高い半導体光源に対してそれぞれ異なる前記スイッチングレギュレータから前記駆動電流が供給されるので、全てのスイッチングレギュレータにかかる負荷を分散化できるようになり、特定のスイッチングレギュレータのみ負荷がかかるという状況、すなわち、特定のスイッチングレギュレータのみ動作し続けるという状況を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の第1の実施の形態に係る車両用灯具の点灯制御装置について図1を参照して説明する。図1は本発明に係る車両用灯具の点灯制御装置の構成を示した図である。
【0028】
車両用灯具の点灯制御装置1は、単一のスイッチングレギュレータ10と、半導体光源としてのLED40−1〜40−Nと、電流駆動手段としての電流駆動部30−1〜30−Nと、制御手段としての制御回路25と、温度検出器23とを備えて構成されている。
【0029】
スイッチングレギュレータ10は、コンデンサC1、C2、トランスT、ダイオードD1、NMOSトランジスタ11およびスイッチングレギュレータ制御回路18を備えて構成されている。コンデンサC1の両端側は電源入力端子15、16にそれぞれ接続され、コンデンサC2の両端側は出力端子19、20にそれぞれ接続されている。電源入力端子15は、車載バッテリ13のプラス端子に接続され、電源入力端子16は、車載バッテリ13のマイナス端子に接続されている。出力端子19は各LED40−1〜40−Nのアノード側に接続されている。出力端子20は各LED40−1〜40−Nのカソード側に接続されている。
【0030】
スイッチングレギュレータ10は、フライバック型のスイッチングレギュレータとして、LED40−1〜40−NにLED駆動電流を供給すると共に、該LED駆動電流の値が一定となるように、前記LED駆動電流を制御している。
【0031】
スイッチングレギュレータ10において、スイッチングレギュレータ制御回路18から出力されるスイッチング信号、例えば、数10kHz〜数100kHzの周波数によるスイッチング信号によってNMOSトランジスタ11のオン・オフ動作が行われる。電源入力端子15、16間に入力される直流電圧を各LED40−1〜40−Nの発光エネルギーとするために、前記直流電圧が交流電圧に変換される。交流電圧はトランスTの2次側で整流される。
【0032】
入力された直流電圧は、トランスTの一次側で交流電圧に変換される。交流電圧は、二次側に設けられたダイオードD1を整流素子として整流され、整流された電流はコンデンサC2によって平滑化される。このようにして平滑化された直流電圧は各LED40−1〜40−Nに供給される。
【0033】
電流駆動部30−1〜30−Nは、それぞれ比較増幅器31、スイッチ部として機能するNMOSトランジスタ32およびPMOSトランジスタ33を有して構成され、LED40−1〜40−NにLED駆動電流を供給している。なお、NMOSトランジスタ32の代わりにNPNバイポーラトランジスタを設けてもよい。
【0034】
各LED40−1〜40−Nのアノード側には電流検出部として機能するシャント抵抗RSHが接続されている。シャント抵抗RSHには差動増幅器42が並列に接続されている。並列接続にしたのは、各LED40−1〜40−Nのアノード側が接地されていないため、所定の基準電圧を設定しなければシャント抵抗RSHの両端におけるドロップ電圧を検出できないからである。
【0035】
シャント抵抗RSHにおける検出電圧は差動増幅器42を介して比較増幅器31の負入力端子に印加される。比較増幅器31の正入力端子は、抵抗R7を介してPNPトランジスタ34のコレクタに接続され、抵抗R8を介して出力端子20に接続されている。PNPトランジスタ34のベースは抵抗R10を介して制御回路25を構成するCPU(中央処理装置:Central Processing Unit)22のオン・オフ信号出力端子に接続されている。
【0036】
LED40−1〜40−Nのアノード側には、PMOSトランジスタ33が接続されている。
【0037】
制御回路25は、CPU22、RAM(Random Access Memory:図示せず)、ROM(Read Only Memory:図示せず)を有して構成されている。
【0038】
温度検出器23はCPU22に接続されている。温度検出器23としてはサーミスタ(Thermally Sensitive Resister)等が挙げられる。なお、温度検出器23は、所定の温度(キュリー温度:Tc)に達したときに、例えば、抵抗値が急激に変化する温度係数を持つものであり、その抵抗値の変化、すなわち、電圧降下により温度の情報を知らせる信号を送出するような温度検出器であればサーミスタに限定されない。
【0039】
尚、本第1の実施の形態では、温度検出器23は発光装置内に配置されるが、点灯制御装置1内の放熱部材(図示せず)や車両用灯具を構成する光源ユニットの筐体(例えば、ハウジング等)に配置してもよい。
【0040】
以下に、本第1の実施の形態に係る点灯制御装置1の動作について説明する。図2は温度検出器で検出された温度(℃)とLEDに供給する平均電流(A)との関係を示したグラフである。図3は温度検出器で検出された温度(℃)とLEDに供給する電流のデューティ(%)との関係を示したグラフである。
【0041】
CPU22は温度検出器23で検出された温度が予め規定された温度以上になったときに送出される温度検出信号を受けて、優先順位が高い順にLED40−1〜40−Nに供給するLED駆動電流を後述する熱的環境情報に基づいて減少させるように各電流駆動部30−1〜30−Nを制御する。
【0042】
なお、図1には車両用灯具を構成するLEDがLED40−1〜LED40−Nとして図示されているが、以下には、N=5として、LED40−1を第1のロービーム用LED、LED40−2を第2のロービーム用LED、LED40−3を第3のロービーム用LED、LED40−4をハイビーム用LED、LED40−5をターンシグナル用LEDとして用いた場合について説明する。また、以下には、LED40−1〜40−5をそれぞれLED1〜5として説明する。
【0043】
各LED1〜5の点灯頻度や点灯時における光量等の光源機能情報(光源用途の情報)や発熱量および耐久性に関する情報を含む熱的環境情報は、CPU22内のROM等の記憶部に予め格納されている。前記熱的環境情報に基づいて前記各LED1〜5の優先順位が設定され、設定された優先順位に関する情報(優先順位情報)はCPU22内のROM等の記憶部に格納される。ここで、優先順位を設定するファクターは、上記したように、点灯頻度、点灯時における光量、発熱量および耐久性に関する情報である。
【0044】
以下、表1を参照して優先順位の設定方法について説明する。通常、車両はロービームを点灯させて走行し、道路状況に応じてロービームを増光させたり、ハイビームを点灯させたりする。右左折時にはターンランプを点灯させる。
【0045】
ロービームに必要な所定の配光パターンを実現するために、LED1の点灯による照射パターンとLED2の点灯による照射パターンを合成させている。またロービームの光量を増加させたい場合には、LED3を点灯させることにより光量が通常より増加したロービームパターンを実現することができる。さらにハイビームとターンシグナルランプを必要に応じて点灯させる。
【0046】
ここで、点灯頻度について考えると、ロービームを点灯させた場合には必ず点灯させるロービーム用のLED1とLED2は同じ点灯頻度であって最も高い点灯頻度である。点灯頻度の高い方からロービーム増光用のLED3、ターン用のLED5、ハイビーム用のLED3の順となる。
【0047】
光量について考えると、高い方からLED1、LED4、LED2、LED3、LED5の順となる。
【0048】
点灯頻度と光量の順位に基づいて熱的環境情報が設定され、その熱的環境情報に基づいて優先順位が設定される。表1の例では、点灯頻度と光量の2つの光源機能情報を考慮すると、優先順位は高い方からLED1、LED2、LED4、LED3、LED5の順となる。
【0049】
なお、表1では、点灯頻度と光量の両方を考慮して優先順位を設定したが、点灯頻度と光量のいずれか一方の光源機能情報に基づいて優先順位を設定してもよいし、上記以外の光源機能情報に基づいて優先順位を設定してもよい。すなわち、優先順位の設定方法は任意であり、上記した様々なファクターの組み合わせを変えたり、各ファクターの重み付けを変えて優先順位を設定してもよい。
【0050】
【表1】

【0051】
次に、予め設定された優先順位情報に基づいてCPU22がどのように電流駆動部30−1〜30−Nを制御しているのかについて説明する。
【0052】
CPU22は、温度検出器23からの温度検出信号を受けて図2に示されるような平均電流−温度特性に基づいてLED1〜5に供給する平均電流を減少させる。なお、図2において、縦軸が平均電流(A)であり、横軸が温度検出器23で検出された温度(℃)である。
【0053】
具体的には、CPU22は温度検出信号を受けて電流駆動部30−1〜30−N内のPNPトランジスタ34およびNPNトランジスタ35のベースにオン・オフ信号(例えば、ハイレベル信号またはローレベル信号)を送出し、PNPトランジスタ34およびNPNトランジスタ35をスイッチング動作させる。
【0054】
CPU22からハイレベル信号が送出されたときにはPNPトランジスタ34はオフ動作し、NPNトランジスタ35はオン動作するので、これらのオンオフ動作に応じて比較増幅器31の正入力端子への電圧の印加速度が変化する。比較増幅器31は比較出力信号の送出、非送出を繰り返し、NMOSトランジスタ32をオン・オフ動作させ、PMOSトランジスタ33をオン・オフ動作させる。尚、オン時はPMOSトランジスタは能動的に動作し、LEDに流れる電流をある値に制御している。
【0055】
LED1〜5に供給する平均電流の大きさはPMOSトランジスタ33をオン・オフさせるスイッチング周期、すなわち、デューティ比(オンデューティとオフデューティの割合)を変更することにより変えることができる。LED1〜5は設定されたデューティに従ったオン・オフ動作の周期で高速に点滅を繰り返すことになる。
【0056】
したがって、CPU22は、温度検出器23からの温度検出信号を受けて、LED1〜5に流れるLED駆動電流のオンデューティのオフデューティに対する割合と温度特性(図3に示されるデューティ−温度特性)に従ってLED1〜5に供給する平均電流を減少させる機能を有する。なお、図3において、縦軸がデューティ(%)であり、横軸が温度検出器23で検出された温度(℃)である。各LED1〜5ごとのデューティの減少開始温度は各LED1〜5の上記した熱的環境情報に基づいて予め設定され、その減少開始温度についての情報はCPU22内のROM等の記憶部に格納される。
【0057】
上記したように、LED1〜5に供給される平均電流を減少させたいときには、PMOSトランジスタ33におけるオンデューティ(%)を減少させるようにPNPトランジスタ34をスイッチング制御すればよい。
【0058】
図3に示されるように、温度の上昇に基づいて前記優先順位の高い方から順にオンデューティの大きさが減じられる。
【0059】
各LED1〜5に供給される平均電流の減少開始温度(図2参照)およびオンデューティの減少開始温度(図3参照)は低い方からLED1、LED2、LED4、LED3、LED5の順となるように予め設定されている。
【0060】
また、LED1、LED2、LED4、LED3およびLED5の平均電流の減少開始温度およびオンデューティの減少開始温度は、例えば、以下の表2の例1に示されるように等間隔で設定されているが、等間隔とはせずに各LEDの熱的環境の状況に応じて間隔を任意に設定してもよい(表2の例2参照)。
【0061】
【表2】

【0062】
また、図2や図3のグラフの傾き(温度上昇1度あたりの平均電流の減少分)も各LED1〜5ごとに異なっていてもよい。尚、ここで示す温度はあくまで温度検出器23が検出した温度であり、各LED1〜5自体の温度を示すものではない。
【0063】
なお、本第1の実施の形態では、ロービームだけではなくハイビームも点灯している場合を示しているが、ハイビームの点灯を制御対象から除外してもいいような場合(例えば、ハイビームにLEDを用いないような場合等)には、LED3の優先順位が第3番目となりLED4の優先順位は第4番目以降になる。その際、LED3に供給される平均電流の減少開始温度を、LED4と同じ温度に変更しても良いし、変更しなくてもよい。
【0064】
このように、本第1の実施の形態によれば、個々のLED1〜5の熱的環境情報を予め設定し、上記したように、熱的環境情報に基づき一番早くLED駆動電流を減少させたいLEDを優先順位の第1番目とし、一番遅くLED駆動電流を減少させたいLEDを優先順位の第5番目とし、個々のLEDの平均電流−温度特性、デューティ−温度特性に基づいて前記優先順位にしたがってLEDに供給するLED駆動電流を減少させる制御を行っている。したがって、各LEDの用途(機能)に合致したLED駆動制御を行うことができ、LEDの耐久性および安全性を向上させることができる。
【0065】
尚、温度検出器を用いずに、例えば、通信機器を設け、該通信機器により外気温やその他の温度を通信によって温度情報として取得しても良い。
【0066】
以下に、本発明の第2の実施の形態に係る車両用灯具の点灯制御装置について図2を参照して説明する。図2はスイッチングレギュレータが複数の場合における点灯制御装置を示したブロック図である。
【0067】
本第2の実施の形態は、スイッチングレギュレータが複数設けられている点で上記した第1の実施の形態と相違する。したがって、以下の第2の実施の形態の説明においては、上記した第1の実施の形態と同様の箇所については説明を省略する。
【0068】
LEDの周囲の温度が高くなりLEDの熱的環境が厳しい状況においては、駆動電流を供給する機能を有するスイッチングレギュレータにとっても熱的環境は厳しい状態となる。
【0069】
例えば、上記した5つのLED1〜5のうち、使用頻度の高い(熱的環境が厳しい)LED1とLED2にそれぞれスイッチングレギュレータ10−1から電流駆動部30−1と30−2を介してLED駆動電流が供給される場合には、スイッチングレギュレータ10−1はLED駆動電流(平均電流)を供給し続けるため、スイッチングレギュレータ10−1にかかる負荷が大きい。一方、使用頻度の低い(熱的環境が緩い)LED3〜5にそれぞれスイッチングレギュレータ10−2から電流駆動部30−3〜30−5を介してLED駆動電流が供給される場合には、スイッチングレギュレータ10−1と比較するとLED駆動電流(平均電流)を供給する時間の合計は短く、スイッチングレギュレータ10−2にかかる負荷が小さい。
【0070】
したがって、時間あたりで考えるとスイッチングレギュレータ10−1とスイッチングレギュレータ10−2とではかかる負荷が異なる。すなわち、特定のスイッチングレギュレータのみが動作し続け、耐久性が低下するという問題が生じてしまう。
【0071】
そこで、本第2の実施の形態では、各LED1〜5の内、上記した優先順位の最も高いLED1と二番目に高いLED2に対してそれぞれスイッチングレギュレータ10−1とスイッチングレギュレータ10−2からLED駆動電流が供給されるように構成されている。
【0072】
以下に、スイッチングレギュレータ10−1とスイッチングレギュレータ10−2が設けられ、各LED1〜5における電流減少開始温度が上記表2の例2のように設定されているとして説明する。
【0073】
例えば、温度検出器23によって検出された温度が105℃のときには、LED1とLED2に供給されるLED駆動電流を減少させるようにCPU22が制御している。したがって、上記したようにLED1とLED2に対するLED駆動電流の供給をスイッチングレギュレータ10−1とスイッチングレギュレータ10−2によって行うことにより、スイッチングレギュレータ10−1とスイッチングレギュレータ10−2にかかる負荷を分散することができる。
【0074】
このように負荷の分散を考慮してスイッチングレギュレータ10−1とスイッチングレギュレータ10−2に属するLEDをグループ分けした表が以下の表3である。
【0075】
【表3】

【0076】
表3に示されるようなグループ分けに基づいて上記した第1の実施の形態における点灯制御を行うことにより、スイッチングレギュレータ10−1とスイッチングレギュレータ10−2にかかる負荷を分散しながらLEDにかかる負荷(負担)も減少させることが可能となる。
【0077】
上記した各実施の形態は、本発明を好適に実施した形態の一例に過ぎず、本発明は、その主旨を逸脱しない限り、種々変形して実施することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用灯具の点灯制御装置の構成を示した図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る車両用灯具の点灯制御装置の構成を示した図である。
【図3】温度検出器で検出された温度とLEDに供給する平均電流との関係を示したグラフである。
【図4】温度検出器で検出された温度とLEDに供給する電流のデューティとの関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0079】
1…点灯制御装置、10,10−1,10−2…スイッチングレギュレータ、11,32…NMOSトランジスタ、13…車載バッテリ、14…スイッチ素子、15,16…電源入力端子、18…スイッチングレギュレータ制御回路、19,20…出力端子、22…CPU、23…温度検出器、25…制御回路、30−1〜30−N…電流駆動部、31…比較増幅器、33…PMOSトランジスタ、34…PNPトランジスタ、40−1〜40−N…LED、42…差動増幅器、45…通信信号入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第N(Nは1以上の整数)の半導体光源へ駆動電流を供給するM(Mは1以上の整数)個のスイッチングレギュレータと、
それぞれ前記各半導体光源に接続され前記駆動電流を検出する第1〜第Nの電流検出部と、それぞれ前記各半導体光源に接続された第1〜第Nのスイッチ部とを含み、それぞれ前記各電流検出部によって検出された前記駆動電流の大きさに応じて前記各スイッチ部の動作を行う第1〜第Nの電流駆動手段と、
温度を検出し検出された温度が予め規定された温度以上になったときに温度検出信号を送出する温度検出器と、
前記温度検出信号を受けて前記各半導体光源に供給する前記駆動電流を減少させるように前記各電流駆動手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記駆動電流を減少させる前記各半導体光源の優先順位を設定し、前記優先順位が高い半導体光源から順に前記駆動電流を減少させる
ことを特徴とする車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項2】
前記優先順位は予め設定された前記各半導体光源の耐熱性に関する情報を含む熱的環境情報に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項3】
前記熱的環境情報は前記各半導体光源の用途に関する情報を含む光源機能情報に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項4】
前記光源機能情報は、前記各半導体光源の点灯頻度および点灯時における光量の内の少なくとも一つの情報である
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項5】
前記スイッチングレギュレータを複数個設け、
前記各半導体光源の内、前記優先順位の最も高い半導体光源と二番目に高い半導体光源に対してそれぞれ異なる前記スイッチングレギュレータから前記駆動電流が供給される
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の車両用灯具の点灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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