説明

車両用灯具の着氷雪除去構造

【課題】 光源の発熱量の少ない車両用灯具において、アウターレンズに付着した雪を容易に取り除くことが可能な車両用灯具の着氷雪除去構造を提供すること。
【解決手段】本発明に係る車両用灯具の着氷雪除去構造1は、灯室内の温度が高温になりにくい光源を備えた車両用灯具用の着氷雪除去構造に関するものである。着氷雪除去構造1は、車両用灯具3のアウターレンズ4の一部に設置される熱線部7と、アウターレンズ4の熱線部7近傍に対してウォッシャー液を噴出するクリーナーノズル5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯室内の温度が高温になりにくい光源を備えた車両用灯具用の着氷雪除去構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用灯具には、一般的にハロゲン光源が用いられており、灯具の点灯に伴って灯室内の温度が上昇し、アウターレンズの外表面が暖められてレンズ表面温度が上昇しやすい構造となっていた。このため、寒冷地において雪や氷がアウターレンズに付着した場合であっても、着氷雪がアウターレンズ表面から落ちやすく、光源より照射される照明光を妨げて視界不良を招くおそれが少なかった。
【0003】
さらに、降雪量の多い地方などには、アウターレンズの全面に電熱線を配し発熱させ、アウターレンズの外表面を暖めて着氷雪を積極的に解凍・落雪させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平14−150812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、今日、車両用灯具用の光源として多く用いられているHID光源(ディスチャージヘッドライト)やLED光源では、従来のバルブ光源に比べて発熱量が少ないので、灯具の点灯によってアウターレンズの外表面が暖められにくく、アウターレンズに付着した雪や氷が落雪せずに視界不良を招くおそれがあるという問題があった。
【0005】
また、従来のように、電熱線をアウターレンズの全面に配設する方法では、多量の電力を消費してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、HID光源やLED光源のように光源の発熱量の少ない車両用灯具において、アウターレンズに付着した雪を容易に取り除くことが可能な車両用灯具の着氷雪除去構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用灯具の着氷雪除去構造は、灯室内の温度が高温になりにくい光源を備えた車両用灯具用の着氷雪除去構造であって、前記車両用灯具のアウターレンズの一部に設置される熱線部と、前記アウターレンズの前記熱線部近傍に対してウォッシャー液を噴出するクリーナーノズルとを備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記熱線部は、前記アウターレンズに略水平に設置されることが好ましく、さらに前記熱線部がニクロム線であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記発明によれば、熱線部の通電によるアウターレンズに付着する着氷雪の部分的な融解と、クリーナーノズルによるウォッシャー液の噴出とによって、HID(ディスチャージヘッドライト)灯具やLED光源灯具のように、光源の発光によって灯室内の温度があまり高くならない車両用灯具であっても、アウターレンズの全面に付着した雪や氷を容易に除雪することが可能となる。
【0010】
また、従来のように、熱線部をアウターレンズの全面に設置する構造ではないため、着氷雪を溶かすために必要とされる電力が数ワットで足りる。特に、熱線部としてニクロム線を使用する場合には、アウターレンズの全面に付着した着氷雪を全て溶かすために必要とされる電力の1/10以下の電力で、雪等を除去することが可能となる。
【0011】
さらに、熱線部としてニクロム線を使用する場合には、通常線径が0.3mm以下であればよいため、熱線の設置面積が小さくて済み、前照灯の配光性能や意匠性を損なうおそれが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両用灯具の着氷雪除去構造について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、着氷雪除去構造1を示した車両の概略断面構成図である。着氷雪除去構造1が設置される車両用灯具の光源には、HID(ディスチャージヘッドライト)光源が採用されている。
【0014】
着氷雪除去構造1は、クリーナータンク2と、前照灯3のアウターレンズ4と、アウターレンズ4の前方に設置されるクリーナーノズル5と、クリーナーノズル5とクリーナータンク2とを繋ぐホース6とを有している。
【0015】
アウターレンズ4には、図2(a)に示すように、アウターレンズ4の中央部に約水平に延びる1本の電熱線7が設置されている。この電熱線7は、灯具の配光や意匠に影響を与えないようにアウターレンズ4に設けられており、図2(a)に示すようにライン状であってもよいし、円形状に貼り付けられるものであってもよい。具体的に電熱線は、ニクロム線や印刷式のヒーター等をレンズの裏面又は内面に対して貼り付けたりインサート成形したりすることによって設置される。
【0016】
クリーナータンク2は、一般的にエンジンルーム8内に設置されており、クリーナータンク2には、フロントウィンドウ及び車両の前照灯3のアウターレンズ4を洗浄するためのウォッシャー液9が充填されている。
【0017】
また、クリーナータンク2の側方下部には、運転席の操作レバーよってクリーナーノズル5から射出されるクリーナー液9の射出制御を行うことが可能なクリーナー制御機構10が設けられている。
【0018】
ホース6の一端は、クリーナー制御部10の端部に取り付けられており、他端はクリーナーノズル5に連結されている。
【0019】
クリーナーノズル5は、前照灯3の前方のフロントバンパー11等に設置されており、ホース6を介して伝達されたウォッシャー液9を、図2(b)に示すように、アウターレンズ4全体に対して噴出することが可能となっている。
【0020】
次に、上述した着氷雪除去構造1の動作によって、アウターレンズ4に付着した雪(氷)12を除去する方法を説明する。
【0021】
まず、前照灯3を点灯させ、さらに、電熱線7を通電させる。アウターレンズ4に雪12等が付着している場合、光源がHID光源であるため、一般的なバルブ光源に比べて灯室14の室温があまり高温にはならず、アウターレンズ4に付着した雪12等を溶かしてレンズより除去することは出来ないが、アウターレンズ4の外表面に接する僅かな雪12等を溶かすことは可能である。
【0022】
さらに、電熱線7の通電に伴って、アウターレンズ4の電熱線7周辺に付着した雪12等が溶けて、アウターレンズ4の外表面が露呈する。
【0023】
その後、運転者が操作レバーを介してクリーナー制御機構10の操作を行うことにより、クリーナータンク2のウォッシャー液9を、クリーナーノズル5へホース6を介して誘導する。
【0024】
ホース6を介してウォッシャー液9がクリーナーノズル5に到達すると、図3に示すように、ウォッシャー液9の圧力によりウォッシャー液9がクリーナーノズル5よりアウターレンズ4の外表面に向けて噴出される。
【0025】
噴出されたウォッシャー液9は、電熱線7近傍のアウターレンズ4の外表面からアウターレンズ4と雪12等との境界に浸透していき、このウォッシャー液9の浸透によって付着した雪12等がアウターレンズ4より落雪しやすくなる。
【0026】
このように、電熱線7の通電によるアウターレンズ4に付着する着氷雪の部分的な融解と、クリーナーノズル5によるウォッシャー液9の噴出とによって、HID(ディスチャージヘッドライト)灯具やLED光源灯具のように、光源の発光によって灯室14内の温度があまり高くならない車両用灯具であっても、アウターレンズ4の全面に付着した雪12や氷を容易に除雪することが可能となる。
【0027】
特に、従来のように、電熱線7をアウターレンズ4の全面に設置する構造ではないため、着氷雪を溶かすために必要とされる電力が数ワットで足り、アウターレンズ4の全面に付着した着氷雪を全て溶かすために必要とされる電力の1/10以下の電力で、雪12等を除去することが可能となる。
【0028】
さらに、電熱線7としてニクロム線を使用する場合には、通常線径が0.3mm以下であればよいため、電熱線7の設置面積が小さくて済み、前照灯3の配光性能や意匠性を損なうおそれが少ない。
【0029】
以上、本発明に係る車両用灯具の着氷雪除去構造について説明を行ったが、本発明に係る着氷雪除去構造は上述したものに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、前照灯に付着した雪を除去する構造について説明を行ったが、本発明に係る着氷雪除去構造は、前照灯用に限定されるものではなく、テールランプ用に用いられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】前照灯に設けられた着氷雪除去構造の概略構成を示した図である。
【図2】アウターレンズの概略構造を示した斜視図であって、(a)は、アウターレンズだけを示しており、(b)は、アウターレンズにウォッシャー液が塗布されている状態を示している。
【図3】ワイパーブラシと前照灯とを示した断面図であり、(a)は、電熱線の通電を行った状態でウォッシャー液を塗布し始めた状態を示しており、(b)は、塗布したウォッシャー液が浸透して付着した雪が落雪する状態を示している。
【符号の説明】
【0031】
1 着氷雪除去構造
2 クリーナータンク
3 前照灯
4 アウターレンズ
5 クリーナーノズル
6 ホース
7 電熱線(熱線部)
9 クリーナー液
10 クリーナー制御機構
14 灯室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯室内の温度が高温になりにくい光源を備えた車両用灯具用の着氷雪除去構造であって、
前記車両用灯具のアウターレンズの一部に設置される熱線部と、
前記アウターレンズの前記熱線部近傍に対してウォッシャー液を噴出するクリーナーノズルと
を備えることを特徴とする車両用灯具の着氷雪除去構造。
【請求項2】
前記熱線部は、前記アウターレンズに略水平に設置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具の着氷雪除去構造。
【請求項3】
前記熱線部はニクロム線であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用灯具の着氷雪除去構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−176029(P2006−176029A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372416(P2004−372416)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】