説明

車両用灯具ユニットの光軸調整装置

【課題】AFSモータと灯具ユニットとの連結部分(嵌合部分)に発生していた削れ等に起因する作動不良の防止又は低減が可能な車両用灯具ユニットの光軸調整装置を提供する。
【解決手段】リング形状のブラケットと、鉛直方向に延びる鉛直揺動軸を介して前記ブラケット内に揺動可能に連結された灯具ユニットと、前記ブラケットに固定されたAFSモータと、を備える車両用灯具ユニットの光軸調整装置において、前記AFSモータは、AFSモータ本体と、前記AFSモータ本体に連結され、前記鉛直揺動軸と同軸の回転軸を中心に回転駆動されるギヤと、前記ギヤの前記回転軸から外側に偏心したギヤ部分に固定された基端部と、前記灯具ユニットに回転可能に連結された先端部とを有し、前記AFSモータ本体によって回転駆動される前記ギヤとともに回転することにより、前記灯具ユニットを前記ブラケットに対して前記鉛直揺動軸を中心に左右方向に揺動させる出力軸と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具ユニットの光軸調整装置に係り、特にAFSモータと灯具ユニットとの連結部分に発生する削れ等に起因する作動不良の防止又は低減が可能な車両用灯具ユニットの光軸調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AFSモータを用いた車両用灯具ユニットの光軸調整装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図5は、従来のAFSモータを用いた車両用灯具ユニットの光軸調整装置の構成を説明するための図である。
【0004】
図5に示すように、従来の光軸調整装置は、ブラケット210、上下方向に延びる鉛直揺動軸221を介してブラケット210に揺動可能に連結された灯具ユニット220、当該灯具ユニット220をブラケット210に対して揺動させるためのAFS(Adaptive Front-Lighting System)モータ230等を備えている。
【0005】
AFSモータ230は、モータ本体、このモータ本体によって回転駆動させられる出力軸231等を備えている。この出力軸231は、鉛直揺動軸221と同軸上に配置されており、灯具ユニット220にバネ嵌合方式や圧入嵌合方式により嵌合することで連結されている。
【0006】
上記構成の光軸調整装置においては、モータ本体を制御して出力軸231を回転駆動させると、当該出力軸231が連結された灯具ユニット220は鉛直揺動軸221を中心に左右方向に揺動することとなる。これにより、灯具ユニット220の左右方向の光軸調整(スイブル)が可能となる。
【特許文献1】特開2005−319884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の光軸調整装置においては、出力軸231は、灯具ユニット220の揺動中心となる鉛直揺動軸221と同軸上に配置されており、灯具ユニット220に嵌合することで連結されている。すなわち、AFSモータ220の出力伝達及び嵌合回転等の全ての機能が、出力軸231に集中する構成となっている。
【0008】
このため、バネ嵌合方式においては、AFSモータと灯具ユニットとの連結部分(嵌合部分)に削れやガタが発生し、AFS回転軸位置や作動角が狂う恐れがあり、圧入嵌合方式においては、寸法管理が難しく、半嵌合やがたつきが起こるという問題がある。
【0009】
一方、上記AFSモータ220に代えて、図6に示すように、先端241が灯具ユニット220に回転可能に連結されたロッド240を有する直動式のアクチュエータ240を用い、当該アクチュエータ240を制御してロッド241の突出量を変化させることによって、灯具ユニット220の左右方向の光軸調整(スイブル)を行うことが考えられる。
【0010】
しかしながら、図6に示すように、ロッド241の動きが直線運動であるのに対して、灯具ユニット240の動きは軸中心の回転運動となるため、ロッド241の突出量が変化するのに伴って、ギャップGが生じ、アクチュエータ240に過負荷がかかり、ロッド241の突出量がスムースに変化しない等の作動不良を起こすという問題がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、AFSモータと灯具ユニットとの連結部分に発生する削れ等に起因する作動不良を防止又は低減することが可能な車両用灯具ユニットの光軸調整装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、リング形状のブラケットと、鉛直方向に延びる鉛直揺動軸を介して前記ブラケット内に揺動可能に連結された灯具ユニットと、前記ブラケットに固定されたAFSモータと、を備える車両用灯具ユニットの光軸調整装置において、前記AFSモータは、AFSモータ本体と、前記AFSモータ本体に連結され、前記鉛直揺動軸と同軸の回転軸を中心に回転駆動されるギヤと、前記ギヤの前記回転軸から外側に偏心したギヤ部分に固定された基端部と、前記灯具ユニットに回転可能に連結された先端部とを有し、前記AFSモータ本体によって回転駆動される前記ギヤとともに回転することにより、前記灯具ユニットを前記ブラケットに対して前記鉛直揺動軸を中心に左右方向に揺動させる出力軸と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、灯具ユニットに回転可能に連結された出力軸を、灯具ユニットの揺動中心となるギヤの回転軸(及び鉛直揺動軸)と同軸上ではなく、ギヤの回転軸から外側に所定量偏心したギヤ部分に固定したので(すなわち、出力軸と灯具ユニットの揺動中心となるギヤの回転軸とを別体にしたので)、出力軸にAFSモータの出力伝達及び嵌合回転等の全ての機能が集中せず、当該出力軸にAFSモータの出力伝達の機能のみを持たせることが可能となる。このため、請求項1に記載の発明によれば、従来、AFSモータと灯具ユニットとの連結部分(嵌合部分)に発生していた削れ等に起因する作動不良の防止又は低減が可能となる。
【0014】
また、請求項1に記載の発明によれば、灯具ユニットに回転可能に連結された出力軸を、灯具ユニットの揺動中心となるギヤの回転軸(及び鉛直揺動軸)と同軸上ではなく、ギヤの回転軸から外側に所定量偏心したギヤ部分に固定したので(すなわち、出力軸と灯具ユニットの揺動中心となるギヤの回転軸とを別体にしたので)、灯具ユニットを揺動させるためのトルクが小さくなり、AFSモータの小型化、省電力化等が可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、リング形状のブラケット及び鉛直方向に延びる鉛直揺動軸を介して前記ブラケット内に揺動可能に連結された灯具ユニットとの組み合わせで用いられるAFSモータにおいて、AFSモータ本体と、前記AFSモータ本体に連結され、前記鉛直揺動軸と同軸の回転軸を中心に回転駆動されるギヤと、前記ギヤの前記回転軸から外側に偏心したギヤ部分に固定された基端部と、前記灯具ユニットに回転可能に連結された先端部とを有し、前記AFSモータ本体によって回転駆動される前記ギヤとともに回転することにより、前記灯具ユニットを前記ブラケットに対して前記鉛直揺動軸を中心に左右方向に揺動させる出力軸と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、灯具ユニットに回転可能に連結される出力軸を、灯具ユニットの揺動中心となるギヤの回転軸(及び鉛直揺動軸)と同軸上ではなく、ギヤの回転軸から外側に所定量偏心したギヤ部分に固定したので(すなわち、出力軸と灯具ユニットの揺動中心となるギヤの回転軸とを別体にしたので)、出力軸にAFSモータの出力伝達及び嵌合回転等の全ての機能が集中せず、当該出力軸にAFSモータの出力伝達の機能のみを持たせることが可能となる。このため、請求項2に記載の発明によれば、従来、AFSモータと灯具ユニットとの連結部分(嵌合部分)に発生していた削れ等に起因する作動不良の防止又は低減が可能となるAFSモータの提供が可能となる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、灯具ユニットに回転可能に連結された出力軸を、灯具ユニットの揺動中心となるギヤの回転軸(及び鉛直揺動軸)と同軸上ではなく、ギヤの回転軸から外側に所定量偏心したギヤ部分に固定したので(すなわち、出力軸と灯具ユニットの揺動中心となるギヤの回転軸とを別体にしたので)、灯具ユニットを揺動させるためのトルクが小さくなり、小型化、省電力化等が可能となるAFSモータの提供が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、AFSモータと灯具ユニットとの連結部分(嵌合部分)に発生していた削れ等に起因する作動不良の防止又は低減が可能な車両用灯具ユニットの光軸調整装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具ユニットの光軸調整装置について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の車両用灯具ユニットの光軸調整装置の正面側からの斜視図である。図2は、鉛直揺動軸21及び灯具ユニット20の光軸AXを含む鉛直面で切断した縦断面図である。
【0021】
本実施形態の車両用灯具ユニットの光軸調整装置100は、自動車のヘッドランプ等の車両用灯具ユニットの光軸調整装置として適用されるものであり、図1に示すように、リング形状のブラケット10、灯具ユニット20、AFSモータ30等を備えている。
【0022】
図1、図2に示すように、ブラケット10は、略矩形のリング状に形成されている。灯具ユニット20は、いわゆるプロジェクタ型の灯具ユニットであり、鉛直方向に延びる鉛直揺動軸21、31を介してブラケット10内に揺動可能に連結されている。図1、図2は、灯具ユニット20上部に設けられた鉛直揺動軸21をブラケット10の上部に形成された開口11に挿入するとともに、AFSモータ30の鉛直揺動軸31を、ブラケット10の下部に形成された開口を介して、灯具ユニット20下部に形成された開口22に挿入することで連結した例である。
【0023】
灯具ユニット20は、図2に示すように、投影レンズ23、白熱電球、ハロゲンランプ、HID、LED等の光源24、この光源24を覆うように配置され、当該光源24から照射される照射光を投影レンズ23に向けて反射するリフレクタ25、投影レンズ23と光源24の間に配置され、リフレクタ25からの反射光の一部を遮光してカットオフラインを有する所定配光パターンを形成するためのシェード26等を備えている。
【0024】
図3は、AFSモータ30の分解平面図である。図4は、図1に示したAFSモータ30の出力軸35付近の拡大斜視図である。
【0025】
AFSモータ30は、図1〜図4に示すように、ステッピングモータ等を含むモータ本体32、このモータ本体32にギヤ列33を介して連結されており、モータ本体32の回転を制御することにより鉛直揺動軸21と同軸に配置された鉛直揺動軸31を中心に回転駆動させられる最終ギヤ34(図3ではおおぎ型のギヤ34を例示)、この最終ギヤ34の鉛直揺動軸31から外側に偏心したギヤ部分に固定された基端部35a及び灯具ユニット20下部に回転可能に連結された先端部35bを有する出力軸35等を備えている。出力軸35は、例えば、最終ギヤ34と一体的に形成されている。
【0026】
モータ本体32、ギヤ列33、最終ギヤ34等は、ケース36内に収容されており、当該ケース36をブラケット10の下面にネジ止め等の公知の手段により固定することで、AFSモータ30はブラケット10に固定されている。出力軸35は、ケース36に形成された開口36aから突出している。図1、図2は、この突出した出力軸35の先端部35bを灯具ユニット20下部に設けられた凹部27に挿入することで回転可能に連結した例である。なお、この突出した出力軸35の先端部35bに凹部を設け、灯具ユニット20下部に当該凹部に挿入されるピンを設けることで両者を回転可能に連結してもよい。
【0027】
上記のように、本実施形態においては、出力軸35(ピン)と凹部27の簡易な組み合わせでAFSモータ30(の出力軸35)と灯具ユニット20とを連結しているため、従来のように、バネ嵌合方式や圧入嵌合方式のような複雑な機構が不要である。なお、出力軸35(ピン)と凹部27は、削れ防止のため、摺動材を用いるのが好ましい。
【0028】
この構成においては、AFSモータ30を制御することによって最終ギヤ34を回転させると、当該最終ギヤ34に固定された出力軸35は、図3に示すAFS回転角の範囲において鉛直揺動軸31を中心に円弧状の軌跡を描いて回転し、灯具ユニット20をブラケット10に対して鉛直揺動軸21、31を中心に左右方向に揺動させることとなる。これにより、灯具ユニット20の左右方向の光軸調整(スイブル)が可能となる。なお、ケース36の開口36aは鉛直揺動軸31を中心とする円弧状に形成されているので、出力軸35の回転は、当該開口36aによって阻害されず、スムースに回転することが可能となっている。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニットの光軸調整装置100によれば、灯具ユニット20に回転可能に連結された出力軸35を、灯具ユニット20の揺動中心となる最終ギヤ31の回転軸31(及び鉛直揺動軸21)と同軸上ではなく、最終ギヤ31の回転軸31から外側に所定量偏心したギヤ部分に固定したので(すなわち、出力軸35と灯具ユニット20の揺動中心となる最終ギヤ31の回転軸31とを別体にしたので)、出力軸35にAFSモータ30の出力伝達及び嵌合回転等の全ての機能が集中せず、当該出力軸35にAFSモータ30の出力伝達の機能のみを持たせることが可能となる。
【0030】
このため、本実施形態の車両用灯具ユニットの光軸調整装置100によれば、従来、AFSモータと灯具ユニットとの連結部分(嵌合部分)に発生していた削れ等に起因する作動不良の防止又は低減が可能となる。
【0031】
また、本実施形態の車両用灯具ユニットの光軸調整装置100によれば、出力軸35を、灯具ユニット20の揺動中心となる最終ギヤ31の回転軸31(及び鉛直揺動軸21)と同軸上ではなく、最終ギヤ31の回転軸31から外側に所定量偏心したギヤ部分に固定したので(すなわち、出力軸35と灯具ユニット20の揺動中心となる最終ギヤ31の回転軸31とを別体にしたので)、灯具ユニット20を揺動させるためのトルクが小さくなり、AFSモータ30の小型化、省電力化等が可能となる。
【0032】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態の車両用灯具ユニットの光軸調整装置の正面側からの斜視図である。
【図2】鉛直揺動軸21及び灯具ユニット20の光軸AXを含む鉛直面で切断した縦断面図である。
【図3】AFSモータ30の分解平面図である。
【図4】図4は、図1に示したAFSモータ30の出力軸35付近の拡大斜視図である。
【図5】従来の車両用灯具ユニットの光軸調整装置の構成を説明するための断面図である。
【図6】従来の車両用灯具ユニットの光軸調整装置の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
100…車両用灯具ユニットの光軸調整装置、10…ブラケット、11…開口、20…灯具ユニット、21…鉛直揺動軸、22…開口、23…投影レンズ、24…光源、25…リフレクタ、26…シェード、27…凹部、30…モータ、31…鉛直揺動軸、32…モータ本体、33…ギヤ列、34…最終ギヤ、35…出力軸、35a…基端部、35b…先端部、36…ケース、36a…開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング形状のブラケットと、
鉛直方向に延びる鉛直揺動軸を介して前記ブラケット内に揺動可能に連結された灯具ユニットと、
前記ブラケットに固定されたAFSモータと、
を備える車両用灯具ユニットの光軸調整装置において、
前記AFSモータは、
AFSモータ本体と、
前記AFSモータ本体に連結され、前記鉛直揺動軸と同軸の回転軸を中心に回転駆動されるギヤと、
前記ギヤの前記回転軸から外側に偏心したギヤ部分に固定された基端部と、前記灯具ユニットに回転可能に連結された先端部とを有し、前記AFSモータ本体によって回転駆動される前記ギヤとともに回転することにより、前記灯具ユニットを前記ブラケットに対して前記鉛直揺動軸を中心に左右方向に揺動させる出力軸と、
を備えることを特徴とする車両用灯具ユニットの光軸調整装置。
【請求項2】
リング形状のブラケット及び鉛直方向に延びる鉛直揺動軸を介して前記ブラケット内に揺動可能に連結された灯具ユニットとの組み合わせで用いられるAFSモータにおいて、
AFSモータ本体と、
前記AFSモータ本体に連結され、前記鉛直揺動軸と同軸の回転軸を中心に回転駆動されるギヤと、
前記ギヤの前記回転軸から外側に偏心したギヤ部分に固定された基端部と、前記灯具ユニットに回転可能に連結された先端部とを有し、前記AFSモータ本体によって回転駆動される前記ギヤとともに回転することにより、前記灯具ユニットを前記ブラケットに対して前記鉛直揺動軸を中心に左右方向に揺動させる出力軸と、
を備えることを特徴とするAFSモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−27223(P2010−27223A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183652(P2008−183652)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】