説明

車両用灯具

【課題】側方領域も含めた前方への均一な照射を行うことができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具10は、光源15からの出射光の一部を前方に反射させる第1リフレクタ16と、第1リフレクタ16より前方に配置され、光源15からの出射光の一部を反射させる第2リフレクタ17と、第2リフレクタ17からの反射光を前方に反射させる第3リフレクタ18とを備えている。そして、第2リフレクタ17の反射面30,31,32全体に出射される光源15からの出射光の出射角度の積分値は、第1リフレクタ16の反射面29全体に出射される出射角度の積分値よりも大きく、第2リフレクタ17で反射される反射光全体の殆どが、第3リフレクタ18の反射面33に集光される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプボディとその前方開口部に取り付けられた前面レンズとで形成された灯室内に、光源からの光を前方に反射させるリフレクタを備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用灯具の一例として、LED光源から出射された光をカバー側に反射させる第1反射面と、LED光源から出射された光を前方に反射する第2反射面とをリフレクタに設けた車両用灯具がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−59075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された従来の車両用灯具では、第1反射面によりLED光源からの光を反射させると共に、第2反射面によりLED光源からの光を前方に反射させる。
しかしながら、第1反射面および第2反射面からの反射光を車両用灯具の上下及び左右を含む広角度領域に向けられず、車両用灯具の正面から照射される光は明るいものの、正面から外れた位置(上下及び左右を含む)から見た際には暗くなる虞があった。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、正面から外れた上下及び左右を含む広角度領域から見た際も灯具は明るく、広範囲に均一な光を照射させることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、前方が開口したランプボディとその前方開口部に取り付けられた前面レンズとで形成された灯室内に、光源と、該光源からの出射光の一部を前方に反射させる第1リフレクタと、該第1リフレクタより前方に配置され、前記光源からの出射光の一部を反射させる第2リフレクタと、該第2リフレクタからの反射光を前方に反射させる第3リフレクタと、を備えた車両用灯具であって、前記光源から前記第2リフレクタの反射面全体に出射される出射角度の積分値は、前記光源から前記第1リフレクタの反射面全体に出射される出射角度の積分値よりも大きく、前記第2リフレクタの反射光は、全体の殆どが前記第3リフレクタの反射面に集光されることを特徴とする車両用灯具により達成される。
【0007】
上記構成の車両用灯具によれば、光源から第1リフレクタの反射面全体に出射される出射角度よりも大きい出射角度の積分値(立体角度)で光源から第2リフレクタの反射面全体に出射される反射光は、全体の殆どが第3リフレクタの反射面に集光されて前方に反射される。
これにより、反射光は第3リフレクタにより拡散された光に変換されて前面レンズを通過して照射される。したがって、車両用灯具の正面から外れた上下及び左右を含む広角度領域(斜め方向も含む)から見た際も灯具は明るく、広範囲に均一な光を照射させることができる。よって、光源を傾けることなく、光源からの出射光を効率良く利用することができるとともに、均一な発光面積を増やすことができる。
なお、出射角度の積分値とは、狭義な一平面内での出射領域ではなく、光源からリフレクタの反射面全体への3次元的な出射領域を意味している。
【0008】
また、上記構成の車両用灯具において、前記前面レンズの周縁部に、レンズステップを形成して、前記光源から直接出射される出射光の一部を、前記レンズステップを介して前方に照射することが望ましい。
【0009】
このような構成の車両用灯具によれば、前面レンズの周縁部のレンズステップにより光源から直接出射される出射光の一部が前方に拡散して照射される。したがって、光源からの出射光を一層効率良く利用することができる。
【0010】
また、上記構成の車両用灯具において、前記第2リフレクタは、複数の領域に分割されていることが望ましい。
【0011】
このような構成の車両用灯具によれば、光源からの出射光を第2リフレクタにより複数に分割された領域で、それぞれ異なる反射角度で第3リフレクタへ向けて反射される。したがって、第2リフレクタの反射面全体で受ける出射光を第3リフレクタに向けて効率良く集光させることができる。また、第2リフレクタ全体のコンパクト化を図ることができる。
【0012】
また、上記構成の車両用灯具において、前記第3リフレクタの反射面は、シボ加工されていることが望ましい。
【0013】
このような構成の車両用灯具によれば、第3リフレクタに集光された反射光をシボ加工された反射面により前方に向けて拡散させることができる。したがって、第3リフレクタで乱反射させることにより、第3リフレクタでの反射光は眩しさが低減され、帯状で均一な柔らかい反射光を照射することができる。
【0014】
また、上記構成の車両用灯具において、前記第3リフレクタは、光源を搭載する基板を視認させなくするダミー部を形成していることが望ましい。
【0015】
このような構成の車両用灯具によれば、光源を搭載する基板は第3リフレクタのダミー部により前方から視認されず、しかもダミー部全体を光らせることができる。したがって、意匠面で良好にできるとともに、発光面積を増やすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る車両用灯具によれば、光源から第2リフレクタの反射面全体に出射される出射角度の積分値は、光源から第1リフレクタの反射面全体に出射される出射角度の積分値よりも大きく、第2リフレクタの反射光は、全体の殆どが第3リフレクタの反射面に集光される。したがって、車両用灯具の正面から外れた上下及び左右を含む広角度領域から見た際も灯具は明るく、広範囲に均一な光を照射させることができる。よって、光源からの出射光を効率良く利用することができるとともに、均一な発光面積を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両用灯具の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両用灯具の一実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
【0019】
本発明の一実施形態である車両用灯具10は、前方側が開口された形状で車体側に固定される樹脂製のランプボディ11と、ランプボディ11の前方の開口部13に取り付けられた前面レンズ12と、ランプボディ11と前面レンズ12とで形成される灯室14とを備えている。
車両用灯具10は、灯室14内に、複数のLED光源15と、LED光源15の後方に配置された第1リフレクタ16と、第1リフレクタ16よりも前方に配置された第2リフレクタ17と、LED光源15の前方に配置された第3リフレクタ18とを備えるリアコンビネーションランプユニットである。
【0020】
図1に示すように、車両用灯具10は、車両後方側から見て、第3リフレクタ18が中央部の水平方向に配置されている。車両用灯具10は、第3リフレクタ18の後方上部および下部に各4個ずつのLED光源15が対応して配置されている。
【0021】
図2に示すように、車両用灯具10は、上部灯具ユニット19と、下部灯具ユニット20とを一体に形成している。上部灯具ユニット19と下部灯具ユニット20とは上下に対称な構造であるため、以下の説明では上部灯具ユニット19についてのみ説明し、下部灯具ユニット20の説明は省略する。
【0022】
ランプボディ11は、ランプボディ本体21と、ランプボディ本体21の後方に組み付けられるエンドカバー22とを備えている。ランプボディ11は、前面レンズ12の前方にカバーレンズ23を固定したベースプレート24上に組み付けられている。
【0023】
ランプボディ本体21は、水平方向に横長に成形されており、後方にエンドカバー取付用開口部25を有している。
エンドカバー22は、その中央部に基台部材26を固定している。基台部材26は、上面と下面とに光源用孔27をそれぞれ形成しており、内部に光源用回路基板28を収容している。
【0024】
LED光源15は、光源用回路基板28上にそれぞれ実装されており、光源用孔27から上方に僅かに突出している。
【0025】
第1リフレクタ16は、基台部材26の後方側の端部に組み付けられている。第1リフレクタ16は、前方側を凹状とした放物面形状に形成された反射面29を有している。
第1リフレクタ16の反射面29は、LED光源15が有する光軸Bを中心として略後方側の領域に出射された出射光を反射させる。そのため、第1リフレクタ16の反射面29は、メイン配光用として機能する。
【0026】
第2リフレクタ17は、ランプボディ本体21の上面に形成され、光軸Bを中心として略前方側の領域に出射された出射光の大半を反射させる。第2リフレクタ17は、LED光源15側から第1反射部30、第2反射部31、第3反射部32の順に不連続に形成されている。なお、第2リフレクタ17は、第1リフレクタ16に一体形成されても良い。
【0027】
第1反射部30は、ランプボディ本体21のLED光源15の光軸Bに近接して配置されており、光軸Bに対して傾斜角度θ1を有している。第2反射部31は、第1反射部30の前方側に隣接して配置されている。第2反射部31は、第1反射部30よりも大きい傾斜角度θ2を有している。第3反射部32は、ランプボディ本体21の前方側であるLED光源15の光軸Bから離れた位置に配置されている。第3反射部32は、第2反射部31よりも大きい傾斜角度θ3を有している。すなわち、θ1<θ2<θ3の関係にある。
【0028】
第2リフレクタ17の第1反射部30、第2反射部31および第3反射部32は、ランプボディ11の内面上に形成された蒸着層である。
【0029】
第3リフレクタ18は、その頂部を前方側に突出した垂直断面視で略V字状に形成されており、基台部材26の前端部に組み付けられている。第3リフレクタ18の反射面33には、シボ加工が施されており、反射面33に入射された光をシボ加工により乱反射させる。
【0030】
第3リフレクタ18は、基台部材26の前端部よりも僅かに大きい外形を有している。そのため、第3リフレクタ18及び基台部材26はダミー部34を形成している。ダミー部34は、LED光源15を搭載する光源用回路基板28を前方から視認されないようにする。
【0031】
前面レンズ12の周縁部には、LED光源15から直接出射される出射光の一部を拡散するためのレンズステップ35が形成されている。
【0032】
このように構成された車両用灯具10は、LED光源15から第2リフレクタ17の各反射部30,31,32の反射面全体に出射される出射角度の積分値(立体角度)が、第1リフレクタ16の反射面29全体に出射される出射角度の積分値よりも大きく設定されている。
【0033】
次に、車両用灯具10の光学的特性について説明する。
【0034】
不図示のブレーキペダルが操作されることによりストップランプ点灯回路が駆動されてLED光源15が発光する。
LED光源15の光軸Bの後方側の出射光は、第1リフレクタ16の反射面29で反射される。第1リフレクタ16の反射面29で反射した反射光α1は、そのまま前面レンズ12、カバーレンズ23を通過して、メイン配光として車両後方を照射する。
【0035】
LED光源15の光軸Bの前方側に出射された出射光は、第2リフレクタ17の第1,2,3反射部30,31,32によってそれぞれ反射される。
第1反射部30で反射された反射光α2は、第3リフレクタ18の後方近傍に向けて進行する。そして、反射光α2は、第3リフレクタ18の反射面33の後方近傍で再び反射してから、前面レンズ12、カバーレンズ23の上方部分を通過して、車両後方を照射する。
【0036】
第2リフレクタ17の第2反射部31で反射された反射光α3は、第3リフレクタ18の中央近傍に向けて進行する。そして、反射光α3は、第3リフレクタ18の反射面33の中央近傍で再び反射してから、前面レンズ12、カバーレンズ23の中央部分を通過して、車両後方を照射する。
【0037】
第2リフレクタ17の第3反射部32で反射された反射光α4は、第3リフレクタ18の前方近傍に向けて進行する。そして、反射光α4は、第3リフレクタ18の反射面33の前方近傍で再び反射してから、前面レンズ12、カバーレンズ23の上方側の灯具光軸よりの部分を通過して、車両後方を照射する。なお、ここで云う灯具光軸とは、車両前後方向において、図1の前面レンズ12の中心部を通る水平断面である。
このように第2リフレクタ17の第1,2,3反射部30,31,32で反射された反射光α2,α3,α4の殆どは、第3リフレクタ18の反射面33に集光される。
なお、図2中において、上述した反射光α1,α2,α3,α4は、車両用灯具10の上側LED光源15に基づいて説明したが、下側LED光源15についての各反射光の説明は上下対称の経路をたどるので省略する。
【0038】
LED光源15の光軸Bの前方側の出射光の内、第2リフレクタ17の第3反射部32で反射される出射光よりも出射角度が大きい出射光α5の一部は、前面レンズ12の周縁部に形成されたレンズステップ35に直接入射する。レンズステップ35に入射した出射光α5は、レンズステップ35により拡散され、カバーレンズ23の下方を通過して、車両後方を照射する。
【0039】
また、LED光源15の光軸Bの前方側の出射光の内、出射角度が出射光α5よりさらに大きい出射光α6の一部は、前面レンズ12の中央部分に直接入射する。前面レンズ12に直接入射した出射光α6は、前面レンズ12、カバーレンズ23の下方側の灯具光軸よりの部分を通過して、車両後方を照射する。
なお、図2中において、上述した反射光α5,α6は、車両用灯具10の下側LED光源15に基づいて説明したが、上側LED光源15についての各反射光の説明は上下対称の経路をたどるので省略する。
【0040】
上述した本実施形態の車両用灯具10によれば、LED光源15からの出射光の内、LED光源15から第2リフレクタ17の反射面全体に向けて出射される出射光の出射角度の積分値は、第1リフレクタ16の反射面29全体に出射される出射角度の積分値よりも大きい。また、第2リフレクタ17の各反射部30,31,32は、反射光α2,α3,α4の殆どが第3リフレクタ18の反射面33に集光されるように反射角度が設定されている。
これにより、第3リフレクタ18の反射面33に集光された反射光α2,α3,α4は、拡散光に変換されて前面レンズ12およびカバーレンズ23を通過して、前方に拡散照射される。したがって、車両用灯具10の正面から外れた上下及び左右を含む広角度領域(斜め方向も含む)から見た際も灯具は明るく、広範囲に均一な光を照射させることができる。よって、LED光源15を傾けることなく、光源からの出射光を効率良く利用することができ、発光面積を増やすことができる。
【0041】
また、前面レンズ12の周縁部のレンズステップ35によりLED光源15から直接出射される出射光の一部が前方に拡散して照射される。したがって、LED光源15からの出射光を一層効率良く利用することができる。
【0042】
また、LED光源15からの出射光は、第2リフレクタ17の複数に分割された反射部30,31,32によりそれぞれ異なる反射角度で反射されて、第3リフレクタ18の反射面33に集光される。したがって、第2リフレクタ17の反射面全体で受ける出射光を第3リフレクタ18に向けて効率良く集光させることができる。また、第2リフレクタ全体のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
また、第3リフレクタ18に集光された反射光α2,α3,α4は、反射面33のシボ加工により拡散されて照射される。したがって、第3リフレクタ18で乱反射させることにより、第3リフレクタ18での反射光は眩しさが低減され、帯状で均一な柔らかい反射光を照射することができる。
【0044】
また、ダミー部34は光源用回路基板28を隠す基台部材26とともに前方から視認されずに、意匠面で良好にできる。なお、第3リフレクタ18と基台部材26は一体部品として構成しても良い。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、上述した実施形態ではカバーレンズ23を設定しているが、他の実施形態として、カバーレンズ23を設定しないで、前面レンズ12が外界と接する構造とすることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 車両用灯具
11 ランプボディ
12 前面レンズ
13 開口部(前方開口部)
14 灯室
15 LED光源(光源)
16 第1リフレクタ
17 第2リフレクタ
18 第3リフレクタ
28 光源用回路基板(基板)
30 第1反射部(反射面)
31 第2反射部(反射面)
32 第3反射部(反射面)
34 ダミー部
35 レンズステップ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方が開口したランプボディとその前方開口部に取り付けられた前面レンズとで形成された灯室内に、
光源と、
該光源からの出射光の一部を前方に反射させる第1リフレクタと、
該第1リフレクタより前方に配置され、前記光源からの出射光の一部を反射させる第2リフレクタと、
該第2リフレクタからの反射光を前方に反射させる第3リフレクタと、
を備えた車両用灯具であって、
前記光源から前記第2リフレクタの反射面全体に出射される出射角度の積分値は、前記光源から前記第1リフレクタの反射面全体に出射される出射角度の積分値よりも大きく、
前記第2リフレクタの反射光は、全体の殆どが前記第3リフレクタの反射面に集光されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記前面レンズの周縁部に、レンズステップを形成して、前記光源から直接出射される出射光の一部を、前記レンズステップを介して前方に照射することを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第2リフレクタは、複数の領域に分割されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第3リフレクタの反射面は、シボ加工されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第3リフレクタは、光源を搭載する基板を視認させなくするダミー部を形成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用灯具。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−244833(P2010−244833A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91964(P2009−91964)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】