説明

車両用照明灯具

【課題】前端開口部を有するランプボディに対して、灯具ユニット構造体がエイミング機構を介して傾動可能に支持されてなる車両用照明灯具において、灯具点灯に伴うランプボディの熱変形による光軸ずれの発生を効果的に抑制する。
【解決手段】ランプボディ12における周面壁12Aと後面壁12Bとを接続するコーナ部12Cの肉厚を、各エイミング用軸部材62A、62B、62Cの後端部を支持する支持部12Baの近傍に位置する支持部近傍領域12Caにおいて、それ以外の領域よりも大きい値に設定する。これにより、ランプボディ12の剛性を各支持部12Baにおいて他の部分よりも高める。そして、灯具点灯に伴うランプボディ12の熱変形を、各支持部12Ba以外の部分では許容しつつ、この熱変形の影響が各支持部12Baに及んで、各エイミング用軸部材62A、62B、62Cが下向きに傾斜して光軸ずれが発生してしまうのを効果的に抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、前端開口部を有するランプボディに対して、灯具ユニット構造体がエイミング機構を介して傾動可能に支持されてなる車両用照明灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用照明灯具の多くは、例えば「特許文献1」に記載されているように、前端開口部を有するランプボディに対して、灯具ユニット構造体がエイミング機構を介して傾動可能に支持された構成となっている。
【0003】
その際、エイミング機構の多くは、上記「特許文献1」にも記載されているように、ランプボディの周面壁の近傍において前後方向に延びる複数のエイミング用軸部材を備えた構成となっており、これら各エイミング用軸部材は、その後端部がランプボディの後面壁に支持されるとともにその前端部が灯具ユニット構造体に連結された構成となっている。
【0004】
そして、このようなエイミング機構を備えた車両用照明灯具においては、複数のエイミング用軸部材を適宜操作することにより、エイミング(すなわち光軸調整)を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−233107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなエイミング機構を備えた車両用照明灯具においては、ランプボディに対して灯具ユニット構造体が複数のエイミング用軸部材を介して片持ち状態で支持されているので、適正なエイミングを行っても、その後の灯具点灯に伴ってランプボディに熱変形が生じてしまい、これにより光軸が所期の方向からずれてしまう、という問題がある。
【0007】
これに対し、ランプボディの基本肉厚を増大させれば、ランプボディの熱変形を多少生じにくくすることはできるが、その効果はかなり限定的である。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、前端開口部を有するランプボディに対して、灯具ユニット構造体がエイミング機構を介して傾動可能に支持されてなる車両用照明灯具において、灯具点灯に伴うランプボディの熱変形による光軸ずれの発生を効果的に抑制することができる車両用照明灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、ランプボディの全体ではなく特定の部位のみを部分的に厚肉にすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0010】
すなわち、本願発明に係る車両用照明灯具は、
前端開口部を有するランプボディに対して、灯具ユニット構造体がエイミング機構を介して傾動可能に支持されてなる車両用照明灯具において、
上記エイミング機構は、上記ランプボディの周面壁の近傍において前後方向に延びる複数のエイミング用軸部材を備えており、
上記各エイミング用軸部材は、後端部が上記ランプボディの後面壁に支持されるとともに前端部が上記灯具ユニット構造体に連結されており、
上記ランプボディは、上記周面壁と上記後面壁とを接続するコーナ部の肉厚が、上記各エイミング用軸部材の後端部を支持する支持部の近傍に位置する支持部近傍領域において、該支持部近傍領域以外の領域よりも大きい値に設定されている、ことを特徴とするものである。
【0011】
上記「灯具ユニット構造体」とは、少なくとも1つの灯具ユニットを有する構造体を意味するものであって、単一の灯具ユニット自体、あるいは、単一または複数の灯具ユニットがユニット支持部材に支持された構成等がこれに該当する。
【0012】
上記「エイミング用軸部材」は、エイミングに用いられる軸部材を意味するものであって、エイミングスクリュウやエイミングロッド等がこれに該当する。
【発明の効果】
【0013】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用照明灯具は、前端開口部を有するランプボディに対して、灯具ユニット構造体がエイミング機構を介して傾動可能に支持された構成となっているが、その際、エイミング機構は、ランプボディの周面壁の近傍において前後方向に延びる複数のエイミング用軸部材を備えており、そして、これら各エイミング用軸部材は、その後端部がランプボディの後面壁に支持されるとともにその前端部が灯具ユニット構造体に連結されており、また、ランプボディは、その周面壁と後面壁とを接続するコーナ部の肉厚が、各エイミング用軸部材の後端部を支持する支持部の近傍に位置する支持部近傍領域において、それ以外の領域よりも大きい値に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0014】
すなわち、本願発明に係る車両用照明灯具のように、ランプボディに対して灯具ユニット構造体が複数のエイミング用軸部材を介して片持ち状態で支持された灯具構成においては、適正なエイミングを行っても、その後の灯具点灯により、ランプボディが熱変形しようとする。その際、ランプボディには、その周面壁と後面壁とを接続するコーナ部に熱応力が集中しやすく、特に、このコーナ部のうち、各エイミング用軸部材の後端部を支持する支持部の近傍に位置する支持部近傍領域において顕著なものとなる。このため、各支持部には、灯具ユニット構造体からの荷重による倒れが発生しやすくなり、これにより各エイミング用軸部材が下向きに傾斜して光軸ずれが発生しやすくなる。
【0015】
その点、本願発明においては、ランプボディにおける周面壁と後面壁とを接続するコーナ部の肉厚が、各支持部の近傍に位置する支持部近傍領域において、それ以外の領域よりも大きい値に設定されているので、ランプボディの剛性を各支持部において他の部分よりも高めることができる。そしてこれにより、ランプボディの熱変形を、各支持部以外の部分では許容しつつ、この熱変形の影響が各支持部に及んでしまうのを効果的に抑制することができる。
【0016】
その際、仮に上記コーナ部を全周にわたって厚肉にした場合には、ランプボディ全体としての剛性は高くなるが、熱変形がランプボディ全体に拡散してしまうので、その影響が各支持部にも及んでしまうこととなる。これに対し、本願発明のように、各支持部の剛性を相対的に高めることにより、各支持部以外の部分での熱変形を許容しつつ、各支持部への熱変形の影響を効果的に抑制することができる。
【0017】
このように本願発明によれば、前端開口部を有するランプボディに対して、灯具ユニット構造体がエイミング機構を介して傾動可能に支持されてなる車両用照明灯具において、灯具点灯に伴うランプボディの熱変形による光軸ずれの発生を効果的に抑制することができる。そしてこれにより、光軸調整を常に適正な状態に維持して、車両前方の視認性を十分に確保することができる。
【0018】
しかも、このような作用効果を、ランプボディの基本肉厚を増大させるようにした場合に比して、ランプボディの重量増大およびコストアップを大幅に抑えた上で得ることができる。
【0019】
また、ランプボディの構成として、上記コーナ部における各支持部近傍領域の肉厚を大きい値に設定しなくても、ランプボディの熱変形のおそれがない構成を有している場合には、これら各支持部近傍領域の肉厚を大きい値に設定することによって各支持部の剛性が高くなった分だけ、ランプボディの基本肉厚を薄くすることも可能である。
【0020】
ところで、上記コーナ部における各支持部近傍領域の肉厚を大きい値に設定することは、ランプボディを成形するための金型の完成後においても、この金型の表面の一部を削るだけの簡単な作業により行うことができる。したがって、車両用照明灯具の量産開始後においても、簡単な金型修正作業により光軸ずれ対策を図ることができる。
【0021】
上記構成において、ランプボディの周面壁の肉厚が、上記コーナ部の各支持部近傍領域から前方へ向けて延びる第1領域において、それ以外の領域よりも大きい値に設定された構成とすれば、各支持部近傍領域と各第1領域とで連続した高剛性部分が形成されるように構成することができる。そしてこれにより、各支持部への熱変形の影響をさらに小さくして、光軸ずれの発生を一層効果的に抑制することができる。
【0022】
上記構成において、ランプボディの後面壁の肉厚が、各支持部およびこれら各支持部を繋ぐようにして上記コーナ部に沿って延びる第2領域において、それ以外の領域よりも大きい値に設定された構成とすれば、これら各支持部および各第2領域により高剛性のブラケットとしての機能を持たせることができる。したがって、これら各支持部および各第2領域への熱変形の影響を相対的に小さくして、各支持部相互間の距離変化を最小限に抑えることができ、また、各支持部の向きを揃えた状態に維持することも容易に可能となる。そしてこれにより、光軸ずれの発生を一層効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明の一実施形態に係る車両用照明灯具を示す正面図
【図2】図1のII−II線断面図
【図3】図1のIII−III線断面斜視図
【図4】図2のIV部詳細図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用照明灯具を示す正面図であり、図2は、そのII−II線断面図である。
【0026】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用照明灯具10は、車両の前端部に設けられるヘッドランプであって、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、第1および第2灯具ユニット30、40を有する灯具ユニット構造体20が、エイミング機構60を介してランプボディ12に傾動可能に支持された構成となっている。
【0027】
そして、この車両用照明灯具10においては、第2灯具ユニット40からの照射光により、ロービーム用配光パターンを形成するとともに、この第2灯具ユニット40からの照射光に第1灯具ユニット30からの照射光を追加することにより、ハイビーム用配光パターンを形成するようになっている。
【0028】
その際、第1灯具ユニット30は、その光軸Ax1上に配置された光源バルブ32と、この光源バルブ32からの光を前方へ反射させるリフレクタ34とを備えたパラボラ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0029】
一方、第2灯具ユニット40は、その光軸Ax2上に配置された光源バルブ42と、この光源バルブ42からの光を前方へ反射させるリフレクタ44と、このリフレクタ44の前方に配置された投影レンズ46と、この投影レンズ46とリフレクタ44とを連結するホルダ48と、このホルダ48と一体的に形成されたシェード50とを備えたプロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0030】
ランプボディ12は、灯具正面視において横長矩形状に形成されている。そして、上記灯室内におけるランプボディ12の前端開口部の近傍には、第1および第2灯具ユニット30、40を囲むように形成されたエクステンションパネル16が設けられている。
【0031】
図3は、図1のIII−III線断面斜視図であって、透光カバー14およびエクステンションパネル16ならびに第1および第2灯具ユニット30、40の光源バルブ32、42を省略するとともに、ランプボディ12の後端部も省略して示す図である。
【0032】
同図にも示すように、灯具ユニット構造体20は、第1および第2灯具ユニット30、40が、車幅方向に所定間隔をおいて配置された状態で、プレート状のユニット支持部材22に支持された構成となっている。そして、この灯具ユニット構造体20は、ランプボディ12に対して、エイミング機構60を介して上下方向および左右方向に傾動可能に支持されている。
【0033】
このエイミング機構60は、ランプボディ12の周面壁12Aの近傍において前後方向に延びる3本のエイミング用軸部材62A、62B、62Cを備えた構成となっている。
【0034】
これら3本のエイミング用軸部材62A、62B、62Cは、灯具正面視において、ランプボディ12の左上コーナ部の近傍にエイミング用軸部材62Aが配置されており、ランプボディ12の左下コーナ部の近傍にエイミング用軸部材62Bが配置されており、ランプボディ12の右上コーナ部の近傍にエイミング用軸部材62Cが配置されている。その際、エイミング用軸部材62Aに対して、エイミング用軸部材62Bは、その略真下に位置しており、エイミング用軸部材62Cは、その略真横に位置している。
【0035】
これら各エイミング用軸部材62A、62B、62Cは、後端部がランプボディ12の後面壁12Bに支持されるとともに前端部が灯具ユニット構造体20のユニット支持部材22に連結されている。具体的には、これら各エイミング用軸部材62A、62B、62Cは、その後端部に六角のネジ頭部62aが形成されるとともにその略前半部にネジ切り部62bが形成されたエイミングスクリュウとして構成されている。そして、これら各エイミング用軸部材62A、62B、62Cは、ランプボディ12の後面壁12Bにその後方側から挿入された状態で、そのネジ頭部62aと後面壁12Bの前方側からガスケット64を介して圧入された固定用リング66とで後面壁12Bを挟み込むことにより、後面壁12Bに支持されるようになっている。
【0036】
灯具ユニット構造体20のユニット支持部材22には、第1および第2灯具ユニット30、40を挿通させるための開口部22a、22bが形成されている。また、このユニット支持部材22には、その外周縁部における各エイミング用軸部材62A、62B、62Cと対応する位置に、エイミングナット68がそれぞれ装着されている。
【0037】
そして、これら各エイミングナット68に各エイミング用軸部材62A、62B、62Cのネジ切り部62bを螺合させることにより、灯具ユニット構造体20が、ランプボディ12に対して、エイミング機構60を介して片持ち状態で支持されるようになっている。
【0038】
また、これら各エイミング用軸部材62A、62B、62Cを適宜回転させて各エイミングナット68の位置を前後方向に移動させることにより、灯具ユニット構造体20を上下方向あるいは左右方向に傾動させるようになっている。
【0039】
その際、灯具ユニット構造体20をランプボディ12に組み付ける際には、3本のエイミング用軸部材62A、62B、62Cがいずれも操作されることとなるが、組付け後のエイミングの際には、エイミング用軸部材62Bの操作により、灯具ユニット構造体20を上下方向に傾動させるとともに、エイミング用軸部材62Cの操作により、灯具ユニット構造体20を左右方向に傾動させるようになっている。
【0040】
ランプボディ12は、一定の基本肉厚で形成されているが、その一部の領域においては、基本肉厚よりも厚い肉厚で形成されている。
【0041】
すなわち、このランプボディ12において、その周面壁12Aと後面壁12Bとを接続するコーナ部12Cの肉厚は、各支持部12Baの近傍に位置する支持部近傍領域12Caにおいて、コーナ部12Cにおける他の領域よりも大きい値に設定されている。その際、各支持部近傍領域12Caは、コーナ部12Cにおける他の領域よりもランプボディ12の内面側に膨らむようにして形成されている。
【0042】
図4は、図2のIV部詳細図である。
【0043】
同図にも示すように、ランプボディ12のコーナ部12Cにおける各支持部近傍領域12Caは、灯具前後方向の断面内において、その肉厚が滑らかに変化するように形成されている。すなわち、これら各支持部近傍領域12Caは、周面壁12Aの内面の仮想延長面と後面壁12Bの内面の仮想延長面との交線へ向けて、その肉厚が徐々に増大するように形成されている。
【0044】
また、このランプボディ12の周面壁12Aにおいて、各支持部近傍領域12Caから前方へ向けて帯状に延びる第1領域12Aaの肉厚は、周面壁12Aにおける他の領域の肉厚よりも大きい値に設定されている。
【0045】
その際、周面壁12Aは、これら各第1領域12Aaにおいて、他の領域よりも外面側に突出するように形成されている。そして、これら各第1領域12Aaは、周面壁12Aにおける上面壁または下面壁からその側面壁へ回り込むようにして形成されている。
【0046】
さらに、このランプボディ12の後面壁12Bにおいて、各エイミング用軸部材62A、62B、62Cの後端部を支持する支持部12Baの肉厚、および、これら各支持部12Baを繋ぐようにしてコーナ部12Cに沿って帯状に延びる第2領域12Bb1、12Bb2の肉厚は、後面壁12Bにおける他の領域の肉厚よりも大きい値に設定されている。
【0047】
その際、後面壁12Bは、これら各支持部12Baおよび各第2領域12Bb1、12Bb2において、他の領域よりも外面側(すなわち後面側)に突出するようにして形成されている。また、エイミング用軸部材62A、62Bの各支持部12Baを連結する第2領域12Bb1と、エイミング用軸部材62A、62Cの各支持部12Baを連結する第2領域12Bb2とは、逆L字形の配置で形成されているが、その接続部分の内側には、筋交い状の補強部12Bcが、後面壁12Bの外面側に突出するようにして形成されている。
【0048】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0049】
本実施形態に係る車両用照明灯具10は、前端開口部を有するランプボディ12に対して、灯具ユニット構造体20がエイミング機構60を介して傾動可能に支持された構成となっているが、その際、エイミング機構60は、ランプボディ12の周面壁12Aの近傍において前後方向に延びる複数のエイミング用軸部材62A、62B、62Cを備えており、そして、これら各エイミング用軸部材62A、62B、62Cは、その後端部がランプボディ12の後面壁12Bに支持されるとともにその前端部が灯具ユニット構造体20に連結されており、また、ランプボディ12は、その周面壁12Aと後面壁12Bとを接続するコーナ部12Cの肉厚が、各エイミング用軸部材62A、62B、62Cの後端部を支持する支持部12Baの近傍に位置する支持部近傍領域12Caにおいて、それ以外の領域よりも大きい値に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0050】
すなわち、本実施形態に係る車両用照明灯具10のように、ランプボディ12に対して灯具ユニット構造体20が複数のエイミング用軸部材62A、62B、62Cを介して片持ち状態で支持された灯具構成においては、適正なエイミングを行っても、その後の灯具点灯により、ランプボディ12が熱変形しようとする。その際、ランプボディ12には、その周面壁12Aと後面壁12Bとを接続するコーナ部12Cに熱応力が集中しやすく、特に、このコーナ部12Cのうち、各エイミング用軸部材62A、62B、62Cの後端部を支持する支持部12Baの近傍に位置する支持部近傍領域12Caにおいて顕著なものとなる。このため、各支持部12Baには、灯具ユニット構造体20からの荷重による倒れが発生しやすくなり、これにより各エイミング用軸部材62A、62B、62Cが下向きに傾斜して、光軸ずれ(すなわち第1および第2灯具ユニット30、40の光軸Ax1、Ax2が所期の方向からずれてしまうこと)が発生しやすくなる。
【0051】
その点、本実施形態においては、ランプボディ12における周面壁12Aと後面壁12Bとを接続するコーナ部12Cの肉厚が、各支持部12Baの近傍に位置する支持部近傍領域12Caにおいて、それ以外の領域よりも大きい値に設定されているので、ランプボディ12の剛性を各支持部12Baにおいて他の部分よりも高めることができる。そしてこれにより、ランプボディ12の熱変形を、各支持部12Ba以外の部分では許容しつつ、この熱変形の影響が各支持部12Baに及んでしまうのを効果的に抑制することができる。
【0052】
その際、仮に上記コーナ部12Cを全周にわたって厚肉にした場合には、ランプボディ12全体としての剛性は高くなるが、熱変形がランプボディ12全体に拡散してしまうので、その影響が各支持部12Baにも及んでしまうこととなる。これに対し、本実施形態のように、各支持部12Baの剛性を相対的に高めることにより、各支持部12Ba以外の部分での熱変形を許容しつつ、各支持部12Baへの熱変形の影響を効果的に抑制することができる。
【0053】
このように本実施形態によれば、前端開口部を有するランプボディ12に対して、灯具ユニット構造体20がエイミング機構60を介して傾動可能に支持されてなる車両用照明灯具10において、灯具点灯に伴うランプボディ12の熱変形による光軸ずれの発生を効果的に抑制することができる。そしてこれにより、光軸調整を常に適正な状態に維持して、車両前方の視認性を十分に確保することができる。
【0054】
しかも、このような作用効果を、ランプボディ12の基本肉厚を増大させるようにした場合に比して、ランプボディ12の重量増大およびコストアップを大幅に抑えた上で得ることができる。
【0055】
特に、本実施形態に係る車両用照明灯具10は、ランプボディ12に片持ち支持された灯具ユニット構造体20が、前端部に重量の大きい投影レンズ46が配置されたプロジェクタ型の第2灯具ユニット40を有しており、ランプボディ12に大きなモーメント荷重が作用して熱変形が生じやすい灯具構成となっているので、本実施形態の構成を採用することが効果的である。
【0056】
また、ランプボディ12の構成として、上記コーナ部12Cにおける各支持部近傍領域12Caの肉厚を大きい値に設定しなくても、ランプボディ12の熱変形のおそれがない構成を有している場合には、これら各支持部近傍領域12Caの肉厚を大きい値に設定することによって各支持部12Baの剛性が高くなった分だけ、ランプボディ12の基本肉厚を薄くすることも可能である。
【0057】
ところで、本実施形態のように、コーナ部12Cにおける各支持部近傍領域12Caの肉厚を大きい値に設定することは、ランプボディ12を成形するための金型の完成後においても、この金型の表面の一部を削るだけの簡単な作業により行うことができる。したがって、車両用照明灯具10の量産開始後においても、簡単な金型修正作業により光軸ずれ対策を図ることができる。
【0058】
本実施形態においては、各支持部近傍領域12Caが、灯具前後方向の断面内において、その肉厚が滑らかに変化するように形成されているので、各支持部12Baの近傍において周面壁12Aと後面壁12Bとの強度の連続性を高めることができる。そしてこれにより、ランプボディ12の熱変形の抑制効果をさらに高めることができる。
【0059】
また、本実施形態においては、ランプボディ12の周面壁12Aの肉厚が、そのコーナ部12Cの各支持部近傍領域12Caから前方へ向けて延びる第1領域12Aaにおいて、それ以外の領域よりも大きい値に設定されているので、各支持部近傍領域12Caと各第1領域12Aaとで連続した高剛性部分が形成されるように構成することができる。そしてこれにより、各支持部12Baへの熱変形の影響をさらに小さくして、光軸ずれの発生を一層効果的に抑制することができる。
【0060】
その際、本実施形態においては、各第1領域12Aaが、周面壁12Aにおける上面壁または下面壁からその側面壁へ回り込むようにして形成されているので、各支持部12Baの近傍における周面壁12Aと後面壁12Bとの強度の連続性を十分高めることができる。
【0061】
さらに、本実施形態においては、ランプボディ12の後面壁12Bの肉厚が、各支持部12Baおよびこれら各支持部12Baを繋ぐようにしてコーナ部12Cに沿って延びる第2領域12Bb1、12Bb2において、それ以外の領域よりも大きい値に設定されているので、これら各支持部12Baおよび各第2領域12Bb1、12Bb2により高剛性のブラケットとしての機能を持たせることができる。したがって、これら各支持部12Baおよび各第2領域12Bb1、12Bb2への熱変形の影響を相対的に小さくして、各支持部12Ba相互間の距離変化を最小限に抑えることができ、また、各支持部12Baの向きを揃えた状態に維持することも容易に可能となる。そしてこれにより、光軸ずれの発生を一層効果的に抑制することができる。
【0062】
その際、逆L字形の配置で形成された第2領域12Bb1と第2領域12Bb2との接続部分の内側には、筋交い状の補強部12Bcが形成されているので、高剛性のブラケットとしての機能を一層高めることができる。
【0063】
しかも、本実施形態においては、各第1領域12Aaが周面壁12Aの外面側に突出するように形成されており、また、各第2領域12Bb1、12Bb2および補強部12Bcが後面壁12Bの外面側に突出するように形成されているので、その突出分だけランプボディ12の外面の表面積を増大させて放熱効果を高めることができる。したがってこの点においても、ランプボディ12の熱変形の抑制効果を高めることができる。
【0064】
上記実施形態においては、3本のエイミング用軸部材62A、62B、62Cが、いずれもエイミングスクリュウとして構成されているものとして説明したが、エイミングの際に操作されないエイミング用軸部材62Aについては、これを前端部にピボット部が形成されたエイミングロッドとして構成することも可能である。
【0065】
上記実施形態においては、各第1領域12Aaが、周面壁12Aにおける上面壁または下面壁からその側面壁へ回り込むようにして形成されているものとして説明したが、これら各第1領域12Aaが、周面壁12Aにおける上面壁または下面壁にのみ形成された構成、あるいは、その側面壁にのみ形成された構成とすることも可能である。
【0066】
上記実施形態においては、ランプボディ12が、灯具正面視において横長矩形状に形成されているものとして説明したが、これ以外の形状に形成されている場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
なお、上記実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0068】
10 車両用照明灯具
12 ランプボディ
12A 周面壁
12Aa 第1領域
12B 後面壁
12Ba 支持部
12Bb1、12Bb2 第2領域
12Bc 補強部
12C コーナ部
12Ca 支持部近傍領域
14 透光カバー
16 エクステンションパネル
20 灯具ユニット構造体
22 ユニット支持部材
22a、22b 開口部
30 第1灯具ユニット
32、42 光源バルブ
34、44 リフレクタ
40 第2灯具ユニット
46 投影レンズ
48 ホルダ
50 シェード
60 エイミング機構
62A、62B、62C エイミング用軸部材
62a ネジ頭部
62b ネジ切り部
64 ガスケット
66 固定用リング
68 エイミングナット
Ax1、Ax2 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端開口部を有するランプボディに対して、灯具ユニット構造体がエイミング機構を介して傾動可能に支持されてなる車両用照明灯具において、
上記エイミング機構は、上記ランプボディの周面壁の近傍において前後方向に延びる複数のエイミング用軸部材を備えており、
上記各エイミング用軸部材は、後端部が上記ランプボディの後面壁に支持されるとともに前端部が上記灯具ユニット構造体に連結されており、
上記ランプボディは、上記周面壁と上記後面壁とを接続するコーナ部の肉厚が、上記各エイミング用軸部材の後端部を支持する支持部の近傍に位置する支持部近傍領域において、該支持部近傍領域以外の領域よりも大きい値に設定されている、ことを特徴とする車両用照明灯具。
【請求項2】
上記周面壁の肉厚が、上記各支持部近傍領域から前方へ向けて延びる第1領域において、該第1領域以外の領域よりも大きい値に設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用照明灯具。
【請求項3】
上記後面壁の肉厚が、上記各支持部およびこれら各支持部を繋ぐようにして上記コーナ部に沿って延びる第2領域において、該支持部および該第2領域以外の領域よりも大きい値に設定されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用照明灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−104259(P2012−104259A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249437(P2010−249437)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】