説明

車両用照明装置

【課題】車室内における所望の範囲にスポット状の光を精度良く照射することができる車両用照明装置を提供すること。
【解決手段】照明装置3は、LED球(光源)43と、LED球43から発せられた光6を通過させる絞り孔451を設けた絞り部45と、絞り部45の絞り孔451を通過した光6を入射させて集光する集光レンズ46と、集光レンズ46を収容する開口孔53を設けた本体パネル(本体板部)51とを有する。照明装置3は、LED球43から発せられた光6が絞り孔451を通過し、集光レンズ46に入射して集光され、本体パネル51の車室側の表面511に反射することなく、車室10内における所望の範囲にスポット状に照射されるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内における所望の範囲を照らす車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、様々な照明装置が設けられている。例えば、車室内を照らすルームランプや、地図等を見るときに座席を個別に照らすマップランプ等の照明装置がある(特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、最近では、車両の天井部に設けられたマップランプ等に内蔵され、シフトノブ付近等の特定の範囲をスポット状に照らし、インテリアとして高級感を演出するイルミネーション用の照明装置もある。
例えば、図6に示すごとく、イルミネーション用の照明装置93は、LED球等の光源943から発せられた光6が本体パネル951の開口孔953を通過し、直接、車室10内のシフトノブ付近等の所望の範囲にスポット状に照射されるよう構成されていた。
【0004】
【特許文献1】特開平6−278530号公報
【特許文献2】特開2003−95016号公報
【特許文献3】特開2006−123794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6に示すごとく、上記構造の照明装置93では、LED球等の光源943から発せられた光6を開口孔953に通過させてそのまま車室10内に照射するため、光量が不十分でシフトノブやその周辺のパネル表示等の識別が困難であり、光6の照射範囲も境界がはっきりしないものであった。また、開口孔953を通過した光6が本体パネル951の開口孔953周辺に反射・散乱することにより、余分な光が乗員の目に入って目障りとなることがあった。また、光源943を取り付ける際には、光6を照射する方向によって光源943の位置・向き等を調整しなければならず、非常に面倒であった。
【0006】
本発明では、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、車室内における所望の範囲にスポット状の光を精度良く照射することができる車両用照明装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光源と、
該光源から発せられた光を通過させる絞り孔を設けた絞り部と、
該絞り部の上記絞り孔を通過した光を入射させて集光する集光レンズと、
該集光レンズを収容する開口孔を設けた本体板部とを有し、
上記光源から発せられた光が上記絞り孔を通過し、上記集光レンズに入射して集光され、上記本体板部の車室側の表面に反射することなく、車室内における所望の範囲にスポット状に照射されるよう構成されていることを特徴とする車両用照明装置にある(請求項1)。
【0008】
本発明の車両用照明装置において、上記光源と上記集光レンズとの間には、上記絞り孔を有する上記絞り部が設けられている。そして、上記光源から発せられた光を上記絞り孔に通過させることにより、上記集光レンズの所望の領域にのみ光が届くように、上記光源からの光を絞って進行範囲をコントロールすることができる。そのため、上記絞り孔から上記集光レンズを通過して車室内にスポット状に照射される光の進行範囲も容易にコントロールすることができる。これにより、車室内における所望の範囲にスポット状の光を精度良く照射することができる。
【0009】
また、車室内に照射されるスポット状の光は、上記本体板部の車室側の表面に反射することがない。すなわち、上記本体板部における上記開口孔周辺に光が反射・散乱することがないため、車室内における所望の範囲のみにスポット状の光を照射することができる。これにより、余分な光が乗員の目に入って目障りとなったりすることを防止することができる。
【0010】
また、上述のごとく、上記光源から発せられた光を上記絞り孔に通過させることにより、上記集光レンズを通過した後の光の進行範囲をも容易にコントロールすることができる。そのため、上記光源を取り付ける際に、該光源からの光が上記絞り孔を適切に通過するようになっていれば、その位置・向き等にこだわらず取り付けることができる。すなわち、従来のように、光の照射方向等に合わせて上記光源を取り付ける位置・向き等を調整する必要がない。これにより、上記光源の取り付け作業性を向上させることができると共に、低コストで簡易な構造とすることが可能となる。
【0011】
このように、本発明によれば、車室内における所望の範囲にスポット状の光を精度良く照射することができる車両用照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、上記絞り部は、上記光源から発せられた光が上記絞り孔を適切に通過し、その通過した光が上記集光レンズの所望の領域に効率よく入射されるように設けておく。
また、上記集光レンズは、入射された光を効率よく集光し、車室内における所望の範囲にスポット状に照射することができるよう、その形状、取り付ける位置・向き等を調整しておくことが必要である。
【0013】
また、上記本体板部は、車室側とは反対側に凹んで形成され、内壁面底部に上記開口孔を設けた凹部を有し、
上記照明装置は、上記光源から発せられた光が上記絞り孔を通過し、上記集光レンズに入射されて集光した後、上記本体板部の上記凹部の内壁面に反射することなく、車室内における所望の範囲にスポット状に照射されるよう構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0014】
この場合には、上記本体板部に上記凹部を設け、該凹部の内壁面底部に設けた上記開口孔に上記集光レンズを収容することにより、例えば、該集光レンズを乗員の位置から見えないようにすることができる。すなわち、照射される光の出所を乗員の位置から見えないようにすることができる。これにより、照射される光が乗員にとってより一層気にならないようにすることができる。
また、車室内に照射されるスポット状の光は、上記凹部の内壁面に反射することがない。これは、上述のごとく、上記絞り部を適切な位置に設け、上記集光レンズを通過する光の進行範囲を上記凹部の内壁面よりも内側の領域に制限することによって容易に実現できる。これにより、車室内の所望の範囲のみにスポット状の光を照射することができる。
【0015】
また、上記照明装置は、少なくともライト点灯中、常に、車室内における所望の範囲にスポット状の光が照射されるよう構成されていることが好ましい(請求項3)。
夜間等のライト点灯中は、余分な光が乗員の目に入ることが特に目障りとなる。そのため、スポット状の光を車室内における所望の範囲のみに照射することができ、照射される光が乗員にとって気にならないものにすることができるという本発明の効果をより一層発揮することができる。
なお、ライトを点灯していない場合でも、車室内における所望の範囲にスポット状の光が照射されるようにしてもよい。
【0016】
また、上記照明装置は、車室内におけるシフトノブ周辺にスポット状の光が照射されるよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、スポット状の光を車室内におけるシフトノブ周辺に照射することにより、例えば、シフトレバーの状態、シフトノブ周辺のパネル表示等の識別を容易にすることができる。また、照射された光がシフトノブに反射して光るように、シフトノブに装飾加工等を施しておけば、インテリアとして高級感を演出することもできる。
【0017】
また、上記光源としては、LED(発光ダイオード)を採用することができる(請求項5)。
この場合には、上記光源として電球等を用いた場合に比べて省電力で駆動でき、発熱量も小さく、小型化にも有利である。
【0018】
また、上記照明装置は、車室の天井部に配設されたマップランプユニットに内蔵されている構成とすることができる(請求項6)。
この場合には、上記マップランプユニットに、地図等を見るときに座席を個別に照らすという本来の機能に加えて上述した本発明の機能を持たせることができる。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例にかかる車両用照明装置について、図を用いて説明する。
本例の照明装置3は、図1〜図5に示すごとく、LED球(光源)43と、LED球43から発せられた光6を通過させる絞り孔451を設けた絞り部45と、絞り部45の絞り孔451を通過した光6を入射させて集光する集光レンズ46と、集光レンズ46を収容する開口孔53を設けた本体パネル(本体板部)51とを有する。
そして、照明装置3は、LED球43から発せられた光6が絞り孔451を通過し、集光レンズ46に入射して集光され、本体パネル51の車室側の表面511に反射することなく、車室10内における所望の範囲Hにスポット状に照射されるよう構成されている。
以下、これを詳説する。
【0020】
本例の照明装置3は、図1に示すごとく、車両1の天井部11に配設されたマップランプユニット2に内蔵されている。
マップランプユニット2は、車両1の天井部11に嵌め込まれるように取り付けられており、乗員7の頭上のやや前方に位置するように配置されている。マップランプユニット2の車室側は、板状の本体パネル51によって覆われている。なお、図1に示す乗員7は、車両1の前部座席に座る乗員を示している。
【0021】
図2に示すごとく、本体パネル51の前方には、小物入れ21が配設されている。また、本体パネル51の後方の左右両側には、マップランプ22が配設されている。また、両マップランプ22の間には、マップランプ22を操作する操作部23が配設されている。また、操作部23の前方側には、本例の照明装置3が配設されている。
【0022】
図3に示すごとく、照明装置3は、LED球43に接続される基板41を有している。基板41上には、光源保持部42が取り付けられている。光源保持部42の先端には、LED球43が保持されている。
また、光源保持部42には、筒状のレンズ保持部44が光源保持部42を覆うように取り付けられている。レンズ保持部44の先端には、集光レンズ46が保持されている。
【0023】
図4、図5に示すごとく、レンズ保持部44には、内周面441から突出形成された、絞り孔451を有する板状の絞り部45が設けられている。絞り部45は、光源保持部42に保持されたLED球43とレンズ保持部44に保持された集光レンズ46との間に位置するように設けられている。
そして、基板41と、基板41に取り付けられた光源保持部42と、光源保持部42に取り付けられたレンズ保持部44とは、これらが一体(図3)となって本体パネル51の車室側とは反対側(車外側)に組み付けられている。
【0024】
ここで、図5に示すごとく、絞り部45は、LED球43から発せられた光6が絞り孔451を適切に通過し、その通過した光6が集光レンズ46の所望の領域に入射されるように設けられている。
また、集光レンズ46は、入射面461と出射面462とを有する凸レンズ状になっている。入射面461及び出射面462は、いずれも凸状の湾曲面となっている。また、集光レンズ46は、入射された光6を効率よく集光し、車室10内における所望の範囲H(図1)にスポット状に照射することができるよう、その入射面461及び出射面462の形状、取り付ける位置・向き等が調整されている。
【0025】
また、図4、図5に示すごとく、本体パネル51には、車外側に凹んで形成された凹部52が設けられている。凹部52の内壁面521は、車室側に向かって徐々に内径が大きくなるようにテーパ状に形成されている。また、内壁面521の底部には、開口孔53が形成されている。開口孔53内には、レンズ保持部44に保持された集光レンズ46の一部が収容されている。集光レンズ46の出射面462は、開口孔53から車室側に露出している。
【0026】
次に、上記構成の照明装置3の動作について説明する。
まず、図5に示すごとく、車両1のライトを点灯させることにより、照明装置3のLED球43が点灯する。LED球43から発せられた光6は、その一部が絞り部45の絞り孔451を通過する。絞り孔451を通過して進行範囲がコントロールされた光6は、集光レンズ46の入射面461に入射される。集光レンズ46に入射された光6は、集光レンズ46の集光効果によって集光され、出射面462から車室10内へスポット状に照射される。
【0027】
そして、図1に示すごとく、スポット状の光6は、シフトレバー12の状態、シフトノブ13周辺のパネル表示等の識別が容易となるように、車室10内におけるシフトノブ13周辺に照射される。このとき、図5に示すごとく、スポット状の光6は、本体パネル51の車室側の表面511に反射することなく、すなわち凹部52の内壁面521に反射することなく、車室10内に照射される。
なお、本例の照明装置3は、ライト点灯中、常に、車室10内における所望の範囲Hにスポット状の光6が照射されるよう構成されている。
【0028】
本例の照明装置3における作用効果について説明する。
本例の照明装置3において、図5に示すごとく、LED球43と集光レンズ46との間には、絞り孔451を有する絞り部45が設けられている。そして、LED球43から発せられた光6を絞り孔451に通過させることにより、集光レンズ46の所望の領域にのみ光6が届くように、LED球43からの光6を絞って進行範囲をコントロールすることができる。そのため、絞り孔451から集光レンズ46を通過して車室10内にスポット状に照射される光6の進行範囲も容易にコントロールすることができる。これにより、図1に示すごとく、車室10内における所望の範囲Hにスポット状の光6を精度良く照射することができる。
【0029】
また、図5に示すごとく、車室10内に照射されるスポット状の光6は、本体パネル51の車室側の表面511に反射することがない。すなわち、本体パネル51における開口孔53周辺に光6が反射・散乱することがないため、車室10内における所望の範囲Hのみにスポット状の光6を照射することができる。これにより、余分な光が乗員7の目に入って目障りとなったりすることを防止することができる。
【0030】
また、図5に示すごとく、LED球43から発せられた光6を絞り孔451に通過させることにより、集光レンズ46を通過した後の光6の進行範囲をも容易にコントロールすることができる。そのため、LED球43を取り付ける際に、LED球からの光6が絞り孔451を適切に通過するようになっていれば、その位置・向き等にこだわらず取り付けることができる。すなわち、従来のように、光6の照射方向等に合わせてLED球(光源)43を取り付ける位置・向き等を調整する必要がない。これにより、LED球(光源)43の取り付け作業性を向上させることができると共に、低コストで簡易な構造とすることが可能となる。
【0031】
また、本例において、図4、図5に示すごとく、本体パネル51は、車外側に凹んで形成され、内壁面521の底部に開口孔53を設けた凹部52を有する。そのため、凹部52の内壁面521の底部に設けた開口孔53に集光レンズ46を収容することにより、集光レンズ46を乗員7の位置から見えないようにすることができる。すなわち、照射される光6の出所を乗員7の位置から見えないようにすることができる。これにより、照射される光6が乗員7にとってより一層気にならないようにすることができる。
【0032】
また、照明装置3は、ライト点灯中、常に、車室10内における所望の範囲Hにスポット状の光6が照射されるよう構成されている。夜間等のライト点灯中は、余分な光が乗員7の目に入ることが特に目障りとなる。そのため、スポット状の光6を車室10内における所望の範囲Hのみに照射することができ、余分な光が乗員7の目に入って目障りとなったりすることを防止することができるという本例の効果をより一層発揮することができる。
例えば、照明装置3は、夜間等におけるライト点灯時に、車室10内における所望の範囲Hを照らすように構成することもできる。
【0033】
また、図1に示すごとく、照明装置3は、車室10内におけるシフトノブ13周辺にスポット状の光6が照射されるよう構成されている。そのため、シフトレバー12の状態、シフトノブ13周辺のパネル表示等の識別を容易にすることができる。また、照射された光6がシフトノブ13に反射して光るように、シフトノブ13に装飾加工等を施しておけば、インテリアとして高級感を演出することもできる。
【0034】
また、図1に示すごとく、照明装置3は、車室10の天井部11に配設されたマップランプユニット2に内蔵されている。そのため、マップランプユニット2に、地図等を見るときに座席を個別に照らすという本来の機能に加えて上述した本例の機能を持たせることができる。
また、光源としては、LED球43を採用している。そのため、光源として電球等を用いた場合に比べて省電力で駆動でき、発熱量も小さく、小型化にも有利である。
【0035】
このように、本例の照明装置3によれば、車室10内における所望の範囲Hにスポット状の光6を精度良く照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例における、マップランプユニットに内蔵された照明装置を示す説明図。
【図2】実施例における、マップランプユニットを示す説明図。
【図3】実施例における、照明装置の構成の一部を示す説明図。
【図4】図2のA−A線断面図。
【図5】実施例における、照明装置の構造を示す説明図。
【図6】従来における、照明装置の構造を示す説明図。
【符号の説明】
【0037】
10 車室
3 照明装置
43 LED球(光源)
45 絞り部
451 絞り孔
46 集光レンズ
51 本体パネル(本体板部)
511 表面
53 開口孔
6 光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
該光源から発せられた光を通過させる絞り孔を設けた絞り部と、
該絞り部の上記絞り孔を通過した光を入射させて集光する集光レンズと、
該集光レンズを収容する開口孔を設けた本体板部とを有し、
上記光源から発せられた光が上記絞り孔を通過し、上記集光レンズに入射して集光され、上記本体板部の車室側の表面に反射することなく、車室内における所望の範囲にスポット状に照射されるよう構成されていることを特徴とする車両用照明装置。
【請求項2】
請求項1において、上記本体板部は、車室側とは反対側に凹んで形成され、内壁面底部に上記開口孔を設けた凹部を有し、
上記照明装置は、上記光源から発せられた光が上記絞り孔を通過し、上記集光レンズに入射されて集光した後、上記本体板部の上記凹部の内壁面に反射することなく、車室内における所望の範囲にスポット状に照射されるよう構成されていることを特徴とする車両用照明装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記照明装置は、少なくともライト点灯中、常に、車室内における所望の範囲にスポット状の光が照射されるよう構成されていることを特徴とする車両用照明装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記照明装置は、車室内におけるシフトノブ周辺にスポット状の光が照射されるよう構成されていることを特徴とする車両用照明装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記光源は、LED(発光ダイオード)であることを特徴とする車両用照明装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記照明装置は、車室の天井部に配設されたマップランプユニットに内蔵されていることを特徴とする車両用照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−173437(P2011−173437A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299202(P2008−299202)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】