説明

車両用熱伝導シートおよび電気接続箱

【課題】 電気接続箱の熱を車体に効率的に放熱するための車体用熱伝導シートを提供する。
【解決手段】 粘着層および非粘着層からなり、前記粘着層が、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する2枚の板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプの放熱側の端部に貼り付けられ、前記非粘着層が車体の一部に接触される車両用熱伝導シート。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用熱伝導シート、および、車両等の熱環境に厳しい部位に搭載される電気接続箱、特に、プリント基板と板型ヒートパイプの間に一方向のスリットを有する熱伝導絶縁シートを備えた電気接続箱に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、車両の快適性に対するニーズの高まりに伴い、車両に搭載される電装品は増加する傾向にある。具体的には、例えば、オーディオ、ナビゲーション、テレビ、電動アンテナ、エアコン、リヤウインドウヒータ、シートヒータ、パワーシート、サスペンションの硬さ制御装置等の様々な電装品が車両に搭載されるようになっている。
【0003】これらの電装品への電源供給は、エンジンルームのバッテリ近傍等に取り付けられた電気接続箱を経由して供給される。なお、電気接続箱には、ワイヤハーネスのボディとの短絡時やモータ等の負荷の故障時に車両火災の発生を阻止するヒューズや、運転席近傍の操作スイッチ等と連動して電装品への電源供給を制御するリレー等が搭載されている。
【0004】電気接続箱として一般的に知られているものは、例えば、特開昭59−2881号公報に開示されているように、銅板を打ち抜いて折り曲げたバスバーを互いに接触しないようにプラスチック板間にそれぞれ配置し、且つヒューズやリレーを取り付けた構造を有している。しかし、近年、投資コストの削減、製品の小型化や設計変更の容易化等の要請から、例えば、特開平2−17818号公報に開示されているように、バスバーの回路部の大部分を金属芯入りプリント基板で置換えた電気接続箱が提案されている。
【0005】
【発明が解決しょうとする課題】上述した金属芯入りプリント基板の断面構造は、図12に示すように、アルミニウム製のコア材31aと、コア材31aの表面を囲繞した絶縁層31bと、絶縁層上に所定の回路パターンとして形成された導電層31cと、絶縁層31bと導電層31cとに塗布されたレジスト31dからなっている。また、当該プリント基板31の所定位置にはスルーホール31hが形成され、基板の回路密度を向上させている。
【0006】このような金属芯入りプリント基板31は、リレーやヒューズ等の発熱電気部品を実装して実際に電流を流した場合に、従来のプリント基板のように基板上に不均一な熱分布を発生させることはないが、発熱電気部品を多数実装すると、熱が均一化して基板全体に蓄熱されていく。
【0007】金属芯入りプリント基板は均熱効果があるが、基板全体の平均温度が上昇する傾向があり、通電する配線パターンが増える場合には、基板の熱を放熱する手段が必要である。更に、金属板の板厚は、製造の容易性、コスト、重量、熱伝導性能の観点から0.5mmから2mmの範囲内で一般的に選択される。このように、金属芯の板厚が限定されると、例えば、プリント基板端部等からの部分的な熱引きでは放熱効果が不十分である。更に、電気接続箱の熱を車体に放熱させるために、放熱板を使用し、放熱板と車体とをボルトにより接続している。しかしながら、金属同士の接続は、熱抵抗が大きく、効率的な放熱が困難であり、更に、車体の振動によって、電気接続箱に高い負荷がかかる。
【0008】従って、この発明の目的は、上述した従来の問題点を解決して、金属芯入りプリント基板の発熱を筐体外に効率的に放熱する構造を有した電気接続箱を提供することにある。更に、この発明の別の目的は、電気接続箱の熱を車体に効率的に放熱するための車体用熱伝導シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、金属芯入りプリント基板のリード線の凸部との接触を避けるために、凸部に対応した凹部を密閉されたコンテナのそれぞれの面にプレス加工等によって形成した、板型ヒートパイプを用いることによって、金属芯入りプリント基板の発熱を筐体外に効率的に放熱する構造を有した電気接続箱を得ることができることが判明した。即ち、例えば、ヒートパイプの上下の両主面に、リード線の凸部との接触を避けるための、凸部に対応した凹部を形成することによって、ヒートパイプの両主面に金属芯入りプリント基板を当接させて、金属芯入りプリント基板の発熱をヒートパイプによって所定位置に移動し、効率的に放熱することができる。更に、プリント基板と板型ヒートパイプとの間に、電気部品端子凸部に対応する位置に一定方向のスリットを有する熱伝導絶縁シートを配置することによって、熱伝導絶縁シートの剛性を維持しつつ、基板面とヒートパイプの密着面を拡大することができ、放熱効果を高めることができることが判明した。
【0010】更に、粘着層および非粘着層からなる車両用熱伝導シートを用い、電気部品端子凸部との接触を避けるための凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する2枚の板材によって形成された、板型ヒートパイプの放熱側の端部に、粘着層を貼り付け、非粘着層を車体の一部に接触することによって、車体組み付け作業での位置決めを容易にすることができ、更に、車体とヒートパイプとを直接接続することによって起きる腐食を防止することができ、車体の振動によってヒートパイプへ高負荷がかからないようにすることができることが判明した。
【0011】この発明は、上述した研究結果に基づいてなされたものであって、この発明の車両用熱伝導シートの第1の態様は、粘着層および非粘着層からなり、前記粘着層が、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する2枚の板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプの放熱側の端部に貼り付けられ、前記非粘着層が車体の一部に接触される車両用熱伝導シートである。
【0012】この発明の車両用熱伝導シートの第2の態様は、前記非粘着層がアクリルゴムおよびアルミニウム熱伝導性フィラーからなっている、車両用熱伝導シートである。
【0013】この発明の車両用熱伝導シートの第3の態様は、前記非粘着層が非粘着性フィルム材からなっている、車両用熱伝導シートである。
【0014】この発明の車両用熱伝導シートのその他の態様は、前記非粘着層が非粘着性粉末からなっている、車両用熱伝導シートである。
【0015】この発明の車両用熱伝導シートのその他の態様は、前記熱伝導シートが電気絶縁性を備えている、車両用熱伝導シートである。
【0016】この発明の電気接続箱の第1の態様は、少なくとも1枚の金属芯入りプリント基板と、前記プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する2枚の板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプと、前記プリント基板と前記板型ヒートパイプとの間に配置される、前記電気部品端子凸部に対応する位置に一定方向のスリットを有する熱伝導絶縁シートとを備えた電気接続箱である。
【0017】この発明の電気接続箱の第2の態様は、少なくとも1枚の金属芯入りプリント基板と、前記プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子凸部に対応した凹部を一方の面に有する板材を、コンテナの少なくとも1つの主面に金属接合して、一体的に形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプと、前記プリント基板と前記板型ヒートパイプとの間に配置される、前記電気部品端子凸部に対応する位置に一方向のスリットを有する熱伝導絶縁シートとを筐体内に備えた電気接続箱である。
【0018】この発明の電気接続箱の第3の態様は、2枚の前記金属芯入りプリント基板を備えており、前記板型ヒートパイプの両面に備えられた前記凹部のそれぞれと、前記金属芯入りプリント基板との間に、前記熱伝導絶縁シートが設けられている、電気接続箱である。
【0019】この発明の電気接続箱の第4の態様は、前記熱伝導絶縁シートの前記スリットが、一方向に並行に設けられた複数の同一幅のスリットからなっており、前記電気部品端子凸部がそれぞれ対応する前記スリットを貫通し、前記凹部に接触することなく収容されている、電気接続箱である。
【0020】この発明の電気接続箱のその他の態様は、前記板型ヒートパイプが、前記凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する前記板材が、それぞれ、前記コンテナを形成する上板材および下板材である板型ヒートパイプからなっている電気接続箱である。
【0021】この発明の電気接続箱のその他の態様は、前記板型ヒートパイプが、前記コンテナに、所定のエンボス加工が施されている、板型ヒートパイプからなっている電気接続箱である。
【0022】この発明の電気接続箱のその他の態様は、前記板型ヒートパイプが、前記コンテナ内にウイックが設けられている、板型ヒートパイプからなっている電気接続箱である。
【0023】この発明の電気接続箱のその他の態様は、前記板材と前記ヒートパイプの前記コンテナが概ね同一幅および長さを有している、板型ヒートパイプを備えた電気接続箱である。
【0024】
【発明の実施の形態】この発明の車両用熱伝導シートおよび電気接続箱の態様について図面を参照しながら詳細に説明する。この発明の電気接続箱の1つの態様は、(a)少なくとも1枚の金属芯入りプリント基板と、(b)前記プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する2枚の板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプと、(c)前記プリント基板と前記板型ヒートパイプとの間に配置される、前記電気部品端子凸部に対応する位置に一定方向のスリットを有する熱伝導絶縁シートとを備えた電気接続箱である。
【0025】更に、この発明の電気接続箱の他の態様は、(a)少なくとも1枚の金属芯入りプリント基板と、(b)前記プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子凸部に対応した凹部を一方の面に有する板材を、コンテナの少なくとも1つの主面に金属接合して、一体的に形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプと、(c)前記プリント基板と前記板型ヒートパイプとの間に配置される、前記電気部品端子凸部に対応する位置に一方向のスリットを有する熱伝導絶縁シートとを筐体内に備えた電気接続箱である。
【0026】更に、この発明の電気接続箱は、2枚の前記金属芯入りプリント基板を備えており、前記板型ヒートパイプの両面に備えられた前記凹部のそれぞれと、前記前記金属芯入りプリント基板との間に、前記熱伝導絶縁シートが設けられている、電気接続箱である。
【0027】図8は、この発明の電気接続箱の1つの態様を示す図である。図8に示すように、この発明の電気接続箱においては、アッパーケース21、ロアケース22、アッパーカバー23、ロアカバー24からなる筐体に電気部品が実装された金属芯入りプリント基板5、15、板型ヒートパイプ10、および、熱伝導絶縁シート9が収容されている。板型ヒートパイプの放熱側の端部43には、(図示しない)車体との間の接続に用いられる車両用熱伝導シート40が貼り付けられる。
【0028】即ち、筐体は、アッパーケース21、ロアケース22、アッパーカバー23、ロアカバー24からなる。アッパケース21には、RBが取り付けられている。なお、筐体を構成するケースやカバーは、ポリプロピレン等の樹脂材からなっており、軽量化を図っている。
【0029】金属芯入りプリント基板として、基板5、基板15の2つの基板を備え、例えば、基板15には、ヒューズホルダFHやリレーRL、基板コネクタCN等の電気部品が実装されている。なお、ヒューズホルダFHに装着されるヒューズは、ワイヤハーネスのボディとの短絡時やモータ等の負荷の故障時に車両火災の発生を阻止する役目を果たし、リレーRLは、運転席近傍の操作スイッチ等と連動して電装品への電源供給を制御する役目を果たす。なお、電気部品としてこれら以外にCPUやサイリスタ等の発熱電気(電子)部品を実装してもよい。これら電気部品の多くは大電流が流れるので、電気部品自体やこれに電気的に導通した回路パターンが発熱する。なお、基板5にも同様の電気部品が実装されている。
【0030】金属芯入りプリント基板5、15は、熱伝導絶縁シート9を介して、板型ヒートパイプ10に接続される。図6は、この発明の熱伝導絶縁シートを示す図である。図6(a)は、熱伝導絶縁シートの平面図である。図6(b)は、プリント基板の板面に熱伝導絶縁シートを取り付けたときの断面図である。図6(a)に示すように、熱伝導絶縁シート9は、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部に対応する位置に一定方向のスリット13を有する。この発明の熱伝導絶縁シートにおいては、スリットが、一方向に並行に設けられた複数の同一幅のスリットからなっている。図6(b)に示すように、プリント基板5のリード端子6が、熱伝導絶縁シート9のそれぞれ対応するスリットを貫通し、プリント基板と熱伝導絶縁シートとの接触面積が広くなる。
【0031】従来の熱伝導絶縁シートとして、図13(a)に示すように、開口部等を備えていない熱伝導絶縁シート59がある。図13(b)に示すように、開口部等が設けられていないので、リード端子6が熱伝導絶縁シートに当り、シートを浮き上がらせ、その周辺の熱伝導絶縁シートの厚さが薄くなる。従って、プリント基板とヒートパイプとの接触面積が減少し、実装されたプリント基板において発熱した熱をヒートパイプに効果的に伝えることができないので、伝熱効率を低下させてしまう。更に、図7に示すように、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部に対応する位置に凸部に対応する形状の開口部20を設けた従来の熱伝導絶縁シート19があるが、熱伝導絶縁シートの面積の約50%を打ち抜いた形状のために、剛性が低く、熱伝導絶縁シートの組み付け性を低下させると共に、この形状の熱伝導絶縁シートを作製するためには、複雑な形状の金型が必要であり、汎用性が低い。
【0032】これに対して、この発明の熱伝導絶縁シート9は、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部に対応する位置に一定方向のスリット13を有しているので、剛性を低下させることなく、熱伝導絶縁シートの組み付け性を高め、作製が容易であり、汎用性を向上することができる。
【0033】図9は、金属芯入りプリント基板に取り付けた板型ヒートパイプの部分拡大図である。金属芯入りプリント基板15は、従来例で説明したプリント基板31と同様な構成を有し、図9に示すように、厚さ1mmのアルミニウム製コア材15a、コア材の表面を囲繞した絶縁層15b、絶縁層上に所定の回路パターンとして形成された導電層(図示せず)、絶縁層に塗布されたレジスト(図示せず)から構成されている。
【0034】なお、金属芯入りプリント基板15には、所定箇所にスルーホール15hが形成され、このスルーホール15hには実装時にハンダが固着しており、基板表面から約0.2mm程突出したハンダ部Hが形成されている。更に、金属芯入りプリント基板15には、上述の通りリレーRL等の電気部品が実装されているが、これらの実装部品は主としてリードタイプなので、リード端子Tが実装面と反対側のハンダ面から約2mm程突出している。なお、他の金属芯入りプリント基板5も同様の構造を有している。
【0035】板型ヒートパイプの上板材11は、金属芯入りプリント基板15の、電気部品実装側と反対側、即ち、リード線突出側(ハンダ面側)に、一方向に並列に設けられた複数の同一幅のスリットを有している熱伝導絶縁シート9を介して密着されている。板型ヒートパイプの上板材11は、図9に示すように、金属芯入りプリント基板15と略同等の外形を有し、金属芯入りプリント基板15から突出したリード線に干渉しないように窪み部18を有している。窪み部の中央はエンボス加工が施されて、板型ヒートパイプの下板材とろう付け等によって接合されている。
【0036】板型ヒートパイプの上板材11は、上述したように窪みが形成されており、熱伝導絶縁シート9には、リード端子Tに対応する位置にスリット13が設けられているので、リード端子Tがスリット13を貫通する。従って、板型ヒートパイプの上板材11を、熱伝導絶縁シート9を介して、金属芯入りプリント基板15に当接したとき、図9に示すように、リード端子Tとヒートパイプが干渉することはない。図9に示すように、スルーホールに形成されたハンダ凸部は、熱伝導性絶縁シート9が変形して吸収するので、金属芯入りプリント基板15と板型ヒートパイプの上板材が、熱伝導絶縁シート9を介して、広い面積にわたって密着する。その結果、金属芯入りプリント基板15の熱によってヒートパイプ内に収容された作動液が蒸発し、所定の位置に速やかに移動される。更に、凝縮した作動液が速やかに還流して、再度、金属芯入りプリント基板15の熱を極めて効率的に放熱する。
【0037】このように、板型ヒートパイプの上板材11と金属芯入りプリント基板15との間に熱伝導絶縁シート9を設けることによって、板型ヒートパイプの上板材11と金属芯入りプリント基板15との間の絶縁が確保される。熱伝導絶縁シートは、シートにビク型を用いて、スリットを打ち抜く。スリットが打ち抜かれた熱伝導絶縁シートは、板型ヒートパイプ側の保護シートを剥がした後、板型ヒートパイプの所定位置に自動機によって組み付けられる。組み付けられた熱伝導絶縁シートのプリント基板側の保護シートを剥がした後、実装基板を熱伝導絶縁シートが貼り付けられた板型ヒートパイプに自動機で組み付け、リベットまたはネジによってヒートパイプに固定する。このように組み付けられた基板アセンブリは、アッパーケースとローアケース内に固定し、他の部品を接続、固定させて、電気接続箱を形成する。
【0038】次に、プリント基板と熱伝導絶縁シートを介して接続される板型ヒートパイプについて詳細に説明する。図1は、この発明の電気接続箱に備えられている板型ヒートパイプの1つの態様の側面図である。図2は、図1に示すこの発明の板型ヒートパイプの平面図である。図3は、図1に○で示す部分の拡大図である。図3R>3の拡大図で示すように、平面型ヒートパイプの上板材1にスペーサ上材3がろう付け等によって接合され、更に、平面型ヒートパイプの下板材2にスペーサ下材4がろう付け等によって接合されている。平面型ヒートパイプの上板材1および下板材2はろう付け等によって接合され、その中に作動液が封入された密閉された空洞部を形成している。
【0039】従って、スペーサ上材3、平面型ヒートパイプの上板材1、平面型ヒートパイプの下板材2、スペーサ下材4が一体的に形成され、スペーサ上材3と、平面型ヒートパイプの上板材1との間の熱抵抗を小さくすることができ、更に、平面型ヒートパイプの下板材2とスペーサ下材4との間の熱抵抗を小さくすることができる。
【0040】図1に示すように、ヒートパイプと一体的に形成されたスペーサ上材3の上方には、基板5が当接され、固定される。基板5の下方には、複数の電極(リード端子)6が下方に向かって突き出している。スペーサ上材3の厚さtは、電極の高さLよりも大きい(t>L)ことが必要である。
【0041】図2に示すように、スペーサ上材3には、プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、凸部に対応した凹部(または開口部)8が設けられている。この態様においては、スペーサ上材3に打ち抜き加工を施して、所定形状の凹部(または開口部)を形成している。なお、ヒートパイプには、耐圧強度を高めるためのエンボス加工7が施されている。スペーサ上材および下材は、熱伝導性に優れた部材、例えば、アルミニウム、その他の金属材料からなっている。スペーサ上材および下材の材質は、ヒートパイプの上板材、下板材と同一材質が好ましい。
【0042】更に、この発明の板型ヒートパイプの他の1つの態様は、金属芯入りプリント基板の少なくとも一部に当接し、前記プリント基板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプである。
【0043】即ち、前記凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する前記板材が、それぞれ、前記コンテナを形成する上板材および下板材である、板型ヒートパイプである。図4は、この発明の板型ヒートパイプの他の1つの態様を示す図である。この態様においては、板型ヒートパイプの上板材および/または下板材に、金属芯入り基板に実装されたリード部品の端子を避けるための窪みと、耐圧力を確保するためのエンボス形状とを、直接設けて、スペーサレス構造を実現し、軽量化と低コストを実現している。
【0044】図5は、リード部品の端子を避けるための窪みと、耐圧力を確保するためのエンボス形状を示す拡大図である。図5(a)は平面図を示す。図5(b)は断面図を示す。図5(a)および図5(b)に示すように、例えば、板型ヒートパイプの上板材11にプレス加工等によって、リード部品の端子を避けるための所定形状の窪み18が形成され、窪み18の中心部にエンボス加工17が施されている。エンボス加工が施された中心部17は、板型ヒートパイプの下板材12と、ろう付け等によって接合されている。従って、リード部品の端子との接触を回避し、そして、作動液の蒸発に伴う圧力に対してヒートパイプの強度を高めることができる。
【0045】図4に示すように、上述したリード部品の端子を避けるための窪み18およびエンボス加工17が、金属芯入り基板に実装されたリード部品の端子の数および形状に対応して、板型ヒートパイプの上板材に形成される。なお、図1から図3を参照して説明したこの発明の板型ヒートパイプにおいては、両面に、スペーサ材を接合する態様について述べたが、何れか一方のみにスペーサ材を接合してもよい。
【0046】更に図4および図5を参照して説明したこの発明の板型ヒートパイプにおいては、板型ヒートパイプの上板材に、リード部品の端子を避けるための窪みおよびエンボス加工を形成する態様について述べたが、板型ヒートパイプの下板材にも、上板材と同様に、リード部品の端子を避けるための窪みおよびエンボス加工を形成してもよい。
【0047】ヒートパイプは、密封された空洞部を備えており、その空洞部に収容された作動流体の相変態と移動により熱の輸送が行われる。熱の一部は、ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)を直接伝わって運ばれるが、大部分の熱は、作動流体による相変態と移動によって移動される。
【0048】ヒートパイプの吸熱側において、発熱電子部品から伝わった熱は、ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)の材質中を熱伝導して伝わってきた熱により、作動流体が蒸発し、その蒸気がヒートパイプの放熱側に移動する。放熱側では、作動流体の蒸気は冷却され再び液相状態に戻る。そして、液相に戻った作動流体は再び吸熱側に移動(還流)する。このような作動流体の相変態や移動によって、熱の移動がなされる。
【0049】ヒートパイプ内の作動流体としては通常、水や水溶液、アルコール、その他有機溶剤等が使用される。特殊な用途としては水銀を作動流体に用いる場合もある。前述したようにヒートパイプは内部の作動流体の相変態等の作用を利用するものであるので、密封された内部への作動流体以外のガス等の混入をなるべく避けるように製造されることになる。このような混入物は、通常、製造途中に混入する大気(空気)や作動流体中に溶在している炭酸ガス等である。ヒートパイプの形状は、使用目的に応じて、板型、平面型、偏平型、丸パイプ型等を選択する。更に、ヒートパイプで移動した熱をファン等を使用して強制的に冷却してもよい。
【0050】この発明のヒートパイプのコンテナの材質は、銅またはアルミニウム等の熱伝導の良好な金属を使用することができる。偏平状に加工するため、加工性に優れたアルミニウム材が好ましい。ウイックは偏平状ヒートパイプのコンテナと同一材質の部材を使用することができる。作動液は、ヒートパイプのコンテナの材質との適合性に応じて、水、代替フロン、フロリナートを使用する。更に、この発明の板型ヒートパイプにおいて、コンテナ内にウイックが設けられていてもよい。
【0051】次に、上述した板型ヒートパイプの放熱側の端部に取り付けられるこの発明の車両用熱伝導シートについて説明する。この発明の車両用熱伝導シートの1つの態様は、粘着層および非粘着層からなり、前記粘着層が、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する2枚の板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプの放熱側の端部に貼り付けられ、前記非粘着層が車体の一部に接触される車両用熱伝導シートである。
【0052】図10は、この発明の車両用熱伝導シートの1つの態様を示す図である。図10に示すように、この発明の車両用熱伝導シート40は、非粘着層41および粘着層42からなっている。非粘着層は、例えば、アクリルゴムおよびアルミニウム熱伝導性フィラーからなっている。更に、非粘着層が非粘着性フィルム材からなっていてもよい。更に、非粘着層が非粘着性粉末からなっていてもよい。更に、熱伝導シートが電気絶縁性を備えていることが好ましい。
【0053】非粘着層41および粘着層42からなる車両用熱伝導シートを用いる理由は次の通りである。即ち、電気接続箱内の発熱量が増加しているので、放熱経路における熱抵抗をできるだけ小さくすることが必要である。接続部の熱抵抗を減じるために、一般的に熱伝導シートが用いられる。熱抵抗に大きく関係する要素の1つとして、熱伝導シートの密着率が挙げられる。即ち、通常、粘着力の大きい熱伝導シートの方が、密着率が高く、熱抵抗が小さくなる。
【0054】しかしながら、車両組立て環境は、クリーンルームではないので、粉塵が舞っている状態である。そのような環境下において、粘着力の高い物質を放置しておくと、粘着性物質に塵が付着し、このように付着した塵が熱抵抗を高めてしまう。粘着性物質に塵が付着しないように保護シート等を貼っておき、使用時に保護シートを剥がすと、剥がした保護シートがゴミとして放棄され、これらのゴミを処理する作業の手間が増え、更に、資源の無駄という環境の点からも好ましくない。
【0055】更に、熱伝導シートを貼り付けた放熱部材を車両に組み付ける段階で、ズレが生じると、両面粘着の場合は、車両から上手くはがせずやり直しがきかない。そのため、失敗した熱伝導シートを捨てて新しいものを貼り直すことになる。熱伝導シートを片面粘着にする方法として、非粘着材41および粘着材42を貼り合わせる方法がある。非粘着材41は、例えば、アクリルゴムと熱伝導性フィラーとしてアルミニウム系の材料、更には、可塑剤等を加えて架橋して作る。粘着材についてもほぼ同じ組成で作ることができるが、こちらは架橋を抑えることで粘着力を維持させている。粘着層42と非粘着層41の厚さは状況に応じて任意に決められる。
【0056】片面粘着を実現するその他の方法として、粘着材42に非粘着の薄いフィルム41を貼り付ける方法もある。非粘着フィルム41はなるべく熱伝導率の大きい材料が望ましいが、フィルムを薄くすることで全体的な熱抵抗を小さくすることができる。更に、安価に片面粘着にする方法として、粘着材41の表面にフィルムでなく、粘着性の無い粉末をつけるやり方で片面粘着を実現する方法もある。
【0057】図11は、この発明の車両用熱伝導シートの使用方法の1つの態様を示す図である。発熱体からの熱を輸送するヒートパイプの放熱側の端部43に片面粘着の熱伝導シート40を貼り付ける。ヒートパイプの放熱側の端部43と熱伝導シート40は、粘着材により良好に密着する。これに対して、熱伝導シートの車体44側は、粘着性が無いので、粉塵が舞っているような場所でも、ゴミが付着するようなことは無い。更に、ヒートパイプと車体44とをこの発明の熱伝導シート40を介して接続するときに、熱伝導シートと車体が貼り付かないために、位置決めをやり直すことが容易となる。この構造は、機械による正確な位置決めができない組み付け部位に特に効果を発揮する。
【0058】上述したように、片面粘着のこの発明の車両用熱伝導シートによると、ラインにおいてゴミを発生することが無く、車両組み付け作業における位置決めを容易におこなうことができる。更に、ネジ等によって一体固定された2つの部材間に熱伝導シートを挟むことによって、熱抵抗を抑えるだけでなく、車両の振動吸収をすることもできる。更に、電気絶縁性の熱伝導シートを使用することによって、接触部における腐食を防止することができる。
【0059】
【発明の効果】上述したように、この発明によると、プリント基板と板型ヒートパイプとの間に、電気部品端子凸部に対応する位置に一定方向のスリットを有する熱伝導絶縁シートを配置することによって、基板面とヒートパイプの密着面を拡大することができ、放熱効果を高めることができる。更に、粘着層および非粘着層からなる車両用熱伝導シートの粘着層を、板型ヒートパイプの放熱側の端部に貼り付け、非粘着層を車体の一部に接触することによって、車体組み付け作業での位置決めを容易にすることができる。従って、この発明によると、金属芯入りプリント基板の発熱を筐体外に効率的に放熱することができる板型ヒートパイプを備えた電気接続箱を提供することができ、そして、電気接続箱の熱を車体に効率的に放熱するための車体用熱伝導シートを提供することができ、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の板型ヒートパイプの1つの態様の側面図である。
【図2】図2は、図1に示すこの発明の板型ヒートパイプの平面図である。
【図3】図3は、図1に○で示す部分の拡大図である。
【図4】図4は、この発明の板型ヒートパイプの他の1つの態様を示す図である。
【図5】図5は、リード部品の端子を避けるための窪みと、耐圧力を確保するためのエンボス形状を示す拡大図である。
【図6】図6は、この発明の熱伝導絶縁シートを示す図である。図6(a)は、熱伝導絶縁シートの平面図である。図6(b)は、プリント基板の板面に熱伝導絶縁シートを取り付けたときの断面図である。
【図7】図7は、従来の熱伝導絶縁シートを示す図である。
【図8】図8は、この発明の電気接続箱の1つの態様を示す図である。
【図9】図9は、金属芯入りプリント基板に取り付けた板型ヒートパイプの部分拡大図である。
【図10】図10は、この発明の車両用熱伝導シートの1つの態様を示す図である。
【図11】図11は、この発明の車両用熱伝導シートの使用方法の1つの態様を示す図である。
【図12】図12は、従来の金属芯入りプリント基板の部分拡大図である。
【図13】図13は、従来の熱伝導絶縁シートを示す図である。
【符号の説明】
1.板型ヒートパイプの上板材
2.板型ヒートパイプの下板材
3.スペーサ上材
4.スペーサ下材
5.プリント基板
6.電極(リード端子)
7.エンボス加工
8.凹部
9.熱伝導絶縁シート
10.板型ヒートパイプ
11.板型ヒートパイプの上板材
12.板型ヒートパイプの下板材
13.スリット
15.プリント基板
17.エンボス加工
18.窪み部
19.熱伝導絶縁シート
20.開口部
21.アッパーケース
22.ロアケース
23.アッパーカバー
24.ロアカバー
25.プリント基板
40.車両用熱伝導シート
41.非粘着層
42.粘着層
43.ヒートパイプの放熱側の端部
44.車体
59.熱伝導絶縁シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】粘着層および非粘着層からなり、前記粘着層が、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する2枚の板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプの放熱側の端部に貼り付けられ、前記非粘着層が車体の一部に接触される車両用熱伝導シート。
【請求項2】前記非粘着層がアクリルゴムおよびアルミニウム熱伝導性フィラーからなっている、請求項1に記載の車両用熱伝導シート。
【請求項3】前記非粘着層が非粘着性フィルム材からなっている、請求項1に記載の車両用熱伝導シート。
【請求項4】少なくとも1枚の金属芯入りプリント基板と、前記プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子凸部に対応した凹部を一方の面に有し、他方の面がコンテナの内壁を形成する2枚の板材によって形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプと、前記プリント基板と前記板型ヒートパイプとの間に配置される、前記電気部品端子凸部に対応する位置に一定方向のスリットを有する熱伝導絶縁シートとを備えた電気接続箱。
【請求項5】少なくとも1枚の金属芯入りプリント基板と、前記プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子凸部に対応した凹部を一方の面に有する板材を、コンテナの少なくとも1つの主面に金属接合して、一体的に形成された、その中に作動液が封入されている密閉されたコンテナからなる板型ヒートパイプと、前記プリント基板と前記板型ヒートパイプとの間に配置される、前記電気部品端子凸部に対応する位置に一方向のスリットを有する熱伝導絶縁シートとを筐体内に備えた電気接続箱。
【請求項6】2枚の前記金属芯入りプリント基板を備えており、前記板型ヒートパイプの両面に備えられた前記凹部のそれぞれと、前記金属芯入りプリント基板との間に、前記熱伝導絶縁シートが設けられている、請求項4または5に記載の電気接続箱。
【請求項7】前記熱伝導絶縁シートの前記スリットが、一方向に並行に設けられた複数の同一幅のスリットからなっており、前記電気部品端子凸部がそれぞれ対応する前記スリットを貫通し、前記凹部に接触することなく収容されている、請求項4から6の何れか1項に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2003−235127(P2003−235127A)
【公開日】平成15年8月22日(2003.8.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−26799(P2002−26799)
【出願日】平成14年2月4日(2002.2.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】