説明

車両用燃料残量表示装置

【課題】マイコン点灯方式を採用する場合でも、少なくなった燃料残量を直感的に把握しやすい車両用燃料残量表示装置を提供する。
【解決手段】車両用燃料残量表示装置10は、車両に搭載された燃料タンク51内の燃料残量を計測するフューエルセンダ52(燃料残量計測手段)と、計測された燃料残量が予め定められた第一残量値以下であるとき発光ダイオード31(燃料残量警告灯)を点灯制御するマイコン41(点灯制御手段)とを備える。マイコン41は、計測された燃料残量が第一残量値から減少するのに伴い発光ダイオード31の輝度を高くし、第二残量値となったときの発光ダイオード31の輝度が第一残量値となったときの発光ダイオード31の輝度よりも高くなるように発光ダイオード31を点灯制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用燃料残量表示装置に関し、特に車両に搭載された燃料タンク内の燃料残量が所定量以下になると点灯する燃料残量警告灯を備えた車両用燃料残量表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両用燃料残量表示装置では、燃料タンク内の燃料残量を計測し、その計測された燃料残量が所定量以下になると、給油が必要であることを報知するための燃料残量警告灯をマイコンの点灯制御により点灯させるマイコン点灯方式が多く採用されている。例えば、下記特許文献1には、液晶表示パネルにて燃料残量を表示するように構成された複数のセグメントを利用して、燃料残量が減少するのに伴い点灯状態にあるセグメントの数を順次減らすように点灯制御したり、1つのセグメントの明るさが徐々に小さくなるようにデューティ制御したりする燃料残量表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−106789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の燃料残量表示装置では、例えば図5に示すように、燃料の補給により燃料残量が所定量(図中の残量1)よりも大きい所定量(図中の残量2)を上回らない限り、一度点灯させた燃料残量警告灯を点灯状態に維持する制御を行うのが一般的である。つまり、車両の走行状態に応じて燃料が燃料タンク内を移動し燃料液面が残量1を境として上下に変動することがあり、それに伴って燃料残量警告灯が点滅を繰り返すと乗員に不快感を与えるおそれがあるため、燃料液面が変動すると予想される範囲内では燃料残量警告灯を点灯状態に維持するようにしている。このため、運転者は燃料残量警告灯が一度点灯状態になった後は燃料残量がどの程度であるかを直感的に知ることができず、不安を抱きやすいという問題があった。この点、マイコン点灯方式を採用する以前の、サーミスタとバルブを用いる旧点灯方式の燃料残量表示装置によると、サーミスタ付近に燃料液面がある場合には、燃料液面の変動に応じてバルブが点灯と消灯をジンワリ繰り返すため、運転者は燃料液面が変動している、すなわち燃料残量がまだあることを知ることができ、バルブが常時点灯状態になると燃料残量が極めて少なくなっていることを直感的に知ることができるという良さがあった。
【0005】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、マイコン点灯方式を採用する場合でも、少なくなった燃料残量を直感的に把握しやすい車両用燃料残量表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用燃料残量表示装置は、車両に搭載された燃料タンク内の燃料残量を計測する燃料残量計測手段と、計測された燃料残量が予め定められた第一残量値以下であるとき燃料残量警告灯を点灯制御する点灯制御手段と、を備え、第一残量値よりも小さい第二残量値が予め定められており、点灯制御手段は、計測された燃料残量が第一残量値から減少するのに伴い燃料残量警告灯の輝度を高くし、第二残量値となったときの燃料残量警告灯の輝度が第一残量値となったときの燃料残量警告灯の輝度よりも高くなるように該燃料残量警告灯を点灯制御することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、燃料液面が第一残量値と第二残量値との間で変動する場合において、燃料残量が第一残量値に近いほど燃料残量警告灯が暗く、燃料残量が第二残量値に近づくに従って燃料残量警告灯が明るくなる。これにより、運転者は燃料残量警告灯の明るさから燃料残量がどの程度であるかを直感的に把握しやすくなる。
【0008】
燃料残量警告灯は、点灯制御手段によるデューティ制御により輝度調整される発光ダイオードを含んで構成されており、点灯制御手段は、計測された燃料残量が減少して第一残量値に達するまでは発光ダイオードを消灯状態とし、計測された燃料残量が第一残量値となったときは発光ダイオードの点灯デューティを予め定められた最小値としてデューティ制御を開始し、計測された燃料残量が減少して第二残量値以下となったときは発光ダイオードの点灯デューティを予め定められた最大値としてデューティ制御を続行するように構成することができる。この場合、例えば、前記最小値は点灯デューティの0%に対応し、前記最大値は点灯デューティの100%に対応して設定されていると好適である。
【0009】
上記したデューティ制御によれば、発光ダイオードの輝度を容易に可変することができ、さらに発光ダイオードの点滅態様を従来のバルブによるものと同様にジンワリしたものとすることもできるので、運転者は燃料液面の変動を実感することで、燃料残量がまだあることを知ることができる。
【0010】
また、点灯制御手段は、計測された燃料残量が第一残量値と第二残量値側との間で変動する場合に、その変動に発光ダイオードの点灯デューティが連続して追従するように該発光ダイオードをデューティ制御するものであるとよい。ここで、「連続して」とは、燃料残量と点灯デューティとがリニアな対応関係にある場合の他、対数的あるいは指数関数的な対応関係にある場合も含む意である。
【0011】
これによれば、発光ダイオードの明るさの微妙な変化を運転者に対してより自然な感じで認識させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両用燃料残量表示装置を適用した車両用計器の一例を示すブロック図。
【図2】図1のマイコンによって実行される点灯制御プログラムを示すフローチャート。
【図3】図2の点灯制御プログラムの実行処理を、燃料残量の変化と点灯デューティとの関係を用いて示す説明図。
【図4】点灯デューティの説明図。
【図5】従来の点灯制御を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係る車両用燃料残量表示装置10を備えた車両用計器1の要部を示すブロック図である。車両用計器1は、車室内のインストルメントパネルにてコンビネーションメータとして設けられており、図示を省略するスピードメータ、車両の各種状態を表す表示灯・警告灯に加えて、燃料残量計20、燃料残量警告灯30などを備えている。
【0015】
燃料残量計20は、燃料タンク51内の燃料残量を指針21により指示する方式のアナログフューエルメータである。なお、燃料残量計はアナログ式に限らず、図1にて燃料残量計20’として示すように、複数のセグメント21’で表示する方式のデジタルフューエルメータで構成してもよい。
【0016】
燃料残量警告灯30は、燃料タンク51内の燃料残量が所定量(第一残量値V1、図3参照)以下となったとき、給油の必要性があることを点灯により運転者に報知する発光ダイオード31を備えている。
【0017】
燃料残量表示装置10は、燃料タンク51内に設置されたフューエルセンダ52の検出値に基づいて燃料残量計20の指針21を駆動制御するとともに、燃料残量警告灯30の発光ダイオード31を点灯制御するマイクロコンピュータ41(以下、単にマイコン41という)と、このマイコン41に接続された電源回路42及び各種インタフェース(I/F)回路43〜46とを備えている。
【0018】
電源回路42は、バッテリBの電圧(12V)を定電圧(5V)化する機能を有し、ダイオードD1を介してバッテリBに接続されるとともに、ダイオードD1と並列に接続されたダイオードD2を介してイグニッションスイッチIGに接続されている。
【0019】
バッテリBとグランド間には、ダイオードD3、スイッチング素子としてのトランジスタTr1、抵抗R1、フューエルセンダ52が直列に接続され、イグニッションスイッチIGとグランド間には、ダイオードD3と並列に接続されたダイオードD4、トランジスタTr1、抵抗R1、フューエルセンダ52が直列に接続されており、フューエルセンダ52に対してバッテリBの電源を供給可能なフューエル回路C1が形成されている。
【0020】
また、イグニッションスイッチIGとグランド間には、抵抗R2、発光ダイオード31、スイッチング素子としてのトランジスタTr2が直列に接続されており、イグニッションスイッチIGのオンにより発光ダイオード31に対して一定電圧を付与可能なダイオード点灯回路C2が形成されている。
【0021】
インタフェース(I/F)回路43は、フューエル回路C1にバッテリBの電源が供給されるようにするための駆動信号を出力する回路であり、トランジスタTr1のベース端子に接続され、マイコン41からの制御信号に応じてトランジスタTr1をオンオフする。
【0022】
インタフェース(I/F)回路44は、バッテリBの電源が供給されている状態でフューエル回路C1の電源電圧値をモニタする回路であり、トランジスタTr1と抵抗R1間に接続され、トランジスタTr1がオン状態にあるとき、抵抗R1、フューエルセンダ52に印加される電圧をマイコン41にてモニタする。
【0023】
インタフェース(I/F)回路45は、フューエルセンダ52の電圧値(燃料の残量値を示す)をモニタする回路であり、フューエルセンダ52と抵抗R1間に接続され、トランジスタTr1がオン状態にあるときフューエルセンダ52による電圧降下量をモニタし、マイコン41に入力する。マイコン41ではインタフェース(I/F)回路44にてモニタした電圧とインタフェース(I/F)回路45にてモニタした電圧より、フューエルセンダ52の抵抗値を計測し、残量値を算出する。
【0024】
インタフェース(I/F)回路46は、ダイオード点灯回路C2に駆動信号を出力する回路であり、トランジスタTr2のベース端子に接続され、マイコン41からの制御信号に応じてトランジスタTr2をオンオフする。
【0025】
フューエルセンダ52(燃料残量計測手段)は、燃料タンク51内における燃料の液面高さを検出するものであり、例えば燃料に浮かぶフロートの上下に連動して抵抗値を変化させるポテンショメータで構成されている。
【0026】
マイコン41(燃料残量計測手段、点灯制御手段)は、CPU,ROM,RAM,I/O,A/D変換部,D/A変換部などを主要構成部としており、イグニッションスイッチIGのオン後の所定時間毎にROM等に記憶されている図2の点灯制御プログラムを繰り返し実行し、その実行に応じた制御信号をインタフェース(I/F)回路46に出力する。
【0027】
次に、上記のように構成された実施例1の作動について説明する。運転者がイグニッションスイッチIGをオンすると、マイコン41は、図2の点灯制御プログラムの実行を開始する。
【0028】
最初に、マイコン41は、フューエルセンダ52の検出値に基づいて燃料残量を計測する(S1)。具体的には、所定の短時間毎にフューエルセンダ52から複数の検出データをサンプリングし、サンプリングした検出データを単純に平均した平均値を燃料残量の計測値V3として決定するようにしている。ただし、サンプリングした検出データを単純に平均する方法に限らず、例えば加重平均や移動平均などの算術平均を用いてもよい。また、サンプリングした検出データを平均する方法以外にも、例えば複数の検出データのうち最大値、最小値あるいはメジアンとなるものを用いるようにしてもよい。
【0029】
図3中の走行時間t1を経過する前の燃料残量段階のように、燃料残量の計測値V3が第一残量値V1を上回っている場合には(S2:NO)、マイコン41は発光ダイオード31の消灯状態が維持されるように、すなわちインタフェース(I/F)回路46からトランジスタTr2への駆動信号がLレベルに維持されるようにする(S7)。
【0030】
走行時間の経過とともに燃料残量が減少し続け、燃料残量の計測値V3が第一残量値V1に達する(走行時間t1)と、マイコン41はデューティ制御を開始し、燃料残量の計測値V3が第一残量値V1から減少するのに伴い(S2:YES,S3:NO)、計測値V3とリニアに対応する点灯デューティD1を算出し(S5)、算出された点灯デューティD1に基づいて発光ダイオード31が極めて短時間(人の目が連続した明るさと感じる例えば10ms未満の周期)で点滅を繰り返すようにインタフェース(I/F)回路46を介してトランジスタTr2のオンオフを制御する(S6)。
【0031】
これにより、計測値V3が減少し続ければ、それに対応して発光ダイオード31の輝度がリニアに高くなる(連続的に明るくなる)。なお、点灯デューティD1は、図4に示すように、点滅の1周期(点灯時間Ton+消灯時間Toff)に対する点灯時間Tonの割合(%)で示される。
【0032】
一方、車両が例えば傾斜路に差し掛った場合等においては、図3中の走行時間t1〜t3に示すように、燃料残量の計測値V3が一旦第一残量値V1以下になった後に再び第一残量値V1を上回ることもある。この場合には、燃料残量の計測値V3が第一残量値V1に向けて増加するのに伴い、マイコン41は上記と同様にして計測値V3とリニアに対応する点灯デューティD1を算出し(S5)、算出された点灯デューティD1に基づいて発光ダイオード31をデューティ制御する。
【0033】
これにより、燃料残量の計測値V3が第一残量値V1に向けて増加するのに対応して、発光ダイオード31の輝度がリニアに低くなる(連続的に暗くなる)。そして、燃料残量の計測値V3が第一残量値V1を上回る(走行時間t2〜t3)と、マイコン41は発光ダイオード31を消灯する(S2:NO、S7)。
【0034】
図3中の走行時間t3〜t4に示すように、燃料残量の計測値V3が第一残量値V1以下となった後、第二残量値V2に達するまでの過程で減少、増加、減少すると、マイコン41による上記したデューティ制御により(S5、S6)、発光ダイオード31の輝度が計測値V3の変動に対応して増加、減少、増加するようになる。
【0035】
そして、図3中の走行時間t4に示すように、燃料残量の計測値V3が第二残量値V2に達すると(S3:YES)、マイコン41は点灯デューティを100%とし、以後燃料残量の計測値V3が第二残量値V2を下回る状態が続く限り、点灯デューティを100%とするデューティ制御を続行する(S4)。
【0036】
図3中の走行時間t5〜t6に示すように、燃料残量の計測値V3が一旦第二残量値V2以下になった後、再び第二残量値V2を上回る場合には(S3:NO)、マイコン41は上記と同様にして、計測値V3とリニアに対応する点灯デューティD1を算出し(S5)、算出された点灯デューティD1に基づいて発光ダイオード31をデューティ制御する(S6)。
【0037】
以上の説明からも明らかなように、上記実施例1では、燃料液面(計測値V3)が第一残量値V1と第二残量値V2との間で変動する場合(走行時間t1〜t2、t3〜t4、t5〜t6)において、燃料残量が第一残量値V1に近いほど発光ダイオード31が暗く、燃料残量が第二残量値V2に近づくに従って発光ダイオード31が明るくなる。これにより、運転者は発光ダイオード31の明るさから燃料残量がどの程度であるかを直感的に把握しやすくなる。
【0038】
特に、上記実施例1では、走行時間t1〜t3における発光ダイオード31の点滅態様が、従来のバルブによるものと同様にジンワリとしたものとなり、運転者は燃料液面の変動を実感することで、燃料残量がまだあることを知ることができる。
【0039】
なお、上記実施例1では、計測値V3と点灯デューティD1とがリニアに対応するように設定したが、計測値V3と点灯デューティD1とが連続関数である所定の対数あるいは所定の指数関数に対応するように設定してもよい。
【0040】
また、上記実施例1では、計測値V3が第一残量値V1に達したときの点灯デューティを最小値0%に設定し、計測値V3が第二残量値V2に達したときの点灯デューティを最大値100%に設定したが、第二残量値V2に達したときの点灯デューティが、第一残量値V1に達したときの点灯デューティよりも大きいという条件を満たしていれば、点灯デューティの最小値及び最大値は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 車両用計器
10 車両用燃料残量表示装置
20 燃料残量計
30 燃料残量警告灯
31 発光ダイオード
41 マイコン(マイクロコンピュータ、燃料残量計測手段、点灯制御手段)
51 燃料タンク
52 フューエルセンダ(燃料残量計測手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された燃料タンク内の燃料残量を計測する燃料残量計測手段と、
前記計測された燃料残量が予め定められた第一残量値以下であるとき燃料残量警告灯を点灯制御する点灯制御手段と、
を備え、
前記第一残量値よりも小さい第二残量値が予め定められており、
前記点灯制御手段は、前記計測された燃料残量が前記第一残量値から減少するのに伴い前記燃料残量警告灯の輝度を高くし、前記第二残量値となったときの前記燃料残量警告灯の輝度が前記第一残量値となったときの前記燃料残量警告灯の輝度よりも高くなるように該燃料残量警告灯を点灯制御することを特徴とする車両用燃料残量表示装置。
【請求項2】
前記燃料残量警告灯は、前記点灯制御手段によるデューティ制御により輝度調整される発光ダイオードを含んで構成されており、
前記点灯制御手段は、前記計測された燃料残量が減少して前記第一残量値に達するまでは前記発光ダイオードを消灯状態とし、前記計測された燃料残量が前記第一残量値となったときは前記発光ダイオードの点灯デューティを予め定められた最小値としてデューティ制御を開始し、前記計測された燃料残量が減少して前記第二残量値以下となったときは前記発光ダイオードの点灯デューティを予め定められた最大値としてデューティ制御を続行する請求項1に記載の車両用燃料残量表示装置。
【請求項3】
前記最小値は前記点灯デューティの0%に対応し、前記最大値は前記点灯デューティの100%に対応して設定されている請求項2に記載の車両用燃料残量表示装置。
【請求項4】
前記点灯制御手段は、前記計測された燃料残量が前記第一残量値と前記第二残量値側との間で変動する場合に、その変動に前記発光ダイオードの点灯デューティが連続して追従するように該発光ダイオードをデューティ制御する請求項2又は3に記載の車両用燃料残量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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