車両用燃料注入部のシール構造
【課題】コストの上昇を招くことなく、腐食の問題を解消できる車両用燃料注入部のシール構造を提供する。
【解決手段】車体パネル2とインレットボックス5との間をシールする第1シーラ17が、前記インレットボックス5の前記車体パネル2に対向するように形成されたフランジ部5dの全周に渡って配置され、前記車体パネル2の燃料注入開口2aの縁部と前記フランジ部5dとの間をシールする第2シーラ18が、前記第1シーラ17の内側に配置され、かつ該第2シーラ18の端末部18bは前記ボックス本体部5bとヒンジ格納部5cとの境界部に位置しており、前記第1シーラ17の少なくとも前記ボックス本体部5bとヒンジ格納部5cとの下側の境界部に位置する部分17aは、前記第2シーラ18の前記端末部18bに水密に当接している。
【解決手段】車体パネル2とインレットボックス5との間をシールする第1シーラ17が、前記インレットボックス5の前記車体パネル2に対向するように形成されたフランジ部5dの全周に渡って配置され、前記車体パネル2の燃料注入開口2aの縁部と前記フランジ部5dとの間をシールする第2シーラ18が、前記第1シーラ17の内側に配置され、かつ該第2シーラ18の端末部18bは前記ボックス本体部5bとヒンジ格納部5cとの境界部に位置しており、前記第1シーラ17の少なくとも前記ボックス本体部5bとヒンジ格納部5cとの下側の境界部に位置する部分17aは、前記第2シーラ18の前記端末部18bに水密に当接している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のクォータパネルに形成された燃料注入開口から燃料を燃料タンクに供給するようにした燃料注入部のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料注入部のシール構造として、従来例えば、特許文献1に開示されたものがある。この従来構造では、インレットボックスの外周フランジ部を接着剤によりクォータパネルの燃料注入開口縁部の内面に固定するとともに、該燃料注入開口縁部とインレットボックスとの間をシーラによりシールする構造を採用している。
【0003】
ところで、インレットボックスに形成されたヒンジ格納部は、クォータパネルにより覆われており、外部から目視困難であることから、ヒンジ格納部分にシーラを塗布することは困難である。このためシーラが燃料注入開口縁部のヒンジ格納部分で途切れることとなり、場合によってはヒンジ格納部や燃料注入開口部が雨水等により腐食し易くなる。このような腐食を防止するために、前記特許文献1では、ヒンジ格納部を、洗浄液を吹き付けることで洗浄するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−109427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来公報のように、ヒンジ格納部に洗浄液を吹き付ける構造とした場合には、新たな加工や部品を追加する必要があり、コストが上昇するという問題がある。
【0006】
また前記従来構造では、シーラの下側端末部と接着剤との隙間から雨水等が侵入した場合には、洗浄液を吹き付けても雨水等を排出することができず、雨水等の滞留によって腐食し易いという問題が懸念される。
【0007】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、コストの上昇を招くことなく、腐食の問題を解消できる車両用燃料注入部のシール構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車体パネルの内面に燃料注入開口を覆うように接合されたインレットボックスに、リッドをヒンジ部材を介して前記燃料注入開口を開閉するように装着した車両用燃料注入部において、前記インレットボックスと車体パネルとの間をシールするシール構造であって、前記インレットボックスは、前記燃料注入開口を囲むボックス本体部と、該ボックス本体部に続いて形成され、かつ前記車体パネルにより覆われたヒンジ格納部とを有し、前記車体パネルとインレットボックスとの間をシールする第1シーラが、前記インレットボックスの前記車体パネルに対向するように形成されたフランジ部の全周に渡って配置され、前記車体パネルの燃料注入開口縁部と前記フランジ部との間をシールする第2シーラが、前記第1シーラの内側に配置され、かつ該第2シーラの端末部は前記ボックス本体部とヒンジ格納部との境界部に位置しており、前記第1シーラの少なくとも前記ボックス本体部とヒンジ格納部との下側の境界部に位置する部分は、前記第2シーラの前記端末部に水密に当接していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るシール構造によれば、第1シーラの少なくともインレットボックスのボックス本体部とフランジ格納部との下側の境界部に位置する部分を第2シーラの端末部に水密に当接させたので、第1シーラと第2シーラとによる2重シール構造を採用しつつ、かつ新たな加工や部品を追加することなく、第1シーラと第2シーラの端末部との隙間から水等が侵入するのを防止でき、雨水等の滞留による腐食の問題を解消できる。
【0010】
また本発明は、前記第1シーラを第2シーラの端末部に当接させるだけの構造を採用しているので、コストを上昇させることなく簡単な構造で第1,第2シーラの隙間を閉塞することができる。しかも第2シーラをヒンジ格納部内に目視困難な状態でノズルを挿入して塗布する必要がなく、第2シーラの塗布作業を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1による燃料注入部が形成されたクォータパネルの斜視である。
【図2】前記燃料注入部のリッドを開いた状態の斜視図である。
【図3】前記燃料注入部の車幅方向外側方から見た側面図である。
【図4】前記燃料注入部の断面図(図3のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記燃料注入部の断面図(図3のV-V線断面図)である。
【図6】前記燃料注入部の断面図(図3のVI-VI線断面図)である。
【図7】前記燃料注入部の断面図(図3のVII-VII線断面図)である。
【図8】前記燃料注入部の断面図(図3のVIII-VIII線断面図)である。
【図9】前記燃料注入部の断面図(図3のIX-IX線断面図)である。
【図10】前記燃料注入部のインレットボックスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図10は、本実施例1による車両用燃料注入部のシール構造を説明するための図である。
【0014】
図において、1は自動車の車体後部を構成するクォータパネル(車体パネル)を示している。このクォータパネル1は、外装品としてのクォータアウタパネル2とクォータインナパネル3との外周縁部同士を結合した概略構造を有する。
【0015】
前記クォータパネル1の前縁部にはリヤドア開口1aが形成されており、下縁部には後輪(不図示)の上方を覆うホイールアーチ1bが形成されている。
【0016】
前記クォータパネル1には、前記車体後部に配設された燃料タンク(不図示)に燃料を供給する燃料注入部4が設けられている。
【0017】
この燃料注入部4は、前記クォータアウタパネル2に形成された円形状の燃料注入開口2aと、該クォータアウタパネル2に燃料注入開口2aを車内側から覆うように配置されたインレットボックス5と、該インレットボックス5に配置されたヒンジ部材6を介して前記燃料注入開口2aを開閉するリッド7とを備えている。
【0018】
前記インレットボックス5は、前記燃料注入開口2aを囲むよう円形状に形成された大略碗状のボックス本体部5bと、該ボックス本体部5bに続いて形成され、前記クォータアウタパネル2により車外側から覆われた大略矩形箱状のヒンジ格納部5cとを有する。これによりリッド7を開いたとき前記ヒンジ部材6が外方から見えるのを防止している。
【0019】
前記ボックス本体部5bには燃料供給口5aが形成されており、該燃料供給口5aには燃料タンクに接続された燃料チューブ10がボックス本体部5b内に突出するよう挿入されている(図4参照)。該燃料チューブ10の供給口10aには燃料キャップ12が着脱可能に装着されている。
【0020】
前記燃料チューブ10は、クォータインナパネル3に形成された挿通孔3aを挿通しており、該燃料チューブ10とインレットボックス5の燃料供給口5a及びクォータインナパネル3の挿通孔3aとの間はホールカバー11によりシールされている。
【0021】
前記リッド7は、前記燃料注入開口2aを車外側から覆うように配置され、前記クォータアウタパネル2と連続面をなすように形成された円形状のリッド本体7aと、該リッド本体7aの裏面に取り付けられたインナ部材7bとを有する。
【0022】
このインナ部材7bにはリッド7を閉位置にロックするロック片7cが形成されている。このロック片7cは、前記インレットボックス5に取り付けられたロック部材14に係脱可能に係合している(図5参照)。
【0023】
前記ヒンジ部材6は、前記インレットボックス5のヒンジ格納部5c内に収容されている。このヒンジ部材6は、前記ヒンジ格納部5cに一対の締結部材15により固定されたヒンジ支持板6aと、該ヒンジ支持板6aに支持されたヒンジピン6bと、該ヒンジピン6bに回動可能に取り付けられ、前記リッド7のインナ部材7bに固定されたヒンジアーム6cとを有する。これにより前記リッド7は、ヒンジ部材6により燃料注入開口2aを開く全開位置と、該開口2aを閉じる全閉位置との間で回動可能に支持されている。
【0024】
前記クォータアウタパネル2の燃料注入開口2aの周縁には車内側に屈曲する屈曲部2bが形成されている。この屈曲部2bには、周方向に所定間隔をあけて複数の接合部2cが延長形成されている(図9参照)。
【0025】
前記インレットボックス5の前記各接合部2cに対応する部分には、該接合部2cに当接する当接部5fが形成されている。この各接合部2cと当接部5fとはスポット溶接により接合されている(図2,図3の×印参照)。
【0026】
前記インレットボックス5のボックス本体部5b及びヒンジ格納部5cを含む外周縁には、前記クォータアウタパネル2の裏面に対向するフランジ部5dが外側に屈曲形成されている。
【0027】
前記フランジ部5dには、これの全周に渡って延びる凹状のビード溝5eが形成されている。このビード溝5eは前記フランジ部5dの幅方向中央部に位置するように形成されている。
【0028】
前記ビード溝5e内には、前記クォータアウタパネル2とインレットボックス5との間をシールする第1シーラ17が塗布されている。
【0029】
この第1シーラ17は、前記クォータアウタパネル2に当接させた状態で前記インレットボックス5とクォータアウタパネル2とをスポット溶接することにより、該クォータアウタパネル2に密接している。
【0030】
このように、インレットボックス5をクォータアウタパネル2にスポット溶接により接合したので、従来の接着剤を不要にできる。その結果、接着剤を塗布していた箇所に第1シーラ17を配置することができ、該シーラ17と後述する第2シーラ18とで2重シール構造とすることができ、燃料注入部4のシール性を大幅に向上できる。
【0031】
前記クォータアウタパネル2の屈曲部2bの内端と、前記ボックス本体部5bのフランジ部5dの基部5d′との間には両者2b,5bの間をシールする第2シーラ18が塗布されている。
【0032】
この第2シーラ18は、前記ボックス本体部5bのヒンジ格納部5cを除く部分に配置されている。詳細には、第2シーラ18の上,下の端末部18a,18bは前記ボックス本体部5bのヒンジ格納部5cとの境界部aに位置している。この境界部aで第2シーラ18の端末部18a,18bが途切れるのは、ヒンジ格納部5cがクォータアウタパネル2により覆われていることから、シーラ塗布ノズル(不図示)をヒンジ格納部5cの内部まで挿入することができず、しかも内部が見えない状態での塗布作業となるからである。
【0033】
前記インレットボックス5の下側に位置するビード溝5eの前記境界部aに位置する下側部分5e′は、前記フランジ部5dの基部5d′に重なるように偏位させて形成されている(図3,図10参照)。詳細には、フランジ部5dの中央部から徐々に上方に立ち上がるように傾斜しており、かつ基部5d′に沿って延びるように形成されている。ここで、フランジ部5dの基部5d′とは、フランジ部5dのボックス本体部5bとの稜線部を意味している。
【0034】
そして、前記第1シーラ17の前記下側部分5e′に位置する部分17aは、前記第2シーラ18の端末部18bに水密に当接している。これにより第1シーラ17と第2シーラ18の端末部18bとの隙間は閉塞されている。
【0035】
本実施例によれば、インレットボックス5の前記ビード溝5eの境界部aに位置する下側部分5e′をフランジ部5dの基部5d′に重なるように偏位させ、第1シーラ17の前記下側部分5e′に位置する部分17aを第2シーラ18の端末部18bに水密に当接させたので、第1シーラ17と第2シーラ18とによる2重シール構造を採用しつつ、新たな加工や部品を追加することなく、第1シーラ17と第2シーラ18の端末部18bとの隙間から水等が侵入するのを防止でき、滞留による腐食の問題を解消できる。
【0036】
本実施例では、前記第1シーラ17を第2シーラ18の端末部18bに当接させる構造であるので、コストを上昇させることなく簡単な構造で第1,第2シーラ17,18の隙間を閉塞でき、また第2シーラ18をヒンジ格納部5c内に目視困難な状態でノズルを挿入して塗布する必要がなく、第2シーラ18の塗布作業を改善することができる。
【符号の説明】
【0037】
2 クォータアウタパネル(車体パネル)
2a 燃料注入開口
4 燃料注入部
5 インレットボックス
5b ボックス本体部
5c ヒンジ格納部
5d フランジ部
6 ヒンジ部材
7 リッド
17 第1シーラ
17a 第1シーラの境界部に位置する部分
18 第2シーラ
18a,18b 端末部
a 境界部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のクォータパネルに形成された燃料注入開口から燃料を燃料タンクに供給するようにした燃料注入部のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料注入部のシール構造として、従来例えば、特許文献1に開示されたものがある。この従来構造では、インレットボックスの外周フランジ部を接着剤によりクォータパネルの燃料注入開口縁部の内面に固定するとともに、該燃料注入開口縁部とインレットボックスとの間をシーラによりシールする構造を採用している。
【0003】
ところで、インレットボックスに形成されたヒンジ格納部は、クォータパネルにより覆われており、外部から目視困難であることから、ヒンジ格納部分にシーラを塗布することは困難である。このためシーラが燃料注入開口縁部のヒンジ格納部分で途切れることとなり、場合によってはヒンジ格納部や燃料注入開口部が雨水等により腐食し易くなる。このような腐食を防止するために、前記特許文献1では、ヒンジ格納部を、洗浄液を吹き付けることで洗浄するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−109427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来公報のように、ヒンジ格納部に洗浄液を吹き付ける構造とした場合には、新たな加工や部品を追加する必要があり、コストが上昇するという問題がある。
【0006】
また前記従来構造では、シーラの下側端末部と接着剤との隙間から雨水等が侵入した場合には、洗浄液を吹き付けても雨水等を排出することができず、雨水等の滞留によって腐食し易いという問題が懸念される。
【0007】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、コストの上昇を招くことなく、腐食の問題を解消できる車両用燃料注入部のシール構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車体パネルの内面に燃料注入開口を覆うように接合されたインレットボックスに、リッドをヒンジ部材を介して前記燃料注入開口を開閉するように装着した車両用燃料注入部において、前記インレットボックスと車体パネルとの間をシールするシール構造であって、前記インレットボックスは、前記燃料注入開口を囲むボックス本体部と、該ボックス本体部に続いて形成され、かつ前記車体パネルにより覆われたヒンジ格納部とを有し、前記車体パネルとインレットボックスとの間をシールする第1シーラが、前記インレットボックスの前記車体パネルに対向するように形成されたフランジ部の全周に渡って配置され、前記車体パネルの燃料注入開口縁部と前記フランジ部との間をシールする第2シーラが、前記第1シーラの内側に配置され、かつ該第2シーラの端末部は前記ボックス本体部とヒンジ格納部との境界部に位置しており、前記第1シーラの少なくとも前記ボックス本体部とヒンジ格納部との下側の境界部に位置する部分は、前記第2シーラの前記端末部に水密に当接していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るシール構造によれば、第1シーラの少なくともインレットボックスのボックス本体部とフランジ格納部との下側の境界部に位置する部分を第2シーラの端末部に水密に当接させたので、第1シーラと第2シーラとによる2重シール構造を採用しつつ、かつ新たな加工や部品を追加することなく、第1シーラと第2シーラの端末部との隙間から水等が侵入するのを防止でき、雨水等の滞留による腐食の問題を解消できる。
【0010】
また本発明は、前記第1シーラを第2シーラの端末部に当接させるだけの構造を採用しているので、コストを上昇させることなく簡単な構造で第1,第2シーラの隙間を閉塞することができる。しかも第2シーラをヒンジ格納部内に目視困難な状態でノズルを挿入して塗布する必要がなく、第2シーラの塗布作業を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1による燃料注入部が形成されたクォータパネルの斜視である。
【図2】前記燃料注入部のリッドを開いた状態の斜視図である。
【図3】前記燃料注入部の車幅方向外側方から見た側面図である。
【図4】前記燃料注入部の断面図(図3のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記燃料注入部の断面図(図3のV-V線断面図)である。
【図6】前記燃料注入部の断面図(図3のVI-VI線断面図)である。
【図7】前記燃料注入部の断面図(図3のVII-VII線断面図)である。
【図8】前記燃料注入部の断面図(図3のVIII-VIII線断面図)である。
【図9】前記燃料注入部の断面図(図3のIX-IX線断面図)である。
【図10】前記燃料注入部のインレットボックスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図10は、本実施例1による車両用燃料注入部のシール構造を説明するための図である。
【0014】
図において、1は自動車の車体後部を構成するクォータパネル(車体パネル)を示している。このクォータパネル1は、外装品としてのクォータアウタパネル2とクォータインナパネル3との外周縁部同士を結合した概略構造を有する。
【0015】
前記クォータパネル1の前縁部にはリヤドア開口1aが形成されており、下縁部には後輪(不図示)の上方を覆うホイールアーチ1bが形成されている。
【0016】
前記クォータパネル1には、前記車体後部に配設された燃料タンク(不図示)に燃料を供給する燃料注入部4が設けられている。
【0017】
この燃料注入部4は、前記クォータアウタパネル2に形成された円形状の燃料注入開口2aと、該クォータアウタパネル2に燃料注入開口2aを車内側から覆うように配置されたインレットボックス5と、該インレットボックス5に配置されたヒンジ部材6を介して前記燃料注入開口2aを開閉するリッド7とを備えている。
【0018】
前記インレットボックス5は、前記燃料注入開口2aを囲むよう円形状に形成された大略碗状のボックス本体部5bと、該ボックス本体部5bに続いて形成され、前記クォータアウタパネル2により車外側から覆われた大略矩形箱状のヒンジ格納部5cとを有する。これによりリッド7を開いたとき前記ヒンジ部材6が外方から見えるのを防止している。
【0019】
前記ボックス本体部5bには燃料供給口5aが形成されており、該燃料供給口5aには燃料タンクに接続された燃料チューブ10がボックス本体部5b内に突出するよう挿入されている(図4参照)。該燃料チューブ10の供給口10aには燃料キャップ12が着脱可能に装着されている。
【0020】
前記燃料チューブ10は、クォータインナパネル3に形成された挿通孔3aを挿通しており、該燃料チューブ10とインレットボックス5の燃料供給口5a及びクォータインナパネル3の挿通孔3aとの間はホールカバー11によりシールされている。
【0021】
前記リッド7は、前記燃料注入開口2aを車外側から覆うように配置され、前記クォータアウタパネル2と連続面をなすように形成された円形状のリッド本体7aと、該リッド本体7aの裏面に取り付けられたインナ部材7bとを有する。
【0022】
このインナ部材7bにはリッド7を閉位置にロックするロック片7cが形成されている。このロック片7cは、前記インレットボックス5に取り付けられたロック部材14に係脱可能に係合している(図5参照)。
【0023】
前記ヒンジ部材6は、前記インレットボックス5のヒンジ格納部5c内に収容されている。このヒンジ部材6は、前記ヒンジ格納部5cに一対の締結部材15により固定されたヒンジ支持板6aと、該ヒンジ支持板6aに支持されたヒンジピン6bと、該ヒンジピン6bに回動可能に取り付けられ、前記リッド7のインナ部材7bに固定されたヒンジアーム6cとを有する。これにより前記リッド7は、ヒンジ部材6により燃料注入開口2aを開く全開位置と、該開口2aを閉じる全閉位置との間で回動可能に支持されている。
【0024】
前記クォータアウタパネル2の燃料注入開口2aの周縁には車内側に屈曲する屈曲部2bが形成されている。この屈曲部2bには、周方向に所定間隔をあけて複数の接合部2cが延長形成されている(図9参照)。
【0025】
前記インレットボックス5の前記各接合部2cに対応する部分には、該接合部2cに当接する当接部5fが形成されている。この各接合部2cと当接部5fとはスポット溶接により接合されている(図2,図3の×印参照)。
【0026】
前記インレットボックス5のボックス本体部5b及びヒンジ格納部5cを含む外周縁には、前記クォータアウタパネル2の裏面に対向するフランジ部5dが外側に屈曲形成されている。
【0027】
前記フランジ部5dには、これの全周に渡って延びる凹状のビード溝5eが形成されている。このビード溝5eは前記フランジ部5dの幅方向中央部に位置するように形成されている。
【0028】
前記ビード溝5e内には、前記クォータアウタパネル2とインレットボックス5との間をシールする第1シーラ17が塗布されている。
【0029】
この第1シーラ17は、前記クォータアウタパネル2に当接させた状態で前記インレットボックス5とクォータアウタパネル2とをスポット溶接することにより、該クォータアウタパネル2に密接している。
【0030】
このように、インレットボックス5をクォータアウタパネル2にスポット溶接により接合したので、従来の接着剤を不要にできる。その結果、接着剤を塗布していた箇所に第1シーラ17を配置することができ、該シーラ17と後述する第2シーラ18とで2重シール構造とすることができ、燃料注入部4のシール性を大幅に向上できる。
【0031】
前記クォータアウタパネル2の屈曲部2bの内端と、前記ボックス本体部5bのフランジ部5dの基部5d′との間には両者2b,5bの間をシールする第2シーラ18が塗布されている。
【0032】
この第2シーラ18は、前記ボックス本体部5bのヒンジ格納部5cを除く部分に配置されている。詳細には、第2シーラ18の上,下の端末部18a,18bは前記ボックス本体部5bのヒンジ格納部5cとの境界部aに位置している。この境界部aで第2シーラ18の端末部18a,18bが途切れるのは、ヒンジ格納部5cがクォータアウタパネル2により覆われていることから、シーラ塗布ノズル(不図示)をヒンジ格納部5cの内部まで挿入することができず、しかも内部が見えない状態での塗布作業となるからである。
【0033】
前記インレットボックス5の下側に位置するビード溝5eの前記境界部aに位置する下側部分5e′は、前記フランジ部5dの基部5d′に重なるように偏位させて形成されている(図3,図10参照)。詳細には、フランジ部5dの中央部から徐々に上方に立ち上がるように傾斜しており、かつ基部5d′に沿って延びるように形成されている。ここで、フランジ部5dの基部5d′とは、フランジ部5dのボックス本体部5bとの稜線部を意味している。
【0034】
そして、前記第1シーラ17の前記下側部分5e′に位置する部分17aは、前記第2シーラ18の端末部18bに水密に当接している。これにより第1シーラ17と第2シーラ18の端末部18bとの隙間は閉塞されている。
【0035】
本実施例によれば、インレットボックス5の前記ビード溝5eの境界部aに位置する下側部分5e′をフランジ部5dの基部5d′に重なるように偏位させ、第1シーラ17の前記下側部分5e′に位置する部分17aを第2シーラ18の端末部18bに水密に当接させたので、第1シーラ17と第2シーラ18とによる2重シール構造を採用しつつ、新たな加工や部品を追加することなく、第1シーラ17と第2シーラ18の端末部18bとの隙間から水等が侵入するのを防止でき、滞留による腐食の問題を解消できる。
【0036】
本実施例では、前記第1シーラ17を第2シーラ18の端末部18bに当接させる構造であるので、コストを上昇させることなく簡単な構造で第1,第2シーラ17,18の隙間を閉塞でき、また第2シーラ18をヒンジ格納部5c内に目視困難な状態でノズルを挿入して塗布する必要がなく、第2シーラ18の塗布作業を改善することができる。
【符号の説明】
【0037】
2 クォータアウタパネル(車体パネル)
2a 燃料注入開口
4 燃料注入部
5 インレットボックス
5b ボックス本体部
5c ヒンジ格納部
5d フランジ部
6 ヒンジ部材
7 リッド
17 第1シーラ
17a 第1シーラの境界部に位置する部分
18 第2シーラ
18a,18b 端末部
a 境界部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルの内面に燃料注入開口を覆うように接合されたインレットボックスに、リッドをヒンジ部材を介して前記燃料注入開口を開閉するように装着した車両用燃料注入部において、前記インレットボックスと車体パネルとの間をシールするシール構造であって、
前記インレットボックスは、前記燃料注入開口を囲むボックス本体部と、該ボックス本体部に続いて形成され、かつ前記車体パネルにより覆われたヒンジ格納部とを有し、
前記車体パネルとインレットボックスとの間をシールする第1シーラが、前記インレットボックスの前記車体パネルに対向するように形成されたフランジ部の全周に渡って配置され、
前記車体パネルの燃料注入開口縁部と前記フランジ部との間をシールする第2シーラが、前記第1シーラの内側に配置され、かつ該第2シーラの端末部は前記ボックス本体部とヒンジ格納部との境界部に位置しており、
前記第1シーラの少なくとも前記ボックス本体部とヒンジ格納部との下側の境界部に位置する部分は、前記第2シーラの前記端末部に水密に当接している
ことを特徴とする車両用燃料注入部のシール構造。
【請求項1】
車体パネルの内面に燃料注入開口を覆うように接合されたインレットボックスに、リッドをヒンジ部材を介して前記燃料注入開口を開閉するように装着した車両用燃料注入部において、前記インレットボックスと車体パネルとの間をシールするシール構造であって、
前記インレットボックスは、前記燃料注入開口を囲むボックス本体部と、該ボックス本体部に続いて形成され、かつ前記車体パネルにより覆われたヒンジ格納部とを有し、
前記車体パネルとインレットボックスとの間をシールする第1シーラが、前記インレットボックスの前記車体パネルに対向するように形成されたフランジ部の全周に渡って配置され、
前記車体パネルの燃料注入開口縁部と前記フランジ部との間をシールする第2シーラが、前記第1シーラの内側に配置され、かつ該第2シーラの端末部は前記ボックス本体部とヒンジ格納部との境界部に位置しており、
前記第1シーラの少なくとも前記ボックス本体部とヒンジ格納部との下側の境界部に位置する部分は、前記第2シーラの前記端末部に水密に当接している
ことを特徴とする車両用燃料注入部のシール構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−152881(P2011−152881A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16729(P2010−16729)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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