説明

車両用物体検出装置

【課題】電磁波を用いて物体を検出する場合、樹木などの低反射物体が自車の進行方向に対して横方向から移動したと誤判断することを防止するようにした車両用物体検出装置を提供する。
【解決手段】自車の進行方向(X軸方向)の物体を検出し(S10)、検出された物体が複数あるとき、複数の物体をグルーピングして物体群と認識し(S12)、認識された物体群内の物体同士の距離の合計値σpxが第1の所定値Lpxを超えるか否か判定し(S18)、時刻tから時刻t-nまでの間における1ステップごとの物体群のX軸方向の位置の差の合計値σpが第2の所定値Lpを超えるか否か判定し(S22)、1ステップごとの物体群のY軸方向の幅の合計値σwが第3の所定値Lwを超えるか否か判定し(S26)、少なくとも2つの判定結果が肯定されるとき(S30)、物体群が静止状態にあると判定する(S32)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用物体検出装置に関し、より具体的には電磁波を用いて検知された物体が横移動しない樹木などの静止物か否かを判定するようにした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波を用いて車両進行方向前方の歩行者などの横移動物体を検知することは良く行われており、その例として下記の特許文献1記載の技術を挙げることができる。その従来技術においては、物体の横移動速度と位置と大きさとを総合的に勘案して横移動物体が危険物体であるか否か判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−251200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電磁波で物体を検知する場合、樹木などの反射強度の弱い物体(低反射物体)を検知するとき、反射強度が弱いために物体の全部ではなく、一部分のみを検知してしまうことがあった。このため、樹木の枝が風によって揺れるなどした場合、物体の一部分が前後左右(X軸方向とX軸に直行する方向)に移動し、あたかも自車に対して向かってくるように検知され、静止物である樹木などが危険物体であると誤判断されることがあり、よって不要な接触回避制御などを行うことがあった。
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1記載の技術では、物体の横移動速度などを用いているため、樹木なども横移動しているものと検知され、静止物を移動物体(危険物体)とするような誤判断を防止することができなかった。
【0006】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、電磁波を用いて物体を検出する場合、樹木などの低反射物体が自車の進行方向に対して横方向から移動したと誤判断することを防止するようにした車両用物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を解決するために、請求項1にあっては、進行方向をX軸方向とすると共に、前記X軸方向に直行する方向をY軸方向とするXY平面上を走行する自車の前記X軸方向の物体を検出する物体検出手段と、前記検出された物体が複数あるとき、前記複数の物体をグルーピングして物体群と認識する物体群認識手段と、前記認識された物体群が静止状態にあるか否か判定する物体判定手段と、前記認識された物体群内の物体同士の距離の合計値σpxが第1の所定値Lpxを超えるか否か判定する物体距離判定手段と、時刻tからnステップ過去の時刻t-nまでの間における1ステップt,t-1,・・・t-nごとの前記物体群の前記X軸方向の位置の差の絶対値|p(t)−p(t-1)|,・・・|p(t-n-1)−p(t-n)|を算出し、前記算出された絶対値を合計して位置合計値σpを求めると共に、前記位置合計値σpが第2の所定値Lpを超えるか否か判定する物体群位置変化判定手段と、前記1ステップt,t-1,・・・t-nごとの前記物体群の前記Y軸方向の幅の差の絶対値|w(t)−w(t-1)|,・・・|w(t-n-1)−w(t-n)|を算出し、前記算出された絶対値を合計して幅合計値σwを求めると共に、前記幅合計値σwが第3の所定値Lwを超えるか否か判定する物体群幅変化判定手段とを備えると共に、前記物体判定手段は、前記物体距離判定手段と物体群位置変化判定手段と物体群幅変化判定手段のうち、少なくとも二つの判定手段における判定結果が肯定されると判定される第1の条件を満たすとき、前記物体群が静止状態にあると判定する如く構成した。
【0008】
請求項2に係る車両用物体検出装置にあっては、前記nステップ内の前記物体群の検知時間を認識する物体群状態認識手段を備え、前記物体判定手段は、前記第1の条件を満たすと共に、前記検知時間が第4の所定値TAVETHR未満であると判定される第2の条件を満たすとき、前記物体群が静止状態にあると判定する如く構成した。
【0009】
請求項3に係る車両用物体検出装置にあっては、前記第1の条件を満たす前記物体群が複数あるとき、そのうちの所定範囲内に存在する物体群同士をグルーピングして物体群グループと認識する物体群グループ認識手段を備え、前記物体群状態認識手段は、前記物体群グループ内の物体群の数Gcntと、前記物体群グループの中のそれぞれの物体群の前記nステップ内の検知時間を平均して平均検知時間Taveとを認識すると共に、前記物体判定手段は、前記第1の条件を満たし、前記平均検知時間Taveが前記第4の所定値TAVETHR未満であると判定されると共に、前記物体群の数Gcntが第5の所定値CNTTHRを超えると判定される第3の条件を満たすとき、前記物体群が静止状態にあると判定する如く構成した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る車両用物体検出装置にあっては、進行方向をX軸方向と、それに直行する方向をY軸方向とするXY平面上を走行する自車のX軸方向の物体を検出する物体検出手段と、検出された物体が複数あるとき、複数の物体をグルーピングして物体群と認識する物体群認識手段と、認識された物体群が静止状態にあるか否か判定する物体判定手段と、認識された物体群内の物体同士の距離の合計値σpxが第1の所定値Lpxを超えるか否か判定する物体距離判定手段と、時刻tからnステップ過去の時刻t-nまでの間における1ステップt,t-1,・・・t-nごとの前記物体群の前記X軸方向の位置の差の絶対値|p(t)−p(t-1)|,・・・|p(t-n-1)−p(t-n)|を算出し、算出された絶対値を合計して位置合計値σpを求めると共に、位置合計値σpが第2の所定値Lpを超えるか否か判定する物体群位置変化判定手段と、1ステップt,t-1,・・・t-nごとの物体群のY軸方向の幅の差の絶対値|w(t)−w(t-1)|,・・・|w(t-n-1)−w(t-n)|を算出し、算出された絶対値を合計して幅合計値σwを求めると共に、幅合計値σwが第3の所定値Lwを超えるか否か判定する物体群幅変化判定手段とを備えると共に、物体判定手段は、物体距離判定手段と物体群位置変化判定手段と物体群幅変化判定手段のうち、少なくとも二つの判定手段における判定結果が肯定されると判定される第1の条件を満たすとき、物体群が静止状態にあると判定する如く構成したので、樹木などの低反射物体を検出するとき、検出される物体同士の前後のばらつきが大きい場合や、検出される物体群の位置が検出時刻ごとに異なる位置に検出される場合、あるいは物体群の幅が時刻ごとに異なる場合、別言すると、静止物である樹木が自車に対して動いているように検出される場合にあっても、正確に物体群を静止状態にあると判定できるため、物体群を構成する複数の物体も静止状態と判定され、よって複数の物体で構成される樹木などの低反射物体を静止物と検知することができ、静止物を移動物体と誤判断することを防止でき、よって不要な接触回避制御などを行うことがない。
【0011】
請求項2に係る車両用物体検出装置にあっては、nステップ内の物体群の検知時間を認識する物体群状態認識手段を備え、物体判定手段は、第1の条件を満たすと共に、nステップ内の物体群の検知時間が第4の所定値TAVETHR未満であると判定される第2の条件を満たすとき、物体群が静止状態にあると判定する如く構成、即ち、物体群の検知時間も判定条件に加えるように構成したので、より一層正確に低反射物体を静止物であると検知することができる。
【0012】
請求項3に係る車両用物体検出装置にあっては、第1の条件を満たす物体群が複数あるとき、そのうちの所定範囲内に存在する物体群同士をグルーピングして物体群グループと認識する物体群グループ認識手段を備え、物体群状態認識手段は、物体群グループ内の物体群の数Gcntと、物体群グループの中のそれぞれの物体群のnステップ内の検知時間を平均して平均検知時間Taveとを認識すると共に、物体判定手段は、第1の条件を満たし、平均検知時間Taveが前記第4の所定値TAVETHR未満であると判定されると共に、物体群の数Gcntが第5の所定値CNTTHRを超えると判定される第3の条件を満たすとき、物体群が静止状態にあると判定する如く構成、別言すると、静止状態にないと判定された物体群を除外し、除外されなかった物体群だけを1つのグループにしてから更に条件を加えて静止状態にあるか否かを判断するように構成したので、より正確に低反射物体を静止物と検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施例に係る車両用物体検出装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図3】図2と同様、図1に示す装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図4】図2の処理における物体のグルーピング方法を説明する説明図である。
【図5】図2の処理における1つの物体群内の物体同士の位置を説明する説明図である。
【図6】図2の処理のnステップにおける物体群のX軸方向の位置、Y軸方向の幅の変化を説明する説明図である。
【図7】図3の処理における物体群を物体群グループと認識する際の考え方を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に即してこの発明に係る車両用物体検出装置を実施するための形態について説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、この発明の実施例に係る車両用物体検出装置を全体的に示す概略図である。
【0016】
図1において、符号10は車両(自車)を示し、その前部には4気筒の内燃機関(図1で「ENG」と示し、以下「エンジン」という)12が搭載される。エンジン12の出力は自動変速機(図1で「T/M」と示す)14に入力される。自動変速機14は前進5速、後進1速の有段式であり、エンジン12の出力はそこで適宜変速されて左右の前輪16に伝えられ、左右の前輪16を駆動しつつ、左右の後輪20を従動させて車両10を走行させる。
【0017】
車両10の運転席にはオーディオスピーカとインディケータからなる警報装置22が設けられ、作動させられるとき、音声と視覚によって運転者に警報する。車両10の運転席床面に配置されたブレーキペダル24は、マスタバック26、マスタシリンダ30およびブレーキ油圧機構32を介して左右の前輪16と後輪20のそれぞれに装着されたブレーキ(ディスクブレーキ)34に接続される。
【0018】
運転者がブレーキペダル24を操作すると(踏み込むと)、その踏み込み力(踏力)はマスタバック26で増力され、マスタシリンダ30は増力された踏み込み力で制動圧を発生し、ブレーキ油圧機構32を介して前輪16と後輪20のそれぞれに装着されたブレーキ34を動作させ、車両10を減速させる(制動する)。
【0019】
ブレーキ油圧機構32は、リザーバに接続される油路に介挿された電磁ソレノイドバルブ群、油圧ポンプ、および油圧ポンプを駆動する電動モータ(全て図示せず)などを備える。電磁ソレノイドバルブ群は駆動回路(図示せず)を介してECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)40に接続される。
【0020】
ECU40はCPU,RAM,ROM、入出力回路などからなるマイクロコンピュータから構成され、4個のブレーキ34は、運転者によるブレーキペダル24の操作とは別に、ECU40によって相互に独立して作動するように構成される。
【0021】
車両10の前部にはレーザレーダ(レーザスキャンレーダ)42が設けられる。レーザレーダ42は車両10の進行方向(X軸方向)に向けてレーザ光を発射(電磁波を送信)し、車両10の進行方向に存在する先行車や樹木などの物体にレーザ光を反射させて得た反射波を受信することにより、物体を検出する。レーザレーダ42の出力は、マイクロコンピュータからなるレーダ出力処理ECU(電子制御ユニット)42aに入力される。
【0022】
レーダ出力処理ECU42aは、樹木などの物体をレーザの複数の反射点として捉え、物体を検出する。具体的には、反射点から各物体の座標上の位置(前後位置(X軸方向の位置)、左右位置(Y軸方向の位置)、高さ(Z軸方向の位置))と反射強度(あるいは反射率)などを取得して物体を検出する。レーダ出力処理ECU42aの出力は、ECU40に送られる。
【0023】
前輪16と後輪20の付近には車輪速センサ46がそれぞれ配置され、各車輪の所定回転角度ごとにパルス信号を出力する。車輪速センサ46の出力は、ECU40に送出される。ECU40は4個の車輪速センサ46の出力をカウントし、その平均値を算出するなどして車両10の速度(走行速度)Vを検出する。
【0024】
図2および図3は、図1に示す装置の動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは、ECU40において所定時間、例えば100msecごとに実行される。
【0025】
以下説明すると、S10において電磁波を用いて全物体の前後位置、左右位置、高さ、反射強度を検出する。即ち、自車(車両)10の進行方向(X軸方向)にレーダ42から電磁波を送信し、進行方向に存在する全ての物体に反射させて得た反射光(反射点)に基づいて物体を検出する。
【0026】
次いでS12に進み、電磁波により検出した情報(前後位置、左右位置、高さ、反射強度など)より、物体をグルーピングする。即ち、検出した複数の物体72をグルーピング(組み分け)して物体群74と認識する。
【0027】
図4は物体をグルーピングする方法を説明する説明図である。図4(a)は運転席から見える走行路と低反射物体の画像である。
【0028】
レーダ42の物体検知において、図4(b)に示す如く、樹木70に照射されたレーザ光は複数の反射点として捉えられる。別言すると、樹木70は複数の物体72として検出される。尚、本願の「物体」とはレーダによって検出された反射点1つ1つを指す。
【0029】
検出された複数の物体72は、図4(c)に示す如く、グルーピングされて物体群74と認識される。1回の検出において物体群74を複数個認識したとき、認識された物体群74の個数を総物体群数Omaxに設定する(図4(c)で総物体群数Omaxは4個となる)。
【0030】
尚、グルーピング方法として、物体72を所定個数ずつまとめて1つの物体群74としても、XY平面(あるいはZY平面)において所定範囲ごとに区切ったブロック(エリア、領域)内に存在する物体72をグルーピングして1つの物体群74と認識しても良い。
【0031】
また、S10,S12の処理はn回(nステップ)繰り返される。別言すると、時刻tからnステップ過去の時刻t-nまでの期間、物体72の検出と物体群74の認定が行われる。
【0032】
図2フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS14に進み、物体群カウンタmを零で初期化し、S16に進み、ばらつき判定カウンタCを零で初期化すると共に、後述する判断フラグF_1(m)にFalseのフラグを立てる。尚、ばらつき判定カウンタCは、後述する如く、物体の前後位置に対するばらつき、物体群の前後位置および幅に対する経時的ばらつきが大きいか否かの判定結果が肯定される回数をカウントする。
【0033】
さらにS18に進み、物体72の前後位置(X軸方向の位置)の合計値σpx(m)が第1の所定値Lpxを超えるか否かを判定する。尚、カッコ内のmは物体群カウンタmの値を示す。
【0034】
この処理について詳説すると、図5に示すように、木や林などの樹木70を検出したとき、樹木70は前後位置(X軸方向の位置)にばらつきのある葉や枝などから構成されるため、車などの一般的な物体に比してX軸方向の位置にばらつきが生じる。換言すると、低反射物体は検出した複数の物体が一時間断面において物体単位での前後位置にばらつきが生じる。
【0035】
即ち、1つの物体群74内にある物体72の前後位置の分散(ばらつき)が一定以上のとき、即ち、物体72同士のX軸方向の距離の合計値σpxが第1の所定値Lpxを超えるとき(S18で肯定)、レーダが木や林などを検出した可能性が高い。
【0036】
従ってS18において、物体群74を認識したとき、1つの物体群74の中に存在する複数個の物体72の内、隣接し合う物体同士の距離をそれぞれ算出し、算出された距離を全て加算して合計値σpxを求め、その合計値σpx(m)が第1の所定値Lpxを超えるか否か判定する。
【0037】
S18で肯定されるときはS20に進み、ばらつき判定カウンタCを1つインクリメントする一方、S18で否定されるときはS20の処理をスキップする。
【0038】
次いでS22に進み、過去n回(nステップ)の物体群74の前後位置(X軸方向の位置)を合計して得た位置合計値σp(m)が第2の所定値Lpを超えるか否か判定する。
【0039】
この判定において、図6に示すように、木や林などの樹木70を検出した場合、風などの影響で葉や枝が揺れることにより、物体群74の前後方向(X軸方向)の位置が検出時刻によってばらつく。そのため、過去n回(nステップ)における前後位置の変化が一定以上、即ち、時間軸における物体群74のX軸方向の位置の合計値である位置合計値σp(m)が第2所定値Lpを超えるとき、レーダが木や林などを検出した可能性が高い。
【0040】
従ってS22の処理では、時刻tからnステップ過去の時刻t-nまでの間における1ステップt,t-1,・・・t-nごとの物体群74のX軸方向の位置の差の絶対値|p(t)-p(t-1)|,・・・|p(t-n-1)−p(t-n)|を算出し、算出された絶対値を合計して位置合計値σpを求めると共に、位置合計値σp(m)が第2の所定値Lpを超えるか否か判定する。別言すると、時間軸において過去nステップ分の物体群74の前後位置のばらつき度合を判定する処理に相当する。
【0041】
S22で肯定されるときはS24に進み、S20同様、ばらつき判定カウンタCを1つインクリメントする一方、S22で否定されるときはS24の処理をスキップする。
【0042】
さらにS26に進み、過去n回(nステップ)の物体群74の幅を合計して得た幅合計値σw(m)が第3の所定値Lwを超えるか否か判定する。
【0043】
この判定も物体群74の前後位置と同様、図6に示すように、木や林などの樹木70を検出した場合、物体群74自体の幅も時間によって変化が大きい(ばらつく)という知見に基づいている。即ち、物体群74の過去n回(nステップ)における幅の変化が一定以上のときは低反射物体である可能性が高い。
【0044】
従ってS26の処理も、S22と同様に、時刻tからnステップ過去の時刻t-nまでの間における1ステップt,t-1,・・・t-nごとの物体群74のY軸方向の幅の差の絶対値|w(t)−w(t-1)|,・・・|w(t-n-1)−w(t-n)|を算出し、算出された絶対値を合計して幅合計値σwを求め、位置合計値σw(m)が第3の所定値Lwを超えるか否か判定する。
【0045】
次いでS26で肯定されるときはS28に進み、S20,S24同様、ばらつき判定カウンタCを1つインクリメントする一方、S26で否定されるときはS28の処理をスキップする。
【0046】
次いでS30に進み、物体群mに対するばらつき判定カウンタCの値が2以上であるか否か、即ちS18,S22,S26で実行された判定処理において、ばらつきが大きいと判定された回数が少なくとも2回以上であるか否か判定する。
【0047】
S30で肯定されるときは、物体群mは低反射物体、即ち、静止物であると判断できるため、S32に進み、静止物か否かの判断結果を示す判断フラグF_1(m)にTrueのフラグを立てる。他方、S30で否定されるときは、S32の処理がスキップされるため、判断フラグF_1(m)はFalseのままとなる。
【0048】
次いでS34に進み、物体群カウンタmを1つインクリメントし、次いでS36に進み、物体群カウンタmが総物体群数Omax以下か否か判断する。S36で肯定されるときはS16に戻り、次(m+1番目)の物体群74に対しても同様の処理を実行する。
【0049】
尚、第1、第2、第3の所定値Lpx,Lp,Lwは、車両10に実装されるレーザレーダ42による低反射物体(例えば樹木や林など)の検知結果を予め実験的に求めることにより得られる。
【0050】
他方、S36で否定されるとき(A)は、図3に示すS38に進み、総物体群数Omax分ある判断フラグF_1(0)からF_1(Omax))内にTrueが立っている物体群(第1と第2の条件のいずれかを満たす物体群)に対し、前後左右位置(X軸方向・Y軸方向の位置)が一定距離L以内にあるものをグループ化する。
【0051】
別言すると、判断フラグF_1(m)にTrueが立っている物体群が複数あるとき、そのうちの所定範囲内に存在する物体群74同士をグルーピングして物体群グループGと認識する。物体群グループGを認識したとき、その認識された物体群グループGの数を総物体群グループ数Gmaxに設定する。
【0052】
具体的には、図7に示すように、物体群AからDは互いにX軸方向・Y軸方向の位置が所定範囲(距離L[m]、例えば1[m])内にあるため、物体群AからDは1つの物体群グループGとしてグルーピングされる一方、物体群Eは物体群AからDの全てに対して所定範囲内に存在していないため、グルーピングされず、物体群グループから除外される。
【0053】
図3フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS40に進み、物体群グループカウンタgを零で初期化する。次いでS42に進み、1つの物体群グループG(g)に含まれる(存在する)物体群の個数を数えて物体群数カウンタGcnt(g)に入力する。
【0054】
次いでS44に進み、物体群グループG(g)の物体群74に対し、平均検知時間Tave(g)を計算する。具体的には、1つの物体群グループG(g)の中のそれぞれの物体群74のnステップ内の検知時間Tを平均し、物体群グループG(g)の中に存在する物体群74の平均検知時間Tave(g)と認識する。即ち、S44の処理は物体群74のnステップ内の検知時間を認識する処理に相当する。
【0055】
次いでS46に進み、物体群数カウンタGcnt(g)が所定個数CNTTHR(第5の所定値)を超えると共に、平均検知時間Tave(g)が所定時間TAVETHR(第4の所定値)未満か否かを判断する。所定時間TAVETHRと所定個数CNTTHRは、樹木などを検出したとき、物体群グループG内の物体群74の個数がある程度多くなると共に、平均検知時間が比較的短くなるという知見に基づいて設定された値である。
【0056】
具体的には、樹木や林のように比較的大きな物体をレーザレーダ42などを用いて検出する場合、樹木や林全体を一つのまとまった物体として検出するのではなく、複数の物体群74の集合体として検出することが想定され、その結果静止物である樹木や林を危険物体であると誤判断する蓋然性が高まることから、レーザレーダ42を用いて樹木などを検出する場合に検出される物体群74の数を予め実験的に求めることにより所定個数CNTTHRが得られる。
【0057】
また、樹木などの低反射物体はその検出精度が低くなるため、物体群74として検知される回数、別言すれば、物体群74として認識される時間が不安定となるため、所定時間TAVETHR以上安定して検知される物体群74に対しては、樹木などの静止物ではないと判断することができる。
【0058】
尚、S46における判定条件を、平均検知時間Tave(g)が所定時間TAVETHR未満か否かのみとしてもよい。
【0059】
S46で肯定されるときはS48に進み、物体群グループG(g)の中の物体群が静止状態にあると判断する。これによって警報装置22(あるいはブレーキ油圧機構32を介しての制動)などの接触回避制御などを不要に行うことがない。
【0060】
尚、図示は省略するが、物体群グループGを作成しない場合や物体群74が単数の場合、S38とS42の処理をスキップし、S44で物体群74のnステップ内の検知時間Tを計算し、S46で検知時間Tが所定時間TAVETHR未満か否かだけを判定する。また、S46で肯定されるときはS48に進み、物体群74が静止状態にあると判断する。
【0061】
次いでS50に進み、物体群グループカウンタgを1つインクリメントし、次いでS52に進み、物体群グループカウンタgがGmax未満か否か判断する。S52で肯定されるときはS42に戻り、次(g+1番目)の物体群グループG(g+1)を引き続き判断する。
【0062】
このように、木や林などの低反射物体の特徴を捉え、木や林のような見え方をする物体(一時間断面において前後位置にばらつきのある物体、前後位置や幅の時間的変化が大きい物体群、検知時間が短い物体群)に対して移動物体と誤判断しない、即ち、静止状態にあると判定することにより、仮に物体の乗り移りなどによって物体が移動したように検知された場合においても、低反射物体を静止状態にあるものと判断することができ、より高い検知精度を得ることができる。
【0063】
以上の如く、この実施例にあっては、進行方向をX軸方向とすると共に、前記X軸方向に直行する方向をY軸方向とするXY平面上を走行する自車10の前記X軸方向の物体72を検出する物体検出手段(レーザレーダ42、レーダ出力処理ECU42a、S10)と、前記検出された物体72が複数あるとき、前記複数の物体72をグルーピングして物体群74と認識する物体群認識手段(ECU40,S12)と、前記認識された物体群74が静止状態にあるか否か判定する物体判定手段(ECU40,S32,S48)と、前記認識された物体群74内の物体72同士の距離の合計値σpxが第1の所定値Lpxを超えるか否か判定する物体距離判定手段(ECU40,S18)と、時刻tからnステップ過去の時刻t-nまでの間における1ステップt,t-1,・・・t-nごとの前記物体群74の前記X軸方向の位置の差の絶対値|p(t)−p(t-1)|,・・・|p(t-n-1)−p(t-n)|を算出し、前記算出された絶対値を合計して位置合計値σpを求めると共に、前記位置合計値σpが第2の所定値Lpを超えるか否か判定する物体群位置変化判定手段(ECU40,S22)と、前記1ステップt,t-1,・・・t-nごとの前記物体群74の前記Y軸方向の幅の差の絶対値|w(t)−w(t-1)|,・・・|w(t-n-1)−w(t-n)|を算出し、前記算出された絶対値を合計して幅合計値σwを求めると共に、前記幅合計値σwが第3の所定値Lwを超えるか否か判定する物体群幅変化判定手段(ECU40,S26)とを備えると共に、前記物体判定手段は、前記物体距離判定手段と物体群位置変化判定手段と物体群幅変化判定手段のうち、少なくとも二つの判定手段における判定結果が肯定されると判定される第1の条件を満たすとき(ECU40,S30)、前記物体群74が静止状態にあると判定する如く構成(S22)したので、樹木などの低反射物体を検出するとき、検出された物体72同士の前後のばらつきが大きい場合や、時刻tから時刻t-nまでに検出される物体群74の位置が時刻ごとに異なる位置に検出される場合、あるいは物体群74の幅が時刻ごとに異なる場合、別言すると、静止物である樹木70が自車に対して動いているように検出される場合にあっても、正確に物体群74を静止状態にあると判定できるため、物体群74を構成する複数の物体72も静止状態と判定され、よって複数の物体で構成される樹木などの低反射物体を静止物と検知することができ、静止物を移動物体と誤判断することを防止でき、よって不要な接触回避制御などを行うことがない。
【0064】
尚、第1の条件を、少なくとも二つの判定手段における判定結果が肯定されるとき(S30)としたが、誤判断をより確実に防止するために、S30においてばらつき判定カウンタCの値が3となるとき、別言すれば、全ての判定手段における判定結果(S18,S22,S26)が肯定されるとき、第1の条件を満たすとしても良い。
【0065】
また、前記nステップ内の前記物体群74の検知時間を認識する物体群状態認識手段(ECU40,S44)を備え、前記物体判定手段は、前記第1の条件を満たすと共に、前記検知時間Tが第4の所定値TAVETHR未満であると判定される第2の条件を満たすとき(S46)、前記物体群74が静止状態にあると判定する(S48)如く構成、即ち、物体群の検知時間も判定条件に加えるように構成したので、より一層正確に低反射物体を静止物であると検知することができる。
【0066】
また、前記第1の条件を満たす前記物体群74が複数あるとき、そのうちの所定範囲内に存在する物体群74同士をグルーピングして物体群グループGと認識する物体群グループ認識手段(ECU40,S38)を備え、前記物体群状態認識手段は、前記物体群グループG内の物体群74の数Gcntと、前記物体群グループGの中のそれぞれの物体群74の前記nステップ内の検知時間を平均して平均検知時間Taveとを認識する(S42,S44)と共に、前記物体判定手段は、前記第1の条件を満たし、前記平均検知時間Taveが前記第4の所定値TAVETHR未満であると判定されると共に、前記物体群の数Gcntが第5の所定値CNTTHRを超えると判定される第4の条件を満たすとき(S46)、前記物体群74が静止状態にあると判定する如く構成(S48)、別言すると、静止状態にないと判定された物体群を除外し、除外されなかった物体群だけを1つのグループにしてから更に条件を加えて静止状態にあるか否かを判断するように構成したので、より正確に低反射物体を静止物と検知することができる。
【0067】
尚、上記においてS18,S22,S26の判断条件を合計値(合計値σpx、位置合計値σp、幅合計値σw)としたが、これらの処理では、ばらつきの大きさを判断できれば良いため、合計値に代え、平均値や標準偏差などを用いても良い。
【0068】
また、上記において判定条件を検知時間T、平均検知時間Taveとしたが、物体群74がnステップ間に検知された回数としても良い。
【0069】
また、上記において物体群74を複数(図3(c)で4個)としたが、単数として認識しても良い。
【0070】
また、上記において電磁波を送信する装置としてレーザレーダを開示したが、それに限られるものではなく、代わりに、あるいはそれに加え、例えばミリ波レーダを用いても良い。
【符号の説明】
【0071】
10 車両(自車)、12 エンジン(内燃機関)、16 前輪、20 後輪、22 警報装置、34 ブレーキ、36 ブレーキスイッチ、40 ECU(電子制御ユニット)、42 レーザレーダ、42a レーダ出力処理ECU、46 車輪速センサ、70 樹木、72 物体、74 物体群、G 物体群グループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.進行方向をX軸方向とすると共に、前記X軸方向に直行する方向をY軸方向とするXY平面上を走行する自車の前記X軸方向の物体を検出する物体検出手段と、
b.前記検出された物体が複数あるとき、前記複数の物体をグルーピングして物体群と認識する物体群認識手段と、
c.前記認識された物体群が静止状態にあるか否か判定する物体判定手段と、
d.前記認識された物体群内の物体同士の距離の合計値σpxが第1の所定値Lpxを超えるか否か判定する物体距離判定手段と、
e.時刻tからnステップ過去の時刻t-nまでの間における1ステップt,t-1,・・・t-nごとの前記物体群の前記X軸方向の位置の差の絶対値|p(t)−p(t-1)|,・・・|p(t-n-1)−p(t-n)|を算出し、前記算出された絶対値を合計して位置合計値σpを求めると共に、前記位置合計値σpが第2の所定値Lpを超えるか否か判定する物体群位置変化判定手段と、
f.前記1ステップt,t-1,・・・t-nごとの前記物体群の前記Y軸方向の幅の差の絶対値|w(t)−w(t-1)|,・・・|w(t-n-1)−w(t-n)|を算出し、前記算出された絶対値を合計して幅合計値σwを求めると共に、前記幅合計値σwが第3の所定値Lwを超えるか否か判定する物体群幅変化判定手段と、
を備えると共に、前記物体判定手段は、前記物体距離判定手段と物体群位置変化手段と物体群幅変化判定手段のうち、少なくとも2つの判定手段における判定結果が肯定されると判定される第1の条件を満たすとき、前記物体群が静止状態にあると判定することを特徴とする車両用物体検出装置。
【請求項2】
g.前記nステップ内の前記物体群の検知時間を認識する物体群状態認識手段、
を備え、前記物体判定手段は、前記第1の条件を満たすと共に、前記検知時間が第4の所定値TAVETHR未満であると判定される第2の条件を満たすとき、前記物体群が静止状態にあると判定することを特徴とする請求項1記載の車両用物体検出装置。
【請求項3】
h.前記第1の条件を満たす前記物体群が複数あるとき、そのうちの所定範囲内に存在する物体群同士をグルーピングして物体群グループと認識する物体群グループ認識手段、
を備え、前記物体群状態認識手段は、前記物体群グループ内の物体群の数Gcntと、前記物体群グループの中のそれぞれの物体群の前記nステップ内の検知時間を平均して平均検知時間Taveとを認識すると共に、前記物体判定手段は、前記第1の条件を満たし、前記平均検知時間Taveが前記第4の所定値TAVETHR未満であると判定されると共に、前記物体群の数Gcntが第5の所定値CNTTHRを超えると判定される第3の条件を満たすとき、前記物体群が静止状態にあると判定することを特徴とする請求項2記載の車両用物体検出装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−238182(P2012−238182A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106911(P2011−106911)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】