説明

車両用発光表示器

【課題】車室内の各部に配備された各機器とその周囲とを画成するとともに、暗闇中では発光することで、当該機器の位置や輪郭を明瞭に視認可能にする。
【解決手段】 ハーフミラー加工を施している表示基体12と、表示基体12内に配置されている発光体24と、発光体24を点灯したり消灯する光源30とからなり、昼間等の外部の明るいときには発光体24が表示基体12の外から目視不能であり、夜間等の外部の暗いときには光源30を介し点灯された発光体24の光が表示基体12を透過する発光表示器において、表示基体12が機器用操作部の周囲をほぼ包囲して当該操作部を画成可能な略枠状に形成されているとともに、発光体24が表示基体12内の枠状略全周に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に配備される機器用操作部付近に設けられて、暗闇時に発光してその位置を表示するための車両用発光表示器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用の発光表示器としては、各種警告灯や照明灯があり、これには例えばバックライトの点灯により絵や文字を浮かび上がらせるものもある。また、運転者が夜間やトンネル走行時等におけるヘッドライトの点灯を確認する表示器として、特許文献1には金属薄膜による半投光膜を投光基体の前面又は後面に形成し、該半投光膜の後方に点灯及び消灯可能な光表示手段(例えば、ヘッドライトの光を青色フィルターを介して彩色し、光ファイバーを通じて投影する)を設けることで、外部光の明るいときには前記半投光膜が外部光を反射してあたかも不投光膜となって見え、外部光の暗いときには点灯された光表示手段の光が前記半透光膜を透過して見えるようにしたものが開示されている。
【特許文献1】実開昭58−180585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車室配備機器中、暗闇の中で発光表示させることが好ましい機器類として、例えばカップホルダの周辺、パワーウインドスイッチやグローブボックスのノブ付近などが挙げられる。但し、従来ではこれらはいずれも二次的で不要なものとして考えられていた。つまり、これら機器類は運転時の安全性とは直接関係しないものであるため、暗視野であったとしても手で探れば操作したり位置確認できる程度のものとして考えられ、また、それら装備品の全てに照明を配したのでは電装量が多くなり、その利便性に比べて維持費が高くなるからである。
【0004】
ところが、最近の乗用車では各種装備品のデザインが多様化しているところから、当該乗用車に始めて乗る人にとっては暗闇の中ではどの位置を操作するかが分らない場合が多くなっている。これは、例えば、ドアインサイドハンドルではロックノブと一体化されているものもあるが、始めて乗る人にとっては暗闇の中でどこをどのように操作してロック解除し、ドアを開けたらよいか分かり難い。また、特に夜間走行中に地図やメモ等を見ようとして、室内灯を点灯しようとする場合には手を天井に触れてスイッチの位置を手探りで確認しなくてはならず、意外に煩わしい操作となっている。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決して、各機器用操作部とその周囲とを画成するとともに、暗闇中ではその画成部そのものが発光することで、当該機器用操作部の位置や輪郭を明瞭に視認できるようにし、かつ意匠的にも新奇な車両用発光表示器を提供するものである。また、他の目的は、部品構成が簡単で光源を共有したり、安価に製作可能な車両用発光表示器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、ハーフミラー加工を施している表示基体と、前記表示基体内に配置されている発光体と、前記発光体を点灯したり消灯する光源とからなり、昼間等の外部の明るいときには前記発光体が前記表示基体の外から目視不能であり、夜間等の外部の暗いときには前記光源を介し点灯された前記発光体の光が前記表示基体を透過する発光表示器において、前記表示基体が機器用操作部の周囲をほぼ包囲して当該操作部を画成可能な略枠状に形成されているとともに、前記発光体が前記表示基体内の枠状略全周に配置されていることを特徴としている。
【0007】
以上の本発明において、ハーフミラー加工とは、例えば、表示基体の内面又は外面に薄層アルミ蒸着を施したり、半蒸着膜フイルムを貼り付けることにより内側より外側に向かって光を透過するが、外部から見た状態では外部光を反射して表示基体内の発光体を目視不能にしたり光沢を持った金属面つまりメタリック調に見えるようにする。また、発光体とは、それ自体では光を発生しないが、外部光源からの光を受けて光るものであればよい。具体的には、例えば、蛍光物質を分散させたエラストマー成形体や発光アクリル成形体、あるいはアクリル成形体の裏面に蛍光物質その他発色物質を塗着させたものなどが挙げられる。また、光源は、通電により前記発光体を発光させる波長の光、特にブラックライトと称される紫外線領域の光を直接発生するものであれば良く、各種ランプや発光ダイオード(LED)の中から適宜選択可能である。
【発明の効果】
【0008】
・請求項1の発明によれば、昼間等の外部が明るいときは表示基体の存在で当該機器用操作部の輪郭が十分に識別され、かつ表示基体内の発光体が目視不能に隠蔽される。夜間等の外部が暗いときは光源を介し点灯される発光体の光が表示基体の枠状略全周から透過されて照らすため当該操作部の輪郭を明瞭に視認できる。このような発光表示器は、斬新性に優れ、車室内に高級感を与える上で好適である。
・請求項2の発明によれば、ヘッドライト点灯と同時に機器用操作部の位置や輪郭を発光によって視認することができる。
・請求項3の発明によれば、切替スイッチの切替により、ヘッドライト点灯と同時に機器用操作部の輪郭を視認させたり、ヘッドライトとは無関係に点灯または消灯することもでき、ドライバーの必要に応じたモードを適宜選択できる。
・請求項4によれば、ドア開閉用インナーハンドルの輪郭が発光表示されるため、暗視野状態での意匠性や操作性を向上できる。
・請求項5の発明によれば、光源と発光体とを光ファイバーで結べば良いため、構造も簡単で、より経済的である。なお、ドアー等の可動部に光ファイバーを配管する場合には、他のワイヤーハーネス類などとともに束ねて蛇腹状のフレキシブル管の内部を通じて配管することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の最良の実施の形態につき添付図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2は本発明を適用したドア及び車室内の全体説明図である。図3は図2のA部つまりドアに設けられている発光表示器を拡大して示す斜視図、図4は図3のB−B線断面図、図5は(a),(b)は発光表示器の作用をイメージとして示す模式正面図である。なお、図1,図2では5人乗りの4ドア車を例示している。
【0010】
(車室構成)図1,図2において、運転席側ドア1はドアインナーパネル2に一体化されたドアトリム3を有している。該ドアトリム3には、適宜位置にロックノブ付のドアインナーハンドル4、及びパワーウインドウスイッチ5などが配置されている。また、助手席側及び後部座席側ドア1にも、図2のごとくドアトリム3の適宜位置に前記と同様のドアインナーハンドル4及びそれぞれのドアウインドウスイッチ6が設けられている。更に、運転席と助手席との間に配設されているセンターコンソールには凹状のカップホルダー8が設けられ、助手席側の前方にはグローブボックスが配置され、リッドにより開閉可能に覆われ、天井部には室内灯が配置されている。そして、以上のドアインナーハンドル4、パワーウインドウスイッチ5、それぞれのパワーウインドウスイッチ6、カップホルダー8、並びに後述するグローブボックス開閉用ノブ、室内灯の周囲にはそれぞれの外形状に応じた形状の発光表示器用の表示基体12が配置されている。
【0011】
(発光表示器)次に、一例としてドアインナーハンドル4を囲う発光表示器について、図3〜図5を用いて説明する。まず、図3において、ドアインナーハンドル4は、中央が凹所になった略円盤形をなす梨地表面仕上げされた樹脂成形体であって、その一端にロックノブ4aが設けられ、中央の凹所を利用して引手部分4bが形成され、ロックノブ4aの押圧により、ロック及びロック解除がなされ、引手部分4bに指を差し込んで引くことでラッチが掛け外され、次いで外側へ押すことで、ドア1を閉から開状態にできるようになっている。
【0012】
表示基体12は、ドアインナーハンドル4の膨出形状にほぼ連続するリング形状をなし、図4に示されるように、その中心の円筒部12aがマウントベース14に固定され、弧状の周縁がドアトリム3の表面に突き当てた状態で固定されている。つまり、この表示基体12は、アクリル樹脂などの透明成形体であって、内面(外面でもよい)にハーフミラー加工として、例えば、アルミ蒸着を施した薄いアルミ蒸着層12bが形成されている。従って、表示基体12は、外方から見た場合、銀の鏡面加工したメタリック調の外観を呈し、これによって昼間等の外部の明るいときにはメタリック調の外観により、ドアインナーハンドル4周囲とドアトリム3との間の部分を装飾する。
【0013】
マウントベース14は、その周囲をドアインナーパネル2の開口部に係止爪16を介して固定され、中心に立ち上げた筒状部18を有している。筒状部18には、係止爪20が設けられ、該係止爪20に対し前記円筒部12aに設けられた爪を係合することで、表示基体12を連結している。また、マウントベース14の周縁部にも筒状の隔壁22が突設され、表示基体12を中心側と周辺側とに仕切っている。そして、隔壁22で仕切られた内側には、リング状のエラストマー素材からなる発光体24が内蔵されているとともに、マウントベース14の上下を貫通して挿通された光ファイバー26の出光端が発光体24の対応部に対向配置されている。
【0014】
ここで、発光体24は、例えば、リング状に成形された商品名エラストマーライトガード(クラベ社製)である。光ファイバー26の他端側は、ドア1の開閉端に設けた蛇腹状のフレキシブルチューブを通じて車体前部側に固定された後述する光源に対向位置されている。昼間等の外部の明るいときには図5(a)に示すように、表示基体12はその全面がメタリック調の外観を呈している。また、夜間等において、後述する光源の点灯により、光ファイバー26を通じて発光体24が光の照射を受け、全体が蛍光色を帯び、表示基体12を通じてその光が全周に亘って出光し、図5(b)に示すようにドアインナーハンドル4の輪郭を明瞭に表示する。
【0015】
なお、発光体24としては、エラストマー成形体を用いたが、これ以外でもよく、例えば、蛍光物質を分散させた発光アクリル板成形体、或いはアクリル板成形体の裏面に蛍光物質その他発色物質を塗着させたものなども採用可能である。また、光ファイバー26は、その伝送距離も短いことから安価なものでよく、入光端及び出光端の接続構造も適宜に設定されるが、通常はドア1のヒンジ端に他のワイヤーハーネス類等とともに束ねて蛇腹状フレキシブル管の内部を通じて配管されるため、繰返し開閉してもキンクしたり断線する虞のない材質を選ぶことが必要である。
【0016】
(回路構成)図6は以上の発光表示器の接続構成例を示している。図6において、符号9は、前述したグローブボックス開閉用ノブ、符号10は室内灯であり、それぞれの外形に沿った形状の表示基体12により縁取りされ、又、表示基体12の内側に配置された前述の発光体24及びこれに接続された光ファイバー26を有している。そして、各光ファイバー26は、その取付位置に応じてドア1の内部または車体天井裏などを引き回され、車体パネルの所定箇所に配置された光源としてのLED30にその入光端面を対向させており、それぞれがLED30の焦点位置に向くよう円弧状に取巻いている。
【0017】
LED30は点灯回路32に切替スイッチ34を介して接続されている。切替スイッチ34は、ヘッドライト点灯スイッチ36に連動して、スイッチ36を入にすると、自動的に点灯する場合と、スイッチ36とは別個に点灯、消灯を行う場合の何れかに切替可能である。従って、この切替スイッチ34は、通常、インストルメントパネルなどドライバーに近い場所に配置し、ドライバーの操作によりヘッドライト点灯と同時に発光表示器を点灯させたり、或いはこれとは無関係に点灯消灯を行わせるなどのモードを選択することができる。
【0018】
なお、本発明は以上の実施形態に何ら制約されるものではない。一例としては、発光させたい対象機器用操作部が少ない場合等には光ファイバー26を用いることなく、発光体24の裏面側に専用の光源を直に対向配置してもよい。また、光源としてLED30を用いた理由は、インストルメントパネルに装備された計器類のように弱光であっても暗闇の中では十分に視認性があること、低消費電力で長寿命であること、及び最近では高輝度で各種波長のLEDが開発されているからである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の発光表示器を適用した運転席側ドアを示す説明図である。
【図2】同車内構成を示す説明図である。
【図3】図2のA部を拡大して示す斜視図である
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】(a),(b)は発光表示器の作用を示す模式正面図である。
【図6】発光表示器の接続構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0020】
1…ドア(2はインナーパネル、3はドアトリム)
4…ドアインナーハンドル
5,6…パワーウインドウスイッチ
12…表示基体(12bはアルミ蒸着層)
14…マウントベース
24…発光体
26…光ファイバー
30…LED(光源)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフミラー加工を施している表示基体と、前記表示基体内に配置されている発光体と、前記発光体を点灯したり消灯する光源とからなり、昼間等の外部の明るいときには前記発光体が前記表示基体の外から目視不能であり、夜間等の外部の暗いときには前記光源を介し点灯された前記発光体の光が前記表示基体を透過する発光表示器において、
前記表示基体が機器用操作部の周囲をほぼ包囲して当該操作部を画成可能な略枠状に形成されているとともに、前記発光体が前記表示基体内の枠状略全周に配置されていることを特徴とする車両用発光表示器。
【請求項2】
前記光源がヘッドライト点灯用スイッチと連動して点灯する請求項1に記載の車両用発光表示器。
【請求項3】
前記光源が切替スイッチにより、ヘッドライト点灯用スイッチと連動又は非連動の何れかを選択可能になっている請求項1又は2に記載の車両用発光表示器。
【請求項4】
前記機器用操作部が、ドアの内側に配置されるドア開閉用インナーハンドルである請求項1から3の何れかに記載の車両用発光表示器。
【請求項5】
前記光源が前記表示基体外に配置されているとともに、入光端を前記光源に対向配置し、出光端を前記発光体の対応部に対向配置している光ファイバーを有している請求項1から4の何れかに記載の車両用発光表示器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−298023(P2006−298023A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119110(P2005−119110)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】