説明

車両用盗難防止システム

【課題】より安全性の高い車両用盗難防止システムを提供する。
【解決手段】キーレスエントリシステム100では、ECU150のCPU154及びリモコンキー120のCPU124が、メモリ126に記録された第1関数式データD1に規定される関数式F1及びメモリ156に記録された第1関数式データD1に規定される関数式F1を、それぞれ新たな関数式F2に切り替える。この構成によれば、リモコンキー120及びECU150で用いられる関数式Fをそれぞれ新たな関数式Fに切り替えることができる。これにより、リモコンキー120及びECU150で用いられる関数式Fを予測することが困難になるため、キーレスエントリシステム100の安全性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キーレスエントリシステム、スマートエントリシステム、スマートスタートシステムといった、携帯機から送信される認証コードに基づいて、ドアの施解錠、エンジンの始動等の車載装置の動作を許可する車両用盗難防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の盗難防止の目的で、キーレスエントリシステム、スマートエントリシステム、スマートスタートシステム等の盗難防止システムが採用されている。
【0003】
キーレスエントリシステム及びスマートエントリシステムは、車両のドアに取り付けられているシリンダにキーを差し込まなくても、携帯機と車載認証機器との間で無線通信を行うことによりドアの施解錠を行うシステムをいう。
【0004】
キーレスエントリシステムでは、携帯機に設けられたボタンを使用者が押すことで認証コードが車載認証機器に送信され、認証コードが、車載認証機器に記録されている基準コードと照合され、認証コードと基準コードが完全一致する等その照合結果が所定条件を満たす場合、ドアが施解錠される。
【0005】
スマートエントリシステムでは、使用者が車両のドアハンドルに触れる等のトリガー条件が満たされたときに車載認証機器から携帯機に認証コードの要求信号が送信され、この要求信号に応じて携帯機が車載認証機器に認証コードが送信され、認証コードが、車載認証機器に記録されている基準コードと照合され、認証コードと基準コードが完全一致する等その照合結果が所定条件を満たす場合、ドアが施解錠される。スマートエントリシステムでは、使用者が携帯機のボタン操作を行わなくてもドアの施解錠が可能となる。
【0006】
スマートスタートシステムは、キーをシリンダに差し込まなくても、携帯機と車載認証機器との間で無線通信を行うことによりエンジンの始動を許可するシステムをいう。スマートスタートシステムでは、運転手がイグニッションノブを切り替えたときに車載認証機器から携帯機に認証コードの要求信号が送信され、この要求信号に応じて携帯機から車載認証機器に認証コードが送信され、認証コードが、車載認証機器に記録されている基準コードと照合され、認証コードと基準コードが完全一致する等その照合結果が所定条件を満たす場合、エンジンの始動が許可される。
【0007】
上述の通り、上記各システムでは、携帯機と車載認証機器との間で無線通信が行われる。携帯機から車載認証機器に送信される信号の内容が一定である場合、携帯機からの信号が悪意の第三者に傍受され、これと同一の信号が車載認証機器に別途送信されると、車載認証機器は、この信号が携帯機から送信されてきたものと誤認し、車両のドアの解錠等の動作を許可してしまう。その結果、車両が盗難される可能性も存在する。
【0008】
このような可能性を減少させるために生み出された技術の1つが、ローリングコードである(特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。ローリングコードは、携帯機から車載認証機器への無線通信が行われる度に規則的に更新されるコードである。例えば、関数式f(n+1)=f(n)+1で更新されるローリングコードは、無線通信の度に1が加算され、常に変化する。上記関数式及び前回のローリングコードは、携帯機及び車載認証機器に記録されている。これにより、仮に携帯機からの信号が傍受され、これと同一の信号が車載認証機器に送信されても、車載認証機器は、あるべきローリングコードの値と異なるため、ドアの解錠等の動作を許可しない。
【0009】
なお、例えば、キーレスエントリシステムであれば、携帯機と車載認証機器とが無線通信できない程離れた状態で携帯機のボタンが押されることや、意図しない通信エラーが起こることも考えられる。このため、車載認証機器は、あるべきローリングコードと同一の値が送信されてきた場合のみならず、一定の許容度を持って認証を行う。例えば、あるべき値が100のとき、100〜120の場合に真の携帯機から送信されてきたローリングコードであると判定し、ドアの解錠を許可する。
【0010】
ローリングコードについては、安全性向上のため、様々な試みがなされている。
【0011】
特許文献2では、固定のIDコードと可変のローリングコードを別々のビットとして送信するのではなく、IDコードをローリングコードに対応させて変化させ、IDコード自体も可変にすることで固定部分を少なくして安全性を高めている。
【0012】
また、特許文献3では、設計者に知らされない車両固有のキーコードを用いてローリングコードを暗号化することで安全性を高めている。
【0013】
【特許文献1】特開平1−278671号公報
【特許文献2】特開平8−102982号公報
【特許文献3】特開平10−61277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、携帯機と車載認証機器との通信が無線で行われる以上、通信信号は常に傍受される危険にさらされており、より安全性の高い技術が常に求められている。
【0015】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、より安全性の高い車両用盗難防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この項では、理解の容易化のために添付図面中の符号を付けて説明する。この項に記載した内容がその符号を付けたものに限定して解釈されることを意図したものではない。
【0017】
この発明に係る車両用盗難防止システム(100、200、100A)は、認証コード(CAU)と、前記認証コードを更新する第1関数式(F)を規定する第1関数式データ(D)とを記録する第1記録部(126、226)を有し、前記第1関数式に基づいて更新された前記認証コードを送信する携帯機(120、220)と、前記認証コードを受信し、この認証コードを基準コードと照合し、その結果に応じて車載機器(158、282)の作動状態を制御する車載認証手段(150、250)と、を備えるものであって、前記車載認証手段は、前記基準コードと、前記第1関数式と同一の関数式であり、前記基準コードを更新する第2関数式(F)を規定する第2関数式データ(D)とを記録する第2記録部を有し、受信した前記認証コードと、前記第2関数式に基づいて更新された前記基準コードとを照合し、前記車両用盗難防止システムは、さらに、前記第1記録部に記録された第1関数式データに規定される第1関数式を新たな第1関数式に及び前記第2記録部に記録された前記第2関数式データに規定される第2関数式を新たな第2関数式にそれぞれ切り替える関数式切替手段を有することを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、携帯機及び車載認証手段で用いられる第1関数式及び第2関数式をそれぞれ新たな第1関数式及び第2関数式に切り替えることができる。これにより、携帯機及び車載認証手段で用いられる関数式を予測することが困難になるため、車両用盗難防止システムの安全性を高めることができる。
【0019】
ここで、前記第1記録部は、相互に異なる複数の第1関数式を規定する複数の第1関数式データを記録し、前記第2記録部は、前記複数の第1関数式データが規定する前記複数の第1関数式と同一の複数の第2関数式を規定する複数の第2関数式データを記録し、前記車載認証手段は、前記複数の第1関数式データのいずれを選択すべきかを示す識別子を前記携帯機に送信し、前記携帯機は、前記識別子に基づいて前記第1関数式データを選択してもよい。
【0020】
これにより、携帯機における第1関数式の切替えに際し、車載認証手段から携帯機への通信は、第1関数式データとして使用される第2関数式データ自体ではなく、第1関数式データの識別子のみで足りる。このため、車載認証手段から携帯機への通信データ量を減少させることができ、通信の高速化を図ることができる。また、携帯機には、識別子のみが送信されるため、第2関数式データ自体が送信される場合よりも、第2関数式データの内容が漏れる可能性が低く、車両用盗難防止システムの安全性を高めることができる。
【0021】
或いは、前記第1記録部は、前記第1関数式を規定する第1関数式データを1つのみ記録し、前記第2記録部は、相互に異なる複数の第2関数式を規定する複数の第2関数式データを記録し、前記車載認証手段は、前記第1記録部に記録された前記第1関数式データに規定される前記第1関数式とは異なる新たな第2関数式を規定する第2関数式データを前記第2記録部から読み出して前記携帯機に送信し、前記携帯機は、受信した前記第2関数式データを新たな第1関数式データとして記録し、この新たな第1関数式データにより規定される新たな第1関数式を前記認証コードの次回の更新に用いてもよい。
【0022】
これにより、携帯機の第1記録部には、第1関数式データが常に1つのみ記録されることとなる。このため、第1記録部の記録容量を少なくすることができ、第1記録部のサイズを小さくすることができるので、携帯機を小型化することが可能となる。
【0023】
上記において、前記車載認証手段の第2記録部に対し、新たな第2関数式を規定する新たな第2関数式データを無線通信により供給する新第2関数式データ供給手段(300)を、車外に有することが好ましい。
【0024】
これにより、第2記録部に記録される第2関数式データ、及びこの第2関数式データに基づき第1記憶部に記録される第1関数式データを車外から更新することが可能となる。これにより、第1関数式データ及び第2関数式データの更新が容易となり、車両用盗難防止システムの安全性をさらに高めることができる。
【0025】
前記切替え後の新たな第1関数式及び新たな第2関数式の選択は、前記車載認証手段によりランダムに生成されるランダムコードにより行うことができる。或いは、前記切替え後の新たな第1関数式及び新たな第2関数式の選択は、車両に搭載された計測機器の計測値に応じて行うこともできる。
【0026】
これらの方法により第1関数式及び第2関数式を選択することにより、第1関数式及び第2関数式の選択を外部から判別しづらくなり、車両用盗難防止システムの安全性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、関数式切替手段により、第1関数式及び第2関数式をそれぞれ新たな第1関数式及び第2関数式に切り替えることができる。これにより、認証コード及び基準コードの更新に用いられる関数式を予測することが困難になるため、車両用盗難防止システムの安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の各実施形態について図面を参照して説明する。
【0029】
A.第1実施形態(キーレスエントリシステム)
1.システムの構成
図1は、この発明の第1実施形態に係るキーレスエントリシステム100を示している。キーレスエントリシステム100は、リモコンキー120(携帯機)と、このリモコンキー120と対になっているECU(electric control unit)150(車載認証機器)と、を有する。
【0030】
ここで、リモコンキー120は、ボタン122と、CPU124と、メモリ126と、RF信号送信アンテナ128と、LF信号受信アンテナ130とを有する。
【0031】
ボタン122は、ユーザが車両のドア(図示せず)を施解錠する際に押すものであり、ノーマル・オープン式のプッシュ型ボタンである。ボタン122は、CPU124に接続されており、ボタン122が押されると、CPU124に信号が出力される。
【0032】
CPU124は、ボタン122に加え、メモリ126、RF信号送信アンテナ128及びLF信号受信アンテナ130に接続され、リモコンキー120全体の動作を制御する。CPU124の機能の詳細については後述する。
【0033】
メモリ126は、車両の識別コード(IDコード)CID、ローリングコードR及びローリングコードRを更新する関数式Fを規定する関数式データD等のデータを記録する。メモリ126としては、EEPROM(Erasable Programmable ROM)やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリが好適である。本実施形態では、関数式Fの1つである関数式F1を規定する第1関数式データD1がメモリ126に記録されている。
【0034】
RF信号送信アンテナ128は、315[MHz]の高周波信号(RF信号)を生成するRF信号生成回路を含み、ECU150に対してRF信号を送信する。
【0035】
LF信号受信アンテナ130は、125[kHz]の低周波信号(LF信号)を処理するLF信号処理回路を含み、ECU150から送信されたLF信号を受信する。
【0036】
一方、ECU150は、RF信号受信アンテナ152と、CPU154と、メモリ156と、ドアロック機構158と、LF信号送信アンテナ160と、イグニッションスイッチ162とを有する。
【0037】
RF信号受信アンテナ152は、RF信号を処理するRF信号処理回路を含み、リモコンキー120から送信されたRF信号を受信する。
【0038】
CPU154は、RF信号受信アンテナ152、メモリ156、ドアロック機構158、LF信号送信アンテナ160及びイグニッションスイッチ162に接続され、ECU150全体の動作を制御する。CPU154の機能の詳細については後述する。
【0039】
メモリ156は、車両のIDコードCID、ローリングコードR、ローリングコードRを更新する複数の関数式Fを規定する複数の関数式データD、及び現在選択されている関数式データDの番号等のデータを記録する。メモリ156としては、EEPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリが好適である。本実施形態では、メモリ156には、複数の関数式Fとして関数式F1、F2、F3を規定する第1関数式データD1、第2関数式データD2、第3関数式データD3が記録されている。また、メモリ156には、現在選択されている関数式データDの番号として、第1関数式データD1を示す番号「1」が記録されている。ECU150のメモリ156に記録されている第1関数式データD1と、リモコンキー120のメモリ126に記録されている第1関数式データD1は、同一のものである。
【0040】
ドアロック機構158は、CPU154からの命令に応じて車両のドア(図示せず)の施解錠を行う。
【0041】
LF信号送信アンテナ160は、LF信号を生成するLF信号生成回路を含み、リモコンキー120に対してLF信号を送信する。
【0042】
イグニッションスイッチ162は、リモコンキー120を挿入するシリンダと一体になっている。リモコンキー120が前記シリンダに挿入された状態でリモコンキー120が回されると、リモコンキー120の位置に応じてラジオ等のアクセサリの使用及びエンジンの始動が可能となる。
【0043】
2.ドアの解錠フロー
図2には、第1実施形態に係るキーレスエントリシステム100において、車両のドア(図示せず)を解錠するフローチャートが示されている。
【0044】
ステップS1において、リモコンキー120のボタン122が使用者により押されたことをCPU124が検出すると、ステップS2において、CPU124は、メモリ126から車両のIDコードCID及びローリングコードR(ここでは、前回使用されたローリングコードR0)からなる認証コードCAUを読み出し、前回のローリングコードR0を関数式F1を用いて更新し、新たなローリングコードR1を生成する。関数式F1は、例えば、F1(n+1)=F1(n)+1で定義される。すなわち、ボタン122を押す度に、ローリングコードの値が1ずつ増加する。新たなローリングコードR1は、前回のローリングコードR0の代わりにメモリ126に記録される。
【0045】
ステップS3において、CPU124は、車両のIDコードCID及びローリングコードR1からなる認証コードCAUを示すRF信号をRF信号送信アンテナ128から送信する。
【0046】
ステップS4において、ECU150のRF信号受信アンテナ152が、リモコンキー120から送信されたRF信号を受信すると、ステップS5において、CPU154は、RF信号から車両のIDコードCIDを読み出し、メモリ156に記録されている車両のIDコードCIDと照合する。RF信号に含まれるIDコードCIDと、メモリ156に記録されているIDコードCIDが一致する場合、ステップS6に進み、一致しない場合、ステップS11において、CPU154は、処理を終え、ドアは施錠状態のままとされる。
【0047】
ステップS6において、CPU154は、メモリ156に記録されているローリングコードR(ここでは、前回使用されたローリングコードR0)を関数式F1を用いて更新し、新ローリングコードR2を生成する。
【0048】
ステップS7において、CPU154は、ローリングコードR1をローリングコードR2と照合する。ステップS8において、ローリングコードR1とローリングコードR2との誤差が所定の範囲内である場合、ステップS9において、CPU154は、リモコンキー120から受信したローリングコードR1をメモリ156に更新記録する。誤差が所定の範囲内である場合とは、例えば、リモコンキー120のボタン122の使用者による空押しを考慮し、ローリングコードR1がローリングコードR2に対して0〜+10である場合である。
【0049】
次いで、ステップS10において、CPU154は、ドアロック機構158に対し、車両のドア(図示せず)を解錠する指令を出し、この指令を受けたドアロック機構158は、車両のドアを解錠する。
【0050】
ステップS8において、ローリングコードR1とローリングコードR2との誤差が所定の範囲内にない場合、ステップS11において、CPU154は、ドアロック機構158に対し、車両のドアを解錠する指令を出さず、車両のドアは施錠状態が維持される。
【0051】
なお、上記では、ドアを解錠する処理を示したが、ドアを施錠する処理においても同様の処理が可能である。
【0052】
3.関数式の切替えフロー
図3には、リモコンキー120及びECU150で用いられる関数式Fを切り替えるフローチャートが示されている。
【0053】
ステップS21において、イグニッションスイッチ162のシリンダにリモコンキー120が挿入された状態で、リモコンキー120がエンジン始動の位置に回転されたことをECU150のCPU154がイグニッションスイッチ162からの信号により検出する。
【0054】
ステップS22において、CPU154は、第1関数式データD1以外の関数式データD、すなわち、第2関数式データD2又は第3関数式データD3を選択する(ここでは、便宜的に「第2関数式データD2」を選択したものとする。)。第2関数式データD2により規定される関数式F2は、例えば、F2(n+1)=F2(n)+100で定義され、第3関数式データD3により規定される関数式F3は、例えば、F3(n+1)=F3(n)−50で定義される。次いで、ステップS23において、CPU154は、メモリ156において現在選択されている関数式データDの番号を、第1関数式データD1を示す番号「1」から第2関数式データD2を示す番号「2」に書き替える。
【0055】
ステップS24において、CPU154は、第2関数式データD2をメモリ156から読み出し、LF信号送信アンテナ160を介してリモコンキー120に送信する。
【0056】
ステップS25において、リモコンキー120のCPU124は、ECU150から送信された第2関数式データD2をLF信号受信アンテナ130を介して受信する。ステップS26において、CPU124は、メモリ126に記録されている関数式データDを、第1関数式データD1から第2関数式データD2に書き替える。
【0057】
4.関数式Fの選択方法
図3のステップS22における新たな関数式データDの選択は、例えば、次のような方法で行うことができる。
【0058】
(1)ランダム変数による選択
ECU150にランダム変数生成回路を設けておき、このランダム変数生成回路から出力されるランダム変数に応じて関数式データDを選択することができる。例えば、ランダム変数生成回路により、「1」、「2」の値をランダムに生成するようにしておき、第1関数式データD1が現在選択されているときに「1」が出た場合は、第2関数式データD2を選択し、「2」が出た場合は、第3関数式データD3を選択する。換言すると、「1」が出た場合、より小さい番号の関数式データDが選択され、「2」が出た場合、より大きい番号の関数式データDが選択される。このため、第2関数式データD2が現在選択されており、ランダム変数が「1」であれば、第1関数式データD1が選択され、ランダム変数が「2」であれば、第3関数式データD3が選択される。同様に、第3関数式データD3が現在選択されており、ランダム変数が「1」であれば、第1関数式データD1が選択され、ランダム変数が「2」であれば、第2関数式データD2が選択される。
【0059】
或いは、ランダム変数生成回路により「1」、「2」、「3」のランダム変数を生成させ、ランダム変数が「1」のときは第1関数式データD1、ランダム変数が「2」のときは第2関数式データD2、ランダム変数が「3」のときは第3関数式データD3を選択するような構成も可能である。
【0060】
(2)計測機器の計測値による選択
バッテリの電圧値を計測するバッテリ電圧計、ガソリンの残量を計測するガソリン残量計、累積走行距離を計測する走行距離計、座席の位置を検出する座席位置センサ等の計測機器の計測値に応じて関数式データDを選択することができる。
【0061】
例えば、バッテリ電圧計であれば、バッテリの電圧値が13V以上であれば、第1関数式データD1を選択し、バッテリの電圧値が12V以上13V未満であれば、第2関数式データD2を選択し、バッテリの電圧値が12V未満であれば、第3関数式データD3を選択するという構成を用いることができる。
【0062】
5.第1実施形態の効果
第1実施形態に係るキーレスエントリシステム100では、ECU150のCPU154及びリモコンキー120のCPU124が、メモリ126に記録された第1関数式データD1に規定される関数式F1及びメモリ156に記録された第1関数式データD1に規定される関数式F1を、それぞれ新たな関数式F2に切り替える。
【0063】
この構成によれば、リモコンキー120及びECU150で用いられる関数式Fをそれぞれ新たな関数式Fに切り替えることができる。これにより、リモコンキー120及びECU150で用いられる関数式Fを予測することが困難になるため、キーレスエントリシステム100の安全性を高めることができる。
【0064】
リモコンキー120のメモリ126は、関数式Fを規定する関数式データDを1つのみ記録し、ECU150のメモリ156は、複数の関数式Fを規定する複数の関数式データDを記録し、ECU150は、リモコンキー120のメモリ126に記録された第1関数式データD1に規定される関数式F1とは異なる新たな関数式F2を規定する第2関数式データD2をメモリ156から読み出してリモコンキー120に送信し、リモコンキー120は、受信した第2関数式データD2を新たな関数式データDとして記録し、この新たな第2関数式データD2により規定される新たな関数式F2を認証コードCAUの次回の更新に用いる。
【0065】
これにより、リモコンキー120のメモリ126には、関数式データDが常に1つのみ記録されることとなる。このため、メモリ126の記録容量を少なくすることができ、メモリ126のサイズを小さくすることができるので、リモコンキー120を小型化することが可能となる。
【0066】
関数式データDの切替え後にリモコンキー120及びECU150で用いられる新たな関数式Fの選択は、ECU150によりランダムに生成されるランダムコードにより行うことができる。或いは、上記新たな関数式Fの選択は、車両に搭載された計測機器の計測値に応じて行うこともできる。
【0067】
これらの方法により関数式Fを選択することにより、関数式Fの選択を外部から判別しづらくなり、キーレスエントリシステム100の安全性をさらに高めることができる。
【0068】
B.第2実施形態(スマートキーシステム)
1.システムの構成
図4は、この発明の第2実施形態に係るスマートキーシステム200を示している。スマートキーシステム200は、スマートエントリシステム及びスマートスタートシステムを兼ねるものであり、スマートキー220(携帯機)と、このスマートキー220と対になっているECU250(車載認証機器)と、を有する。
【0069】
ここで、スマートキー220は、LF信号受信アンテナ222と、CPU224と、メモリ226と、LF信号送信アンテナ228とを有する。スマートキー220には、第1実施形態のボタン122のようなボタンは存在しない。また、いずれのアンテナもLF信号用のアンテナである。
【0070】
LF信号受信アンテナ222は、125[kHz]の低周波信号(LF信号)を処理するLF信号処理回路を含み、ECU250から送信されたLF信号を受信する。
【0071】
CPU224は、LF信号受信アンテナ222、メモリ226及びLF信号送信アンテナ228に接続され、スマートキー220全体の動作を制御する。CPU224の機能の詳細については後述する。
【0072】
メモリ226は、車両の識別コード(IDコード)CID、ローリングコードR、ローリングコードRを更新する関数式Fを規定する関数式データD、及び現在選択されている関数式データDの番号等のデータを記録する。本実施形態において、メモリ226には、複数の関数式Fとしての関数式F1、F2、F3を規定する第1関数式データD1、第2関数式データD2、第3関数式データD3が記録されている。また、メモリ226には、現在選択されている関数式データDの番号として、第1関数式データD1を示す番号「1」が記録されている。
【0073】
LF信号送信アンテナ228は、LF信号を生成するLF信号生成回路を含み、ECU250に対してLF信号を送信する。
【0074】
一方、ECU250は、ドアハンドルセンサ252と、CPU254と、メモリ256と、LF信号送信アンテナ258と、LF信号受信アンテナ260と、ドアロック機構262と、イグニッションスイッチ264と、を有する。
【0075】
ドアハンドルセンサ252は、使用者が車両のいずれかのドア(図示せず)のハンドルに接触したことを検出し、CPU254に信号を出力するセンサである。
【0076】
CPU254は、ドアハンドルセンサ252、メモリ256、LF信号送信アンテナ258、LF信号受信アンテナ260、ドアロック機構262、及びイグニッションスイッチ264に接続され、ECU250全体の動作を制御する。CPU254の機能の詳細については後述する。
【0077】
メモリ256は、車両のIDコードCID、ローリングコードR、ローリングコードRを更新する複数の関数式Fを規定する複数の関数式データD、及び現在選択されている関数式データDの番号等のデータを記録している。本実施形態において、メモリ256には、複数の関数式Fとしての関数式F1、F2、F3を規定する第1関数式データD1、第2関数式データD2、第3関数式データD3が記録されている。また、メモリ256には、現在選択されている関数式データDの番号として、第1関数式データD1を示す番号「1」が記録されている。ECU250のメモリ256に記録されている第1関数式データD1、第2関数式データD2及び第3関数式データD3と、スマートキー220のメモリ226に記録されている第1関数式データD1、第2関数式データD2及び第3関数式データD3は、同一のものである。
【0078】
LF信号送信アンテナ258は、LF信号を生成するLF信号生成回路を含み、スマートキー220に対してLF信号を送信する。
【0079】
LF信号受信アンテナ260は、LF信号を処理するLF信号処理回路を含み、スマートキー220から送信されたLF信号を受信する。
【0080】
ドアロック機構262は、CPU254からの命令に応じて車両のドア(図示せず)の施解錠を行う。
【0081】
イグニッションスイッチ264はノブ式のスイッチであり、図4に示すように、イグニッションスイッチ264のノブ266には、ロック(LOCK)位置と、アクセサリ(ACC)位置と、ON位置と、エンジン始動(START)位置とが設けられている。LOCK位置は、ラジオ等のアクセサリ及びエンジンを動作不可とする位置であり、ACC位置は、ECU250とスマートキー220との通信を開始させECU250とスマートキー220との間での認証が成功するとノブロックを解除してアクセサリを使用可能とする位置であり、ON位置は、エンジン282を継続的に動作可能とする位置であり、START位置は、エンジン282を始動させる位置である。
【0082】
ノブ266は、運転者により、LOCK位置で押すこと、押しながら(PUSH)LOCK位置とACC位置との間で回転させること、押さないでACC位置とON位置との間で回転させること、押さないでON位置からモーメンタリーな位置であるSTART位置へ回転することが可能になっている。なお、モーメンタリーな位置とは、START位置でノブ266から指を離すとばね力によりノブ266がON位置に戻る位置を意味する。
【0083】
実際上、ON位置で、車載バッテリ(図示せず)から燃料噴射制御装置280等に電圧が供給された後、CPU254と燃料噴射制御装置280との間での認証が行われる。その後、ノブ266をON位置からSTART位置に回転すると、CPU254と燃料噴射制御装置280との間の認証が成功していることを条件にエンジン282が始動する。
【0084】
2.ドアの解錠
図5及び図6には、第2実施形態に係るスマートキーシステム200において、車両のドア(図示せず)を解錠するフローチャートが示されている。
【0085】
ステップS31において、使用者が車両のドアハンドル(図示せず)に接触すると、ステップS32において、CPU254は、車両の識別コード(IDコード)CID及びローリングコードRからなる認証コードCAUの送信を求めるLF信号をLF信号送信アンテナ258を介してスマートキー220に送信する。
【0086】
ステップS33において、スマートキー220のCPU224は、LF信号受信アンテナ222を介してECU250からのLF信号を受信すると、ステップS34において、CPU224は、メモリ226から車両のIDコード及びローリングコードR(ここでは、前回使用されたローリングコードR0)を読み出し、前回のローリングコードR0を関数式F1を用いて更新し、新たなローリングコードR1を生成する。関数式F1は、例えば、F1(n+1)=F1(n)+1で定義される。すなわち、ECU250からのLF信号を受信する度に、ローリングコードの値は1ずつ増加する。
【0087】
ステップS35において、CPU224は、車両のIDコードCID及びローリングコードR1からなる認証コードCAUを示すLF信号をLF信号送信アンテナ228から送信する。
【0088】
ステップS36において、ECU250のLF信号受信アンテナ260が、スマートキー220から送信されたLF信号を受信すると、ステップS37において、CPU254は、LF信号から車両のIDコードCIDを読み出し、メモリ256に記録されている車両のIDコードCIDと照合する。LF信号に含まれるIDコードCIDと、メモリ256に記録されているIDコードCIDが一致する場合、ステップS38に進み、一致しない場合、ステップS43において、CPU254は、処理を終え、ドアは施錠状態のままとされる。
【0089】
ステップS38において、CPU254は、メモリ256に記録されているローリングコードR(ここでは、前回使用されたローリングコードR0)を関数式F1を用いて更新し、新ローリングコードR2を生成する。
【0090】
ステップS39において、CPU254は、ローリングコードR1をローリングコードR2と照合する。ステップS40において、ローリングコードR1とローリングコードR2が一致する場合、ステップS41において、CPU254は、ローリングコードR1をメモリ256に記録すると共に、ステップS42において、ドアロック機構262に対し、車両のドア(図示せず)を解錠する指令を出し、この指令を受けたドアロック機構262は、車両のドアを解錠する。ステップS40において、ローリングコードR1とローリングコードR2が一致しない場合、ステップS43において、CPU254は、ドアロック機構262に対し、車両のドア(図示せず)を解錠する指令を出さず、車両のドアは施錠状態が維持される。
【0091】
3.関数式の切替え及びエンジンの始動
図7には、スマートキー220及びECU250で用いられる関数式Fの切替え及びエンジン282の始動に関するフローチャートが示されている。
【0092】
ステップS51において、イグニッションスイッチ264のノブ266が押されると、ステップS52において、CPU254は、第1関数式データD1以外の関数式データD、すなわち、第2関数式データD2又は第3関数式データD3を選択する(ここでは、便宜的に「第2関数式データD2」を選択したものとする。)。次いで、ステップS53において、CPU254は、メモリ256において現在選択されている関数式データDの番号を、第1関数式データD1を示す番号「1」から第2関数式データD2を示す番号「2」に書き替える。
【0093】
ステップS54において、CPU254は、第2関数式データD2を示す番号「2」をLF信号送信アンテナ258を介してスマートキー220に送信する。
【0094】
ステップS55において、スマートキー220のCPU224は、ECU250から送信された第2関数式データD2を示す番号「2」をLF信号受信アンテナ222を介して受信する。ステップS56において、CPU224は、メモリ226において現在選択されている関数式データDの番号を、第1関数式データD1を示す番号「1」から第2関数式データD2を示す番号「2」に書き替える。
【0095】
また、ステップS54の後、ECU250では、ステップS57において、イグニッションスイッチ264のノブ266がON位置からSTART位置に回転されると、ステップS58において、CPU254と燃料噴射制御装置280との間で認証処理が行われる。
【0096】
ステップS59において、認証処理が成功すると、ステップS60において、CPU254は、燃料噴射制御装置に280に対してエンジン282を始動する指令を送信し、燃料噴射制御装置280は、エンジン282を始動させる。
【0097】
ステップS59において、認証処理が失敗すると、ステップS61において、CPU254は、エンジン282を始動する指令を送信せず、エンジン282は停止状態のままとなる。
【0098】
4.関数式Fの選択方法
図7のステップS52における新たな関数式データDの選択は、第1実施形態と同様の方法で行うことができる。すなわち、ランダム変数による選択、車両に設けられた計測機器の計測値に応じた選択等を行うことができる。
【0099】
5.第2実施形態の効果
第2実施形態に係るスマートキーシステムでは、スマートキー220のCPU224及びECU250のCPU254が、メモリ226に記録された第1関数式データD1に規定される関数式F1及びメモリ256に記録された第1関数式データD1に規定される関数式F1をそれぞれ新たな関数式F2に切り替える。
【0100】
この構成によれば、スマートキー220及びECU250で用いられる関数式Fをそれぞれ新たな関数式Fに切り替えることができる。これにより、スマートキー220及びECU250で用いられる関数式Fを予測することが困難になるため、スマートキーシステム200の安全性を高めることができる。
【0101】
スマートキー220のメモリ226は、それぞれ関数式F1、F2、F3を規定する第1関数式データD1、第2関数式データD2、第3関数式データD3を記録し、ECU250のメモリ256は、メモリ226と同様、第1関数式データD1、第2関数式データD2、第3関数式データD3を記録し、ECU250は、第1関数式データD1、第2関数式データD2、又は第3関数式データD3のいずれを選択すべきかを示す番号をスマートキー220に送信し、スマートキー220は、前記番号に基づいて関数式データDを選択する。
【0102】
これにより、スマートキー220における関数式Fの切替えに際し、ECU250からスマートキー220への通信は、関数式データD自体ではなく、関数式データDを示す番号のみで足りる。このため、ECU250からスマートキー220への通信データ量を減少させることができ、通信の高速化を図ることができる。また、スマートキー220には、関数式データDを示す番号が送信されるため、関数式データD自体が送信されるよりも、関数式データDの内容が漏れる可能性が低く、スマートキーシステム200の安全性を高めることができる。
【0103】
C.この発明の応用
なお、この発明は、上記各実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下に示す(1)〜(8)の構成を採ることができる。
【0104】
(1)適用可能なシステム
この発明を適用可能なシステムとして、第1実施形態では、キーレスエントリシステム100を、第2実施形態では、スマートキーシステム200を挙げたが、携帯機と車載認証手段との間で認証を行うものであれば、これに限られない。例えば、携帯機と車載認証手段との間の認証の結果に基づいて、車両のボンネットや給油口を開けるシステムにも適用可能である。
【0105】
また、第1実施形態では、リモコンキー120及びECU150の間の通信にRF信号及びLF信号を用い、第2実施形態では、スマートキー220及びECU250の間の通信にLF信号を用いたが、各種の信号を用いることが可能である。
【0106】
(2)認証コード及び基準コード
上記各実施形態では、携帯機(リモコンキー120、スマートキー220)と車載認証手段(ECU150、250)との間でやり取りされる認証コードCAUを車両のIDコードCIDと、ローリングコードRの組合せからなるものとしたが、所定の関数式により更新されるものであれば、認証コードCAUは他の形態を取ることもできる。例えば、IDコードCID無しにローリングコードRのみから認証コードCAUを構成することもできる。或いは、上述した特許文献2(特開平8−102982号公報)及び特許文献3(特開平10−61277号公報)に記載されるように、IDコードCIDとローリングコードRを乗算したものを認証コードCAUとして用いることもできる。
【0107】
上記各実施形態では、IDコードCIDとローリングコードRの両方を、EEPROMやフラッシュメモリ等の書替え可能な不揮発性メモリに記録したが、IDコードCIDについては、ROM等の書き替えできない不揮発性メモリに記録してもよい。
【0108】
(3)関数式
上記各実施形態では、関数式F1、F2、F3の3つの関数式を用いたが、複数の関数式を切り替える構成であればこれに限られない。
【0109】
また、上記各実施形態では、関数式F1をF1(n+1)=F1(n)+1、関数式F2をF2(n+1)=F2(n)+100、関数式F3をF3(n+1)=F3(n)−50で定義したが、各関数式が異なるものであればこれに限られない。例えば、fa(n+1)=fa(n)×2のように乗算を用いるものであってもよく、fb(n+1)=fb(n)÷2のように除算を用いるものであってもよい。或いは、加減乗除を組み合わせた関数式も可能である。
【0110】
さらに、上記関数式F1(n+1)=F1(n)+1により算出されたローリングコードR1と、文字コードとをランダムに組み合わせた複数のテーブル(マップ)を設け、このテーブルを切り替えた関数式を用いることもできる。
【0111】
(4)認証コードと基準コードの照合
第1実施形態のステップS8(図2)では、ローリングコードR1とローリングコードR2が所定の誤差(0〜+10)のときに、ECU150が受信したRF信号が、真のリモコンキー120から送信されたものと判断したが、この誤差は、キーレスエントリシステム100の仕様に応じて任意に設定可能である。
【0112】
同様に、第2実施形態のステップS40(図6)では、ローリングコードR1とローリングコードR2が一致するときにのみ、ECU250が受信したLF信号が、真のスマートキー220から送信されたものと判断したが、スマートキーシステム200の仕様に応じて一定の誤差を設定することも可能である。
【0113】
(5)関数式の切替え方法
上記各実施形態では、車載認証手段(ECU150、250)から携帯機(リモコンキー120、スマートキー220)に新たな関数式データD又は新たな関数式データDを示す番号を送信したが、反対に携帯機から車載認証手段に新たな関数式データD又は新たな関数式データDを示す番号を送信する構成も可能である。或いは、車載認証手段及び携帯機以外の機器から新たな関数式データD又は新たな関数式データDを示す番号を送信してもよい。
【0114】
(6)関数式の更新方法
第1実施形態では、ECU150のメモリ156に記録されている関数式データD(第1関数式データD1、第2関数式データD2、第3関数式データD3)を用いてリモコンキー120及びECU150で用いる関数式Fを更新した。また、第2実施形態では、スマートキー220のメモリ226及びECU250のメモリ256に記録されている関数式データD(第1関数式データD1、第2関数式データD2、第3関数式データD3)を用いてスマートキー220及びECU250で用いる関数式Fを更新した。しかし、この発明は、このような構成に限られない。
【0115】
例えば、図8に示すように、外部機器300から新たな関数式データDを供給する構成も可能である。すなわち、図1のキーレスエントリシステム100と同様のシステムに、複数の関数式データDを記録している外部機器300を加えたキーレスエントリシステム100Aでは、外部機器300からRF信号受信アンテナ152にRF信号が送信される。このRF信号には、新たな関数式データDの情報が含まれている。ECU150は、外部機器300からのRF信号を受信すると、メモリ156に記録する。そして、ECU150は、その後に用いる関数式データDとして外部機器300から受信した関数式データDを選択すると共に、リモコンキー120に対してもこの関数式データDを供給する。
【0116】
これにより、ECU150のメモリ156に記録される関数式データD、及びメモリ156に新たに記録された関数式データDに基づきリモコンキー120のメモリ126に記録される関数式データDを車外から更新することが可能となる。これにより、メモリ126、156に記録される関数式データDの更新が容易となり、キーレスエントリシステム100Aはさらに安全性を高めることができる。
【0117】
第1実施形態では、運転手がリモコンキー120を回してエンジンを始動させたとき(図3のステップS21→YES)、第2実施形態では、運転手がイグニッションスイッチ264のノブ266をプッシュしたとき(図7のステップS51→YES)、関数式データDを切り替えたが、関数式データDを切り替えるタイミングはこれに限られない。例えば、イグニッションスイッチ264のノブ266がON位置又はACC位置からLOCK位置に戻されたときに関数式データDを切り替えることもできる。
【0118】
(7)関数式データの選択方法
上記各実施形態では、関数式データDの選択方法として、ランダム変数による選択及び車両に設けられた計測機器の計測値に応じた選択を挙げたが、関数式データDを選択するのに用いることのできる方法であれば、これに限られない。例えば、車載認証機器又は携帯機から送信される信号のチェックサムの除算の余りで関数式データDを選択することもできる。
【0119】
(8)その他
各メモリに記録されている関数式データは、外部からデフォルト設定に戻すことが可能に構成されることが好ましい。例えば、所定の端子に外部から所定電圧を印加することで、デフォルト設定に戻すことができる。
【0120】
上記各実施形態では、携帯機及び車載認証機器の少なくとも一方のメモリに複数の関数式データDを記録したが、車両用盗難防止システムの製造時において、製造装置のメモリに複数の関数式データDを記録しておき、車両用盗難防止システム毎に関数式データDを選択することで、車両用盗難防止システムの安全性を高めることも可能である。すなわち、同じ種類の車両に搭載される複数の車両用盗難防止システムを製造する場合でも、各車両用盗難防止システムに異なる関数式Fを用いるように製造装置を設定することで、携帯機及び車載認証機器の間の通信で用いられる関数式Fの判別が困難となり、車両が盗難にあう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、この発明の第1実施形態に係るキーレスエントリシステムのブロック図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るキーレスエントリシステムにおいて、車両のドアを解錠するフローチャートである。
【図3】図3は、第1実施形態に係るキーレスエントリシステムにおいて、ローリングコードを更新する関数式を切り替えるフローチャートである。
【図4】図4は、この発明の第2実施形態に係るスマートキーシステムのブロック図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係るスマートキーシステムにおいて、車両のドアを解錠するフローチャートの一部である。
【図6】図6は、第2実施形態に係るスマートキーシステムにおいて、車両のドアを解錠するフローチャートの残りの部分である。
【図7】図7は、第2実施形態に係るスマートキーシステムにおいて、ローリングコードを更新する関数式を切り替え、エンジンを始動するフローチャートである。
【図8】図8は、この発明の変形例のブロック図である。
【符号の説明】
【0122】
100、100A…キーレスエントリシステム 120…リモコンキー
124、154、224、254…CPU 126…メモリ
150、250…ECU 156…メモリ
200…スマートキーシステム 220…スマートキー
226…メモリ 256…メモリ
AU…認証コード D、D1、D2…関数式データ
F、F1、F2、F3…関数式

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証コードと、前記認証コードを更新する第1関数式を規定する第1関数式データとを記録する第1記録部を有し、前記第1関数式に基づいて更新された前記認証コードを送信する携帯機と、
前記認証コードを受信し、この認証コードを基準コードと照合し、その結果に応じて車載機器の作動状態を制御する車載認証手段と、
を備える車両用盗難防止システムであって、
前記車載認証手段は、前記基準コードと、前記第1関数式と同一の関数式であり、前記基準コードを更新する第2関数式を規定する第2関数式データとを記録する第2記録部を有し、受信した前記認証コードと、前記第2関数式に基づいて更新された前記基準コードとを照合し、
前記車両用盗難防止システムは、さらに、前記第1記録部に記録された第1関数式データに規定される第1関数式を新たな第1関数式に及び前記第2記録部に記録された前記第2関数式データに規定される第2関数式を新たな第2関数式にそれぞれ切り替える関数式切替手段を有する
ことを特徴とする車両用盗難防止システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用盗難防止システムにおいて、
前記第1記録部は、相互に異なる複数の第1関数式を規定する複数の第1関数式データを記録し、
前記第2記録部は、前記複数の第1関数式データが規定する前記複数の第1関数式と同一の複数の第2関数式を規定する複数の第2関数式データを記録し、
前記車載認証手段は、前記複数の第1関数式データのいずれを選択すべきかを示す識別子を前記携帯機に送信し、
前記携帯機は、前記識別子に基づいて前記第1関数式データを選択する
ことを特徴とする車両用盗難防止システム。
【請求項3】
請求項1記載の車両用盗難防止システムにおいて、
前記第1記録部は、前記第1関数式を規定する第1関数式データを1つのみ記録し、
前記第2記録部は、相互に異なる複数の第2関数式を規定する複数の第2関数式データを記録し、
前記車載認証手段は、前記第1記録部に記録された前記第1関数式データに規定される前記第1関数式とは異なる新たな第2関数式を規定する第2関数式データを前記第2記録部から読み出して前記携帯機に送信し、
前記携帯機は、受信した前記第2関数式データを新たな第1関数式データとして記録し、この新たな第1関数式データにより規定される新たな第1関数式を前記認証コードの次回の更新に用いる
ことを特徴とする車両用盗難防止システム。
【請求項4】
請求項3記載の車両用盗難防止システムにおいて、
前記車載認証手段の第2記録部に対し、新たな第2関数式を規定する新たな第2関数式データを無線通信により供給する新第2関数式データ供給手段を、車外に有する
ことを特徴とする車両用盗難防止システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用盗難防止システムにおいて、
前記切替え後の新たな第1関数式及び新たな第2関数式の選択は、前記車載認証手段によりランダムに生成されるランダムコードにより行われる
ことを特徴とする車両用盗難防止システム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用盗難防止システムにおいて、
前記切替え後の新たな第1関数式及び新たな第2関数式の選択は、車両に搭載された計測機器の計測値に応じて行われる
ことを特徴とする車両用盗難防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−223354(P2008−223354A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63833(P2007−63833)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】