説明

車両用監視システム

【課題】 側近に車両等の物体が存在している場合でも後方に存在する後方車両や障害物等の対象物を確実に監視して車両の安全走行を確保することを可能にした車両用監視システムを提供する。
【解決手段】 光源110と、光源110で照明される対象物を撮像する撮像装置120と、撮像装置で撮像した撮像信号をAGCにより信号処理してモニタ装置に画像表示する信号処理手段とを備える車両用監視装置であって、光源110から出射する光の出射路に領域毎に透過率が異なる光透過特性を有するフィルタ130を配設する。撮像領域内に接近した物体が存在しても、当該物体による強反射光の影響を受けることなく適正なAGCを実行し、全対象物を適正な画像でモニタ装置に表示させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の周辺を撮像し、得られた撮像画像によって障害物等の対象物を確認する車両用監視システムに関し、特に対象物を確実に確認することを可能にした車両用監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の周辺、特に側方から後方領域に存在する障害物等の対象物を監視して車両の安全走行を確保するための車両用監視システムとして、照明用ランプから赤外光を車両周辺に向けて照射し、対象物から反射された赤外光を利用して撮像を行ない、得られた撮像画像をモニタ装置に表示して対象物の監視を行うシステムが提案されている。例えば、特許文献1では自動車のライセンスプレートを照明するためのライセンスプレートランプにバックモニタ用ランプを一体に設けておき、このバックモニタ用ランプで車両の後方領域を赤外照明する。また、ライセンスプレートの近傍に撮像装置としてバックモニタ用カメラを備えておき、赤外照明された後方領域を撮像し、撮像画像を得ている。バックモニタ用カメラで撮像して得られる画像を運転席に設けたモニタ装置に表示することで、運転者は後方領域に存在する対象物を確認することができ、車両の安全走行を確保することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−145048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の監視システムでは撮像装置で撮像して得られた撮像信号を信号処理して撮像画像を得る際に、撮像信号に対していわゆるAGC(自動利得制御)を行っている。このAGCは、一般には撮像信号中の最大信号レベルが所定の信号レベルになるように撮像信号の信号レベルを抑圧し、あるいは伸長する処理である。これにより、モニタ装置に表示される画像は所定の明るさの画像となり、対象物を確認し易くなる。しかしながら、このAGCを行うと、撮像画像中に信号レベルが極めて高い画像が存在していてAGCによって撮像信号が抑圧されたときには、他の対象物の画像の信号レベルもこれに比例して抑圧され、いわゆるモニタ装置の表示黒レベルよりも低い信号レベルとなってしまい、当該他の対象物がモニタ装置に画像として表示されなくなり、当該対象物を確認することができなくなることがある。
【0005】
例えば、自車に近接して1台の車両(ここでは側近車両と称する)が存在しているような場合に、モニタ用ランプから出射された赤外光の一部はこの側近車両で反射されるが、側方車両は自車からの距離が短いために反射光は強反射光となる。そのため、この側方車両を含む領域を撮像装置で撮像すると、得られる撮像信号中には側方車両に対応した極めて高い信号レベルが発生することになる。したがって、この撮像信号をAGCして当該側近車両の信号レベルを所定レベルまで抑圧すると、抑圧の程度が著しく大きなものとなりこれに伴って自車の後方に存在している他の車両(ここでは後方車両と称する)を撮像して得られる画像の信号レベルも大きく抑圧されてしまう。後方車両は自車からの距離が長いためモニタ用ランプから出射された赤外光の反射光が弱く、撮像して得られる撮像信号の信号レベルが低いため、撮像信号をAGCしたときの信号レベルの抑圧が大きくなると、これに伴って後方車両の画像の信号レベルはモニタ装置に表示可能な信号レベルよりも低いレベルまで抑圧されてしまう。そのため、モニタ装置に当該後方車両の画像を表示できなくなり、モニタ装置で後方車両を監視して自車の安全走行を確保することができなくなる。このことは、車両の側近に赤外光を高い率で反射する静止物体が存在する場合でも同様であり、この物体によって後方や側後方に存在する対象物を監視することが困難になる。
【0006】
本発明の目的は、側近に車両等の物体が存在している場合でも後方に存在する後方車両や障害物等の対象物を確実に監視して車両の安全走行を確保することを可能にした車両用監視システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の発明は、光源と、光源から出射した光で照明される対象物を撮像する撮像装置と、撮像装置で撮像した撮像信号をAGCにより信号処理してモニタ装置に画像表示する信号処理手段とを備える車両用監視装置であって、光源から出射する光の出射路または撮像装置で受光する光の入射路の一方に領域毎に透過率が異なる光透過特性を有するフィルタを配設している。このフィルタは領域毎の光透過率が連続的に変化する特性、あるいは段階的に変化する特性とする。
【0008】
本発明の第2の発明は、光源と、光源から出射した光で照明される対象物を撮像する撮像装置と、撮像装置で撮像した撮像信号をAGCにより信号処理してモニタ装置に画像表示する信号処理手段とを備える車両用監視装置であって、光源は異なる領域を異なる光度で照明する構成とする。
【0009】
本発明の第3の発明は、光源と、光源から出射した光で照明される対象物を撮像する撮像装置と、撮像装置で撮像した撮像信号をAGCにより信号処理してモニタ装置に画像表示する信号処理手段とを備える車両用監視装置であって、信号処理手段は撮像装置で撮像する領域を複数の領域に区分し、各領域毎に独立してAGCを行うように構成されている。
【0010】
本発明の第1ないし第3の発明においては、光源は赤外光を出射する赤外光源であり、前記撮像装置は赤外光を受光して撮像を行う赤外半導体撮像素子を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光源から光を出射して撮像のための照明を行った際に、撮像領域内において自車に接近した車両や障害物等によって強反射光が発生した場合でも、この強反射光の影響を受けることなく適正なAGCを実行し、当該他車や障害物はもとより撮像したその他の車両や障害物を適正な画像としてモニタ装置に表示させることができ、これら他車や障害物を監視を確実に行って車両の安全走行を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1の監視システムを備えた自動車の概念平面構成図。
【図2】右側リアコンビネーションランプの概略斜視図。
【図3】監視モジュールの概念斜視図。
【図4】透過制限フィルタ特性と発光光量及び照射光量の特性図。
【図5】信号処理部の回路構成図。
【図6】側方車両と後方車両の位置関係とモニタ画像の図。
【図7】撮像信号とそのAGC特性図。
【図8】実施形態2の監視モジュールの概念斜視図。
【図9】実施形態2の透過制限フィルタ特性と撮像信号及びAGC特性図。
【図10】実施形態3の監視モジュールの概念斜視図。
【図11】実施形態3の照明区分を示す図。
【図12】実施形態3の照射光量と撮像信号とAGC特性図。
【図13】実施形態4の撮像素子の撮像領域と撮像信号及びAGC特性図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明を自動車CARの側方から後方を監視するための監視システムとして構成した実施形態1の概念構成図である。自動車の左右のリアランプ、ここでは詳細を後述する右側と左側の各リアコンビネーションランプランプRRCL,LRCLの各内部にそれぞれ監視モジュール1R,1Lを一体的に組み込んである。これら右側と左側の監視モジュール1R,1Lは後述するように赤外光源と撮像装置とで構成されており、赤外光源から赤外光を発光して照射した赤外光により、図1に示すように右側リアコンビネーションランプRRCLに設けた監視モジール1Rでは自車CARの右側方から後方の領域Aを照明し、この照明した領域Aを撮像装置によって撮像するように構成されている。また、左側リアコンビネーションランプLRCLに設けた監視モジール1Lでは自車CARの左側方から後方の領域Bを照明し、この照明した領域Bを撮像装置によって撮像するように構成されている。両監視モジュール1R,1Lは信号処理装置2に接続されており、撮像装置で撮像して得られる撮像信号を信号処理する。この信号処理装置2には、例えば自車CARの運転席に設けたモニタ装置3が接続されており、信号処理された撮像信号から得られた画像をモニタ装置3に表示し、このモニタ装置3に表示された画像を運転者が視認することにより対象物を確認し、自車の後方から側方領域を監視することが可能とされている。
【0014】
図2は前記右側と左側のリアコンビネーションランプRRCL,LRCLのうち、自動車の右後部に設けられた右側リアコンビネーションランプRRCLの概念斜視図である。ランプボディ11と正面カバー12とでランプハウジング10が構成されており、このランプハウジング10内にストップランプとしても機能するテールランプTLと、バックアップランプBULと、ターンシグナルランプTSLが内装されている。また、前記ランプハウジング10内の正面から見て右側領域に前記した右側の監視モジュール1Rが内装されており、図1に示した自車CARの右側方領域から後方領域の領域Aを監視することが可能とされている。
【0015】
前記右側の監視モジュール1Rは図3に概念構成を示すように、赤外光を出射する赤外光源110と、この赤外光源110により照射された赤外光が対象物に投射されて反射した光を受光して撮像を行う撮像装置120を備えている。この赤外光源110は赤外光を発光する赤外LED(発光ダイオード)111と、この赤外LED111から出射した赤外光を自車の右側方から後方領域に向けて配光させるためのレンズ112とを備えている。さらに、実施例1ではこの赤外光源110の前側に赤外光の透過率を制御するための透過制限フィルタ130を備えている。この透過制限フィルタ130は、赤外光が照射される図1に示した領域Aの後方端A1から右側方端A2に向けて徐々に赤外光の透過率が低くなるような透過率勾配を有している。すなわち、図4(a)に示すように、赤外光照射領域Aの後方端A1から右側方端A2の領域Aを横軸にとり、透過率を縦軸にとると透過率が右上がりの特性となる。これにより、図4(b)のように、赤外LED111で発光される赤外光の発光光量が前記領域Aにおいてほぼ均一な場合には、透過制限フィルタ130を透過して照射される赤外光の照射光量は図4(c)のように、透過制限フィルタ130の透過率に準じて右上がりの特性になる。換言すれば、後方に向けて照射する赤外光の光量に比較して右側方に照射する赤外光の光量は少なくなる。
【0016】
図3において、前記撮像装置120は赤外光を受光して撮像を行うCCDやC−MOS等の撮像素子121と、この撮像素子121に対象物を光学的に結像する結像レンズ122とを備えており、少なくとも前記赤外光源120から出射された赤外光が照射される領域Aを撮像可能な撮像画角のカメラとして構成されている。この撮像装置120は撮像する領域内においてはほぼ全域にわたって同じ撮像感度を有しており、同じ明るさの対象物であれば同じ信号レベルの撮像信号として撮像することが可能である。
【0017】
以上の説明は右側リアコンビネーションランプRRCLとこれに内装された右側の監視モジュール1Rについて行ったが、左側リアコンビネーションランプLRCLは図2とはテールランプ、ストップランプ、ターンシグナルランプが対称配置され、左側の監視モジュール1Lはランプハウジング10内の左側領域に内装され、図1に示したように自車CARの左側方から後方の領域Bを撮像するように構成されている。他の構成は同じである。また、この左側の監視モジュール1Lでは透過制限フィルタの透過率特性は右側の監視モジュール1Rの透過制限フィルタ130と対称であり、赤外光源から出射され透過制限フィルタを透過して照射される赤外光の照射光量は、自車の後方端B1に向けて照射する赤外光の照射光量に比較して左側方端B2に照射する赤外光の照射光量は少なくなる。
【0018】
前記左右の監視モジュール1R,1Lは図1に示したように信号処理装置2に接続されている。信号処理装置2は、図5に示すように、左右の監視モジュール1R,1Lの各撮像装置120の撮像素子121で撮像した撮像信号を増幅し、増幅した撮像信号をモニタ装置3に出力する増幅部21と、増幅部21に入力される撮像信号の最大レベルを検出するレベル検出部22と、検出した最大レベルを基準レベルと比較してその差を検出するレベル比較部23と、レベル比較部23で検出したレベル差に基づいて前記増幅部21での増幅率、すなわち利得を制御するための利得制御部24とを備えている。これら増幅部21、レベル検出部22、レベル比較部23、利得制御部24はいわゆるAGC回路を構成しており、これにより、撮像信号の信号レベルに基づいて増幅部21での利得が自動的に変化制御され、結果として最小信号レベルから最大信号レベルが所定の信号レベル範囲に収まるようなAGCが行われることになる。このようにAGCにより増幅部21で増幅された撮像信号はモニタ装置3に出力され、モニタ装置3において撮像した画像を表示する。ここでは、左右の各監視モジュール1R,1Lで撮像して得られる画像を切替スイッチ4により切り替えてモニタ装置3に表示するように構成されている。
【0019】
実施形態1において、運転者が監視システムを稼動させると、左右のリアコンビネーションランプRRCL,LRCLに内装されている左右の各監視モジュール1R,1Lが作動し、運転席に設けたモニタ装置3に撮像画像を表示する。すなわち、各監視モジュール1R,1Lでは赤外光源110が発光して赤外光を自動車の左右側方から後方に向けて照射する。そして、赤外光により照明された領域を撮像装置120で撮像し、当該領域に存在する対象物を撮像する。撮像した撮像信号は信号処理部2において信号処理され、モニタ装置3に撮像した画像を表示する。運転者は切替スイッチ4を操作することで右側と左側の撮像画像をモニタ装置3に表示させることが可能である。このとき、赤外光源110の前に設けられた透過制限フィルタ130によって照射される赤外光は光量分布が制御される。前記したように、右側の監視モジュール1Rにおいては、図4(c)に示したように、領域Aについては自車の後方端A1から右側方端A2に向けて徐々に光量が低下するように制御されている。領域Bについては図示は省略するが、これと対称に自車の後方端B1から左側方端B2に向けて徐々に光量が低下するように制御されている。
【0020】
この監視システムにおいて、例えば、右側の監視モジュール1Rについて説明する。今、図6(a)の平面図に示すように、同図左方向に走行する自車CARの右後ろ寄りに第1の自動車(側方車両)CAR1が接近した状態で走行しており、また自車CARの右側の少し離れた後方に第2の自動車(後方自動車)CAR2が走行しているものとする。このとき自車CARの監視システムの右側の監視モジュール1Rで撮像を行うとモニタ装置3には図6(b)のような画像が表示されることになる。しかし、仮に赤外光源110の前に前記した透過制限フィルタ130が存在しておらず、図4(b)に示したように赤外光源110からは後方端A1から右側方端A2に沿って均一に赤外光を配光している場合には、側方車両CAR1は赤外光源110からの距離が短いため側方車両CAR1からは強反射光が発生し、側方車両を撮像した撮像信号は信号レベルが極めて高いものになる。その一方で後方車両CAR2は赤外光源110からの距離が長いため弱反射光であり、後方車両CAR2を撮像した撮像信号の信号レベルは低くなる。
【0021】
すなわち、このときの撮像装置120で撮像した撮像信号は、図7(a)に破線で示すように、後方端A1から右側方端A2に沿って、後方車両CAR2の撮像信号のレベルは低く、側方車両CAR1の撮像信号のレベルは極めて高いものとなる。そのため、この撮像信号を信号処理部2においてAGCすると、図7(b)に示すように、最大レベルの側方車両CAR1の信号レベルが所定レベル(白レベルW)まで抑圧されるため抑圧の程度は大きくなり、これに比例して後方車両CAR2の信号レベルは大きく低下され、モニタ装置の黒レベルBに近いレベルにまで低下されてしまう。そのため、モニタ装置に表示される画像は図6(c)のように後方車両CAR2の画像が背景に埋もれてしまい確認し難いものになる。
【0022】
しかし、実施形態1では赤外光源110から照射される赤外光は図4(c)に示したように自車の後方端A1から右側方端A2に向けて照射光量が低下されているので、側方車両CAR1による強反射光は抑制され、図7(a)に実線で示すように、側方車両CAR1を撮像した信号レベルは低下されたものとなる。したがって、この撮像信号をAGCして最大レベルとなっている側方車両CAR1の信号レベルを所定レベルWに制御したときには撮像信号の抑圧は少なくなり、これに伴って後方車両CAR2の信号レベルは図7(c)のように、モニタ装置3の黒レベルBよりも大きなレベルとなる。これにより、モニタ装置3に表示される画像は図6(b)のように側方車両CAR1とともに後方車両CAR2が明瞭に表示され、側方車両を確認することが可能な画像になる。
【0023】
左側リアコンビネーションランプLRCLに設けた左側の監視モジュール1Lについても同様であり、自車の左側に側方車両が存在する場合でも、この側方車両に照射する赤外光源110の照射光量が透過制限フィルタ130により低下されるため、側方車両からの反射光量も低下され、撮像装置120で撮像した撮像信号を信号処理部2においてAGCした場合でも後方車両の撮像信号の信号レベルの低下を抑制し、後方車両をモニタ装置3で確認することが可能になる。
【0024】
以上の説明は側方車両と後方車両を対比させているが、側方に存在するものが障害物である場合でも、また後方に存在するものが障害物や歩行者である場合でも同様である。これにより、自車の側近に他車や障害物が存在していても、これら他車や障害物から反射される赤外光の光量が抑制されるため、信号処理部においてAGCを行ってモニタ装置において適正な明るさでの画像表示を行った場合でも、後方車両や後方に存在する障害物や歩行者をモニタ装置で確実に確認でき、安全走行を確保することができるようになる。勿論、自車の側方よりも多少後方に他車や障害物が存在する場合でも、これらによる赤外光の反射の影響を受けることなく後方の車両、障害物、歩行者を確実に確認することが可能になる。また、後方の車両、障害物、歩行者を確認する場合に限られるものではなく、斜め後方に存在する車両、障害物、歩行者を確認する場合についても同様である。
【0025】
(実施形態2)
実施形態1では赤外光源110の前に透過制限フィルタ130を配設赤外光源から照射される赤外光の光量を自車の後方から側方に向けて低下させるように構成しているが、実施形態2では同様な透過制限フィルタを撮像装置の前に配置している。図8は実施形態1と同様に右側のリアコンビネーションランプRRCLに内装した実施形態2の監視モジュール1Rの概念構成図であり、赤外LED111とレンズ112からなる赤外光源110の前に透過制限フィルタは設けてはおらず、撮像装置120の結像レンズ122の前に図9(a)のように、後方端A1から右側方端A2に向けて徐々に透過率が低下する透過制限フィルタ(実施形態1の透過制限フィルタと同じ)130を配設している。
【0026】
撮像装置120にこのような透過制限フィルタ130を設けることで、図6(a)に示したように自車CAR1の右側に側方車両CAR1が存在し、赤外光源110から照射された赤外光が側方車両CAR1によって強く反射されて撮像装置110において撮像される場合でも、図9(b)の実線のように、撮像装置120で撮像した側方車両CAR1の撮像信号の信号レベルを抑圧することができる。その一方で、後方車両CAR2については撮像信号の信号レベルを殆ど抑圧することはない。因みに図9(b)の破線は透過制限フィルタ130を備えていない状態の撮像信号の信号レベルである。したがって、実施形態1と同様に、撮像した撮像信号を信号処理部2においてAGCして最大レベルとなっている側方車両の信号レベルを所定レベルWまで抑圧しても、図9(c)のように、後方車両CAR2の信号レベルが著しく低下されることが抑制され、モニタ装置3の黒レベルBよりも大きなレベルに保持される。これにより、モニタ装置3の画像において、図6(b)のように後方車両CAR2の画像を確認することが可能になる。
【0027】
実施形態1,2において、透過制限フィルタ130は側方から後方に向けて連続的に透過率が変化するように構成しているが、透過率が段階的に変化するように構成し、照射光量を段階的に変化させ、あるいは受光光量を段階的に変化させる構成としてもよいことは言うまでもない。
【0028】
(実施形態3)
実施形態3では監視モジュール1R,1Lに透過制限フィルタを備える代わりに、各赤外光源110に複数の赤外LEDを備えている。図10(a)に右側の監視モジュール1Rの概念構成を示すように、ここでは赤外光源110には左右方向に配列した3個の赤外LED111a〜111cを備えており、これら赤外LED111a〜111cによる赤外光の出射方向を相違させてそれぞれが異なる領域に赤外光を照射するように構成している。図11に示すように、内側の赤外LED111aは後方領域a1に赤外光を照射するように構成され、中央の赤外LED111bはそれよりも右側方の領域a2に赤外光を照射し、外側の赤外LED111cは右側方領域a3に赤外光を照射するように構成される。これを実現するために、監視モジュール1Rの赤外光源110においては、レンズ112は各赤外LED111a〜111cから出射された赤外光をそれぞれ各領域a1〜a3に向けて屈接して配光を行うように光学的な設計がなれている。
【0029】
さらに、この赤外光源110においては、図12(a)のように、後方領域a1を照射する内側の赤外LED111aの照射光量は最も大きくされ、中央の赤外LED111bの照射光量はそれよりも小さくされ、さらに外側の赤外LED111cの照射光量は最小の光量に設定されている。撮像装置の構成は実施形態1と同じである。
【0030】
実施形態3では、図12(a)のように、自車の後方領域a1から中間領域a2、さらに側方領域a3に向けて照射光量が3段階に順次低下されることになる。このため、側方領域a3に図6(a)に示したような側方車両CAR1が存在する場合でも、側方車両CAR1に照射される赤外光の照射光量は小さいので撮像装置110で撮像した側方車両CAR1の撮像信号の信号レベルは、図12(b)の実線のように抑制される。一方、後方領域a1に存在する後方車両CAR2に照射される赤外光の照射光量は大きいので撮像装置110で撮像した後方車両CAR2の撮像信号のレベルは相対的に大きなものとなる。因みに、同図の破線は均一照射光量で照明を行った場合の撮像信号である。
【0031】
したがって、撮像装置120で撮像した実線の撮像信号を信号処理部2においてAGCして最大レベルとなっている側方車両CAR1の信号レベルを所定レベルWまで抑圧しても、実施形態1,2と同様に、後方車両CAR2の信号レベルが著しく低下されることが抑制され、モニタ装置3の黒レベルBよりも大きなレベルに保持される。これにより、モニタ装置3の画像において後方車両CAR2の画像を確認することが可能になる。
【0032】
実施形態3では3つの赤外LED111a〜111cの発光光量を独立して制御することができるので、例えば自車の走行状況等に応じて各赤外LED111a〜111cの発光光量を変化させるように構成することもできる。特に、自動車が低速走行しているときには側方車両は自車に接近した状態が生じる頻度が高く、側方車両からの反射光量が増加し易い状態となるので、外側の赤外LED111cの光量を大幅に低下させることによって側方車両による影響を効果的に抑制することができる。反対に高速走行しているときには側方車両は接近する機会が少なく、追越し等によって側方車両が接近する状況となっても瞬時であることが多いので外側の赤外LED111aの光量を大幅に低下させる必要性は少ない。このように赤外光の配光に自由度が得られる点で実施形態1,2のような透過制限フィルタを用いた構成よりも対象物の確認を行い易くでき、監視を行う際に有利なるる。
【0033】
この説明では赤外光源を3個の赤外LEDで構成しているが、2個あるいは4個以上の赤外LEDで構成してもよいことは言うまでもない。また、前記説明では赤外光源のレンズは1つであるが、各赤外LEDのそれぞれに対応して個別のレンズを設けるようにしてもよい。
【0034】
実施形態3において、図10(a)に示した監視モジュール1Rでは3つの赤外LED111a〜111cによってそれぞれ異なる領域を異なる照射光量で照明しているが、リフレクタの反射特性を利用するようにしてもよい。図10(b)はその一例であり、赤外光源110には赤外LED111から出射した光を前方に向けて反射させるリフレクタ140を設けている。このリフレクタ140は反射面の形状が赤外LED111の出射光軸に対して左右方向に非対称に形成されており、右側領域から左側領域に向けて反射光量が徐々に大きくなるように構成している。例えば、リフレクタ140の反射面の放物線の中心線を赤外LED111の光軸に対して右側に変位させ、赤外LED111から出射した光を右側領域よりも後方領域に多く反射するように構成する。このリフレクタ140を備えることで、赤外光源110から照射される赤外光の照射光量は実施形態1の図4(c)に示したように、右側方端A2から後方端A1に向けて右上がりの特性になる。換言すれば、後方に向けて照射する赤外光の光量に比較して右側方に照射する赤外光の光量は少なくなる。監視モジュール1Lについてはリフレクタ140の反射面の構成が左右対称であることは言うまでもない。なお、リフレクタ140の反射面を階段形状にすれば図10(a)の監視モジュール1Rと同様に右側方端A2から後方端A1に向けて段階的に照射光量を制御することが可能である。
【0035】
(実施形態4)
実施形態4は信号処理部2においてモニタ装置3での後方車両の確認を可能とするものであり、監視モジュール1R,1Lには実施形態1,2の透過制限フィルタや、実施形態3のような複数の赤外LEDは備えていない。図13(a),(b)は右側の監視モジュール1Rの撮像装置120の撮像素子121を概念的に示した平面構成図と正面構成図である。撮像素子121の撮像面を正面から見て右側領域s1において自車の後方領域a1を撮像し、これから撮像素子121の左側領域に向けて中間領域a2を中央領域s2において撮像し、右側方領域a3を左側領域s3において撮像するように構成されている。この撮像素子121で撮像した対象物を信号処理する信号処理部2では、撮像素子121の各画素領域s1〜s3に対してそれぞれ独立にAGCを行うようにしている。すなわち、各画素領域s1〜s3毎にそれぞれの領域の最大レベルとなる撮像信号に基づいてAGCを行っている。このAGCでは増幅部21での増幅動作に際して各領域s1〜s3に対する増幅を経時的に行い、その際にAGCを行う方策が可能である。あるいは、各領域s1〜s3にそれぞれ対応した独立した増幅回路を設け、各増幅回路においてAGCを行うようにしてもよい。
【0036】
この実施形態4では、図13(c)のように、側方車両CAR1が存在する場合には撮像素子121の左側領域s3において撮像されるが、側方車両での赤外光の反射によって側方車両の撮像信号の信号レベルが高くてもAGCによって所定のレベルにまで抑圧される。このAGCでは必然的に信号レベルの抑圧程度は大きなものとなる。一方、撮像素子121の右側領域s1において後方車両CAR2が撮像されるがこの後方車両CAR2の撮像信号の信号レベルが低いため、AGCによって所定のレベルにまで増幅される。これにより、図13(d)のように、側方車両CAR1と後方車両CAR2のいずれの撮像信号もほぼ同じ信号レベルに制御されることになり、モニタ装置3においてこれら側方車両CAR1と後方車両CAR2の両方を確実に確認できるようになる。また、中央領域a2で他車や障害物が撮像された場合でも、その撮像信号の信号レベルに応じて適切なAGCが行われるため、これらの対象物をモニタ装置において確実に確認できるようになる。
【0037】
実施形態4では、信号処理部2の構成を変更するだけでよく、監視モジュール1R,1Lの構成、例えば、赤外光源110や撮像装置120は特に構成を変更する必要がないので、この種の監視モジュールが既に存在する場合には、当該既存の監視モジュールをそのまま利用することができ、低コスト化の点で有利になる。
【0038】
実施形態4では撮像素子121の撮像領域を3つの領域に区分しているが、2つの領域あるいは4つ以上の領域に区分してもよい。また、信号処理部2の処理能力が高い場合には画素単位でAGCを行うようにすることも可能である。この実施形態4のように撮像素子121の全面にわたってAGCが均一化されることなくそれぞれ独立したAGCを行うようにすることで、自車の側方から後方にわたる周辺領域での交通状況変化にリアルタイムに対処した信号処理を可能にしてモニタ装置において対象物を確実に監視することが実現できる。
【0039】
また、前記説明では3つの領域のAGCを単に独立して行うように構成しているが、各領域におけるAGCの定数を相違させるようにしてもよい。例えば、左側領域で撮像した撮像信号のAGC定数を低く設定し、中央領域で撮像した撮像信号のAGC定数をそれよりも大きくし、右側領域で撮像した撮像信号のAGC定数をさらに大きくしている。ここで言うAGC定数はAGCの強さ、すなわち増幅部における増幅度、換言すれば利得の大きさである。これにより、側方車両や後方車両を全て同じ明るさでモニタ装置に表示するのではなく、後方車両を側方車両よりも明るい画像としてモニタ装置に表示させるようにすることも可能になる。
【0040】
本発明の監視システムの監視モジュールは自車の側方から後方を監視する目的のために実施形態1〜4ではリアコンビネーションランプに内装しているが、これに限られるものではなく、ハイマウントストップランプや特許文献1のようなライセンスプレートに組み込むようにしてもよい。また、自車の助手席側の側方の領域を監視するためには、例えばサイドミラーやヘッドランプに組み込むようにしてもよい。このように監視モジールを組み込む箇所が異なる場合には、これに応じて赤外光源による赤外光の照射範囲や撮像装置による撮像範囲に対応して実施形態1,2の透過制限フィルタの透過率の設定や、実施形態3の赤外LEDの照射領域の区分を適宜に設計することが肝要である。実施形態4については、撮像素子を区分する領域を適切に設定することが肝要である。
【0041】
実施形態1〜4では赤外光を利用して対象物の照明と撮像を行う例を示しているが、光を照射して対象物を照明し、照明された対象物を受光して撮像を行い、得られた撮像信号をAGCして画像を得るように構成した監視システムであれば本発明を同様に適用できる。例えば、可視光を利用した監視システムにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は撮像装置により車両の周辺領域を撮像し、得られた画像をモニタ装置に表示して監視を行う車両の監視システムに採用することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1R,1L 監視モジュール
2 信号処理部
3 モニタ装置
4 切替スイッチ
21 増幅部
22 レベル検出部
23 レベル比較部
24 利得制御部
110 赤外光源
111 赤外LED
112 レンズ
120 撮像装置
121 撮像素子
122 結像レンズ
130 透過制限フィルタ
CAR 自車(自動車)
CAR1 側方車両
CAR2 後方車両



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光源から出射した光で照明される対象物を撮像する撮像装置と、撮像装置で撮像した撮像信号をAGC(自動利得制御)により信号処理してモニタ装置に画像表示する信号処理手段とを備える車両用監視装置であって、前記光源から出射する光の出射路または前記撮像装置で受光する光の入射路の一方に領域毎に透過率が異なる光透過特性を有するフィルタを配設していることを特徴とする車両用監視システム。
【請求項2】
前記フィルタは領域毎の光透過率が連続的に変化する特性、あるいは段階的に変化する特性であることを特徴とする請求項1に記載の車両用監視システム。
【請求項3】
光源と、光源から出射した光で照明される対象物を撮像する撮像装置と、撮像装置で撮像した撮像信号をAGCにより信号処理してモニタ装置に画像表示する信号処理手段とを備える車両用監視装置であって、前記光源は異なる領域を異なる光度で照明する構成であることを特徴とする車両用監視システム。
【請求項4】
光源と、光源から出射した光で照明される対象物を撮像する撮像装置と、撮像装置で撮像した撮像信号をAGCにより信号処理してモニタ装置に画像表示する信号処理手段とを備える車両用監視装置であって、前記信号処理手段は前記撮像装置で撮像する領域を複数の領域に区分し、各領域毎に独立してAGCを行うように構成されていることを特徴とする車両用監視システム。
【請求項5】
前記光源は赤外光を出射する赤外光源であり、前記撮像装置は赤外光を受光して撮像を行う赤外半導体撮像素子を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用監視システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−260380(P2010−260380A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110452(P2009−110452)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】