説明

車両用空気調和システム

【課題】ヒートポンプ式冷房装置と動力側発熱体の廃熱とを利用して冷房と暖房を行うシステムにあって、ヒートポンプ式冷房装置の構成を簡略化する。
【解決手段】第1の冷媒が循環する第1循環経路1を有するヒートポンプ式冷房装置Aと、第2の冷媒が循環する第2循環経路10と、第3の冷媒が循環する第3循環経路20とを有する暖房用循環装置B1とを備え、第1循環経路Aには、コンプレッサ2とコンデンサ3と膨張弁4と空気を冷却するエバポレータ5とを設け、第2循環経路10には、第1ポンプ11と空調用放熱器12を設け、第3循環経路20には、第2ポンプ21と動力側発熱体22と内部熱交換部13と空気を加熱するヒータコア24と動力用放熱器23とを設け、エバポレータ5とヒータコア24を通過した各空気を車室内に選択的に導入できるよう構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房と冷房を行うことができる車両用空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の車両用空気調和システムとしては、特許文献1(第4実施形態等)に開示されたものがある。この車両用空気調和システムは、図18に示すように、第1の冷媒が循環する第1循環経路100を有するヒートポンプ式冷房装置Cと、第2の冷媒(水)が循環する第2循環経路110と第3の冷媒(水)が循環する第3循環経路120を有する暖房用循環装置Dとを備えている。
【0003】
ヒートポンプ式冷房装置Cの第1循環経路100中には、コンプレッサ101と内部熱交換部102の放熱部と室内用熱交換器103と膨脹弁104と室外用熱交換器105とアキュームレータ109が設けられている。室内用熱交換器103は、車室に開口する空調ダクト106内に配置されている。第1循環経路100は、種々のバイパス経路100a,100bと第1冷媒の経路を切り換えるための多数の切換弁107を有する。
【0004】
暖房運転時にあっては、内部熱交換部102と室内用熱交換器103が第1の冷媒に放熱させるコンデンサとして機能し、室外用熱交換器105が第1の冷媒に吸熱させるエバポレータとして機能する。冷房運転時にあっては、室外用熱交換器105が第1の冷媒に放熱させるコンデンサとして機能し、室内用熱交換器103が第1の冷媒に吸熱させるエバポレータとして機能するように経路が切り換えられる。
【0005】
暖房用循環装置Dの第2循環経路110には、第2の冷媒を循環させるポンプ111と内部熱交換部102の受熱部とヒータコア113と動力側発熱体である燃料電池スタック122が設けられている。ヒータコア113は、車室に開口する空調ダクト106内に配置されている。
【0006】
暖房用循環装置Dの第3循環経路120には、第3の冷媒を循環させるポンプ121と動力側発熱体である燃料電池スタック122と放熱器123と放熱器123をバイパスするバイパス流路124と第3の冷媒を放熱器123に流すかバイパス流路124に流すかを切り替える切替弁125とが設けられている。
【0007】
暖房運転時には、ヒートポンプ式冷房装置Cの室内用熱交換器103とヒータコア113と共に燃料電池スタック122を熱源として車室内を暖房し、冷房運転時にはヒートポンプ式冷房装置Cの室内用熱交換器103を冷却源として車室内を冷房する。
【0008】
この従来例では、ヒートポンプ式冷房装置Cと燃料電池スタック122の冷却水の廃熱とを利用して冷房と暖房を行うものである。従って、熱源の少ない車両においてその少ない熱源を有効利用でき、燃費の改善、極低温での暖房性能の向上などを図ることができる。
【特許文献1】特開2002−98430号公報(図9〜図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来例では、冷房運転と暖房運転ではヒートポンプ式冷房装置Cの第1の冷媒の流路を切り換えるために、多数のバイパス流路100a,100b及び切換弁107などが必要となるため、ヒートポンプ式冷房装置Cの構成が複雑になるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、ヒートポンプ式冷房装置と動力側発熱体の廃熱とを利用して冷房と暖房を行うシステムにあって、ヒートポンプ式冷房装置の構成を簡略化できる車両用空気調和システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する請求項1の発明は、第1の冷媒が循環する第1循環経路を有するヒートポンプ式冷房装置と、第1循環経路とは別に、顕熱変化によって熱交換可能な液体である第2の冷媒が循環する第2循環経路と、顕熱変化によって熱交換可能な液体である第3の冷媒が循環する第3循環経路とを有する暖房用循環装置とを備え、前記第1循環経路には、第1の冷媒を圧縮するコンプレッサと、第2循環経路内に配置され、第1の冷媒の熱を第2の冷媒へ放熱させるコンデンサと、第1の冷媒を膨張させる膨張手段と、膨張手段で膨張された第1の冷媒と空気との間で熱交換して空気を冷却するエバポレータとが設けられ、前記第2循環経路には、第2の冷媒を循環させるポンプと、第2の冷媒の熱を放熱させる空調用放熱器と、第2の冷媒を前記空調用放熱器に流すかバイパスさせるか否かを切り替えできる第1流路切替手段とが設けられ、前記第3循環経路には、第3の冷媒を循環させるポンプと、第3の冷媒との間で熱交換する動力側発熱体と、第2の冷媒との間で熱交換して第3の冷媒を加熱する内部熱交換部と、第3の冷媒と空気との間で熱交換して空気を加熱するヒータコアと、第3の冷媒の熱を放熱させる動力用放熱器と、第3の冷媒を前記動力用放熱器に流すかバイパスさせるか否かを第3の冷媒の温度によって切り替える第2流路切替手段とが設けられ、前記エバポレータと前記ヒータコアを通過した各空気を車室内に選択的に導入できるよう構成されたことを特徴とすることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両用空気調和システムであって、前記空調用放熱器と前記動力用放熱器は、一体に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用空気調和システムであって、前記内部熱交換部は、第2の冷媒が流れる放熱部と第3の冷媒が流れる受熱部を有し、放熱部と受熱部が密着配置されたものであることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用空気調和システムであって、前記内部熱交換部は、第2の冷媒と第3の冷媒のいずれか一方が流れる熱交換器を有し、他方が流れる流路内に前記熱交換器が配置されたものであることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用空気調和システムであって、前記内部熱交換部は、前記第2循環経路の第2の冷媒と前記第3循環経路の第3の冷媒が共に流れ込み、流出する冷媒合流部であることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記第2循環経路には、第2の冷媒を前記内部熱交換部に流すかバイパスさせるか否かを切り替える第3流路切替手段が設けられたことを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記第3循環経路には、第3の冷媒を前記内部熱交換部及び前記ヒータコアに流すか流さないか否かを切り替える第4流路切替手段が設けられたことを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記第3循環経路には、前記動力側発熱体と前記動力用放熱器側と前記ヒータコアと前記内部熱交換部とを一括して循環する一括循環経路と、前記動力側発熱体と前記動力用放熱器側を循環する分流経路と、前記ヒータコアと前記内部熱交換部を循環する分流経路とに分岐する分岐独立循環経路とに選択的に第3の冷媒を流すことができるよう構成されたことを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記第2循環経路と前記第3循環経路には、双方の兼用経路が設けられ、前記兼用経路に前記ヒータコアが設けられ、動力側発熱体と動力用放熱器側とヒータコアと内部熱交換部とを一括して循環する一括循環経路と、動力側発熱体と動力用放熱器側を循環する分流経路と、ヒータコアと内部熱交換部を循環する分流経路とに分岐する分岐独立循環経路とに選択的に第3の冷媒を流すことができるよう構成されたことを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記暖房用循環装置の複数のポンプは、単一のポンプで兼用されたことを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、前記第2循環経路と前記第3循環経路の少なくともいずれか一方の中には、ヒータが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、暖房運転時にはコンデンサと動力発熱体から得た熱をヒータコアから空気に放熱して暖風を車室内に導き、冷房運転時には第1の冷媒がエバポレータで空気より吸熱して冷風を車室内に導き、且つ、ヒートポンプ式冷房装置の廃熱を空調用放熱器で、動力側発熱体の熱を動力用放熱器でそれぞれ車室外の空気に排出すれば暖房と冷媒を行うことができる。そして、ヒートポンプ式冷房装置の第1の冷媒は、暖房運転と冷房運転に係わらず第1循環経路を一定の経路で循環させれば良い。以上より、ヒートポンプ式冷房装置と動力側発熱体の廃熱とを利用して冷房と暖房を行うシステムにあって、ヒートポンプ式冷房装置の構成を簡略化できる。
【0023】
請求項2の発明によれば、空調用放熱器と動力用放熱器をコンパクト化できると共にコストを低減できる。
【0024】
請求項3の発明によれば、第2の冷媒と第3の冷媒の種類が異なる場合にも熱交換できる。
【0025】
請求項4の発明によれば、第2の冷媒と第3の冷媒の種類が異なる場合にも適用できる。又、第2の冷媒と第3の冷媒の熱交換効率が良い。
【0026】
請求項5の発明によれば、内部熱交換部の構成がシンプルであると共に、熱交換効率が非常に良い。
【0027】
請求項6の発明によれば、冷房運転時にヒータコアからの放熱を防止できる。
【0028】
請求項7の発明によれば、バイパス流路を設けることなく、冷房運転時にヒータコアからの放熱を防止できる。
【0029】
請求項8の発明によれば、暖房運転を即暖モードとエンジン暖気/暖房安定モードに分け、即暖モードでは分岐独立循環経路とすることによって動力側発熱体を暖めることなくヒートポンプ式冷房装置の熱を暖房に使用できるため即暖性が向上し、エンジン暖気/暖房安定モードでは一括循環経路とすることによって動力側発熱体の廃熱をも暖房に使用できるため、燃費等が向上する。
【0030】
請求項9の発明によれば、第2循環経路と第3循環経路の一部を共通化し、しかも、一括循環経路と分岐独立循環経路を形成できるため、一括循環経路と分岐独立循環経路とに変更できる暖房循環装置の構成を簡単化できる。
【0031】
請求項10の発明によれば、ポンプのコストを低減できると共に、暖房用循環装置の構成を簡単化できる。
【0032】
請求項11の発明によれば、暖房運転時はヒートポンプ式冷房装置において生じた熱とヒータによって発生させた熱とを暖房に使用できるため、少ない熱源しか持たない車両において、外気温が極低温状態であっても十分な暖房性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
図1〜図3は第1の実施形態を示し、図1は車両用空気調和システムのシステム構成図、図2は暖房運転時の各冷媒の流れを示す構成図、図3は冷房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【0035】
図1に示すように、車両用空気調和システムは、ヒートポンプ式冷房装置Aと暖房用循環装置B1とを有し、これらが組み合わされている。
【0036】
ヒートポンプ式冷房装置Aは、第1の冷媒としての二酸化炭素が封入された第1循環経路1を有し、この第1循環経路1中に、コンプレッサ2、コンデンサである水冷コンデンサ3、膨張手段である膨張弁4、エバポレータ5及びアキュームレータ6を順に備えて構成される。
【0037】
コンプレッサ2は、吸入した比較的低温低圧の第1の冷媒を圧縮して高温高圧の冷媒として吐出する。
【0038】
水冷コンデンサ3は、下記する第2循環経路10中の機器収容室14内に配置されており、コンプレッサ2から圧送された第1の冷媒を第2の冷媒によって冷却する。すなわち、水冷コンデンサ3において第1の冷媒と第2の冷媒との間で熱交換が行われ、第2の冷媒は第1の冷媒によって加熱される。
【0039】
膨張弁4は、水冷コンデンサ3を通過した第1の冷媒を膨張(減圧)させて低温低圧のガスとしてエバポレータ5へと送出する。
【0040】
エバポレータ5は、膨張弁4から送出された第1の冷媒とエバポレータ5を通過する空気とを熱交換させ、エバポレータ5を通過する空気は第1の冷媒によって冷却される。エバポレータ5は空調ダクト(図示せず)内に配置され、エバポレータ5を通過した冷風は、車室内に、又は、車室外に導くことができるようになっている。
【0041】
アキュームレータ6は、エバポレータ5から送出された第1の冷媒を気液分離して気相状態の第1の冷媒のみをコンプレッサ2に送出し、液相状態の第1の冷媒を一時的に貯留する。
【0042】
暖房用循環装置B1は、第2の冷媒としての水や不凍液などの液体が封入された第2循環経路10を有し、この第2循環経路10中に、第1ポンプ11、空調用放熱器12、内部熱交換部13の放熱部13a及び機器収容室14が順に設けられている。機器収容室14は、第2循環経路10よりも大きな断面積を有するスペースであり、この内部に上記した水冷コンデンサ3と共にヒータである電気ヒータ15が収納されている。
【0043】
第1ポンプ11は、第2の冷媒を第2循環経路10内に循環させるため、吸入した第2の冷媒を圧送する。第1ポンプ11で圧送された液体の冷媒は、相変化することなく液相のまま第2循環経路10内を循環し、熱交換により顕熱変化する。
【0044】
空調用放熱器12は、第2の冷媒の熱を外気に放熱させるものであり、電動ファンや走行風によって外気が吹き付けられ、第2の冷媒と外気との間で熱交換が行われる。空調用放熱器12は、下記する動力用放熱器23と一体に設けられている。
【0045】
内部熱交換部13は、第2の冷媒が流れる放熱部13aと、第3の冷媒が流れる下記する受熱部13bを有し、放熱部13aと受熱部13bが密着配置されている。内部熱交換部13で第3の冷媒が第2の冷媒によって加熱される。
【0046】
電気ヒータ15は、水冷コンデンサ3の下流側に設けられ、通電することで発熱して第2の冷媒を加熱する。
【0047】
第2循環経路10には、空調用放熱器12をバイパスする放熱器バイパス流路16が設けられ、放熱器バイパス流路16の上流側に設けられた第1流路切替弁(第1流路切替手段)17を切り替えることで、第2の冷媒の流れを空調用放熱器12側又は放熱器バイパス流路16側へと切り替えることができる。
【0048】
第2循環経路10には、内部熱交換部13の放熱部13aをバイパスする熱交換部バイパス流路18が設けられ、熱交換部バイパス流路18の上流側に設けられた第3流路切替弁(第3流路切替手段)19を切り替えることで、第2の冷媒の流れを内部熱交換部13の放熱部13a側又は熱交換部バイパス流路18側へと切り替えることができる。
【0049】
暖房用循環装置B1は、第3の冷媒としての水や不凍液などの液体が封入された第3循環経路20を有し、この第3循環経路20中に、第2ポンプ21、動力側発熱体である低水温のエンジン22と、動力用放熱器23、内部熱交換部13の受熱部13b及びヒータコア24が設けられている。
【0050】
第2ポンプ21は、第3の冷媒を第3循環経路20内に循環させるため、吸入した第3の冷媒を圧送する。第2ポンプ21で圧送された液体の冷媒は、相変化することなく液相のまま第3循環経路20内を循環し、熱交換により顕熱変化する。この実施形態では、第2の冷媒と第3の冷媒は、同じ液体が使用されている。
【0051】
エンジン22は、エンジン効率が良いため低水温での駆動となる環境対策車用であり、第3の冷媒との熱交換によって所望の温度に保持される。
【0052】
動力用放熱器23は、第3の冷媒の熱を外気に放熱させるものであり、電動ファンや走行風によって外気が吹き付けられ、第3の冷媒と外気との間で熱交換が行われる。
【0053】
ヒータコア24は、第3の冷媒とヒータコア24を通過する空気とを熱交換させることで、ヒータコア24を通過する空気を加熱する。ヒータコア24は、空調ダクト(図示せず)内に配置され、ヒータコア24を通過した暖風は、車室内に導くことができるようになっている。
【0054】
第3循環経路20には、動力用放熱器23をバイパスする放熱器バイパス流路25が設けられ、放熱器バイパス流路25の下流側に設けられたサーモスタット(第2流路切替手段)26の切り替えによって、第2の冷媒の流れが動力用放熱器23側又は放熱器バイパス流路25側へと切り替えられる。つまり、サーモスタット26は、規定の温度で流路を自動的に切り替えるものであり、規定の温度未満では第3の冷媒が放熱器バイパス流路25に流れるよう、規定の温度以上では第3の冷媒が動力用放熱器23側に流れるよう切り替えられる。これによって、第3の冷媒の温度、ひいてはエンジン22の温度が所定の温度範囲に調整される。
【0055】
次に、前記車両用空気調和システムの動作を説明する。
【0056】
図2に示すように、暖房運転が選択されると、ヒートポンプ式冷房装置Aではコンプレッサ2が単に駆動される。暖房用循環装置B1では、第1流路切替弁17が放熱器バイパス流路16に第2の冷媒が流れる切替位置に、第3流路切替弁19が内部熱交換部13に第2の冷媒が流れる切替位置に位置され、第1ポンプ11及び第2ポンプ21が駆動される。
【0057】
ヒートポンプ式冷房装置Aでは、水冷コンデンサ3で放熱すると共にエバポレータ5で空気より吸熱し、エバポレータ5を通過した空気は、車室外に排出される。水冷コンデンサ3では、第1の冷媒の熱が第2の冷媒に放熱し、第2の冷媒が加熱される。この第2の冷媒と第3の冷媒が内部熱交換部13で熱交換し、第3の冷媒が加熱される。第3の冷媒の熱は、ヒータコア24で空気に放熱し、ヒータコア24を通過した空気が暖風となる。この暖風が車室内に導かれ、車室内が暖房される。
【0058】
エンジン22が駆動されると、エンジン22の熱が第3の冷媒に放熱される。そして、所定の温度まで加熱されると、エンジン22の熱も暖房に使用される。つまり、ヒートポンプ式冷房装置Aの熱とエンジン22の熱によって暖房される。
【0059】
また、電気ヒータ15を駆動すれば、電気ヒータ15の熱によって暖房性能の向上を図ることができ、極低温の環境下でも十分な暖房性能が得られる。
【0060】
図3に示すように、冷房運転が選択されると、ヒートポンプ式冷房装置Aではコンプレッサ2が単に駆動される。暖房用循環装置B1では、第1流路切替弁17が空調用放熱器12に第2の冷媒が流れる切替位置に、第3流路切替弁19が熱交換部バイパス流路18に第2の冷媒が流れる切替位置に位置され、第1ポンプ11及び第2ポンプ21が駆動される。
【0061】
ヒートポンプ式冷房装置Aでは、水冷コンデンサ3で放熱すると共にエバポレータ5で空気より吸熱する。エバポレータ5を通過した空気は冷風となる。この冷風が車室内に導かれ、車室内が冷房される。
【0062】
又、水冷コンデンサ3では、第1の冷媒の熱が第2の冷媒に放熱し、第2の冷媒が加熱される。この第2の冷媒の熱が空調用放熱器12で放熱される。又、エンジン22も所定温度になると、サーモスタット26が第3の冷媒を動力用放熱器23側に流れる位置に切り替えられ、エンジン22の廃熱が動力用放熱器23から排出される。このようにして、ヒートポンプ式冷房装置Aの廃熱とエンジン22の廃熱が車室外の空気に排出される。
【0063】
以上、本実施形態では、暖房運転時には水冷コンデンサ3とエンジン22から得た熱をヒータコア24から空気に放熱して暖風を車室内に導き、且つ、エバポレータ5からの冷風を車室外に排出することによって暖房を行う。冷房運転時には第1の冷媒がエバポレータ5で空気より吸熱して冷風を車室内に導き、且つ、ヒートポンプ式冷房装置Aの廃熱を空調用放熱器12で、エンジン22の廃熱を動力用放熱器23でそれぞれ車室外の空気に排出することによって冷房を行う。そして、ヒートポンプ式冷房装置Aの第1の冷媒は、暖房運転と冷房運転に係わらず第1循環経路1を一定の経路で循環させれば良い。以上より、ヒートポンプ式冷房装置Aとエンジン22の廃熱とを利用して冷房と暖房を行うシステムにあって、ヒートポンプ式冷房装置Aの構成を簡略化できる。
【0064】
この第1の実施形態では、空調用放熱器12と動力用放熱器23は、一体に設けられている。従って、空調用放熱器12と動力用放熱器23をコンパクト化できると共にコストを低減できる。空調用放熱器12と動力用放熱器23は、同じ耐圧仕様で良いことから同じ部品を共用でき、製造も容易となるため、その面でもコストを低減できる。
【0065】
この第1の実施形態では、内部熱交換部13は、第2の冷媒が流れる放熱部13aと第3の冷媒が流れる受熱部13bを有し、放熱部13aと受熱部13bが密着配置されたものである。従って、本実施形態では第2と第3の冷媒が同じ種類であるが、第2の冷媒と第3の冷媒の種類が異なる場合にも熱交換できる。
【0066】
この第1の実施形態では、第2循環経路10には、第2の冷媒を内部熱交換部13に流すか否かバイパスさせるか否かを切り替える第3流路切替弁19が設けられている。従って、冷房運転時にヒータコア24からの放熱を防止できる。
【0067】
(第2の実施形態)
図4〜図6は第2の実施形態を示し、図4は車両用空気調和システムのシステム構成図、図5は暖房運転時の各冷媒の流れを示す構成図、図6は冷房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【0068】
図4に示すように、この第2の実施形態の車両用空気調和システムは、前記第1の実施形態のものと比較するに、暖房用循環装置B2の第2循環経路10には熱交換部バイパス流路18と第3流路切替弁19が設けられていない。その代わりに、暖房用循環装置B2の第3循環経路20には、内部熱交換部13の受熱部13bの直ぐ上流に第4流路切替弁(第4流路切替手段)30が設けられている。第4流路切替弁30は、流路の遮断・開放用として使用され、第3の冷媒を内部熱交換部13の受熱部13b及びヒータコア24に流すか否かを切り替えることができる。
【0069】
他の構成は、前記第1の実施形態と同様であるため、図面の同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図5に示すように、暖房運転が選択されると、第4流路切替弁30は、第3の冷媒を内部熱交換部13の受熱部13b及びヒータコア24に流す位置に位置される。他の制御は、前記第1の実施形態と同じであり、ヒートポンプ式冷房装置Aの熱とエンジン22の熱によって車室内が暖房される。
【0071】
図6に示すように、冷房運転が選択されると、第4流路切替弁30は、第3の冷媒を内部熱交換部13の受熱部13b及びヒータコア24に流さない位置に位置される。他の制御は、前記第1の実施形態と同じであり、エバポレータ5を通過した冷風によって車室内が冷房される。又、ヒートポンプ式冷房装置Aの廃熱とエンジン22の廃熱が車室外の空気に排出される。
【0072】
この第2の実施形態でも、前記第1の実施形態と同様に、ヒートポンプ式冷房装置Aとエンジン22の廃熱とを利用して冷房と暖房を行うシステムにあって、ヒートポンプ式冷房装置Aの構成を簡略化できる。
【0073】
この第2の実施形態では、第3循環経路20には、第3の冷媒を内部熱交換部13及びヒータコア24に流すか流さないか否かを切り替える第4流路切替弁30が設けられている。従って、第1の実施形態のような熱交換部バイパス流路18を設けることなく、冷房運転時にヒータコア24からの放熱を防止できる。
【0074】
(第3の実施形態)
図7〜図9は第3の実施形態を示し、図7は車両用空気調和システムのシステム構成図、図8は暖房運転時の各冷媒の流れを示す構成図、図9は冷房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【0075】
図7に示すように、この第3の実施形態の車両用空気調和システムは、前記第2の実施形態のものと比較するに、暖房用循環装置B3の内部熱交換部13Aの構成が相違する。
【0076】
内部熱交換部13Aは、第3の冷媒が内部を流れる熱交換器13cを有し、第2の冷媒が流れる機器収容室14内に熱交換器13cが配置されることによって構成されている。つまり、第2循環経路10中の機器収容室14内には、水冷コンデンサ3と熱交換器13cが収容されている。
【0077】
他の構成は、前記第2の実施形態と同様であるため、図面の同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0078】
図8に示すように、暖房運転の動作はほぼ同じであり、図9に示すように、冷房運転時の動作もほぼ同じである。
【0079】
この第3の実施形態でも、前記第2の実施形態と同様に、ヒートポンプ式冷房装置Aとエンジン22の廃熱とを利用して冷房と暖房を行うシステムにあって、ヒートポンプ式冷房装置Aの構成を簡略化できる。
【0080】
この第3の実施形態では、内部熱交換部13Aは、第3の冷媒が流れる熱交換器13cを有し、第2の冷媒が流れる流路、具体的には機器収容室14内に熱交換器13cが配置されたものである。従って、第2の冷媒と第3の冷媒の種類が異なる場合にも適用できる。又、第1及び第2の実施形態のものに比べて、第2の冷媒と第3の冷媒の熱交換効率が良い。
【0081】
又、内部熱交換部13Aは、前記とは逆に、第2の冷媒が流れる熱交換器を有し、第3の冷媒が流れる流路内に熱交換器が配置されたものであっても良い。
【0082】
(第4の実施形態)
図10〜図13は第4の実施形態を示し、図10は車両用空気調和システムのシステム構成図、図11は暖房運転時の即暖モードの各冷媒の流れを示す構成図、図12は暖房運転時のエンジン暖機モード/暖房安定モードの各冷媒の流れを示す構成図、図13は冷房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【0083】
図10に示すように、この第4の実施形態の車両用空気調和システムは、前記第3の実施形態のものと比較するに、暖房用循環装置B4の第3循環経路20の構成が相違する。
【0084】
つまり、第3循環経路20には、エンジン22の循環系とヒータコア24の循環系に分離するための分岐用流路31と、この分岐用流路31に第3の冷媒を流すか否かを切り替えできる第5流路切替弁32と、分岐用流路31用の第3ポンプ33とが付設されている。分岐用流路31は、第4流路切替弁30と第5流路切替弁32の間に介在されている。第4流路切替弁30と第5流路切替弁32の切り替えによって第3の冷媒を分岐用流路31に流すか否かを制御できるようになっている。つまり、第4流路切替弁30は、前記第3の実施形態では流路の遮断・開放用に使用されていたが、この第4の実施形態では、流路の切替と遮断に使用されている。
【0085】
これにより、第3循環経路20には、エンジン22と動力用放熱器23側とヒータコア24と内部熱交換部13Aを循環する一括循環経路(エンジン暖機/暖房安定モード)cと、エンジン22と動力用放熱器23側を循環する分流経路bとヒータコア24と内部熱交換部13Aを循環する分流経路aとに分岐する分岐独立循環経路(即暖モード)a,bとに選択的に第3の冷媒を流すことができる。
【0086】
他の構成は、前記第3の実施形態と同様であるため、図面の同一構成箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0087】
次に、前記車両用空気調和システムの動作を説明する。
【0088】
図11に示すように、暖房運転の即暖モードが選択されると、ヒートポンプ式冷房装置Aではコンプレッサ2が単に駆動される。暖房用循環装置B4では、第1流路切替弁17が放熱器バイパス流路16に第2の冷媒が流れる切替位置に位置される。又、第4流路切替弁30及び第5流路切替弁32がエンジン22側からの第3の冷媒を内部熱交換部13A及びヒータコア24に流さず、且つ、内部熱交換部13A及びヒータコア24からの第3の冷媒を分岐用流路31に流す切替位置に位置され、第1〜第3ポンプ11,21,33を駆動させる。
【0089】
すると、図11にて矢印で示すように、第3循環経路20内に2つの分岐経路a,bが形成される。これにより、水冷コンデンサ3からの熱を受けた第3の冷媒は、ヒータコア24のみで放熱する。ヒータコア24を通過した暖風は車室内に導かれ、車室内が暖房される。つまり、第3の冷媒の熱は、前記第1〜第3の実施形態のようにエンジン22に放熱されることがないため、即暖性が向上する。
【0090】
図12に示すように、暖房運転のエンジン暖機/暖房安定モードが選択されると、第4流路切替弁30及び第5流路切替弁32が第3の冷媒を分岐用流路31に流さない切替位置に位置されて第1〜第3ポンプ11,21,33が駆動される。
【0091】
すると、水冷コンデンサ3からの熱を受けた第3の冷媒は、第3の冷媒が一括循環経路cを流れてヒータコア24で放熱すると共にエンジン22が所定温度に暖まるまでエンジン22にも放熱する。従って、エンジン22のフリクションの低減、暖機時間の短縮により燃費の向上を図ることができる。
【0092】
図13に示すように、冷房運転が選択されると、ヒートポンプ式冷房装置Aではコンプレッサ2が単に駆動される。暖房用循環装置B4では、第1流路切替弁17が第3の冷媒を空調用放熱器12側に流す切替位置に、第4流路切替弁30が第3の冷媒を内部熱交換部13Aの熱交換器13c及びヒータコア24に流さない切替位置に、第5流路切替弁32が第3の冷媒を分岐用流路31に流さない切替位置に位置されて第1ポンプ11及び第2ポンプ212が駆動される。
【0093】
(第5の実施形態)
図14〜図17は第5の実施形態を示し、図14は車両用空気調和システムのシステム構成図、図15は暖房運転時の即暖モードの各冷媒の流れを示す構成図、図16は暖房運転時のエンジン暖機モード/暖房安定モードの各冷媒の流れを示す構成図、図17は冷房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【0094】
図14に示すように、この第5の実施形態の車両用空気調和システムは、前記第3の実施形態のものと比較するに、暖房用循環装置B5の第2循環経路10と第3循環経路20の構成が相違する。
【0095】
つまり、第2循環経路10と第3循環経路20の一部には、双方の兼用経路40が設けられている。この兼用経路40中に機器収容室14Bとヒータコア24が設けられている。機器収容室14Bは、第2循環経路10の第2の冷媒と第3循環経路20の第3の冷媒が共に流れ込む冷媒合流部であり、この冷媒合流部で双方の冷媒の熱交換が行われる。つまり、機器収容室(冷媒合流部)14Bは内部熱交換部13Bを構成している。従って、この第5の実施形態では、第2の冷媒と第3の冷媒は同じ種類の冷媒が使用される。そのため、第2循環経路10と第3循環経路20を流れる冷媒を、以下では単に冷媒という。
【0096】
又、兼用経路40には、ヒータコア24が配置されていると共に、兼用経路40の第2循環経路10と第3循環経路20との合流点には、冷媒を第2循環経路10に流すか第3循環経路20に流すか否かを切り替える第6流路切換手段41が設けられている。
【0097】
又、空調用バイパス流路及び第1流路切替弁は、設けられていない。
【0098】
この第5の実施形態においても、図15に示すように、暖房運転時の即暖モードでは、第3循環経路20内に第3の冷媒の分岐独立循環経路a,bを形成できる。図16に示すように、エンジン暖機モード/暖房安定モードでは、第3循環経路20内に第3の冷媒の一括循環経路cを形成することができる。又、図17に示すように、冷房運転が選択されると、水冷コンデンサ3の廃熱を空調用放熱器12で、エンジン22の廃熱を動力用放熱器23で車室外の空気に排出できる。尚、この第5の実施形態では、冷房運転時にもヒータコア24に冷媒が流れるため、ヒータコア24を通過した暖風は、車室内と車室外とに選択的に導くことができるよう構成されている。また、ミックスドア等でヒータコア24への送風を遮断することで、ヒータコア24からの放熱を防いでも良い。
【0099】
その上、この第5の実施形態では、第2循環経路10と第3循環経路20の一部が兼用経路40によって共通化され、しかも、前記第4の実施形態で説明したような一括循環経路cと分岐独立循環経路a,bが形成できるため、一括循環経路cと分岐独立循環経路a,bとに変更できる暖房用循環装置B5の構成を簡単化できる。
【0100】
(その他)
前記第1〜第5の実施形態では、第1ポンプ11と第2ポンプ21の2台が、第4の実施形態では、第1〜第3ポンプ11,21,33の3台が、第5の実施形態では、第1ポンプ11と第3ポンプ33の2台がそれぞれ設けられているが、単一のポンプの動力によって複数の流体圧送部を駆動させる構成とすれば、1台のポンプにて兼用することができる。このようにすれば、ポンプのコストを低減できると共に、暖房用循環装置B1〜B5の構成を簡単化できる。
【0101】
前記第1〜第5の実施形態では、動力側発熱体は低水温駆動のエンジン22であるが、燃料電池スタック等でも良いことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、車両用空気調和システムのシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、暖房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、冷房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示し、車両用空気調和システムのシステム構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示し、暖房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示し、冷房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示し、車両用空気調和システムのシステム構成図である。
【図8】本発明の第3の実施形態を示し、暖房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【図9】本発明の第3の実施形態を示し、冷房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【図10】本発明の第4の実施形態を示し、車両用空気調和システムのシステム構成図である。
【図11】本発明の第4の実施形態を示し、暖房運転時の即暖モードの各冷媒の流れを示す構成図である。
【図12】本発明の第4の実施形態を示し、暖房運転時のエンジン暖気モード/暖房安定モードの各冷媒の流れを示す構成図である。
【図13】本発明の第4の実施形態を示し、冷房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【図14】本発明の第5の実施形態を示し、車両用空気調和システムのシステム構成図である。
【図15】本発明の第5の実施形態を示し、暖房運転時の即暖モードの各冷媒の流れを示す構成図である。
【図16】本発明の第5の実施形態を示し、暖房運転時のエンジン暖気モード/暖房安定モードの各冷媒の流れを示す構成図である。
【図17】本発明の第5の実施形態を示し、冷房運転時の各冷媒の流れを示す構成図である。
【図18】従来例の車両用空気調和システムのシステム構成図である。
【符号の説明】
【0103】
A ヒートポンプ式冷房装置
B1〜B5 暖房用循環装置
1 第1循環経路
2 コンプレッサ
3 水冷コンデンサ(コンデンサ)
4 膨張弁(膨張手段)
5 エバポレータ
10 第2循環経路
11 第1ポンプ
12 空調用放熱器
13,13A,13B 内部熱交換部
14B 機器収容室(内部熱交換部)
15 ヒータ(電気ヒータ)
16 放熱器バイパス流路
17 第1流路切替弁(第1流路切替手段)
19 第3流路切替弁(第3流路切替手段)
20 第3循環経路
21 第2ポンプ
22 エンジン(動力用発熱体)
23 動力用放熱器
24 ヒータコア
25 放熱器バイパス流路
26 サーモスタット(第2流路切替手段)
30 第4流路切替弁(第4流路切替手段)
40 兼用経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の冷媒が循環する第1循環経路(1)を有するヒートポンプ式冷房装置(A)と、
第1循環経路(1)とは別に、顕熱変化によって熱交換可能な液体である第2の冷媒が循環する第2循環経路(10)と、顕熱変化によって熱交換可能な液体である第3の冷媒が循環する第3循環経路(20)とを有する暖房用循環装置(B1〜B5)とを備え、
前記第1循環経路(A)には、第1の冷媒を圧縮するコンプレッサ(2)と、第2循環経路(10)内に配置され、第1の冷媒の熱を第2の冷媒へ放熱させるコンデンサ(3)と、第1の冷媒を膨張させる膨張手段(4)と、前記膨張手段(4)で膨張された第1の冷媒と空気との間で熱交換して空気を冷却するエバポレータ(5)とが設けられ、
前記第2循環経路(10)には、第2の冷媒を循環させる第1ポンプ(11)と、第2の冷媒の熱を放熱させる空調用放熱器(12)と、第2の冷媒を前記空調用放熱器(12)に流すかバイパスさせるか否かを切り替えできる第1流路切替手段(17)とが設けられ、
前記第3循環経路(20)には、第3の冷媒を循環させる第2ポンプ(21)と、第3の冷媒との間で熱交換する動力側発熱体(22)と、第2の冷媒との間で熱交換して第3の冷媒を加熱する内部熱交換部(13,13A,13B)と、第3の冷媒と空気との間で熱交換して空気を加熱するヒータコア(24)と、第3の冷媒の熱を放熱させる動力用放熱器(23)と、第3の冷媒を前記動力用放熱器(23)に流すかバイパスさせるか否かを第3の冷媒の温度によって切り替える第2流路切替手段(26)とが設けられ、
前記エバポレータ(5)と前記ヒータコア(24)を通過した各空気を車室内に選択的に導入できるよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空気調和システムであって、
前記空調用放熱器(12)と前記動力用放熱器(23)は、一体に設けられていることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用空気調和システムであって、
前記内部熱交換部(13)は、第2の冷媒が流れる放熱部(13a)と第3の冷媒が流れる受熱部(13b)を有し、放熱部(13a)と受熱部(13b)が密着配置されたものであることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の車両用空気調和システムであって、
前記内部熱交換部(13A)は、第2の冷媒と第3の冷媒のいずれか一方が流れる熱交換器(13c)を有し、他方が流れる流路内に前記熱交換器(13c)が配置されたものであることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の車両用空気調和システムであって、
前記内部熱交換部(13B)は、前記第2循環経路(10)の第2の冷媒と前記第3循環経路(20)の第3の冷媒が共に流れ込み、流出する冷媒合流部(14B)であることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記第2循環経路(10)には、第2の冷媒を前記内部熱交換部(13)に流すかバイパスさせるか否かを切り替える第3流路切替手段(19)が設けられたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記第3循環経路(20)には、第3の冷媒を前記内部熱交換部(13)及び前記ヒータコア(24)に流すか流さないか否かを切り替える第4流路切替手段(30)が設けられたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記第3循環経路(20)には、前記動力側発熱体(22)と前記動力用放熱器(23)側と前記ヒータコア(24)と前記内部熱交換部(13A)とを一括して循環する一括循環経路(c)と、
前記動力側発熱体(22)と前記動力用放熱器(23)側を循環する分流経路(a)と、前記ヒータコア(24)と前記内部熱交換部(13A)を循環する分流経路(b)とに分岐する分岐独立循環経路とに選択的に第3の冷媒を流すことができるよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記第2循環経路(10)と前記第3循環経路(20)には、双方の兼用経路(40)が設けられ、前記兼用経路(40)に前記ヒータコア(24)が設けられ、
前記動力側発熱体(22)と前記動力用放熱器(23)側と前記ヒータコア(24)と前記内部熱交換部(13B)とを一括して循環する一括循環経路(c)と、
前記動力側発熱体(22)と前記動力用放熱器(23)側を循環する分流経路(b)と、前記ヒータコア(24)と前記内部熱交換部(13B)を循環する分流経路(a)とに分岐する分岐独立循環経路とに選択的に第3の冷媒を流すことができるよう構成されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記暖房用循環装置(B1〜B5)の複数のポンプ(11,21,33)は、単一のポンプで兼用されたことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記第2循環経路(10)と前記第3循環経路(20)の少なくともいずれか一方の中には、ヒータ(15)が設けられたことを特徴とする車両用空気調和システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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