説明

車両用空調装置

【課題】簡単な構成で、蒸発器の湿度を良好に低下させ、カビ等の発生を抑制することができる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】ブロア(30)、エバポレータ(34)、及びヒータコア(36)を有する通風ダクト(10)内に、当該エバポレータ及びヒータコアに跨るヒートパイプ(38)を設け、エバポレータを含む冷凍回路(50)の冷凍サイクルが停止したときに、アクチュエータ(44)によりヒートパイプをエバポレータ及びヒータコアと接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に係り、詳しくは蒸発器及びその周辺に発生するカビ等の細菌の繁殖を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両用空調装置は、車室内へと連通している空気通路ダクト内に、送風機、蒸発器、及びヒータコアが空気流の上流から下流側に向け順に配設されている。
そして、送風機により下流側へと送られる空気は蒸発器において冷却され、さらに一部の空気がヒータコアにより加熱されて車室内へと吹き出されることで、車室内の温度調節が行われている。
【0003】
ここで、空気の冷却を行っている蒸発器には、空気中に含まれる水分が凝縮し、当該蒸発器表面に付着する。このため蒸発器周辺の相対湿度が上昇しカビ等の細菌が繁殖しやすくなるという問題がある。
カビ菌糸は20〜30℃の常温状態で湿度が75%RH以上で成長速度が速くなり、湿度65%以下になると成長速度は著しく遅くなるという性質を有している。したがって、温度を高くし、湿度を低下させることが蒸発器のカビ抑制に効果的である。
【0004】
そこで、ヒータコアよりも空気流下流側に逆向き送風ファンを設け、当該逆向き送風ファンにより空気通路内に逆方向の空気流を発生させることで、ヒータコアにより加熱された空気を蒸発器に送り、当該蒸発器を加熱させることでカビ等の繁殖を防止する技術が開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−10326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、逆向き送風ファンを設けたり、排出通路を形成させたりする必要があるため構成が非常に複雑になるという問題がある。
また、逆向きファンによる逆方向の空気流が生じると、ダクト内の上流側壁面にカビが飛散し付着するため、カビの発生領域が拡大するおそれがある。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、カビの発生領域を拡大させることなく、簡単な構成で蒸発器の湿度を低下させ、カビ等の細菌の繁殖を抑制させることのできる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1の車両用空調装置では、車室内に設けられ、一側に空気送出口が、他側に空気取入口が形成されたダクトと、該ダクト内に設けられ、一側に向け送風を行う送風手段と、前記ダクト内の前記送風手段よりも一側に設けられ、冷凍回路の一部をなし、通過する空気及び周囲の空気を冷却可能な蒸発器と、前記ダクト内の該蒸発器よりも一側に設けられ、暖房回路の一部をなし、通過する空気を加熱可能なヒータコアと、前記蒸発器及び前記ヒータコアを跨いで延び、前記冷凍回路の冷凍サイクルが停止した後に、該蒸発器及び該ヒータコアと接触して該蒸発器及び該ヒータコア間の熱輸送を行う伝熱素子とを備えることを特徴としている。
【0007】
請求項2の車両用空調装置では、請求項1について、前記冷凍サイクルが停止した後であり、前記伝熱素子が前記蒸発器及び前記ヒータコアと接触する前に、前記送風手段による送風が行われることを特徴としている。
請求項3の車両用空調装置では、請求項1または2について、前記蒸発器と前記ヒータコアとの間に設けられ、該蒸発器通過後の空気のうち該ヒータコアへと流れる空気量を調節するエアミックス手段を備え、前記冷凍サイクルが停止した後に、前記エアミックス手段により前記ヒータコアへと流れる空気量を最小限にすることを特徴としている。
【0008】
請求項4の車両用空調装置では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記ダクトの前記蒸発器よりも一側に形成され、車室外と連通した排気口と、該排気口の開閉を行う排気口開閉手段とを備え、前記冷凍サイクルが停止した後、前記排気口開閉手段により前記排気口を開放することを特徴としている。
請求項5の車両用空調装置では、請求項4において、前記空気送出口は車室内の所定の位置に形成された吹出口と連通しており、該空気送出口の開閉を行う空気送出口開閉手段を備え、前記冷凍サイクルが停止した後、前記空気送出口開閉手段により前記空気送出口を閉鎖することを特徴としている。
【0009】
請求項6の車両用空調装置では、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記暖房回路の暖房サイクルは、ウォータポンプの作動により前記車両の内燃機関及び前記ヒータコアを冷却水が循環するものであり、前記ウォータポンプは、前記内燃機関停止時にも蓄電手段の電力により稼働可能な電動ウォータポンプであることを特徴としている。
請求項7の車両用空調装置では、請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記ダクトの前記送風手段と前記蒸発器との間に設けられ、オゾンを発生可能なオゾン発生装置を備え、前記冷凍サイクル停止した後、該オゾン発生装置により前記ダクト内にオゾンを発生させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記手段を用いる本発明の請求項1の車両用空調装置では、送風手段、蒸発器、及びヒータコアを有するダクト内に、当該蒸発器及びヒータコアに跨る伝熱素子を設け、蒸発器を含む冷凍回路の冷凍サイクルが停止したときに、当該伝熱素子を蒸発器及びヒータコアと接触させ、当該蒸発器及びヒータコアを熱的に連結させる。
そして、高温側のヒータコアと低温側の蒸発器との間で熱輸送が行われて蒸発器が加熱されることで、当該蒸発器及びその周辺の相対湿度を低下させることができる。
【0011】
したがって、本発明の請求項1の車両用空調装置によれば、従来技術のようにカビの発生領域を拡大させることもなく、蒸発器及びヒータコアとの間に伝熱素子を設けるという簡単な構成で、蒸発器の湿度を低下させることができ、カビ等の細菌の繁殖を抑制させることができる。
請求項2の車両用空調装置では、冷凍サイクル停止後であって、蒸発器及びヒータコアに伝熱素子が接触する前に、送風手段による送風を行う。
【0012】
これにより、蒸発器の湿気を換気することができ、より良好に蒸発器の湿度を低下させることができる。
請求項3の車両用空調装置では、冷凍サイクル停止後に、ヒータコアへの空気量を調節するエアミックス手段により、ヒータコアへ流れる空気量を最小限にすることで、ヒータコアの温度低下を抑制することができる。
【0013】
これにより、ヒータコアを高温に維持することができ、伝熱素子を介した蒸発器の加熱を促進させることができる。
請求項4の車両用空調装置では、冷凍サイクル停止後において、車室外と連通する排気口を開放することで、ダクト内の空気を車室外に排気することができる。
請求項5の車両用空調装置では、冷凍サイクル停止後において、空気送出口を閉鎖することでカビ等が車室内に浸入することを防止することができる。
【0014】
請求項6の車両用空調装置によれば、暖房回路の暖房サイクルはウォータポンプにより冷却水を循環させることで、内燃機関で熱せられた冷却水をヒータコアに流通させ、当該ヒータコアを加熱させるものであり、このウォータポンプを電動ウォータポンプとすることで内燃機関停止時にも暖房サイクルを稼働させることができる。
これにより、冷凍サイクルが停止し、且つ内燃機関も停止した場合でも、ヒータコアを高温に維持することができ、蒸発器の加熱をより促進させることができる。
【0015】
請求項7の車両用空調装置では、冷凍サイクル停止時にオゾン発生手段により送風手段と蒸発器との間に殺菌作用を有するオゾンを発生させることで、蒸発器のカビの繁殖をより抑制させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1を参照すると、本発明に係る車両用空調装置の概略構成図が示されている。
当該車両用空調装置は、図1に示すように、車両のエンジン2(内燃機関)が配設されているエンジンルーム4から、隔壁6により区画されている車室内8に亘って構成されている。
【0017】
そして、当該車両用空調装置における空気通路を形成する通風ダクト10が車室内8の図示しないインストルメントパネル内に設けられている。
当該インストルメントパネルにはデフ用、フェース用、フット用の吹出口(図示せず)がそれぞれ所定の位置に形成されており、これに対応して通風ダクト10の一端側には各吹出口と連通するデフ用、フェース用、フット用の3つの開口部12a、12b、12c(空気送出口)が形成されている。
【0018】
さらに、当該通風ダクト10の一端側には、エンジンルーム2内、即ち車室外と連通した排気開口部14(排気口)が形成されている。
これら各開口部12a、12b、12c、14には、対応する開口部12a、12b、12c、14の開閉を行うデフ用ドア16a、フェース用ドア16b、フット用ドア16c、(空気送出口開閉手段)、排気ドア18(排気口開閉手段)がそれぞれ設けられている。
【0019】
一方、通風ダクト10の他端側には、車室外と連通した外気導入口20(空気取入口)及び車室内8と連通した内気導入口22(空気取入口)がそれぞれ隣接して形成されている。そして、当該外気導入口20及び内気導入口22の間には、当該各導入口20、22の開閉の切り替えを行う内外気切替ドア24が設けられている。
このように構成された通風ダクト10では、当該通風ダクト内を流通する空気流は外気導入口20または内気導入口22からいずれかの開口部12a、12b、12cへと流れる。つまり、通風ダクト10の他端側が上流側、一端側が下流側となる。
【0020】
そして、当該通風ダクト10には、他端側から一端側に向けて順に、ブロア30(送風手段)、オゾン発生機32(オゾン発生手段)、エバポレータ34(蒸発器)、ヒータコア36、ヒートパイプ38(伝熱素子)が設けられている。
そして、ブロア30は、通風ダクト10内部の他端側、外気導入口20及び内気導入口22の近傍に設けられている。また、当該ブロア30はモータ40により駆動する所謂遠心式の送風機であり、通風ダクト10の一端側へ向け送風を行う機能を有している。
【0021】
オゾン発生機32は、当該通風ダクト10のブロア30の下流側に設けられており、当該通風ダクト10内に殺菌作用を有するオゾンを発生させる機能を有している。
エバポレータ34は、冷凍回路50の一部をなしており、当該冷凍回路50内を循環する冷媒を内部で蒸発させ、この気化熱を利用して外部の空気を冷却する機能を有している。
【0022】
なお、冷凍回路50は、冷媒が循環する冷凍サイクルの順に、当該エバポレータ34、圧縮機52、コンデンサ54、レシーバ56、膨張弁58が設けられて構成されている。
詳しくは、圧縮機52はエンジン2の動力により駆動し冷媒の圧送を行い、コンデンサ54は圧縮機52により圧縮された高温高圧の冷媒を冷却し液化させ、レシーバ56は冷媒の液相成分のみを膨張弁58へと送り、膨張弁58は冷媒の圧力を減圧し霧状とする機能をそれぞれ有している。
【0023】
ヒータコア36は、暖房回路60の一部をなしており、当該暖房回路60内を循環する冷却水がエンジン2を通り温水となった状態で当該ヒータコア36内を流通することで、当該ヒータコア36が加熱され、当該ヒータコア36を通過する空気及び周囲の空気を加熱する。
なお、暖房回路60は、当該ヒータコア36、ウォータポンプ62、エンジン2、ラジエータ64から構成されている。
【0024】
詳しくは、ウォータポンプ62は暖房回路60内の冷却水を循環させ、ラジエータ64はエンジン2内を通り温水となった冷却水の冷却を行う機能を有している。当該ウォータポンプ62は、エンジン2作動時には図示しないオルタネータから、エンジン2停止時には車両に搭載された図示しないバッテリ(蓄電手段)から電力が供給されて駆動する電動ウォータポンプである。
【0025】
また、ヒータコア36の直上流位置には、エアミックスドア42(エアミックス手段)が設けられている。
当該エアミックスドア42は開閉駆動しヒータコア36への空気流の量を調節することで、エバポレータ34で冷却された空気量のうちヒータコア36により再加熱される空気量を調節する機能を有している。例えばエアミックスドア42は、図1で示すように開度0の全閉状態とされることでヒータコア36への空気流を最小限のものとする。
【0026】
ヒートパイプ38は、エバポレータ34からヒータコア36に跨るように延びた伝熱素子である。当該ヒートパイプ38は、アクチュエータ44と接続されており、当該アクチュエータ44の作動によりエバポレータ34及びヒータコア36と接触及び離間するよう動作する。そして、当該エバポレータ34及びヒータコア36と接触することで、当該エバポレータ34とヒータコア36間の熱輸送を行う機能を有している。
【0027】
なお、当該アクチュエータ44は上記エアミックスドア42の開閉駆動も行う。また、上記デフ用ドア16a、フェース用ドア16b、フット用ドア16c、排気ドア18及び内外気導入切替ドア24についても、それぞれの駆動を行うアクチュエータ46、48が接続されている。
これら各アクチュエータ44、46、48、ブロア30のモータ40、オゾン発生機32、ウォータポンプ62等は、車両に搭載されているECU(電子コントロールユニット)70と電気的に接続されている。
【0028】
当該ECU70は、図示しない入出力装置、記憶装置(ROM,RAM,BURAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えている。
また、当該ECU70はインストルメントパネルに設けられた操作パネル72と接続されている。当該操作パネル72には、エンジン2の作動及び停止の指示を行うイグニッションスイッチや、上記冷凍回路50の冷凍サイクルの作動及び停止の指示を行うエアコンスイッチ、車室内の目標温度を設定する温度設定スイッチ等が設けられており、ECU70は当該操作パネル72で行われる各操作に応じて上記各装置の制御を行う。
【0029】
例えば当該ECU70は、上記冷凍回路50の冷凍サイクル停止時、厳密には空調要求のないときにカビ抑制制御を行う。
以下このように構成された本発明に係る車両用空調装置のカビ抑制制御について説明する。
図2、3を参照すると、本発明に係る車両用空調装置において実行されるカビ抑制制御の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに基づき説明する。
【0030】
まず、ステップS1では、操作パネル72のエアコンスイッチがOFFに操作されているか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合はステップS2に進む。
ステップS2では、冷凍回路50の冷凍サイクルが停止されているか否かを判別する。これは例えば圧縮機52が停止している、または停止に近い状態にあるか否かを判別することで行う。当該判別結果が真(Yes)である場合はステップS3に進む。
【0031】
一方、上記ステップS1またはステップS2の判別結果が偽(No)である場合、即ちエアコンスイッチがONである場合や冷凍サイクルが循環している場合には当該ルーチンをリターンする。
ステップS3では、イグニッションスイッチがOFFであるか否か、即ちエンジン2が停止しているか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合はステップS4に進み、偽(No)である場合はステップS5に進む。
【0032】
ステップS4では、ウォータポンプ62において、オルタネータからの電力供給からバッテリからの電力供給に切り替える。
ステップS5では、ECU70のタイマカウンタにより冷凍サイクル停止時間をカウントする。
ステップS6では、アクチュエータ44によりエアミックスドア42の開度を0とする。つまり、ヒータコア36への空気流を最小限とする。
【0033】
続くステップS7では、デフ用ドア16a、フェース用ドア16b、フット用ドア16cによりそれぞれの開口部12a、12b、12cを閉鎖するとともに、内外気導入切替ドア24により内気導入口22を閉鎖、即ち外気導入口20を開放する。
さらに、ステップS8では、排気ドア18より排気開口部14を開放する。つまり、通風ダクト10内の空気流は、車室内8への空気流が遮断され、全て排気開口部14へと流れることとなる。
【0034】
ステップS9では、オゾン発生装置32を作動させ、通風ダクト10内にオゾンを発生させる。
ステップS10では、予め定めされた一定時間の間、ブロア30を作動する。つまり、冷凍サイクル停止直後から一定時間の間ブロア30を作動させ、オゾンを含んだ空気流をエバポレータ34に送ることで、当該エバポレータ34の乾燥、殺菌を行う。
【0035】
そして、一定時間経過後ステップS11においてブロア30を停止させ、続くステップS12では、アクチュエータ44によりヒートパイプ38をエバポレータ34及びヒータコア36と接触するよう作動させる。
ステップS13では、ウォータポンプ62を駆動させ、暖房回路60の冷却水を循環させることで、ヒータコア36を加熱させる。これにより、当該ヒータコア36と接触しているヒートパイプ38によって、比較的高温な当該ヒータコア36から比較的低温なエバポレータ34に熱輸送されることで当該エバポレータ34が加熱され、エバポレータ34及びその周囲の相対湿度が低下する。
【0036】
ステップS14では、バッテリの電圧が所定電圧より大であるか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合、即ちバッテリ電圧が十分である場合はステップS15に進む。一方、当該判別結果が偽(No)である場合はステップS16に進む。
ステップS15では、ECU70のタイマカウンタによりカウントされた冷凍サイクル停止時間が所定時間より大であるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合は、ステップS14に戻り、再度バッテリ電圧の確認を行う。一方、真(Yes)である場合は、エバポレータ34の加熱が十分に行われたと判断し、ステップS16に進む。
【0037】
ステップS16では、再度一定時間ブロア30を作動する。つまり、エバポレータ34周囲の相対湿度が低下している状態でブロア30を作動させ、より確実にエバポレータ34の乾燥、殺菌を行う。
そして、一定時間経過後ステップS16において、ブロア30及びオゾン発生装置32を停止させ、アクチュエータ44によりヒートパイプ38をエバポレータ34及びヒータコア36から離間させて、当該ルーチンを抜ける。
【0038】
このように、当該カビ抑制制御では、冷凍回路50の冷凍サイクルが停止したときには、開口部12a、12b、12cを閉鎖し排気開口部14を開放することで、通風ダクト10内の空気流を車室外へ排気するものとすることで車室内へのカビの飛散を防止することができる。
そして、オゾン発生機32により通風ダクト10内にオゾンを発生させ、一定時間ブロア30によって送風を行うことでエバポレータ34の乾燥及び殺菌を行うことができる。なお、このときエアミックスドア42は開度0であるためヒータコア36への空気量は最小限に抑制されることからヒータコア36の温度は高温に維持される。
【0039】
また、ブロア停止後、ヒートパイプ38をエバポレータ34及びヒータコア36に接触させることで、当該エバポレータ34及びヒータコア36を熱的に連結させ、エバポレータ34を加熱する。このとき、たとえエンジン2が停止状態であっても、ウォータポンプ62により暖房回路60の冷却水を循環させることができることから、ヒータコア36の温度を高温に維持することができ、ヒートパイプ38を介したエバポレータ34の加熱を促進させることができる。
【0040】
このようにして、エバポレータ34を十分に加熱することで、当該エバポレータ34及びこの周囲の相対湿度を低下させることができ、カビ等の細菌の繁殖を抑制させることができる。
また、最後に再度ブロア30による送風を行うことでより確実にエバポレータ34の乾燥、殺菌を行うことができる。
【0041】
以上のように、本発明に係る車両用空調装置では、従来技術のようにカビの発生領域を拡大させることもなく、エバポレータ34及びヒータコア36との間にヒートパイプ38を設けるという簡単な構成で、エバポレータ34の湿度を良好に低下させることができ、カビ等の細菌の繁殖を抑制させることができる。
以上で本発明に係る車両用空調装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
【0042】
例えば、上記実施形態では、伝熱素子としてヒートパイプ38を使用しているが、その他の伝熱素子であっても構わない。
また、上記実施形態では、カビ抑制制御のステップS10においてブロア30の作動を一定時間とし、当該ブロアを停止させてからヒートパイプ38をエバポレータ34及びヒータコア36に接触させているが、これはエバポレータ34を加熱させる際にブロア30の送風による温度低下を回避するためであり、エバポレータ34を十分に加熱させることができる場合には、例えばステップS10からステップS17までブロア30を作動させ続けても構わない。
【0043】
また、上記実施形態では、ヒートパイプ38は、エアミックスドア42の開閉駆動を行うアクチュエータ44によりエバポレータ34及びヒータコア36と接触及び離間するよう動作するものであるが、当該ヒートパイプ38を動作させるものは当該アクチュエータ44に限るものではなく、例えばデフ用ドア16a、フェース用ドア16b、フット用ドア16c、排気ドア18を駆動するアクチュエータ46であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係る車両用空調装置において実行されるカビ抑制制御の制御ルーチンを示すフローチャートの一部である。
【図3】図2に続く制御ルーチンを示すフローチャートの残部である。
【符号の説明】
【0045】
2 エンジン(内燃機関)
10 通風ダクト
14 排気開口部(排気口)
18 排気ドア(排気口開閉手段)
30 ブロア(送風手段)
32 オゾン発生機
34 エバポレータ(蒸発器)
36 ヒータコア
38 ヒートパイプ(伝熱素子)
50 冷凍回路
60 暖房回路
62 ウォータポンプ
70 ECU(電子コントロールユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられ、一側に空気送出口が、他側に空気取入口が形成されたダクトと、
該ダクト内に設けられ、一側に向け送風を行う送風手段と、
前記ダクト内の前記送風手段よりも一側に設けられ、冷凍回路の一部をなし、通過する空気及び周囲の空気を冷却可能な蒸発器と、
前記ダクト内の該蒸発器よりも一側に設けられ、暖房回路の一部をなし、通過する空気を加熱可能なヒータコアと、
前記蒸発器及び前記ヒータコアを跨いで延び、前記冷凍回路の冷凍サイクルが停止した後に、該蒸発器及び該ヒータコアと接触して該蒸発器及び該ヒータコア間の熱輸送を行う伝熱素子と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記冷凍サイクルが停止した後であり、前記伝熱素子が前記蒸発器及び前記ヒータコアと接触する前に、前記送風手段による送風が行われることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記蒸発器と前記ヒータコアとの間に設けられ、該蒸発器通過後の空気のうち該ヒータコアへと流れる空気量を調節するエアミックス手段を備え、
前記冷凍サイクルが停止した後に、前記エアミックス手段により前記ヒータコアへと流れる空気量を最小限にすることを特徴とする請求項1または2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記ダクトの前記蒸発器よりも一側に形成され、車室外と連通した排気口と、
該排気口の開閉を行う排気口開閉手段とを備え、
前記冷凍サイクルが停止した後、前記排気口開閉手段により前記排気口を開放することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空気送出口は車室内の所定の位置に形成された吹出口と連通しており、
該空気送出口の開閉を行う空気送出口開閉手段を備え、
前記冷凍サイクルが停止した後、前記空気送出口開閉手段により前記空気送出口を閉鎖することを特徴とする請求項4記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記暖房回路の暖房サイクルは、ウォータポンプの作動により前記車両の内燃機関及び前記ヒータコアを冷却水が循環するものであり、
前記ウォータポンプは、前記内燃機関停止時にも蓄電手段の電力により稼働可能な電動ウォータポンプであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記ダクトの前記送風手段と前記蒸発器との間に設けられ、オゾンを発生可能なオゾン発生手段を備え、
前記冷凍サイクル停止した後、該オゾン発生手段により前記ダクト内にオゾンを発生させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate