車両用空調装置
【課題】 インバータの温度が上がりそうな高負荷条件においても、冷凍サイクルの負荷を減らす運転を行うことによりインバータの温度上昇を抑制して、性能を限定するモードへの移行を抑制し、より快適な制御状態を維持することができる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】 インバータ23を保護する過温度モード102dを備える車両用空調装置において、コントローラ1は、過温度モード102dによる制御が行われる前の通常モード102aに、コンデンサファン4の風量を通常モード102aよりも大きくする温度警戒モード102bを備えた。
【解決手段】 インバータ23を保護する過温度モード102dを備える車両用空調装置において、コントローラ1は、過温度モード102dによる制御が行われる前の通常モード102aに、コンデンサファン4の風量を通常モード102aよりも大きくする温度警戒モード102bを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、電動圧縮機の電動モータを駆動するインバータは、インバータ温度センサの検出温度が所定値を超えると、空調制御装置からの回転指令値とは異なる熱保護用回転数で電動モータを駆動する過熱保護モードで作動し、冷媒流量を確保してインバータの自己冷却を行う。この時、コンデンサファンまたは車室内ブロワが停止状態にある場合は作動させている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−274104号公報(第2−16頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の車両用空調装置にあっては、過熱保護モードの作動時にコンデンサファンが停止していたなら作動させるが、過熱保護モードは電動コンプレッサの回転数が規制されてしまうために、正常な空調性能を発揮することは難しくなっていた。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、インバータの温度が上がりそうな高負荷条件においても、冷凍サイクルの負荷を減らす運転を行うことによりインバータの温度上昇を抑制して、性能を限定するモードへの移行を抑制し、より快適な制御状態を維持することができる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、冷凍サイクルの冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動制御するインバータからなる電動コンプレッサと、前記電動コンプレッサと、冷媒の熱交換を行うコンデンサと、前記コンデンサへの通気を行うコンデンサ通気手段と、を少なくとも含む冷凍サイクルを構成する装置の制御を行う制御手段を有し、前記制御手段は、前記インバータが高温となる際に、前記電動コンプレッサの作動に、通常の制御より制限を行い、前記インバータを保護する保護制御手段を備える車両用空調装置において、前記制御手段は、前記保護制御手段による制御が行われる前の通常の制御状態に、前記コンデンサ通気手段の風量を通常の制御状態よりも大きくする警戒制御手段を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、インバータの温度が上がりそうな高負荷条件においても、冷凍サイクルの負荷を減らす運転を行うことによりインバータの温度上昇を抑制して、性能を限定するモードへの移行を抑制し、より快適な制御状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の車両用空調装置を実現する実施の形態を、請求項1,2に係る発明に対応する実施例1と、請求項1,3に係る発明に対応する実施例2と、請求項1,4に係る発明に対応する実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の車両用空調装置のシステム概略説明図である。
車両用空調装置は、コントローラ1、電動コンプレッサ2、コンデンサ3、コンデンサファン4、リキッドタンク5、膨張弁6、エバポレータ7、ブロワファン8、圧力センサ9を備えている。
コントローラ1は、各種センサの検出値、図示しない乗員からの操作入力に基づいて、電動コンプレッサ2のモータ回転速度及びコンデンサファン4の回転速度の制御指令をそれぞれに出力する。
【0009】
電動コンプレッサ2は、電動モータにより冷媒を高圧に圧縮し、コンデンサ3へ送出する。詳細は後述する。
コンデンサ3は、冷媒を外部と熱交換させるようにして、放熱冷却して液化する。
リキッドタンク5は、通過する冷媒に対して、内部で水分やゴミを除去する。
【0010】
膨張弁6は、冷媒を低圧に膨張させ、エバポレータ7へ送る。なお、この膨張弁6は、電磁調整弁として、コントローラ1からの制御指令により冷媒量を制御する機能を付加されたものであってもよい。
エバポレータ7では、低圧冷媒を蒸発させ、外部周囲の空気を冷却させる熱交換を行う。
ブロワファン8は、エバポレータ7の周囲の冷却された空気を車室内へ送気する。
圧力センサ9は、電動コンプレッサ2の冷媒の吐出圧を検出する。
【0011】
図2は実施例1における電動コンプレッサの斜視図である。図3は実施例1における電動コンプレッサの断面図である。
電動コンプレッサ2は、電動モータ21、圧縮機22、インバータ23が直列的に一体装置化したものである。
例えば電動モータ21は、回転自在に支持された軸211に固定され、永久磁石を有するロータ212と、ロータ212の外径方向を覆うように配置された、励磁コイルを有するステータ213を備えた構造である。
【0012】
そして、圧縮機22は、この電動モータ21の出力軸である軸211を、圧縮室を構成するハウジング225の内部まで延長し、ベーン224を放射状に具備したベーンロータ223に固定する。これによりベーンロータ223を回転させる駆動構造である。
【0013】
さらに、圧縮機22の電動モータ21と反対側には、インバータ23が設けられる。インバータ23は、内部に回路基板231を備え、コントローラ1からの制御指令、例えば目標回転速度に従って、電動モータ21へ擬似交流となるPWM駆動信号を3相(U相、W相、V相)コイルへ出力する。
また、インバータ23の回路基板231には、インバータ23の温度を検出する温度センサ232を設ける。この検出値は、インバータ23からコントローラ1へ出力される。
電動コンプレッサ2がインバータ23を備えることにより、電動コンプレッサ2は、省スペースな構成でシンプルな配線の取り回しにすることができる。
【0014】
そして、電動コンプレッサ2は、図2に示すように、吸入ポート221から内部へ冷媒を取り込み、圧縮機22で高圧へ圧縮し、吐出ポート222から冷媒を送り出す。
【0015】
図4はコントローラ1の制御ブロック図である。
コントローラ1には、インバータ23の温度センサ232からの検出温度、圧力センサ9からの電動コンプレッサ2の吐出圧、外気温センサ10からの車室外の検出温度、内気温センサ11からの車室内の検出温度、日射センサ12からの日射量が入力される。なお、外気温センサ10、内気温センサ11、日射センサ12はそれぞれ検出に適した位置に設けられる。
【0016】
コントローラ1は、切替判定部101と制御部102を備えている。
切替判定部101は、インバータ23の温度センサ232からのインバータ23の温度から、制御モードを判定し、切替指令を制御部102へ出力する。
制御部102は、その制御内容として、通常モード102a、温度警戒モード102b、性能限定モード102c、過温度モード102dを備え、切替指令により選択されたモードで各センサからの入力に基づいて、インバータ23、コンデンサファン4、その他ドアアクチュエータ等への制御指令を出力する。
【0017】
通常モード102aは、要求される内気温センサ11の温度となるよう電動コンプレッサ2及びコンデンサファン4の回転速度を制御する。
温度警戒モード102bは、通常モード102aよりもよりコンデンサファン4が早く回転するよう制御を行う。
性能限定モード102cは、電動コンプレッサ2及びコンデンサファン4を予め設定するインバータ温度を抑制する回転速度に制限を行った上で、制御を行うようにする。
【0018】
過温度モード102dは、電動コンプレッサ2の運転を停止させる。インバータ温度の低下により運転は許可される。
実施例1ではこのように制御部102が制御内容のモードを切り替えて制御を行う。
【0019】
作用を説明する。
[機能限定制御の抑制作用]
図5は、切替判定部101で実行される判定内容を示す説明図である。図6は、温度警戒モードで実行される制御処理内容を示す説明図である。
実施例1の車両用空調装置では、インバータ23の内部に設けた温度センサ232でインバータ23の温度を検出し制御モードを切り替える。
【0020】
通常モード102aで制御を行っている場合に、インバータ23の内部温度が上昇し、85℃以上(図5の符号201)になると、切替判定部101により温度警戒モード102bへ切り替えされる。
温度警戒モード102bでは、図6に示すように、圧力センサ9で検出される電動コンプレッサ2の吐出圧と、コンデンサファン4の回転速度(図6は一定時間に対する回転数を指す)の比例した関係を、通常よりコンデンサファン4の回転速度が速くなる傾きで制御する。
【0021】
すると、コンデンサ3における熱交換が進み、冷媒の温度が通常制御状態よりも低い温度になる。これによりインバータ23の発熱に対する冷却を進め、次の性能限定モード102c、更にその次の過温度モード102dへの移行を抑制する。
これにより、正常な空調性能を発揮できる状態を少しでも長く維持し、インバータ23の保護を充分に行いながらも、より快適な空調環境を長く提供する。
【0022】
実施例1の作用を明確にするために、以下にさらに説明を加える。
実施例1の電動コンプレッサ2は、圧縮機22に対してインバータ23を吸入側、電動モータ21を吐出側に配置し、インバータ23は吸入冷媒、電動モータ21は吐出冷媒にて冷却させる構造である。
吐出冷媒は、温度が比較的高く、高負荷時には、電動モータ21を冷却するため130℃位まで容易に温度が上昇する。
実施例1の電動コンプレッサ2は、電動モータ21、圧縮機22、インバータ23が一体化した構造のため、電動モータ21の温度が圧縮機22を経由してインバータ23へ伝熱し、インバータ23の温度が上がりやすい構造である。
【0023】
しかし上記のように別体でインバータを設け、冷却構造を別に設ける構造に対しては、省スペース化、容易な配線構造などの有利な点を実施例1の電動コンプレッサ2は備える。
実施例1では、この有利な点を維持し、さらにインバータ23の保護を行いつつ、充分な空調効果を得る制御状態を少しでも長く維持する点が有利である。
【0024】
さらに外気温が高い場合についての説明を加える。外気温が40℃前後で高い場合は、コンデンサ3のコンデンサファン4の風量が一定では、コンデンサ3での冷却が十分に行われず吐出ガスの圧力が定常で1.4Mpaだった値が3Mpaまで上がってしまう。これと合わせて、吐出ガスの温度も上昇する。例えば0.2Mpa→1.4Mpaの圧縮比が、0.3Mpa→3Mpaまで上り圧縮熱で上昇する。ここで、実施例1では、コンデンサ3のコンデンサファン4の風量を上げるため、吐出ガスの温度と圧力を下げる。
【0025】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用空調装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0026】
(1)冷凍サイクルの冷媒を圧縮する圧縮機22と、圧縮機22を駆動する電動モータ21と、電動モータ21を駆動制御するインバータ23からなる電動コンプレッサ2と、電動コンプレッサ2と、冷媒の熱交換を行うコンデンサ3と、コンデンサ3への通気を行うコンデンサファン4と、を少なくとも含む冷凍サイクルを構成する装置の制御を行うコントローラ1を有し、コントローラ1は、インバータ23が高温となる際に、電動コンプレッサ2の作動に、通常の制御より制限を行い、インバータ23を保護する過温度モード102dを備える車両用空調装置において、コントローラ1は、過温度モード102dによる制御が行われる前の通常モード102aに、コンデンサファン4の風量を通常モード102aよりも大きくする温度警戒モード102bを備えたため、インバータの温度が上がりそうな高負荷条件においても、冷凍サイクルの負荷を減らす運転を行うことによりインバータの温度上昇を抑制して、性能を限定するモードへの移行を抑制し、より快適な制御状態を維持することができる。
【0027】
(2)上記(1)において、インバータ23の温度を検出する温度センサ232を設け、コントローラ1は、通常モード102aから所定の温度閾値を超えると過温度モード102dによる制御を行うようにし、過温度モード102dの温度閾値よりも低い温度に閾値により、温度警戒モード102bによる制御を行うようにしたため、インバータ23の高温に対して、過温度モード102dで制御される前の温度状態で、コンデンサファン4の風量を通常モード102aよりも大きくする温度警戒モード102bを行うようにし、インバータの温度が上がりそうな高負荷条件においても、冷凍サイクルの負荷を減らす運転を行うことによりインバータの温度上昇を抑制して、性能を限定するモードへの移行を抑制し、より快適な制御状態を維持することができ、インバータ温度を検出し、これを温度閾値により制御状態を変更するとともに、温度警戒モード102bの制御を行い、より確実にインバータ23が過剰な温度となることを防ぎつつ、快適性を向上させることができる。
【実施例2】
【0028】
実施例2は、インバータ内温度と吐出ガス圧に基づいて、設定、制御する温度警戒モードを設けた例である。
図7はコントローラ1の制御ブロック図である。
実施例2では、切替判定部103は、インバータ23の温度センサ232からのインバータ23の内部温度、圧力センサ9からの吐出ガス圧を入力する。
【0029】
検出温度と閾値温度との比較により通常モード102aから温度警戒モード104へ移行するが、実施例2では、さらに吐出ガス圧により、温度警戒モード104へ移行する温度閾値を可変にする。詳細には、吐出ガス圧(冷媒圧)が高い場合には、温度閾値を低くし、吐出ガス圧(冷媒圧)が低い場合には、温度閾値を高くする。
例えば、切替判定部103では、αを係数として、次の式により、温度警戒モード104に切り替える。
【0030】
(数1)
温度閾値=85℃×α(基準吐出ガス圧−吐出ガス圧)
【0031】
そして、温度警戒モード104では、通常モードの吐出ガス圧とコンデンサファン4の回転速度の比例する関係より、コンデンサファン4の回転速度が速くなるように制御する。
例えば、K1、K2を係数として、次の式によりコンデンサファン4の回転数(一定時間当りの回転数)を制御する。
【0032】
(数2)
回転数=K1×吐出ガス圧×K2(吐出ガス圧/基準吐出ガス圧)
但し、吐出ガス圧<基準吐出ガス圧の場合は、吐出ガス圧=基準吐出ガス圧とする。
その他構成は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0033】
作用を説明する。
[機能限定制御の抑制作用]
図8は、切替判定部103で実行される判定内容を示す説明図である。図9は、温度警戒モード104で実行される制御処理内容を示す説明図である。
【0034】
通常モード102aで制御を行っている場合に、インバータ23の内部温度が上昇し、温度閾値以上(図8の符号204)になると、切替判定部103により温度警戒モード104へ切り替える。
そして、この温度閾値は、図8に示すように、吐出ガス圧が高い場合は、低い温度に、吐出ガス圧が低い場合は、高い温度に可変に設定される。例えば上記数式1により設定される。
【0035】
そして、温度警戒モード104では、図9に示す吐出ガス圧とコンデンサファン4の回転速度の関係において、通常モード102aの場合の符号301で示す特性より、速い回転速度となるよう符合302で示す特性にする。例えば上記数式2により設定したものとする。
【0036】
吐出ガス圧は、車両用空調システムにおける冷凍サイクルへの負荷とほぼ等価となる。実施例2では、これを切替判定部103で判断するため、負荷が大きい場合は、早めに温度警戒モード104に移行することによって、負荷が大きい場合でも性能限定モード102c及び過温度モード102dに入ることを抑制し、インバータ23を保護しつつも、乗員の快適性を維持する制御を長くできるようにする。
【0037】
また、負荷が小さい場合には、より長く通常モード102aで制御されるようにし、温度警戒モード104を必要最低限にすることで、乗員の快適性を維持する制御を長くできるようにする。
【0038】
効果を説明する。
実施例2の車両用空調装置にあっては、実施例1の(1)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0039】
(3)上記(1)において、インバータ23の温度を検出する温度センサ232と、冷凍サイクルでの圧縮機22からの吐出圧を検出する圧力センサ9を設け、コントローラ1は、吐出圧が高くなるに従って低くなるよう警戒温度閾値204を可変させて設定し、通常モード102aの制御状態から所定の温度閾値を超えると性能限定モード102c及び過温度モード102dによる制御を行うようにし、性能限定モード102c及び過温度モード102dの温度閾値よりも低い温度の警戒温度閾値204により、温度警戒モード104による制御を行うようにしたため、冷凍サイクルへの負荷に等価な吐出ガス圧により警戒温度閾値204を変更し、負荷が高い場合には早め温度警戒モード104に移行し、より確実にインバータ23が過剰な温度となることを防ぎつつ、快適性を向上させることができる。
その他作用効果は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【実施例3】
【0040】
実施例3は、インバータ内温度と吐出ガス圧、外気温に基づいて、設定、制御する温度警戒モードを設けた例である。
図10はコントローラ1の制御ブロック図である。
実施例2では、切替判定部105は、インバータ23の温度センサ232からのインバータ23の内部温度、圧力センサ9からの吐出ガス圧、外気温センサ10からの外気温を入力する。
【0041】
検出温度と閾値温度との比較により通常モード102aから温度警戒モード106へ移行するが、実施例3では、さらに吐出ガス圧及び外気温により、温度警戒モード106へ移行する温度閾値を可変にする。詳細には、吐出ガス圧(冷媒圧)及び外気温が高い場合には、温度閾値を低くし、吐出ガス圧(冷媒圧)及び外気温が低い場合には、温度閾値を高くする。
例えば、切替判定部105では、α、βを係数として、次の式により、温度警戒モード106に切り替える。
【0042】
(数3)
温度閾値=85℃×α(基準吐出ガス圧−吐出ガス圧)×β(基準外気温−外気温)
【0043】
そして、温度警戒モード106では、通常モードの吐出ガス圧とコンデンサファン4の回転速度の比例する関係より、コンデンサファン4の回転速度が速くなるように制御する。
例えば、K1、K2、K3を係数として、次の式によりコンデンサファン4の回転数(一定時間当りの回転数)を制御する。
【0044】
(数4)
回転数=K1×吐出ガス圧×K2(吐出ガス圧/基準吐出ガス圧)×K3(外気温/基準外気温)
但し、吐出ガス圧<基準吐出ガス圧の場合は、吐出ガス圧=基準吐出ガス圧とし、外気温<基準外気温の場合は、外気温=基準外気温とする。
その他構成は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0045】
作用を説明する。
[機能限定制御の抑制作用]
図11は、切替判定部105で実行される判定内容を示す説明図である。図12は、温度警戒モード106で実行される制御処理内容を示す説明図である。
【0046】
通常モード102aで制御を行っている場合に、インバータ23の内部温度が上昇し、温度閾値以上(図11の符号205)になると、切替判定部105により温度警戒モード106へ切り替える。
そして、この温度閾値は、図11に示すように、吐出ガス圧及び外気温が高い場合は、低い温度に、吐出ガス圧及び外気温が低い場合は、高い温度に可変に設定される。例えば上記数式3により設定される。
【0047】
そして、温度警戒モード106では、図12に示す吐出ガス圧とコンデンサファン4の回転速度の関係において、通常モード102aの場合の符号301で示す特性より、速い回転速度となるよう符合302で示す特性にする。例えば上記数式4により設定したものとする。
【0048】
吐出ガス圧は、車両用空調システムにおける冷凍サイクルへの負荷とほぼ等価となる。また、外気温も冷凍サイクルの負荷と等価になる。実施例3では、これを切替判定部105で判断するため、負荷が大きい場合は、早めに温度警戒モード106に移行することによって、負荷が大きい場合でも性能限定モード102c及び過温度モード102dに入ることを抑制し、インバータ23を保護しつつも、乗員の快適性を維持する制御を長くできるようにする。
【0049】
また、負荷が小さい場合には、より長く通常モード102aで制御されるようにし、温度警戒モード106を必要最低限にすることで、乗員の快適性を維持する制御を長くできるようにする。
【0050】
実施例3では、温度警戒モード106へ移行する閾値を、吐出ガス圧と外気温で設定するため、冷凍サイクルの負荷状態をより正確に推定し、それに合わせて、温度警戒モード106を適確に用いるようにして、インバータ23を保護しつつも、乗員の快適性を維持することがより確実におこなわれるようにする。
【0051】
効果を説明する。
実施例3の車両用空調装置にあっては、実施例1の(1)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(4)上記(1)において、インバータ23の温度を検出する温度センサ232と、冷凍サイクルでの圧縮機22からの吐出圧を検出する圧力センサ9と、外気温の温度を検出する外気温センサ10を設け、コントローラ1は、吐出圧及び外気温が高くなるに従って低くなるよう警戒温度閾値205を可変させて設定し、通常モード102aから所定の温度閾値を超えると性能限定モード102c及び過温度モード102dによる制御を行うようにし、性能限定モード102c及び過温度モード102dの温度閾値よりも低い温度の警戒温度閾値205により、温度警戒モード106による制御を行うようにしたため、冷凍サイクルへの負荷に等価な吐出ガス圧及び外気温により精度よく推定した負荷に応じるよう警戒温度閾値205を変更し、負荷が高い場合には早め温度警戒モード106に移行し、より確実にインバータ23が過剰な温度となることを防ぎつつ、快適性を向上させることができる。
その他作用効果は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0052】
以上、本発明の車両用空調装置を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0053】
例えば、実施例1〜実施例3では、切替判定部と制御部をコントローラ1に設け、制御部に各モードを設けたが、本構成は、プログラムにより構成されても、回路構成によるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1の車両用空調装置のシステム概略説明図である。
【図2】実施例1における電動コンプレッサの斜視図である。
【図3】実施例1における電動コンプレッサの断面図である。
【図4】コントローラの制御ブロック図である。
【図5】切替判定部で実行される判定内容を示す説明図である。
【図6】温度警戒モードで実行される制御処理内容を示す説明図である。
【図7】コントローラの制御ブロック図である。
【図8】切替判定部で実行される判定内容を示す説明図である。
【図9】温度警戒モードで実行される制御処理内容を示す説明図である。
【図10】コントローラ1の制御ブロック図である。
【図11】切替判定部で実行される判定内容を示す説明図である。
【図12】温度警戒モードで実行される制御処理内容を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 コントローラ
101 切替判定部
102 制御部
102a 通常モード
102b 温度警戒モード
102c 性能限定モード
102d 過温度モード
103 切替判定部
104 温度警戒モード
105 切替判定部
106 温度警戒モード
2 電動コンプレッサ
21 電動モータ
211 軸
212 ロータ
213 ステータ
22 圧縮機
221 吸入ポート
222 吐出ポート
223 ベーンロータ
224 ベーン
225 ハウジング
23 インバータ
231 回路基板
232 温度センサ
3 コンデンサ
4 コンデンサファン
5 リキッドタンク
6 膨張弁
7 エバポレータ
8 ブロワファン
9 圧力センサ
10 外気温センサ
11 内気温センサ
12 日射センサ
201、204、205 警戒温度閾値
202、203 温度閾値
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、電動圧縮機の電動モータを駆動するインバータは、インバータ温度センサの検出温度が所定値を超えると、空調制御装置からの回転指令値とは異なる熱保護用回転数で電動モータを駆動する過熱保護モードで作動し、冷媒流量を確保してインバータの自己冷却を行う。この時、コンデンサファンまたは車室内ブロワが停止状態にある場合は作動させている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−274104号公報(第2−16頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の車両用空調装置にあっては、過熱保護モードの作動時にコンデンサファンが停止していたなら作動させるが、過熱保護モードは電動コンプレッサの回転数が規制されてしまうために、正常な空調性能を発揮することは難しくなっていた。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、インバータの温度が上がりそうな高負荷条件においても、冷凍サイクルの負荷を減らす運転を行うことによりインバータの温度上昇を抑制して、性能を限定するモードへの移行を抑制し、より快適な制御状態を維持することができる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、冷凍サイクルの冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動制御するインバータからなる電動コンプレッサと、前記電動コンプレッサと、冷媒の熱交換を行うコンデンサと、前記コンデンサへの通気を行うコンデンサ通気手段と、を少なくとも含む冷凍サイクルを構成する装置の制御を行う制御手段を有し、前記制御手段は、前記インバータが高温となる際に、前記電動コンプレッサの作動に、通常の制御より制限を行い、前記インバータを保護する保護制御手段を備える車両用空調装置において、前記制御手段は、前記保護制御手段による制御が行われる前の通常の制御状態に、前記コンデンサ通気手段の風量を通常の制御状態よりも大きくする警戒制御手段を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、インバータの温度が上がりそうな高負荷条件においても、冷凍サイクルの負荷を減らす運転を行うことによりインバータの温度上昇を抑制して、性能を限定するモードへの移行を抑制し、より快適な制御状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の車両用空調装置を実現する実施の形態を、請求項1,2に係る発明に対応する実施例1と、請求項1,3に係る発明に対応する実施例2と、請求項1,4に係る発明に対応する実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の車両用空調装置のシステム概略説明図である。
車両用空調装置は、コントローラ1、電動コンプレッサ2、コンデンサ3、コンデンサファン4、リキッドタンク5、膨張弁6、エバポレータ7、ブロワファン8、圧力センサ9を備えている。
コントローラ1は、各種センサの検出値、図示しない乗員からの操作入力に基づいて、電動コンプレッサ2のモータ回転速度及びコンデンサファン4の回転速度の制御指令をそれぞれに出力する。
【0009】
電動コンプレッサ2は、電動モータにより冷媒を高圧に圧縮し、コンデンサ3へ送出する。詳細は後述する。
コンデンサ3は、冷媒を外部と熱交換させるようにして、放熱冷却して液化する。
リキッドタンク5は、通過する冷媒に対して、内部で水分やゴミを除去する。
【0010】
膨張弁6は、冷媒を低圧に膨張させ、エバポレータ7へ送る。なお、この膨張弁6は、電磁調整弁として、コントローラ1からの制御指令により冷媒量を制御する機能を付加されたものであってもよい。
エバポレータ7では、低圧冷媒を蒸発させ、外部周囲の空気を冷却させる熱交換を行う。
ブロワファン8は、エバポレータ7の周囲の冷却された空気を車室内へ送気する。
圧力センサ9は、電動コンプレッサ2の冷媒の吐出圧を検出する。
【0011】
図2は実施例1における電動コンプレッサの斜視図である。図3は実施例1における電動コンプレッサの断面図である。
電動コンプレッサ2は、電動モータ21、圧縮機22、インバータ23が直列的に一体装置化したものである。
例えば電動モータ21は、回転自在に支持された軸211に固定され、永久磁石を有するロータ212と、ロータ212の外径方向を覆うように配置された、励磁コイルを有するステータ213を備えた構造である。
【0012】
そして、圧縮機22は、この電動モータ21の出力軸である軸211を、圧縮室を構成するハウジング225の内部まで延長し、ベーン224を放射状に具備したベーンロータ223に固定する。これによりベーンロータ223を回転させる駆動構造である。
【0013】
さらに、圧縮機22の電動モータ21と反対側には、インバータ23が設けられる。インバータ23は、内部に回路基板231を備え、コントローラ1からの制御指令、例えば目標回転速度に従って、電動モータ21へ擬似交流となるPWM駆動信号を3相(U相、W相、V相)コイルへ出力する。
また、インバータ23の回路基板231には、インバータ23の温度を検出する温度センサ232を設ける。この検出値は、インバータ23からコントローラ1へ出力される。
電動コンプレッサ2がインバータ23を備えることにより、電動コンプレッサ2は、省スペースな構成でシンプルな配線の取り回しにすることができる。
【0014】
そして、電動コンプレッサ2は、図2に示すように、吸入ポート221から内部へ冷媒を取り込み、圧縮機22で高圧へ圧縮し、吐出ポート222から冷媒を送り出す。
【0015】
図4はコントローラ1の制御ブロック図である。
コントローラ1には、インバータ23の温度センサ232からの検出温度、圧力センサ9からの電動コンプレッサ2の吐出圧、外気温センサ10からの車室外の検出温度、内気温センサ11からの車室内の検出温度、日射センサ12からの日射量が入力される。なお、外気温センサ10、内気温センサ11、日射センサ12はそれぞれ検出に適した位置に設けられる。
【0016】
コントローラ1は、切替判定部101と制御部102を備えている。
切替判定部101は、インバータ23の温度センサ232からのインバータ23の温度から、制御モードを判定し、切替指令を制御部102へ出力する。
制御部102は、その制御内容として、通常モード102a、温度警戒モード102b、性能限定モード102c、過温度モード102dを備え、切替指令により選択されたモードで各センサからの入力に基づいて、インバータ23、コンデンサファン4、その他ドアアクチュエータ等への制御指令を出力する。
【0017】
通常モード102aは、要求される内気温センサ11の温度となるよう電動コンプレッサ2及びコンデンサファン4の回転速度を制御する。
温度警戒モード102bは、通常モード102aよりもよりコンデンサファン4が早く回転するよう制御を行う。
性能限定モード102cは、電動コンプレッサ2及びコンデンサファン4を予め設定するインバータ温度を抑制する回転速度に制限を行った上で、制御を行うようにする。
【0018】
過温度モード102dは、電動コンプレッサ2の運転を停止させる。インバータ温度の低下により運転は許可される。
実施例1ではこのように制御部102が制御内容のモードを切り替えて制御を行う。
【0019】
作用を説明する。
[機能限定制御の抑制作用]
図5は、切替判定部101で実行される判定内容を示す説明図である。図6は、温度警戒モードで実行される制御処理内容を示す説明図である。
実施例1の車両用空調装置では、インバータ23の内部に設けた温度センサ232でインバータ23の温度を検出し制御モードを切り替える。
【0020】
通常モード102aで制御を行っている場合に、インバータ23の内部温度が上昇し、85℃以上(図5の符号201)になると、切替判定部101により温度警戒モード102bへ切り替えされる。
温度警戒モード102bでは、図6に示すように、圧力センサ9で検出される電動コンプレッサ2の吐出圧と、コンデンサファン4の回転速度(図6は一定時間に対する回転数を指す)の比例した関係を、通常よりコンデンサファン4の回転速度が速くなる傾きで制御する。
【0021】
すると、コンデンサ3における熱交換が進み、冷媒の温度が通常制御状態よりも低い温度になる。これによりインバータ23の発熱に対する冷却を進め、次の性能限定モード102c、更にその次の過温度モード102dへの移行を抑制する。
これにより、正常な空調性能を発揮できる状態を少しでも長く維持し、インバータ23の保護を充分に行いながらも、より快適な空調環境を長く提供する。
【0022】
実施例1の作用を明確にするために、以下にさらに説明を加える。
実施例1の電動コンプレッサ2は、圧縮機22に対してインバータ23を吸入側、電動モータ21を吐出側に配置し、インバータ23は吸入冷媒、電動モータ21は吐出冷媒にて冷却させる構造である。
吐出冷媒は、温度が比較的高く、高負荷時には、電動モータ21を冷却するため130℃位まで容易に温度が上昇する。
実施例1の電動コンプレッサ2は、電動モータ21、圧縮機22、インバータ23が一体化した構造のため、電動モータ21の温度が圧縮機22を経由してインバータ23へ伝熱し、インバータ23の温度が上がりやすい構造である。
【0023】
しかし上記のように別体でインバータを設け、冷却構造を別に設ける構造に対しては、省スペース化、容易な配線構造などの有利な点を実施例1の電動コンプレッサ2は備える。
実施例1では、この有利な点を維持し、さらにインバータ23の保護を行いつつ、充分な空調効果を得る制御状態を少しでも長く維持する点が有利である。
【0024】
さらに外気温が高い場合についての説明を加える。外気温が40℃前後で高い場合は、コンデンサ3のコンデンサファン4の風量が一定では、コンデンサ3での冷却が十分に行われず吐出ガスの圧力が定常で1.4Mpaだった値が3Mpaまで上がってしまう。これと合わせて、吐出ガスの温度も上昇する。例えば0.2Mpa→1.4Mpaの圧縮比が、0.3Mpa→3Mpaまで上り圧縮熱で上昇する。ここで、実施例1では、コンデンサ3のコンデンサファン4の風量を上げるため、吐出ガスの温度と圧力を下げる。
【0025】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用空調装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0026】
(1)冷凍サイクルの冷媒を圧縮する圧縮機22と、圧縮機22を駆動する電動モータ21と、電動モータ21を駆動制御するインバータ23からなる電動コンプレッサ2と、電動コンプレッサ2と、冷媒の熱交換を行うコンデンサ3と、コンデンサ3への通気を行うコンデンサファン4と、を少なくとも含む冷凍サイクルを構成する装置の制御を行うコントローラ1を有し、コントローラ1は、インバータ23が高温となる際に、電動コンプレッサ2の作動に、通常の制御より制限を行い、インバータ23を保護する過温度モード102dを備える車両用空調装置において、コントローラ1は、過温度モード102dによる制御が行われる前の通常モード102aに、コンデンサファン4の風量を通常モード102aよりも大きくする温度警戒モード102bを備えたため、インバータの温度が上がりそうな高負荷条件においても、冷凍サイクルの負荷を減らす運転を行うことによりインバータの温度上昇を抑制して、性能を限定するモードへの移行を抑制し、より快適な制御状態を維持することができる。
【0027】
(2)上記(1)において、インバータ23の温度を検出する温度センサ232を設け、コントローラ1は、通常モード102aから所定の温度閾値を超えると過温度モード102dによる制御を行うようにし、過温度モード102dの温度閾値よりも低い温度に閾値により、温度警戒モード102bによる制御を行うようにしたため、インバータ23の高温に対して、過温度モード102dで制御される前の温度状態で、コンデンサファン4の風量を通常モード102aよりも大きくする温度警戒モード102bを行うようにし、インバータの温度が上がりそうな高負荷条件においても、冷凍サイクルの負荷を減らす運転を行うことによりインバータの温度上昇を抑制して、性能を限定するモードへの移行を抑制し、より快適な制御状態を維持することができ、インバータ温度を検出し、これを温度閾値により制御状態を変更するとともに、温度警戒モード102bの制御を行い、より確実にインバータ23が過剰な温度となることを防ぎつつ、快適性を向上させることができる。
【実施例2】
【0028】
実施例2は、インバータ内温度と吐出ガス圧に基づいて、設定、制御する温度警戒モードを設けた例である。
図7はコントローラ1の制御ブロック図である。
実施例2では、切替判定部103は、インバータ23の温度センサ232からのインバータ23の内部温度、圧力センサ9からの吐出ガス圧を入力する。
【0029】
検出温度と閾値温度との比較により通常モード102aから温度警戒モード104へ移行するが、実施例2では、さらに吐出ガス圧により、温度警戒モード104へ移行する温度閾値を可変にする。詳細には、吐出ガス圧(冷媒圧)が高い場合には、温度閾値を低くし、吐出ガス圧(冷媒圧)が低い場合には、温度閾値を高くする。
例えば、切替判定部103では、αを係数として、次の式により、温度警戒モード104に切り替える。
【0030】
(数1)
温度閾値=85℃×α(基準吐出ガス圧−吐出ガス圧)
【0031】
そして、温度警戒モード104では、通常モードの吐出ガス圧とコンデンサファン4の回転速度の比例する関係より、コンデンサファン4の回転速度が速くなるように制御する。
例えば、K1、K2を係数として、次の式によりコンデンサファン4の回転数(一定時間当りの回転数)を制御する。
【0032】
(数2)
回転数=K1×吐出ガス圧×K2(吐出ガス圧/基準吐出ガス圧)
但し、吐出ガス圧<基準吐出ガス圧の場合は、吐出ガス圧=基準吐出ガス圧とする。
その他構成は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0033】
作用を説明する。
[機能限定制御の抑制作用]
図8は、切替判定部103で実行される判定内容を示す説明図である。図9は、温度警戒モード104で実行される制御処理内容を示す説明図である。
【0034】
通常モード102aで制御を行っている場合に、インバータ23の内部温度が上昇し、温度閾値以上(図8の符号204)になると、切替判定部103により温度警戒モード104へ切り替える。
そして、この温度閾値は、図8に示すように、吐出ガス圧が高い場合は、低い温度に、吐出ガス圧が低い場合は、高い温度に可変に設定される。例えば上記数式1により設定される。
【0035】
そして、温度警戒モード104では、図9に示す吐出ガス圧とコンデンサファン4の回転速度の関係において、通常モード102aの場合の符号301で示す特性より、速い回転速度となるよう符合302で示す特性にする。例えば上記数式2により設定したものとする。
【0036】
吐出ガス圧は、車両用空調システムにおける冷凍サイクルへの負荷とほぼ等価となる。実施例2では、これを切替判定部103で判断するため、負荷が大きい場合は、早めに温度警戒モード104に移行することによって、負荷が大きい場合でも性能限定モード102c及び過温度モード102dに入ることを抑制し、インバータ23を保護しつつも、乗員の快適性を維持する制御を長くできるようにする。
【0037】
また、負荷が小さい場合には、より長く通常モード102aで制御されるようにし、温度警戒モード104を必要最低限にすることで、乗員の快適性を維持する制御を長くできるようにする。
【0038】
効果を説明する。
実施例2の車両用空調装置にあっては、実施例1の(1)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0039】
(3)上記(1)において、インバータ23の温度を検出する温度センサ232と、冷凍サイクルでの圧縮機22からの吐出圧を検出する圧力センサ9を設け、コントローラ1は、吐出圧が高くなるに従って低くなるよう警戒温度閾値204を可変させて設定し、通常モード102aの制御状態から所定の温度閾値を超えると性能限定モード102c及び過温度モード102dによる制御を行うようにし、性能限定モード102c及び過温度モード102dの温度閾値よりも低い温度の警戒温度閾値204により、温度警戒モード104による制御を行うようにしたため、冷凍サイクルへの負荷に等価な吐出ガス圧により警戒温度閾値204を変更し、負荷が高い場合には早め温度警戒モード104に移行し、より確実にインバータ23が過剰な温度となることを防ぎつつ、快適性を向上させることができる。
その他作用効果は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【実施例3】
【0040】
実施例3は、インバータ内温度と吐出ガス圧、外気温に基づいて、設定、制御する温度警戒モードを設けた例である。
図10はコントローラ1の制御ブロック図である。
実施例2では、切替判定部105は、インバータ23の温度センサ232からのインバータ23の内部温度、圧力センサ9からの吐出ガス圧、外気温センサ10からの外気温を入力する。
【0041】
検出温度と閾値温度との比較により通常モード102aから温度警戒モード106へ移行するが、実施例3では、さらに吐出ガス圧及び外気温により、温度警戒モード106へ移行する温度閾値を可変にする。詳細には、吐出ガス圧(冷媒圧)及び外気温が高い場合には、温度閾値を低くし、吐出ガス圧(冷媒圧)及び外気温が低い場合には、温度閾値を高くする。
例えば、切替判定部105では、α、βを係数として、次の式により、温度警戒モード106に切り替える。
【0042】
(数3)
温度閾値=85℃×α(基準吐出ガス圧−吐出ガス圧)×β(基準外気温−外気温)
【0043】
そして、温度警戒モード106では、通常モードの吐出ガス圧とコンデンサファン4の回転速度の比例する関係より、コンデンサファン4の回転速度が速くなるように制御する。
例えば、K1、K2、K3を係数として、次の式によりコンデンサファン4の回転数(一定時間当りの回転数)を制御する。
【0044】
(数4)
回転数=K1×吐出ガス圧×K2(吐出ガス圧/基準吐出ガス圧)×K3(外気温/基準外気温)
但し、吐出ガス圧<基準吐出ガス圧の場合は、吐出ガス圧=基準吐出ガス圧とし、外気温<基準外気温の場合は、外気温=基準外気温とする。
その他構成は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0045】
作用を説明する。
[機能限定制御の抑制作用]
図11は、切替判定部105で実行される判定内容を示す説明図である。図12は、温度警戒モード106で実行される制御処理内容を示す説明図である。
【0046】
通常モード102aで制御を行っている場合に、インバータ23の内部温度が上昇し、温度閾値以上(図11の符号205)になると、切替判定部105により温度警戒モード106へ切り替える。
そして、この温度閾値は、図11に示すように、吐出ガス圧及び外気温が高い場合は、低い温度に、吐出ガス圧及び外気温が低い場合は、高い温度に可変に設定される。例えば上記数式3により設定される。
【0047】
そして、温度警戒モード106では、図12に示す吐出ガス圧とコンデンサファン4の回転速度の関係において、通常モード102aの場合の符号301で示す特性より、速い回転速度となるよう符合302で示す特性にする。例えば上記数式4により設定したものとする。
【0048】
吐出ガス圧は、車両用空調システムにおける冷凍サイクルへの負荷とほぼ等価となる。また、外気温も冷凍サイクルの負荷と等価になる。実施例3では、これを切替判定部105で判断するため、負荷が大きい場合は、早めに温度警戒モード106に移行することによって、負荷が大きい場合でも性能限定モード102c及び過温度モード102dに入ることを抑制し、インバータ23を保護しつつも、乗員の快適性を維持する制御を長くできるようにする。
【0049】
また、負荷が小さい場合には、より長く通常モード102aで制御されるようにし、温度警戒モード106を必要最低限にすることで、乗員の快適性を維持する制御を長くできるようにする。
【0050】
実施例3では、温度警戒モード106へ移行する閾値を、吐出ガス圧と外気温で設定するため、冷凍サイクルの負荷状態をより正確に推定し、それに合わせて、温度警戒モード106を適確に用いるようにして、インバータ23を保護しつつも、乗員の快適性を維持することがより確実におこなわれるようにする。
【0051】
効果を説明する。
実施例3の車両用空調装置にあっては、実施例1の(1)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(4)上記(1)において、インバータ23の温度を検出する温度センサ232と、冷凍サイクルでの圧縮機22からの吐出圧を検出する圧力センサ9と、外気温の温度を検出する外気温センサ10を設け、コントローラ1は、吐出圧及び外気温が高くなるに従って低くなるよう警戒温度閾値205を可変させて設定し、通常モード102aから所定の温度閾値を超えると性能限定モード102c及び過温度モード102dによる制御を行うようにし、性能限定モード102c及び過温度モード102dの温度閾値よりも低い温度の警戒温度閾値205により、温度警戒モード106による制御を行うようにしたため、冷凍サイクルへの負荷に等価な吐出ガス圧及び外気温により精度よく推定した負荷に応じるよう警戒温度閾値205を変更し、負荷が高い場合には早め温度警戒モード106に移行し、より確実にインバータ23が過剰な温度となることを防ぎつつ、快適性を向上させることができる。
その他作用効果は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0052】
以上、本発明の車両用空調装置を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0053】
例えば、実施例1〜実施例3では、切替判定部と制御部をコントローラ1に設け、制御部に各モードを設けたが、本構成は、プログラムにより構成されても、回路構成によるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1の車両用空調装置のシステム概略説明図である。
【図2】実施例1における電動コンプレッサの斜視図である。
【図3】実施例1における電動コンプレッサの断面図である。
【図4】コントローラの制御ブロック図である。
【図5】切替判定部で実行される判定内容を示す説明図である。
【図6】温度警戒モードで実行される制御処理内容を示す説明図である。
【図7】コントローラの制御ブロック図である。
【図8】切替判定部で実行される判定内容を示す説明図である。
【図9】温度警戒モードで実行される制御処理内容を示す説明図である。
【図10】コントローラ1の制御ブロック図である。
【図11】切替判定部で実行される判定内容を示す説明図である。
【図12】温度警戒モードで実行される制御処理内容を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 コントローラ
101 切替判定部
102 制御部
102a 通常モード
102b 温度警戒モード
102c 性能限定モード
102d 過温度モード
103 切替判定部
104 温度警戒モード
105 切替判定部
106 温度警戒モード
2 電動コンプレッサ
21 電動モータ
211 軸
212 ロータ
213 ステータ
22 圧縮機
221 吸入ポート
222 吐出ポート
223 ベーンロータ
224 ベーン
225 ハウジング
23 インバータ
231 回路基板
232 温度センサ
3 コンデンサ
4 コンデンサファン
5 リキッドタンク
6 膨張弁
7 エバポレータ
8 ブロワファン
9 圧力センサ
10 外気温センサ
11 内気温センサ
12 日射センサ
201、204、205 警戒温度閾値
202、203 温度閾値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルの冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動制御するインバータからなる電動コンプレッサと、
前記電動コンプレッサと、冷媒の熱交換を行うコンデンサと、前記コンデンサへの通気を行うコンデンサ通気手段と、を少なくとも含む冷凍サイクルを構成する装置の制御を行う制御手段を有し、
前記制御手段は、前記インバータが高温となる際に、前記電動コンプレッサの作動に、通常の制御より制限を行い、前記インバータを保護する保護制御手段を備える車両用空調装置において、
前記制御手段は、
前記保護制御手段による制御が行われる前の通常の制御状態に、前記コンデンサ通気手段の風量を通常の制御状態よりも大きくする警戒制御手段を備えた、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記インバータの温度を検出するインバータ温度検出手段を設け、
前記制御手段は、通常の制御状態から所定の温度閾値を超えると前記保護制御手段による制御を行うようにし、前記保護制御手段の温度閾値よりも低い温度の警戒温度閾値により、前記警戒制御手段による制御を行うようにした、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記インバータの温度を検出するインバータ温度検出手段と、
前記冷凍サイクルでの前記圧縮機からの吐出圧を検出する圧力検出手段と、
を設け、
前記制御手段は、
前記吐出圧が高くなるに従って低くなるよう警戒温度閾値を可変させて設定し、
通常の制御状態から所定の温度閾値を超えると前記保護制御手段による制御を行うようにし、前記保護制御手段の温度閾値よりも低い温度の警戒温度閾値により、前記警戒制御手段による制御を行うようにした、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記インバータの温度を検出するインバータ温度検出手段と、
前記冷凍サイクルでの前記圧縮機からの吐出圧を検出する圧力検出手段と、
外気温の温度を検出する外気温検出手段と、
を設け、
前記制御手段は、
前記吐出圧及び前記外気温が高くなるに従って低くなるよう警戒温度閾値を可変させて設定し、
通常の制御状態から所定の温度閾値を超えると前記保護制御手段による制御を行うようにし、前記保護制御手段の温度閾値よりも低い温度の警戒温度閾値により、前記警戒制御手段による制御を行うようにした、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項1】
冷凍サイクルの冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動制御するインバータからなる電動コンプレッサと、
前記電動コンプレッサと、冷媒の熱交換を行うコンデンサと、前記コンデンサへの通気を行うコンデンサ通気手段と、を少なくとも含む冷凍サイクルを構成する装置の制御を行う制御手段を有し、
前記制御手段は、前記インバータが高温となる際に、前記電動コンプレッサの作動に、通常の制御より制限を行い、前記インバータを保護する保護制御手段を備える車両用空調装置において、
前記制御手段は、
前記保護制御手段による制御が行われる前の通常の制御状態に、前記コンデンサ通気手段の風量を通常の制御状態よりも大きくする警戒制御手段を備えた、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記インバータの温度を検出するインバータ温度検出手段を設け、
前記制御手段は、通常の制御状態から所定の温度閾値を超えると前記保護制御手段による制御を行うようにし、前記保護制御手段の温度閾値よりも低い温度の警戒温度閾値により、前記警戒制御手段による制御を行うようにした、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記インバータの温度を検出するインバータ温度検出手段と、
前記冷凍サイクルでの前記圧縮機からの吐出圧を検出する圧力検出手段と、
を設け、
前記制御手段は、
前記吐出圧が高くなるに従って低くなるよう警戒温度閾値を可変させて設定し、
通常の制御状態から所定の温度閾値を超えると前記保護制御手段による制御を行うようにし、前記保護制御手段の温度閾値よりも低い温度の警戒温度閾値により、前記警戒制御手段による制御を行うようにした、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記インバータの温度を検出するインバータ温度検出手段と、
前記冷凍サイクルでの前記圧縮機からの吐出圧を検出する圧力検出手段と、
外気温の温度を検出する外気温検出手段と、
を設け、
前記制御手段は、
前記吐出圧及び前記外気温が高くなるに従って低くなるよう警戒温度閾値を可変させて設定し、
通常の制御状態から所定の温度閾値を超えると前記保護制御手段による制御を行うようにし、前記保護制御手段の温度閾値よりも低い温度の警戒温度閾値により、前記警戒制御手段による制御を行うようにした、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−292431(P2009−292431A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150737(P2008−150737)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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