説明

車両用空調装置

【課題】低コストでDCサーボモータ停止時の停止位置精度を向上させることができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】DCサーボモータへの供給電圧の高低によるサーボ停止時の惰性回転量に基づいて、電源電圧に応じてDCサーボモータへの電源供給をカットするポイントを可変させることにより、DCサーボモータの停止位置を目標位置により近いポイントで停止させるようにする車両用空調装置として提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、特に車両用空調装置のDCサーボモータの停止制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は殆どの車両に取り付けられ、乗員が車室内で快適に過ごせるようになっている。乗員が好みの温度を設定すると、車室内に取り付けられた温度センサが検出する温度と設定温度とに基づいて風量が調整され、吹出口が選択される。
【0003】
この吹出口の切替、外気/内気の切替,冷気/暖気の混合調整,吹出口における風向をルーバー(風向を変化させるもの)の調整には、DCサーボモータが用いられる。DCサーボモータが回転・停止することで、切替のためのダンパー,ルーバーの開度や位置が変化する。DCサーボモータの制御には、周知のPWM制御が用いられ、乗員の設定に基づいた目標位置に停止するように、DCサーボモータの駆動制御が行われる。
【0004】
DCサーボモータを目標位置で停止させるべくDCサーボモータへの通電を停止しても、モータは惰性で回り続け、目標位置を通り過ぎる場合がある。この場合はモータを逆回転させ目標位置に戻す制御が行われる。この際に再び目標位置を通り過ぎて再度反転させることの繰り返しによるモータのハンチングを防ぐ為に、目標位置にヒステリシス(許容範囲)を設けることがあるが、停止位置精度が悪くなるという問題がある。
【0005】
そこで、サーボモータが目標位置に近づいてきたときに、DC出力のオン/オフによってサーボモータを回転/停止させるDC駆動から、DC出力電圧を段階的に変化させるPWM駆動へ切り替えてサーボモータの回転速度を減速させることにより、サーボモータの停止位置精度を向上させるサーボモータの駆動制御装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平08−182366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成では、DCモータの駆動制御部にPWM駆動制御を行う回路が必須となる。すなわち、使用するマイコンがPWMリソースを備えているか、ソフトウェアによりPWM信号を生成して汎用出力ポートから出力する制御を、他の処理すべき制御に加えて処理できるだけの処理能力を備えている必要がある。近年のマイコンはPWMリソースを備えているものが多いが、PWM信号を使って制御しなければならないアクチュエータも多い。例えば、車両用空調装置では、ブロワモータ,ソレノイドバルブ,操作パネルインジケータLEDの調光,LCDバックライトの調光,操作ノブ照明の調光などが相当する。マイコンによってはPWMリソースが不足する場合があり、その場合はより高機能なマイコンを採用しなければならず、コストアップの要因となってしまう。
【0008】
上記問題を背景として、低コストでDCサーボモータ停止時の停止位置精度を向上させることができる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するための車両用空調装置は、DCサーボモータに通電して該DCサーボモータを駆動する駆動手段と、駆動手段を制御する駆動制御手段と、DCサーボモータの停止指定位置を設定する停止指定位置設定手段と、DCサーボモータの駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、検出される種々の駆動状態に対応したDCサーボモータの惰性回転量を記憶するデータテーブルと、設定された停止指定位置と惰性回転量とに基づいて、DCサーボモータへの通電を遮断する通電遮断位置を決定する通電遮断位置決定手段と、DCサーボモータの回転位置を検出する回転位置検出手段と、DCサーボモータの回転位置検出結果に基づいて、通電遮断位置が到来したか否かを判定する位置判定手段と、通電遮断位置が到来したと判定された場合に、当該DCサーボモータへの通電を遮断する通電遮断制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によって、DCサーボモータの停止時の惰性回転量に基づいて、DCサーボモータへの電源供給をカットするポイントを可変させることにより、DC出力のオン/オフによってDCサーボモータを回転/停止させるDC駆動のみを用いた場合でも、複雑な制御を行うことなく、DCサーボモータを設定された停止指定位置により近いポイントで停止させることができる。
【0011】
また、本発明の車両用空調装置における駆動状態検出手段は、駆動手段に供給される駆動電圧を検出する駆動電圧検出手段を含み、惰性回転量は、検出された駆動電圧に基づいて定められるように構成することもできる。
【0012】
車両用空調装置の駆動手段に供給される駆動電圧は、バッテリから供給される。バッテリの電圧は車両の使用状態によって異なるので、DCサーボモータの駆動状態も車両によって異なる。上記構成によって、駆動電圧に対応した惰性回転量を用いることで、複雑な制御を行うことなく、DCサーボモータを設定された停止指定位置により近いポイントで停止させることができる。
【0013】
また、本発明の車両用空調装置におけるDCサーボモータは、内外気切替用ダンパー,エアミックスダンパー,吹出口切替用ダンパーのうちの少なくとも一つを駆動するために用いられ、そのそれぞれのダンパーを駆動するDCサーボモータに対応してデータテーブルが記憶されるように構成することもできる。
【0014】
これらのダンパーの切替が精度よく行われないと、空調状態が乗員の設定したものと異なるため、快適性が損なわれ乗員に不快感を与えることになる。上記構成によって、複雑な制御を行うことなく各ダンパーの切替が精度よく行うことができ、快適性を保つことができる。
【0015】
また、本発明の車両用空調装置における駆動制御手段は、通電遮断位置において、DCサーボモータへの通電を遮断された後に、DCサーボモータの惰性回転を継続して停止指定位置に位置決めするように構成することもできる。
【0016】
上記構成によって、PWM駆動や、DC駆動からPWM駆動に切り替える制御は不要となる。よって、PWMリソースを備えたマイコンを使用する必要がないので車両用空調装置のコストは上昇しない。また、DCサーボモータの駆動制御も複雑化せず、制御プログラムの開発期間を短縮することができる。
【0017】
また、本発明の車両用空調装置は、DCサーボモータが停止指定位置に対応して正常に停止したと判定される許容範囲が、惰性回転量に基づいて定められるように構成することもできる。
【0018】
DCサーボモータを停止指定位置で停止させるべく、惰性回転量に対応して通電遮断位置が決定されているので、DCサーボモータは停止指定位置付近で停止する確率が高くなる。上記構成によって、許容範囲(ヒステリシス)を、例えば、惰性回転量と同等あるいはそれよりも小さく設定することができる。また、停止位置精度が高くなるので許容範囲を小さくすることができる。さらに、許容範囲を小さくしてもオーバーランの発生頻度は少なくなるので、ハンチングの発生頻度も少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1に、本発明の車両用空調制御装置(以下、エアコンと称することもある)CAの全体構成を示す。車両用空調制御装置CAはダクト1を備え、該ダクト1には、車内空気を循環させるための内気吸い込み口13と、車外の空気を取込む外気吸い込み口14とが形成され、内外気切替ダンパー15により切り替え使用される。これら内気吸い込み口13ないし外気吸い込み口14からの空気は、ブロワモータ23により駆動されるブロワ16によってダクト1内に吸い込まれる。
【0020】
ダクト1内は、吸い込まれた空気を冷却して冷気を発生させるためのエバポレータ17と、逆にこれを加熱して暖気を発生させるヒータコア2(エンジン冷却水の廃熱により発熱動作する)とが設けられている。そして、これら冷気と暖気とが、エアミックスダンパー3の角度位置に対応した比率にて混合され、吹出口4,5,6より吹出される。
【0021】
このうち、フロントグラス曇り止め用のデフ吹出口([DEF])4は、フロントグラスの内面下縁に対応するインパネ上方奥に、フェイス([FACE])吹出口5はインパネの正面中央に、フット吹出口([FOOT])6はインパネ下面奥の搭乗者足元に対向する位置にそれぞれ開口し、吹出口切替用ダンパー7,8,9により個別に開閉される。具体的には、吹出口切替用モータ20からのダンパー制御用の回転入力位相に応じて、ダンパー駆動ギア機構10により、デフ吹出口4のみを開いた状態、フェイス吹出口5のみを開いた状態、フット吹出口6のみを開いた状態、フェイス吹出口5とデフ吹出口4とを開いた状態、フット吹出口6とデフ吹出口4とを開いた状態、フェイス吹出口5,デフ吹出口4,およびフット吹出口6の全てを開いた状態の間で切り替えられる。
【0022】
また、内外気切替ダンパー15は内外気切替用モータ21により、エアミックスダンパー3はエアミックス用モータ19により、吹出口切替用ダンパー7,8,9は吹出口切替用モータ20により、それぞれ電動駆動される。これらモータ19,20,21は、DCサーボモータにて構成され、個々の動作はエアコンECU50により集中制御される(図2参照)。さらにブロワモータ23はブラシレスモータ等で構成され、エアコンECU50により、PWM制御にて回転速度制御することにより吹出し風量が調整される。
【0023】
エアコンECU50の実体は周知のCPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータハードウェアであり、エバポレータセンサ51,内気センサ55,外気センサ56,水温センサ57,および日射センサ58,風量設定スイッチ52,吹出口切替スイッチ53,温度設定スイッチ54,A/Cスイッチ59,内外気切替スイッチ60,オート切替スイッチ61,および表示器62が接続されている。
【0024】
なお、エアコンECU50が本発明の駆動制御手段,位置判定手段,通電遮断制御手段,通電遮断位置決定手段に相当する。また、吹出口切替スイッチ53,内外気切替スイッチ60,オート切替スイッチ61が本発明の停止指定位置設定手段に相当する。
【0025】
具体的には、エアコンECU50は、内蔵のROM等(図示せず)に搭載されたエアコン制御ファームウェアの実行により、以下のような制御を行う。
・内外気切替スイッチ60の操作入力状態に対応して、内気側,外気側,あるいは両者の間の位置に内外気切替用ダンパー15が位置するよう、対応する内外気切替用モータ21のドライバIC(図2参照)に駆動制御指令を行う。
・A/Cスイッチ59の操作状態に応じて、エバポレータ17の作動をオン・オフさせる。
【0026】
・オート切替スイッチ61の入力状態に基づいて、エアコンの動作モードをマニュアルモードとオートモードとの間で切り替える。
・オートモードでは、温度設定スイッチ54による設定温度の入力情報と、内気センサ55,外気センサ56,水温センサ57,および日射センサ58の出力情報とを参照し、車内温度が設定温度に近づくよう、エアミックスダンパー3の開度調整による吹出し温度調整と、ブロワモータ23による風量調整と、吹出口切替ダンパー7,8,9の位置変更とがなされるよう、対応するエアミックス用モータ19,ブロワモータ23,吹出口切替用モータ20の動作制御指令を行う。
・マニュアルモードでは、風量設定スイッチ52と吹出口切替スイッチ53との操作入力状態に対応して、ブロワモータ23による風量調整を行うとともに、吹出口切替ダンパー7,8,9が対応する開閉状態となるように吹出口切替用モータ20への駆動制御指令を行う。
【0027】
表示器62は、LCD表示器として構成され、エアコンの動作状態や内気温等のエアコンに関する各種情報を表示する。
【0028】
図2を用いて、内外気切替用モータ21(図2ではサーボモータアッセンブリ210と表記)を例に挙げて、DCサーボモータの駆動制御構成を説明する。エアミックス用モータ19,吹出口切替用モータ20の構成も同様である。内外気切替スイッチ60の操作等により、エアコンECU50のCPU501からドライバIC213に駆動制御指令が送られると、ドライバIC213がDCサーボモータ211にDC出力のオン/オフを行うことによってDCサーボモータ211を回転/停止させる(DC駆動)。なお、ドライバIC213が本発明の駆動手段に相当し、図1の駆動制御部50aに含まれる。
【0029】
また、ポテンションメータ212によりDCサーボモータ211の動作状態(回転位置)すなわち内外気切替用ダンパー15の位置を電圧値として検出し、入力I/F(インターフェース)214を介して、CPU501のA/D変換用入力端子AD Inへ出力している。CPU501では、入力された電圧値をA/D変換して、駆動制御処理(後述)に用いる。
【0030】
内外気切替用モータ21の場合は、例えば、内外気切替用ダンパー15が外気吸い込み口14を完全に塞いだ状態(内気循環モード)のときに、ポテンショメータ212の出力電圧が最も低くなるように構成されている。そして、DCサーボモータ211の回転により、内外気切替用ダンパー15が内気吸い込み口13側に移動するにつれて、ポテンショメータ212の出力電圧が高くなっていき、内外気切替用ダンパー15が内気吸い込み口13を完全に塞いだ状態(外気導入モード)のときに、ポテンショメータ212の出力電圧が最も高くなるように構成されている。なお、ポテンショメータ212が本発明の駆動状態検出手段,回転位置検出手段に相当する。
【0031】
また、エアコンECU50は、図3に示される従来のエアコンECUとは異なり、ドライバIC213へ供給される電源電圧VDDを検出できるようになっている。一般に、DCサーボモータ211等のアクチュエータの電源電圧VDDは、CPU501等に供給される電源電圧VCCよりも高い。そこで、抵抗502a,502bを含む電源電圧計測回路502を設け、これらの抵抗により、CPU501のA/D変換用入力端子AD Inで、VDDを入力・A/D変換可能な値に分圧する。なお、電源電圧計測回路502が本発明の駆動電圧検出手段に相当する。
【0032】
図4を用いて、DCサーボモータ(19,20,21)の駆動制御処理について説明する。なお、本処理は、エアコンECU50のROM等(図示せず)に記憶されたエアコン制御ファームウェアに含まれ、他の処理とともに繰り返し実行される。まず、風量設定スイッチ52,吹出口切替スイッチ53,温度設定スイッチ54,A/Cスイッチ59,内外気切替スイッチ60等のスイッチ情報を取得する(S10)。
【0033】
取得したスイッチ情報に基づいて、上述のようなDCサーボモータ(以下、サーボモータと略称)の駆動要求がある場合(S11:Yes)、電源電圧計測回路により、ドライバICに供給される電源電圧VDDを計測する(S12)。そして、データテーブル50b(図1参照)から、計測した電源電圧VDDに対応する惰性回転量を読み込む(S13)。
【0034】
図5にデータテーブル50bの一例を示す。図5の例では、電源電圧VDDすなわちバッテリ電圧に対応して、惰性回転量がサーボモータの全回転量すなわちダンパーの全移動量に対する割合として設定されている。VDD=10.0((V)は、例えばドライバICの動作電圧範囲の下限値、VDD=13.5(V)は、バッテリの標準的な出力電圧値、VDD=16.0(V)は、例えばバッテリの仕様上供給可能な最大電圧値である。
【0035】
電源電圧VDDが上記の値以外の場合には、例えば直線補間により惰性回転量を求める。また、例えば電源電圧VDDを0.5(V)単位で惰性回転量を設定してもよい。
【0036】
データテーブル50bは、サーボモータ(19,20,21)毎に設定されている。定格の異なるサーボモータ毎に設定してもよい。また、サーボモータに流れる負荷電流(駆動電圧によって決まる)を周知の電流センサ(例えばドライバICに内蔵)で検出する構成とし、負荷電流に対応した惰性回転量をデータテーブルとして設定してもよい。また、周知のレゾルバ等の回転センサによりサーボモータの回転数(駆動電圧によって決まる)を検出して、回転数に対応した惰性回転量をデータテーブルとして設定してもよい。
【0037】
図4に戻り、読み込んだ惰性回転量と、スイッチ情報により求められたダンパーの停止指定位置とに基づいて、サーボモータへの通電を遮断する通電遮断位置を以下の式により算出する(S14)。
通電遮断位置=停止指定位置−惰性回転量
【0038】
次に、CPU501から駆動の対象となるサーボモータのドライバICに対して駆動制御指令を送り、ドライバICがサーボモータに駆動電圧を印加して、サーボモータの駆動を開始する(S15)。
【0039】
次に、ポテンショメータによりサーボモータの現在の回転位置を検出する(S16)。そして、サーボモータの現在の回転位置が通電遮断位置に到達した場合(S17:Yes)、CPU501から駆動の対象となるサーボモータのドライバICに対して駆動制御指令を送り、ドライバICがサーボモータへの駆動電圧の印加を停止する(S18)。
【0040】
その後、サーボモータは、惰性回転を継続し、停止指定位置あるいはその近傍にて停止する。
【0041】
図6を用いて、内外気切替用ダンパー15を動かす内外気切替用モータ21を例に挙げて、駆動制御処理の詳細を説明する。ポテンショメータ212で検出されるDCサーボモータ211の回転位置を、内外気切替用ダンパー15が外気吸い込み口14を完全に塞いだ状態(内気循環モード)のときに0%とし、内外気切替用ダンパー15が内気吸い込み口13を完全に塞いだ状態(外気導入モード)のときに100%とする(図6の絶対位置に相当)。
【0042】
ここで、内外気切替用ダンパー15を絶対位置0%から50%の位置に移動させたい場合(内外気混合モード)、DCサーボモータ211を正転方向に駆動させる。このとき、停止指定位置は50(%)の位置となる。ここで、ドライバICに供給される電源電圧VDD=13.5(V)の場合、データテーブル50bを参照し、惰性回転量B(%)を取得する。B=2(%)とすると、通電遮断位置は、50−2=48(%)の位置となるので、DCサーボモータ211の現在の回転位置が48(%)の位置となった場合に、DCサーボモータ211への駆動電圧の印加を停止する。この後、DCサーボモータ211は、惰性回転を継続し、停止指定位置である50(%)の位置あるいはその近傍にて停止する。
【0043】
ここで、DCサーボモータ211の位置決めの許容範囲(ヒステリシス幅)が定められている。図6の例では、DCサーボモータ211が正転方向から停止した場合に50(%)の位置を超えてオーバーランした場合、例えば54(%)の位置を越えなければ停止指定位置で停止したと判断され、54(%)の位置を越えた場合は停止指定位置で停止しなかったと判断され、上述の駆動制御処理によって逆転方向へ停止指定位置で停止するように駆動される。逆転方向の場合は、DCサーボモータ211の現在の回転位置が52(%)の位置となった場合に、DCサーボモータ211への駆動電圧の印加を停止する。このとき、停止位置が46(%)の位置を越えなければ停止指定位置で停止したと判断され、46(%)の位置を越えた場合は停止指定位置で停止しなかったと判断され、停止指定位置あるいは許容範囲内で停止するように再度正転方向に駆動される。
【0044】
また、正転方向で、DCサーボモータ211の現在の回転位置が48(%)の位置となった場合に、DCサーボモータ211への駆動電圧の印加を停止したときに、DCサーボモータ211が48(%)の位置で停止してしまった場合は、停止指定位置で停止しなかったと判断され、再度駆動制御処理が行われる。
【0045】
図7を用いて、電源電圧VDDとヒステリシス幅との関係について補足説明する。従来技術では、電源電圧VDDの変動を考慮して、停止指定位置を基準(0%)とすると、−A%〜A%(二重線)のように比較的広い範囲をヒステリシス幅として設定しなければならなかった。一方、本発明の構成では、ヒステリシス幅は惰性回転量と同じかやや大きな値とすることができる。
【0046】
例えば、電源電圧VDDが10.0(V)のように比較的低い場合、惰性回転量は小さくなるので、ヒステリシス幅も停止指定位置を基準(0%)とする、一点鎖線で示される−D%〜D%のように比較的狭い範囲とすることができる。このようにヒステリシス幅を狭くしても、惰性回転量が小さいので、ハンチングが発生する頻度は大きくならない。同様にして、電源電圧VDDが中間時(−C%〜C%:実線)および比較的高い場合(−B%〜B%:破線)にも、ヒステリシス幅を惰性回転量に対応した範囲とすることができる。これにより、DCサーボモータの停止時の位置決めの精度を向上させることができる。
【0047】
上述のように、ヒステリシス幅は、−B%〜B%の範囲を上回ることはなく、ヒステリシス幅の上限値を惰性回転量に基づいて従来よりも小さく設定することができる。また、車両用空調制御装置において惰性回転量のバラツキが小さい場合には、ヒステリシス幅を惰性回転量よりも小さくすることができる。例えば、電源電圧VDDが比較的高い場合、通電遮断位置はB%(あるいは−B%)の位置であっても、停止指定位置(0%の位置)と実際の停止位置との偏差がB/2%以内であれば、ヒステリシス幅を、−B/2%〜B/2%とすることができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】車両用空調制御装置の構成を示す図。
【図2】本発明による、DCサーボモータの駆動制御の構成を示す図。
【図3】従来技術による、DCサーボモータの駆動制御の構成を示す図。
【図4】DCサーボモータの駆動制御処理を説明するフロー図。
【図5】データテーブルの一例を示す図。
【図6】駆動制御処理の詳細を説明する図。
【図7】電源電圧とヒステリシス幅との関係について説明する図。
【符号の説明】
【0050】
3 エアミックスダンパー
7,8,9吹出口切替用ダンパー
15 内外気切替ダンパー
19 エアミックス用モータ(DCサーボモータ)
20 吹出口切替用モータ(DCサーボモータ)
21 内外気切替用モータ(DCサーボモータ)
50 エアコンECU(駆動制御手段,位置判定手段,通電遮断制御手段段,通電遮断位置決定手段)
50a 駆動制御部
50b データテーブル
53 吹出口切替スイッチ(停止指定位置設定手段)
60 内外気切替スイッチ(停止指定位置設定手段)
61 オート切替スイッチ(停止指定位置設定手段)
211 DCサーボモータ
212 ポテンショメータ(駆動状態検出手段,回転位置検出手段)
213 ドライバIC(駆動手段)
501 CPU
502 電源電圧計測回路(駆動電圧検出手段)
CA 車両用空調制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCサーボモータに通電して該DCサーボモータを駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
前記DCサーボモータの停止指定位置を設定する停止指定位置設定手段と、
前記DCサーボモータの駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、
検出される種々の前記駆動状態に対応した前記DCサーボモータの惰性回転量を記憶するデータテーブルと、
設定された前記停止指定位置と前記惰性回転量とに基づいて、前記DCサーボモータへの通電を遮断する通電遮断位置を決定する通電遮断位置決定手段と、
前記DCサーボモータの回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記DCサーボモータの回転位置検出結果に基づいて、前記通電遮断位置が到来したか否かを判定する位置判定手段と、
前記通電遮断位置が到来したと判定された場合に、前記DCサーボモータへの通電を遮断する通電遮断制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記駆動状態検出手段は、前記駆動手段に供給される駆動電圧を検出する駆動電圧検出手段を含み、
前記惰性回転量は、検出された前記駆動電圧に基づいて定められる請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記DCサーボモータは、内外気切替用ダンパ,エアミックスダンパ,吹出口切替用ダンパのうちの少なくとも一つを駆動するために用いられ、そのそれぞれのダンパを駆動する前記DCサーボモータに対応して前記データテーブルが記憶される請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記駆動制御手段は、前記通電遮断位置において、前記DCサーボモータへの通電を遮断された後に、前記DCサーボモータの惰性回転を継続して前記停止指定位置に位置決めする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記DCサーボモータが前記停止指定位置に対応して正常に停止したと判定される許容範囲が、前記惰性回転量に基づいて定められる請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−50058(P2009−50058A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212159(P2007−212159)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】