説明

車両用空調装置

【課題】簡単な構成で、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期にエンジン冷却水を用いて車室内の暖房を行う際に、エンジン冷却水の温度を急速に上昇させることができる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】前記水用熱交換手段(水用熱交換装置)25は、前記ヒーターコア8aへ冷却水を流す水用熱交換器(第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の少なくとも一方、又は第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の両方)を備えている。しかも、前記第1の熱交換手段(外部熱交換器18)は、前記水用熱交換器(第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の少なくとも一方、又は第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の両方)内の冷却水を加熱可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却水を利用して車室内の暖房を行う車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用空調装置は、冷却水を利用した暖房装置および冷凍サイクルを利用した冷房装置を設けているのが普通である。
【0003】
この暖房装置では、車室内の暖房時に、冷却水を車室内空調用のヒーターコア(車室内熱交換器)に循環させると共に、ヒーターコア通過風を車室内の吹出口から吹き出させるようにして車室内を暖房可能にするものが知られている。
【0004】
このような車両用空調装置により車室内の暖房を行う場合、冷却水の水温が充分に上昇するまでは車室内に吹き出される空気の温度が低く、乗員が快適と感じるまで長い時間を要することがあった。
【0005】
これの解消方法としては、外気温度が低い場合に冷房装置を作動させると共に、この冷房装置の圧縮機で圧縮される高圧冷媒の熱を利用して冷却水を加熱して、加熱された冷却水をヒーターコアに供給することにより、ヒーターコアで車室内の空気を暖める冷却水式の暖房方法が知られている(例えば、特許文献1参照。この特許文献1には、いわゆる冷房用のモードと4種類の暖房用のモードがある。このうち暖房用モードの中に、エンジン冷却水の温度が低い場合には、冷凍サイクルの高圧冷媒を熱源として、エンジン冷却水を加温する方式である。また別の暖房モードでは、高圧冷媒を熱源とし、室内側の熱交換器でその熱を空調風の加熱に使うことで、暖房を実現している。)。
【0006】
また、他の解消方法としては、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に冷房装置を作動させると共に、この冷房装置の圧縮機で圧縮される高圧冷媒の熱で車室内の空気を直接加熱するようにしたヒートポンプ式の暖房方法も考えられる。なお、以下の説明では、冷房装置によるヒートポンプ式の暖房方法を冷房装置のヒートポンプ運転として用いる。
【0007】
このヒートポンプ運転する方法では、圧縮機で圧縮された高圧冷媒の熱で車室内の空気を加熱する際、高圧冷媒から熱が奪われて高圧冷媒が凝縮して高圧凝縮液冷媒になる。このため、再び冷媒を圧縮機で圧縮させるには、凝縮液冷媒を膨張手段又は減圧手段で膨張させて低圧液冷媒にした後、熱交換器で低圧液冷媒に吸熱させることにより、低圧液冷媒をガス化させて冷媒ガスにする必要がある。
【0008】
この熱交換器で低圧液冷媒に吸熱させる際には、熱交換器の周囲の空気の温度の熱が奪われて、熱交換器の周囲の空気の温度が低下する。従って、低圧液冷媒を熱交換器で冷媒ガスにする際に車室内の暖房に影響を与えないようにするために、熱交換器には車室外に配設された外部熱交換器を用いる必要がある。このため、冷房装置をヒートポンプ運転する方法では、外気温度が低くなるほど、高圧冷媒の熱による車室内の空気の加熱量を増加させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−310227号公報
【特許文献2】特開2002−211234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した冷却水式の暖房方法では、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期の車室内暖房を快適に行うために、複数の熱交換器や多数の逆止弁,多数の電磁弁等を車両用空調装置(空調システム)に用いる必要があり、車両用空調装置の部品点数が増加や重量の増大を招き易い構造となり、製品コストの上昇が否めないものであった。しかも、この部品点数の増加は、車両用空調装置の構造を複雑にしていた。
【0011】
また、上述した冷房装置では、低外気温時に車室外部のコンデンサや車室内のエバポレータ内に多量の冷媒が滞留しているために、この低外気温時に単にヒートポンプ運転により車室内を暖房しようとしたときに、コンデンサやエバポレータ内の冷媒を暖房のために有効に利用できず、充分な暖房性能が発揮できないものであった。
【0012】
しかも、このような冷房装置のヒートポンプ運転では、外気温度が低くなるに従って暖房能力が低下する傾向があり、冷却水の温度を急速に上昇させることが難しかった。
【0013】
そこで、この発明は、車室内の暖房を行う際に、簡単な構成で冷却水の温度を急速に上昇させることができる車両用空調装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するため、本発明の車両用空調装置は、冷媒を、圧縮機、車室外の冷媒凝縮用のコンデンサ,第1の膨張手段又は減圧手段,車室内の空気冷却及び液体冷媒蒸発用のエバポレータ、アキュームレータの順に循環させる冷房用冷媒循環回路を有する。また、車両用空調装置は、冷却水を車室内のヒーターコアとの間で循環させる暖房用冷却水循環回路を有する。更に、車両用空調装置は、前記コンデンサ及び前記エバポレータと並列に接続され、前記アキュームレータを経由して前記圧縮機に接続されたバイパス流路と、前記圧縮機の冷媒吐出口を前記コンデンサと前記バイパス流路とのいずれかに切り換え連通させる電磁切換弁と、水加熱用熱交換手段を有する。この水加熱用熱交換手段は、前記ヒーターコアへの流路途中に介装された水用熱交換手段及び前記バイパス流路の途中に設けられて前記水用熱交換手段との間で熱の授受を行う冷媒用熱交換手段を有する水加熱用熱交換手段を有する。また、車両用空調装置は、前記冷却水の温度を検出して温度信号を出力する水温検出センサと、前記冷却水の温度が所定値以下のときに前記圧縮機を作動させると共に前記電磁切換弁を作動制御して前記圧縮機の冷媒吐出口を前記バイパス流路に連通させる制御手段とを備えている。しかも、前記冷媒用熱交換手段は、前記バイパス流路の途中に直列に設けられた冷媒凝縮用の第1,第2の熱交換手段と、前記第1,第2の熱交換手段で凝縮された冷媒を膨張させる第2の膨張手段又は減圧手段と、前記第2の熱交換手段で凝縮された冷媒から吸熱して前記第2の膨張手段又は減圧手段で膨張させられた冷媒を蒸発させる第3の熱交換手段を、備えている。また、前記水用熱交換手段は前記ヒーターコアへ冷却水を流す水用熱交換器を備え、前記第1の熱交換手段は前記水用熱交換器内の冷却水を加熱可能に設けられている。
【発明の効果】
【0015】
この発明の車両用空調装置によれば、車室内の暖房を行う際に、簡単な構成で冷却水の温度を急速に上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る車両用空調装置の概略配管図である。
【図2】図1の車両用空調装置のうち車室内に配設される空調ユニットの概略説明図である。
【図3】図1の車両用空調装置の制御回路図である。
【図4】図1の車両用空調装置の変形例を示す概略配管図である。
【図5】図1の車両用空調装置の他の変形例を示す概略は移管図である。
【図6】車両用空調装置の冷凍サイクルの説明図である。
【図7】この発明の車両用空調装置の冷凍サイクルの説明図である。
【図8】図1の車両用空調装置の他の変形例を示す概略配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[構成]
図1において、1は車両(自動車)の車室、2は車両のエンジンルーム、3はエンジンルーム2内に配設された水冷式のエンジンである。このエンジン3には、エンジン冷却のためのエンジン冷却水を流す周知のウォータージャケット(図示せず)が設けられている。
【0018】
また、車室1の前部に設けられたインストルメントパネル(図示せず)内には、車両用空調装置(車両用空調システム)4の空調ユニット5が配設されている。
<空調ユニット5>
この空調ユニット5は、図2に示したように、ブロワユニット6,クーラユニット7,ヒーターユニット8を備えている。 尚、空調ユニット5のクーラユニット7,ヒーターユニット8内には、ブロワユニット6から送風される空気が流れる一連の風路5aが形成されている。
【0019】
ブロワユニット6は、ブロワ(送風ファン)6aを有すると共に、インテークユニット6bを有する。このインテークユニット6bは、外気取入口6b1と内気取入口6b2を有すると共に、外気取入口6b1と内気取入口6b2の開閉用のインテークドア6cを有する。このインテークドア6cは、モータ等のドア駆動装置(ドア駆動手段)6c1により駆動(回動)させられて、外気取入口6b1と内気取入口6b2の開閉又は開度を調整し、車室外の外気と車室内の内気との流量吸込量を調整可能に設けられている。
【0020】
そして、この外気取入口6b1から取り入れられた外気または内気取入口6b2から取り入れられた内気、或いは外気取入口6b1及び内気取入口6b2から取り入れられた外気と内気の混合された空気は、ブロワ(送風ファン)6aによりクーラユニット7へ送風されるようになっている。
【0021】
このクーラユニット7には冷房用冷媒が循環するエバポレータ(空気冷却用の熱交換器)7aが設けられている。そして、ブロワユニット6により送風される取入空気は、エバポレータ7aの図示しないエア通路を通過する際に、エバポレータ7aが熱交換により冷却することができるようになっている。そして、このエバポレータ7aを通過した空気はヒーターユニット8へ送られるようになっている。
【0022】
尚、このエバポレータ7aの上流側(即ちブロワ6aとエバポレータ7aとの間)には、風路5aの下部を開閉する風路調整ドア7bが設けられている。この風路調整ドア7bはモータ等の駆動装置(駆動手段)7b1により駆動(回動)させられるようになっている。
【0023】
ヒーターユニット8内には、エンジンの冷却水が循環するヒーターコア(空気加熱用の熱交換器)8aが設けられている。また、ヒーターコア8aの側部(図では下部)には当該ヒーターコアコアaを迂回するバイパス風路8bが設けられ、またヒーターコア8aの前面にはミックスドア8cが設けられている。そして、このミックスドア8cは、モータ等のドア駆動装置(ドア駆動手段)8c1により駆動(回動)されられて、ヒーターコア8aの上流側の図示しないエア通路(エア風路)の開度を調節することにより、ヒーターコア8aのエア通路内を流れる空気の量とバイパス風路8bを流れる空気の量との比率を調節できるようになっている。
【0024】
このヒーターコア8aの下流には混合室8dが形成され、この混合室8dには室内のデフロストグリル、ベントグリル及びフットグリルへそれぞれ連通する吹出口8eが設けられている。
<冷媒循環回路>
また、図1に示すように車両用空調装置4は、冷媒循環回路9と、暖房用冷却水循環回路10を有する。この冷媒循環回路9は、冷房用の冷凍サイクル(即ち冷房サイクル)を行わせる冷房冷媒循環回路(第1の冷媒循環回路)9aと、冷却水加熱用の冷凍サイクルを行わせるバイパス冷媒循環回路(第2の冷媒循環回路、冷却水加熱冷媒循環回路)9bを有する。
(冷房冷媒循環回路9a)
この冷房冷媒循環回路9aは、エンジン駆動される圧縮機11と、一端が圧縮機11の図示しない冷媒出口(冷媒出口側)に接続された第1の冷房冷媒配管11aと、この第1の冷房冷媒配管11aの他端に接続され且つ車室1外に配設された冷媒凝縮用のコンデンサ12を有する。
【0025】
また、冷房冷媒循環回路9aは、冷媒入口(図示せず)がコンデンサ12の冷媒出口(図示せず)に接続されたリキッドタンク13と、一端がリキッドタンク13の冷媒出口(図示せず)に接続された第2の冷房冷媒配管13aと、この第2の冷房冷媒配管13aの他端に冷媒入口(図示せず)が接続された第1の膨張手段又は減圧手段14と、この第1の膨張手段又は減圧手段14の冷媒出口(図示せず)が接続された上述の空気冷却用のエバポレータ7aを有する。この冷房冷媒循環回路に適用される膨張手段又は減圧手段とは、例えば膨張弁や冷房冷媒配管11aの流路を絞るオリフィスである。
【0026】
この第1の膨張手段又は減圧手段14は、エバポレータ7aの冷媒出口(図示せず)から吐出(流出)する冷媒温度及び冷媒圧力を感知(検知)して、エバポレータ7aの冷媒入口(図示せず)に流入する液体冷媒の流量を負荷にあった冷媒流量になるように調整し、即ちエバポレータ7aの冷媒出口(図示せず)から吐出される(流出する)冷媒が設定した目標の(所定の)温度・圧力の過熱状態(過熱度)になるように、エバポレータ7aの冷媒入口(図示せず)に流入する液体冷媒の流量を調整するようになっている。この構成には、周知の構成を採用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0027】
更に、冷房冷媒循環回路9aは、一端がエバポレータ7aの冷媒出口(図示せず)に接続された第3の冷房冷媒配管7a1と、第3の冷房冷媒配管7a1の他端に冷媒入口(図示せず)が接続された第1の一方向弁(第1のチェックバルブ)15と、この第1の一方向弁15の冷媒出口(図示せず)に一端が接続された第4の冷房冷媒配管15aと、この第4の冷媒配管15aと圧縮機11の冷媒入口(図示せず)を接続する気液分離用のアキュームレータ16等を備えている。
【0028】
そして、圧縮機11から吐出される冷媒は、第1の冷房冷媒配管11a,コンデンサ12,リキッドタンク13,第2の冷房冷媒配管13a,第1の膨張手段又は減圧手段14,エバポレータ7a,第3の冷房冷媒配管7a1,第1の一方向弁15,第4の冷房冷媒配管15a,アキュームレータ16の順に流れた後に、圧縮機11に戻されて循環する第1の冷凍サイクルを繰り返すことができるようになっている。
【0029】
この際、圧縮機11は冷媒ガスを圧縮して高温高圧の圧縮冷媒(圧縮冷媒ガス)にし、コンデンサ12は圧縮冷媒の熱を外気に放熱して圧縮冷媒を冷却することにより凝縮させて液体冷媒(凝縮冷媒、冷媒液)にし、リキッドタンク13は液体冷媒を貯留し、第1の膨張手段又は減圧手段14はリキッドタンク13からの高圧の液体冷媒を膨張させて低圧の液体冷媒(凝縮冷媒)にするようになっている。この第1の膨張手段又は減圧手段14からの液体冷媒は、エバポレータ7a内に供給されて風路5a内の空気の熱を吸熱し(奪い)、風路5a内の空気を冷却する際に、蒸発させられて冷媒ガスになる。この冷媒ガスは、第3の冷房冷媒配管7a1,第1の一方向弁15,第4の冷房冷媒配管15a及びアキュームレータ16を介して圧縮機11に戻される。
(冷却水加熱用のバイパス冷媒循環回路9b)
このバイパス冷媒循環回路9bは、圧縮機11と、第1の冷房冷媒配管11aの途中に介装された三方電磁切換弁(電磁弁)17と、一端が三方電磁切換弁17に接続され第1バイパス冷媒配管17aと、車室1外に配設され且つ第1バイパス冷媒配管17aの他端に冷媒入口(図示せず)が接続された冷媒凝縮用(冷却水加熱用)の第一の外部熱交換器18を有する。また、バイパス冷媒循環回路9bは、一端が第1の外部熱交換器18の冷媒出口(図示せず)に接続された第2バイパス冷媒配管18bと、車室1外に配設され且つ第2バイパス冷媒配管18bの他端に接続された第2の外部熱交換器18aと、この第2の外部熱交換器18aの冷媒出口(図示せず)に接続された車室1外の第2の膨張手段又は減圧手段19を有する。
【0030】
また、バイパス冷媒循環回路9bは、第2の膨張手段又は減圧手段19で膨張させられた冷媒が供給される冷媒蒸発用の第3の外部熱交換器(第2のエバポレータ即ち外部蒸発器)20と、一端が第3の外部熱交換器20の冷媒出口(図示せず)に接続された第3バイパス冷媒配管20aと、この第3バイパス冷媒配管20aの他端と第1の一方向弁15の冷媒出口(図示せず)に接続した第4の冷房冷媒配管15aの途中とを接続する第2の一方向弁21と、アキュームレータ16を有する。しかも、第2の外部熱交換器18aと第3の外部熱交換器20は一体に設けられている。
【0031】
そして、圧縮機11から吐出される冷媒は、三方電磁切換弁17,第1バイパス冷媒配管17a,第1の外部熱交換器18,第2バイパス冷媒配管18b,第2の外部熱交換器18a,第2の膨張手段又は減圧手段19,第3の外部熱交換器20,第3バイパス冷媒配管20a,第2の一方向弁21,アキュームレータ16の順に流れた後に、圧縮機11に戻されて循環する第2の冷凍サイクルを繰り返すことができるようになっている。
【0032】
尚、上述した第1の外部熱交換器18,第2の外部熱交換器18a,第3の外部熱交換器20等は冷媒用熱交換手段23を構成している。また、第1〜第3バイパス冷媒配管17a,18b,20a等はコンデンサ12及びエバポレータ7aと並列に圧縮機11に接続されたバイパス流路を構成している。従って、第1の外部熱交換器18,第2の外部熱交換器18a,第3の外部熱交換器20等を備える冷媒用熱交換手段23は、バイパス流路に介装されている。
<暖房用冷却水循環回路10>
この暖房用冷却水循環回路10は、エンジン3のウォータージャケット(図示せず)内の流路と、図示しないウォータポンプによりウォータージャケット(図示せず)の冷却水出口(図示せず)から吐出される冷却水をヒーターコア8aに流した後にウォータージャケット内の流路に戻す冷却水循環流路24を有する。
【0033】
この冷却水循環流路24は、エンジン3のウォータージャケット(図示せず)の冷却水出口(図示せず)とヒーターコア8aの冷却水入口(図示せず)を接続する(連通させている)第1の冷却水流路24aと、ヒーターコア8aの冷却水入口(図示せず)を接続する第1の冷却水出口(図示せず)とエンジン3のウォータージャケット(図示せず)の冷却水入口(図示せず)とを接続する(連通させている)第2の冷却水流路24bを有する。しかも、冷却水循環流路24の途中には水用熱交換手段25が介装されている。
【0034】
この水用熱交換手段25は、第1の冷却水流路24aの途中に設けられた第1の水用熱交換器26と、第2の冷却水流路24bの途中に設けられた第2の水用熱交換器27を有する。尚、第1の水用熱交換器26内には第1の冷却水流路24aの一部が形成され、第2の水用熱交換器27内には第2の冷却水流路24bの一部が形成される。
【0035】
そして、第1,第2の水用熱交換器26,27間には第1の外部熱交換器18が介装されている。この第1,第2の水用熱交換器26,27間には第1の外部熱交換器18等は、冷却水加熱用熱交換手段28を構成している。
【0036】
このように第1の水用熱交換器26は冷媒用の第1の外部熱交換器18と一体に設けられて、この第1の水用熱交換器26と第1の外部熱交換器18との間で熱の授受を行うことができるようになっている。この熱の授受により、圧縮機11から第1の外部熱交換器18に供給される高温高圧の圧縮冷媒の熱で第1の水用熱交換器26内のエンジン冷却水を加熱すると共に、この加熱によりガス状の高圧冷媒は第1の外部熱交換器18内で吸熱されて凝縮し液体冷媒となる。
【0037】
また、第2の水用熱交換器27も第1の外部熱交換器18と一体に設けられていて、この第2の水用熱交換器27と第1の外部熱交換器18との間で熱の授受を行うことができるようになっている。この熱の授受により、第1の外部熱交換器18からの液体冷媒は、ヒーターコア8aからエンジン3のウォータージャケット(図示せず)側に流れるエンジン冷却水を加熱するようになっている。
<コントロールユニット(制御手段)>
上述した空調ユニット5の図示しないブロワ,圧縮機11及び三方電磁切換弁17等は、車両各部を制御するオートアンプ等の図3のコントロールユニット(演算制御回路等の制御手段)29により動作制御させられるようになっている。
【0038】
また、第1の冷却水流路24aの途中には、冷却水温度を検出して検出信号を水温信号(温度信号)として出力する図示しない信号通信システムの水温検出センサ(水温検出手段)30が設けられている。この水温検出センサ30からの検出信号はコントロールユニット29に入力されるようになっている。更に、コントロールユニット29には、冷房スイッチ31からの操作信号(ON・OFF信号)及び暖房スイッチ32からの操作信号(ON・OFF信号)が入力されるようになっている。
【0039】
尚、水温検出センサ30はエンジンのウォータージャケット、又は冷却水循環流路24の少なくとも一方に設け、信号通信システムを介してコントロールユニット29に入力する。
【0040】
更に暖房スイッチ32はコントロールユニット29により自動的に,あるいは乗員の手動操作のいずれでも良い。
[作用]
次に、このような構成の車両用空調装置の作用を説明する。
(1).通常の冷房運転
エンジン3の始動後に冷房スイッチ31からのON信号がコントロールユニット29に入力されると、コントロールユニット29は通常の冷房運転の制御を開始する。
【0041】
この際、コントロールユニット29は、三方電磁切換弁17を作動制御して、この三方電磁切換弁17により、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)と第1バイパス冷媒配管17aとの連通を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を連通させる。
【0042】
この後、コントロールユニット29は、ヒーターユニット8のドア駆動装置(ドア駆動手段)8c1を作動制御して、ミックスドア8cによりヒーターコア8aのエア通路(図示せず)の上流側を閉成すると共に、インテークユニット6bのドア駆動手段6c1を作動制御して、インテークユニット6bの外気取入口6b1を閉成すると共に内気取入口6b2を開かせる。
【0043】
これに伴い、コントロールユニット29は、ブロワ6aを作動させて内気取入口6b2から車室1内の空気を吸い込ませる。この吸い込まれた空気は、風路5aを流れてエバポレータ7aの図示しないエア通路(エア風路)内を流れて通過した後、ヒーターユニット8のバイパス風路8b,混合室8dを介して吹出口8eから車室1内に吹き出される。
【0044】
一方、コントロールユニット29は、圧縮機11を作動制御してガス状の冷媒(冷媒ガス)の圧縮を開始し、高温高圧の圧縮冷媒を第1の冷房冷媒配管11aに吐出する。この圧縮冷媒は、三方電磁切換弁17を介してコンデンサ12に供給されて、コンデンサ12で冷却され、凝縮し液体冷媒(冷媒液)となる。この液体冷媒は、リキッドタンク13に貯留された後、第2の冷房冷媒配管13aを介して第1の膨張手段又は減圧手段14に供給されて膨張(減圧)される。
【0045】
この減圧された液体冷媒は、車室1内のエバポレータ7aに供給されて、ブロワ6aから送風され且つエバポレータ7aの図示しないエア通路を流れる車室1の空気の熱を吸収し、空気の温度を低下させる。この温度が低下した空気は上述したように吹出口8eから車室1内に吹き出されて、車室1内を冷房する。
【0046】
この際、吸熱により第1の膨張手段又は減圧手段14からの液体冷媒(冷媒液)は蒸発させられてガス状の冷媒(冷媒ガス)となり、この冷媒(冷媒ガス)は第3の冷房配管7a1,第1の一方向弁15,第4の冷房冷媒配管15a,アキュームレータ16を介して圧縮機11に戻されて循環し、圧縮機11で圧縮される。
(2).外気温度が低い場合の暖房運転
また、車両の図示しないイグニッションスイッチをONさせて、エンジン3を始動させると、エンジン3のウォータージャケット(図示せず)のエンジン冷却水の水温が水温検出センサ30で検出され、この水温検出センサ30から温度検出信号が出力され、この温度検出信号がコントロールユニット29に入力される。
【0047】
この状態で、暖房スイッチ32をONさせて、このON信号を車両用空調装置4の暖房運転の指令としてコントロールユニット29に入力すると、コントロールユニット29は水温検出センサ30の温度検出信号からエンジン冷却水の温度が車室1内の暖房に必要な温度(所定温度)に達しているか否かを判断する。
【0048】
そして、コントロールユニット29は、冬期等の外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に、エンジン冷却水の温度(水温)が車室1内の暖房に必要な温度(所定温度)に達していないと判断すると、三方電磁切換弁17を作動制御する。
【0049】
この際、コントロールユニット29は、三方電磁切換弁17により、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を遮断すると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを連通させる。この状態では、圧縮機11を作動させても、冷媒がコンデンサ12,リキッドタンク13,第1の膨張手段又は減圧手段14,エバポレータ7a等を流れることはない。
【0050】
この後、コントロールユニット29は、ヒーターユニット8のドア駆動装置8c1を作動制御して、ミックスドア8cによりヒーターコア8aのエア通路(図示せず)の上流側を開くと共に、インテークユニット6bのドア駆動手段6c1を作動制御して、インテークユニット6bの外気取入口6b1を閉成すると共に内気取入口6b2を開かせる。
【0051】
この状態で、コントロールユニット29は、ブロワ6aを作動させて内気取入口6b2から車室1内の空気を吸い込ませる。この吸い込まれた空気は、風路5aを流れてエバポレータ7aの図示しないエア通路(エア風路)内を流れて通過した後、ヒータユニット8のエア通路(図示せず),混合室8dを介して吹出口8eから車室1内に吹き出される。この状態で、圧縮機11を作動させても、エバポレータ7aには上述したように冷媒が供給されていないので、ブロワ6aで送風される空気がエバポレータ7aのエア通路(図示せず)内を通過しても、空気がエバポレータ7aで冷却されることはない。
【0052】
一方、コントロールユニット29は、圧縮機11を作動させて冷媒ガスを圧縮させ、高温高圧の圧縮冷媒を第1の冷房冷媒配管11aに吐出させる。この圧縮冷媒は、三方電磁切換弁17,第1バイパス冷媒配管17a,第1の外部熱交換器18,第2バイパス冷媒配管18b,第2の外部熱交換器18a,第2の膨張手段又は減圧手段19,第3の外部熱交換器20,第3バイパス冷媒配管20a,第2の一方向弁21,アキュームレータ16等の順に流れて圧縮機11に戻され循環する。
【0053】
この際、圧縮冷媒は、第1の外部熱交換器18で放熱され凝縮されて高温高圧の液体冷媒になった後、冷媒用熱交換手段23の第2の外部熱交換器18a,減圧手段19.第3の外部熱交換器20の順に流れて、第3の外部熱交換器20から第3バイパス冷媒配管20aに流出させられる。
【0054】
これに伴い、第2の外部熱交換器18aに流入した液体冷媒の熱は、第3の外部熱交換器20内の冷媒に吸熱される。また、この吸熱された液体冷媒は、第2の外部熱交換器18aから減圧手段19に供給される。
【0055】
このとき、この液体冷媒は、第2の膨張手段又は減圧手段19で膨張・減圧させられて第3の外部熱交換器20内に流入し、第3の外部熱交換器20内で蒸発させられる。この蒸発する冷媒は、上述したように第2の外部熱交換器18aからの熱を第3の外部熱交換器20内で吸収して蒸発させられて冷媒ガスとなる。このようにして蒸発させられた冷媒ガスは、第3バイパス冷媒配管20a,第1の一方向弁15,アキュームレータ16を介して圧縮機11に戻される。
【0056】
また、エンジン3(図示しない)のウォータージャケットからエンジン冷却水は、第1の水用熱交換器26を介してヒーターコア8a内に流入した後、ヒーターコア8aから流出して第2の水用熱交換器27を介してエンジン3のウォータージャケット(図示せず)に戻されて循環する。
【0057】
これに伴い、圧縮冷媒は、第1の外部熱交換器18を流れる際に、第1の外部熱交換器18と第1の水用熱交換器26との間で熱の授受を行い、第1の水用熱交換器26内をヒーターコア8a側に流れるエンジン冷却水を加熱すると共に、第1の外部熱交換器18と第2の水用熱交換器27との間で熱の授受を行い、ヒーターコア8aから流出して第2の水用熱交換器27をウォータージャケット(図示せず)側に流れるエンジン冷却水を加熱する。
【0058】
この第1の外部熱交換器18及び第1の水用熱交換器26で加熱されたエンジン冷却水は、ヒーターコア8aに供給されて、ヒーターコア8aのエア通路(図示せず)を流れる空気を加熱して暖める。そして、この暖められた空気は、吹出口8eから車室1内に吹き出されて車室1内を暖めることになる。
【0059】
以上の作用により、圧縮機(コンプレッサ)11から吐出した高圧ガス冷媒による凝縮熱を18で該冷却水へ放熱し、且つ23で自身の低圧冷媒の蒸発熱と相殺することで圧力の高低差を設け、理想的な冷凍サイクルを形成する、即ち、圧縮機(コンプレッサ)動力分のみの熱量が該冷却水を放熱する。
(変形例)
以上説明した実施例では、エンジン3の図示しないウォータージャケットからヒーターコア8aに供給されるエンジン冷却水を流す第1の水用熱交換器26を設けると共に、ヒーターコア8aからエンジン3の図示しないウォータージャケットに戻されるエンジン冷却水を流す第2の水用熱交換器27を設けて、冷媒凝縮用の第2の外部熱交換器を第1,第2の水用熱交換器26,27間に介装した例を示したが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0060】
例えば、図1の第2の水用熱交換器27を省略して、図4のように第1の外部熱交換器18で水用熱交換器26内のエンジン冷却水を加熱可能に設けても良い。この場合には
、用熱交換器26および第1の外部熱交換器18により冷却水加熱用熱交換手段28aが構成される。
【0061】
また、図1の水用熱交換器26を省略して、図5のように第1の外部熱交換器18で水用熱交換器27内のエンジン冷却水を加熱可能に設けても良い。この場合には、水用熱交換器27および第1の外部熱交換器18により冷却水加熱用熱交換手段28bが構成される。
【0062】
このように第1,第2の水用熱交換器26,27の一方を省略することができる。
(その他1)
以上説明したように、この発明の実施の形態の車両用空調装置は、冷媒を、エンジン駆動される圧縮機11,車室1外の冷媒凝縮用のコンデンサ12,第1の膨張手段又は減圧手段14,車室内の空気冷却及び液体冷媒蒸発用のエバポレータ7aの順に循環させる冷房用冷媒循環回路(9)と、エンジン冷却水をエンジンのウォータージャケットと車室1内のヒーターコアとの間で循環させる暖房用冷却水循環回路(10)を有する。
【0063】
また、車両用空調装置は、前記コンデンサ12及び前記エバポレータ7aと並列に前記圧縮機11に接続されたバイパス流路と、前記圧縮機11の冷媒吐出口を前記コンデンサ12と前記バイパス流路とのいずれかに切り換え連通させる電磁切換弁(三方電磁切換弁17)を有する。
【0064】
更に、車両用空調装置は、前記ウォータージャケットと前記ヒーターコア8aとの間に流路途中に介装された水用熱交換手段25及び前記バイパス流路の途中に設けられて前記水用熱交換手段25との間で熱の授受を行う冷媒用熱交換手段を有する冷却水加熱用熱交換手段28と、前記エンジン冷却水の温度を検出して温度信号を出力する水温検出センサ30を備えている。
【0065】
更に、車両用空調装置は、前記エンジン駆動時の前記エンジン冷却水の温度が所定値以下のときに前記冷房回路(冷房冷媒循環回路9a)の圧縮機11を作動させると共に前記電磁切換弁(三方電磁切換弁17)を作動制御して前記圧縮機11の冷媒吐出口を前記バイパス流路に連通させる制御手段(コントロールユニット29)を有する。
【0066】
また、前記冷媒用熱交換手段は、前記バイパス流路の途中に直列に設けられた冷媒凝縮用の第1,第2の外部熱交換器18,18aと、前記第1,第2の外部熱交換器18,18aで凝縮された冷媒を膨張させる第2の膨張手段又は減圧手段19と、前記第2の膨張手段又は減圧手段19で膨張させられた液体冷媒から吸熱して液体冷媒を蒸発させる第3の外部熱交換器20を備えている。
【0067】
また、前記水用熱交換手段は前記ウォータージャケットと前記ヒーターコア8aとの間を流れるエンジン冷却水を流す水用熱交換器(第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の少なくとも一方、又は第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の両方)を備え、前記第1の外部熱交換器18は前記水用熱交換器(第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の少なくとも一方、又は第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の両方)内のエンジン冷却水を加熱可能に設けられていると共に、前記第2,第3の外部熱交換器18a,20は互いに熱交換可能に重ね合わせて一体に設けられている。
【0068】
この構成によれば、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期にエンジン冷却水を用いて車室内の暖房を行う際に、エンジン冷却水の温度を急速に上昇させることができる。即ち、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に、冷媒用の第2の外部熱交換器の放熱を利用してエンジン冷却水を加熱して、エンジン冷却水の温度を急速に上昇させることができる。
(その他2)
また、この発明の実施の形態の車両用空調装置において、前記水用熱交換器26は前記ウォータージャケットから前記ヒーターコア8aにエンジン冷却水を流す流路途中に設けられている。
【0069】
この構成によれば、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期にエンジン冷却水を用いて車室内の暖房を行う際に、ウォータージャケットからヒーターコア8aに流れるエンジン冷却水の温度を急速に上昇させることができる。即ち、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に、冷媒用の第1の外部熱交換器18の放熱を利用してウォータージャケットからヒーターコア8aに流れるエンジン冷却水を加熱して、エンジン冷却水の温度を急速に上昇させることができる。
(その他3)
また、この発明の実施の形態の車両用空調装置において、前記水用熱交換器27は前記ヒーターコア8aから前記ウォータージャケットにエンジン冷却水を流す流路途中に設けられている。
【0070】
この構成によれば、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期にエンジン冷却水を用いて車室内の暖房を行う際に、ヒーターコア8aからウォータージャケットに戻されるエンジン冷却水の温度を急速に上昇させることができる。即ち、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に、冷媒用の第1の外部熱交換器18の放熱を利用してヒーターコア8aからウォータージャケットに戻されるエンジン冷却水を加熱して、エンジン冷却水の温度を急速に上昇させることができる。
(その他4)
また、この発明の実施の形態の車両用空調装置において、前記水用熱交換手段は、前記ウォータージャケットから前記ヒーターコアにエンジン冷却水を流す流路途中に設けられた第1の水用熱交換器26と、前記ヒーターコアから前記ウォータージャケットにエンジン冷却水を流す流路途中に設けられた第2の水用熱交換器27を備えると共に、前記第1の外部熱交換器18は前記第1,第2の水用熱交換器26,27間に介装されている。
【0071】
この構成によれば、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期にエンジン冷却水を用いて車室内の暖房を行う際に、ウォータージャケットからヒーターコア8aに流れるエンジン冷却水の温度を急速に上昇させることができる。即ち、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に、冷媒用の第1の外部熱交換器18の放熱を利用してウォータージャケットからヒーターコア8aに流れるエンジン冷却水を加熱して、エンジン冷却水の温度を急速に上昇させることができる。
【0072】
しかも、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期にエンジン冷却水を用いて車室内の暖房を行う際に、ヒーターコア8aからウォータージャケットに戻されるエンジン冷却水の温度を急速に上昇させることができる。即ち、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に、冷媒用の第1の外部熱交換器18の放熱を利用してヒーターコア8aからウォータージャケットに戻されるエンジン冷却水を加熱して、エンジン冷却水の温度を上昇させることができる。これにより、車室内への空気を暖めるためにヒーターコア8a内でエンジン冷却水の水温が低下させられても、このエンジン冷却水がウォータージャケットに戻される際に第1の外部熱交換器18で加熱されるので、エンジンの暖機運転に支障を来すのを防止できる。
【0073】
また、第1,第2の水用熱交換器26,27と第1の外部熱交換器18は一体に設けられているので、第1,第2の水用熱交換器26,27と第1の外部熱交換器18等からなる冷却水加熱用熱交換手段28を小型化できると共に、冷却水加熱用熱交換手段28の配設するスペースが小さくても良い。
【0074】
更に、この発明の実施の形態において、アキュームレータ16は第1の一方向弁15及び第2の一方向弁21の下流側へ配置した例を示した。
【0075】
このようにアキュームレータ16は第1の一方向弁15及び第2の一方向弁21の下流側へ配置した理由は、暖房時に必要な冷媒量を確保する為である。
【0076】
即ち、低外気温時には、本文中のコンデンサ12やエバポレータ7aに冷媒が滞留する(長期放置や低外気温によることの冷媒移動の為)。そこで、いざ暖房運転をしようとしても、必要冷媒が冷房ライン(コンデンサ12やエバポレータ7a)に滞留していると充分な暖房性能が発揮できない。よって初期起動時には、冷媒回収モードにして冷媒回収を行い、暖房に必要な冷媒量をアキュームレータに確保すると良い。
【0077】
ここで、冷媒回収モードとは、通常の冷房サイクル運転を行うモードである。このモードは冷房ラインの冷媒を移動させる事が目的で、コンデンサ12やエバポレータ7aに滞留した冷媒を冷房サイクル運転を行う事で冷媒を移動させてアキュームレータに回収する。
【0078】
よって通常の冷房サイクルは、リキッドタンク+膨張弁システムになっており、本来アキュームレータはただの圧損になってしまう為不要であるが、本システムにおいては、あえてこの位置に設けている。
<アキュームレータ配置について詳細説明>
ところで、車両用空調装置の冷媒循環システムでは、冷房時の冷凍サイクルにおいて、冷ガスを圧縮機(コンプレッサ)で圧縮して室外熱交換器(高圧側熱交換器)に供給すると共に室外熱交換器に室外送風ファンで外気を送風して、室外熱交換器内に供給される冷媒を冷却して液化させようにしている。しかも、この冷媒循環システムでは、冷房時に、室外熱交換器で液化させられた冷媒を膨張弁を介して室内用熱交換器(低圧側熱交換器)に供給すると共に、車室内の空気を室内送風ファンで室内用熱交換器に給して、室内の空気を室内用熱交換器で冷却するようにしている。このような通常の冷房時の冷凍サイクルの高圧と低圧の圧力差は図7に示したようになる。
【0079】
一方、自動車等の車両においては、エンジン稼働時に冷却液(エンジン冷却水)によりエンジンを冷却するようにしている。この冷却液は、冬季の暖房性能を補うために、車室内の空調装置のヒーターコアに供給して、車室内の暖房に利用されている。また、自動車には、このような冷却液を用いた暖房装置に加えて、車両用空調装置の冷媒循環システムを利用して、この冷媒循環システムをヒートポンプ運転するようにした暖房装置も考えられている。
【0080】
このヒートポンプ運転を加えた暖房装置の暖房時の冷凍サイクルでは、車両用空調装置の冷房に用いる冷媒循環システムの冷媒を熱源とするために、室内用熱交換器内には低圧低温の冷媒が残っている。このため、ヒートポンプ運転を加えた暖房装置において、送風ファンを作動させると、車室内を冷房してしまう。これを防止するため暖房時の冷凍サイクルでは室内送風ファンを低速で作動させるようにする。
【0081】
さらに、車両用空調装置では、室外熱交換器に高圧高温の冷媒が残っているため、この冷媒の熱を外気に放熱すると、暖房用熱量が減少するため、暖房時の冷凍サイクルでは室外送風ファンを停止させるようにする。
【0082】
このような暖房時の冷凍サイクルでは、高圧側熱交換器と低圧側熱交換器のそれぞれの熱交換をほとんどおこなわないことになる。このような暖房時の冷凍サイクルの高圧と低圧の圧力差は図7に示したようになる。
【0083】
従って、上述した図6の通常の冷房時の冷凍サイクルの高圧と低圧の圧力差と、図7の暖房時の冷凍サイクルの高圧と低圧の圧力差とを比較すると、暖房時の冷凍サイクルの高圧と低圧の圧力差は冷房時の冷凍サイクルの高圧と低圧の圧力差よりも十分小さくなり、暖房時の冷凍サイクルの圧縮機(コンプレッサ)稼働力も小さくなる。
【0084】
なお、この図6,図7の横軸は単位質量あたりの熱量であり、図6,図7のエンタルピーを用いると、実際の熱交換器の交換熱量は下記式で計算できる。
【0085】
熱交換器の交換熱量=エンタルピー×質量流量
このような冷凍サイクルを有する冷房システムでは、内部の体積の大きい室外熱交換器や室内熱交換器内に多くの冷媒が残留しているため、圧縮機(コンプレッサ)動力が小さくなると共に、高圧側圧力も高圧側温度とも低いままとなる。このため、単に暖房時の冷凍サイクル(ヒートポンプ運転)において送風ファンを停止させる構成としたのみでは、車両用空調装置の冷媒循環システムを高温源として使用するのが難しい。
【0086】
また、車両用空調装置の冷媒循環システムは、通常、冷凍サイクル(冷房サイクル)で外気に放熱していた高圧・高温の冷媒を室内の暖房用熱源とする内容である。このため、エンジン始動時に冷凍サイクルを作動させると、冷媒の高温源により車室内を加熱し、その空調風が内気循環時、ヒーターコアを通過することで、エンジン冷却水もわずかに加温される。
【0087】
しかし、冷凍サイクルの低圧側冷媒がエバポレータにより空調風から加熱され、その空調風は冷凍サイクルの高圧側冷媒で加熱する方式であるため、図7のような状態から図6のように、高圧側圧力が高くなるとともに、低圧側圧力が低くなって、圧縮機(コンプレッサ)稼働動力が増えるまでに長い時間がかかる。
【0088】
尚、実験によれば、外気が0℃の条件で、0.5MPaの圧力差を生じるまで、5分間以上の時間を用意し、暖房の即暖性には十分でないことが分かった。
【0089】
また、低外気温時の性能低下を抑制するためにサブコンデンサを車室内のヒーターコアから授熱可能な位置に設置することも考えられる。この場合、サブコンデンサの設置により空調装置が大型化する点や、サブコンデンサ内の冷媒に過冷却度(サブクール)がとれたり、過熱度(スーパーヒート)がとれるとサブコンデンサの通過空気温度に温度分布ができ、吹き出し空気温度を均一にするのが難しく、吹出温度制御が難しくなる。
【0090】
しかも、上述したように車両用空調装置の冷媒循環システムをヒートポンプ運転する方法では、室外熱交換器または室内熱交換器により低圧凝縮冷媒が空気から吸熱するため、外気温度、または室内温度(換言すれば低圧凝縮冷媒の蒸発温度)によっては空気中に含まれる水分が前記熱交換器に結露・着霜し、前記熱交換器の熱交換機能が阻害されることは避けられないものであり、対策が必要となる。
【0091】
しかし、これらの対策として、上述したようにアキュームレータ16を第1の一方向弁15及び第2の一方向弁21の下流側へ配置すると良い。
【0092】
このような構成により、冷凍サイクルを用いて簡単な構成でありながら、ヒートポンプ運転に見受けられる問題(外気から熱を汲み上げる為、低外気温時は吸熱が出来ずにサイクル立ち上りが遅れる)を解消できる手段=自身の熱から吸熱することにより、冷凍サイクルの高圧と低圧の冷媒の圧力差を早期に拡大させることができ、これによって高圧・高温冷媒を高温の熱源として利用できる。更に、冷却水を加熱する方法と組合わせる事で、例えばエンジンの冷却用冷却水であれば、エンジン自体を加温でき、いわゆるエンジン暖機時間を大幅に短縮化でき、これにより、暖機に大量に消費していた燃料量を大幅に軽減しつつ、この冷却水を車室内の空調用暖房に使うことで、即暖性も獲得することができるといった2次効果を期待できる。
上述した実施例では、キュームレータ16を第1の一方向弁15及び第2の一方向弁21の下流側へ配置した構成としているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0093】
例えば、図8に示したようにコンデンサ12のリキッドタンク13の下流(吐出側)に分岐する第2の冷房冷媒配管13aと冷媒回収配管100を設けて、冷媒回収配管100をアキュームレータ16の上流において第4の冷房冷媒配管15aに接続した構成とすると共に、冷媒回収配管100の途中に電磁弁101を設けた構成とすることもできる。
【0094】
また、冷媒回収配管100の接続位置は、暖房サイクル流路(暖房時に冷媒の流れる流路)上でアキュームレータ16より上流で且つ減圧弁19の下流側の間であれば、どこでも良い。ここで、アキュームレータ16より上流で且つ減圧弁19の下流側の間としては、減圧弁19と第3の外部熱交換器20との間の流路,第3バイパス冷媒配管20a,第2の一方向弁21の下流等や、アキュームレータ16がある。
【0095】
そして、冷媒回収モード時は、三方電磁切換弁17で冷房冷媒配管11aとコンデンサ12を連通させ且つ冷房冷媒配管11aと第1バイパス冷媒配管17aとの連通を遮断させる一方、電磁弁101を開弁させると共に圧縮機11を作動させることにより、コンデンサ12に残留する冷媒を吸い出してアキュームレータ16に回収する。
【0096】
この構成でも、上述した熱交換器の熱交換機能が阻害されるのを回避する対策となる。
【0097】
以上、本発明を適用した車両用空調装置について具体的な例を挙げて説明したが、車両用空調装置を構成する各部の構造や仕様等については、要求される性能や当該車両用空調装置が搭載される車種等に応じて適宜変更可能である。
・三方電磁切替弁17は、電磁力を利用した三方弁を挙げているがこれに因らず例えば差圧を利用して開閉可能な三方弁としてもよい。
・実施形態のように前記被冷却体として、車両を駆動源とするエンジンを挙げているがこれに因らず例えば電動車両を駆動源とする2次電池あるいは燃料電池あるいはその駆動用モーター及びインバーター等としてもよい。
・実施形態にある圧縮機は、エンジンを主たる駆動源とした圧縮機(コンプレッサ)であるが、その構造は外部信号により吐出容量を可変できる構造あるいは内部制御により設定された吸入圧力になるように吐出容量を可変できる構造あるいは吐出容量が固定された構造、いずれの場合でもよい。
・又、前記圧縮機(コンプレッサ)は、回転数が可変制御できる電動式圧縮機(コンプレッサ)としてもよい。
【0098】
以上説明したように、この発明の実施の形態の車両用空調装置は、冷媒を、車室1外の冷媒凝縮用のコンデンサ12,第1の膨張手段又は減圧手段14,エバポレータ7a,アキュームレータ16の順に循環させる冷房用冷媒循環回路(9)を有する。
【0099】
また、この車両用空調装置は、冷却水を車室1内のヒーターコアとの間で循環させる暖房用冷却水循環回路(10)を有する。
【0100】
この冷却水は、エンジン駆動式の車両であればエンジンのウォータージャケットに循環されるエンジン冷却水であり、モータ駆動式の車両であれば車両駆動用の電動モータのモータハウジングに設けられたウォータージャケット内のモータ冷却水である。また、冷却水は、モータ駆動式の車両の場合、電動モータに電力を供給する電源としての二次電池であっても良い。更に、冷却水は、車両の駆動又は作動時に発熱する二次電池等の車両発熱部以外の車両発熱部の冷却に利用される発熱部冷却水であっても良い。尚、車両駆動用のエンジンや電動モータ、電動モータへの電力供給源である二次電池等は、車両駆動装置ということができるし、車両動作時の発熱部ということもできる。
【0101】
また、車両用空調装置は、前記コンデンサ12及び前記エバポレータ7aと並列に接続され、前記アキュームレータ16を経由して前記圧縮機11に接続されたバイパス流路と、前記圧縮機11の冷媒吐出口と前記コンデンサ12とのいずれかに切り換え連通させる電磁切換弁(三方電磁切換弁17)を有する。
【0102】
更に、車両用空調装置は、前記ヒーターコア8aへの流路途中に介装された水用熱交換手段(水用熱交換装置)25及び前記バイパス流路の途中に設けられて前記水用熱交換手段25との間で熱の授受を行う冷媒用熱交換手段(冷媒用熱交換装置)を有する冷却水加熱用熱交換手段(冷水加熱用熱交換装置)28と、前記冷却水の温度を検出して温度信号を出力する水温検出センサ30を備えている。
【0103】
更に、車両用空調装置は、前記冷却水の温度が所定値以下のときに前記冷房回路(冷房冷媒循環回路9a)の圧縮機11を作動させると共に前記電磁切換弁(三方電磁切換弁17)を作動制御して前記圧縮機11の冷媒吐出口を前記バイパス流路に連通させる制御手段(制御装置であるコントロールユニット29)を有する。
【0104】
また、前記冷媒用熱交換手段は、前記バイパス流路の途中に直列に設けられた冷媒凝縮用の第1,第2の熱交換手段(外部熱交換器18,18a)と、前記第1,第2の熱交換手段(外部熱交換器18,18a)で凝縮された冷媒を膨張させる第2の膨張手段(第2の膨張装置)又は減圧手段(減圧装置)19と、前記第2の熱交換手段(外部熱交換器18a)で凝縮された冷媒から吸熱して前記第2の膨張手段又は減圧手段19で膨張させられた冷媒を蒸発させる第3の熱交換手段(外部熱交換器20)を備えている。
【0105】
また、前記水用熱交換手段(水用熱交換装置)25は、前記ヒーターコア8aへ冷却水を流す水用熱交換器(第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の少なくとも一方、又は第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の両方)を備えている。
【0106】
また、前記第1の熱交換手段(外部熱交換器18)は、前記水用熱交換器(第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の少なくとも一方、又は第1の水用熱交換器26と第2の水用熱交換器27の両方)内の冷却水を加熱可能に設けられている。
【0107】
この構成によれば、外気温度が低い場合における車両始動初期(エンジン車であればエンジン始動初期、電気自動車であれば車両駆動用のモータ始動初期等)に冷却水(エンジン冷却水又はモータ冷却水等その他冷却水)を用いて車室内の暖房を行う際に、冷却水の温度を急速に上昇させることができる。即ち、外気温度が低い場合における車両始動初期に、冷媒用の第2の外部熱交換器の放熱を利用して冷却水を加熱して、冷却水の温度を急速に上昇させることができる。
【0108】
即ち、冷凍サイクルを用いて簡単な構成でありながら、ヒートポンプ運転に見受けられる問題(外気から熱を汲み上げる為、低外気温時は吸熱が出来ずにサイクル立ち上りが遅れる)を解消できる手段=自身の熱から吸熱する、により、冷凍サイクルの高圧と低圧の冷媒の圧力差を早期に拡大させることができ、これによって高圧・高温冷媒を高温の熱源として利用できる。更に、冷却水を加熱する方法と組合わせる事で、例えばエンジンの冷却用冷却水であれば、エンジン自体を加温でき、いわゆるエンジン暖機時間を大幅に短縮化でき、これにより、暖機に大量に消費していた燃料量を大幅に軽減しつつ、この冷却水を車室内の空調用暖房に使うことで、即暖性も獲得することができるといった2次効果を期待できる。
【0109】
また、この発明の実施の形態の車両用空調装置において、前記水用熱交換器26は前記ヒーターコア8aに冷却水を流す流路途中に設けられている。
【0110】
この構成によれば、外気温度が低い場合における車両始動初期(エンジン車であればエンジン始動初期、電気自動車であれば車両駆動用のモータ始動初期等)に冷却水(エンジン冷却水又はモータ冷却水等その他冷却水)を用いて車室内の暖房を行う際に、ヒーターコア8aに流れる冷却水の温度を急速に上昇させることができる。即ち、外気温度が低い場合における車両始動初期に、冷媒用の第1の外部熱交換器18の放熱を利用してヒーターコア8aに流れる冷却水を加熱して、冷却水の温度を急速に上昇させることができる。
【0111】
また、この発明の実施の形態の車両用空調装置において、前記水用熱交換器27は前記ヒーターコア8aから冷却水を流す流路途中に設けられている。
【0112】
この構成によれば、外気温度が低い場合における車両始動初期(エンジン車であればエンジン始動初期、電気自動車であれば車両駆動用のモータ始動初期等)に冷却水(エンジン冷却水又はモータ冷却水等その他冷却水)を用いて車室内の暖房を行う際に、ヒーターコア8aから流出される冷却水の温度を急速に上昇させることができる。即ち、外気温度が低い場合における車両始動初期に、冷媒用の第1の外部熱交換器18の放熱を利用してヒーターコア8aから流出する冷却水を加熱して、冷却水の温度を急速に上昇させることができる。
【0113】
また、この発明の実施の形態の車両用空調装置において、前記水用熱交換手段は、前記ヒーターコアに冷却水を流す流路途中に設けられた第1の水用熱交換器26と、前記ヒーターコアから前記冷却水を流す流路途中に設けられた第2の水用熱交換器27を備えると共に、前記第1の外部熱交換器18は前記第1,第2の水用熱交換器26,27間に介装されている。
【0114】
この構成によれば、外気温度が低い場合における車両始動初期(エンジン車であればエンジン始動初期、電気自動車であれば車両駆動用のモータ始動初期等)に冷却水(エンジン冷却水又はモータ冷却水等その他冷却水)を用いて車室内の暖房を行う際に、ヒーターコア8aに流れる冷却水の温度を急速に上昇させることができる。即ち、外気温度が低い場合における車両始動初期に、冷媒用の第1の外部熱交換器18の放熱を利用してヒーターコア8aに流れる冷却水を加熱して、冷却水の温度を急速に上昇させることができる。
【0115】
しかも、外気温度が低い場合における車両始動初期に冷却水を用いて車室内の暖房を行う際に、ヒーターコア8aから流出する冷却水の温度を急速に上昇させることができる。即ち、外気温度が低い場合における車両始動初期に、冷媒用の第1の外部熱交換器18の放熱を利用してヒーターコア8aから流出するエンジン冷却水を加熱して、冷却水の温度を上昇させることができる。これにより、車室内への空気を暖めるためにヒーターコア8a内で冷却水の水温が低下させられても、この冷却水がヒーターコア8aから流出する際に第1の外部熱交換器18で加熱されるので、車両の暖機運転に支障を来すのを防止できる。
【0116】
更に、前記第2,第3の熱交換手段(外部熱交換器18a,20)は互いに熱交換可能に重ね合わせて一体に設けられている。
【0117】
この構成によれば、第2の熱交換手段(外部熱交換器18a)に流入した液体冷媒は第3の熱交手段(外部熱交換器20)内の冷媒に吸熱されることにより、第3の熱交換手段内に流入する際に蒸発させられて冷媒ガスとなり、アキュームレータ16を介して圧縮機11に戻されるので、外気温度が低い場合における車両始動初期(エンジン車であればエンジン始動初期、電気自動車であれば車両駆動用のモータ始動初期等)に冷却水(エンジン冷却水又はモータ冷却水等その他冷却水)を用いて車室内の暖房を行う際に、冷媒の循環をスムースに行うことができる。この結果、外気温度が低い場合における車両始動初期に、冷媒用の第2の外部熱交換器の放熱を利用して冷却水を加熱して、冷却水の温度を急速に上昇させることができる。
【0118】
また、前記第2,第3の熱交換手段は、前記高圧冷媒と前記低圧冷媒間で直接、高圧冷媒と低圧冷媒を仕切る隔壁を介して熱交換し、熱交換量は高圧側と低圧側が等しくなっている。
【0119】
更に、前記圧縮機(コンプレッサ)から吐出した高圧ガス冷媒による凝縮熱を第1の熱交換手段で該冷却水へ放熱し、且つ第2の熱交換手段で自身の低圧冷媒の蒸発熱と相殺することで圧力の高低差を設け、理想的な冷凍サイクルを形成することができる。即ち、圧縮機(コンプレッサ)動力分のみ熱量が第1の熱交換手段で放熱できる。
【0120】
また、前記切換弁は、電磁力を利用した三方電磁切替弁あるいは四方電磁切換弁とできる。
【0121】
また、前記冷却水で冷却される前記被冷却体としては車両の駆動源であるエンジンとできる。また、前記冷却水で冷却される前記被冷却体としては、電動車両を駆動源である二次電池あるいは燃料電池あるいはその駆動用モータおよびインバーターなどとすることができる。
【0122】
更に、冷却水温度を検出する水温検出センサと、外気温度を検出するAmbセンサと、それら温度が所定値以下のときに前記圧縮機を作動させるとともに、前記切換弁により、前記圧縮機(コンプレッサ)を吐出した冷媒が、前記第1の熱交換手段側へ流れるように切り換えることができる。
【0123】
また、前記第2の冷媒膨張手段はオリフィスチューブなどの固定膨張手段(固定膨張装置)とできる。
【0124】
また、前記冷却水の通路上に、車室内の暖房用に空調風を加熱するヒーターコアを設けることができる。
【0125】
更に、前記圧縮機(コンプレッサ)は、エンジンを主たる駆動源とし、外部信号により、その1回転あたりの吐出容量を可変可能な構造を有する構成とできる。
【0126】
また、前記圧縮機(コンプレッサ)の吐出冷媒ガスの圧力を検出する圧力センサを有し、その圧力を検知することで、ある所定の圧力を維持できるように前記圧縮機(コンプレッサ)の吐出容量を調整することができる。
【0127】
また、前記圧縮機(コンプレッサ)は、回転数を可変な電動圧縮機(コンプレッサ)であり、前記圧縮機(コンプレッサ)の吐出冷媒ガスの圧力を検出する圧力センサを有し、その圧力を検知することで、ある所定の圧力を維持できるように前記回転数を調整することができる。
【符号の説明】
【0128】
1・・・車室
7a・・・エバポレータ
8a・・・ヒーターコア
9・・・冷媒循環回路
9a・・・冷房用冷媒循環回路(冷房回路)
10・・・暖房用冷却水循環回路
11・・・圧縮機
12・・・コンデンサ
14・・・第1の膨張手段又は減圧手段
17・・・三方電磁切換弁(電磁切換弁)
18・・・第1の外部熱交換器
18a・・・第2の外部熱交換器
19・・・第2の膨張手段又は減圧手段
20・・・第3の外部熱交換器
23・・・冷媒用熱交換手段
26・・・第1の水用熱交換器(水用熱交換手段)
27・・・第2の水用熱交換器(水用熱交換手段)
28,28a,28b・・・冷却水加熱用熱交換手段
29・・・コントロールユニット(制御手段)
30・・・水温検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を、圧縮機、車室外の冷媒凝縮用のコンデンサ,第1の膨張手段又は減圧手段,車室内の空気冷却及び液体冷媒蒸発用のエバポレータ、アキュームレータの順に循環させる冷房用冷媒循環回路と、
冷却水を車室内のヒーターコアとの間で循環させる暖房用冷却水循環回路と、
前記コンデンサ及び前記エバポレータと並列に接続され、前記アキュームレータを経由して前記圧縮機に接続されたバイパス流路と、
前記圧縮機の冷媒吐出口を前記コンデンサと前記バイパス流路とのいずれかに切り換え連通させる電磁切換弁と、
前記ヒーターコアへの流路途中に介装された水用熱交換手段及び前記バイパス流路の途中に設けられて前記水用熱交換手段との間で熱の授受を行う冷媒用熱交換手段を有する水加熱用熱交換手段と、
前記冷却水の温度を検出して温度信号を出力する水温検出センサと、
前記冷却水の温度が所定値以下のときに前記圧縮機を作動させると共に前記電磁切換弁を作動制御して前記圧縮機の冷媒吐出口を前記バイパス流路に連通させる制御手段とを備えると共に、
前記冷媒用熱交換手段は、
前記バイパス流路の途中に直列に設けられた冷媒凝縮用の第1,第2の熱交換手段と、
前記第1,第2の熱交換手段で凝縮された冷媒を膨張させる第2の膨張手段又は減圧手段と、
前記第2の熱交換手段で凝縮された冷媒から吸熱して前記第2の膨張手段又は減圧手段で膨張させられた冷媒を蒸発させる第3の熱交換手段を、
備える車両用空調装置であって、
前記水用熱交換手段は、前記ヒーターコアへ冷却水を流す水用熱交換器を備え、
前記第1の熱交換手段は前記水用熱交換器内の冷却水を加熱可能に設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記水用熱交換器は前記ヒーターコアに冷却水を流す流路途中に設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記水用熱交換器は前記ヒーターコアから冷却水を流す流路途中に設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両用空調装置において、
前記水用熱交換手段は、前記ヒーターコアに冷却水を流す流路途中に設けられた第1の水用熱交換器と、前記ヒーターコアから前記冷却水を流す流路途中に設けられた第2の水用熱交換器を備えると共に、前記第1の外部熱交換器は前記第1,第2の水用熱交換器間に介装されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の車両用空調装置において、
前記第2,第3の熱交換手段は互いに熱交換可能に重ね合わせて一体に設けられていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−179911(P2010−179911A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289282(P2009−289282)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】