説明

車両用空調装置

【課題】エコノミー制御を行いつつ減速燃料カット中に蓄冷を行い、かつ十分なアイドルストップ時間を確保し得る装置を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの各走行状態毎にエバポレータ(11)の目標温度を設定する手段(51)と、実際のエバポレータ温度が走行状態毎に設定される目標温度と一致するようにコンプレッサ容量を制御する手段(51)と、エバポレータ(11)により冷却される蓄冷器であって凝固点の異なる少なくとも2つの蓄冷剤を内部に独立に封入した蓄冷器(12、13)と、エンジン(4)を自動的に停止し、その後にエンジン(4)を再始動させると共に、実際のエバポレータ温度が空調要求から決まるエンジン自動停止解除温度に到達したときエンジン(4)を再始動させる手段(5)とを備え、少なくとも2つの各走行状態毎に凝固するように少なくとも2つの各蓄冷剤の凝固点を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用空調装置、特に信号待ち等の停車時(エンジン動力不要時)にアイドルストップ(エンジン自動停止)を行い、その後のアイドルストップ解除条件の成立でエンジンを再始動させる車両(ハイブリッド車等)に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アイドルストップ中にエバポレータ温度が上昇し、空調要求から決まるアイドルストップ解除温度に到達すると、アイドルストップが解除されエンジンが再始動される。そこで、アイドルストップ時間をより長く確保するための技術として、エバポレータの下流側に蓄冷器を配置し、エバポレータを通過した冷風により蓄冷器に封入している蓄冷剤を凝固させておき、アイドルストップ中にその蓄冷剤に蓄冷した冷力(溶解潜熱による蓄冷熱量)を使用することによって、エバポレータ温度の上昇を抑える技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−80933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄冷器を有する車両用空調装置がアイドルストップ車に搭載される場合においては、次の3つの要求を共に満たすことが求められている。
【0005】
要求1:減速燃料カット中に蓄冷器により蓄冷が行われること。これは、減速燃料カット中には減速エネルギーを使用してコンプレッサを駆動させることが可能であり蓄冷のための燃料消費が無く燃費の悪化がないためである。
【0006】
要求2:コンプレッサ容量を制御するに際してはエコノミー制御、つまり省燃費のため空調に最低限必要なエバポレータ温度となるようにし、これによってコンプレッサの仕事量を減らした制御が行われること。これは、車両用空調装置を作動させるにしても、コンプレッサの仕事量を減らすことでコンプレッサを駆動するエンジンの負担をそれだけ軽減でき、燃費悪化を低減する効果があるためである。
【0007】
要求3:十分なアイドルストップ時間が確保されること。アイドルストップのたびに、エバポレータ温度が空調要求から決まるアイドルストップ解除温度へと上昇してアイドルストップが解除されエンジンが再始動されるのでは、燃費向上効果が不十分となりかねない。従って、アイドルストップの開始直前までに予め蓄冷剤を凝固させ、十分に蓄冷しておくことが必要である。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、蓄冷器に1つの蓄冷剤しか封入していない。詳細には凝固点の異なる2つ以上の蓄冷剤を封入しているものの2つ以上の蓄冷剤を混ぜ合わせ、凝固点として8℃付近の1点で設定している。このように蓄冷剤の凝固点が1点であると、エバポレータの目標温度や凝固点をどのような値に設定しても、上記3つの要求を同時に成立させることができない。例えば、エバポレータの目標温度を減速燃料カット中には3℃に、エコノミー制御中には12℃に設定している場合に、蓄冷器に凝固点8℃の蓄冷剤を封入しているとすると、蓄冷剤の凝固点(8℃)と減速燃料カット中のエバポレータの目標温度(3℃)との間に温度差を確保できるために、減速燃料カット中に蓄冷剤を十分凝固させることができる。しかしながら、減速燃料カット時間が短い場合には蓄冷剤の凝固が不十分となり、十分なアイドルストップ時間を確保できない(つまり上記の要求3を満たすことができない)。
【0009】
この問題を解決するため、減速燃料カット時以外の運転時である上記のエコノミー制御時にも蓄冷剤に蓄冷させて十分な蓄冷量を得ようとすることを考えてみると、エコノミー制御時にエバポレータの目標温度を上記の12℃から蓄冷剤が凝固し得る例えば7℃以下まで下げることである。これによって、エコノミー制御時にも蓄冷剤を凝固させることができる。しかしながら、エバポレータの目標温度を12℃から7℃以下へと下げると、それだけコンプレッサ仕事が増加するので、省燃費運転とならない。エコノミー制御を行わせることができない(つまり上記の要求2を満たすことができない)。
【0010】
一方、上記のエコノミー制御時にエバポレータの目標温度を12℃に設定していても、蓄冷剤の凝固点を8℃から13℃へと変更してやれば、エコノミー制御時に省燃費運転を行いながら蓄冷剤を凝固させることができ、十分な蓄冷量も得られることとなる。しかしながら、この場合には、減速燃料カット前に蓄冷剤が凝固しきってしまうため、減速燃料カット中に蓄冷する余地が全くなくなる。すなわち、エコノミー制御中に燃料を使用した蓄冷のみとなってしまい、燃費にとって最も効果が期待できる減速燃料カット時に蓄冷剤を凝固させることができない(つまり上記の要求1を満たすことができない)。
【0011】
そこで本発明は、上記3つの要求を満たし得る、つまりエコノミー制御を行いつつ減速燃料カット中に蓄冷を行い、かつ十分なアイドルストップ時間を確保し得る装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために本発明の実施形態に対応する符号を付するが、これに限定されるものではない。
【0013】
本発明は、エンジン(4)により駆動され冷媒を吸入、圧縮、吐出するコンプレッサ(1)、このコンプレッサ(1)から吐出された高温、高圧の冷媒を凝縮させるコンデンサ(7)、このコンデンサ(7)で凝縮した冷媒を減圧する膨張弁(10)、この膨張弁(10)で低圧となった冷媒と周囲の空気との間で熱交換を行わせて冷媒を蒸発させるエバポレータ(11)を含む冷凍サイクルと、少なくとも2つの各走行状態毎に前記エバポレータ(11)の目標温度を設定する目標温度設定手段と、実際のエバポレータ温度が走行状態毎に設定される目標温度と一致するように前記コンプレッサ容量を制御するコンプレッサ容量制御手段と、前記エバポレータ(11)を流れる冷媒またはエバポレータ(11)を通過した冷風により冷却される蓄冷器であって凝固点の異なる少なくとも2つの蓄冷剤を内部に独立に封入した蓄冷器(12、13)と、エンジン自動停止許可条件が成立したときエンジン(4)を自動的に停止し、その後にエンジン自動停止解除条件が成立したときエンジン(4)を再始動させると共に、このエンジン自動停止解除条件が成立していなくても実際のエバポレータ温度が空調要求から決まるエンジン自動停止解除温度に到達したときエンジン(4)を再始動させるエンジン自動停止・再始動手段とを備え、前記少なくとも2つの各走行状態毎に凝固するように前記少なくとも2つの各蓄冷剤の凝固点を設定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エンジンにより駆動され冷媒を吸入、圧縮、吐出するコンプレッサ、このコンプレッサから吐出された高温、高圧の冷媒を凝縮させるコンデンサ、このコンデンサで凝縮した冷媒を減圧する膨張弁、この膨張弁で低圧となった冷媒と周囲の空気との間で熱交換を行わせて冷媒を蒸発させるエバポレータを含む冷凍サイクルと、少なくとも2つの各走行状態毎に前記エバポレータの目標温度を設定する目標温度設定手段と、実際のエバポレータ温度が走行状態毎に設定される目標温度と一致するようにコンプレッサ容量を制御するコンプレッサ容量制御手段と、エバポレータを流れる冷媒またはエバポレータを通過した冷風により冷却される蓄冷器であって凝固点の異なる少なくとも2つの蓄冷剤を内部に独立に封入した蓄冷器と、エンジン自動停止許可条件が成立したときエンジンを自動的に停止し、その後にエンジン自動停止解除条件が成立したときエンジンを再始動させると共に、このエンジン自動停止解除条件が成立していなくても実際のエバポレータ温度が空調要求から決まるエンジン自動停止解除温度に到達したときエンジンを再始動させるエンジン自動停止・再始動手段とを備え、少なくとも2つの各走行状態毎に凝固するように少なくとも2つの各蓄冷剤の凝固点を設定するので、少なくとも2つの各走行状態毎に設定されるエバポレータの目標温度と、少なくとも2つの各蓄冷剤の凝固点との組み合わせにより、少なくとも2つの走行状態で少なくとも2つの蓄冷剤を凝固させることができる。例えば、走行状態、蓄冷剤とも2つである場合に、減速燃料カット時を1の走行状態、エコノミー制御時を他の走行状態とすると、第1の蓄冷剤は減速燃料カット時に凝固する凝固点に、第2の蓄冷剤はエコノミー制御時に凝固する凝固点に設定する。エコノミー制御時から減速燃料カット時を経て車両が停止する場合を考えると、エコノミー制御時に第2の蓄冷剤が凝固し、減速燃料カット時に第1の蓄冷剤が凝固する。この結果、減速燃料カット時間が短く第1の蓄冷剤に十分な蓄冷が期待できない場合でも、あらかじめ蓄冷しておいた第2の蓄冷剤の冷力を使用することができ、常に十分なアイドルストップ時間を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態の車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】車両走行状態から減速して車両を停止させた場合のアクセル開度、車速、エバポレータ温度、コンプレッサの状態、2つの蓄冷剤全体の蓄冷量の変化を示すタイミングチャートである。
【図3】目標温度の設定を説明するためのフローチャートである。
【図4】アイドルストップフラグの設定を説明するためのフローチャートである。
【図5】第2実施形態の蓄冷剤を有するエバポレータを車両前面から見た概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の第1実施形態の車両用空調装置の概略構成である。図1において、車両用空調装置の冷凍サイクルRには、コンプレッサ1、コンデンサ7、膨張弁10、エバポレータ11が含まれる。冷媒を吸入、圧縮、吐出するコンプレッサ1には動力断続用の電磁クラッチ2が設けてある。コンプレッサ1には電磁クラッチ2及びベルト3を介してエンジン4の動力が伝達されるので、電磁クラッチ2への通電及び非通電をエンジンコントロールモジュール5、アンダースイッチングモジュール6により断続することでコンプレッサ1の運転が断続される。
【0017】
コンプレッサ1から吐出された高温及び高圧のガス状の冷媒はコンデンサ7に流入し、冷却ファン8より送風される外気と熱交換して冷却され凝縮する。コンデンサ7で凝縮した冷媒は膨張弁10により低圧に減圧され、低圧の気液2相状態となる。膨張弁10からの低圧冷媒はエバポレータ11に流入する。エバポレータ11は車両用空調装置の空調ケース21内に設置され、エバポレータ11に流入した低圧冷媒は空調ケース21内の空気から吸熱して蒸発する。エバポレータ11の出口はコンプレッサ1の吸入側に結合されている。このようにして冷凍サイクルRは閉回路を構成している。
【0018】
空調ケース21において、上記エバポレータ11の上流側には送風機22が配置され、送風機22にはブロアファン23と駆動用モータ24とが備えられている。ブロアファン23の吸入側では、内外気切換ドア25により外気導入口27と内気導入口28とが開閉される。これにより、外気(車室外空気)または内気(車室内空気)が切換導入される。内外気切換ドア25はサーボモータからなる電気駆動装置26により駆動される。
【0019】
一方、上記エバポレータ11の下流側には、後述する蓄冷器12、13、エアミックスドア31が順次配置されている。エアミックスドア31の下流側にはエンジン4の温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式ヒータコア(暖房用熱交換器)33が設置されている。この温水式ヒータコア33の側方(上方部)には、温水式ヒータコア33をバイパスして空気(冷風)を流すバイパス通路34が形成されている。
【0020】
上記エアミックスドア31は回動可能な板状ドアであり、サーボモータからなる電気駆動装置32により駆動される。エアミックスドア31は、温水式ヒータコア33を通過する温風とバイパス通路34を通過する冷風との風量割合を調節するものであって、この冷温風の風量割合の調節により車室内への吹き出し温度を調節する。
【0021】
温水式ヒータコア33の下流側には空気混合部35が設けられ、ここで温水式ヒータコア33からの温風とバイパス通路34からの冷風が混合して、所望温度の空気が作り出される。
【0022】
さらに、空気混合部35の下流側には、デフロスタ開口部36、フェイス開口部37、フット開口部38が形成され、各開口部はそれぞれ回動可能な板状のデフロスタドア39、フェイスドア40、フットドア41により開閉される。3つのドア39、40、41は共通のリンク機構に連結され、このリンク機構を介してサーボモータからなる電気駆動装置42により駆動される。例えば、デフロスタドア39が開いているときには図示しないデフロスタダクトを介して車両フロントガラス内面に空気が、フェイス開口部37が開いているときには図示しないフェイスダクトを介して車室内乗員の上半身に向けて空気が、フット開口部38が開いているときには図示しないフットダクトを介して車室内乗員の足元に向けて空気が吹き出す。
【0023】
温度センサ52からのエバポレータ温度(エバポレータ吹出温度)、エアコンスイッチ53からのエアコン信号が入力される制御アンプ51では、エアコンスイッチ53がON状態であるときに、走行状態毎にエバポレータ11の目標温度を設定し、温度センサ52により検出される実際のエバポレータ温度が走行状態毎の目標温度と一致するようにコンプレッサ容量を制御するためのデューティ信号をコンプレッサ1に出力する。例えば、1の走行状態である減速燃料カット時には、後述する第1の蓄冷剤の蓄冷を早期に行わせるための目標温度を第1目標温度(例えば3℃)として設定する。また、減速燃料カット時以外での走行状態の場合に、冷房に最低限必要な冷力を確保することを目的とした目標温度を第2目標温度(例えば12℃)として設定する。この第2目標温度が得られるように行うコンプレッサ1の制御を、以下「エコノミー制御」という。
【0024】
また、エアコンスイッチ53がONにされたときには、制御アンプ51はコンプレッサ1を作動させる信号をCAN通信56でエンジンコントロールモジュール5に送信する。また、制御アンプ51は、後述するエンジン自動停止状態において、温度センサ52により検出される実際のエバポレータ温度が空調要求から決まるエンジン自動停止解除温度に到達したときに、エンジン再始動要求の信号をエンジンコントロールモジュール5に送信する。なお、制御アンプ51は、目標風量が得られるようにブロアファン駆動用モータ24を制御し、吹出口と吸込口の自動制御のため電気駆動装置26、32、42を駆動している。
【0025】
エンジンコントロールモジュール5は、エンジン4の運転状態を検出する各種センサからの信号に基づいてエンジン4への燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期を制御する。さらに、本発明の対象とするエコラン車、ハイブリッド車においては、エンジンコントロールモジュール5は、エンジン4の回転速度信号、車速信号、ブレーキ信号等に基づいてアイドルストップ許可条件(エンジン自動停止許可条件)が成立したか否かを判定し、アイドルストップ許可条件が成立したとき、点火装置の電源遮断、燃料噴射の停止等によりエンジン4を自動的に停止させる。
【0026】
また、エンジンコントロールモジュール5は、エンジン自動停止後にアクセル信号等に基づいて、エンジン自動停止解除条件が成立したか否かを判定する。例えば、ブレーキペダルが離されアクセルペダルが踏み込まれたときには、アイドルストップ解除条件(エンジン自動停止解除条件)が成立したと判断し、車両の発進に備えてエンジン4を自動的に再始動させる。
【0027】
また、エンジンコントロールモジュール5は、エンジン自動停止解除条件が成立していなくても制御アンプ51よりエンジン再始動要求の信号を受けたときにはエンジン4を自動的に再始動させる。
【0028】
また、冷媒圧力センサ54からの冷媒圧力、アクセルセンサ55からのアクセル開度がエンジンコントロールモジュール5に入力されており、エンジンコントロールモジュール5ではこれらの信号により、コンプレッサ1を作動できると判断すると、コンプレッサON信号をCAN通信56でアンダースイッチングモジュール6に送信する。エンジンコントロールモジュール5からコンプレッサON信号を受信したアンダースイッチングモジュール6ではモジュール6内のエアコンリレーをONし、電磁クラッチ2を接続してコンプレッサ1を作動させる。
【0029】
次に、エバポレータ11の下流に配置される蓄冷器12、13の具体的な構成について説明すると、エバポレータ11のすぐ下流に位置する第1の蓄冷器12、第1の蓄冷器12のさらに下流に位置する第2の蓄冷器13は、図1に示すようにいずれもエバポレータ11と同一の前面面積を有する形状として、エバポレータ11通過後の冷風の全量(空調ケース21内風量の全量)が通過する構成となっている。これにより、各蓄冷器12、13は空調ケース21内の空気流れ方向に対して厚さ寸法の小さい薄型構造とすることができる。
【0030】
熱交換器としての各蓄冷器12、13の具体的な構成は、例えば熱伝導性に優れたアルミニュウム等の金属によりチューブ状部材を形成し、このチューブ状部材の内部に蓄冷剤を収納して密封するようになっている。このチューブ状部材は所定間隔を隔てて多数配置し、この多数のチューブ状部材相互間の隙間を空気が通過する構成になっている。
【0031】
ここで、第1の蓄冷器12に収納する第1の蓄冷剤と、第2の蓄冷器13に収納する第2の蓄冷剤とで凝固点を異ならせる。第1の蓄冷剤は減速燃料カット中に蓄冷を行わせるため、凝固点として減速燃料カット時のエバポレータの目標温度である第1目標温度(3℃)より少し高い温度、例えば5℃に設定する。一方、第2の蓄冷器13に収納する第2の蓄冷剤はエコノミー制御中に蓄冷を行わせるため、凝固点としてエコノミー制御時のエバポレータの目標温度である第2目標温度(12℃)より少し高い温度、例えば14℃に設定する。
【0032】
第1と第2の各蓄冷剤の凝固点の設定は、これに限られるものでなく、第1の蓄冷剤の凝固点は、第1目標温度よりも高くかつ第2目標温度よりも低い温度に設定し、また第2の蓄冷剤の凝固点は、第2目標温度よりも高くかつ空調要求から決まるアイドルストップ解除温度(エンジン自動停止解除温度)よりも低い温度に設定すればよい。なお、アイドルストップ解除温度としては、第2目標温度よりも高い温度が予め設定されている。
【0033】
次に、第1実施形態の作動を、図2を参照して説明すると、図2は車両走行状態から減速して車両を停止させた場合に、アクセル開度、車速、エバポレータ温度、コンプレッサ1の状態、第1と第2の2つの蓄冷剤全体の蓄冷量がどのように変化するのかを示している。ただし、車両走行状態でコンプレッサ1についてエコノミー制御が行われていたものとする。
【0034】
エアコンスイッチ53がONにされているとき、エコノミー制御中であれば、エバポレータ温度が第2目標温度(12℃)になるようにコンプレッサ容量、具体的にはコンプレッサ1の冷媒吐出容量が制御アンプ51によって制御される。ここで、第2の蓄冷剤の凝固点(14℃)は第2目標温度(12℃)よりも少し高い温度に設定しているため、温度センサ52により検出されるエバポレータ温度がt1のタイミングで第2の蓄冷剤の凝固点(14℃)に到達すると、第2の蓄冷剤が凝固し始め、第2の蓄冷剤への蓄冷が進み、t2のタイミングで第2の蓄冷剤が全て凝固する(図中のA参照)。
【0035】
一方、t3のタイミングでアクセルペダルが離され、そのときのエンジン回転速度が燃料カット回転速度を超えていることから減速燃料カット条件が成立して減速燃料カットが開始されると、減速燃料カット時にはエバポレータ11の目標温度が第2目標温度(12℃)から第1目標温度(3℃)へとステップ的に切換えられる。減速燃料カット中には、温度センサ52により検出されるエバポレータ温度が第1目標温度(3℃)になるようにコンプレッサ1の冷媒吐出容量が制御アンプ51によって制御される。ここで、第1の蓄冷剤の凝固点(5℃)は第1目標温度(3℃)よりも少し高い温度に設定しているため、t4のタイミングでエバポレータ温度が第1の蓄冷剤の凝固点(5℃)に到達すると、第1の蓄冷剤が凝固し始め、第1蓄冷剤への蓄冷が進み、t5のタイミングで第1の蓄冷剤が全て凝固する(図中のB参照)。
【0036】
なお、減速燃料カット開始タイミングで第2の蓄冷剤が凝固しきっておらず、第2の蓄冷剤に蓄冷の余地がある場合には、減速燃料カット中に第2の蓄冷剤への蓄冷を行わせることが可能である。また、減速燃料カット時間が短くて第1の蓄冷剤の全てが凝固する前にアイドルストップが開始される場合には、第1の蓄冷剤の蓄冷が不十分なまま終わってしまうことが考えられるが、エコノミー制御中に第2の蓄冷剤に蓄冷を行っているので、十分なアイドルストップ時間を確保するだけの冷力を確保しておくことができる。
【0037】
t6のタイミングでブレーキペダルが踏み込まれ、かつ車速が停車状態の車速に近いこと等によりアイドルストップ許可条件(エンジン自動停止許可条件)が成立すると、エンジン4がエンジンコントロールモジュール5により停止され、このエンジン停止によりコンプレッサ1の作動が停止する。
【0038】
コンプレッサ1の作動が停止するt6のタイミング以降は、本実施形態では第1、第2の2つの蓄冷剤により車室内の空調が維持される。すなわち、温度センサ52により検出されるエバポレータ温度が上昇しt7のタイミングで第1の蓄冷剤の融点(5℃)に到達したら、車室内の空調維持に、まず第1の蓄冷剤に蓄えた冷力(溶解潜熱による蓄冷熱量)を使用することで、エバポレータ温度をt8のタイミングまで第1の蓄冷剤の融点(5℃)に維持することができ、エバポレータ温度の上昇を抑えることができる(図中のC参照)。
【0039】
第1の蓄冷剤の冷力を使い果たす(つまり第1の蓄冷剤が全て溶解する)t8のタイミングよりエバポレータ温度は上昇する。そして、温度センサ52により検出されるエバポレータ温度が上昇しt9のタイミングで第2の蓄冷剤の融点(14℃)に到達したら、車室内の空調維持に今度は第2の蓄冷剤に蓄えた冷力(溶解潜熱による蓄冷熱量)を使用することで、エバポレータ温度をt10のタイミングまで第2の蓄冷剤の融点(14℃)に維持することができ、エバポレータ温度の上昇を抑えることができる(図中のD参照)。
【0040】
第2の蓄冷剤の冷力を使い果たす(つまり第2の蓄冷剤が全て溶解する)t10のタイミングより再びエバポレータ温度が上昇する。温度センサ52により検出されるエバポレータ温度がt11のタイミングで空調要求アイドルストップ解除温度に到達すると、冷房フィーリングの悪化を防止するため制御アンプ51からエンジンコントロールモジュール5に対してエンジン始動要求が出される。これを受けてエンジンコントロールモジュール5によりアイドルストップが解除されエンジン4が再始動される。エンジン4が再始動されたときにはコンプレッサ1を作動させることが可能となり、制御アンプ51によりコンプレッサ1についてエコノミー制御が行われる。すなわち、t11のタイミング以降のエコノミー制御でのエバポレータの目標温度は第2目標温度(12℃)であり、エバポレータ温度がこの第2目標温度と一致するようにコンプレッサ11の冷媒吐出容量が制御アンプ51によって制御されることから、エバポレータ温度が空調要求アイドルストップ解除温度より再び下降していく。
【0041】
このように、本実施形態によれば、信号待ち等の停車時(エンジン動力不要時)にアイドルストップを行う車両において、停車時に冷凍サイクルRのコンプレッサ1が停止状態になっても、第1の蓄冷器12に封入されている第1の蓄冷剤と、第2の蓄冷器13に封入されている第2の蓄冷剤の2つの冷力を使用して車室内の空調を維持することができる。これによって、アイドルストップが解除されるタイミングがt11のタイミングまで遅らせることが可能となり、アイドルストップを長く続けることができる。
【0042】
制御アンプ51やエンジンコントロールモジュール5で実行されるこの制御を図3、図4のフローチャートに従って説明する。
【0043】
図3はエバポレータ11の目標温度を設定するためのもので、制御アンプ51が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。ただし、エアコンスイッチ53がONにされていることが前提である。
【0044】
ステップ1では減速燃料カット時であるか否かをみる。減速燃料カット時であるか否かはエンジンコントロールモジュール5において判定されている。例えば、車両走行中にアクセルペダルを離したときのエンジン回転速度が燃料カット回転速度以上であるときに、減速燃料カット許可条件が成立するので、減速燃料カットフラグ=1とされ、エンジンコントロールモジュール5により燃料カットが行われる。
【0045】
制御アンプ51では、エンジンコントロールモジュール5から送信されるこの減速燃料カットフラグをみる。減速燃料カットフラグ=1であるときには、減速燃料カット時であると判断し、ステップ2に進んで、第1目標温度をエバポレータ11の目標温度に入れる。第1目標温度は予め適合により定める(例えば3℃)。
【0046】
ステップ1で減速燃料カットフラグ=0であるときにはエコノミー制御条件が成立する。このときにはステップ3に進んで第2目標温度をエバポレータ11の目標温度に入れる。第2目標温度も予め適合により定めておく(例えば12℃)。
【0047】
制御アンプ51における図示しない制御ルーチンでは、温度センサ52により検出される実際のエバポレータ温度が、このようにして設定される2つの各走行状態毎の目標温度と一致するように、コンプレッサ1に与えるデューティ信号が作られ、コンプレッサ1に出力される。コンプレッサ1では、このようにして設定される2つの各走行状態毎の目標温度となるようにデューティ信号によってコンプレッサ1の冷媒吐出容量が制御される。
【0048】
図4はアイドルストップフラグを設定するためのもので、エンジンコントロールモジュール5が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
【0049】
ステップ11ではアイドルストップフラグ(車両の運転開始時にゼロに初期設定)をみる。いまはアイドルストップフラグ=0であるとすると、ステップ12に進み、アイドルストップ許可条件が成立しているか否かをみる。例えば、アクセルペダルが踏み込まれていないこと、車速がゼロに近いこと、ブレーキペダルが踏み込まれていること等を全て満足しているときに、アイドルストップ許可条件が成立する。このときにはステップ14に進んでアイドルストップフラグ=1とする。ステップ12で上記のいずれか一つの条件でも満足していないときにはステップ13に進んで、アイドルストップフラグ=0のままとする。
【0050】
一方、ステップ14でアイドルストップフラグ=1となったときには、次回よりステップ11でアイドルストップフラグ=1であるので、ステップ15に進み制御アンプ51からのエンジン始動要求があるか否かをみる。制御アンプ51では温度センサ52により検出されるエバポレータ温度が空調要求アイドルストップ解除温度以上であるか否かを判定しており、エバポレータ温度が空調要求アイドルストップ解除温度以上である場合に、エンジン始動要求をエンジンコントロールモジュール5に送信する。制御アンプ51からエンジン始動要求があるときには、ステップ16を飛ばしてステップ17に進み、アイドルストップフラグ=0とする。
【0051】
ステップ15で制御アンプ51からのエンジン始動要求がないときにはステップ16に進み、アイドルストップ解除条件が成立しているか否かをみる。例えば、アイドルストップフラグ=1の状態でブレーキペダルが離されたり、アクセルペダルが踏み込まれたときに、アイドルストップ解除条件が成立する。このときにはステップ17に進んでアイドルストップフラグ=0とする。ステップ16でアイドルストップ解除条件が成立していないときにはステップ14に進んで、アイドルストップフラグ=1を継続する。
【0052】
エンジンコントロールモジュール5における図示しない制御ルーチンでは、アイドルストップフラグがゼロより1に切換わったタイミングでアイドルストップ(エンジン4の自動停止)を開始し、その後にアイドルストップフラグが1よりゼロに切換わったタイミングでアイドルストップを解除してエンジン4を再始動する。
【0053】
このように、本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、エンジン4により駆動され冷媒を吸入、圧縮、吐出するコンプレッサ1、このコンプレッサ1から吐出された高温、高圧の冷媒を凝縮させるコンデンサ7、このコンデンサ7で凝縮した冷媒を減圧する膨張弁10、この膨張弁10で低圧となった冷媒と周囲の空気との間で熱交換を行わせて冷媒を蒸発させるエバポレータ11を含む冷凍サイクルRと、2つの各走行状態毎にエバポレータ11の目標温度を設定する目標温度設定手段(図3のステップ1〜4参照)と、実際のエバポレータ温度が走行状態毎に設定されるこの記目標温度と一致するようにコンプレッサ容量を制御するコンプレッサ容量制御手段と、エバポレータ11を通過した冷風により冷却される蓄冷器であって凝固点の異なる2つの蓄冷剤を内部に独立に封入した蓄冷器12、13と、アイドルストップ許可条件(エンジン自動停止許可条件)が成立したときエンジン4を自動的に停止し、その後にアイドルストップ解除条件(エンジン自動停止解除条件)が成立したときエンジン4を再始動させると共に、アイドルストップ解除条件が成立していなくても実際のエバポレータ温度が空調要求アイドルストップ解除温度(空調要求から決まるエンジン自動停止解除温度)に到達したときエンジン4を再始動させるエンジン自動停止・再始動手段(図4のステップ11〜17参照)とを備え、2つの各走行状態毎に凝固するように2つの各蓄冷剤の凝固点を設定するので、2つの各走行状態毎に設定されるエバポレータ11の目標温度と、2つの各蓄冷剤の凝固点との組み合わせにより、2つの走行状態で2つの蓄冷剤を凝固させることができる。例えば、減速燃料カット時を1の走行状態、エコノミー制御時を他の走行状態とすると、第1の蓄冷剤は減速燃料カット時に凝固する凝固点(5℃)に、第2の蓄冷剤はエコノミー制御時に凝固する凝固点(14℃)に設定する。エコノミー制御時から減速燃料カット時を経て車両が停止する場合を考えると、エコノミー制御時に第2の蓄冷剤が凝固し、減速燃料カット時に第1の蓄冷剤が凝固する。この結果、減速燃料カット時間が短く第1の蓄冷剤に十分な蓄冷が期待できない場合でも、あらかじめ蓄冷しておいた第2の蓄冷剤の冷力を使用することができ、常に十分なアイドルストップ時間を確保できる。
【0054】
減速燃料カット時には、エバポレータ11の温度が第1の蓄冷剤の凝固点(5℃)よりも低い第1目標温度(3℃)になるようにコンプレッサ1の冷媒吐出容量が制御される。このコンプレッサ1の冷媒吐出容量の制御でエバポレータ温度が第1の蓄冷剤の凝固点(5℃)まで低下すると、第1の蓄冷剤が凝固し始め第1の蓄冷剤への蓄冷が開始される。すなわち、本実施形態(請求項3に記載の発明)によれば、第1の蓄冷剤の凝固点を、減速燃料カット時のエバポレータの目標温度である第1目標温度(3℃)よりも高くかつエコノミー制御時のエバポレータの目標温度である第2目標温度(12℃)よりも低い温度(5℃)に設定するので、減速燃料カット中に第1の蓄冷剤を蓄冷することが可能となる。減速燃料カット中は減速エネルギーを使用してコンプレッサ1を駆動させているので、燃料供給を停止した状態で第1の蓄冷剤を蓄冷することが可能となり、燃費が向上する。
【0055】
エコノミー制御時には、エバポレータ温度が第2の蓄冷剤の凝固点(14℃)よりも低い第2目標温度(12℃)になるようにコンプレッサ1の冷媒吐出容量が制御される。このコンプレッサ1の冷媒吐出容量の制御でエバポレータ温度が第2の蓄冷剤の凝固点まで低下すると、第2の蓄冷剤が凝固し始め第2の蓄冷剤への蓄冷が開始される。すなわち、本実施形態(請求項4に記載の発明)によれば、第2の蓄冷剤の凝固点(14℃)を、エコノミー制御時のエバポレータの目標温度である第2目標温度(14℃)よりも高くかつ空調要求アイドルストップ解除温度(空調要求から決まるエンジン自動停止解除温度))よりも低い温度に設定するので、エコノミー制御を行いながら第2の蓄冷剤を蓄冷することが可能となる。エコノミー制御を禁止することなく第2の蓄冷剤を蓄冷することができるため、蓄冷を行わせつつ、車両用空調装置を作動させた場合の燃費悪化を低減させることが可能となる。また、エコノミー制御中に第2の蓄冷剤に蓄えた冷力は、第1の蓄冷剤への蓄冷が不十分な場合の冷力バックアップとして使用できるため、これにより常に十分なアイドルストップ時間を確保することが可能となる。
【0056】
減速燃料カット時に行われる第1の蓄冷剤への蓄冷は燃料供給を停止した状態での蓄冷となるため、短時間でできるだけ蓄冷量を上げたいという要求がある。一方、第1の蓄冷剤と第1の蓄冷剤を冷やす冷媒との温度差が大きいほど、伝熱量が大きく第1の蓄冷剤の蓄冷効率が良くなる。本実施形態(請求項6に記載の発明)によれば、第1と第2の2つの蓄冷剤をエバポレータ11を通過した冷風で凝固させる場合に、エバポレータ11の最も近くに第1の蓄冷剤を、その次に第2の蓄冷剤を配置するので、十分に冷えた冷風が先に第1の蓄冷剤に供給されることになり、減速燃料カット中の第1の蓄冷剤の蓄冷効率を上げることが可能となる。これにより、減速燃料カット時間が短い場合でも、燃料供給を停止した状態で第1の蓄冷剤について最大限の蓄冷量を得ることができる。
【0057】
図5は第2実施形態のエバポレータ61を車両前面から見た概略構成図である。図1に示す第1実施形態はエバポレータ11を通過した冷風により2つの蓄冷剤を凝固させるものであったが、第2実施形態はエバポレータ11を流れる冷媒により2つの蓄冷剤を凝固させるものである。すなわち、図5において、エバポレータ61は、図で左右方向に位置するアッパー通路62と、ロワー通路63と、これら2つの通路62、63に連通するチューブ状部材64とからなっている。チューブ状部材64は、熱伝導性に優れたアルミチューブなどの金属により形成され、所定間隔を隔てて左右方向に多数並べて配置されている。このため、冷媒経路は、アッパー通路、チューブ状部材64、ロワー通路63からなり、アッパー通路62を左方に向けて流れる冷媒は、複数のチューブ状部材64に分かれて下方に流れ、ロワー通路63で合流し、今度はロワー通路63を右方に向けて流れる。
【0058】
チューブ状部材64の外周の上半分には第1の蓄冷剤66を収納するチューブ状部材65が、チューブ状部材64の外周の下半分には第2の蓄冷剤68を収納するチューブ状部材67が近接して配置されている。第1の蓄冷剤66は、減速燃料カット中に蓄冷を行わせるため、凝固点として第1目標温度(3℃)より少し高い温度(例えば5℃)に設定する。一方、第2の蓄冷剤はエコノミー制御中に蓄冷を行わせるため、凝固点として第2目標温度(12℃)より少し高い温度(例えば14℃)に設定する。
【0059】
減速燃料カット時に行われる第1の蓄冷剤66への蓄冷は燃料供給を停止した状態での蓄冷となるため、短時間でできるだけ蓄冷量を上げたいという要求がある。一方、第1の蓄冷剤66と第1の蓄冷剤66を冷やす冷媒との温度差が大きいほど、伝熱量が大きく第1の蓄冷剤66の蓄冷効率が良くなる。第2実施形態(請求項5に記載の発明)によれば、2つの蓄冷剤66、68をエバポレータを流れる冷媒で凝固させる場合に、冷媒経路の上流に第1の蓄冷剤66を、その次に第2の蓄冷剤68を配置するので、十分に冷えた冷媒が先に第1の蓄冷剤66に供給されることになり、減速燃料カット中の第1の蓄冷剤66の蓄冷効率を上げることが可能となる。これにより、減速燃料カット時間が短い場合でも、燃料供給を停止した状態で第1の蓄冷剤66について最大限の蓄冷量が得ることができる。
【0060】
実施形態では、少なくとも2つの各走行状態が減速燃料カット時とエコノミー制御時であり、少なくとも2つの蓄冷剤が第1の蓄冷剤と第2の蓄冷剤である場合で説明したが、これに限られるものでない。
【符号の説明】
【0061】
1 コンプレッサ
4 エンジン
5 エンジンコントロールモジュール
7 コンデンサ
10 膨張弁
11 エバポレータ
12 第1蓄冷器
13 第2蓄冷器
51 制御アンプ
61 エバポレータ
66 第1蓄冷剤
68 第2蓄冷剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動され冷媒を吸入、圧縮、吐出するコンプレッサ、このコンプレッサから吐出された高温、高圧の冷媒を凝縮させるコンデンサ、このコンデンサで凝縮した冷媒を減圧する膨張弁、この膨張弁で低圧となった冷媒と周囲の空気との間で熱交換を行わせて冷媒を蒸発させるエバポレータを含む冷凍サイクルと、
少なくとも2つの各走行状態毎に前記エバポレータの目標温度を設定する目標温度設定手段と、
実際のエバポレータ温度が走行状態毎に設定される目標温度と一致するように前記コンプレッサ容量を制御するコンプレッサ容量制御手段と、
前記エバポレータを流れる冷媒またはエバポレータを通過した冷風により冷却される蓄冷器であって凝固点の異なる少なくとも2つの蓄冷剤を内部に独立に封入した蓄冷器と、
エンジン自動停止許可条件が成立したときエンジンを自動的に停止し、その後にエンジン自動停止解除条件が成立したときエンジンを再始動させると共に、このエンジン自動停止解除条件が成立していなくても実際のエバポレータ温度が空調要求から決まるエンジン自動停止解除温度に到達したときエンジンを再始動させるエンジン自動停止・再始動手段と
を備え、
前記少なくとも2つの各走行状態毎に凝固するように前記少なくとも2つの各蓄冷剤の凝固点を設定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの各走行状態は減速燃料カット時と、減速燃料カット時以外の運転時であるエコノミー制御時であり、
前記少なくとも2つの蓄冷剤は第1の蓄冷剤と第2の蓄冷剤であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記第1の蓄冷剤の凝固点を、前記減速燃料カット時のエバポレータの目標温度である第1目標温度よりも高くかつ前記エコノミー制御時のエバポレータの目標温度である第2目標温度よりも低い温度に設定することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第2の蓄冷剤の凝固点を、前記エコノミー制御時のエバポレータの目標温度である第2目標温度よりも高くかつ前記空調要求から決まるエンジン自動停止解除温度よりも低い温度に設定することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記2つの蓄冷剤を前記エバポレータを流れる冷媒で凝固させる場合に、冷媒経路の上流に前記第1の蓄冷剤を、その次に前記第2の蓄冷剤を配置することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記2つの蓄冷剤を前記エバポレータを通過した冷風で凝固させる場合に、エバポレータの最も近くに前記第1の蓄冷剤を、その次に前記第2の蓄冷剤を配置することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−234837(P2010−234837A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82267(P2009−82267)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】