説明

車両用空調装置

【課題】 本願発明は、冷房時の乗員への過冷房を防止すると共に、暖房時において乗員の暖房状態を確保しつつ、吹出風量を低減して騒音の低下、及び、頭部の火照りを軽減できる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】 この発明は、外気又は車室内空気を選択的に吸引するブロワユニットと、該ブロワユニットの下流側に配され、冷却手段、加熱手段及び加熱手段を通過する空気量を調節する調節手段とを具備する空気流路を具備し、車室内に温調された空気を吹き出す複数の開口部を選択的に開閉する吹出モード手段とを具備する室内空調ユニットと、該室内空調ユニットと接続され、前記室内空調ユニットの温調された空気を乗員シートに供給するシート空調ユニットとを具備する車両用空調装置において、前記室内空調ユニットから吹き出される空気温度に対して、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度を所定温度変化させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内への吹出空気の温調と共に、乗員のシートを直接温調するシート空調ユニットを具備する車両用空調装置に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される車両用空調装置は、空調風を車室内に吹き出す空調ユニットと、シートへ空調風を吹き出すシート空調ユニットと、空調ユニットを制御するECUとを備え、この制御装置が、熱負荷の検出値Tr,Tam,Ts及び設定値Tsetから目標吹出温度TAOを求め、この目標吹出温度TAOに基づいて求めた制御量で空調ユニットを制御する空調制御及びシート空調ユニットを制御するシート空調制御を有し、このシート空調制御が、車室内空調が安定状態にあるときに制御量を決める第1の空調制御と、過渡状態にあるときに制御量を決める第2の空調制御を有するように配設したものであり、これによって、車両空調の空調負荷が大きくて車両空調能力が高いときに空調装置設定温度に基づいて、シート空調装置を大能力で運転させた場合に生じる夏季の過冷房、冬季の過暖房を防止するようにしたものである。
【0003】
特許文献2に開示される車両用空調装置は、複雑な制御を実施することなく、安定状態におけるシート空調の過冷房、過暖房を防止するために、目標吹出温度と設定温度との差が大きい時は、小さいときより、シート目標吹出温度に目標吹出温度を大きく反映するように設定された式に基づいて、シート目標吹出温度を算出して制御するようにしたものである。また、この車両空調装置では、空調装置の吹出口から分岐した通路により、シートが空調されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−144849号公報
【特許文献2】特開2006−89018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献に開示された車両用空調装置は、共にシート吹出風温と、車両用空調ユニットの吹出風温が略同一であることを前提として、シート空調ユニットの風量を制御することによって過冷房や過暖房の不快感を解消するようにしたもので、特に複雑で高価なオート制御システムを採用したものである。
【0005】
また、図6で示すように、本出願人は、車両用空調装置の本体ユニットの風温(HVAC風温)と、シートから吹き出す風温(シート風温)との差が乗員のフィーリングに与える状態を調査した結果、HVAC風温とシート風温の差がない状態(上述した従来技術)では、「不快」及び「違和感がある」と判断した乗員が多く、+5度から+15度の範囲で「違和感なし」及び「快適」であると感じた乗員が多いという結果が出た。
【0006】
以上のことから、本願発明は、空調装置の本体ユニットとシート側との温度差を利用して、冷房時の乗員への過冷房を防止すると共に、暖房時において乗員の暖房状態を確保しつつ、吹出風量を低減して騒音の低下、及び、頭部の火照りを軽減することが可能な車両用空調装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって、この発明は、外気又は車室内空気を選択的に吸引するブロワユニットと、該ブロワユニットの下流側に配され、冷却手段、加熱手段及び加熱手段を通過する空気量を調節する調節手段とを具備する空気流路を具備し、車室内に温調された空気を吹き出す複数の開口部を選択的に開閉する吹出モード手段とを具備する室内空調ユニットと、該室内空調ユニットと接続され、前記室内空調ユニットの温調された空気を乗員シートに供給するシート空調ユニットとを具備する車両用空調装置において、前記室内空調ユニットから吹き出される空気温度に対して、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度を所定温度変化させるものである。
【0008】
また、前記調節手段はミックスドアであり、前記冷却手段を通過した空気がまったく前記加熱手段を通過しない状態を全閉状態(開度0)とし、前記冷却手段を通過した空気が全部前記加熱手段を通過する状態を全開状態(開度1)とした場合、前記吹出モード手段によってベントモードが設定された場合には、ミックスドア開度が1/8から2/3の範囲において、前記室内空調ユニットのベント吹出口から吹き出される空気温度に対して、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度を所定温度上昇させ、前記吹出モード手段によってバイレベルモードが設定された場合には、ミックスドア開度が1/3から2/3の範囲において、前記室内空調ユニットのベント吹出口から吹き出される空気温度に対して、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度を所定温度上昇させ、前記吹出モード手段によってフットモードが設定された場合には、ミックスドア開度が1/3から7/8の範囲において、前記室内空調ユニットのフット吹出口から吹き出される空気温度に対して、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度を所定温度上昇させることが望ましい。
【0009】
前記シート空調ユニットは、加熱手段とフット吹出口の間の領域に接続されることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度(風温)を、室内空調ユニットから吹き出される空気の温度よりも高く設定することができるので、冷房時の乗員への過冷房を防止することができると共に、暖房時には、乗員の暖房状態を確保できることから室内空調ユニットの吹出風量を低減して低騒音での運転が達成でき、また、室内空調ユニットからの吹出温度を低減できるので頭部の火照りを軽減できるものである。
【0011】
また、前記シート空調ユニットを、加熱手段とフット吹出口の間の領域に接続したことによって、簡易な構造で、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度(風温)を、車室内空調ユニットから吹き出される空気の温度よりも高く設定することが可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施例について図面により説明する。
【実施例】
【0013】
本願発明に係る車両用空調装置1は、たとえば図1に示すように、外気又は車室内空気を選択的に吸引するブロワユニット4と、このブロワユニット4の下流側に配され、冷却手段としてエバポレータ5、加熱手段としてのヒータコア6及びこのヒータコア6を通過する空気量を調節する調節手段としてのエアミックスドア7を備えた空気流路8を具備し、車室内10に温調された空気を吹き出す複数の開口部、たとえばデフ吹出口11、ベント吹出口12及びフット吹出口13を選択的に開閉するモードドア14,15とを具備する室内空調ユニット2と、この室内空調ユニット2と接続され、前記室内空調ユニット2の温調された空気を乗員シート20に供給するシート空調ユニット3とを具備するものである。
【0014】
シート空調ユニット3は、前記室内空調ユニット2の空気流路8のヒータコア6の下流側でフット吹出口13への分岐点の上流側に開口部30を有する空気ダクト31と、この空気ダクト31の下流側であって前記乗員シート20の内部に配設され、シート上に温調された空気を吹き出す複数の吹出口を有するシート側ダクト32と、シート側ダクト32への風量を調節するブロワ33とによって少なくとも構成される。
【0015】
上述した本願発明に係る車両用空調装置1の室内空調ユニット2において、エアミックスドア7は、少なくとも外気温度、車室内温度及び設定温度によって演算された目標吹出温度(風温)によって制御される。このエアミックスドア7は、エバポレータ5を通過した空気がまったくヒータコア6を通過しないフルクール(F/C)状態(開度ゼロ)から、エバポレータ5を通過した空気のすべてがヒータコア6を通過するフルホット(F/H)状態(開度1)までの間で制御される。
【0016】
また、自動モード時において、吹出モードは前記目標風温に基づいて、冷房時のベント(VENT)モード、暖房時のフット(FOOT)モード、その間のバイレベル(BI/L)モードに設定される。
【0017】
図3で示すように、ベント(VENT)モード時(主に冷房)において、室内空調ユニット2の目標風温(Tvent)となるようにエアミックスドア7が制御されるが、そのエアミックスドア7の制御範囲が1/8H(フルホットの8分の1)から2/3H(フルホットの3分の2)までの範囲内においては、シート風温Tsは、前記風温Tventよりも+5℃〜+15℃の範囲内で、所定の温度高く設定されるものである。尚、図3において、シート風温Tsは、風温Tvent+10℃の特性を示すものであり、+15℃の最大差シート風温の特性は、Tsmaxで示され、+5℃の最低差シート風温の特性はTsminで示される。
【0018】
同様に、図4で示すように、バイレベル(BI/L)モード時においても、室内空調ユニット目標風温(Tvent)となるようにエアミックスドア7が制御されるが、この場合、前記エアミックスドア7の制御範囲が1/3H(フルホットの3分の1)から2/3H(フルホットの3分の2)までの範囲内において、シート風温Tsを、前記風温Tventよりも+5℃〜+15℃の範囲内で、所定の温度高く設定するものである。尚、図4において、シート風温Tsは、風温Tvent+10℃の特性を示すものであり、+15℃の最大差シート風温の特性は、Tsmaxで示され、+5℃の最低差シート風温の特性はTsminで示される。
【0019】
また、図5で示すように、フット(FOOT)モード時(主に暖房)においては、室内空調ユニット目標風温(Tfoot)となるようにエアミックスドア7が制御されるが、この場合、前記エアミックスドア7の制御範囲が1/3H(フルホットの3分の1)から7/8H(フルホットの8分の7)までの範囲内において、シート風温Tsを、前記風温Tfootよりも+5℃〜+15℃の範囲内で、所定の温度高く設定するものである。尚、図5において、シート風温Tsは、風温Tfoot+10℃の特性を示すものであり、+15℃の最大差シート風温の特性は、Tsmaxで示され、+5℃の最低差シート風温の特性はTsminで示される。
【0020】
また、室内空調ユニット2の空気流路8は、エアミックスドア7の下流側において、冷風を主に含む冷風領域8Aと、ヒータコア6を通過した温風を主に含む温風領域8Bとを有するものである。特に、本願発明によれば、シート空調ユニット3の空気ダクト31の開口部30を、ヒータコア6の下流側であって、特にヒータコア6を通過した空気が主として通過する温風領域8Bに形成したことによって、上述した条件を簡易に達成できるものである。
【0021】
ベントモード(VENT)及びバイレベル(BI/L)モードで、フルクール状態でない場合には、主にヒータコア6を通過した加熱された空気が主に空気ダクト31に吸引されるため、室内空調ユニット2の風温よりも所定の温度高めの空気がシート空調ユニット3に供給されることから、上記課題が達成されるものである。
【0022】
また、フット(FOOT)モードで、フルホット状態(F/H)でない場合には、ヒータコア6の下流側でヒータコア6を通過した直後の加熱した空気が空気ダクト31に吸引されることから、シート空調ユニット3に供給される空気の温度は、室内空調ユニット2の風温よりも所定の温度高めとなるため、上記課題が達成されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】本願発明に係る室内空調ユニットの概略構成図である。
【図3】本願発明の車両用空調装置のベントモード時の特性を示した特性線図である。
【図4】本願発明の車両用空調装置のバイレベルモード時の特性を示した特性線図である。
【図5】本願発明の車両用空調装置のフットモード時の特性を示した特性線図である。
【図6】シート風温とHVAC風温の差と空調フィーリングの関係を示した特性線図である。
【符号の説明】
【0024】
1 車両用空調装置
2 室内空調ユニット
3 シート空調ユニット
4 ブロワ
5 エバポレータ
6 ヒータコア
7 エアミックスドア
8 空気流路
10 車室内
11 デフ吹出口
12 ベント吹出口
13 フット吹出口
14,15 モードドア
20 乗員シート
30 開口部
31 空気ダクト
32 シート側ダクト
33 ブロワ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気又は車室内空気を選択的に吸引するブロワユニットと、該ブロワユニットの下流側に配され、冷却手段、加熱手段及び加熱手段を通過する空気量を調節する調節手段とを具備する空気流路を具備し、車室内に温調された空気を吹き出す複数の開口部を選択的に開閉する吹出モード手段とを具備する室内空調ユニットと、該室内空調ユニットと接続され、前記室内空調ユニットの温調された空気を乗員シートに供給するシート空調ユニットとを具備する車両用空調装置において、
前記室内空調ユニットから吹き出される空気温度に対して、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度を所定温度上昇させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記調節手段はミックスドアであり、
前記冷却手段を通過した空気がまったく前記加熱手段を通過しない状態を全閉状態(開度0)とし、前記冷却手段を通過した空気が全部前記加熱手段を通過する状態を全開状態(開度1)とした場合、
前記吹出モード手段によってベントモードが設定された場合には、ミックスドア開度が1/8から2/3の範囲において、前記室内空調ユニットのベント吹出口から吹き出される空気温度に対して、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度を所定温度上昇させ、前記吹出モード手段によってバイレベルモードが設定された場合には、ミックスドア開度が1/3から2/3の範囲において、前記室内空調ユニットのベント吹出口から吹き出される空気温度に対して、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度を所定温度上昇させ、前記吹出モード手段によってフットモードが設定された場合には、ミックスドア開度が1/3から7/8の範囲において、前記室内空調ユニットのフット吹出口から吹き出される空気温度に対して、シート空調ユニットから吹き出される空気の温度を所定温度上昇させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記シート空調ユニットは、加熱手段とフット吹出口の間の領域に接続されることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−846(P2010−846A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159911(P2008−159911)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】