説明

車両用空調装置

【課題】乗員が乗り込んでエアコンスイッチを操作したときに、芳香による温度感覚の変化を乗員が体感できる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】エアコン本体の内部にて生成された所定の温度と風量のエアコン風が、エアコン本体に接続されたダクトを介して車室内にエアコン風を供給する車両用空調装置において、エアコン本体又はダクト内を流れるエアコン風に芳香を添加する芳香添加部と、芳香添加部による芳香の添加されたエアコン風を制御する制御手段と、乗員が車両に乗り込んだことを検知する検知手段とを備え、制御手段は、検知手段からの乗員乗り込みを検知後に、エアコン風への芳香添加を開始するとともに、エアコン風を低風にて車室内に供給する一方、少なくとも乗員の鼻を中心とする所定領域内における芳香濃度が、所定の認知閾値濃度に達するまで、低風のエアコン風の供給を行い、その後、エアコン風の温度又は風量の制御を予め設定された芳香による乗員の温冷感に基づいて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香が添加されたエアコン風を乗員に向けて供給することにより、乗員に快適感を感じさせることのできる車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、芳香を含む化粧品を用いたり、または、芳香をエアコン風によって放散させたりすることによって、人の温度感覚を変化させることが可能となる点が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】国際公開 WO2005/023968
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の技術では、芳香制御とエアコン制御との関係についての開示はない。すなわち、エアコン風に芳香を添加しただけでは、暑い日や寒い日の乗込み時に、乗員がエアコンスイッチを操作すると空気吹出口からエアコン風が勢いよく吹き出すため、このエアコン風によって芳香が拡散してしまうという問題がある。芳香が拡散してしまうと、芳香による温度感覚の変化を乗員が体感できない。
【0004】
本発明の目的は、乗員が乗り込んでエアコンスイッチを操作したときに、芳香による温度感覚の変化を乗員が体感できる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、乗員が乗り込んでエアコンスイッチを操作する以前に、低風のエアコン風で芳香を乗員に供給するようにした点に特徴がある。すなわち、本発明は、エアコン本体の内部にて生成された所定の温度と風量のエアコン風が、当該エアコン本体に接続されたダクトを介して車室内にエアコン風を供給する車両用空調装置において、前記エアコン本体又は前記ダクト内を流れるエアコン風に芳香を添加する芳香添加部と、前記芳香添加部による芳香の添加されたエアコン風を制御する制御手段と、乗員が車両に乗り込んだことを検知する検知手段とを備え、前記制御手段は、前記検知手段からの乗員乗り込みを検知後に、前記エアコン風への芳香添加を開始するとともに、前記エアコン風を低風にて車室内に供給する一方、少なくとも乗員の鼻を中心とする所定領域内における芳香濃度が、所定の認知閾値濃度に達するまで、前記低風のエアコン風の供給を行い、その後、エアコン風の温度又は風量の制御を予め設定された芳香による乗員の温冷感に基づいて行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、乗員が車両に乗り込んでからの所定時間(芳香認知閾値濃度が乗員の鼻を中心とする所定領域内に達するまでの時間)は、芳香を含んだエアコン風が低風にて車室内に供給される。そのため、エアコン風によって芳香が拡散するのを抑えることができ、乗員に対して芳香による快適感を感じさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は、本発明に係る車両用空調装置を車両に搭載したときの全体構成図である。この車両用空調装置10は、エアコン本体11の内部に設けられエアコン本体11に接続されたダクト12を介して車室13内にエアコン風を供給するエアコンファン14と、ダクト12内を流れるエアコン風に芳香を添加する芳香添加部15と、エアコンファン14の回転及び芳香添加部15による芳香の添加を制御する、制御手段としての制御部16とを備えている。
【0009】
芳香添加部15は、内部に芳香剤17Aが収められた芳香剤タンク17と、芳香剤タンク17とダクト12とを連結する連結配管18と、芳香剤タンク17内の上部に設けられた芳香ファン19と、芳香剤タンク17と連結配管18との接続部に設けられた芳香弁20とを備えている。
【0010】
制御部16は、芳香添加部15の芳香ファン19及び芳香弁20を制御しており、ダクト12内に芳香を供給するときは、芳香弁20を開にするとともに芳香ファン19を回転始動させ、ダクト12内への芳香の供給を停止するときは、芳香弁20を閉にするとともに芳香ファン19の回転を停止させる。
【0011】
なお、ダクト12の先端は、インストルメントパネル21に形成された吹出口22に接続され、エアコン本体11からのエアコン風は、矢印Bのように、吹出口22から乗員Mの顔に向かって吹き出すようになっている。
【0012】
図2は、本発明に係る車両用空調装置の全体構成を示すブロック図である。制御部16は、エアコン制御装置25、乗員位置検知装置26、及び芳香制御装置27を備えている。
【0013】
エアコン制御装置25は、エアコンファン14に対して制御信号を出力し、エアコンファン14の回転始動及び回転停止を制御するとともに、エアコンファン14の回転速度を制御する。また、エアコン制御装置25は、芳香制御装置27に対しても、制御信号を出力する。
【0014】
乗員位置検知装置26は、乗員M(図1参照)が運転席に着座したときの、乗員Mの顔(特に鼻)とエアコン風の吹出口22との距離L(図1参照)を算出し、その算出結果を芳香制御装置27に出力する。この乗員位置検知装置26は、例えば、シートスライド、シートリクライナ及びシートリフタなどの位置や、乗員側方に設定したカメラ等の画像処理によって、乗員の顔の位置を算出する。
【0015】
芳香制御装置27は、エアコン制御装置25からの制御信号と乗員位置検知装置26からの前記距離Lのデータとを取り込んで、芳香ファン19及び芳香弁20に対して制御信号を出力し、芳香ファン19の回転始動及び回転停止を制御するとともに、芳香弁20の開度を制御する。このとき、芳香弁20を全閉にすればダクト12内には芳香がまったく供給されず、芳香弁20の開度を徐々に大きくしていくとダクト12内に供給される芳香の濃度が段々と高くなる。そして、芳香弁20を全開にすれば、ダクト12内に供給される芳香の濃度が最大となる。
【0016】
このように、制御部16は、エアコン制御装置25及び芳香制御装置27によって、エアコンファン14、芳香ファン19及び芳香弁20を総合的に制御している。
【0017】
また、乗車検知部28が設けられ、この乗車検知部28には、ドア開閉検知スイッチ29、着座センサ30、エンジンキースイッチ31、及びエアコンスイッチ32がそれぞれ接続されている。そして、ドア開閉検知スイッチ29は、ドア(車両のフロントドア)の開閉を検知し、その検知信号を乗車検知部28に出力する。着座センサ30は、乗員が運転席に着座したことを検知し、その検知信号を乗車検知部28に出力する。エンジンキースイッチ31は、エンジンキーがキーシリンダに差し込まれたことを検知し、その検知信号を乗車検知部28に出力する。また、エアコンスイッチ32は、エアコンスイッチが入れられたとき、その入信号を乗車検知部28に出力する。
【0018】
また、エアコンスイッチ32は制御部16内のエアコン制御装置25にも接続され、当該エアコンスイッチ32が入れられたときに、その入信号をエアコン制御装置25に出力する。さらに、エアコン制御装置25には、前記エアコンスイッチ32に加えて、エアコン温度調整スイッチ33、温度センサ34、及び日射センサ35が各々接続されている。そして、エアコン温度調整スイッチ33は、乗員がエアコン設定温度調整のために当該エアコン温度調整スイッチ33を操作したときに、その操作信号をエアコン制御装置25に出力する。温度センサ34は車室13(図1参照)内の温度を検出し、その検出結果をエアコン制御装置25に出力する。また、日射センサ35は日射量を検出し、その検出結果をエアコン制御装置25に出力する。
【0019】
次に、本実施例の作用について説明する。
【0020】
図3は、乗員が車両に乗り込んだ直後に芳香が添加される場合における、エアコン風の風速の時間的変化を示した図である。ここで、時間軸(横軸)において、t1は乗員が車両に乗り込んでドアを閉めた時刻(又は乗員が運転席に着座した時刻:以下同じ)を、t2はエンジンキーをキーシリンダに差し込んだ時刻を、t3は乗員がエアコンスイッチを入れた時刻をそれぞれ示している。また、t4は芳香認知閾値濃度が乗員の鼻を中心とする所定領域内に達した時刻を、t5は芳香に対して乗員が順応して芳香を認知できなくなる時刻をそれぞれ示している。
【0021】
従来の車両用空調装置では、図中太い破線で示すように、時刻t3で乗員がエアコンスイッチを入れると同時に、エアコン風が強風にて車室内に供給される。特に夏の暑い日などは、エアコンファン14が高速回転しエアコン風はかなりの強風となる。このような状態のときに、芳香添加部15から芳香を添加しても、強風のエアコン風によって芳香が拡散してしまい、乗員の顔近傍には芳香認知閾値以上の芳香濃度が得られず、芳香による効果を乗員に十分に感じさせることができない。
【0022】
そこで、本実施例では、エアコン風の風速を、図中太い実線で示すように制御する。制御部16は、乗員が車両に乗り込んでドアを閉めた時刻t1直後(つまり、時刻t1から時刻t2の間)に、芳香添加部15を制御してダクト12内のエアコン風への芳香添加を開始する。すなわち、制御部16は、芳香ファン19を回転始動させるとともに芳香弁20を開にする制御を行い、これにより、芳香剤タンク17内の芳香剤17Aから蒸発した芳香が連結配管18を通ってダクト12内に流入し、エアコン風への芳香添加が開始される。
【0023】
このとき、エアコンファン14を低速で回転させて、エアコン風を微風にて車室内に供給する。エアコン風を微風にて供給する動作は、乗員がエアコンスイッチ32を入れても(つまり、時刻t3に達しても)継続し、芳香認知閾値濃度が乗員の鼻を中心とする所定領域内に達し、乗員が芳香に対して順応して芳香を認知できなくなるまでの間(つまり、時刻t4から時刻t5の間)継続する。
【0024】
そして、エアコン風を微風にて供給する動作が終了したら、エアコン風の温度及び風量の制御を芳香による乗員の温冷感に基づいて調節しながら、すなわち、エアコンファン14を高速で回転させエアコン風の通常の空調運転を行う。
【0025】
図4は、エアコン風の吹出口22から乗員Mの顔までの芳香濃度分布イメージを表した図である。芳香認知閾値濃度が必要な領域は、通常の人の呼吸量から推定すると、乗員の鼻を中心とした半径Rが10〜15cm程度の領域であり、芳香認知閾値濃度は、例えば温度感覚を冷たく感じさせる香料のひとつであるリモネンの場合、約0.04ppm程度である。さらに、エアコン始動時の微風状態は、最大その香料に対する乗員の順応時間までとし、エアコンを通常始動時と同様に強風に変更すると同時に芳香の添加を停止し、車室内温度が制御目標温度に近づき、エアコン風が微風になると芳香の添加を再開する。これにより、芳香剤の無駄な消費を防ぐことができる。
【0026】
以上のように乗員に芳香を効果的に供給することによって、例えば、その芳香がメントールやリモネンであれば乗員は芳香によって冷たい温度感覚を得ることができ、エアコンの設定温度を従来よりも上げる、もしくはエアコンの風速を下げても快適感を得ることが可能となる。また、暖房時はバジルやバニリン等の暖かい温度感覚を与える芳香剤を用いることによって、エアコン設定温度を従来よりも下げるもしくはエアコンの風速をさげることが可能となる。このような芳香と連動したエアコン制御を行うことによって、車両の燃費を向上させることができる。例えば、真夏に芳香を付加することにより、エアコン設定温度は従来に比べて0.5℃程度高くすることが可能であり、この場合、車両燃費は従来に比べて1ポイント程度良くなると推定される。
【0027】
図5A及び図5Bは、本実施例による車両用空調装置の動作を示すフローチャートである。
【0028】
先ず、芳香機能を利用しているか否か判断され(ステップS1)、利用していないと判断された場合は、エアコン設定温度に応じた通常のエアコン制御が実行される(ステップS2)。
【0029】
ステップS1において、芳香機能を利用していると判断された場合は、ドア開閉スイッチ(ドア開閉検知スイッチ)が作動したか否か検知され(ステップS3)、作動した場合はステップS6に進む。ステップS3において、ドア開閉スイッチが作動していない場合は、さらに、エンジンキーがキーシリンダに挿入されたか否か検知され、(ステップS4)、挿入された場合はステップS6に進む。ステップS4において、エンジンキーがキーシリンダに挿入されていない場合は、さらに、エアコンスイッチが入れられたか否か検知され(ステップS5)、入れられた場合はステップS6に進む。ステップS5において、エアコンスイッチが入れられていない場合はステップS1へ戻る。
【0030】
ドア開閉スイッチの作動、エンジンキーのキーシリンダへの挿入、又はエアコンスイッチの入操作があったときは、車両に乗員が乗り込んだと判定され(ステップS6)、引き続いて、ダクト12内を流れるエアコン風に芳香が添加され(ステップS7)、さらに、エアコン風が微風にて車室内に供給される(ステップS8)。
【0031】
そして、芳香添加後、所定時間T1経過したか否か判断され(ステップS9)、経過したと判断された場合はステップS10ヘ進み、経過していないと判断された場合はステップS7ヘ戻る。これにより、芳香が添加されたエアコン風が、所定時間T1だけ微風にて供給されることになる。
【0032】
次に、ステップS9において、所定時間T1経過したと判断された場合は、エアコン設定温度と車室内温度との差が規定値以内か否か判断され(ステップS10)、規定値以内に入らない場合はステップS12へ進む。規定値以内の場合は、芳香添加後、所定時間T2(T2>T1)経過したか否か判断され、経過していない場合は所定時間T2経過するまで待機し(ステップS11)、その後、ステップS12へ進む。
【0033】
そして、芳香剤が冷感香料か暖感香料か判断され(ステップS12)、冷感香料の場合は設定温度より高めのエアコン制御が実行され(ステップS13)、暖感香料の場合は設定温度より低めのエアコン制御が実行される(ステップS14)。ステップS13又はステップS14の処理後は、ステップS15へ進む。
【0034】
この場合、冷房時に冷感香料の芳香を添加する際、安定時のエアコン制御温度を上げ又はエアコン風の風速を下げ、暖房時に暖感香料の芳香を添加する際、安定時のエアコン制御温度を下げ又はエアコン風の風速を下げるよう制御される。このように制御すれば、香料の使用量を低く抑えることができる。
【0035】
そして最後に、エアコンスイッチが切られたか否か検知され(ステップS15)、切られていない場合はステップS12へ戻る。切られている場合は、エアコンを停止し(ステップS16)、さらに、芳香の添加を停止する(ステップS17)。
【0036】
本実施例によれば、乗車後のドア閉からエアコンスイッチ入の間にてエアコン風は微風にて始動され、それと同時に芳香を添加するようにしたので、芳香はエアコン風によって広く拡散することなく、乗員の顔周辺に芳香認知濃度以上の領域を生成することができ、乗員に対して車両への乗り込み初期から芳香を効果的に認知させることができる。
【0037】
また、本実施例によれば、通常よりもエアコンを省エネ運転できるため、車両の燃費が良くなる。
【0038】
また、本実施例においては、エアコンファン14の回転始動時に、車室内温度とエアコン設定温度との差が大きい場合は、芳香の濃度を高くするよう制御される。このようにすれば、車室内が非常に暑い又は寒い場合は、香り強度による温冷感効果が得られるため、風量を上げることなく、始動時の快適性を向上させることができる。
【0039】
また、本実施例においては、微風のエアコン風を車室内に送る継続時間を、車室内温度とエアコン設定温度との差が大きい程、短くするよう制御される。このように制御すれば、風量の増加によりエアコン設定温度への到達時間を短縮できる。
【0040】
さらに、本実施例では、微風のエアコン風を車室内に供給した後、通常の空調運転を行い、車室内温度が所定温度に下がるまでの間は芳香の添加を停止し、車室内温度が所定温度に下がり且つエアコン風の風速が下がったときに芳香の添加を再開している。このようにすれば、風量増加で温冷感を得る強風によって、芳香の効果が十分発揮できない間の芳香添加が抑制され、不要な香料消費を回避することができる。
【0041】
またさらに、本実施例においては、検知手段として、ドア開閉検知スイッチ29、着座センサ30、エンジンキースイッチ31、もしくはエアコンスイッチ32が設けられているので、乗員が車両に乗り込んだことを確実に検知することができる。
【0042】
なお、図1においては、芳香添加部15からの芳香をダクト12内に供給するようにしていたが、前記芳香をエアコン本体11内に供給するように構成してもよい。また、エアコン本体11からのエアコン風の一部を芳香添加部15に導いて、当該芳香添加部15において、エアコン風に芳香を添加するとともに、その芳香添加後のエアコン風をダクト12内に供給するよう構成してもよい。
【実施例2】
【0043】
図6は実施例2を示している。実施例1では、車両に乗員が乗り込んだ直後はエアコン風を微風にて車室内に供給するようにしていたが、真夏の暑い日などにエアコン風の風速を下げると快適感が損なわれることがある。
【0044】
そこで、本実施例では、初期(乗員の乗り込み時)の車室内温度とエアコン設定温度との差が大きい場合は、エアコン風の風速を上げて中間風(風速が微風より速く強風より遅い風)にすることによって、乗員の感じる不快感を軽減するようにしている。なお、中間風と微風(実施例1)と含めて低風と定義する。
【0045】
さらに、その際、芳香弁20の開度を大きくして芳香濃度を微風時よりも高くすれば、風速を上げることによって拡散される芳香の減少分を補うことができ、乗員に与える芳香の温度感を損なうことが防げる。
【0046】
エアコン風への芳香の添加は、前述同様にエアコン風が中間風から強風に切り替わると同時に停止し、車室内温度の安定と共にエアコン風の風速が中間風に戻る時点で、再度、エアコン風に高い濃度で芳香を添加する。そして、エアコン風が微風に下がったときに、エアコン風に通常の濃度で芳香を添加する。
【0047】
なお、図6において、太い破線は従来技術におけるエアコン風の変化を示しており、太い実線は本実施例におけるエアコン風の変化を示している。
【0048】
本実施例によれば、エアコン風が微風ではないため、真夏の暑い日などにも快適感が損なわれることがない。また、芳香添加の停止時間が存在するので、芳香剤の消費量を抑えることもできる。
【実施例3】
【0049】
本実施例3では、車室内温度の安定状態から一定量以下の外気温度、日射量等による微弱な温冷感変化に対しては、エアコン風の温度及び風速を変える変動制御は行わず、芳香の添加のみを行うようにする。
【0050】
このように制御すれば、乗員が感じる温度変化が緩やかとなり、快適性が向上するとともに、夏季の微弱な温度上昇に対しては、エアコンの動力変動を行わないため、省エネ効果がある。
【0051】
また、本実施例においては、芳香添加部15は、暖房時は芳香を添加する間の送風モードをベント(乗員の上部向け)又はフット(乗員の下部向け)のバイレベルとし、芳香はベント側から添加するよう構成されている。
【0052】
このように構成すれば、暖房時でも、芳香が添加されたエアコン風を乗員の鼻に向けて供給できるため、フット側から供給する場合に比べて、芳香濃度を下げることが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記各実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記各実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0054】
例えば、上記各実施例では、運転席に着座した乗員、つまり運転者に対する芳香制御であったが、本発明は、助手席に着座した乗員、さらには後部座席に着座した乗員に対する芳香制御にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る車両用空調装置を車両に搭載したときの全体構成図である。
【図2】本発明に係る車両用空調装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】乗員が車両に乗り込んだ直後に芳香が添加される場合における、エアコン風の風速の時間的変化を示す図である。
【図4】エアコン風の吹出口から乗員の顔までの芳香濃度分布イメージを表した図である。
【図5A】実施例1による車両用空調装置の動作を示すフローチャートである。
【図5B】図5Aの続きを示すフローチャートである。
【図6】実施例2を示しており、エアコン風の風速の時間的変化を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 車両用空調装置
11 エアコン本体
12 ダクト
13 車室
14 エアコンファン
15 芳香添加部
16 制御部(制御手段)
17 芳香剤タンク
19 芳香ファン
20 芳香弁
22 エアコン風の吹出口
29 ドア開閉検知スイッチ(検知手段)
30 着座センサ(検知手段)
31 エンジンキースイッチ(検知手段)
32 エアコンスイッチ(検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコン本体の内部にて生成された所定の温度と風量のエアコン風が、当該エアコン本体に接続されたダクトを介して車室内にエアコン風を供給する車両用空調装置において、
前記エアコン本体又は前記ダクト内を流れるエアコン風に芳香を添加する芳香添加部と、
前記芳香添加部による芳香の添加されたエアコン風を制御する制御手段と、
乗員が車両に乗り込んだことを検知する検知手段とを備え、
前記制御手段は、前記検知手段からの乗員乗り込みを検知後に、前記エアコン風への芳香添加を開始するとともに、前記エアコン風を低風にて車室内に供給する一方、少なくとも乗員の鼻を中心とする所定領域内における芳香濃度が、所定の認知閾値濃度に達するまで、前記低風のエアコン風の供給を行い、その後、エアコン風の温度又は風量の制御を予め設定された芳香による乗員の温冷感に基づいて行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記芳香添加部は冷感香料を有し、
前記制御手段は、冷房時に前記冷感香料の芳香を添加する際、目標のエアコン制御温度を上げ、又は目標のエアコン風の風速を下げるよう制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記芳香添加部は暖感香料を有し、
前記制御手段は、暖房時に前記暖感香料の芳香を添加する際、目標のエアコン制御温度を下げ、又は目標のエアコン風の風速を下げるよう制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記エアコン風の供給開始時に、車室内温度と目標温度との差が大きい場合は、芳香の濃度を高くすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記低風のエアコン風を車室内に送る継続時間を、車室内温度と目標温度との差が大きい程、短くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記低風のエアコン風を車室内に供給した後、通常の空調運転を行い、車室内温度が所定温度に下がるまでの間は芳香の添加を停止し、車室内温度が所定温度に下がり且つエアコン風の風速が下がったときに芳香の添加を再開することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記制御手段は、車室内温度の安定状態から一定量以下の外気温度、日射量等による微弱な温冷感変化に対しては、エアコン風の温度及び風速を変える変動制御は行わず、芳香の添加のみを行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記芳香添加部は、暖房時は芳香を添加する間の送風モードを乗員の上部向けと下部向け双方に送るバイレベルとし、芳香はベント側から添加することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記検知手段は、ドア開閉検知スイッチ、エンジンキースイッチ、エアコンスイッチ、もしくは着座センサのいずれかであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−89714(P2010−89714A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263647(P2008−263647)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】