説明

車両用空調装置

【課題】冷房の必要な温度域と暖房の必要な温度域が重複する温度において、暖房サイクルを行うために圧縮機を作動させても、冷房サイクルと暖房サイクルの制御が競合することなく、冷房サイクルと暖房サイクルのハンチングが生じない車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車両用空調装置は、冷却水温度、外気温度および内気温度の少なくとも一つの温度条件に基づき電磁切換弁(三方電磁切換弁17)の切換制御を行って、圧縮機11の冷媒吐出口を冷房用冷媒循環回路9aに接続させ且つ圧縮機11を作動させる通常空調モードと、圧縮機11の冷媒吐出口をバイパス流路に接続させ且つ前記圧縮機11を作動させる補助暖房モードと、を選択実行させる制御手段(制御装置であるコントロールユニット29)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却水を利用して車室内を暖房可能に設けた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用空調装置は、冷却水を利用した暖房装置および冷凍サイクルを利用した冷房装置を設けているのが普通である。
【0003】
この暖房装置では、車室内の暖房時に、冷却水を車室内空調用のヒーターコア(車室内熱交換器)に循環させると共に、ヒーターコア通過風を車室内の吹出口から吹き出させるようにして車室内を暖房可能にするものが知られている。
【0004】
このような車両用空調装置により車室内の暖房を行う場合、冷却水の水温が充分に上昇するまでは車室内に吹き出される空気の温度が低く、乗員が快適と感じるまで長い時間を要することがあった。
【0005】
これの解消方法としては、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に車両用空調装置を作動させると共に、この車両用空調装置の圧縮機で圧縮される高圧冷媒の熱を利用してエンジン冷却水を加熱して、加熱されたエンジン冷却水をヒーターコアに供給することにより、ヒーターコアで車室内の空気を暖める冷却水式の暖房方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このような車両用空調装置では、エンジン冷却水で車室内を暖房する際に、エンジン始動初期にエンジン冷却水を高圧冷媒の熱で加熱するサイクルを暖房サイクルとしている。
【0007】
尚、通常、車両用空調装置では、車室前部のインストルメントパネル内に配設したエバポレータを有していると共に、圧縮機で冷媒ガスを圧縮して高圧冷媒とした後、この冷媒をエバポレータに供給して膨張させ、この膨張させた冷媒を圧縮機に循環させる冷房サイクルを行わせるようになっている。この際、エバポレータの冷媒配管の外側の通風路に車室内の空気を送風ファンで供給することにより、この空気の熱をエバポレータ内での冷媒の膨張時の吸熱作用により吸収して、車室内を冷房するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−310227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように車両用空調装置では、冷房サイクルと暖房サイクルを設けたものも知られている。この車両用空調装置では、冷房サイクルと暖房サイクルの冷媒経路の一部の配管を共用している。
【0010】
しかしながら、この車両用空調装置では、冷房の必要な温度域と暖房の必要な温度域が重複する温度において、暖房サイクルを行うために圧縮機を作動させると、冷房サイクルと暖房サイクルの制御が競合して、冷房サイクルと暖房サイクルのハンチングが生じる可能性があった。
【0011】
そこで、この発明は、冷房の必要な温度域と暖房の必要な温度域が重複する温度において、暖房サイクルを行うために圧縮機を作動させても、冷房サイクルと暖房サイクルの制御が競合することなく、冷房サイクルと暖房サイクルのハンチングが生じない車両用空調装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、この発明の車両用空調装置は、冷媒を、圧縮機、車室外の冷媒凝縮用のコンデンサ,第1の膨張手段又は減圧手段,車室内の空気冷却及び液体冷媒蒸発用のエバポレータ、アキュームレータの順に循環させる冷房用冷媒循環回路と、冷却水を熱発生部の冷却水通路と車室内のヒーターコアとの間で循環させる暖房用冷却水循環回路と、前記コンデンサ及び前記エバポレータと並列に接続され、前記アキュームレータを経由して前記圧縮機に接続されたバイパス流路とを備えている。また、車両用空調装置は、前記圧縮機の冷媒吐出口を前記コンデンサと前記バイパス流路とのいずれかに切り換え連通させる電磁切換弁と、前記ヒーターコアへの流路途中に介装された水用熱交換手段及び前記バイパス流路の途中に設けられて前記水用熱交換手段との間で熱の授受を行う冷媒用熱交換手段を有する水加熱用熱交換手段とを備える。更に、車両用空調装置は、前記冷却水の冷却水温度を検出する水温検出センサと、前記車室外の外気温度を検出させる外気温度センサと、前記車室内の内気温度を検出させる内気温度センサを備えている。しかも、車両用空調装置は、前記冷却水温度、前記外気温度および前記内気温度の少なくとも一つの温度条件に基づき前記電磁切換弁の切換制御を行って、前記圧縮機の冷媒吐出口を前記冷房用冷媒循環回路に接続させ且つ前記圧縮機を作動させる通常空調モードと、前記圧縮機の冷媒吐出口を前記バイパス流路に接続させ且つ前記圧縮機を作動させる補助暖房モードと、を選択実行させる制御手段を備えている。
【発明の効果】
【0013】
この構成によれば、冷房の必要な温度域と暖房の必要な温度域が重複する温度において、暖房サイクルを行うために圧縮機を作動させても、冷房サイクルと暖房サイクルの制御が競合することなく、冷房サイクルと暖房サイクルのハンチングが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係る車両用空調装置の概略配管図である。
【図2】図1の車両用空調装置のうち車室内に配設される空調ユニットの概略説明図である。
【図3】図1の車両用空調装置の制御回路図である。
【図3A】図3のコントロールユニットによるメイン制御のフローチャートである。
【図3B】図3のコントロールユニットによる補助暖房モードのフローチャートである。
【図3C】図3のコントロールユニットによる圧縮機の回転制御のフローチャートである。
【図3D】図3のコントロールユニットによる圧縮機の吐出圧制御のフローチャートである。
【図3E】図3のコントロールユニットによる制御のタイミングチャートである。
【図3F】図3のコントロールユニットによる制御の他のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[構成]
図1において、1は車両(自動車)の車室、2は車両のエンジンルーム、3はエンジンルーム2内に配設された水冷式のエンジンである。このエンジン3には、エンジン冷却のためのエンジン冷却水を流す周知のウォータージャケット(図示せず)が設けられている。
【0016】
また、車室1の前部に設けられたインストルメントパネル(図示せず)内には、車両用空調装置(車両用空調システム)4の空調ユニット5が配設されている。
<空調ユニット5>
この空調ユニット5は、図2に示したように、ブロワユニット6,クーラユニット7,ヒーターユニット8を備えている。尚、空調ユニット5のクーラユニット7,ヒーターユニット8内には、ブロワユニット6から送風される空気が流れる一連の風路5aが形成されている。
【0017】
ブロワユニット6は、ブロワ(送風ファン)6aを有すると共に、インテークユニット6bを有する。このインテークユニット6bは、外気取入口6b1と内気取入口6b2を有すると共に、外気取入口6b1と内気取入口6b2の開閉用のインテークドア6cを有する。このインテークドア6cは、モータ等のドア駆動装置(ドア駆動手段)6c1により駆動(回動)させられて、外気取入口6b1と内気取入口6b2の開閉又は開度を調整し、車室外の外気と車室内の内気との流量吸込量を調整可能に設けられている。
【0018】
そして、この外気取入口6b1から取り入れられた外気または内気取入口6b2から取り入れられた内気、或いは外気取入口6b1及び内気取入口6b2から取り入れられた外気と内気の混合された空気は、ブロワ(送風ファン)6aによりクーラユニット7へ送風されるようになっている。
【0019】
このクーラユニット7には冷房用冷媒が循環するエバポレータ(空気冷却用の熱交換器)7aが設けられている。そして、ブロワユニット6により送風される取入空気は、エバポレータ7aの図示しないエア通路を通過する際に、エバポレータ7aが熱交換により冷却することができるようになっている。そして、このエバポレータ7aを通過した空気はヒーターユニット8へ送られるようになっている。
【0020】
尚、このエバポレータ7aの上流側(即ちブロワ6aとエバポレータ7aとの間)には、風路5aの下部を開閉する風路調整ドア7bが設けられている。この風路調整ドア7bはモータ等の駆動装置(駆動手段)7b1により駆動(回動)させられるようになっている。
【0021】
ヒーターユニット8内には、エンジンの冷却水が循環するヒーターコア(空気加熱用の熱交換器)8aが設けられている。また、ヒーターコア8aの側部(図では下部)には当該ヒーターコアコアaを迂回するバイパス風路8bが設けられ、またヒーターコア8aの前面にはミックスドア8cが設けられている。そして、このミックスドア8cは、モータ等のドア駆動装置(ドア駆動手段)8c1により駆動(回動)されられて、ヒーターコア8aの上流側の図示しないエア通路(エア風路)の開度を調節することにより、ヒーターコア8aのエア通路内を流れる空気の量とバイパス風路8bを流れる空気の量との比率を調節できるようになっている。
【0022】
このヒーターコア8aの下流には混合室8dが形成され、この混合室8dには室内のデフロストグリル、ベントグリル及びフットグリルへそれぞれ連通する吹出口8eが設けられている。
<冷媒循環回路>
また、図1に示すように車両用空調装置4は、冷媒循環回路9と、暖房用冷却水循環回路10を有する。この冷媒循環回路9は、冷房用の冷凍サイクル(即ち冷房サイクル)を行わせる冷房冷媒循環回路(第1の冷媒循環回路)9aと、冷却水加熱用の冷凍サイクルを行わせるバイパス冷媒循環回路(第2の冷媒循環回路、冷却水加熱冷媒循環回路)9bを有する。
(冷房冷媒循環回路9a)
この冷房冷媒循環回路9aは、エンジン駆動される圧縮機(冷媒用コンプレッサ)11と、一端が圧縮機11の図示しない冷媒出口(冷媒出口側)に接続された第1の冷房冷媒配管11aと、この第1の冷房冷媒配管11aの他端に接続され且つ車室1外に配設された冷媒凝縮用のコンデンサ12を有する。尚、圧縮機11は、電磁クラッチCL及びプーリ(図示せず)とベルト(図示せず)等からなる動力伝達手段(全体図示せず)を介してエンジン3に連動させられるようになっている。この構成は周知の構成を採用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0023】
また、冷房冷媒循環回路9aは、冷媒入口(図示せず)がコンデンサ12の冷媒出口(図示せず)に接続されたリキッドタンク13と、一端がリキッドタンク13の冷媒出口(図示せず)に接続された第2の冷房冷媒配管13aと、この第2の冷房冷媒配管13aの他端に冷媒入口(図示せず)が接続された第1の膨張手段又は減圧手段14と、この第1の膨張手段又は減圧手段14の冷媒出口(図示せず)が接続された上述の空気冷却用のエバポレータ7aを有する。この冷房冷媒循環回路に適用される膨張手段又は減圧手段とは例えば、膨張弁や冷房冷媒配管11aの流路を絞るオリフィスである。
【0024】
この第1の膨張手段又は減圧手段14は、エバポレータ7aの冷媒出口(図示せず)から吐出(流出)する冷媒温度及び冷媒圧力を感知(検知)して、エバポレータ7aの冷媒入口(図示せず)に流入する液体冷媒の流量を負荷にあった冷媒流量になるように調整し、即ちエバポレータ7aの冷媒出口(図示せず)から吐出される(流出する)冷媒が設定した目標の(所定の)温度・圧力の過熱状態(過熱度)になるように、エバポレータ7aの冷媒入口(図示せず)に流入する液体冷媒の流量を調整するようになっている。この構成には、周知の構成を採用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0025】
更に、冷房冷媒循環回路9aは、一端がエバポレータ7aの冷媒出口(図示せず)に接続された第3の冷房冷媒配管7a1と、第3の冷房冷媒配管7a1の他端に冷媒入口(図示せず)が接続された第1の一方向弁(第1のチェックバルブ)15と、この第1の一方向弁15の冷媒出口(図示せず)に一端が接続された第4の冷房冷媒配管15aと、この第4の冷媒配管15aと圧縮機11の冷媒入口(図示せず)を接続する気液分離用のアキュームレータ16等を備えている。
【0026】
そして、圧縮機11から吐出される冷媒は、第1の冷房冷媒配管11a,コンデンサ12,リキッドタンク13,第2の冷房冷媒配管13a,第1の膨張手段又は減圧手段14,エバポレータ7a,第3の冷房冷媒配管7a1,第1の一方向弁15,第4の冷房冷媒配管15a,アキュームレータ16の順に流れた後に、圧縮機11に戻されて循環する第1の冷凍サイクルを繰り返すことができるようになっている。
【0027】
この際、圧縮機11は冷媒ガスを圧縮して高温高圧の圧縮冷媒(圧縮冷媒ガス)にし、コンデンサ12は圧縮冷媒の熱を外気に放熱して冷却することにより凝縮させて液体冷媒(凝縮冷媒、冷媒液)にし、リキッドタンク13は液体冷媒を貯留し、第1の膨張手段又は減圧手段14はリキッドタンク13からの高圧の液体冷媒を膨張させて低圧の液体冷媒(凝縮冷媒)にするようになっている。この第1の膨張手段又は減圧手段14からの液体冷媒は、エバポレータ7a内に供給されて風路5a内の空気の熱を吸熱し(奪い)、風路5a内の空気を冷却する際に、蒸発させられて冷媒ガスになる。この冷媒ガスは、第3の冷房冷媒配管7a1,第1の一方向弁15,第4の冷房冷媒配管15a及びアキュームレータ16を介して圧縮機11に戻される。
(冷却水加熱用のバイパス冷媒循環回路9b)
このバイパス冷媒循環回路9bは、圧縮機11と、第1の冷房冷媒配管11aの途中に介装された三方電磁切換弁(電磁弁)17と、一端が三方電磁切換弁17に接続され第1バイパス冷媒配管17aと、車室1外に配設され且つ第1バイパス冷媒配管17aの他端に冷媒入口(図示せず)が接続された冷媒凝縮用(冷却水加熱用)の第1の外部熱交換器18を有する。また、バイパス冷媒循環回路9bは、一端が第1の外部熱交換器18の冷媒出口(図示せず)に接続された第2バイパス冷媒配管18bと、車室1外に配設され且つ第2バイパス冷媒配管18bの他端に接続された第2の外部熱交換器18aと、この第2の外部熱交換器18aの冷媒出口(図示せず)に接続された車室1外の第2の膨張手段又は減圧手段19を有する。
【0028】
また、バイパス冷媒循環回路9bは、第2の膨張手段又は減圧手段19で膨張させられた冷媒が供給される冷媒蒸発用の第3の外部熱交換器(第2のエバポレータ即ち外部蒸発器)20と、一端が第3の外部熱交換器20の冷媒出口(図示せず)に接続された第3バイパス冷媒配管20aと、この第3バイパス冷媒配管20aの他端と第1の一方向弁15の冷媒出口(図示せず)に接続した第4の冷房冷媒配管15aの途中とを接続する第2の一方向弁21と、アキュームレータ16を有する。しかも、第2の外部熱交換器18aと第3の外部熱交換器20は一体に設けられている。
【0029】
そして、圧縮機11から吐出される冷媒は、三方電磁切換弁17,第1バイパス冷媒配管17a,第1の外部熱交換器18,第2バイパス冷媒配管18b,第2の外部熱交換器18a,第2の膨張手段又は減圧手段19,第3の外部熱交換器20,第3バイパス冷媒配管20a,第2の一方向弁21,アキュームレータ16の順に流れた後に、圧縮機11に戻されて循環する第2の冷凍サイクルを繰り返すことができるようになっている。
【0030】
尚、上述した第1の外部熱交換器18,第2の外部熱交換器18a,第3の外部熱交換器20等は冷媒用熱交換手段23を構成している。また、第1〜第3バイパス冷媒配管17a,18b,20a等はコンデンサ12及びエバポレータ7aと並列に圧縮機11に接続されたバイパス流路を構成している。従って、第1の外部熱交換器18,第2の外部熱交換器18a,第3の外部熱交換器20等を備える冷媒用熱交換手段23は、バイパス流路に介装されている。
<暖房用冷却水循環回路10>
この暖房用冷却水循環回路10は、エンジン3のウォータージャケット(図示せず)内の流路と、図示しないウォータポンプによりウォータージャケット(図示せず)の冷却水出口(図示せず)から吐出される冷却水をヒーターコア8aに流した後にウォータージャケット内の流路に戻す冷却水循環流路24を有する。
【0031】
この冷却水循環流路24は、エンジン3のウォータージャケット(図示せず)の冷却水出口(図示せず)とヒーターコア8aの冷却水入口(図示せず)を接続する(連通させている)第1の冷却水流路24aと、ヒーターコア8aの冷却水入口(図示せず)を接続する第1の冷却水出口(図示せず)とエンジン3のウォータージャケット(図示せず)の冷却水入口(図示せず)とを接続する(連通させている)第2の冷却水流路24bを有する。しかも、冷却水循環流路24の途中には水用熱交換手段25が介装されている。
【0032】
この水用熱交換手段25は、第1の冷却水流路24aの途中に設けられた第1の水用熱交換器26と、第2の冷却水流路24bの途中に設けられた第2の水用熱交換器27を有する。尚、第1の水用熱交換器26内には第1の冷却水流路24aの一部が形成され、第2の水用熱交換器27内には第2の冷却水流路24bの一部が形成される。
【0033】
そして、第1,第2の水用熱交換器26,27間には第1の外部熱交換器18が介装されている。この第1,第2の水用熱交換器26,27間には第1の外部熱交換器18等は、冷却水加熱用熱交換手段28を構成している。
【0034】
このように第1の水用熱交換器26は冷媒用の第1の外部熱交換器18と一体に設けられて、この第1の水用熱交換器26と第1の外部熱交換器18との間で熱の授受を行うことができるようになっている。この熱の授受により、圧縮機11から第1の外部熱交換器18に供給される高温高圧の圧縮冷媒の熱で第1の水用熱交換器26内のエンジン冷却水を加熱すると共に、この加熱によりガス状の高圧冷媒は第1の外部熱交換器18内で吸熱されて凝縮し液体冷媒となる。
【0035】
また、第2の水用熱交換器27も第1の外部熱交換器18と一体に設けられていて、この第2の水用熱交換器27と第1の外部熱交換器18との間で熱の授受を行うことができるようになっている。この熱の授受により、第1の外部熱交換器18からの液体冷媒は、ヒーターコア8aからエンジン3のウォータージャケット(図示せず)側に流れるエンジン冷却水を加熱するようになっている。
<コントロールユニット(制御手段)>
上述した空調ユニット5の図示しないブロワ,圧縮機11及び三方電磁切換弁17等は、車両各部を制御するオートアンプ等の図3のコントロールユニット(演算制御回路等の制御手段)29により動作制御させられるようになっている。
【0036】
また、第1の冷却水流路24aの途中には、冷却水温度を検出して検出信号を水温信号(温度信号)として出力する図示しない信号通信システムの水温検出センサ(水温検出手段)30が設けられている。
【0037】
この水温検出センサ30からの検出信号はコントロールユニット29に入力されるようになっている。
【0038】
更に、コントロールユニット29には、冷房スイッチ31からの操作信号(ON・OFF信号)及び暖房スイッチ32からの操作信号(ON・OFF信号)が入力されるようになっている。
【0039】
尚、水温検出センサ30はエンジンのウォータージャケット、又は冷却水循環流路24の少なくとも一方に設け、信号通信システムを介してコントロールユニット29に入力する。
【0040】
更に、コントロールユニット29には、空調ユニット5内への空気の吸込温度を検出する吸込温度センサ33、車室1内の温度を検出する内気温度センサ34、車室1の外の温度を検出する外気温度センサ35が接続されている。これにより、吸込温度センサ33からの吸込空気温度検出信号、内気温度センサ34からの車室内温度検出信号、外気温度センサ35からの外気温度検出信号がコントロールユニット29に入力されるようになっている。
【0041】
尚、例えば、吸込温度センサ33はエバポレータ7aの図示しないエア通路の上流側に設けられ、内気温度センサ34はインストルメントパネル車室1内側の面に設けられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0042】
しかも、コントロールユニット29には、冷媒圧力センサ36の冷媒圧力検出信号が入力されるようになっている。この冷媒圧力力センサ35は、圧縮機11と三方電磁切換弁17の間に位置させて、第1の冷房冷媒配管11aの途中に接続されている。これにより、冷媒圧力センサ35は、三方電磁切換弁17の切換位置にかかわらず圧縮機11から吐出される冷媒の圧力を検出できる。また、コントロールユニット29には、圧縮機11の回転数を検出する回転センサ37からの回転数検出信号が入力されるようになっている。
【0043】
更に、コントロールユニット29は、冷房スイッチ31,暖房スイッチ32のON・OFF信号、吸込温度センサ33,内気温度センサ34,外気温度センサ35,水温検出センサ30等からの温度検出信号、回転センサ37からの回転数検出信号等に基づき、エンジン3の回転を圧縮機11に伝達する動力伝達機構(全体図示せず)の電磁クラッチCLを断続制御して、圧縮機11を作動・停止制御することにより、車両用空調装置4を作動制御して車室1内の温度制御を行うようになっている。
【0044】
尚、冷房スイッチ31及び暖房スイッチ32のON・OFFにより、後述する作用の(I)におけるような冷媒流れを作るための(A)の通常の冷房運転(冷房サイクル)や(B)の外気温度が低い場合の暖房運転(暖房サイクル)を行うことができる。この(A)の通常の冷房運転のみを行う場合や(B)の外気温度が低い場合の暖房運転のみを行う場合、冷房スイッチ31や暖房スイッチ32は乗員の手動操作でON・OFFする構成であっても良いし、コントロールユニット29により自動的にON・OFFする構成であっても良い。
【0045】
更に、コントロールユニット29は、冷房スイッチ31がONさせられると車両用空調装置4による冷房制御を自動的に行い、暖房スイッチ32がONさせられると車両用空調装置4による暖房制御を自動的に行うようになっている。この際の制御29は、車室1外の検出温度(外気温度)や車室1内の検出温度(車内温度)と車室内の目標設定温度(設定温度)等に基づいて行われる。尚、冷房制御は外気温度が冷房可能設定温度(例えば−5°C)以上になったときに可能なり、暖房制御は外気温度が暖房可能設定温度(例えば10°)以下になったときに可能となるようにできる。この冷房可能設定温度や暖房可能設定温度設定装置で設定変更できるので、−5°Cや10°C等の数値に限定されるものではない。
【0046】
尚、(A)の通常の冷房運転のみを行う冷房運転モードや(B)の暖房運転のみを行う暖房運転モードは、モード選択スイッチ等で行うこともできる。
【0047】
また、コントロールユニット29は、(A)の通常の冷房運転のみを行う冷房運転モードや(B)の暖房運転のみを行う暖房運転モード、(A)の通常の冷房運転および(B)の暖房運転を自動的に行う自動空調モードを有する構成とできる。この際、車室1外の外気温度や車室1内の検出室内温度等に基づいて車室1内の温度が目標設定温度なるように車両用空調装置4を自動的に制御するように設定する。この場合、コントロールユニット29は、車室1の内外の検出温度等に基づいて冷房スイッチ31及び暖房スイッチ32を自動的にON・OFFする構成とする。
【0048】
また、エアコンスイッチ(空調スイッチ)38からのON・OFF信号をコントロールユニット29に入力すると共に、補助暖房スイッチ(図3E,図3FではヒートブースタスイッチHBSとして図示)39からのON・OFF信号をコントロールユニット29に入力するようにする。そして、エアコンスイッチ38がONしているときに、コントロールユニット29により冷房スイッチ31及び暖房スイッチ32のON・OFF制御を行うようにする。
【0049】
この際、コントロールユニット29による冷房スイッチ31及び暖房スイッチ32のON・OFF制御は、車両各部の温度,圧縮機11の回転数や補助暖房スイッチ39からのON・OFF状態等に基づいて行われる。この車両各部の温度としては、吸込温度センサ33,内気温度センサ34,外気温度センサ35,水温検出センサ30等からの温度検出信号、冷媒圧力センサ36の冷媒圧力検出信号,回転センサ37からの回転数検出信号等がある。しかも、コントロールユニット29は、吸込温度センサ33の温度検出信号に基づき空調ユニット5内への空気の吸込温度を求め、内気温度センサ34の温度検出信号に基づき車室1内の空気の吸込温度を求めると共に、外気温度センサ35の温度検出信号に基づいて車室1外の空気の外気温度を求めるようになっている。40はコントロールユニット29に接続されたメモリである。
尚、上述した冷房可能設定温度(例えば−5°C)や暖房可能設定温度(例えば10°)がある場合に、冷房可能設定温度(例えば−5°C)と暖房可能設定温度(例えば10°)との間の温度領域が冷房運転および暖房運転可能な領域として重複しているので、この重複する領域では通常の冷房運転を優先させる制御(後述するオート冷暖房運転制御)をコントロールユニットに29に実行させる。
[作用]
次に、このコントロールユニット29による車両用空調装置4の制御作用を説明する。尚、冷房スイッチ31及び暖房スイッチ32がマニュアルスイッチであっても、冷房スイッチ31及び暖房スイッチ32がコントロールユニット29によりON・OFF制御されるスイッチング素子であっても、(I)の(A)の通常の冷房運転(冷房サイクル)や(B)の暖房運転(暖房サイクル)における冷媒の流れが生じるので、先ず冷房運転,暖房運転の冷媒流れについて説明する。そして、冷房スイッチ31及び暖房スイッチ32がコントロールユニット29によりON・OFF制御されるスイッチング素子の場合についての制御を(A)の通常の冷房運転(冷房サイクル)や(B)の暖房運転(暖房サイクル)に基づいて(II)で説明する。
(I).冷房運転,暖房運転の冷媒流れ
(A).通常の冷房運転(冷房サイクル)
エンジン3の始動後に冷房スイッチ31からのON信号がコントロールユニット29に入力されると、コントロールユニット29は通常の冷房運転の制御を開始する。
【0050】
この際、コントロールユニット29は、三方電磁切換弁17を作動制御して、この三方電磁切換弁17により、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)と第1バイパス冷媒配管17aとの連通を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を連通させる。
【0051】
この後、コントロールユニット29は、ヒーターユニット8のドア駆動装置(ドア駆動手段)8c1を作動制御して、ミックスドア8cによりヒーターコア8aのエア通路(図示せず)の上流側を閉成すると共に、インテークユニット6bのドア駆動手段6c1を作動制御して、インテークユニット6bの外気取入口6b1を閉成すると共に内気取入口6b2を開かせる。
【0052】
これに伴い、コントロールユニット29は、ブロワ6aを作動させて内気取入口6b2から車室1内の空気を吸い込ませる。この吸い込まれた空気は、風路5aを流れてエバポレータ7aの図示しないエア通路(エア風路)内を流れて通過した後、ヒーターユニット8のバイパス風路8b,混合室8dを介して吹出口8eから車室1内に吹き出される。
【0053】
一方、コントロールユニット29は、圧縮機11を作動制御してガス状の冷媒(冷媒ガス)の圧縮を開始し、高温高圧の圧縮冷媒を第1の冷房冷媒配管11aに吐出する。この圧縮冷媒は、三方電磁切換弁17を介してコンデンサ12に供給されて、コンデンサ12で冷却され、凝縮し液体冷媒(冷媒液)となる。この液体冷媒は、リキッドタンク13に貯留された後、第2の冷房冷媒配管13aを介して第1の膨張手段又は減圧手段14に供給されて膨張(減圧)される。
【0054】
この減圧された液体冷媒は、車室1内のエバポレータ7aに供給されて、ブロワ6aから送風され且つエバポレータ7aの図示しないエア通路を流れる車室1の空気の熱を吸収し、空気の温度を低下させる。この温度が低下した空気は上述したように吹出口8eから車室1内に吹き出されて、車室1内を冷房する。
【0055】
この際、吸熱により第1の膨張手段又は減圧手段14からの液体冷媒(冷媒液)は蒸発させられてガス状の冷媒(冷媒ガス)となり、この冷媒(冷媒ガス)は第3の冷房配管7a1,第1の一方向弁15,第4の冷房冷媒配管15a,アキュームレータ16を介して圧縮機11に戻されて循環し、圧縮機11で圧縮される。
【0056】
このように通常の冷房運転(冷房サイクル)では、矢印f1で示したような冷房サイクルの冷媒流れにより、車室1内が冷房される。
(B).外気温度が低い場合の暖房運転(暖房サイクル)
また、車両の図示しないイグニッションスイッチをONさせて、エンジン3を始動させると、エンジン3のウォータージャケット(図示せず)のエンジン冷却水の水温が水温検出センサ30で検出され、この水温検出センサ30から温度検出信号が出力され、この温度検出信号がコントロールユニット29に入力される。
【0057】
この状態で、暖房スイッチ32をONさせて、このON信号を車両用空調装置4の暖房運転の指令としてコントロールユニット29に入力すると、コントロールユニット29は水温検出センサ30の温度検出信号からエンジン冷却水の温度が車室1内の暖房に必要な温度(設定温度)に達しているか否かを判断する。この設定温度は従来周知の温度設定の構成および温度設定方法の採用により設定できるので、その詳細な説明は省略する。
【0058】
そして、コントロールユニット29は、冬期等の外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に、エンジン冷却水の温度(水温)が車室1内の暖房に必要な温度(設定温度)に達していないと判断すると、三方電磁切換弁17を作動制御する。
【0059】
この際、コントロールユニット29は、三方電磁切換弁17により、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を遮断すると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを連通させる。この状態では、圧縮機11を作動させても、冷媒がコンデンサ12,リキッドタンク13,第1の膨張手段又は減圧手段14,エバポレータ7a等を流れることはない。
【0060】
この後、コントロールユニット29は、ヒーターユニット8のドア駆動装置8c1を作動制御して、ミックスドア8cによりヒーターコア8aのエア通路(図示せず)の上流側を開くと共に、インテークユニット6bのドア駆動手段6c1を作動制御して、インテークユニット6bの外気取入口6b1を閉成すると共に内気取入口6b2を開かせる。
【0061】
この状態で、コントロールユニット29は、ブロワ6aを作動させて内気取入口6b2から車室1内の空気を吸い込ませる。この吸い込まれた空気は、風路5aを流れてエバポレータ7aの図示しないエア通路(エア風路)内を流れて通過した後、ヒーターユニット8のエア通路(図示せず),混合室8dを介して吹出口8eから車室1内に吹き出される。この状態で、圧縮機11を作動させても、エバポレータ7aには上述したように冷媒が供給されていないので、ブロワ6aで送風される空気がエバポレータ7aのエア通路(図示せず)内を通過しても、空気がエバポレータ7aで冷却されることはない。
【0062】
一方、コントロールユニット29は、圧縮機11を作動させて冷媒ガスを圧縮させ、高温高圧の圧縮冷媒を第1の冷房冷媒配管11aに吐出させる。この圧縮冷媒は、三方電磁切換弁17,第1バイパス冷媒配管17a,第1の外部熱交換器18,第2バイパス冷媒配管18b,第2の外部熱交換器18a,第2の膨張手段又は減圧手段19,第3の外部熱交換器20,第3バイパス冷媒配管20a,第2の一方向弁21,アキュームレータ16等の順に流れて圧縮機11に戻され循環する。
【0063】
この際、圧縮冷媒は、第1の外部熱交換器18で放熱され凝縮されて高温高圧の液体冷媒になった後、冷媒用熱交換手段23の第2の外部熱交換器18a,減圧手段19,第3の外部熱交換器20の順に流れて、第3の外部熱交換器20から第3バイパス冷媒配管20aに流出させられる。
【0064】
これに伴い、第2の外部熱交換器18aに流入した液体冷媒の熱は、第3の外部熱交換器20内の冷媒に吸熱される。また、この吸熱された液体冷媒は、第2の外部熱交換器18aから減圧手段19に供給される。
【0065】
このとき、この液体冷媒は、第2の膨張手段又は減圧手段19で膨張・減圧させられて第3の外部熱交換器20内に流入し、第3の外部熱交換器20内で蒸発させられる。この蒸発する冷媒は、上述したように第2の外部熱交換器18aからの熱を第3の外部熱交換器20内で吸収して蒸発させられて冷媒ガスとなる。このようにして蒸発させられた冷媒ガスは、第3バイパス冷媒配管20a,第1の一方向弁15,アキュームレータ16を介して圧縮機11に戻される。
【0066】
また、エンジン3(図示しない)のウォータージャケットからエンジン冷却水は、第1の水用熱交換器26を介してヒーターコア8a内に流入した後、ヒーターコア8aから流出して第2の水用熱交換器27を介してエンジン3のウォータージャケット(図示せず)に戻されて循環する。
【0067】
これに伴い、圧縮冷媒は、第1の外部熱交換器18を流れる際に、第1の外部熱交換器18と第1の水用熱交換器26との間で熱の授受を行い、第1の水用熱交換器26内をヒーターコア8a側に流れるエンジン冷却水を加熱すると共に、第1の外部熱交換器18と第2の水用熱交換器27との間で熱の授受を行い、ヒーターコア8aから流出して第2の水用熱交換器27をウォータージャケット(図示せず)側に流れるエンジン冷却水を加熱する。
【0068】
この第1の外部熱交換器18及び第1の水用熱交換器26で加熱されたエンジン冷却水は、ヒーターコア8aに供給されて、ヒーターコア8aのエア通路(図示せず)を流れる空気を加熱して暖める。そして、この暖められた空気は、吹出口8eから車室1内に吹き出されて車室1内を暖めることになる。
【0069】
以上の作用により、圧縮機(コンプレッサ)11から吐出した高圧ガス冷媒による凝縮熱を18で該冷却水へ放熱し、且つ23で自身の低圧冷媒の蒸発熱と相殺することで圧力の高低差を設け、理想的な冷凍サイクルを形成する、即ち、圧縮機(コンプレッサ)動力分のみの熱量が該冷却水を放熱する。
【0070】
このように暖房運転(暖房サイクル)では、矢印f2で示したような暖房サイクルの冷媒流れにより、エンジン冷却水が加熱されると共に車室1内が暖房される。
II.オート冷暖房運転制御
(i).エンジン3の長時間停止後の始動初期の車両用空調装置4の空調制御
図示しないイグニッションキーを操作してコントロールユニット29を作動させた後に、イグニッションキーによりイグニッションスイッチIGNをONさせてエンジン3を作動させると、車両各部の温度(吸込温度センサ33,内気温度センサ34,外気温度センサ35,水温検出センサ30等)からの温度検出信号や、冷媒圧力センサ36の冷媒圧力検出信号、圧縮機11の回転数検出信号、補助暖房スイッチ39からのON・OFF信号等がコントロールユニット29に入力される。
【0071】
これに伴い、コントロールユニット29は、図3A〜図3Dのフローチャート及び図3E,図3Fのタイミングチャートに従って、車室内外の検出温度や圧縮機の回転数に基づく冷暖房運転制御を開始する。即ち、コントロールユニット29は、イグニッションスイッチIGNによりエンジン3を作動させると、車両各部の温度(吸込温度センサ33,内気温度センサ34,外気温度センサ35,水温検出センサ30等)からの温度検出信号や、冷媒圧力センサ36の冷媒圧力検出信号、圧縮機11の回転数、補助暖房スイッチ39からのON・OFF状態等に基づいて、冷房スイッチ31及び暖房スイッチ32のON・OFF制御や電磁クラッチCLのON・OFF(断続)制御を図3A〜図3Dのフローチャート及び図3E,図3Fのタイミングチャートに従って以下のように行う。
【0072】
この際、図3Eのタイミングチャートでは時間t1でエアコンスイッチ38がONされると共に、時間t1で補助暖房スイッチ(HBS)39がONされている状態での制御を説明する。尚、図3Fのタイミングチャートでは、時間t01でエアコンスイッチ38がONされると共に、時間t01で補助暖房スイッチ(HBS)39がONされている状態での制御を説明する。
(a).冷暖房運転切換制御
<ステップS1>
先ず、コントロールユニット29は、イグニッションスイッチIGNによりエンジン3を作動させられると共に、エアコンスイッチ38がオン操作されると、図3AのステップS1においてヒートブースターマニュアルスイッチ即ち補助暖房スイッチ39がONされたか否かを判断し、ONされていなければステップS7に移行して通常空調モードの制御を行い、ONされていればステップS2に移行する。
<ステップS2>
このステップS2においてコントロールユニット29は、マニュアルSW(ヒートブースターマニュアルスイッチ)である補助暖房スイッチ39のON時のエンジン冷却水の初期水温が65°C(設定温度)以上であるか否かを水温検出センサ30から温度検出信号から判断する。そして、コントロールユニット29は、エンジン冷却水の初期水温が65°C以上であればステップS7に移行して通常空調モードの制御を行う。また、コントロールユニット29は、エンジン冷却水の初期水温が例えば図3Eの時間t1で示したように65°C未満であればステップS3に移行する。
<ステップS3>
コントロールユニット29は、外気温度センサ35からの温度検出信号に基づいて外気温度が何度であるかを判断する。そして、コントロールユニット29は、外気温度が図3Fの時間t02〜t04で示したように−5°C以下の場合にはスイッチング素子製の暖房スイッチ32をONさせて、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを連通させて、三方電磁切換弁17の切換位置を暖房側にするようになっている。また、外気温度が図3Fの時間t04で示したように−5°Cを超えた場合にはスイッチング素子製の冷房スイッチ31をONさせて、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を連通させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを遮断させて、三方電磁切換弁17の切換位置を冷房側にするようになっている。
【0073】
また、外気温度が時間t04で示したように−5°Cを超えても10°C以下の場合には暖房をする必要性がある。しかし、エアコンスイッチ38により三方電磁切換弁17の切換位置が冷房側にある場合には、車両用空調装置24の冷房/暖房のハンチングが生じないようにするために、コントロールユニット29は冷房運転を優先するように設定されている。
【0074】
従って、ステップS2から本ステップS3に移行した場合にコントロールユニット29は、冷房スイッチ31であるスイッチング素子がOFFして、エアコン(車両用空調装置4)がクーラ(冷房モード)側か否かを判断する。そして、コントロールユニット29は、エアコン(クーラ)側であると判断すればステップS7に移行して通常空調モードの制御を行う。
【0075】
一方、コントロールユニット29は、エアコン(クーラ)側でないと判断すればステップS4に移行して、補助暖房冷媒回収モードであるヒートブースタ冷媒回収モードを開始する。
<ステップS4>
ここで、上述した(B)の暖房運転(暖房サイクル)をした後に暖房運転が停止させられた状態では、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)が遮断させられていると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとが連通させられた状態となっている。この状態で、容積の大きいコンデンサ12内およびエバポレータ7a内に残っている冷媒の量は少なければ、上述した(B)の暖房運転(暖房サイクル)後にコントロールユニット29が作動させられると共に、暖房運転(暖房サイクル)が開始されても、暖房運転に支障を来すことはない。
【0076】
しかし、上述した(A)の通常の冷房運転(冷房サイクル)をした後に、冷房運転が停止させられた状態では、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)が連通していると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとが遮断した状態となっている。この状態では、容積の大きいコンデンサ12内およびエバポレータ7a内に貯留されて残っている冷媒の量は多い。
【0077】
この状態でコントロールユニット29が作動させられると共に、暖房運転(暖房サイクル)が開始された場合、コンデンサ12内およびエバポレータ7a内に残っている冷媒は暖房運転時にエンジン冷却水の加熱のための暖房サイクルに貢献しない。
【0078】
また、冷房運転(冷房サイクル)と暖房運転(暖房サイクル)の一方が冷媒不足の状態で作動を続けた場合、圧縮機への潤滑不足が発生する恐れもある。
【0079】
従って、これらの状態を解消するために、コントロールユニット29は、上述した(A)の通常の冷房運転(冷房サイクル)を停止した後であって、本ステップS4に移行した場合に、冷媒回収モードになる。
【0080】
この冷媒回収モードにおいてコントロールユニット29は、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を連通させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを遮断させた状態を維持させる。また、コントロールユニット29は、上述した(B)の暖房運転(暖房サイクル)を停止した後に、本ステップS4に移行した場合、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を連通させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを遮断させる。
【0081】
この状態でコントロールユニット29は、図3Eの時間t1(図3Fでは時間t01)で電磁クラッチCLをONさせて、エンジン3の回転出力を圧縮機(コンプレッサ)11に伝達させる。これにより圧縮機11は、時間t1(図3Fでは時間t01)からエンジン3により回転駆動されて、冷媒の圧縮を開始する。この冷媒の圧縮は上述した(A)の通常の冷房運転(冷房サイクル)で行われるが、この際にコントロールユニット29はブロワ6aを停止した状態にする。
【0082】
これにより、上述した(A)の通常の冷房運転(冷房サイクル)における冷媒流れf1が生じて、コンデンサ12内の冷媒およびエバポレータ7a内の冷媒がアキュームレータ16に回収する運転が行われる。そして、コントロールユニット29は、ステップS4の冷媒回収運転を時間t1(図3Fでは時間t01)で開始させてステップS5に移行する。
【0083】
尚、圧縮機11には、例えば特開2003−80935号公報に開示されたような可変容量コンプレッサが用いられる。また、この可変容量コンプレッサ即ち圧縮機11は、斜板形の往復式コンプレッサであり、その斜板の傾きを外部から制御することによりピストンストロークを変化させ、吐出容量を調整する構造となっている。このために、圧縮機11は、外部から電気信号により制御可能な電磁弁等の図示しないコントロールバルブ(以下、ECVという)を備えている。例えば、このECVとして、高圧側と通じている電磁弁を用いた場合、クランクケース内と低圧側とは所定の開度の通路で連通しており、クランクケース内の圧力は低圧側へ逃げるようになっている。したがって、この電磁弁の開度調整により高圧側圧力を導入・遮断することでクランクケース内の圧力を制御することにより、ピストンに加わる圧力のバランスを変化させて斜板の傾きを変化させ、これによって圧縮機11からの冷媒の吐出容量を制御することができる。このとき、電磁弁には外部からの電気信号として、コントロールユニット29(コントロールアンプ)から所定のデューティ値(吐出容量比率)をもつデューティ信号が与えられる。そして、このときのデューティ値の大きさに応じて電磁弁の開弁時間が決まり、それに応じて圧縮機11からの吐出容量が設定される。このデューティ信号による圧縮機11のECVの制御は、特開2005−206014等に開示されたような方法を用いることができる。
【0084】
そして、このステップS4では、圧縮機11のECVの制御ためのデューティ比を100%にして、圧縮機11を作動させる。
【0085】
尚、コントロールユニット29は、上述した(B)の暖房運転(暖房サイクル)を停止した後に、本ステップS4に移行した場合、本ステップS4とステップS5の制御を省略してステップS6に移行するようにすることもできる。
【0086】
このためには、コントロールユニット29が作動させられたときに、前回の車両用空調装置4の最終制御状態をメモリ(記録装置)40に記憶(記録)させておけば良い。
<ステップS5>
このステップS5においてコントロールユニット29は、図3Fの時間t01で開始された冷媒回収モードの冷媒回収運転から時間t02後に三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを連通させて、三方電磁切換弁17の切換位置を暖房側にする。
【0087】
これに伴いコントロールユニット29は、時間t02で電磁クラッチCLをOFFさせて、エンジン3の回転から圧縮機11への動力伝達を停止させる。この際、圧縮機11の吐出側、すなわちコンデンサ12内の冷媒およびエバポレータ7a内と、アキュームレータ16内との圧力差により、コンデンサ12内の冷媒およびエバポレータ7a内の冷媒がアキュームレータ16に回収される。
【0088】
この際の冷媒回収時間は、時間t02で電磁クラッチCLをOFFさせてからの時間が冷媒回収設定時間(例えば30秒)になったか否かを判断し、冷媒回収設定時間になっていない場合にステップS4に戻ってループし、冷媒回収設定時間になったと判断するとステップS6のヒートブースタモードである補助暖房モードに移行する。
【0089】
この冷媒回収設定時間の間、エンジン冷却水の水温は図3Eで示したように時間の経過に伴い徐々に上昇する。
【0090】
また、圧縮機11内の吸込圧力が設定圧力以上になった場合には、圧縮機11内の吸込圧力が設定圧力より小さくなるまで図3Fの時間t04で電磁クラッチCLをOFFさせて、圧縮機11の作動を設定時間(例えば10秒程度)だけ停止させる。これに伴い、圧縮機11の吐出圧力がアキュームレータ16に徐々に作用して、圧縮機11の吸込圧力が小さくなり、冷媒流路全体の均圧化が図られる。
【0091】
このように冷媒流路全体の均圧化が図られると共に圧縮機11内の吸込圧力が設定圧力より小さくなった状態では、圧縮機11を再度作動させても圧縮機11内の吸込圧力が設定圧力以上に急激に上昇することはなくなる。従って、この状態に時間t05でなったときに、電磁クラッチCLをONさせて、エンジン3の回転力を圧縮機11に伝達させて圧縮機11を作動させる。
【0092】
このような冷媒流路全体の均圧化の制御をした後に、外気温度が−5°Cを超えたときに三方電磁切換弁17の切換位置が冷房側にある場合からエアコンスイッチ38を時間t06でOFFさせられると、コントロールユニット29は三方電磁切換弁17の切換位置を暖房側してt07までの設定時間(例えば30秒)だけ上述した圧力差による冷媒回収を行う。
(b).補助暖房運転モード(ヒートブースタモード)における制御
<ステップS6>
このステップS6の補助暖房モードにおいて、コントロールユニット29は図3Fの時間t03で電磁クラッチCLをONさせ、エンジン3の回転出力を圧縮機(コンプレッサ)11に伝達させてエンジン3により圧縮機11を回転駆動させ、車両用空調装置4の補助暖房モードの制御を開始する。
【0093】
ここで、図3AのステップS6の「電磁弁:ON(暖房側)」は、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを連通させて、ヒートポンプ運転(補助暖房運転、暖房サイクル)が可能な状態としたことを意味する。尚、図3AのステップS7の「電磁弁:OFF(冷房側)」は、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を連通させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを遮断させて、通常の冷房運転(冷房サイクル)をさせることが可能な状態としたことを意味する。
【0094】
コントロールユニット29は、ステップS4,5において冷媒回収モードにおいて冷媒の回収が必要ない場合には、ステップS4,5を省略して本ステップS6に移行して、電磁クラッチCLを時間t03でONさせ、エンジン3の回転出力を圧縮機(コンプレッサ)11に伝達させてエンジン3により圧縮機11を回転駆動させることもできる。
【0095】
そして、コントロールユニット29は、回転検出センサ37からの回転検出信号に基づいて圧縮機11の回転数が時間t4で示したように4000rpmになった場合には、電磁クラッチCLをOFFさせてエンジン3から圧縮機11への回転力の伝達を停止させて、圧縮機11の回転数を降下させる。
【0096】
一方、コントロールユニット29は、回転検出センサ37からの回転検出信号に基づいて圧縮機11の回転数が時間t5で示したように3500rpmより低下する傾向にある場合には、電磁クラッチCLをONさせてエンジン3から圧縮機11への回転力を伝達させて、圧縮機11の回転数を上昇させる。この後、コントロールユニット29は、回転検出センサ37からの回転検出信号に基づいて圧縮機11の回転数が時間t6で示したように3500rpmより上昇する傾向にある場合には、電磁クラッチCLをOFFさせてエンジン3から圧縮機11への回転力の伝達を停止させて、圧縮機11の回転数を降下させる。
【0097】
更に、コントロールユニット29は、水温検出センサ30からの温度検出信号に基づいてエンジン冷却水の水温が時間t2で示したように70°Cになると、電磁クラッチCLをOFFさせてエンジン3から圧縮機11への回転力の伝達を停止させて、圧縮機11の回転数を降下させる。一方、コントロールユニット29は、水温検出センサ30からの温度検出信号に基づいてエンジン冷却水の水温が時間t3で示したように65°Cになると、電磁クラッチCLをONさせてエンジン3から圧縮機11への回転力を伝達させて、圧縮機11の回転数を上昇させる。
【0098】
しかも、このような制御による補助暖房運転に際して、コントロールユニット29は、図3Cに示した圧縮機11の回転制御及び図3Dに示した圧縮機11の冷媒吐出圧力の制御を行う。先ず、圧縮機11の回転制御を図3Cに示したフローチャートに基づいて説明する。
<圧縮機11の回転制御>
コントロールユニット29による圧縮機11の制御のために、圧縮機11の最小回転数が3500rpmに設定され、圧縮機11の最大回転数が4000rpmに設定されている。
【0099】
この実施例における圧縮機11の最小回転数3500rpmや最大回転数が4000rpmという数値は圧縮機11の構成により変わるので、この数値に限定されるものではない。このような条件を一例として、コントロールユニット29による補助暖房運転時の圧縮機11の回転制御を図3Cに従って説明する。
ステップS6-1
この図3CのステップS6-1においてコントロールユニット29は、回転検出センサ37からの回転検出信号の経時的な変化を検出して、ステップS6-2に移行する。
【0100】
ここで、回転検出センサ37からの回転検出信号に基づく圧縮機11の回転数が4000rpmに向けて上昇している場合を状態(1)とし、回転検出センサ37からの回転検出信号に基づく圧縮機11の回転数が3500rpmに向けて降下している場合を状態(2)とする。
ステップS6-2
このステップS6-2においてコントロールユニット29は、状態(2)であるか否かを判断し、状態(2)でなく状態(1)であればステップS6-4に移行し、状態(2)であればステップS6-3に移行する。
ステップS6-3
このステップS6-3においてコントロールユニット29は、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを連通させて、ヒートポンプ運転(補助暖房運転、暖房サイクル)が可能な「電磁弁:ON(暖房側)」状態とする。しかも、コントロールユニット29は、電磁クラッチCLをOFFさせて、エンジン3から圧縮機11への回転伝達を停止させる。
【0101】
更に、コントロールユニット29は、圧縮機11のECVの制御のための積分値をクリアする。
【0102】
そして、コントロールユニット29は、ステップS6-1に戻ってループする。
ステップS6-4
このステップS6-4においてコントロールユニット29は、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを連通させて、ヒートポンプ運転(補助暖房運転、暖房サイクル)が可能な「電磁弁:ON(暖房側)」状態とする。
【0103】
しかも、コントロールユニット29は、電磁クラッチCLをONさせて、エンジン3から圧縮機11へ回転を伝達させ、圧縮機11を作動させる。この際、コントロールユニット29は、圧縮機11のECVの制御ためのデューティ比を100%にして圧縮機11を作動させ、圧縮機11の冷媒吐出圧Pdの目標値がPd=2200kPaになるように制御する。
【0104】
そして、コントロールユニット29は、ステップS6-1に戻ってループする。
<圧縮機11の圧力制御>
また、ステップS6では、冷媒圧力センサ36は圧縮機11の圧縮冷媒の吐出圧力を検出して冷媒圧力検出信号を出力し、この冷媒圧力検出信号がコントロールユニット29に入力されている。そして、このステップS6においてコントロールユニット29は、冷媒圧力センサ36から出力される冷媒圧力検出信号に基づいて圧縮機11の圧縮冷媒の吐出圧力が時間t8で示すように2400kPaになったときには、電磁クラッチCLをOFFさせて、エンジン3から圧縮機11への回転伝達を停止させせることにより、圧縮機11の圧縮冷媒の吐出圧力を降下させる。一方、コントロールユニット29は、冷媒圧力センサ36から出力される冷媒圧力検出信号に基づいて圧縮機11の圧縮冷媒の吐出圧力が時間t9で示すように1600kPaに降下したときには、電磁クラッチCLをONさせて、エンジン3から圧縮機11への回転力を伝達させて、圧縮機11を作動させ圧縮冷媒の吐出圧力を上昇させる。
【0105】
ここで、コントロールユニット29による圧縮機11の制御のために、圧縮冷媒の最小吐出圧力(下限界吐出圧力)Pd[kPaG]が1600に設定され、圧縮機11の圧縮冷媒の最大吐出圧力(上限界吐出圧力)Pd[kPaG]が2400に設定されている。尚、この実施例における最小吐出圧力(下限界吐出圧力)Pd[kPaG]の1600という数値や最大吐出圧力(上限界吐出圧力)Pd[kPaG]の2400という数値は圧縮機11の構成により変わるので、この数値に限定されるものではない。
【0106】
従って、コントロールユニット29は、冷媒圧力センサ36から出力される冷媒圧力検出信号に基づいて圧縮機11の圧縮冷媒の目標Pd(目標吐出圧力)を求めて、この目標Pdすなわち目標吐出圧力Pdが2200kPaとなるように、圧縮機11のECVの制御のためのデューティ比を制御すると共に、上述した電磁クラッチCLのON・OFF制御を行う。この際、圧縮機11のECVの制御のためのデューティ比の制御は比例積分制御により実行される。
【0107】
しかも、このような圧力制御は、図3Dのフローチャートに基づいて行うことにより、目標吐出圧力Pd2200kPaが得られるように制御する。
ステップS6-5
即ち、ステップS6-5においてコントロールユニット29は、コントロールユニット29は、冷媒圧力センサ36の冷媒圧力検出信号の経時的な変化を検出して、ステップS6-6に移行する。ここで、圧縮機11の冷媒吐出圧力が最大吐出圧力(上限界吐出圧力)Pd[kPaG]が2400に向けて上昇している場合を状態(1)とし、最大吐出圧力(上限界吐出圧力)Pd[kPaG]が2400から最小吐出圧力(下限界吐出圧力)Pd[kPaG]が1600に向けて降下している場合を状態(2)とする。
ステップS6-6
このステップS6-6においてコントロールユニット29は、状態(2)であるか否かを判断し、状態(2)でなく状態(1)であればステップS6-8に移行し、状態(2)であればステップS6-7に移行する。
ステップS6-7
このステップS6-7においてコントロールユニット29は、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを連通させて、ヒートポンプ運転(補助暖房運転、暖房サイクル)が可能な「電磁弁:ON(暖房側)」状態とする。しかも、コントロールユニット29は、電磁クラッチCLをOFFさせて、エンジン3から圧縮機11への回転伝達を停止させる。
【0108】
更に、コントロールユニット29は、圧縮機11のECVの制御のための積分値をクリアする。
【0109】
そして、コントロールユニット29は、ステップS6-5に戻ってループする。
ステップS6-8
このステップS6-8においてコントロールユニット29は、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを連通させて、ヒートポンプ運転(補助暖房運転、暖房サイクル)が可能な「電磁弁:ON(暖房側)」状態とする。
【0110】
しかも、コントロールユニット29は、電磁クラッチCLをONさせて、エンジン3から圧縮機11へ回転を伝達させ、圧縮機11を作動させる。この際、コントロールユニット29は、圧縮機11のECVの制御ためのデューティ比を100%にして圧縮機11を作動させ、圧縮機11の冷媒吐出圧Pdの目標値がPd=2200kPaになるように制御する。
【0111】
そして、コントロールユニット29は、ステップS6-5に戻ってループする。
(c).通常冷房運転
<ステップS7>
このステップS7においてコントロールユニット29は、外気温度が10°Cを超える場合、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を連通させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを遮断させている。一方、コントロールユニット29は、電磁クラッチCLをONさせて、上述した(A)の通常の冷房運転(冷房サイクル)の制御を実行する。
(ii).エンジン3の短時間停止後の始動初期の車両用空調装置4の空調制御
次に、暖房運転をしている車両を停車すると共にエンジン3を停止した後に、エンジン3を再始動して暖房運転を再開した場合の車両用空調装置4の空調制御を説明する。
【0112】
この状態をエンジン3の停止時における車両用空調装置4の空調制御状態をメモリ40に記憶させておくことにより、エンジン3を再始動して暖房運転を再開した場合、補助暖房のための冷媒回収モードは必要がなくなる。
【0113】
また、このエンジン3の停止時における暖房運転中のエンジン冷却水の水温が、65°Cから70°Cに向けて上昇している状態を(1)とし、70°Cから65°Cに向けて降下している状態を(2)とする。この状態も、エンジン3の停止時にメモリ40に記憶させておくことにより、車両用空調装置4の暖房運転の制御を最初から行わせるか、継続を停止した時点から行うか否かの判断を行うことができる。そして、車両用空調装置4の暖房運転の制御を停止した時点から継続する場合には、車室1内の暖房を開始する時間を短縮できる。
【0114】
従って、コントロールユニット29は、暖房運転状態からエンジン3が停止した後に、短時間でエンジン3が作動させられたときに、図3Bのフローチャートに従って暖房運転の制御を実行するようになっている。この暖房運転の制御を以下に説明する。
(a).冷暖房運転切換制御
<ステップS10>
先ず、コントロールユニット29は、イグニッションスイッチIGNによりエンジン3が作動させられると共に、エアコンスイッチ38がオン操作されると、図3AのステップS1においてヒートブースターマニュアルスイッチ即ち補助暖房スイッチ39がONさせられたか否かを判断し、ONさせられていなければステップS14に移行して通常空調モードの制御を行い、ONさせられていればステップS11に移行する。
<ステップS11>
このステップS11においてコントロールユニット29は、冷房スイッチ31であるスイッチング素子がOFFしてエアコン(クーラ)側か否か、エアコン(車両用空調装置4)がクーラ(冷房)側か否かを判断する。そして、コントロールユニット29は、エアコン(クーラ)側であると判断すればステップS14に移行して通常空調モードの制御を行う。
【0115】
一方、コントロールユニット29は、エアコン(クーラ)側であないと判断すればステップS12に移行する。
<ステップS12>
このステップS12においてコントロールユニット29は、エンジン3の停止時における暖房運転中の状態が状態(1)であるか否か即ちエンジン冷却水の水温が65°Cから70°Cに向けて上昇している状態であるか否かを判断し、状態(1)でなければステップS14に移行し、状態(1)であればステップS13に移行する。
<ステップS13>
このステップS13においてコントロールユニット29は、上述した図3AのフローチャートにおけるステップS6、図3CのフローチャートにおけるステップS6-1〜6-4、図3DにおけるけるステップS6-5〜S6-8と同じ制御を実行して、ステップS10に戻りループする。
<ステップS14>
このステップS14においてコントロールユニット29は、ヒートブースタモードである補助暖房運転の待機モードになる。この待機モードにおいてコントロールユニット29は、三方電磁切換弁17を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とコンデンサ12の冷媒入口(図示せず)を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口(図示せず)とバイパス流路の第1バイパス冷媒配管17aとを連通させた状態として、ヒートブースタモードである補助暖房モードをできる状態とし、ステップS15に移行する。
【0116】
尚、この待機モードにおいてコントロールユニット29は、電磁クラッチCLをOFFさせて、エンジン3から圧縮機(コンプレッサ)11への回転伝達を停止させる。この状態では、コントロールユニット29は、圧縮機11のECVのデューテイ制御を行わないので、デューテイ制御は0%となる。
<ステップS15>
このステップS15においてコントロールユニット29は、ヒートブースタモードである補助暖房運転の待機モードになってからの時間をカウントし、所定秒数(たとえば10秒)経過したか否かを判断する。そして、コントロールユニット29は、所定秒数経過していなければステップS14に戻ってループし、所定秒数経過していれば、ステップS16に移行する。
<ステップS16>
このステップS16においてコントロールユニット29は、図3BのフローチャートのステップS7と同じ通常空調モードにおける制御を実行する。
【0117】
以上説明したように、この発明の実施の形態の車両用空調装置は、冷媒を、圧縮機、車室1外の冷媒凝縮用のコンデンサ12,第1の膨張手段又は減圧手段14,エバポレータ7a,アキュームレータ16の順に循環させる冷房用冷媒循環回路(9)を有する。また、この車両用空調装置は、冷却水を熱発生部の冷却水通路と車室1内のヒーターコアとの間で循環させる暖房用冷却水循環回路(10)を有する。この冷却水は、エンジン駆動式の車両であればエンジン(熱発生部)のウォータージャケット(冷却水通路)に循環されるエンジン冷却水であり、モータ駆動式の車両であれば車両駆動用の電動モータ(熱発生部)のモータハウジングに設けられたウォータージャケット(冷却水通路)内のモータ冷却水である。また、冷却水は、車両の駆動又は作動時に発熱する二次電池等の車両発熱部以外の車両発熱部の冷却に利用される発熱部冷却水であっても良い。尚、車両駆動用のエンジンや電動モータ、電動モータへの電力供給源である二次電池等は、車両駆動装置ということができるし、車両動作時の発熱部ということもできる。
【0118】
また、車両用空調装置は、前記コンデンサ12及び前記エバポレータ7aと並列に接続され、前記アキュームレータ16を経由して前記圧縮機11に接続されたバイパス流路と、前記圧縮機11の冷媒吐出口と前記コンデンサ12とのいずれかに切り換え連通させる電磁切換弁(三方電磁切換弁17)を有する。更に、車両用空調装置は、前記ヒーターコア8aへの流路途中に介装された水用熱交換手段(水用熱交換装置)25及び前記バイパス流路の途中に設けられて前記水用熱交換手段25との間で熱の授受を行う冷媒用熱交換手段(冷媒用熱交換装置)を有する冷却水加熱用熱交換手段(冷水加熱用熱交換装置)28を有する。更に、車両用空調装置は、前記冷却水の冷却水温度を検出する水温検出センサ30と、前記車室外の外気温度を検出させる外気温度センサ35と、前記車室内の内気温度を検出させる内気温度センサ34を備えている。しかも、車両用空調装置は、前冷却水温度、前記外気温度および前記内気温度の少なくとも一つの温度条件に基づき前記電磁切換弁(三方電磁切換弁17)の切換制御を行って、前記圧縮機11の冷媒吐出口を前記冷房用冷媒循環回路9aに接続させ且つ前記圧縮機11を作動させる通常空調モードと、前記圧縮機11の冷媒吐出口を前記バイパス流路に接続させ且つ前記圧縮機11を作動させる補助暖房モードと、を選択実行させる制御手段(制御装置であるコントロールユニット29)を有する。
【0119】
この構成によれば、冷房の必要な温度域と暖房の必要な温度域が重複する温度において、暖房サイクルを行うために圧縮機を作動させても、通常空調モードと補助暖房モードとを選択実行させることで、冷房サイクルと暖房サイクルの制御が競合することなくできるので、冷房サイクルと暖房サイクルのハンチングが生じない。
【0120】
また、この発明の実施の形態の車両用空調装置は、ONさせたときに前記制御手段を前記通常空調モードにさせる空調スイッチ(エアコンスイッチ)38と、前記通常空調モードにおいて冷房モードになっていない状態のときに前記制御手段(コントロールユニット29)を前記補助暖房モードに切り換えるための補助暖房スイッチ39と、を備えている。
【0121】
この構成によれば、制御手段を通常空調モードにさせる空調スイッチと補助暖房モードに切り換えるための補助暖房スイッチを設けているので、冷房の必要な温度域と暖房の必要な温度域が重複する温度域があっても、空調スイッチと補助暖房スイッチの操作により通常空調モード補助暖房モードとの切換を行うことで、暖房サイクルを行うために圧縮機を作動させても、冷房サイクルと暖房サイクルの制御が競合することなく、冷房サイクルと暖房サイクルのハンチングが生じない。
【0122】
更に、この発明の実施の形態の車両用空調装置は、補助暖房スイッチ39を備え、前記制御手段(コントロールユニット29)は、前記冷房モードになっている状態のときに前記外気温度が冷房開始設定温度以上となった場合、前記圧縮機11を作動制御して通常冷房運転を行う一方、前記冷房モードになっていない状態のときに前記補助暖房スイッチ39がONさせられている場合、前記外気温度が暖房開始設定温度以下で且つ前記冷却水の温度が冷却水加熱開始設定温度以下になったときに前記補助暖房モードになるように設定されている。
【0123】
この構成によれば、冷房の必要な温度域と暖房の必要な温度域が重複する温度域において、暖房サイクルを行うために圧縮機を作動させても、通常空調モードを優先させるようにしているので、冷房サイクルと暖房サイクルの制御が競合することなく、冷房サイクルと暖房サイクルのハンチングが生じない。
【符号の説明】
【0124】
1・・・車室
7a・・・エバポレータ
8a・・・ヒーターコア
9・・・冷媒循環回路
9a・・・冷房用冷媒循環回路(冷房回路)
10・・・暖房用冷却水循環回路
11・・・圧縮機
12・・・コンデンサ
14・・・第1の膨張手段又は減圧手段
17・・・三方電磁切換弁(電磁切換弁)
18・・・第1の外部熱交換器
18a・・・第2の外部熱交換器
19・・・第2の膨張手段又は減圧手段
20・・・第3の外部熱交換器
23・・・冷媒用熱交換手段
26・・・第1の水用熱交換器(水用熱交換手段)
27・・・第2の水用熱交換器(水用熱交換手段)
28,28a,28b・・・冷却水加熱用熱交換手段
29・・・コントロールユニット(制御手段)
30・・・水温検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を、圧縮機、車室外の冷媒凝縮用のコンデンサ,第1の膨張手段又は減圧手段,車室内の空気冷却及び液体冷媒蒸発用のエバポレータ、アキュームレータの順に循環させる冷房用冷媒循環回路と、
冷却水を熱発生部の冷却水通路と車室内のヒーターコアとの間で循環させる暖房用冷却水循環回路と、
前記コンデンサ及び前記エバポレータと並列に接続され、前記アキュームレータを経由して前記圧縮機に接続されたバイパス流路と、
前記圧縮機の冷媒吐出口を前記コンデンサと前記バイパス流路とのいずれかに切り換え連通させる電磁切換弁と、
前記ヒーターコアへの流路途中に介装された水用熱交換手段及び前記バイパス流路の途中に設けられて前記水用熱交換手段との間で熱の授受を行う冷媒用熱交換手段を有する水加熱用熱交換手段とを備えると共に、
前記冷却水の冷却水温度を検出する水温検出センサと、
前記車室外の外気温度を検出させる外気温度センサと、
前記車室内の内気温度を検出させる内気温度センサと、
前記冷却水温度、前記外気温度および前記内気温度の少なくとも一つの温度条件に基づき前記電磁切換弁の切換制御を行って、前記圧縮機の冷媒吐出口を前記冷房用冷媒循環回路に接続させ且つ前記圧縮機を作動させる通常空調モードと、前記圧縮機の冷媒吐出口を前記バイパス流路に接続させ且つ前記圧縮機を作動させる補助暖房モードと、を選択実行させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記制御手段は、前記通常空調モードにさせる空調スイッチと、
前記通常空調モードにおいて冷房モードになっていない状態のときに前記制御手段を前記補助暖房モードに切り換えるための補助暖房スイッチと、
を備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
補助暖房スイッチを備え、
前記制御手段は、前記通常空調モードにおいて冷房モードになっている状態のときに前記外気温度が冷房開始設定温度以上となった場合、前記圧縮機を作動制御して通常冷房運転を行う一方、前記通常空調モードにおいて冷房モードになっていない状態のときに前記補助暖房スイッチがONさせられている場合、前記外気温度が暖房開始設定温度以下で且つ前記冷却水の温度が冷却水加熱開始設定温度以下になったときに前記補助暖房モードになることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【公開番号】特開2011−126491(P2011−126491A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289283(P2009−289283)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】