説明

車両用空調装置

【課題】後席の乗員の快適性を高める。
【解決手段】ケーシング12内には、運転席側エアミックス空間R3Drと助手席側エアミックス空間R3Psとが形成されている。ケーシング12内には、運転席側エアミックスダンパ13Drと、助手席側エアミックスダンパ13Psとが配設されている。さらに、ケーシング12には、運転席側エアミックス空間R3Drに連通する運転席側通路R7Drと、助手席側エアミックス空間R3Psに連通する助手席側通路R7Psとが設けられるとともに、車室の後席へ向けて延びる後席用ダクト69と、後席側ダンパ71とが設けられている。後席側ダンパ71により、運転席側通路R7Drと助手席側通路R7Psとの開度を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後席へ空調風を供給するように構成された車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用空調装置としては、温度調節した空調風を車室の前席だけでなく、後席にも供給するように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の車両用空調装置は、車室の運転席側に供給する空調風の温度と、助手席側に供給する空調風の温度とを個別に設定可能な、いわゆる左右独立温度コントロールタイプである。この空調装置のケーシング内には、温風通路及び冷風通路が連通する運転席側エアミックス空間と助手席側エアミックス空間とが形成されるとともに、個別に動作する運転席側エアミックスダンパと助手席側エアミックスダンパとが配設されている。また、ケーシングには、運転席側及び助手席側エアミックス空間の両方に連通して後席まで延びる後席用ダクトが設けられている。運転席側及び助手席側エアミックス空間の空調風は、運転席及び助手席だけでなく、後席用ダクトを通って後席へも導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−58939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、後席用ダクトを運転席側及び助手席側の両エアミックス空間に連通させた場合には、両方の空調風が混ざった状態で後席に供給されることになる。左右独立温度コントロールタイプの空調装置では、運転席側と助手席側とで空調風の温度が異なっている場合が多く、従って、後席に供給される空調風の温度は、運転席側に供給される温度でもなく、助手席側に供給される温度でもなく、成り行きの温度となる。そのような温度の空調風を後席へ供給しても後席の乗員の快適性を高めることができるとは限らない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、左右独立温度コントロールタイプの空調装置では運転席側と助手席側とで異なる温度の空調風を生成している点に着目し、このことを利用して後席の乗員の快適性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、温風が流通する温風通路と、冷風が流通する冷風通路と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第1エアミックス空間と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第2エアミックス空間とが形成されたケーシングと、上記ケーシング内に配設され、上記第1エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第1エアミックスダンパと、上記ケーシング内に配設され、上記第2エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第2エアミックスダンパとを備え、上記第1エアミックス空間で生成された空調風を車室の運転席側へ供給する一方、上記第2エアミックス空間で生成された空調風を車室の助手席側へ供給するように構成された車両用空調装置であって、上記第1エアミックス空間にのみ連通して車室の後席へ向けて延び、該第1エアミックス空間で生成された空調風を後席へ導く後席用ダクトを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
この構成によれば、第1エアミックス空間で生成された空調風のみが後席へ供給されることになる。第1エアミックス空間の空調風は運転席へ供給されるものなので、通常、運転席の乗員が快適に感じる温度に設定されている。また、車両の運転時には運転席に乗員が必ず座っているので、第1エアミックス空間で生成される空調風の温度は、快適に感じる温度から大きくかけ離れることはない。
【0008】
そして、運転席の乗員が快適に感じる温度の空調風が同じ車室内の後席へ供給されることになるので、後席の乗員の快適性が高まる。
【0009】
第2の発明は、温風が流通する温風通路と、冷風が流通する冷風通路と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第1エアミックス空間と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第2エアミックス空間とが形成されたケーシングと、上記ケーシング内に配設され、上記第1エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第1エアミックスダンパと、上記ケーシング内に配設され、上記第2エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第2エアミックスダンパとを備え、上記第1エアミックス空間で生成された空調風を車室の運転席側へ供給する一方、上記第2エアミックス空間で生成された空調風を車室の助手席側へ供給するように構成された車両用空調装置であって、上記第2エアミックス空間にのみ連通して車室の後席へ向けて延び、該第2エアミックス空間で生成された空調風を後席へ導く後席用ダクトを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、第2エアミックス空間の空調風は助手席へ供給されるものなので、通常、助手席の乗員が快適に感じる温度に設定されている。この空調風が同じ車室内の後席へ供給されることになるので、後席の乗員の快適性が高まる。
【0011】
また、助手席に乗員が座っていない場合には、後席の乗員がより一層快適に感じるような温度の空調風を第2エアミックス空間で生成し、それを後席へ供給することが可能になる。
【0012】
第3の発明は、温風が流通する温風通路と、冷風が流通する冷風通路と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第1エアミックス空間と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第2エアミックス空間とが形成されたケーシングと、上記ケーシング内に配設され、上記第1エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第1エアミックスダンパと、上記ケーシング内に配設され、上記第2エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第2エアミックスダンパとを備え、上記第1エアミックス空間で生成された空調風を車室の運転席側へ供給する一方、上記第2エアミックス空間で生成された空調風を車室の助手席側へ供給するように構成された車両用空調装置であって、上記ケーシングには、上記第1エアミックス空間に連通して該第1エアミックス空間で生成された空調風が流通する第1通路と、上記第2エアミックス空間に連通して該第2エアミックス空間で生成された空調風が流通する第2通路とが設けられるとともに、該第1通路及び第2通路に接続され、車室の後席へ向けて延びる後席用ダクトと、上記第1通路乃至上記第2通路の開度を変更する後席用ダンパとが設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、第1エアミックス空間で生成された空調風が第1通路を流れ、第2エアミックス空間で生成された空調風が第2通路を流れる。そして、後席用ダンパによって第1通路乃至第2通路の開度が変更されて、第1通路乃至第2通路から後席用ダクトへ流入する空気量が変更される。これにより、後席用ダクトを流通する空調風の温度を変更することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、車室の運転席側へ供給する空調風を生成する第1エアミックス空間にのみ連通する後席用ダクトを備えているので、後席の乗員が快適に感じる温度から大きくかけ離れていない温度の空調風を後席に供給でき、後席の乗員の快適性を向上させることができる。
【0015】
第2の発明によれば、助手席に乗員が座っている場合には、助手席の乗員が快適に感じる温度の空調風を後席に供給でき、また、助手席に乗員が座っていない場合には、後席の乗員が快適に感じる温度の空調風を第2エアミックス空間で生成して後席へ供給することができ、後席の乗員の快適性を向上させることができる。
【0016】
第3の発明によれば、第1エアミックス空間から後席用ダクトに流入する空調風の量乃至第2エアミックス空間から後席用ダクトに流入する空調風の量を変更できるので、後席へ供給する空調風の温度を後席の乗員が快適に感じるように変更でき、後席の乗員の快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図5のI−I線断面図である。
【図2】実施形態1にかかる空調装置の側面図である。
【図3】空調ユニットの左側面図である。
【図4】空調ユニットの分解図である。
【図5】空調ユニットを車両後側から見た図である。
【図6】空調ユニットの底面図である。
【図7】空調装置のブロック図である。
【図8】後席温度調節制御のフローチャートである。
【図9】運転席側低温時制御のフローチャートである。
【図10】助手席側低温時制御のフローチャートである。
【図11】実施形態2にかかる図5相当図である。
【図12】実施形態3にかかる図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1にかかる車両用空調装置1の断面構造を示すものである。この空調装置1は、図2に示すように自動車の車室Aに配設されている。尚、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0020】
上記空調装置1が搭載される車両のフロアパネルF上には、前席を構成する運転席S1及び助手席S2がそれぞれ右側及び左側に配設されている。また、フロアパネルF上には運転席S1及び助手席S2の後方に後席S3も配設されている。さらに、車室Aの前端部には、インストルメントパネルPが配設されている。
【0021】
空調装置1は、図示しない送風機から送風された空気を温度調節して車室Aの各部に送風するように構成された空調ユニット2と、この空調ユニット2を制御する制御装置3とを備えている。空調ユニット2及び送風機はインストルメントパネルP内部に配設されている。空調ユニット2は、インストルメントパネルP内部の左右方向略中央部に位置付けられ、送風機は左側(助手席S1の前方)に位置付けられている。送風機と空調ユニット2とは、図4及び図5に示す中間ダクト3によって接続されている。
【0022】
図4に示すように、空調ユニット2は、エバポレータ10及びヒータコア11と、これらを収容するケーシング12とを備えている。また、ケーシング12内には、運転席側エアミックスダンパ13Dr、助手席側エアミックスダンパ13Ps、デフロスタダンパ14、ベントダンパ15及びヒートダンパ16が配設されている。
【0023】
ケーシング12は、樹脂材を成形してなるものであり、左右方向に分割された部材を組み合わせて構成されている。図1に示すように、ケーシング12の内部には、送風機から送風された空気が流れる空気通路Rが形成されている。空気通路Rの上流端はケーシング12の前端部に位置しており、ケーシング12の側壁に形成された空気流入口20に連通している。空気流入口20は上下方向に長い矩形状とされている。
【0024】
空気通路Rは、全体として後側へ向けて延びている。空気通路Rは、エバポレータ配設部(冷風通路)R1、ヒータコア配設部(温風通路)R2、運転席側エアミックス空間(第1エアミックス空間)R3Dr、助手席側エアミックス空間(第2エアミックス空間)R3Ps(図5に示す)、デフロスタ吹出通路R4、ベント吹出通路R5及びヒート吹出通路R6とを有している。
【0025】
図4に示すように、ケーシング12内には、該ケーシング12内を左右に分割するための仕切板4が配設されている。仕切板4は、上下方向に延びており、ケーシング12内の左右方向略中央部に位置している。仕切板4よりも右側の部分が運転席側エアミックス空間R3Drとされ、仕切板4よりも左側の部分が助手席側エアミックス空間R3Psとされている。
【0026】
図1に示すように、エバポレータ配設部R1には、上記エバポレータ10が空気の流れを横切るようにして配設されている。エバポレータ10は、空気を冷却するための冷却用熱交換器であり、冷凍サイクルの一要素を構成する周知のものである。エバポレータ10には、図4に示す冷媒配管10a,10aが接続されており、冷媒配管10a,10aを介して冷媒が給排されるようになっている。このエバポレータ10の空気通過面は、図1に示すように、空気流入口20の長手方向に沿って略鉛直に延びている。ケーシング12内に導入された空気の全量がエバポレータ10を通過する。
【0027】
ケーシング12の底壁部には、エバポレータ10よりも後側の部位からケーシング12内へ向けて上方へ突出する突出板22が形成されている。突出板22よりも前側には、エバポレータ10の表面に発生した凝縮水を排水するためのドレン部21(図2及び図3に示す)が形成されている。
【0028】
図1に示すように、ケーシング12の突出板22よりも後側の部分が上記ヒータコア配設部R2である。突出板22の上側には、ヒータコア配設部R2とエバポレータ配設部R1とを連通させるための上流側開口部23が形成されている。ケーシング12の底壁部の突出板22よりも後側は、前側に比べて下方に位置するように膨出している。ヒータコア配設部R2は、上流側開口部23から下方へ延びた後、上方へ向けて湾曲して延びている。
【0029】
ヒータコア配設部R2には、上記ヒータコア11が空気の流れを横切るようにして配設されている。ヒータコア11は、空気を加熱するための加熱用熱交換器である。ヒータコア11には、図4に示すように、ヒータ配管11a,11aが接続されており、ヒータ配管11a,11aを介してエンジンの冷却水が給排されるようになっている。ヒータコア11の空気通過面は上側へ行くほど後側に位置するように傾斜して延びている。突出板22の上端部には、ヒータコア11の上端部を保持するためのサポート部24が形成されている。このサポート部24は、上流側開口部23よりも後方へ延びる板状に形成されている。
【0030】
ケーシング12内の突出板22の上方には、隔壁25が設けられている。隔壁25は、ケーシング12の上壁部のエバポレータ10よりも後側の部位から後方へ向けて延びている。隔壁25は、その後側寄りの部位が最も下に位置するように下方へ折れ曲がった形状となっている。
【0031】
ケーシング12内の隔壁25よりも上側の部分が上記運転席側及び助手席側エアミックス空間R3Dr,R3Psである。隔壁25の前側には、エバポレータ配設部R1に連通する冷風吹出口26が形成されている。この冷風吹出口26は、上流側開口部23と略同じ形状とされている。隔壁25の冷風吹出口26よりも後側には、温風吹出口27が形成されている。この温風吹出口27の前後方向の寸法は、冷風吹出口26の同方向の寸法よりも短く設定されており、温風吹出口27の方が開口面積が小さくなっている。
【0032】
ケーシング12内の突出板22と隔壁25との間には、上記運転席側エアミックスダンパ13Dr及び助手席側エアミックスダンパ13Ps(図4に示す)が配設されている。
【0033】
運転席側エアミックスダンパ13Drは、回動軸30と、回動軸30の外周面から径方向に延びる板状の主ダンパ部31a及び補助ダンパ部31bとを有する、いわゆるバタフライダンパである。回動軸30と主ダンパ部31a及び補助ダンパ部31bとは、樹脂材の一体成形品である。回動軸30は、左右方向に延びており、冷風吹出口26と温風吹出口27との間に位置付けられている。回動軸30の右端部はケーシング12の右側壁に回動可能に支持され、左端部は仕切板4に回動可能に支持されている。回動軸30の右端部は、ケーシング12の外方へ突出している。ケーシング12の右側壁には、図5に示すように、運転席側エアミックスダンパ13Drを回動させるための運転席側エアミックス用アクチュエータ35が設けられている。運転席側エアミックス用アクチュエータ35の出力軸は、回動軸30の右端部に連結されており、運転席側エアミックス用アクチュエータ35の動作によって運転席側エアミックスダンパ13Drが回動するようになっている。
【0034】
図1に示すように、主ダンパ部31aは、冷風吹出口26や上流側開口部23を閉塞可能な略矩形状とされており、エアミックスダンパ13Drがケーシング12に取り付けられた状態で前方へ延びるようになっている。
【0035】
補助ダンパ部31bは、主ダンパ部31aよりも小さく、温風吹出口27を閉塞可能な略矩形状とされており、エアミックスダンパ13Drがケーシング12に取り付けられた状態で後方へ延びるようになっている。つまり、主ダンパ部31aと補助ダンパ部31bとのなす角度は略180゜である。
【0036】
図1に実線で示すように、主ダンパ部31aが下方へ移動するように運転席側エアミックスダンパ13Drが回動すると、ヒータコア配設部R2の上流側である上流側開口部23が主ダンパ部31aによって閉塞され、かつ、ヒータコア配設部R2下流側である温風吹出口27が補助ダンパ部31bによって閉塞される。この状態では、冷風のみが運転席側エアミックス空間R3Drに流入することになり、いわゆるフルコールドモードとなる。
【0037】
一方、図1に仮想線で示すように、主ダンパ部31aが上方へ移動するように運転席側エアミックスダンパ13Drが回動すると、主ダンパ部31aによって冷風吹出口26が閉塞され、かつ、補助ダンパ部31bによって温風吹出口27が開放される。この状態では、温風のみが運転席側エアミックス空間R3Drに流入することになる。
【0038】
このように、運転席側エアミックスダンパ13Drの回動角度によって上流側開口部23、冷風吹出口26及び温風吹出口27の開度が変更される。これにより、運転席側エアミックス空間R3Drに流入する冷風量及び温風量が変更されて運転席側エアミックス空間R3Drで生成される空調風の温度が変化する。
【0039】
助手席側エアミックスダンパ13Psも運転席側と同様に、回動軸と、回動軸の外周面から径方向に延びる板状の主ダンパ部及び補助ダンパ部(図示せず)とを有するバタフライダンパである。助手席側エアミックスダンパ13Psの回動軸の左端部はケーシング12の左側壁に回動可能に支持され、右端部は仕切板4に回動可能に支持されている。ケーシング12の左側壁には、図5に示すように、助手席側エアミックスダンパ13Psを回動させるための助手席側エアミックス用アクチュエータ36が設けられている。助手席側エアミックス用アクチュエータ36の出力軸は、回動軸の左端部に連結されており、助手席側エアミックス用アクチュエータ36の動作によって助手席側エアミックスダンパ13Psが回動するようになっている。
【0040】
つまり、運転席側エアミックスダンパ13Drと、助手席側エアミックスダンパ13Psとは個別に動作するので、運転席側エアミックス空間R3Dr及び助手席側エアミックス空間R3Psで生成される空調風の温度を互いに異ならせることができる。尚、上流側開口部23及び温風吹出口27の2つだけを開閉するダンパを設けてもよいし、冷風吹出口26のみを開閉するダンパを設けてもよい。
【0041】
ケーシング12の上部には、デフロスタダクト部45が形成されている。デフロスタダクト部45は、運転席側及び助手席側エアミックス空間R3Dr,R3Psの上部に連通し、上方へ延びており、上記デフロスタ吹出通路R4を形成するためのものである。上記デフロスタダンパ14は、デフロスタ吹出通路R4の上流端に配設されている。このデフロスタダンパ14は、エアミックスダンパ13Dr,13Psと同様なバタフライダンパであり、左右方向に延びる回動軸47と、一対の板状ダンパ部48,48とを備えている。このデフロスタダンパ14によりデフロスタ吹出通路R4の上流端が開閉されるようになっている。また、デフロスタダクト部45の下流端は、インストルメントパネルPの前端に形成されているデフロスタ口(図示せず)に接続されている。
【0042】
ケーシング12の後側上部には、ベントダクト部50が形成されている。ベントダクト部50は、運転席側及び助手席側エアミックス空間R3Dr,R3Psの前部に連通し、前方へ延びており、上記ベント吹出通路R5を形成するためのものである。図5に示すように、ベントダクト部50内は、左右方向に仕切られており、その右側が運転席側エアミックス空間R3Drに連通し、左側が助手席側エアミックス空間R3Psに連通している。
【0043】
図1に示すように、上記ベントダンパ15は、ベント吹出通路R5の上流端に配設されている。このベントダンパ15は、左右方向に延びる回動軸51と、一対の板状ダンパ部52,52とを備えたバタフライダンパである。このベントダンパ15によりベント吹出通路R5の左右の両上流端が開閉されるようになっている。また、ベントダクト部50の右側の下流端は、インストルメントパネルPの右側に形成されている運転席用ベント口(図示せず)に接続され、ベントダクト部50の左側の下流端は、インストルメントパネルPの左側に形成されている助手席用ベント口(図示せず)に接続されている。
【0044】
ケーシング12の前側には、ヒートダクト部55が形成されている。このヒートダクト部55は、上記ヒート吹出通路R6を形成するためのものである。ヒートダクト部55の内部は、運転席側エアミックス空間R3Dr及び助手席側エアミックス空間R3Psに連通している。ヒートダクト部55の上流端は、ケーシング12の上下方向中央部近傍に位置している。ヒートダクト部55は、ケーシング12の上下方向中央部近傍から下方へ真っ直ぐに延び、下流端は、ケーシング12の下端部近傍に位置している。
【0045】
ヒートダクト部55の上流側の右側壁には、運転席側フロントヒート開口部55aが形成されている。また、図2及び図3に示すように、ヒートダクト部55の上流側の左側壁には、助手席側フロントヒート開口部55bが形成されている。運転席側及び助手席側フロントヒート開口部55a,55bには、図示しないが、フロントヒートダクトがそれぞれ接続されている。運転席側のフロントヒートダクトは運転席S1の乗員の足下近傍まで延びており、助手席S1側のフロントヒートダクトは、助手席S1の乗員の足下近傍まで延びている。ヒートダクト部55内の空調風は、フロントヒートダクトによって運転席側及び助手席S1側の足下近傍へそれぞれ導かれる。
【0046】
図5及び図6に示すように、ヒートダクト部55の下流端は、左側吹出部60と、右側吹出部61とに分岐している。これら左側吹出部60及び右側吹出部61は、それぞれ、下方へ開放する角筒状に形成され、左右方向に互いに間隔をあけて配置されている。左側吹出部60には、左側リヤヒートダクト63(図2に示す)が接続され、右側吹出部61には、右側リヤヒートダクト64が接続されている。右側リヤヒートダクト64は、車両のフロアパネルF上の右側を後席S3へ向けて延び、運転席S1の下方で後席S3へ向けて開口している。また、左側リヤヒートダクト63は、車両のフロアパネルF上の左側を後席S3へ向けて延び、助手席S1の下方で後席S3へ向けて開口している。ヒートダクト部55内の空調風は、左右のリヤヒートダクト63,64によって後席S3の右側及び左側の足下近傍へそれぞれ導かれる。左右のリヤヒートダクト63,64は、空調装置1を構成する部材である。
【0047】
図1に示すように、ケーシング12のヒートダクト部55の前側には、後席ダクト部66が形成されている。後席ダクト部66の上流端は、ヒートダクト部55の上流端と略同じ高さに位置している。後席ダクト部66は、ヒートダクト部55に沿って下方へ延び、下流端は、ヒートダクト部55の下流端と同じ高さに位置している。
【0048】
上記ヒートダンパ16は、ヒート吹出通路R6の上流端に配設されている。このヒートダンパ16は、左右方向に延びる回動軸56と、板状ダンパ部57とを備えている。このヒートダンパ16によりヒート吹出通路R6の上流端が開閉されるようになっている。
【0049】
ヒートダンパ16は、ヒート吹出通路R6の上流端を開く位置にあるとき(図1に仮想線で示す)と、閉じる位置にあるとき(図1に実線で示す)の両方で、後席ダクト部66の上流端を閉塞しないように形成されている。従って、空調装置1の作動中、後席ダクト部66には常に空調風が流入することになる。
【0050】
図5に示すように、後席ダクト部66の内部には、その内部の通路を左右方向に2つに仕切るための仕切壁67が設けられており、仕切壁67よりも右側は、運転席側エアミックス空間R3Drに連通する運転席側通路(第1通路)R7Drとされ、仕切壁67よりも左側は、助手席側エアミックス空間R3Psに連通する助手席側通路(第2通路)R7Psとされている。
【0051】
ケーシング12の後席ダクト部66内には、運転席側通路R7Drと助手席側通路R7Psとの開度を変更する後席側エアミックスダンパ71が配設されている。後席側エアミックスダンパ71は、図1にも示すように、前後方向に延びる回動軸72と、回動軸72から径方向に延びる板状のダンパ部73とを備えている。回動軸72の両端部は、後席ダクト部66の前壁及び後壁に回動可能に支持されている。回動軸72の端部は、後席ダクト部66の後壁から外部へ突出している。後席ダクト部66の外部には、後席側エアミックスダンパ71を駆動するための後席側エアミックス用アクチュエータ74が配設されている。この後席側エアミックス用アクチュエータ74の出力軸が回動軸72に連結され、後席側エアミックスダンパ71が駆動されるようになっている。
【0052】
後席側エアミックスダンパ71を図5に破線で示すように左側に回動させると、助手席側通路R7Psがダンパ部73によって全閉とされる一方、運転席側通路R7Drが全開とされる。また、後席側エアミックスダンパ71を右側に回動させると、助手席側通路R7Psが全開とされる一方、運転席側通路R7Drが全閉とされる。後席側エアミックスダンパ71は、任意の位置で停止可能となっており、運転席側通路R7Drと助手席側通路R7Psとの開度を変更させ、運転席側通路R7Drから後席ベントダクト69へ流入する空調風の量と、助手席側通路R7Psから後席ベントダクト69へ流入する空調風の量とを変更することが可能になっている。
【0053】
後席ダクト部66の下流端には、吹出部68が設けられている。図6に示すように、吹出部68は、左右方向に長い角筒状に形成されており、ヒートダクト部55の左側吹出部60と右側吹出部61との間に位置している。吹出部68には、図2にも示すように、後席ベントダクト69が接続されている。後席ベントダクト69は、車両のフロアパネルF上を後席S3へ向けて延びている。後席ベントダクト69の下流側は、上方へ屈曲しており、下流端は、後席S3の足下よりも上方へ向けて開口している。後席ベントダクト69の下流端には、該後席ベントダクト69の通路を開閉するための開閉機構70が設けられている。この開閉機構70は、後席S3の乗員が直接操作できるようになっている。また、開閉機構70には、風向調整用の可動フィンが設けられている。後席ベントダクト69は、空調装置1を構成する部材である。
【0054】
上記デフロスタダンパ14、ベントダンパ15及びヒートダンパ16は、周知のリンク機構(図示せず)を介して吹出方向切替用アクチュエータ75(図7に示す)により駆動され、下記の各吹出モードに切り替えられる。吹出方向切替用アクチュエータ75は、制御装置3によって制御される。
【0055】
そして、図1に示すようにデフロスタダンパ14及びベントダンパ15が閉状態で、かつ、ヒートダンパ16が開状態にされると、空調風がヒートダクト部55に流れるヒートモードとなる。また、図示しないが、デフロスタダンパ14が開状態で、かつ、ベントダンパ15及びヒートダンパ16が閉状態にされると、空調風がデフロスタダクト部45に流れるデフロスタモードとなる。また、ベントダンパ15が開状態で、かつ、デフロスタダンパ14及びヒートダンパ16が閉状態にされると、空調風がベントダクト部50に流れるベントモードなる。デフロスタダクト部45及びヒートダクト部55の両方に空調風が流れるデフ/ヒートモードや、ベントダクト部50及びヒートダクト部55の両方に空調風が流れるベント/ヒートモードにも切り替えられるようになっている。
【0056】
図7に示すように、制御装置2には、各種センサ80及び操作スイッチ81が接続されるとともに、運転席側エアミックス用アクチュエータ35、助手席側エアミックス用アクチュエータ36、吹出方向切替用アクチュエータ75及び後席側エアミックス用アクチュエータ74が接続されている。制御装置2は、各種センサ80の出力信号と、操作スイッチ81の操作状態に基づいて、運転席S1に供給する空調風の温度及び助手席S1に供給する空調風の温度を決定するとともに、その温度に基づいた吹出モードを決定する。そして、運転席側エアミックス用アクチュエータ35及び助手席側エアミックス用アクチュエータ36を個別に制御して運転席側及び助手席側エアミックス空間R3Dr,R3Psで個別の所望温度の空調風を生成させ、さらに、吹出方向切替用アクチュエータ75を制御して吹出モードを切り換える。
【0057】
さらに、制御装置2は、送風機も制御して送風量を変化させ、空調能力を増減させる。また、制御装置2は、後席側エアミックス用アクチュエータ74も制御して後席S3へ供給する空調風の温度を変更させることができるようになっている。
【0058】
制御装置2に接続される各種センサ80としては、例えば、車室A外の温度を検出する外気温度センサ、日射量を検出する日射センサ、車室A内の温度を検出する内気温度センサ等がある。また、操作スイッチ81としては、運転席S1側の温度を設定する温度設定スイッチ、助手席S1側の温度を設定する温度設定スイッチ、送風量を設定するスイッチ、吹出モードを設定するスイッチ等がある。尚、送風量及び吹出モードは自動設定することなく、乗員が任意に設定することもできる。また、運転席S1に供給する空調風の温度と、助手席S1に供給する空調風の温度とを同じにするモードも備えており、乗員がそのモードを選択可能になっている。
【0059】
また、例えば、運転席S1側の温度設定スイッチの操作によって温風を供給する必要があると判断した場合には、制御装置2は、運転席側エアミックスダンパ13Drが温風吹出口27を大きく開く方向に回動するように、運転席側エアミックス用アクチュエータ35を制御する。これにより、運転席側エアミックス空間R3Drでは高温の空調風が生成される。この暖房時には、一般にヒートモードとされ、生成された空調風の殆ど運転席S1側の足下及び後席S3の足下に供給される。また、同様に助手席S1側についても、暖房時には、助手席側エアミックス空間R3Psで高温の空調風が生成され、この空調風が助手席S1側の足下及び後席S3の足下に供給される。尚、吹出モードは、運転席S1側と助手席S1側とで同じである。
【0060】
そして、例えば、運転席S1側の温度設定スイッチの操作によって運転席S1側に冷風を供給する必要があると判断した場合には、制御装置2は、運転席側エアミックスダンパ13Drが冷風吹出口26を大きく開く方向に回動するように、運転席側エアミックス用アクチュエータ35を制御する。これにより、運転席側エアミックス空間R3Drでは低温の空調風が生成される。この冷房時には、一般にベントモードとされ、生成された空調風が運転席S1側に供給される。また、同様に助手席S1側についても、冷房時には、助手席側エアミックス空間R3Psで低温の空調風が生成され、この空調風が助手席S1側に供給される。
【0061】
ベントモードでは、ヒートダンパ16がヒートダクト部55の通路を閉じて後席ベントダクト69の通路が全開となる。これにより、運転席側エアミックス空間R3Drで生成された空調風は運転席側通路R7Drにスムーズに流入し、また、助手席側エアミックス空間R3Psで生成された空調風は助手席側通路R7Psにスムーズに流入する。
【0062】
そして、制御装置2は、図8のフローチャートに示す後席温度調節制御を行う。この制御は所定のタイミングで繰り返される。後席温度調節制御では、まず、スタート後のステップSA1で、運転席側エアミックス空間R3Drで生成される空調風の温度(運転席S1側の空調風温度)TDrと助手席側エアミックス空間R3Psで生成される空調風の温度(助手席S1側の空調風温度)TPsとが同じであるか否かを判定する。運転席S1側の空調風温度TDr及び助手席S1側の空調風温度TPsは、運転席側及び助手席側エアミックスドア13Dr,13Psの開度等に基づいて制御装置3が推定する。
【0063】
ステップSA1でYESと判定されると、ステップSA2に進み、同温時制御を行う。すなわち、運転席S1側の空調風温度TDrと助手席S1側の空調風温度TPsとが同じであるということは、どちらの空調風を後席S3へ供給しても温度は変わらない状態であるので、後席側エアミックスダンパ71は回動範囲の中間位置として、運転席側通路R7Dr及び助手席側通路R7Psの両方から後席ベントダクト69へ空調風を流入させる。これにより風量を多く確保することが可能になる。また、運転席S1側の空調風温度TDrと助手席S1側の空調風温度TPsとが同じであるということは、車室A内の各部で温度差が大きくないということであるので、その温度の空調風を同じ車室Aの後席S3へ供給するようにしても後席S3の乗員の快適性は確保できる。
【0064】
一方、ステップSA1でNOと判定されるとステップSA3に進み、このステップSA3では、運転席S1側の空調風温度TDrが助手席S1側の空調風温度TPsよりも低いか否かを判定する。ステップSA3でYESと判定されると、ステップSA4に進み、運転席側低温時制御を行う。この制御について図9に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、スタート後のステップSB1では、後席側エアミックスダンパ71を回動範囲の中間位置にして、運転席側通路R7Dr及び助手席側通路R7Psの開度を同じにし、両通路R7Dr,R7Psから後席ベントダクト69へ空調風を流入させる。そして、ステップSB2に進み、後席S3の乗員が寒く感じているか否かを判断する。これは、例えば、後席S3近傍の温度を検出する後席温度センサ(図示せず)を設けておき、この後席温度センサで検出された温度と、運転席S1及び助手席S1で設定された設定温度とを比較して、後席S3の温度が所定以上低い場合に後席S3の乗員が寒く感じていると判断することで結果が得られる。
【0065】
ステップSB2でNOと判定されると後席S3の乗員は寒く感じていないということである。この場合には、ステップSB3に進み、後席側エアミックスダンパ71を回動させて助手席側通路R7Psの開度を小さくする。これにより、助手席側通路R7Psから後席ベントダクト69に流入する空調風の量が減り、運転席側通路R7Drから後席ベントダクト69に流入する空調風の量が相対的に増えることになるので、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度は低下する。
【0066】
しかる後、ステップSB4に進み、ステップSB2と同様に後席S3の乗員が寒く感じているか否かを判断する。YESと判定されれば、後席S3の乗員は寒く感じているということであり、ステップSB1に戻り、後席側エアミックスダンパ71を中間位置にする。これにより、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度が上昇する。
【0067】
ステップSB4でNOと判定されれば、後席S3の乗員が寒く感じていないということなのであり、ステップSB5に進んで運転席側通路R7Drを全開にする。これにより、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度はさらに低下し、後席S3の乗員が不快感を感じないような温度にできる。
【0068】
一方、ステップSB2でYESと判定されれば、後席S3の乗員が寒く感じているということであり、ステップSB6に進んで運転席側通路R7Drの開度を小さくする。これにより、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度が上昇する。
【0069】
次いで、ステップSB7に進み、ステップSB2と同様に後席S3の乗員が寒く感じているか否かを判断する。ステップSB7でNOと判定されれば、ステップSB1に戻り、運転席側通路R7Dr及び助手席側通路R7Psの開度を同じにする。これにより、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度が低下する。
【0070】
ステップSB7でYESと判定されれば、ステップSB8に進み、助手席側通路R7Psを全開にする。これにより、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度が上昇するので、後席S3の乗員の快適性を向上できる。
【0071】
また、図8のフローチャートにおけるステップSA3でNOと判定された場合には、ステップSA5に進んで助手席側低温時制御を行う。この制御について図10に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、スタート後のステップSC1では、後席側エアミックスダンパ71を中間位置にして、運転席側通路R7Dr及び助手席側通路R7Psの両方から後席ベントダクト69へ空調風を流入させる。そして、ステップSC2に進み、後席S3の乗員が寒く感じているか否かを判断する。
【0072】
ステップSC2でNOと判定されると後席S3の乗員は寒く感じていないということであり、ステップSC3に進み、後席側エアミックスダンパ71を回動させて運転席側通路R7Drの開度を小さくする。これにより、助手席側通路R7Psから後席ベントダクト69に流入する空調風の量が増えることになるので、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度は低下する。
【0073】
しかる後、ステップSC4に進み、ステップSC2と同様に後席S3の乗員が寒く感じているか否かを判断する。YESと判定されれば、ステップSC1に戻り、後席側エアミックスダンパ71を中間位置にする。これにより、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度が上昇する。
【0074】
ステップSC4でNOと判定されれば、後席S3の乗員が寒く感じていないということであり、ステップSC5に進んで助手席側通路R7Psを全開にする。これにより、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度はさらに低下し、後席S3の乗員が不快感を感じないような温度にできる。
【0075】
一方、ステップSC2でYESと判定されれば、後席S3の乗員が寒く感じているということであり、ステップSC6に進んで助手席側通路R7Psの開度を小さくする。これにより、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度が上昇する。
【0076】
次いで、ステップSC7に進み、ステップSC2と同様に後席S3の乗員が寒く感じているか否かを判断する。ステップSC7でNOと判定されれば、ステップSC1に戻り、運転席側通路R7Dr及び助手席側通路R7Psの開度を同じにして、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度を低下させる。
【0077】
ステップSC7でYESと判定されれば、ステップSC8に進み、運転席側通路R7Drを全開にする。これにより、後席ベントダクト69を流れる空調風の温度が上昇するので、後席S3の乗員の快適性を向上できる。
【0078】
以上説明したように、この実施形態では、運転席側エアミックス空間R3Drから後席ベントダクト69に流入する空調風の量と、助手席側エアミックス空間R3Psから後席ベントダクト69に流入する空調風の量とを変更できるので、後席S3へ供給する空調風の温度を後席S3の乗員が快適に感じるように変更でき、後席S3の乗員の快適性を向上させることができる。
【0079】
尚、後席側エアミックスダンパ71は、ロータリダンパやフィルムダンパ等で構成することもできる。また、後席側エアミックスダンパ71で運転席通路R7Drのみ開閉するようにしてもよいし、助手席通路R7Psのみ開閉するようにしてもよい。
【0080】
《実施形態2》
図1は、本発明の実施形態2にかかる車両用空調装置1を示すものである。実施形態1では、運転席側エアミックス空間R3Dr及び助手席側エアミックス空間R3Psでそれぞれ生成された空調風を後席ベントダクト69に流入させるようにしたが、この実施形態2では、運転席側エアミックス空間R3Drで生成された空調風のみを後席ベントダクト69に流入させるようにした点で上記実施形態1と異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0081】
すなわち、後席ダクト部66の内部の仕切壁67は、仕切壁67よりも助手席側の空間を閉塞するように形成されている。これにより、助手席側エアミックス空間R3Psで生成された空調風が後席ダクト部66内を流れることはなくなる。また、後席側エアミックスダンパ71及び後席側エアミックス用アクチュエータ74は省略されている。
【0082】
この実施形態2によれば、運転席側エアミックス空間R3Drで生成された空調風のみが後席S3へ供給されることになる。運転席側エアミックス空間R3Drの空調風は運転席S1へ供給されるものなので、通常、運転席S1の乗員が快適に感じる温度に設定されている。また、車両の運転時には運転席S1に乗員が常に座っているので、運転席側エアミックス空間R3Drで生成される空調風の温度は、快適に感じる温度からかけ離れることはない。
【0083】
そして、運転席S1の乗員が快適に感じる温度の空調風が同じ車室A内の後席S3へ供給されることになるので、後席S3の乗員の快適性を高めることができる。
【0084】
尚、実施形態2において運転席側エアミックス空間R3Drにのみ連通するように後席ダクト部66の形状を設定してもよい。
【0085】
《実施形態3》
図12は、本発明の実施形態3にかかる車両用空調装置1を示すものである。実施形態1では、運転席側エアミックス空間R3Dr及び助手席側エアミックス空間R3Psでそれぞれ生成された空調風を後席ベントダクト69に流入させるようにしたが、この実施形態3では、助手席側エアミックス空間R3Psで生成された空調風のみを後席ベントダクト69に流入させるようにした点で上記実施形態1と異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0086】
すなわち、後席ダクト部66の内部の仕切壁67は、仕切壁67よりも運転席側の空間を閉塞するように形成されている。これにより、運転席側エアミックス空間R3Drで生成された空調風が後席ダクト部66内を流れることはなくなる。また、後席側エアミックスダンパ71及び後席側エアミックス用アクチュエータ74は省略されている。
【0087】
この実施形態3によれば、助手席側エアミックス空間R3Psの空調風は助手席S1へ供給されるものなので、通常、助手席S1の乗員が快適に感じる温度に設定され、この空調風が同じ車室A内の後席S3へ供給されることになるので、後席S3の乗員の快適性が高まる。
【0088】
また、助手席S1に乗員が座っていない場合には、後席S3の乗員が快適に感じるような温度の空調風を生成し、それを後席S3へ供給することができ、このことによっても、後席S3の乗員の快適性を向上させることができる。
【0089】
尚、実施形態3において助手席側エアミックス空間R3Psにのみ連通するように後席ダクト部66の形状を設定してもよい。
【0090】
また、上記実施形態1〜3では、空調装置1がケーシング12とは別体の送風機を備えている、いわゆるセミセンタタイプに本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、送風ファン、エバポレータ10及びヒータコア11を1つのケーシング12に収容したフルセンタタイプにも本発明を適用することができる。
【0091】
また、エアミックスダンパ13Dr,13Ps、デフロスタダンパ14、ベントダンパ15及びヒートダンパ16をアクチュエータで駆動することなく、乗員による手動操作とするようにしてもよい。この場合、図示しないが、操作レバーを車室A内に設け、ダンパ13Dr,13Ps,14〜16の回動軸30,47,51,56に連結されたリンクと操作レバーとをワイヤーで連結し、ワイヤーのプッシュ−プル動作によりダンパ13Dr,13Ps,14〜16を作動させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明にかかる車両用空調装置は、後席へ空調風を導くように構成されたものに適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 空調装置
13Dr 運転席側エアミックスダンパ(第1エアミックスダンパ)
13Ps 助手席側エアミックスダンパ(第2エアミックスダンパ)
69 後席ベントダクト(後席用ダクト)
71 後席側エアミックスダンパ(後席用ダンパ)
A 車室
R1 エバポレータ配設部(冷風通路)
R2 ヒータコア配設部(温風通路)
R3Dr 運転席側エアミックス空間(第1エアミックス空間)
R3Ps 助手席側エアミックス空間(第2エアミックス空間)
R7Dr 運転席側通路(第1通路)
R7Ps 助手席側通路(第2通路)
S1 運転席
S2 助手席
S3 後席

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温風が流通する温風通路と、冷風が流通する冷風通路と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第1エアミックス空間と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第2エアミックス空間とが形成されたケーシングと、
上記ケーシング内に配設され、上記第1エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第1エアミックスダンパと、
上記ケーシング内に配設され、上記第2エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第2エアミックスダンパとを備え、
上記第1エアミックス空間で生成された空調風を車室の運転席側へ供給する一方、上記第2エアミックス空間で生成された空調風を車室の助手席側へ供給するように構成された車両用空調装置であって、
上記第1エアミックス空間にのみ連通して車室の後席へ向けて延び、該第1エアミックス空間で生成された空調風を後席へ導く後席用ダクトを備えていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
温風が流通する温風通路と、冷風が流通する冷風通路と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第1エアミックス空間と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第2エアミックス空間とが形成されたケーシングと、
上記ケーシング内に配設され、上記第1エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第1エアミックスダンパと、
上記ケーシング内に配設され、上記第2エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第2エアミックスダンパとを備え、
上記第1エアミックス空間で生成された空調風を車室の運転席側へ供給する一方、上記第2エアミックス空間で生成された空調風を車室の助手席側へ供給するように構成された車両用空調装置であって、
上記第2エアミックス空間にのみ連通して車室の後席へ向けて延び、該第2エアミックス空間で生成された空調風を後席へ導く後席用ダクトを備えていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
温風が流通する温風通路と、冷風が流通する冷風通路と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第1エアミックス空間と、該温風通路及び冷風通路の下流側が連通する第2エアミックス空間とが形成されたケーシングと、
上記ケーシング内に配設され、上記第1エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第1エアミックスダンパと、
上記ケーシング内に配設され、上記第2エアミックス空間に上記温風通路及び冷風通路から流入する温風量及び冷風量の少なくとも一方を変更する第2エアミックスダンパとを備え、
上記第1エアミックス空間で生成された空調風を車室の運転席側へ供給する一方、上記第2エアミックス空間で生成された空調風を車室の助手席側へ供給するように構成された車両用空調装置であって、
上記ケーシングには、上記第1エアミックス空間に連通して該第1エアミックス空間で生成された空調風が流通する第1通路と、上記第2エアミックス空間に連通して該第2エアミックス空間で生成された空調風が流通する第2通路とが設けられるとともに、該第1通路及び第2通路に接続され、車室の後席へ向けて延びる後席用ダクトと、上記第1通路乃至上記第2通路の開度を変更する後席用ダンパとが設けられていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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