説明

車両用粉塵回収装置

【課題】車両が走行することにより巻上げられた粉塵を効率よく回収することができる車両用粉塵回収装置を提供する。
【解決手段】車両の後輪の後方となる部位には集塵口5が設けられており、その集塵口5がダクト4を通じてトランク内に設置された集塵機3と連結されている。車両の走行状態では、集塵機3内のモータ13によりシロッコファン14が回転して集塵口5から空気を吸込む。集塵機3内には集塵袋10が収納されており、吸込まれた空気は集塵袋10を通過して車外へ排出される。車輪が回転することにより道路に堆積した粉塵が巻上げられると、粉塵の多くは集塵口5から集塵機3に吸引され、集塵袋10で回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行により巻上げられた粉塵を回収する車両用粉塵回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行すると、道路に堆積している細かな粉塵が車輪で巻上げられて大気中を浮遊するようになる。このような浮遊粒子状物質は、細かな砂塵、タイヤの磨耗分、舗装道路の磨耗分、排気ガスの煤煙などで、比較的長く大気中に浮遊することから、道路の近くに住む人が浮遊粒子物質を定常的に吸込む虞が高く、人体への影響が懸念される。
【特許文献1】特開2003−299987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような課題に対して、種々の解決策が提案されており、特許文献1のものは、道路に電気集塵機を設置し、空気中に含まれる浮遊粒子物質を回収することを提案している。
しかしながら、特許文献1のものは、浮遊粒子物質を道路に設置した電機集塵機で回収する構成であることから、大気中に拡散してしまった浮遊粒子物質を回収する効果は極めて低いものと思われる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両が走行することにより巻上げられた粉塵を効率よく回収することができる車両用粉塵回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車輪の後方となる部位に設けられ、車両の進行方向に開口する集塵口と、作動状態で前記集塵口を通じて空気をケース内部に吸込むと共に吸込んだ空気を前記ケース外部に排気する吸込手段と、前記ケース内部に設けられ、前記吸込手段により前記ケース内に吸込まれた空気に含まれる粉塵を回収する回収手段と、車両の走行環境状況を検出する検出手段と、前記検出手段の検出状態に基づいて作動条件が成立したと判断した場合は前記吸込手段を作動する制御手段とを備えたものである(請求項1)。
【0006】
上記構成において、前記検出手段は、車両が走行していること、ワイパが停止していること、路面が積雪或いは濡れていないこと、前記回収手段が満タンでないこと、手動操作により作動が許可されていること、などの各条件を前記走行環境状況として検出し、前記制御手段は、前記検出手段が検出した全ての条件、或いは所定の複数の条件が成立した場合に前記作動条件が成立したと判断するようにしてもよい(請求項2)。
【0007】
また、前記回収手段は、前記ケース内に脱着可能な集塵袋であり、前記吸込手段は、前記ケース内において前記集塵袋の後方となる部位に設けられ、作動状態で前記集塵口と接続されたダクトから空気を吸込んで後方へ排気するシロッコファンであってもよい(請求項3)。
【0008】
また、前記検出手段は、前記ダクトと前記シロッコファンとの間の圧力差を検出する圧力センサを備え、前記圧力センサが検出する圧力差が基準値以下の場合に、前記集塵袋に収納された粉塵が満タンでないことを検出するようにしてもよい(請求項4)。
【0009】
また、前記シロッコファンは、モータにより駆動され、前記制御手段は、前記吸込手段を作動する場合は、前記モータに通電するようにしてもよい(請求項5)。
また、前記シロッコファンは、電磁クラッチを介して前記車軸により駆動され、前記制御手段は、前記吸込手段を作動する場合は、前記電磁クラッチを連結させるようにしてもよい(請求項6)。
【0010】
また、前記車両の排気管は、排気口が前記集塵口の前方に所定の隙間を存して対向配置するように設けられていてもよい(請求項7)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、車両が走行すると、車輪が回転することにより道路に堆積した粉塵が巻上げられるようになる。車輪の後方となる部位には、車両の進行方向に開口する集塵口が設けられているので、巻上げられた粉塵の多くは集塵口に進入するようになる。制御手段は、検出手段が検出した車両の走行環境状況に基づいて作動条件が成立したと判断した場合は吸込手段を作動する。吸込手段は、作動状態で集塵口を通じて空気をケース内部に吸込むと共に吸込んだ空気をケース外部に排気する。これにより、車両毎に設けられた回収手段により、車両の走行によって巻上げられた粉塵を効率よく回収することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、走行環境状況によっては回収手段に悪影響を及ぼす場合があるにしても、そのような悪影響がない条件が成立した場合のみに吸込手段を作動させるので、回収手段の機能が短期間で低下してしまうことを防止できる。
請求項3の発明によれば、粉塵回収装置は、集塵袋及びシロッコファンの組合わせで構成できるので、掃除機と同一構成であり、容易に実施することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、集塵袋が回収する粉塵が満タンとなった場合は、ダクトとシロッコファンとの間の空間部の圧力差が増大することから、検出手段は、圧力センサが検出する圧力が基準値を上回った場合に集塵袋に収納された粉塵が満タンとなったことを検出することができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、粉塵回収装置を電気式に構成することができる。
請求項6の発明によれば、粉塵回収装置を機械式に構成することができる。
請求項7の発明によれば、排気管からの排気ガスに含まれる煤煙をも効率よく回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1ないし図5を参照して説明する。
図2は車両を概略的に示す側面図、図3は車両の後方図である。これらの図2及び図3において、車両1のトランク2には集塵機(粉塵回収装置に相当)3が設置されている。この集塵機3の前部にはダクト4が接続されている。このダクト4は左右方向へ二股に分岐しており、それらの先端に横方向に扁平形状の集塵口5がそれぞれ接続されている。これらの集塵口5は、後輪(車輪に相当)6の直後を除く後輪6間となる部位に、車両1の進行方向に開口して設けられている。この集塵口5の設置位置としては、後輪6から巻上げられる粉塵を効率よく吸込む位置に設定されている。
【0016】
図1は、集塵機3を概略的に示す断面図である。この図1において、集塵機3は次のように構成されている。略円筒状のケース7内は、仕切板7aにより吸込室8と排気室9とに連通状態で仕切られている。吸込室8には一定のメッシュで作られた濾過紙からなる集塵袋(回収手段に相当)10が収納されており、その集塵袋10がダクト4の先端である吸引口4aに気密に取付けられている。集塵袋10は、吸込室8からワンタッチで着脱自在となっている。吸引口4aには逆流防止弁11が設けられており、集塵機3の非作動状態では、逆流防止弁11により吸引口4aが閉鎖されている。圧力式の集塵袋センサ(圧力センサに相当)12は、前記ダクト4と吸込室8との間(集塵袋10の前後)の圧力差を検出するようになっている。排気室9には、モータ13により駆動されるシロッコファン(吸込手段に相当)14が配置されている。集塵機3の後端には排気口15が設けられており、その排気口15が図示しないダクトにより車両1の外部と連通している。
【0017】
本実施例では、車両1の排気管16の先端は扁平形状をなしており、集塵口5の前方に隙間を存して対向配置されている。このように構成しているのは、排気管16から排気された排気ガスが集塵口5に進入し易くすると共に、排気管16からの水滴が集塵口5に進入しないようにしているためである。
【0018】
図2に戻って、車両1のフロントガラス17の内側上部には路面センサ18が設けられている。この路面センサ18は、例えば車両1の前方の路面に赤外線を照射すると共に、その赤外線が路面で反射した光の受光量を検出するようになっている。この場合、路面センサ18は、光学的フィルタ及び電気的フィルタにより太陽光に含まれる赤外線の影響を受けないようになっている。
【0019】
図4は、集塵機3を制御する構成を概略的に示すブロック図である。この図4において、車両走行センサ19は、車両から速度を示す速度信号を入力したときにON信号をコントローラ(検出手段、制御手段に相当)20へ出力する。ワイパ駆動装置21は、ワイパモータをオフしているとき(雨が降っていないとき)にOFF信号をコントローラ20へ出力する。路面センサ18は、受光量が基準値を下回ったとき(路面が積雪或いは濡れていないとき)にON信号をコントローラ20へ出力する。集塵袋センサ12は、検出する圧力差が基準値よりも増大したとき(集塵袋10が満タンとなったとき)にON信号をコントローラ20へ出力する。手動電源スイッチ22は、ON操作された状態でON信号をコントローラ20へ出力する。
【0020】
コントローラ20は、車両のバッテリからの給電状態で動作し、後述するように入力する各信号に基づいて集塵機3の作動条件が成立したと判断したときは、集塵機3へ通電したり、車室内のインストルメントパネルに設けられた集塵袋満タン表示23へ通電したりする。
【0021】
次に上記構成の作用について説明する。
車両に乗車した運転者がイグニッションスイッチをオンすると、バッテリからコントローラ20に給電されるので、コントローラ20が動作する。
図5は、コントローラ20の動作を示すフローチャートである。この図5において、コントローラ20は、集塵機3の作動条件が成立したかを判断している。この作動条件とは、車両走行センサがONか(S1)、ワイパモータがOFFか(S2)、路面センサ18がOFFか(S3)、集塵袋センサ12がOFFか(S4)、手動電源スイッチ22がONか(S5)であり、何れかの条件が成立しなかった場合は作動条件が成立していないと判断する。
【0022】
車両1の停止状態では、車両走行センサ19はOFFしているので(S1:NO)、集塵機3の停止状態を継続する(S8)。
運転者が車両を走行させると、車両走行センサ19からON信号を入力するので(S1:YES)、ワイパモータがOFFかを判断する(S2)。雨が降っていない場合は、ワイパ駆動装置21からOFF信号が入力しているので(S2:YES)、路面センサ18からOFF信号が入力するかを判断する(S3)。路面が雨で濡れていないと共に積雪していない場合、つまり路面が乾いている場合は、路面センサ18が照射した赤外線は路面で乱反射するので、路面センサ18の受光量は大きく、路面センサ18からはOFF信号が出力されている。これにより、コントローラ20は、路面センサ18からOFF信号を入力するので(S3:YES)、集塵袋センサ12からOFF信号を入力するかを判断する(S4)。集塵袋10が満タンでない場合は、集塵袋センサ12からOFF信号を入力するので(S4:YES)、手動電源スイッチ22からON信号が入力するかを判断する(S5)。手動電源スイッチ22がONされている場合は、手動電源スイッチ22からON信号が入力するので(S5:YES)、作動条件が成立したと判断し、集塵機3のモータ13に通電する。これにより、シロッコファン14が回転するようになるので、集塵機3の吸引口4aから空気が吸込まれ、それに伴って吸引口4aに設けられている逆流防止弁11が開放して集塵袋10を通過する空気の流れが発生するようになる。
【0023】
さて、車両1が走行すると、道路に堆積している粉塵が車輪で巻上げられるようになる。
この粉塵としては、以下のようなものである。
(1)砂塵粒子……中国からの黄砂、石英、長石、硅石、石灰石、雲母、泥が乾いた粉末等
(2)タイヤの磨耗分……ゴム成分、繊維、加硫薬品等
(3)舗装道路磨耗分……コールタール、砂、硬化薬品等
(4)排ガス煤煙……炭素化合物、石油未燃焼生成物等
(5)その他……人間の投機した部材の粉末等
【0024】
このような粉塵は、車輪で巻上げられた後に大気中に拡散して比較的長期間に渡って浮遊することから、人体への影響が懸念される。車両1が走行することにより車輪で巻上げられた粉塵は、車輪が回転することにより巻上げられることから、車輪の両側に集中して巻上げられることになる。ここで、後輪6の直後を除く後輪6間には横方向に扁平形状の集塵口5が設けられているので、後輪6の内側方向に巻上げられた粉塵の多くは、後輪6間に配置されている集塵口5に進入するようになる。この場合、後輪6により巻上げられた比較的重量の大きな粉塵については、集塵口5まで巻上げられることはないことから、集塵口5には重量が極めて軽い浮遊粒子物質となる粉塵のみが進入する。このように集塵口5に進入した粉塵は、集塵機3に吸込まれることにより集塵袋10で回収されるようになる。また、集塵機3を通過した空気は車外に排気される。
【0025】
さて、車両1が停止すると、車両走行センサ19からのON信号が断たれるので、コントローラ20は、図5に示すステップS1において「NO」と判断し、集塵機3を停止する(S8)。これにより、粉塵が発生していない状態で集塵機3が作動することはないので、車両1のバッテリが無駄に消耗してしまうことを防止できる。
【0026】
また、雨が降ってきた場合は、路面が雨で濡れるので、車両の走行状態では、後輪6が水分を含んだ粉塵を跳ね上げるようになる。この場合、運転者がワイパスイッチを操作することによりワイパ駆動装置21がワイパを作動したときは、ワイパ駆動装置21からのOFF信号が断たれるので、コントローラ20は、ステップS2において「NO」と判断し、集塵機3を停止する(S8)。これにより、雨で濡れた路面を走行した場合に、水分を含んだ粉塵が巻上げられるにしても、集塵口5から水分を含んだ粉塵が集塵袋10に進入してしまうことなないので、集塵袋10の機能が短時間で低下してしまうことを防止できる。
【0027】
また、路面に雪が積もっている場合、或いは雨が降っていないものの路面が濡れているような場合も、水分を含んだ粉塵が後輪6により巻上がられる場合がある。このような場合、路面センサ18から照射された赤外線が路面で正反射することにより路面センサ18の受光量が大きく低下し、路面センサ18からのOFF信号が断たれるので、コントローラ20は、ステップS3において「NO」と判断し、集塵機3を停止する(S8)。これにより、積雪或いは濡れた路面を走行した場合に、水分を含んだ粉塵が巻上げられるにしても、集塵口5から水分を含んだ粉塵が集塵袋10に進入してしまうことなないので、集塵袋10の機能が短時間で低下してしまうことを防止できる。
【0028】
以上のようにして車輪、特に後輪6で巻上げられた粉塵を効率よく集塵機3に回収できるものの、車両の走行距離の増大に伴って集塵機3が回収する粉塵の量も増大し、集塵袋10が満タンとなると、集塵袋10の機能が一気に低下するようになる。このように集塵袋10が満タンとなると、集塵機3の吸込室8内の圧力が基準値よりも低下し、集塵袋センサ12からのOFF信号が断たれる。すると、コントローラ20は、ステップS4において「NO」と判断し、集塵袋満タン表示23を点灯(またはブザー報知)することにより集塵袋10の交換を報知してから、集塵機3のモータ13への通電を停止する。これにより、集塵機3を無駄に作動してしまうことを防止できるので、バッテリが無駄に消耗してしまうことを防止できる。
【0029】
運転者は、集塵袋満タン表示23が点灯したときは、集塵機3から集塵袋10を取外し、新品の集塵袋10を装着する。
運転者は、集塵機3を作動したくない場合は、手動電源スイッチ22をオフする。コントローラ20は、手動電源スイッチからのON信号が断たれたときは、ステップS5において「NO」と判断し、集塵機3を停止する(S8)。これにより、運転者は、集塵機3を任意に作動させることができる。
【0030】
一方、車両1のエンジンがディーゼルエンジンの場合、或いはガソリンエンジンであっても、エンジンの運転時間が長くなると、排気管16から排出される排気ガスに煤煙が含まれるようになる。このような煤煙も浮遊粒子物質となって大気中に拡散されるものの、本実施例では、排気管16の先端が集塵口5の前方に位置しているので、排気管16からの排気ガスの多くは集塵口5に進入するようになる。これにより、排気管16から排気された排気ガスに含まれる煤煙を集塵機3で回収することができる。また、排気ガスには燃料が燃焼することにより発生する水分が含まれており、集塵袋10の機能低下の要因となるものの、排気管16からの水分は、集塵口5に到達する前に排気管16の先端と集塵口5との間に存在する隙間から下方に落下してしまうので、集塵袋10に水分が進入することを防止でき、集塵袋10の機能が短時間に低下してしまうことを防止できる。
【0031】
このような実施例によれば、車両1に集塵機3を設け、車輪が回転することにより巻上げられた粉塵を集塵機3で回収するようにしたので、道路側に浮遊粒子物質を回収する回収装置を設置する従来例のものと違って、車輪、特に後輪6で巻上げられて大気中に拡散しようとする浮遊粒子物質を効率よく回収することができる。従って、個々の車両1毎には粉塵の回収量は少ないものの、全国の車両1が実施すれば大きな効果を期待でき、浮遊粒子物質による人体への影響を低減することができる。
【0032】
また、集塵機3は、集塵袋10とシロッコファン14とモータ13とを組合わせて構成されているので、掃除機と同一構成であり、容易に実施できる。
また、路面が積雪していたり、雨で濡れていたりしていた場合は、集塵機3を停止させるようにしたので、車輪が水分を巻上げるような環境であっても、集塵機3の集塵機能が短期間で低下してしまうことを防止できる。
【0033】
尚、集塵口5を前輪の直後を除く前輪間に位置するようにダクト4を車両1の前方に延長するようにしてもよい。
さらに、車両1が走行状態から停止状態に移ったときは、巻上げられた浮遊粒子物質がまだ残っているので、停止状態に移っても集塵機3の停止を一定時間遅らせるようにしてもよい。
【0034】
(第2実施例)
次に本発明の第2実施例について図6ないし図8を参照して説明するに、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。この第2実施例は、車軸の回転を利用して集塵機3を作動させることを特徴とする。
【0035】
図6に示すように後輪6を駆動するためのデファレンシャル部31にはパワーテークオフ部32が取付けられており、後輪6の回転がフレキシブルワイヤ33を通じて集塵機3に伝達されるようになっている。この場合、集塵機3には、図7に示すように、シロッコファン14との連結を行うための電磁クラッチ34が設けられており、フレキシブルワイヤ33は電磁クラッチ34を介して歯車35と連結可能となっている。シロッコファン14は、歯車36と連結されており、その歯車36が歯車35と噛合っている。このような構成により、シロッコファン14は、電磁クラッチのON状態では後輪6の回転に伴って回転するようになっている。集塵機3の側面には集塵袋10を取出すための扉37が設けられている。尚、図7では、集塵袋センサ12の図示を省略した。
【0036】
本実施例では、集塵機3はトランク2内の両側にそれぞれ設けられている。即ち、車両1のタイヤハウスにおいて後輪6の直後を除いた部位には開口部38が形成されており、その開口部38に容器状のカバー体39が取付けられている。集塵機3は、カバー体39の端面に装着されており、カバー体39の端面に形成された吸引口39aに集塵袋10が気密に装着されている。本実施例では、カバー体39の開口部が集塵口39bに設定されている。
【0037】
図8に示すようにトランク2の側面には燃料用扉40と同一構造の取出用扉41が設けられており、その取出用扉41を開放することにより集塵機3の取出扉37から集塵袋10を取出可能となっている。
【0038】
さて、コントローラ20は、第1実施例のように集塵機3の作動条件が成立したかを判断しており、車両が走行することにより作動条件が成立したときは、電磁クラッチ34に通電する。これにより、デファレンシャル部31の回転が電磁クラッチ34を介してシロッコファン14に伝達されるので、シロッコファン14が回転し、カバー体39の集塵口39bから空気を吸込むようになる。従って、第1実施例と同様に、車輪、特に後輪6で巻上げられた粉塵を集塵機3で効率よく回収することができる。
【0039】
このような実施例によれば、集塵機3を作動するためにモータを使用する必要はないので、車両1のバッテリの消耗を抑制することができると共に、車速が上昇するのに応じてシロッコファン14の回転数が上昇して集塵機3の吸引力が上昇するので、後輪36が回転することにより巻上げられた粉塵を車速に応じて効果的に回収することができる。
尚、この第2実施例においても、第1実施例と同様に、集塵機3を1個設け、2個の集塵口5をダクトにより集塵機3と連結するようにしてもよいし、排気管16からの排気ガスを集塵機3で回収するようにしてもよい。
【0040】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
集塵口を3個以上設けるようにしてもよい。
車輪毎に集塵口を設けたり、集塵機3を設けたりするようにしてもよい。
後部にエンジンを搭載した車両の場合は、集塵機3をボンネット内に設置するようにしてもよい。
集塵機3の逆流防止弁11をソレノイド或いはモータを用いて電動により開閉するように構成してもよい。
【0041】
集塵口5に水滴センサを設け、水滴センサにより水滴を検出した場合は集塵機3を停止するようにしてもよい。
メッシュの細かさが異なる複数の集塵袋10を設け、大きさの異なる粉塵を区別して回収するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施例における集塵機を概略的に示す断面図
【図2】車両の側面図
【図3】車両の後面図
【図4】電気的構成を示すブロック図
【図5】コントローラの動作を示すフローチャート
【図6】本発明の第2実施例における集塵機を示す斜視図
【図7】トランクへの搭載状態で示す図1相当図
【図8】集塵袋用扉を示す車両の斜視図
【符号の説明】
【0043】
図面中、1は車両、3は集塵機(粉塵回収装置)、5は集塵口、6は車輪、7はケース、10は集塵袋(回収手段)、12は集塵袋センサ(圧力センサ)、13はモータ、14はシロッコファン(吸込手段)、16は排気管、20はコントローラ(検出手段、制御手段)、34は電磁クラッチ、39bは集塵口である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の後方となる部位に設けられ、車両の進行方向に開口する集塵口と、
作動状態で前記集塵口を通じて空気をケース内部に吸込むと共に吸込んだ空気を前記ケース外部に排気する吸込手段と、
前記ケース内部に設けられ、前記吸込手段により前記ケース内に吸込まれた空気に含まれる粉塵を回収する回収手段と、
車両の走行環境状況を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出状態に基づいて作動条件が成立したと判断した場合は前記吸込手段を作動する制御手段とを備えたことを特徴とする車両用粉塵回収装置。
【請求項2】
前記検出手段は、車両が走行していること、ワイパが停止していること、路面が積雪或いは濡れていないこと、前記回収手段が満タンでないこと、手動操作により作動が許可されていること、などの各条件を前記走行環境状況として検出し、
前記制御手段は、前記検出手段が検出した全ての条件、或いは所定の複数の条件が成立した場合に前記作動条件が成立したと判断することを特徴とする請求項1記載の車両用粉塵回収装置。
【請求項3】
前記回収手段は、前記ケースに脱着可能な集塵袋であり、
前記吸込手段は、前記ケース内において前記集塵袋の後方となる部位に設けられ、作動状態で前記集塵口と接続されたダクトから空気を吸込んで後方へ排気するシロッコファンであることを特徴とする請求項1または2記載の車両用粉塵回収装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記ダクトと前記シロッコファンとの間の圧力差を検出する圧力センサを備え、前記圧力センサが検出する圧力差が基準値以下の場合に、前記集塵袋に収納された粉塵が満タンでないことを検出することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の車両用粉塵回収装置。
【請求項5】
前記シロッコファンは、モータにより駆動され、
前記制御手段は、前記吸込手段を作動する場合は、前記モータに通電することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の車両用粉塵回収装置。
【請求項6】
前記シロッコファンは、電磁クラッチを介して前記車軸により駆動され、
前記制御手段は、前記吸込手段を作動する場合は、前記電磁クラッチを連結させることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の車両用粉塵回収装置。
【請求項7】
前記車両の排気管は、排気口が前記集塵口の前方に所定の隙間を存して対向配置するように設けられていることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の車両用粉塵回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−302803(P2008−302803A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151525(P2007−151525)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(501278423)野場電工株式会社 (18)
【Fターム(参考)】