説明

車両用統合スイッチ

【課題】車両のセンターコンソール上に設けられ、複数の装備品の制御を行う統合スイッチを、運転席側、助手席側の双方から使い勝手の良い構成とする。
【解決手段】上部にノブ4が配設された触覚SWを、コンソール本体1内部に水平に設置されたレール(不図示)に左右に移動自在に組み付けることで、ノブ4を運転席側と助手席側との間で移動可能に構成し、運転席、助手席の双方において各人が操作性の良い位置へとノブ4を移動させることにより、運転者が安全かつ能率的に操作できるようにするとともに、助手席乗員における操作性も向上させ、さらに、ノブ4の操作時にアームレスト2に乗せたお互いの腕が干渉しないようにすることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターコンソール上に設けられ、エアコンやナビなどの車両内の複数の装備品の機能を1つのスイッチで動作させる車両用統合スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
車両内装におけるエアコンやナビ、オーディオなどの多種類の電気機器の操作を一つのスイッチ(以下SWと記す。)で操作できる入力装置がある(特許文献1参照)。近年、このような統合SWを備えた入力装置を搭載する車両が増加傾向にある。これは、多数あるSW操作を1つの操作に集約し、操作自体を簡素化することで安全性の向上を図るとともに、SW自体の集約により、ユーティリティスペースを増加させ、車内の利便性の向上を図るねらいと考えられる。また、上記統合SWは運転中に操作するためにセンターコンソール上に設けられる場合が多い。
【0003】
このような集約化された入力装置の内、上記統合SWのノブの操作において、使用者に加わる反力が駆動モータによりコントロールされ、ノブの位置や状況に応じて使用者の触覚に異なる感触を生じさせる入力装置がある。使用者の触覚のみで操作の種類の違いが判断できるため、SW自体の目視による確認を省略できるこの入力装置はハプティック(登録商標)デバイスとも呼ばれる。ここではこのような入力装置を触覚SWと呼ぶことにする。
【0004】
触覚SWの搭載例として、図7(a)や図7(b)のように触覚SWのノブをコンソール上面の中央に設置する場合や、図7(c)のように運転者側(図7は左ハンドル車)に寄せて設置する場合があり、乗員は車両前面のセンタークラスタに設けられたディスプレイに映し出される表示を見ながら操作を行う。図7(a)、(b)に示すダイヤル式あるいはレバー式のSWノブにて上記ディスプレイの表示からメニュー選択を行い、SWノブを押すことで決定する、という操作を繰り返すことで多くのSW機能を果たす形式が一般的である。触覚SWに関する従来技術の参考例として、特許文献2がある。
【0005】
上述したように、触覚SWのノブは、従来それぞれのSWノブで行っていた操作を一手に引き受けるため、その使用頻度は非常に高い。また、SWノブ自体を目視して操作しないことが前提であるため、一般的にSWノブは運転姿勢により近い姿勢で操作できるように、コンソールアッパー上のアームレスト前方に設置される。運転席、助手席に座る両者が同じSWノブを使用することになるため、図7(a)、(b)に示すようにSWノブはコンソール中央に設置されるのが普通である。一方、図7(c)に示すように運転者に寄った位置に設置される例もあり、この場合は運転姿勢からSWノブ操作への移動量が軽減されるため、運転者にとっての操作性は中央に設置される場合と比較して向上する。
【0006】
上述のように、触覚SWの使用頻度が高いことを考えると、運転姿勢からの移動が少ないほど操作性が向上し、安全性も向上するため運転者にとって多大なメリットとなる。運転中、目線を正面に据えながらSWノブの位置を探る場合、SWノブが運転者に近く、移動が少ないほどその行為は容易となり、「SWノブを探る」という「運転以外の行為」(運転の妨げ)をより少なくできるからである。
【0007】
従来、1つのSWノブは1つの機能の操作しかできないため、1回押すかもしくは回すかをすればそのSWノブの操作は終了し、その後に必要ならば他のSWノブへ移動し、同様の操作を繰り返すことになるため、1つのSWノブの操作時間は一瞬であるかもしくは短い。
【0008】
しかしながら、多種の機能を操作できるように設置される触覚SWでは、その1つのSWノブを操作している時間は長くなる。同一のSWノブにて全ての入力操作行うからである。また、操作の始めに、多種の機能の中から1つの機能を選択するという操作を必要とすることも操作時間を長くする要因となっている。そのように長い操作時間を要する触覚SWにおいては、SWノブの操作性は他の形式のSWに比較してより重要となる。
【0009】
SWノブが近く、運転姿勢からの移動が少ないことにより操作する際の負担も軽減される。移動量が多いと腕や手首のひねりにもつながるため運転者の負担となるからである。図7(d)には触覚SWのノブが中央に設置された場合の操作状態が示されている。矢印1は運転姿勢における腕の向きを指しており、矢印2は触覚SWを操作する手の向きを指している。矢印1と矢印2の関係から手首をひねっているといえる。
SWノブ操作の安全性と操作性の向上を狙った技術の参考例としては、特許文献3がある。
【0010】
【特許文献1】特許3850619号公報
【特許文献2】特開2007−055585号公報
【特許文献3】特開平09−175288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように触覚SWのノブを運転席側に寄せて設置することで、安全性、操作性が向上する等、運転者にとっての多くのメリットが生じた。
しかしながら、従来、上記触覚SWを始めとする集約化された車両用統合SWのほとんどは固定型であるために、運転者側に寄せて設けた場合にも問題がないわけではない。
【0012】
具体的には、触覚SWのノブが運転者側に寄っている場合、運転者にとっては安全性と操作性が向上するが、助手席乗員にとっては遠のく方向であるため、操作性が悪くなるという欠点があった。また、SWノブが運転姿勢における運転者の腕の位置に近いため、助手席乗員が操作する際は運転者の腕と干渉してしまい、腕を退かしてもらわなければならなくなるという欠点もあった。
【0013】
また近年運転席用、助手席用とそれぞれに独立したアームレストのほかに、図1に代表されるようにコンソールボックスのリッドを運転席用、助手席用とが一体化したアームレストとして利用することが多くなってきている。そのため、そのようなアームレストを用いた際、図7(a)、(b)に示すように運転席、助手席のちょうど真ん中に設けた場合であっても、多機能スイッチはアームレストに手を置きながら使用しているケースが多いために、お互いの腕が邪魔になるという問題があった。勿論、SWノブを助手席側に寄せて設けた場合にも運転者にとっての操作性及び運転上の安全性が悪くなるという問題が生じる。
【0014】
上記問題に対し、特許文献3に開示されている技術は運転者や助手席乗員の各々におけるSWノブの操作性の向上をねらった技術で、運転者と助手席乗員の両方の操作性と安全性の向上をねらったものではない。
【0015】
本発明は上記問題点を解決して、運転者のSWノブ操作における安全性、操作性を良好に保つとともに、助手席乗員のSWノブ操作における操作性も良好なものとし、さらに、両者が共にアームレストに手を置いたままでも操作性の良い車両用統合スイッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、基部と基部に対して複数の方向に可動に取付けられた1つのノブを有し、上記ノブの操作方向の選択により、車両の複数の装備品のいずれかを選択し、当該選択された装備品の制御を行う車両用統合スイッチであって、上記基部が水平移動用のレールを備えてセンターコンソール上に水平移動可能に設けられており、使用者に対する位置を変えることができることを特徴とする。これにより、使用者の方向にSWノブを移動させることにより、運転席側、助手席側の双方からのSWノブの操作性を向上させることができ、運転者の走行時のSWノブ操作の安全性、能率を向上させることができる。
【0017】
請求項2の発明は、さらに、上記ノブは制御対象の装備品やその制御項目に応じて反力が制御され、使用者の触覚に異なる感覚を生じさせることを特徴とする。これにより、使用者は目視によらずに触覚によりSWの操作対象の確認が行えるため、走行安全性や操作能率がさらに向上する。
【0018】
請求項3の発明は、さらに、上記車両が運転席ならびに助手席用の一体型アームレストを備えており、上記ノブは、上記アームレストに腕を置きながら操作可能な位置に配設されることを特徴とする。これにより、このような一体化されたアームレストにおいて、運転者と助手席乗員の両者が共にアームレストに手を置いたままでもお互いの腕がぶつかることなくSWノブの操作を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明の車両用統合スイッチは、SWノブを左右に移動可能に構成することにより、運転者におけるSWノブの操作性を良好として操作能率、運転時の安全性を高めるとともに、助手席乗員におけるSWノブの操作性も良好なものとし、さらに、両者が共にアームレストに手を置いたままでも双方におけるSWノブの操作性を良好なものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の車両用統合SWの一実施形態について図面に基づいて説明する。
本実施形態は上記入力装置が触覚SWである場合について説明するが、通常の集約化された車両用統合SW(触覚SW以外のもの)であっても勿論よい。また、本実施形態ではコンソール本体が運転席ならびに助手席用の一体型アームレストを備える構成となっているが、アームレストが運転席用と助手席用に独立して設けられる構成であってもよい。
【0021】
図1は、触覚SWのノブが中央にある場合の斜視図である。符号1〜5はそれぞれコンソール本体、アームレスト、コンソールアッパー、触覚SWノブ、カバープレートを示す。
【0022】
図2は、上記ノブ4を運転席側(右ハンドル車)に寄せた場合の斜視図であり、図3は上記ノブ4を助手席側(同上)に寄せた場合の斜視図である。
【0023】
図4は、コンソール本体1の側面図である。触覚SWのノブ4はアームレスト2の前方の図の位置に配設されている。
【0024】
図5は図4のA−A断面図である。上部にノブ4が配設された触覚SW6が水平に設置されたレール7上を左右に移動自在に取り付けられている。これにより、触覚SW6及びノブ4は運転席側と助手席側との間を移動することが可能となる。
触覚SW6の上部左右側面にはそれぞれカバープレート5が取付けられており、触覚SW6が左右に移動するのに伴って移動し、左右のコンソール本体1に取付けられたコンソールアッパー3と触覚SW6との間の隙間から内部にゴミ等が入らないようにカバーしている。
【0025】
図6は図5のB−B断面図である。
触覚SW6は、レール7によって前後及び上下方向を規制されて左右方向(紙面に対して垂直方向)に移動可能となっている。
上記ガイドプレート5は、触覚SW6の前部(図の右側)及び後部(同左側)に取付けられており、触覚SW6の前後のコンソールアッパー3の下部に設けられたレール8に沿って触覚SW6の移動に伴って左右(紙面に対して垂直方向)に移動する。
【0026】
次に、上記構成の車両用統合SWの機能について説明する。
運転者が一人で運転する際は、ノブ4を図2のように運転者側に手動にて寄せる。これにより、運転姿勢からの腕の移動距離を短くすることができ、操作性が向上する。例えば運転者が、運転中にアームレスト2に腕を乗せている場合において、その姿勢のままノブ4に手が届く位置が最適といえる。この場合、上述した図7(d)における手首のひねりは、触覚SWが運転者側に寄れば矢印2は矢印1の向きに近づくため軽減される。
【0027】
助手席に人が乗った場合、その乗員がノブ4を操作する際は図3のように助手席側へ手動にて寄せる。そうすることで、助手席乗員もアームレストに腕を乗せたくつろいだ状態から腕の移動距離最小にてノブ4の操作ができるため、ノブ4が運転席側にある状態はもとより、中央にある状態よりも操作性は向上する。さらに、運転者がアームレストに腕を乗せている状態においても、助手席乗員が運転者の腕と干渉することなくノブ4を操作することができる。
【0028】
運転席側から助手席側への移動は電動式で行ってもよい。触覚SW6とレール7との間にモータを設置するという一般的な方法で可能となる。
また、SWは図に示したようなダイヤル式でなくてもよく、レバー式などであっても、またそれらを組み合わせたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の触覚SWが中央にある場合の斜視図である。
【図2】同SWが運転者側(右ハンドル)に寄せた場合の斜視図である。
【図3】同SWが助手席側(右ハンドル)に寄せた場合の斜視図である。
【図4】同SWの側面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】従来技術の実施形態を示す図であり、(a)はレバー及びダイヤル式の触覚SWが中央に設置されている場合、(b)はダイヤル式の触覚SWが中央に設置されている場合、(c)はダイヤル式の触覚SWが運転席側に設置されている場合、(d)は(a)における操作状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0030】
1 コンソール本体
2 アームレスト
3 コンソールアッパー
4 ノブ
5 カバープレート
6 触覚SW
7 レール(触覚SW用)
8 レール(カバープレート用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と基部に対して複数の方向に可動に取付けられた1つのノブを有し、
上記ノブの操作方向の選択により、車両の複数の装備品のいずれかを選択し、当該選択された装備品の制御を行う車両用統合スイッチであって、
上記基部が水平移動用のレールを備えてセンターコンソール上に水平移動可能に設けられており、
使用者に対する位置を変えることができる
ことを特徴とする車両用統合スイッチ。
【請求項2】
上記ノブは制御対象の装備品やその制御項目に応じて反力が制御され、使用者の触覚に
異なる感覚を生じさせることを特徴とする、請求項1に記載の車両用統合スイッチ。
【請求項3】
上記車両は、運転席ならびに助手席用の一体型アームレストを備えており、上記ノブは、上記アームレストに腕を置きながら操作可能な位置に配設されることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用統合スイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−83731(P2009−83731A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257898(P2007−257898)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】