説明

車両用表示灯

【課題】従来、吸盤と磁石で車両の屋根に取り付けるようにした表示灯がある。しかし、吸盤の吸着力は、経年変化による材質の劣化等で低下するため、例えば高速走行時に受ける風圧で車両用表示灯が落下する場合があった。
【解決手段】透光性を有し底面が開口したキャップ形態のカバー部材20と、そのカバー部材20の内側で点灯してカバー部材20を発光させる発光手段30と、前記カバー部材20の底面より大きい形状のシート形態であって車両Tの屋根Rの外表面に磁着可能なマグネットシート40と、を備え、マグネットシート40の上面であってそのマグネットシート40の全ての周縁より内側となる位置にカバー部材20の底面を固着し、さらにマグネットシート40の上面の中心よりカバー部材20の底面の中心を車両Tの進行方向に対して後方寄りに配置した車両用表示灯1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてタクシーなどの業務用車両の車体に装着して使用する車両用表示灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タクシーの社名や広告を表示する車両用表示灯として、底面が開口したキャップ形態のカバー部材と、そのカバー部材の内側で点灯してカバー部材を発光させる発光手段と、カバー部材の底面を覆い且つ前記発光手段の取付ベースとなるトレー形態の基礎部材と、基礎部材の底面に設けた吸盤並びに磁石と、からなるものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−281919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の車両用表示灯は、基礎部材の底に設けた吸盤と磁石の双方の力で車両の屋根に取り付けるようになっており、不要時(冠婚葬祭の送迎など)にいつでも取り外せるようになっている。
ところが吸盤の吸着力は、経年変化による材質の劣化や屋根の上にある埃等の影響で低下するため、例えば高速走行時に受ける風圧で、車両用表示灯が落下する場合があった。
そのため現場レベルでは、落下事故防止対策として、吸盤に接着剤を塗布して車両の屋根に接着することが行われているが、そうすると今度は、必要なときになかなか外せない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載したように、透光性を有し底面が開口したキャップ形態のカバー部材と、そのカバー部材の内側で点灯してカバー部材を発光させる発光手段と、前記カバー部材の底面より大きい形状のシート形態であって車両の屋根の外表面に磁着可能なマグネットシートと、を備え、前記マグネットシートの上面であってそのマグネットシートの全ての周縁より内側となる位置に前記カバー部材の底面を固着し、さらにマグネットシートの上面の中心よりカバー部材の底面の中心を車両の進行方向に対して後方寄りに配置した車両用表示灯を提供する。
【0005】
また、請求項2に記載したように、透光性を有し底面が開口したキャップ形態のカバー部材と、そのカバー部材の内側で点灯してカバー部材を発光させる発光手段と、前記カバー部材より大きい形状のシート形態であって車両の屋根の外表面に磁着可能なマグネットシートと、を備え、前記マグネットシートの上面であってそのマグネットシートの全ての周縁より内側となる位置に前記カバー部材の底面を固着し、さらにマグネットシートのカバー部材で囲まれた領域内に空間部を形成すると共にその空間部に前記発光手段を配置してなる車両用表示灯を提供する。
【0006】
請求項3に記載したように、透光性を有し底面が開口したキャップ形態のカバー部材と、そのカバー部材の内側で点灯してカバー部材を発光させる発光手段と、前記カバー部材より大きい形状のシート形態であって車両の屋根の外表面に磁着可能なマグネットシートと、を備え、前記マグネットシートの上面であってそのマグネットシートの全ての周縁より内側となる位置に前記カバー部材の底面を固着し、また、マグネットシートの上面の中心よりカバー部材の底面の中心を車両の進行方向に対して後方寄りに配置し、さらに、マグネットシートのカバー部材で囲まれた領域内に空間部を形成すると共にその空間部に前記発光手段を配置してなる車両用表示灯を提供する。
【発明の効果】
【0007】
車両が前進しているとき、車両用表示灯のカバー部材には、正面から受ける風圧により、前縁を跳ね上げて後ろ向きに倒れる向きの力が作用する。請求項1に記載の車両用表示灯は、マグネットシートの上面の中心よりカバー部材の底面の中心を車両の進行方向に対して後方寄りに配置したから、カバー部材の前縁がマグネットシートの中心近くに位置する。周知のようにマグネットシートは、端から捲り上げると比較的容易に剥がれるが、中央付近を引き上げても容易には浮き上がらず剥がれない。前記風圧による前縁跳ね上げ方向の力は、マグネットシートの中央付近を引き上げる力として作用するから、マグネットシートは容易には浮き上がらず、従って正面からの風圧に対してカバー部材は倒れにくい。逆に、カバー部材の後縁は、マグネットシートの後縁近くに位置するから、理論上後ろからの風圧に対し車両の前側に向けて倒れやすくなるが、通常、車両の後進は低速で行われるため、カバー部材が倒れる程の風圧は作用しない。このように請求項1に記載の車両用表示灯は、マグネットシートの磁力によって車両の屋根の外表面に着脱自在に取り付けることができ、しかもマグネットシートの上面中央とカバー部材の中心とを一致させる場合に比べて、高速走行時の取付強度に優れる効果がある。なお、マグネットシートは、長期間使用しても劣化による磁着力の低下が殆どなく、しかも着脱が容易であるため、車両用表示灯の固定手段として最適である。
【0008】
また、請求項2に記載の車両用表示灯は、マグネットシートの磁力によって車両の屋根の外表面に着脱自在に取り付けることができる。また、マグネットシートに形成した空間部に発光手段を配置したから、マグネットシートの裏側から発光手段を出し入れすることが可能であり、従って発光手段の交換又は修理が簡単に行える。ちなみに、特許文献1の車両用表示灯は、基礎部材からカバー部材を外して、その中にある発光手段を着脱する必要があるため、発光手段の交換又は修理に手間が掛かる。
さらにまた、屋根に貼り付いたマグネットシートが、発光手段を囲う簡易な防水シールとして機能するため、発光手段が雨水により水浸しになるおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図1は車両用表示灯の分解斜視図、図2は車両用表示灯の斜視図、図3は図2のX−X線断面図、図4は図2のY−Y線断面図である。
【0010】
本発明の車両用表示灯1は、図1に示したように、カバー部材20と、発光手段30と、マグネットシート40と、から概略構成される。
【0011】
前記カバー部材20は、乳白色で透光性を有する合成樹脂の成形品であり、断面が略二等辺三角形のいわゆる切妻屋根形状で、長方形(105mm×300mm)をなす底面が開口し、内部が空洞のキャップ形態である。このカバー部材20の傾斜した前面20fと後面20rに、社名や広告等を記載する。
【0012】
前記発光手段30は、前記マグネットシート40と同じマグネットシートを使用し前記マグネットシート40の後述する空間部41と同じ長方形か又はそれより一回り小さい長方形に形成したベースシート31と、そのベースシート31上に固着した合成樹脂製の基台32と、その基台32上に固定した配線基板33と、その配線基板33の上面に取り付けた高輝度の発光ダイオード34,34と、から構成される。この発光手段30は、配線基板33から引き出したリードワイヤー35を介して、車両Tの電気系統に接続されている。なお、発光手段30の前記ベースシート31は、マグネットシート40の空間部41を作るために切り取った部分を利用すると無駄がない。
【0013】
前記マグネットシート40は、例えば、たて約240mm、よこ約440mm、厚さ約2mmのシート状磁石であり、車両Tの屋根Rの曲面に沿うだけの可撓性を有する。マグネットシート40には、前縁から約130mm、後縁から約60mm、左右側縁から各々約90mmの位置に長方形の空間部41が切り抜かれており、その空間部41の一辺からマグネットシート40の側方に配線カバー42が突設されている。この配線カバー42は、図4に示したように断面略凸形で、内部にリードワイヤー35を通す配線通路43を有し、その配線通路43が腹面に設けた割り口44で切り開かれている。従って、リードワイヤー35は、配線通路43に対し、配線カバー42の割り口44から自由に出し入れできる。なお、配線カバー42の少なくとも腹面全体はマグネット構造になっており、車両Tの屋根Rに磁着する。また、マグネットシート40の領域にある配線カバー42の割り口44は、粘着テープ(例えばビニールテープ)50によって、開かないように止められている。
【0014】
しかして前記カバー部材20は、マグネットシート40に対し、前記空間部41を囲う位置に載置して底面を接着剤で固着する。この状態でカバー部材20の底面の周りには、マグネットシート40が鍔状にはみ出している。また、カバー部材20は、底面の中心がマグネットシート40の上面の中心より車両Tの進行方向に対して後方に寄っていて、図3に示したように、カバー部材20の前縁からマグネットシート40の前縁までの距離が、カバー部材20の後縁からマグネットシート40の後縁までの距離より大きい。特に、実施形態では、カバー部材20の前縁がマグネットシート40のほぼ中央に位置している。
なお、配線カバー42の上面には、カバー部材20と交差する位置に凹部45が形成されており、その凹部45にカバー部材20の底の縁が嵌め込まれている。
【0015】
また、発光手段30は、マグネットシート40の裏側から、発光ダイオード34をカバー部材20側に向けて空間部41に嵌め込み、ベースシート31の裏面をマグネットシート40の裏面と面一にして粘着テープ(例えばビニールテープ)50等の簡易な接合手段で止められている。この状態で発光手段30の発光ダイオード34がカバー部材20の空洞内に位置するため、発光ダイオード34を点灯させるとカバー部材20の全体が明るく発光する。一方、発光手段30のリードワイヤー35は、配線カバー42の配線通路43を通って車両T側の電気系統に接続される。
【0016】
以上の構成である車両用表示灯1は、図2に示したように、車両Tの屋根Rに載せるだけで、マグネットシート40の全面が磁着し、また、配線カバー42も磁着して取り付けが完了する。
一方、車両用表示灯1を外す場合は、マグネットシート40の端を持って捲り上げればよい。
このように車両用表示灯1の車両Tへの着脱は、非常に簡単であり、ごく短時間で行える。
【0017】
次に、車両用表示灯1を屋根Rに装着した状態で、前進且つ高速走行した場合は、正面から受ける風圧により、カバー部材20に対し、後ろ向きにスライドさせる向きの力が作用するが、マグネットシート40の全面及びベースシート31の全面が、車両Tの屋根Rにぴったりと磁着しているため動かない。
また、正面から受ける風圧により、カバー部材20には、図3において、底面の後縁を支点にして前縁を跳ね上げる姿勢、つまり後ろ向き(反時計回り)に倒れる向きの力が作用する。しかし、カバー部材20の前縁は、マグネットシート40のほぼ中央の最も浮き難い部分にあるため、カバー部材20の前縁を跳ね上げる向きの力が作用しても上がらない。従って、カバー部材20は、正面からの強い風圧を受けても倒れない。
【0018】
一方、本発明の車両用表示灯1は、正面からの風圧に強い反面、後面からの風圧、すなわち車両が後進する際に受ける風圧に対し、正面との比較において弱められているが、通常、車両の後進はごく低速で行われるため、カバー部材が倒れる程の風圧が作用することはなく、よって、通常の使用に全く支障がない。
【0019】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では、カバー部材20を切妻屋根形のキャップ形態にしたが、底面が開口するキャップ形態であればどのような形状であってもよい。また、実施形態で説明したマグネットシート40の具体的な寸法は、あくまでも一つの例示であり、キャップ部材20の大きさや形状などに応じて決定されるべきものである。
【0020】
また、実施形態では、発光手段30のベースシート31をマグネットシートで形成したが、ベースシート31を磁性体でない合成樹脂部材で形成してもよい。もっとも、ベースシート31をマグネットシートで形成した場合には、ベースシート31自身が屋根Rに磁着して安定するため、もし万一、簡易な接合手段である粘着テープ50が切れるなどした場合にも、定位置からずれない点で優れている。
【0021】
また、実施形態では、マグネットシート40の上面の中心よりカバー部材20の底面の中心を進行方向に対して後方寄りに配置したが、より大きなマグネットシート40を使用することにより、マグネットシート40の上面の中心とカバー部材20の底面の中心を一致させるようにすることもできる。この場合でも、マグネットシート40の空間部41に発光手段30を配置したことにより得られる利益は、十分に享受可能である。
【0022】
また、実施形態では、マグネットシート40の空間部41に発光手段30を配置したが、例えば、空間部41のないマグネットシート40の空間部41に相当する場所に、特許文献1のような例えばトレー形態の基礎部材を固着し、その基礎部材に対してカバー部材20を着脱させるようにしてもよい。この場合でも、マグネットシート40の上面の中心より、カバー部材20の底面の中心を進行方向に対して後方寄りに配置したことにより得られる利益は、十分に享受可能である。
【0023】
また、実施形態では、発光手段30の発光源として発光ダイオード34を使用したが、それ以外の電気的な発光源であってもよい。もっとも発光ダイオード34は、耐久性に優れているため、発光手段30をマグネットシート40の空間部41から外す必要が殆どなく、よって繰り返しての着脱を考慮することなく、粘着テープ50のような、使い捨てで安価な接合手段が使えるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車両用表示灯の分解斜視図である。
【図2】車両用表示灯の斜視図である。
【図3】図2のX−X線断面図である。
【図4】図2のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 …車両用表示灯
20…カバー部材
30…発光手段
40…マグネットシート
41…空間部
T …車両
R …屋根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有し底面が開口したキャップ形態のカバー部材と、
そのカバー部材の内側で点灯してカバー部材を発光させる発光手段と、
前記カバー部材の底面より大きい形状のシート形態であって車両の屋根の外表面に磁着可能なマグネットシートと、を備え、
前記マグネットシートの上面であってそのマグネットシートの全ての周縁より内側となる位置に前記カバー部材の底面を固着し、
さらにマグネットシートの上面の中心よりカバー部材の底面の中心を車両の進行方向に対して後方寄りに配置したことを特徴とする車両用表示灯。
【請求項2】
透光性を有し底面が開口したキャップ形態のカバー部材と、
そのカバー部材の内側で点灯してカバー部材を発光させる発光手段と、
前記カバー部材より大きい形状のシート形態であって車両の屋根の外表面に磁着可能なマグネットシートと、を備え、
前記マグネットシートの上面であってそのマグネットシートの全ての周縁より内側となる位置に前記カバー部材の底面を固着し、
さらにマグネットシートのカバー部材で囲まれた領域内に空間部を形成すると共にその空間部に前記発光手段を配置してなることを特徴とする車両用表示灯。
【請求項3】
透光性を有し底面が開口したキャップ形態のカバー部材と、
そのカバー部材の内側で点灯してカバー部材を発光させる発光手段と、
前記カバー部材より大きい形状のシート形態であって車両の屋根の外表面に磁着可能なマグネットシートと、を備え、
前記マグネットシートの上面であってそのマグネットシートの全ての周縁より内側となる位置に前記カバー部材の底面を固着し、
また、マグネットシートの上面の中心よりカバー部材の底面の中心を車両の進行方向に対して後方寄りに配置し、
さらに、マグネットシートのカバー部材で囲まれた領域内に空間部を形成すると共にその空間部に前記発光手段を配置してなることを特徴とする車両用表示灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−251294(P2008−251294A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89828(P2007−89828)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(591077461)株式会社リード (11)
【Fターム(参考)】