説明

車両用表示装置

【課題】抑制機能が低下していない運転者に影響を与えることなく、抑制機能が低下した運転者が視認対象の内容を視認可能にする。
【解決手段】動的視対象検出部7が、表示部17に表示する視覚情報の中から運転者が視認対象を視認する際のノイズとなる動的視対象を抽出し、画像信号演算部8が、抽出された動的視対象の色度を高齢者が認識しにくい380〜480nmの波長範囲の光の色度に変換する。これにより、抑制機能が低下した運転者が視認対象を視認する際、視認対象の周辺に存在する動的視対象がノイズになりにくくなるので、抑制機能が低下していない運転者に影響を与えることなく、抑制機能が低下した運転者が視認対象の内容を視認,認識することを容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者に視覚情報を提示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、時間や天候等に応じて地図画面の出力態様を変化させることにより、車外の雰囲気を地図画面上に表現する車両用表示装置が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−233098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
視認対象の周辺、すなわち周辺視野内にノイズがある際にそのノイズを抑制して視認対象を視認する抑制機能(選択的注意機能)は加齢と共に低下する。そしてこの抑制機能が低下している場合には、視認対象を視認する際、抑制機能が低下していない人が抑制できるレベルのノイズを抑制できず、結果として、視認対象を視認,認識することが困難になったり、注意を一箇所に保つことができなくなったりする。しかしながら、従来の車両用表示装置は、このような運転者の抑制機能の低下を考慮せずに単に視覚情報を表示する構成になっているために、運転者によっては視認対象の内容を視認,認識できなくなることがある。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、抑制機能が低下していない運転者に影響を与えることなく、抑制機能が低下した運転者が視認対象の内容を視認可能にする車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両用表示装置は、運転者に提示する視覚情報の中から運転者が視認対象を視認する際のノイズとなる視覚情報を動的視対象として抽出し、抽出された動的視対象の表示特性をノイズにならないように制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る車両用表示装置によれば、抑制機能が低下した運転者が視認対象を視認する際、視認対象の周辺に存在する動的視対象の表示特性を視認対象を視認する際のノイズにならないように制御するので、抑制機能が低下していない運転者に影響を与えることなく、抑制機能が低下した運転者が視認対象の内容を視認,認識することを容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態となる車両用表示装置の構成について説明する。
【0008】
〔第1の実施形態〕
〔車両用表示装置の構成〕
本発明の第1の実施形態となる車両用表示装置1は、車両に搭載され、ナビゲーション装置2と、映像取得部3と、車両状態検出部4と、運転状況推定部5と、入力部6と、動的視対象検出部7と、画像信号演算部8と、表示装置9と、表示制御部10とを主な構成要素として備える。ナビゲーション装置2は、車両の位置を検出するためのGPS受信器11と、地図の描画や経路案内のために必要な地図データを記憶する地図データベース(DB)12と、渋滞情報等の道路状況を示す情報を取得するVICS情報受信器13とを備え、運転者が設定した目的地への経路を案内したり、車両周囲の地図情報を提供したりする。映像取得部3は、撮像装置,DVD再生装置,テレビチューナー等から映像情報を取得する。
【0009】
車両状態検出部4は、車両の速度(車速)を検出する車速センサー14と、車両のシフトポジションを検出するシフトポジション信号検出部15と、車両のサイドブレーキ(パーキングブレーキ)のオン/オフの状態を検出するサイドブレーキ信号検出部16とを備え、車両状態を示す信号を検出する。運転状況推定部5は、車両状態検出部4が検出した車両状態を示す信号に基づいて運転者が車両の運転操作を行っているか否かを推定する。入力部6は、ナビゲーション装置2,オーディオ,空調装置等の車両内の各部を操作するための操作スイッチである。
【0010】
動的視対象検出部7は、運転者が視認対象を視認する際にノイズとなる動的な視対象(詳しくは後述する)を検出する。画像信号演算部8は、動的視対象検出部7により検出された動的視対象が運転者が視認対象を視認する際にノイズにならないように動的視対象の光学特性を変換する。表示装置9は、各種情報を表示する表示部17と、表示制御部10からの制御信号に従って表示部17に表示される視覚情報の明るさや表示色等の光学特性や時間特性を制御する色調整部18とを備える。表示制御部10は、画像信号演算部8からの指示に従って色調整部18を制御する。
【0011】
〔表示制御処理〕
このような構成を有する車両用表示装置1は、以下に示す表示制御処理を実行することにより、抑制機能が低下していない運転者に影響を与えることなく、抑制機能が低下した運転者が視認対象の内容を容易に視認できるようにする。以下、図2に示すフローチャートを参照して、この表示制御処理を実行する際の車両用表示装置1の動作について説明する。
【0012】
図2に示すフローチャートは、車両用表示装置1が搭載された車両のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り換えられたタイミングで開始となり、表示制御処理はステップS1の処理に進む。
【0013】
ステップS1の処理では、運転状況推定部5が、車両状態検出部4により検出された情報に基づいて車両が停車状態にあるか否かを判別する。具体的には、運転状況推定部5は、車速センサー14,シフトポジション信号検出部15,及びサイドブレーキ信号検出部16により検出された情報に基づいて、車速がゼロ,シフトポジションがパーキングポジション(P)又はニュートラルポジション(N),サイドブレーキがオン状態にある場合において車両が停車状態にあると判定する。但し、サイドブレーキがオン状態のまま車両が走行している場合もあるので、サイドブレーキのオン/オフを車両の停車状態の判定条件から省いても良い。そして車両が停車状態にあると判別した場合、表示制御部10は、ステップS2の処理として色調整部18を制御することにより表示部17に表示する視覚情報の光学特性を初期状態に戻した後、表示制御処理をステップS1の処理に戻す。一方、車両が停車状態にないと判別した場合には、運転状況推定部5は表示制御処理をステップS3の処理に進める。
【0014】
ステップS3の処理では、動的視対象検出部7が、表示部17に表示されている視覚情報の中に運転者の注意を引くような動的な視認対象(動的視対象)があるか否か(例えば所定値以上の面積を有する映像信号が表示画面内を連続的に移動しているか否か)を判別する。動的視対象としては、図3(a)に示すような車両前方の映像画面D内にポップアップ表示されたオブジェクトO1(視認対象)周囲の動的な動き,図3(b)に示すような地図画面D内の白線の動的な動きや地図画面D下に表示されたイコライザーO2の動的な動き等を例示できる。
【0015】
具体的には、動的視対象検出部7は、始めに、視覚情報を構成する各フレーム間で変化した画像(差分画像)を生成してその差分画像の大きさを算出する。次に動的視対象検出部7は、視力1.0程度で視認できない視覚情報はある程度の大きさを有さなければなければノイズとはなりにくいので、差分画像の中から以下の数式1を満たす大きさH以上の視覚情報を抽出する。なお数式1によれば、視距離Laが650[mm],視力VAが1である場合、大きさH=0.27[mm]以上の視覚情報が抽出される。
【数1】

【0016】
次に動的視対象検出部7は、以下の数式2を用いて大きさH以上の視覚情報のフレーム間移動距離Lmを算出し、以下の数式3を用いてフ大きさH以上の視覚情報の移動速度Vを算出する。なお数式3中、パラメータTは、表示部17のフレームレート又は表示切替時間を示し、30[ms]又は60[ms]である。
【数2】

【数3】

【0017】
そして動的視対象検出部7は、視覚情報が高速で移動している場合には、運転者はその視覚情報を認識することができないためにノイズにはならないので、移動速度Vが所定範囲内にある視覚情報を動的視対象と判断する。この所定範囲は、運転者の動体視力に応じて変化するが、例えば1〜50[°/s]の範囲内である。判別の結果、動的視対象が存在しないと判別した場合、動的視対象検出部7は表示制御処理をステップS2の処理に戻す。一方、動的視対象が存在すると判別した場合には、動的視対象検出部7は表示制御処理をステップS4の処理に進める。
【0018】
ステップS4の処理では、画像信号演算部8が、ステップS3の処理により検出された動的視対象が運転者が視認対象を視認する際のノイズにならないように動的視対象の光学特性の変換値を演算する。具体的には、人間の分光感度は図4に示すように年齢によって変化し、高齢者では500nm以下の短波長の範囲内の光に対する感度が低下する。そこで画像信号演算部8は、動的視対象が図5に青色範囲A1(波長380〜480nmの光)内の色度表示されるように動的視対象の色度を変換する。
【0019】
以下、色度の変換方法について説明する。なお本実施形態では、動的視対象の色度を変換するが、同様の考えに基づいて輝度,コントラスト,サイズ,形状,順応時間等、加齢に伴い顕著に低下する特性を利用してもよい。また以下の説明では、一般的なデータを用いて動的視対象の色度を変換するが、運転者個人の分光感度特性を用いて動的視対象の色度を変換してもよい。
【0020】
動的視対象の色度を変換する際は、画像信号演算部8は、始めに動的視対象の色度を算出する。動的視対象の色度は画像信号であるR,G,B信号(一般的に8ビット信号=0〜255のフレームバッファ値で表現される)を用いて計算することができる。次に、画像信号演算部8は、動的視対象の色度が図5に示す青色範囲A1(0.15<x<0.21,0.15<y<0.3)内にあるか否かを判別する。
【0021】
一般に、多色表示装置は、3原色のR,G,B単色の色度(xr,yr,zr),G(xg,yg,zg),B(xb,yb,zb)の範囲の色(図5に示す色度範囲A2)を表示することができる。なおz=(1−x−y)であるので、以下ではzを省略して色度を2次元で表現する。またRGBの色度は表示装置の発光輝度によって多少変化するが、以下の数式4によって表される。なお数式4中、X,Y,Zは3刺激値を示す。
【数4】

【0022】
また表示部17が液晶画面である場合には、各画像信号(FBr,FBg,FBb)のRGBそれぞれの輝度Lr(FBr),Lg(FBg),Lb(FBb)は以下の数式5で近似できる。
【数5】

【0023】
これにより、各輝度と色度から3刺激値X,Y,Zは以下の数式6により求められる。
【数6】

【0024】
従って、数式6に示す行列式の逆変換を行うことにより、任意の色度値の画像信号(R,G,B)を算出することができる。これにより、画像信号演算部8は、色度値が青色の色度値範囲A1内に入っていなければ、輝度Yを一定にする条件をつけて青色の色度値範囲A1内になるようにx,yの値を変更し、輝度値Lr(FBr),Lg(FBg),Lr(FBb)を算出する。
【0025】
一般に、Lr(FBb)は他の色より輝度が低いので、輝度Yを満たさない場合には、x,y値を緑方向に変化させる(y値を大きくする)ことで調整する。それでも不十分である場合には、そのままの輝度Yで処理してもよい。これにより、ステップS4の処理は完了し、表示制御処理はステップS5の処理に進む。
【0026】
ステップS5の処理では、表示制御部10が、ステップS4の処理により演算された画像変換値に従って動的視対象の色度を調整した後の視覚情報を表示するように色調整部18を制御する。これにより、ステップS5の処理は完了し、表示制御処理はステップS1の処理に戻る。
【0027】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる車両用表示装置1によれば、動的視対象検出部7が、表示部17に表示する視覚情報の中から運転者が視認対象を視認する際のノイズとなる動的視対象を抽出し、画像信号演算部8が、抽出された動的視対象の色度を高齢者が認識しにくい380〜480nmの波長範囲の光の色度に変換する。そしてこのような構成によれば、抑制機能が低下した運転者が視認対象を視認する際、視認対象の周辺に存在する動的視対象がノイズになりにくくなるので、抑制機能が低下していない運転者に影響を与えることなく、抑制機能が低下した運転者が視認対象の内容を視認,認識することを容易にすることができる。
【0028】
なお、色度の変化が急激であったり、短時間で切り替わったりすることにより、運転者が違和感を感じる可能性がある。そこで動的視対象の色度は以下のように連続的に変化させることが望ましい。人間の色の違いを見分ける能力は色弁別能力として知られており、xy色度図上ではマッタガムの色弁別楕円として不均等性があると言われている。このため色弁別楕円が均等になるように均等色空間での色差で規定することが望ましく、ここではLab均等色空間における色差ΔLabで規定する。一般に、色の変化がわかる最小弁別閾は色差ΔLabが1以下と言われているので、本実施形態ではこの値を用いる。しかしながら、この値は人間の順応状態や周囲環境によって大きく変化するので、人間の順応状態や周囲環境に応じて色差ΔLabの規定値を補正してもよい。
【0029】
動的視対象の色度の時間変化は以下のように調整することが望ましい。一般に人間が光の点滅がわかるフリッカー値は30Hz(30mS)程度であると言われている。そこで輝度や色変化によって表示がちらつかないようにするために、このフリッカー値以下の時間で表示色を連続的に変化させる。しかしながら、フリッカー値は、運転者の疲労状態や順応条件,各種光学条件によって変化するので、これらの値を用いて補正してもよい。このようにして色度を連続的に変化させることにより、動的視対象の色を違和感なく変化させることができる。
【0030】
動的視対象の色度を変化させることによって表示色のコントラストが高くなる場合には、空間的な位置も連続的に変化させることが望ましい。具体的には、前述の数式を用いて動的視対象とその周囲との輝度差,コントラスト差,及び色度差を算出し、運転者が高齢である場合には、その差を極力なくすように空間的な位置を徐々に変化させることが望ましい。
【0031】
色度の頻繁な切替が発生すると煩わしく、そちらに運転者の注意がいってしまう可能性がある。このため、動的視対象の光学特性を元に戻す時間に遅延時間を設けることが望ましい。具体的には、1〜5秒程度の遅延時間を設けることにより、動的視対象が短時間静止した場合等の追従特性が切り替わり、違和感のない表示を提供することができる。
【0032】
表示部17に車両前方の映像が表示されている場合、画面内での移動速度は場所によって異なるが映像のフロー方向は一定になる。このような場合には、消失点付近の移動速度が低い領域を含めて画面全体を切り換えることにより、色度の変化の違和感を低減することができる。
【0033】
表示制御部10は、入力部6の操作に応じて上記表示制御処理の実行のオン/オフを切り換えてもよい。このような処理によれば、運転者の意志や趣向に応じて表示制御処理の実行のオン/オフを切り換えることができる。
【0034】
〔第2の実施形態〕
〔車両用表示装置の構成〕
本発明の第2の実施形態となる車両用表示装置21では、図6に示すように、車両状態検出部4の構成が第1の実施形態となる車両用表示装置1と異なると共に、第1の実施形態となる車両用表示装置1の構成に加えて注視位置予測部22,注視位置計測部23,運転者情報記憶部24,及び抑制機能低下範囲規定部25を備える。以下では、第1の実施形態となる車両用表示装置1と異なる点についてのみ説明し、同一部分については同符号を付すことによりその説明を省略する。
【0035】
車両状態検出部4は、車速センサー14,シフトポジション信号検出部15,及びサイドブレーキ信号検出部16に加えて、車両のステアリングの操舵角を検出する操舵角センサー26と、車両のエンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出部27を備える。注視位置予測部22は、運転状況推定部5により推定された運転者の運転状態に基づいて運転者の注視位置を推定する。
【0036】
注視位置計測部23は、近赤外光等を用いて運転者の注視位置を運転者に対して非接触で計測する。運転者情報記憶部24は、年齢,性別,視力,色覚,動体視力,夜間視力,有効視野等の運転者個人の情報を記憶する。抑制機能低下範囲規定部25は、運転者情報記憶部24に記憶されている運転者個人の情報を利用して抑制機能が低下している運転者の視野範囲を規定する。
【0037】
〔表示制御処理〕
このような構成を有する車両用表示装置21は、以下に示す表示制御処理を実行することにより、抑制機能が低下していない運転者に影響を与えることなく、抑制機能が低下した運転者が視対象の内容を容易に視認できるようにする。以下、図7に示すフローチャートを参照して、この表示制御処理を実行する際の車両用表示装置21の動作について説明する。
【0038】
図7に示すフローチャートは、車両用表示装置21が搭載された車両のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り換えられたタイミングで開始となり、表示制御処理はステップS11の処理に進む。
【0039】
ステップS11の処理では、運転状況推定部5が、車両状態検出部4により検出された情報に基づいて車両が停車状態にあるか否かを判別する。そして車両が停車状態にあると判別した場合、表示制御部10は、ステップS12の処理として色調整部18を制御することにより表示部17に表示する視覚情報の光学特性を初期状態に戻した後、表示制御処理をステップS11の処理に戻す。一方、車両が停車状態にないと判別した場合には、運転状況推定部5は表示制御処理をステップS13の処理に進める。
【0040】
ステップS13の処理では、運転状況推定部5が、ナビゲーション装置2から取得した車両が走行している道路の幅,形状,及び勾配の情報と操舵角センサー26とエンジン回転数検出部27の出力結果とを用いて運転者の運転モデルとのマッチング及び確立論的な処理を行うことにより、カーブ路や交差点,駐車場等の運転シーンを特定する。注視位置予測部22が、運転状況推定部5により特定された運転シーンを用いて前方視認,サイドミラー視認,ルームミラー視認,メータ視認,表示画面視認,看板視認等の運転者の注視点位置を予測する。注視位置計測部23が、映像所得部3により取得された運転者の顔画像を画像処理することにより運転者の注視位置を非接触形式で計測する。これにより、ステップS13の処理は完了し、表示制御処理はステップS14の処理に進む。
【0041】
ステップS14の処理では、抑制機能低下範囲規定部25が、ステップS13の処理により予測及び計測された運転者の注視位置と運転者情報記憶部24に記憶されている運転者個人の情報に基づいて運転者が情報を注視する際にノイズとなる動的視対象の範囲を推定する。具体的には、動的視対象がノイズとなる範囲は注視対象の周囲4〜12°の範囲内であると言われているので、抑制機能低下範囲規定部25はこの値の範囲を基準として運転者個人の能力に応じてこの範囲を補正する。これにより、ステップS14の処理は完了し、表示制御処理はステップS15の処理に進む。ステップS15〜ステップS17の処理は既述のステップS3〜ステップS5の処理と同じであるので以下ではその説明を省略する。
【0042】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる車両用表示装置21によれば、注視位置予測部22と注視位置計測部23が運転者の注視点位置を予測,計測し、抑制機能低下範囲規定部25が、予測及び計測された運転者の注視位置と運転者情報記憶部24に記憶されている運転者個人の情報に基づいて運転者が情報を注視する際にノイズとなる動的視対象の範囲を推定し、画像信号演算部8が、推定された範囲内にある動的視対象の色度を高齢者が認識しにくい380〜480nmの波長範囲の光の色度に変換する。そしてこのような構成によれば、上記第1の実施形態となる車両用表示装置1による効果に加えて、抑制機能が低下している範囲内にある動的視対象の色度のみを変換し、車両用表示装置21の処理負荷を軽減することができる。
【0043】
また本発明の第2の実施形態となる車両用表示装置21によれば、注視位置計測部23が運転者の注視点位置を計測するので、運転者の注視点位置を精度よく認識し、動的視対象の色度制御の無駄を省くことができる。また本発明の第2の実施形態となる車両用表示装置21によれば、注視位置予測部22が運転者の注視点位置を予測するので、計測することなく運転者の注視点位置を認識することができる。
【0044】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態となる車両用表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態となる表示制御処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】動的視対象の一例を示す図である。
【図4】加齢に伴う人間の分光感度の変化を示す図である。
【図5】色度空間を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態となる車両用表示装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態となる表示制御処理の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0046】
1:車両用表示装置
2:ナビゲーション装置
3:映像取得部
4:車両状態検出部
5:運転状況推定部
6:入力部
7:動的視対象検出部
8:画像信号演算部
9:表示装置
10:表示制御部
11:GPS受信器
12:地図データベース(DB)
13:VICS情報受信器
14:車速センサー
15:シフトポジション信号検出部
16:サイドブレーキ信号検出部
17:表示部
18:色調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられ、運転者に視覚情報を表示する表示手段と、
前記表示手段が表示する視覚情報の中から運転者が視認対象を視認する際のノイズとなる視覚情報を動的視対象として抽出する抽出手段と、
運転者が視認対象を視認する際のノイズにならないように前記抽出手段により抽出された動的視対象の表示特性を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用表示装置において、前記制御手段は、前記動的視対象の色度を380nm以上480nm以下の範囲内の波長を有する光の色度に変換することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用表示装置において、前記制御手段は前記動的視対象の色度を時間的に連続的に変化させることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用表示装置において、前記制御手段は均等色空間における色度変化ΔLabが1以下、且つ、色度の切り換え時間Δtが30ms以下になるように前記動的視対象の色度を変化させることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1項に記載の車両用表示装置において、前記制御手段は前記動的視対象の空間位置を連続的に変化させることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の車両用表示装置において、前記制御手段は、動的視対象の輝度、コントラスト、大きさ,形状、及び表示特性の経時変化のうちの少なくとも1つを制御することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1項に記載の車両用表示装置において、前記制御手段は、前記動的視対象の表示特性を元の状態に戻す際、遅延時間を設けて表示特性を元の状態に戻すことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用表示装置において、前記遅延時間が1秒以上5秒以下の範囲内にあることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のうち、いずれか1項に記載の車両用表示装置において、運転者の注視点位置を予測する注視点位置予測手段を備え、前記制御手段は前記注視点位置予測手段により予測された運転者の注視点位置の周囲に存在する動的視対象の表示特性を制御することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用表示装置において、前記注視点位置予測手段は運転者の注視点位置を計測する非接触型の計測手段であることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の車両用表示装置において、前記注視点位置予測手段により予測された運転者の注視点位置に基づいて、運転者が視認対象を視認する際のノイズとなる視野範囲を予測する抑制機能低下範囲予測手段を備え、前記制御手段は前記抑制機能低下範囲予測手段により予測された視野範囲内に存在する動的視対象の表示特性を制御することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のうち、いずれか1項に記載の車両用表示装置において、前記制御手段による動的視対象の表示特性の制御のオン/オフを切り換える選択手段を備えることを特徴とする車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−67209(P2009−67209A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237086(P2007−237086)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】