説明

車両用表示装置

【課題】複数種類の表示色からなる画像情報を固定表示しても、焼き付きによる発光のバラツキを低減させる。
【解決手段】複数の画素からなる表示画面15aを有する自発光表示器15と、複数種類の表示色で構成された表示パターンを示す画像情報を前記自発光表示器15の表示画面15aに表示させる表示制御手段P1と、を有する車両用表示装置1において、前記自発光表示器15の表示時間を計測する表示時間計測手段P2と、前記計測した表示時間と前記表示制御手段P1によって前記表示画面15aに表示させた画像情報が示す表示パターンに基づいて、前記表示画面15aを構成する複数の画素の劣化量を推測する劣化量推測手段P3と、前記劣化量推測手段P3が推測した劣化量に基づいて、前記複数の画素が同一の輝度となるように前記複数の画素の各々の輝度を補正する補正手段P4と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示画面を有する自発光表示器と、所望の表示パターンを固定表示する第1表示部と該第1表示部とは異なる領域に形成された該第1表示部よりも低輝度の第2表示部とを有する画像情報を前記自発光表示器の表示画面に表示させる表示制御手段と、を有する車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の車室内に設けられた車両用表示装置は、運転席に着座した運転者がステアリングホイールを介してそれぞれの計器装置の表示を視認できるように、運転席前方のインストルメントパネル内に配置されている。この車両用表示装置は、車両の走行速度、エンジンの単位時間当たりの回転数、燃料タンクの燃料の残量、エンジンの冷却水の温度などを示す複数の表示エリアを有して構成している。これらの各表示エリアは、運転者が一目で車両状態を理解できるように、同一ケースに効率よく配置している。
【0003】
車両用表示装置には、有機EL(Electro Luminescence)素子、無機EL素子、蛍光表示管(VFD)、電界放電ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、等の自発光表示器を備えて、該自発光表示器によって例えば速度計、回転計、等の表示パターンを表示するものがある。そして、このような自発光表示器においては、特許文献1等に示されているように、発光素子の発光特性が発光時間の経過に伴って劣化し、同じ入力電流によって得られる輝度が低下するために、画面の一定位置に常にアイコンを表示する場合等、特定の画素の発光輝度が高い場合、これらの画素は他の画素に比べて発光特性が著しく劣化するという「焼き付き」の問題が発生することが知られている。
【0004】
特許文献1に示すマトリックス駆動型ディスプレイは、表示パネルが駆動される状態において、その各画素に対する入力データを一定周期で画素毎に積算し、その後の非使用状態にて、全画素についての積算値を同一値に揃えるための補正データを作成し、該補正データに基づいて各画素を発光させる技術思想が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−228329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すディスプレイでは、入力データに基づいて画素毎の監視を行う必要があったため、発光素子への入力信号を監視してその累積を記憶する回路等が必要であり、ハードウェア的な対策が必要であった。そのため、使用する発光素子が変更されると補正方法や回路構成等も変更しなければならず、汎用的ではなかった。特に、固定表示を行う画像情報が複数種類の表示色(階調)である場合、それぞれの入力データを監視する必要があり、補正方法やハードウェア構成が複雑化してしまうという問題があった。
【0007】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、複数種類の表示色からなる画像情報を固定表示しても、焼き付きによる発光のバラツキを低減させることができる車両用表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の車両用表示装置は、図1の基本構成図に示すように、複数の画素からなる表示画面15aを有する自発光表示器15と、複数種類の表示色で構成された表示パターンを示す画像情報を前記自発光表示器15の表示画面15aに表示させる表示制御手段P1と、を有する車両用表示装置1において、前記自発光表示器15の表示時間を計測する表示時間計測手段P2と、前記表示時間計測手段P2が計測した表示時間と前記表示制御手段P1によって前記表示画面15aに表示させた画像情報が示す表示パターンに基づいて、前記表示画面15aを構成する複数の画素の劣化量を推測する劣化量推測手段P3と、前記劣化量推測手段P3が推測した劣化量に基づいて、前記複数の画素が同一の輝度となるように前記複数の画素の各々の輝度を補正する補正手段P4と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記請求項1に記載した本発明の車両用表示装置によれば、表示制御手段P1によって画像情報等が自発光表示器15に表示されると、表示時間計測手段P2によって自発光表示器15の表示時間が計測される。そして、劣化量推測手段P3によって表示時間と画像情報の表示パターンとに基づいて、表示画面を構成する複数の画素の劣化量が推測され、複数の画素の各々の輝度が同一の輝度となるように、推測された劣化量に基づいて調整手段P4によって補正される。
【0010】
請求項2記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、前記画像情報の示す表示パターンの各表示色と前記劣化量とに基づいて、前記複数の画素の各々が同一の輝度となるように前記画像情報を透過する透過画像情報を作成する透過画像情報作成手段P5を有し、前記補正手段P4が、前記透過画像情報作成手段が作成した透過画像情報と前記画像情報とを半透明合成して、前記複数の画素の各々の輝度を補正する手段であることを特徴とする。
【0011】
上記請求項2に記載した本発明の車両用表示装置によれば、透過画像情報作成手段P5によって画像情報の表示色と劣化量とに基づいた透過画像情報が作成されると、補正手段P4によって透過画像情報とが半透明合成されて、自発光表示器における複数の画素の各々の輝度が補正される。
【0012】
請求項3記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項2に記載の車両用表示装置において、前記補正手段P4が、前記表示制御手段P1によって前記画像情報G1とは異なる第2画像情報G2へ前記自発光表示器15の表示内容を切り替えるときに、前記第2画像情報G2と前記透過画像情報とを半透明合成して前記複数の画素の各々の輝度を補正する手段であることを特徴とする。
【0013】
上記請求項3に記載した本発明の車両用表示装置によれば、自発光表示器15の表示内容を画像情報G1から第2画像情報G2へ切り替えるときに、表示制御手段P1によって第2画像情報G2と透過画像情報とが半透明合成されて自発光表示器15に表示される。
【0014】
請求項4記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用表示装置において、前記自発光表示器15の温度を計測する温度計測手段18を有し、前記劣化量推測手段P3が、前記温度計測手段18によって計測した温度と前記自発光表示器15の寿命との関係から前記表示時間を補正し、該補正した表示時間と前記表示パターンとに基づいて、前記自発光表示器の劣化量を推測する手段であることを特徴とする。
【0015】
上記請求項4に記載した本発明の車両用表示装置によれば、温度計測手段18によって自発光表示器15の温度が計測されると、該計測した温度と自発光表示器15の寿命との関係から、実際に計測した表示時間が補正される。温度と自発光表示器15の寿命との関係は、温度が高温状態で用いられるよりも、低温状態で用いられる方が寿命が長くなることが判明したことから、その温度による寿命の差を吸収するように表示時間を補正する。そして、補正した表示時間と表示パターンとに基づいた自発光表示器15の輝度劣化量が劣化量推測手段P3によって推測される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように請求項1に記載した本発明の車両用表示装置によれば、自発光表示器の表示時間と画像情報の表示パターンとに基づいて、表示画面を構成する複数の画素の劣化量を推測し、複数の画素の各々の輝度が同一の輝度となるように、推測された劣化量に基づいて補正するようにしたことから、自発光表示器の表示画面において経年変化等によって表示色が異なる画素との間に輝度劣化のバラツキ(輝度斑)が発生しても、表示画面全体を同一の輝度で表示することができる。従って、自発光表示器の画素毎の監視を専用のハードウェア等を用いて行う必要がないため、装置構成を複雑化することなく、焼き付きによる輝度のバラツキを低減させることができる。また、装置構成の複雑化しないことから、装置のコストアップを防止できるため、低価格の車両等に対する普及にも貢献することができる。さらに、車両用表示装置を搭載する車両で要求される保障期間(例えば10年など)は自発光表示器の輝度が劣化しても、その表示画面における輝度斑の発生を低減させることができる。
【0017】
請求項2に記載した本発明の車両用表示装置によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、画像情報の表示色と予測した各画素の劣化量とに基づいた透過画像情報を作成し、該透過画像情報と画像情報とを半透明合成して自発光表示器における複数の画素の各々の輝度を補正するようにしたことから、画像情報の半透明合成によって劣化した自発光表示器の画素を補正することができ、例えばグラフィック・コントローラ等の機能を用いて輝度調整を行うことができるため、装置の複雑化を防止し且つ既存機能の有効利用してコストダウンを図ることができる。
【0018】
請求項3に記載した本発明の車両用表示装置によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、自発光表示器の表示内容を画像情報から第2画像情報へ切り替えるときに、当該第2画像情報と画素の劣化を補正するための透過画像情報とを半透明合成して自発光表示器に表示させるようにしたことから、自発光表示器の表示画面において画像情報に対応した輝度斑が発生していても、透過画像情報に基づいて劣化が遅れた領域を調整輝度とすることができるため、自発光表示器の表示内容を第2画像情報に切り替えても、表示画面の焼き付きによる発光のバラツキを目立たなくすることができる。
【0019】
請求項4に記載した本発明の車両用表示装置によれば、請求項1〜3の何れか1項に記載の発明の効果に加え、自発光表示器の表示時間をその温度に適した表示時間に補正し、該補正した表示時間と画像情報の表示パターンとに基づいて、表示画面を構成する複数の画素の劣化量を推測するようにしたことから、より一層正確な自発光表示器の劣化量を推測することができるため、自発光表示器の使用環境等の影響を受けることなく、表示画面全体を同一の輝度で表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の車両用表示装置の基本構成を示す構成図である。
【図2】本発明に車両用表示装置の概略構成を示す構成図である。
【図3】本発明の画像情報の表示例を示す図である。
【図4】第2画像情報の表示例を示す図である。
【図5】自発光表示器における輝度と表示時間との関係を示すグラフである。
【図6】自発光表示器における輝度と階調との関係を示すグラフである。
【図7】自発光表示器における階調とアルファ値との関係を示すグラフである。
【図8】自発光表示器におけるアルファ値と表示時間との関係を示すグラフである。
【図9】各表示色に対するアルファ値と表示時間との関係を示すグラフであり、(a)は表示色が黒色、(b)は表示色が灰色、(c)は表示色が白色をそれぞれ示している。
【図10】図2のCPUが実行する本発明に係る輝度調整処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】表示画面における第1表示領域と第2表示領域と第3表示領域の各輝度と表示時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る車両用表示装置の一実施形態を、図2〜図11の図面を参照して以下に説明する。
【0022】
図2において、車両用表示装置1は、例えば車両にグラフィックメータ等として組み込まれている。車両用表示装置1は、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)11と、CPU11のためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM12と、各種のデータを格納するとともにCPU11の処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM13と、グラフィック・コントローラ(GC:Graphics Controller)14と、自発光表示器(表示器ともいう)15と、VRAM(Video Random Access Memory)16と、EEPROM(electrically erasable programmable read - only memory)17と、温度センサ18と、を有している。
【0023】
CPU11は、ROM12とRAM13とGC14と温度センサ18がそれぞれ電気的に接続されている。そして、CPU11は、車両用表示装置10が搭載された車両の車載LANと図示しない通信装置等を介して通信可能に接続されている。そして、GC14には、表示器15とVRAM16とがバス18を介して各種データの入出力が可能なように接続されている。
【0024】
ROM12は、車両用表示装置1における処理全体を制御するためのプログラム等を記憶しており、CPU11はそのプログラムを実行することで、所望の表示画像の表示要求をGC14に出力して、表示器15の表示を制御している。即ち、ROM12は、CPU11を図1に示す請求項中の表示時間計測手段P2、劣化量推測手段P3、等の各種手段として機能させるための各種プログラムを記憶している。
【0025】
GC14は、CPU11から表示要求を受けると、VRAM16の各種情報(データ)に基づいて、図3に示す第1画像情報G1と図4に示す第2画像情報G2の各々を表示器15に描画させることで、表示器15に第1画像情報G1と第2画像情報G2を切り替えて表示させる。なお、本実施形態では、GC14を図1に示す請求項中の表示制御手段P1及び補正手段P4として機能させる場合について説明するが、CPU11を表示制御手段P1としGC14は補正手段P4のみとして機能させる実施形態や、表示制御手段P1及び補正手段P4の双方をCPU11に機能させる実施形態など種々異なる実施形態とすることができる。
【0026】
表示器15は、図3,4に示す各種画像情報が表示される表示画面15aを有し、該表示画面15aが車両のインストルメントパネルに運転者から目視可能なように設けられている。そして、表示器15は、通常時に図3に示す第1画像情報G1を表示画面15aに表示することで、公知であるメーターとして機能している。表示器15は、縦横の行列に並んでいる表示単位(画素)をON/OFFして、文字・図形などを表示画面15aに描くことができるドットマトリクス表示可能な構成となっており、例えば有機EL(Electro Luminescence)素子などの表示装置が任意に用いられる。そして、表示器15はGC14の制御により各画素をON/OFFして第1画像情報G1や第2画像情報G2等を表示画面15aに切り替えて表示する構成となっている。
【0027】
図2に示すVRAM16は、公知であるように、表示器15に表示される内容を保持して記憶するメモリとなっており、上述した第1画像情報G1及び第2画像情報G2や、透過画像情報、等の各種情報を記憶している。そして、CPU11は、GC14を介してVRAM16にアクセスする。
【0028】
第1画像情報G1は、図3に示すように、所望の表示パターンであるスピードメータを表示するための情報となっている。第1画像情報G1は、円弧状に配置される複数の目盛を表示する第1表示部G11と、第1表示部G11の目盛に対応した数字を、当該目盛とは異なる表示色で表示する第2表示部G12と、第1表示部G11と第2表示部G12の背景に相当する第3表示部G13と、計測量(車両の速度等)に応じた指標の指示位置まで回動されるように表示される指示部G14と、を有している。なお、本実施形態では所望の表示パターンをスピードメータの意匠パターンとした場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば回転計、燃料計、等の実施形態の表示形態によって任意に定められる。
【0029】
第1表示部G11は、所望の高輝度で表示する領域となっている。第2表示部G12は、第1表示部G11よりも低輝度で表示する領域となっている。第3表示部G13は、第1表示部G11及び第2表示部G12よりも低輝度で表示する又は非表示の領域、即ち前記表示パターンの背景となっており、例えば黒色、ダークグレー、紺色、等の前記指標よりも低い輝度の暗色系となっている。指示部G14は、公知であるスピードメータ等の指針に相当し、予め定められた回動範囲を計測量の変化等に応じて更新されて、第1画像情報G1の中央部から第1表示部G11に向かって略直線状に表示される。なお、第3表示部G13は、例えば目盛等の危険範囲に相当する背景の領域を警告色とするなど複数の表示色とすることもできる。
【0030】
表示器15の表示画面15aは、第1画像情報G1を表示すると、その第1表示部G11を表示する部分が第1表示領域15b、第2表示部G12を表示する部分が第2表示領域15c、第3表示部G13を表示する部分が第3表示領域15dとなる。そして、表示器15はそれらの第1表示領域15bと第2表示領域15cと第3表示領域15dの対応した画素素子(画素)の各々の表示を制御することになる。
【0031】
第2画像情報G2は、通常時に表示器15に表示されている第1表示部G1から、利用者からの切り替え要求や所定の切り替えタイミングで切り替えられる画像となっている。即ち、第2画面情報G2は、表示器15の表示画面15aにおける第1画面情報G1と同一の領域に表示される。そして、第2画像情報G2は、図4に示すように、「NAVI(ナビゲーション)」、「AUDIO」、「A/C(エアーコンディショナー)」を選択させるメニュー画面を示す画像情報となっている。
【0032】
透過画像情報は、経年変化等によって輝度の劣化が遅れた表示画面15aの領域(表示パターン)を示し、第2表示部G12と第3表示部G13の各々に対応した部分を異なる前記調整輝度となるように透過するマスク画像となっている。透過画像情報は、透過したい部分、即ちスピードメータ等の表示パターンに対応した第1表示部G11の背景部分を定義した画像と、第2表示部G12の部分を定義した画像を特定することが可能な情報であり、GC14が有するアルファブレンド(αブレンド)機能で用いられる。
【0033】
アルファブレンドとは、公知であるように、2つの画像を係数(アルファ値)を使って半透明合成する機能である。そして、アルファ値は、コンピュータが扱うデジタル画像データにおいて、各画素(点)に設定された透過度情報を意味し、完全な透明(無色)から、不完全な不透明(背景の色を全く通さない)までを設定できるようになっている。そして、コンピュータが画像を扱う場合、色情報として、各画素についてR(赤)・G(緑)・B(青)の三原色の情報を持っており、その組み合わせで色を表現している(CMYKモードの場合は4色)。画素の透明度を表現する場合には、それにアルファ値を加え、4つの情報を組み合わせることで、1つの画素を表示することになる。
【0034】
よって、本実施形態では、透過画像情報で第2表示部G12及び第3表示部G13に対応した表示画面15aの第2表示領域15cと第3表示領域15dを特定することが可能な構成とし、表示領域15c,dの各々の輝度劣化に基づいてアルファ値を算出し、該アルファ値に基づいて当該表示領域の各画素に対する透過度を規定する場合について説明する。そして、GC14はCPU11から2つのアルファ値が入力されると、第2表示部G12に相当する部分が第2アルファ値、第3表示部G13に相当する部分が第3アルファ値となる透過画像情報を作成または抽出してVRAM16に記憶し、該透過画像情報とVRAM16の第1画像情報G1をアルファブレンドして表示器15に表示させる。これにより、表示器15は第1表示部G11と第2表示部G12と第3表示部G13の画面全体の輝度を一律に調整した第1画像情報G1を表示することになる。また、GC14は、CPU11から切り替え要求を受けると、VRAM16の第2画像情報G2と透過画像情報とをアルファブレンドして表示器15に表示させる。
【0035】
温度センサ18は、表示器15に設けられたセンサ素子を有している。センサ素子は、設置箇所の温度に応じた温度信号をCPU11に出力する。そして、CPU11は、温度センサ18からの温度信号に基づいて表示器15の温度を検出して、該温度を表示器15の劣化判定(推測)等に用いることが可能な構成となっている。なお、温度を輝度劣化の判定に用いない場合は、車両用表示装置1の構成から削除することもできる。
【0036】
次に、表示器15の表示時間とアルファ値との関係の導出方法の一例を、図5乃至図8の図面を参照して以下に説明する。なお、ガンマ特性は、1.0に設定した場合を前提として説明する。
【0037】
まず、図5に示すように、車両用表示装置1に用いる表示器15に対して表示時間と輝度落ち(劣化)の関係を、実測またはシミュレーション等の結果から導出する。このように表示器15固有の輝度の劣化特性を導出しておく。なお、図5において、縦軸は輝度、横軸は表示時間をそれぞれ示している。
【0038】
表示器15の表示画面15aにおいて、劣化していない画素を基準とし、図6に示す輝度と階調との関係、及び、図7に示す階調とアルファ値との関係を、実測またはシミュレーション等の結果から導出する。そして、図6、7において、階調とアルファ値はその上限を100%としている。なお、図6及び図7の各グラフの特性は、ガンマ特性によって変化するものである。
【0039】
図5乃至図7の各グラフに基づいて、表示時間とアルファ値との関係を導出する。そして、図8に示す表示時間とアルファ値との関係を示すグラフに基づいて、表示時間からアルファ値テーブル、アルファ値算出式、等のアルファ値情報を、上述した第2アルファ値、第3アルファ値に対応させて作成してVRAM16に予め記憶しておく。これにより、表示器15の表示時間を計測することで、該表示時間とアルファ値情報とに基づいて、第1表示部G11の輝度劣化に対応した第2表示部G12及び第3表示部G13の各々の調整輝度を特定するためのアルファ値を求めることを可能としている。
【0040】
次に、各表示色に対応したアルファ値と表示時間の一例を説明する。まず、図9(a)に示す表示色が黒色の場合と、図9(b)に示す表示色が灰色の場合と、図9(c)に示す表示色が白色の場合と、を比較すると、表示色が白色の場合は、表示時間が経過してもアルファ値をほとんど小さくする必要はない。これに対し、表示色が黒色の場合は、表示時間の経過に応じてアルファ値を徐々に小さくする必要がある。また、表示色が灰色の場合は、黒色ほどではないが、表示時間の経過に応じてアルファ値を徐々に小さくする必要がある。このような関係を考慮して、表示色に対応したテーブル、算出プログラム、等をVRAM16に予め記憶しておく。
【0041】
なお、調整輝度については、表示時間から輝度劣化を推測し、該推測した輝度劣化と予め定められたテーブル、算出式、等に基づいてアルファ値、調整輝度、等を特定するなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0042】
次に、上述したCPU11は、ROM12に予め記憶された表示時間計測処理プログラムを実行して図1に示す請求項中の表示時間計測手段P2として機能することで、例えば任意のタイミングで表示器15の表示時間を計測し、その表示時間やカウンタ値等を示す表示時間をEEPROM17に定期的に記憶する。
【0043】
次に、上述した車両用表示装置1のCPU11が実行する本発明に係る輝度調整処理の一例を、図9に示すフローチャートを参照して以下に説明する。なお、この輝度調整処理は例えば車両用表示装置1のシステム起動に上位モジュールから呼び出されることを前提としている。
【0044】
車両用表示装置1のシステムが起動され、CPU11によって輝度調整処理プログラムが実行されると、図10に示すステップS11において、EEPROM17から表示時間が取得されてRAM13に記憶され、その後ステップS12に進む。
【0045】
ステップS12において、RAM13の表示時間から各表示領域毎に、複数の画素の累積劣化量の各々に対応した累積劣化量が推測され、該累積劣化量からアルファ値が算出されてVRAM16に記憶され、その後ステップS13に進む。この処理によって、該表示時間と累積劣化量とに基づいて、第1表示部G11と第2表示部G12と第3表示部G13が同一の輝度となる第2表示部G12及び第3表示部G13の第2アルファ値及び第3アルファ値が特定(算出)されてVRAM16に記憶される。なお、本実施形態では、表示時間からアルファー値が特定できるように前記アルファ値情報が予め用意されているため、それを用いることで処理の簡単化を図っている。
【0046】
ステップS13において、それらの第2アルファ値、第3アルファ値等を示すアルファ値情報がGC14に出力されることで、該アルファ値情報がVRAM16に記憶され、GC14の該アルファ値情報に基づいた制御により表示器15が表示され、その後ステップS14に進む。なお、輝度劣化はゆっくりと進行するため、アルファ値情報をGC14に出力するのは、システム起動時の1回行えば良いが、任意のタイミングでアルファ値情報をGC14に出力することができる。
【0047】
ステップS14において、システムダウン要求を受けたか否かが判定される。システムダウン要求を受けていないと判定された場合(S14でN)、ステップS15において、所定時間が経過したか否かが判定される。なお、所定時間は、予め定められたサンプリング時間であり、本実施形態では、CPU11が有する時計機能やタイマ機能等を用いて判定する。そして、所定時間が経過していないと判定された場合(S15でN)、ステップS14に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、所定時間が経過していると判定された場合(S15でY)、ステップS16に進む。
【0048】
ステップS16において、表示器15に第1画像情報G1を表示させているか否かに基づいて、第1画像情報G1が表示中であるか否かが判定される。第1画像情報G1が表示中ではないと判定された場合(S16でN)、ステップS14に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、第1画像情報G1が表示中であると判定された場合(S16でY)、ステップS17において、RAM13の表示時間が所定時間分だけカウントアップされ、その後ステップS14の処理に戻る。
【0049】
一方、ステップS14でシステムダウン要求を受けたと判定された場合(S14でY)、ステップS18において、RAM13の表示時間がEEPROM17に記憶されて保存(記憶)され、その後処理を終了する。このように表示時間をEEPROM17に記憶することで、各表示部毎に劣化量を記憶する必要がないため、処理の簡単化、記憶領域の容量を小さくすることができる。
【0050】
以上の説明からも明らかなように本最良の形態においては、CPU11が上述した輝度調整処理プログラムを実行することで、図1に示す請求項中の表示時間計測手段P2及び劣化量推測手段P3として機能することになる。
【0051】
次に、本発明に係る車両用表示装置1の動作(作用)の一例を、図3、4、10等の図面を参照して以下に説明する。
【0052】
車両用表示装置1は、車両のイグニッションスイッチのON等に応じてシステムが起動されると、表示器15の表示画面15aに第1画像情報G1を表示することで、図3に示すように、表示画面15aにはスピードメータの意匠パターンに相当する第1表示部G11が高輝度で固定表示され、その背景に相当する第2表示部G12は黒色等の非表示状態となる。これにより、表示器15においては、第1表示部G11に対応した第1表示領域15bは経年変化等によって劣化が進むのに対し、第2表示部G12に対応した第2表示領域15cは第1表示領域15bよりも低輝度であるため、劣化の進行が遅れ、さらに、第3表示部G13に対応した第3表示領域15dはその劣化が第2表示領域15cよりも遅れることになる。そして、それらの劣化の差は、表示時間の経過に応じて徐々に大きくなってしまい、その大きさによって表示領域間に輝度斑が生じることになる。
【0053】
また、車両用表示装置1は、所定のサンプリング間隔で速度信号をサンプリングして車両の速度(計測量)を計測すると、その速度に対応した意匠パターンを指示させるために、指示部G14を第3表示部G13上に表示する。即ち、指示部G14の先端は意匠パターンに沿うように、第3表示部G13上を計測量に応じて移動させて表示することになる。よって、指示部G14は計測量に応じて移動することから、表示器15の第3表示部G13における指示部G14の移動範囲に対応した画素素子の劣化も遅れることになる。
【0054】
車両用表示装置1の表示器15は、第1画像情報G1を常時表示すると、図10に示すように、その表示時間に応じて第1表示領域15bはグラフL1のように劣化し、第2表示領域15cはグラフL2のようにグラフL1を追うように劣化し、第3表示領域15dはグラフL3に示すようにほとんど劣化しないことが分かる。なお、図10において、縦軸は輝度、横軸は表示時間を示している。よって、第2表示領域15cと第3表示領域15dを、一番劣化している第1表示領域15bに合わせるように輝度を調整することで、輝度のバラツキを解消することができる。
【0055】
そのため、車両用表示装置1は、表示器15の表示時間を計測しておき、例えばシステム起動時、任意のタイミング、等に、該表示時間に応じて第1表示領域15b及び第2表示領域15cの各々の輝度劣化を示す累積劣化量を求め、この累積劣化量に対応した第2表示領域15c及び第3表示領域15dの各アルファ値(補正量)を特定し、第2表示領域15cに相当する部分が第2アルファ値、第3表示領域15dに相当する部分が第3アルファ値となる透過画像情報を作成し、該透過画像情報と第1画像情報G1をアルファブレンドして表示器15に表示させる。
【0056】
その結果、その表示画面15aにおいて、劣化が進んだ第1表示領域15bの透過率は100%、即ちアルファブレンドはされず、また、劣化の遅れた第2表示領域15cの透過率は、劣化の進んだ第1表示領域15bに合わせて輝度調整が行われて例えば95%、そして、劣化がさらに遅れた第3表示領域15dの透過率は、劣化の進んだ第1表示領域15bに合わせて輝度調整が行われて例えば80%となる。このように本発明では、ソフトウェアによって表示画面15aの特性に合わせて各アルファ値を特定しているので、専用の回路等を設ける必要がなくなる。
【0057】
また、車両用表示装置1は、表示画面15aの第1表示領域15bと第2表示領域15cと第3表示領域15dに輝度のバラツキが生じている状態で、車載LANを介して運転者等によって第2画像情報G2の表示が要求されると、VRAM16の第2画像情報G2と上述した最新のアルファ値に対応した透過画像情報とをアルファブレンドして表示器15に表示させる。これにより、表示器15は第1表示部G11と第2表示部G12と第3表示部G13の画面全体の輝度を一律に調整しているため、表示画面15aに表示される第2画像情報G2は、焼き付きによる輝度のバラツキが目立たなくなる。
【0058】
以上説明した車両用表示装置1によれば、自発光表示器15の表示時間と画像情報の表示パターンとに基づいて、表示画面15aを構成する複数の画素の劣化量を推測し、複数の画素の各々の輝度が同一の輝度となるように、推測された劣化量に基づいて補正するようにしたことから、自発光表示器15の表示画面15aにおいて経年変化等によって表示色が異なる画素との間に輝度劣化のバラツキ(輝度斑)が発生しても、表示画面15a全体を同一の輝度で表示することができる。従って、自発光表示器15の画素毎の監視を専用のハードウェア等を用いて行う必要がないため、装置構成を複雑化することなく、焼き付きによる輝度のバラツキを低減させることができる。また、装置構成の複雑化しないことから、装置のコストアップを防止できるため、低価格の車両等に対する普及にも貢献することができる。さらに、車両用表示装置1を搭載する車両で要求される保障期間(例えば10年など)は自発光表示器の輝度が劣化しても、その表示画面における輝度斑の発生を低減させることができる。
【0059】
また、車両用表示装置1によれば、第1画像情報G1の表示色と予測した各画素の劣化量とに基づいた透過画像情報を作成し、該透過画像情報と第1画像情報G1とを半透明合成して自発光表示器15における複数の画素の各々の輝度を補正するようにしたことから、第1画像情報G1の半透明合成によって劣化した自発光表示器15の画素を補正することができ、例えばグラフィック・コントローラ等の機能を用いて輝度調整を行うことができるため、装置の複雑化を防止し且つ既存機能の有効利用してコストダウンを図ることができる。
【0060】
さらに、車両用表示装置1によれば、自発光表示器15の表示内容を第1画像情報G1から第2画像情報G2へ切り替えるときに、当該第2画像情報G2と第1画像情報G1に対応した透過画像情報とを半透明合成して自発光表示器15に表示させるようにしたことから、自発光表示器15の表示画面15aにおいて第1表示領域15bと第2表示領域15cと第3表示領域15dとの間に輝度斑が発生していても、透過画像情報に基づいて劣化が遅れた第2表示領域15c及び第3表示領域15dを調整輝度とすることができるため、自発光表示器15の表示内容を第2画像情報G2に切り替えても、表示画面15aの焼き付きによる発光のバラツキを目立たなくすることができる。
【0061】
なお、上述した本実施形態では、車両用表示装置1が第1画像情報G1と第2画像情報G2とを切り替えて表示する場合について説明したが、例えば3つ以上の画像情報を切り替えて表示する場合に、各画像情報の表示時間の各々に基づいて表示画面15aの表示領域を設定して調整輝度を特定して調整することもできる。
【0062】
また、上述した本実施形態では、第1画像情報G1の目盛に相当する第1表示部G11を数字及び単位に相当する第2表示部G12よりも高い階調(表示色)で表示させる場合について説明したが、第2表示部G12を第1表示部G11よりも高い階調として表示させることもできる。そして、相異なる階調を4種類以上にする場合は、各階調毎にその劣化量を推測し、その劣化量に対応したアルファ値を特定することで対応することができる。
【0063】
さらに、上述した実施形態では、図10に示す輝度調整処理をシステム起動時にCPU11が実行する場合について説明した。これに代えて、車両用表示装置1が動作中は任意のタイミングでCPU11が輝度調整処理を複数回実行する実施形態とすることができる。
【0064】
さらに、上述した本実施形態では、温度センサ18で検出した温度を、表示器15の輝度劣化の推測に利用しない場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、温度や、第1画像情報G1の表示時間、など種々異なるパラメータを用いて調整輝度を特定することができる。
【0065】
表示器15は、一般に、温度が80℃等の高温状態で用いられるよりも、25℃等の低温状態で用いられる方が寿命が長くなることが知られている。よって、表示器15の温度を計測し、該温度と表示器15の寿命との関係から表示時間を補正する寿命換算情報を予め作成しておく。そして、車両用表示装置1は、計測した温度と寿命換算情報とから表示時間を補正することで、表示器15の使用環境に適した表示時間を求めることができる。
【0066】
例えば、上述した車両用表示装置1は、表示時間を計測するときに、温度センサ18が検出した温度を取得し、前記寿命換算情報から温度に対応した表示器15の寿命を求め、該寿命から表示時間を補正する。そして、車両用表示装置1は、表示器15の保障期間に対し、求めた寿命が実際よりも短いと推測できる場合は表示時間を増加させる補正を行い、補正した表示時間と表示パターンとに基づいた表示器15の劣化量を推測する。よって、より一層正確な自発光表示器の劣化量を推測することができるため、自発光表示器の使用環境等の影響を受けることなく、表示画面全体を同一の輝度で表示することができる。
【0067】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 車両用表示装置
11 CPU
14 グラフィックコントローラ(GC)
15 自発光表示器(表示器)
15a 表示画面
15b 第1表示領域
15c 第2表示領域
15d 第3表示領域
16 VRAM
G1 第1画像情報
G11 第1表示部
G12 第2表示部
G13 第3表示部
G2 第2画像情報
P1 表示制御手段(GC)
P2 表示時間計測手段(CPU)
P3 劣化量推測手段(CPU)
P4 補正手段(GC)
P5 透過画像情報作成手段(GC)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素からなる表示画面を有する自発光表示器と、複数種類の表示色で構成された表示パターンを示す画像情報を前記自発光表示器の表示画面に表示させる表示制御手段と、を有する車両用表示装置において、
前記自発光表示器の表示時間を計測する表示時間計測手段と、
前記表示時間計測手段が計測した表示時間と前記表示制御手段によって前記表示画面に表示させた画像情報が示す表示パターンに基づいて、前記表示画面を構成する複数の画素の劣化量を推測する劣化量推測手段と、
前記劣化量推測手段が推測した劣化量に基づいて、前記複数の画素が同一の輝度となるように前記複数の画素の各々の輝度を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記画像情報の示す表示パターンの各表示色と前記劣化量とに基づいて、前記複数の画素の各々が同一の輝度となるように前記画像情報を透過する透過画像情報を作成する透過画像情報作成手段を有し、
前記補正手段が、前記透過画像情報作成手段が作成した透過画像情報と前記画像情報とを半透明合成して、前記複数の画素の各々の輝度を補正する手段であることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記補正手段が、前記表示制御手段によって前記画像情報とは異なる第2画像情報へ前記自発光表示器の表示内容を切り替えるときに、前記第2画像情報と前記透過画像情報とを半透明合成して前記複数の画素の各々の輝度を補正する手段であることを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記自発光表示器の温度を計測する温度計測手段を有し、
前記劣化量推測手段が、前記温度計測手段によって計測した温度と前記自発光表示器の寿命との関係から前記表示時間を補正し、該補正した表示時間と前記表示パターンとに基づいて、前記自発光表示器の劣化量を推測する手段であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−112888(P2011−112888A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269554(P2009−269554)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】