説明

車両用表示装置

【課題】 車両使用の評価や消耗品の交換時期、または、地球温暖化に対する影響度合いを判断することが可能な情報を表示する車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 車両が排出する二酸化炭素の排出量を表示する表示手段3と、前記車両の燃料消費量に関する情報に基づいて表示手段3に表示させるための前記排出量を算出する制御手段2とを備え、制御手段2は、前記排出量を積算してなる積算排出量を算出し、この積算排出量を表示手段3に表示させるとともに、前記積算排出量を格納する記憶部を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が排出する二酸化炭素の排出量を表示する表示手段と、前記車両の燃料消費量に関する情報に基づいて前記表示手段に表示させるための前記排出量を算出する制御手段とを備えた車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用表示装置は、特許文献1や特許文献2に開示されるものが知られている。この表示装置は、車両速度、エンジン回転数、残燃料量、積算走行距離、区間走行距離などを複合表示するものである。運転者、車両整備士または中古車販売者などの車両利用者はこの車両用表示装置を用いて、車両の価値や目的地までの距離および消耗品の交換時期などを、走行距離を用いて判断することが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−72419号公報
【特許文献2】特開平6−227330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の車両は各部品の耐用年数が長くなったことや、原動機を二つ以上搭載した車両も一般的であることから、使用期間や走行距離だけではその車両の価値や消耗品(オイル、プラグ、ベルト等の燃費に関与する部品)の交換時期を判断するための指標として、不足する場合があるため課題となっていた。
【0005】
また、従来の表示項目にあっては、車両の使用状態に関して判断するための指標や、個々の車両について地球温暖化に対しての影響度合いを判断するための指標が不足しているという課題もあった。
【0006】
そこで本発明は、前述の課題に着目し、車両使用の評価や消耗品の交換時期、または、地球温暖化に対する影響度合いを判断することが可能な情報を表示する車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用表示装置は、車両が排出する二酸化炭素の排出量を表示する表示手段と、前記車両の燃料消費量に関する情報に基づいて前記表示手段に表示させるための前記排出量を算出する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記排出量を積算してなる積算排出量を算出し、この積算排出量を前記表示手段に表示させるとともに、前記積算排出量を格納する記憶部を設けてなることを特徴とする。
【0008】
また、前記制御手段は、前記記憶部に格納された前記積算排出量を外部からの所定操作によって書き換えようとされた場合に、前記積算排出量に改ざんがあった旨を示す表示を前記表示手段に表示させる処理を実行してなることを特徴とする。
【0009】
また、前記制御手段は、前記記憶部に格納された前記積算排出量を外部からの所定操作によって書き換えようとされた場合に、前記表示手段によって前記積算排出量を表示させない処理を実行することを特徴とする。
【0010】
また、前記制御手段は、車両が走行する所定距離毎に前記排出量を積算してなる区間排出量を算出するとともに、この区間排出量を前記記憶部もしくは前記記憶部とは異なる他の記憶部に格納させ、前記表示手段によって前記区間排出量を表示させることを特徴とする。
【0011】
また、前記制御手段は、操作手段からの所定入力に基づいて、前記記憶部もしくは前記記憶部とは異なる他の記憶部に格納された前記区間排出量をリセット可能とすることを特徴とする。
【0012】
また、前記制御手段は、操作手段からの所定入力に基づいて、前記車両がこれまで排出した前記積算排出量を総排出量として算出し、前記総排出量と、前記区間排出量とを前記表示手段において切り換え表示させることを特徴とする。
【0013】
また、前記制御手段は、操作手段からの所定入力に基づいて、前記区間走行距離と、前記積算排出量とを前記表示手段において順次切り換え表示させることを特徴とする。
【0014】
また、前記制御手段は、前記積算排出量が所定の値に達した際に、前記表示手段もしくは前記表示手段とは異なる報知手段によって、所定積算排出量に達した旨を報知させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、車両が排出する二酸化炭素の排出量を表示する表示手段と、前記車両の燃料消費量に関する情報に基づいて前記表示手段に表示させるための前記排出量を算出する制御手段とを備えた車両用表示装置に関し、車両使用の評価や消耗品の交換時期、または、地球温暖化に対する影響度合いを判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の車両用表示装置の構成を示す図。
【図2】同上実施の形態の表示手段の表示例を示す図。
【図3】同上実施の形態の制御手段の処理手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の車両用表示装置の実施の形態として、車両に搭載された計器に適用したものを例に挙げて、添付図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明に関する計器の構成を示し、操作手段1と、制御手段2と、表示手段3と、外部記憶部(記憶部)4とを備えている。
【0019】
操作手段1は、車両利用者が表示手段3の表示を確認しながら操作できるスイッチを適用でき、押し圧操作に応じた信号が、制御手段2に出力される。なお、操作手段1は、表示手段3との関連性を持たせるため計器に搭載されるスイッチ、特に、表示手段3の近傍に設けられるスイッチが好ましいが、前述した条件であれば他のスイッチを用いることもでき、例えば、ステアリングスイッチを適用することもできる。
【0020】
制御手段2は、マイクロコンピュータを適用でき、操作手段1や車両に搭載された各種センサや制御ユニットからの車両情報を入力し、表示手段3を制御する制御信号を生成する。この場合、制御手段2は、例えば、車両速度情報や消費燃料情報などの車両情報を入力し、車両速度や走行距離、平均燃費や二酸化炭素の排出量を算出して表示させる処理を含む。
【0021】
また、制御手段2は、所定のプログラムや演算結果などの情報を格納するメモリ(記憶部)を設けており、車両情報について格納することができる。この場合、制御手段2は、積算走行距離と二酸化炭素の総排出量とについても不揮発性のメモリに格納できる。
【0022】
表示手段3は、例えば、液晶表示パネルを適用でき、単位や表示項目名、計測値等を表示できるように構成している。また、表示手段3は、図2に示すように、制御手段2からの制御信号に基づいて、積算走行距離や区間走行距離、二酸化炭素の排出量、平均燃費、車外温度などの情報を順次切り換え表示させることができる。なお、表示手段3は、計測値によって指示位置が変化する指針と、この指針の指示対象となる目盛りや数値とを備えて計測値を対比判読できるよう構成する所謂アナログメータを代替することも可能である。
【0023】
また、制御手段2は、操作手段1からの信号に応じて、表示手段3に表示させる表示画面を切り換えるように促す制御信号、あるいは表示された積算排出量をリセットするように促す制御信号を発するように構成している。制御手段2は、操作手段1からの信号に基づいて操作手段1の押し圧操作が所定時間(例えば、1秒間)未満であった場合に、前述の画面切り換えを行い、所定時間以上の押し圧操作した場合には、表示中の区間走行距離、あるいは後述する区間排出量をリセットできる。また、表示手段3による操作手段1のガイド表示に従って操作手段1を操作することで、画面切り換えやリセットなどの所望操作が行えるようにも構成できる。
【0024】
外部記憶部4は、例えば、EEPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを適用でき、計器の表示に関する情報が書き換え可能に格納されている。この場合、外部記憶部4は、制御手段2の前記メモリに格納されたものと関連付けされた、積算走行距離に関する情報と二酸化炭素の総排出量に関する情報が格納されている。なお、本実施の形態の外部記憶部4は、計器内に搭載されるものを例に挙げたが、計器と情報通信可能な他の制御ユニットに設けられる読み書き可能な不揮発性メモリを適用することもできる。
【0025】
次に、図3を用いて制御手段2の処理方式を詳述する。
【0026】
制御手段2は、車両の燃料噴射ユニットから供給される燃料消費量を車両情報として入力し(ステップS1)、燃料消費量と、前記メモリに予め格納された車両毎に定まる演算パラメータとによって、二酸化炭素の排出量を算出する排出量算出処理(ステップS2)を行う。
【0027】
次に制御手段2は、前記メモリに格納された積算排出量に、前記排出量算出処理によって算出された排出量を加えることによって、新たな積算排出量を算出する積算排出量算出処理(ステップS3)を行う。なお、制御手段2は、二酸化炭素の積算排出量として、車両走行に伴う過去全ての二酸化炭素の総排出量と、車両利用者が任意のタイミングでリセットできる区間排出量とを前記メモリに格納しており、積算排出量算出処理によって、それぞれの積算排出量を算出する。
【0028】
制御手段2は、積算排出量算出処理によって算出された積算排出量を、前記メモリに更新して格納するとともに、この積算排出量に関連した情報を外部記憶部4へ格納する保存処理(ステップS4)を行う。この場合、制御手段2は、外部記憶部4へ格納する情報として、前記メモリに格納する積算排出量と同じ情報、あるいは積算排出量を暗号化した情報や整合判断可能な情報を格納している。なお、制御手段2は、積算排出量について、前記メモリへの格納周期よりも長い周期にて外部記憶部4へ格納するなど、格納タイミングが異なるようにすることも考えられる。
【0029】
制御手段2は、積算排出量について表示する必要がある場合に、積算排出量算出処理によって算出された積算排出量を、表示手段3に表示させるための制御信号を生成し、表示手段3へ出力する表示処理(ステップS5)を行う。なお、制御手段2は、表示手段3への表示の必要性について、表示手段3による表示が積算排出量の表示画面であるか否かによって判断したり、後述する情報改ざん操作の有無によって判断する。また、制御手段2は、積算排出量が予め設定された所定の値に達した際に、表示手段3を用いて所定積算排出量に達した旨を表示させるように構成でき、この場合、例えば消耗品の交換時期について一緒に知らせることも可能である。
【0030】
以上の処理によって、制御手段2は、二酸化炭素の排出量に関する表示を行うことができる。
【0031】
次に、二酸化炭素排出量についての情報改ざん操作に対する制御手段2の処理について説明する。
【0032】
制御手段2は、前記メモリ、または外部記憶部4からなる記憶部に格納された二酸化炭素の積算排出量に対して、前述保存処理以外の更新操作(情報改ざん)がなされたか否かを判定する改ざん操作判定処理を行う。この場合、制御手段2は、前記メモリに格納された積算排出量と外部記憶部4に格納された積算排出量とを比較することによって判定できる。
【0033】
次に制御手段2は、改ざん操作判定処理によって、改ざん操作がなされたと判定した場合、積算排出量が改ざんされた旨を示す表示または音声、例えば、表示手段3を用いてエラーメッセージや点滅表示を行う表示や、図示しないスピーカを介して出力される音声などで車両利用者に報知する報知処理とともに、以降の総排出量の値表示を行わないようにするキャンセル処理を行う。なお、制御手段2は、報知処理として、通信線に接続された他の車載機器(例えば、音響機器やナビゲーション機器)を介して報知することもできる。
【0034】
斯かる車両用表示装置は、車両が排出する二酸化炭素の排出量を表示する表示手段3と、前記車両の燃料消費量に関する情報に基づいて表示手段3に表示させるための前記排出量を算出する制御手段2とを備え、制御手段2は、前記排出量を積算してなる積算排出量を算出し、この積算排出量を表示手段3に表示させるとともに、前記積算排出量を格納する記憶部を設けてなる。
【0035】
従って、運転者、車両整備士および中古車販売者などの車両利用者は前述の表示手段3に表示される積算排出量を確認することで、車両使用の評価や車両の価値、消耗品の交換時期などを判断することができる。さらに、車両利用者は、個々の車両が及ぼす地球環境への影響を判断する指標として積算排出量を用いることができる。
【0036】
また、制御手段2は、前記記憶部に格納された前記積算排出量を外部からの所定操作によって書き換えようとされた場合に、前記積算排出量に改ざんがあった旨を示す表示を表示手段3に表示させる処理を実行し、また、制御手段2は、前記記憶部に格納された前記積算排出量を外部からの所定操作によって書き換えようとされた場合に、表示手段3によって前記積算排出量を表示させない処理を実行することによって、二酸化炭素の積算排出量の表示について信頼性を高めることができる。さらに、車両の価値を上げるために前記積算排出量を減らそうとする不正な操作を防ぐ効果を付加できる。
【0037】
また、制御手段2は、車両が走行する所定距離毎に前記排出量を積算してなる区間排出量を算出するとともに、この区間排出量を前記記憶部(制御手段2のメモリ)もしくは前記記憶部とは異なる他の記憶部(外部記憶部4)に格納させ、表示手段3によって前記区間排出量を表示させることによって、車両利用者は、個々の車両が所定区間を走行した際に排出した二酸化炭素量を知ることが可能となる。さらに、前述の区間排出量を知ることで消耗品の交換時期や地球環境への影響などを判断することが可能となる。
【0038】
また、制御手段2は、操作手段1からの所定入力に基づいて、前記記憶部もしくは前記記憶部とは異なる他の記憶部に格納された前記区間排出量をリセット可能とすることによって、リセットをした地点から現在地点までに車両が排出した二酸化炭素量を容易に知ることが可能となる。
【0039】
また、制御手段2は、操作手段1からの所定入力に基づいて、前記車両がこれまで排出した前記積算排出量を総排出量として算出し、前記総排出量と、前記区間排出量とを表示手段3において切り換え表示させることによって、前記総排出量と前記区間排出量を同時に表示する方法に比べ、表示手段3の大きさを小さくすることが可能となる。あるいは、表示手段3の大きさが所定の大きさの場合には、文字を大きく見やすくすることが可能となる。
【0040】
また、制御手段2は、操作手段1からの所定入力に基づいて、前記区間走行距離と、前記積算排出量とを表示手段3において順次切り換え表示させることによって、同時に表示させた場合に比べて、表示手段3の大きさを小さくすることが可能となる。あるいは、表示手段3の大きさが所定の大きさの場合には、文字を大きく見やすくすることが可能となる。
【0041】
また、制御手段2は、前記積算排出量が所定の値に達した際に、表示手段3もしくは表示手段3とは異なる報知手段によって、所定積算排出量に達した旨を報知させることによって、環境への影響が一定値を超えた場合や、ある消耗品が交換時期であることを車両利用者に知らせることが可能となる。
【0042】
なお、本発明の車両用表示装置を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。例えば、積算排出量の表示更新周期として、一定走行距離毎であっても一定時間毎であってもよい。また、制御手段は、排出量に関して区間内の平均値や最大、最小値を記憶部に格納しておき表示させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば、自動車、オートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される車両用表示装置として適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 操作手段
2 制御手段
3 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が排出する二酸化炭素の排出量を表示する表示手段と、前記車両の燃料消費量に関する情報に基づいて前記表示手段に表示させるための前記排出量を算出する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記排出量を積算してなる積算排出量を算出し、この積算排出量を前記表示手段に表示させるとともに、
前記積算排出量を格納する記憶部を設けてなることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記記憶部に格納された前記積算排出量を外部からの所定操作によって書き換えようとされた場合に、前記積算排出量に改ざんがあった旨を示す表示を前記表示手段に表示させる処理を実行してなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記記憶部に格納された前記積算排出量を外部からの所定操作によって書き換えようとされた場合に、前記表示手段によって前記積算排出量を表示させない処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、車両が走行する所定距離毎に前記排出量を積算してなる区間排出量を算出するとともに、この区間排出量を前記記憶部もしくは前記記憶部とは異なる他の記憶部に格納させ、前記表示手段によって前記区間排出量を表示させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、操作手段からの所定入力に基づいて、前記記憶部もしくは前記記憶部とは異なる他の記憶部に格納された前記区間排出量をリセット可能とすることを特徴とする請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記制御手段は、操作手段からの所定入力に基づいて、前記車両がこれまで排出した前記積算排出量を総排出量として算出し、前記総排出量と、前記区間排出量とを前記表示手段において切り換え表示させることを特徴とする請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記制御手段は、操作手段からの所定入力に基づいて、前記区間走行距離と、前記積算排出量とを前記表示手段において順次切り換え表示させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記積算排出量が所定の値に達した際に、前記表示手段もしくは前記表示手段とは異なる報知手段によって、所定積算排出量に達した旨を報知させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−46327(P2011−46327A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197817(P2009−197817)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】