説明

車両用計器

【課題】表示部間混色及び漏光等の光学的干渉をデッドスペースの少ない状態で防ぐことのできる車両用計器を提供する。
【解決手段】それぞれ異なる発光色で点灯及び消灯する複数の表示部2、3、4を表示板5上に有する車両用計器において、異なる光源色の光を放射し、個別に点灯及び消灯させることが可能な複数のLED光源8、9を有する。表示板5に設けられ、夫々の表示部2、3、4の要求色に対応して表示板5上に配置され、光源8、9の各々から放射された光を濾光または変換する生成手段(赤色フィルタ、青色フィルタ、青白色変換蛍光体、青赤色変換蛍光体等)と、複数の光源8、9からの光を一度混合させた上で、光源8、9から離れた表示板5上の表示部に導く導光路13とを有する。表示部には、目盛2と数字指標3と、インジケータ35による警告表示時に発光するアンビエント表示領域4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね単波長スペクトルを放射する光源からの2色以上の光線スペクトルを光源から離れた表示部に導く構造を有する車両用計器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動車用表示計器は、主に、スピードメータ、タコメータ(エンジン回転計)、燃料計、エンジン冷却水温度計等の状況変位を連続的に表示できる「メータ」類と、状態変化を光学的表示の点灯及び消灯で表示してウォーニングを行う「インジケータ」類から構成されている。
【0003】
特に、昨今の走行安全系技術の進化やユーザニーズの変化に伴い、「メータ」類、および「インジケータ」類の状態を、光学的な点灯及び消灯で表示することが必要な、表示項目数は増加の一途をたどっている。
【0004】
しかし、占有できる表示部の大きさは限られており、搭載が必要な表示項目数に対する占有可能領域は恒常的に不足気味である。その結果、最低限の視認性要件は満足するものの、高密度化で小型化の一途をたどっている各機能の光学表示サイズは、運転の為の前方視認と計器確認の為の視線移動を伴う運転操作環境では、特に、小型表示が視認し難い高齢運転者には、充分とは言えなくなってきている。
【0005】
上記問題を解決する方法として、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4では、各シンボル及び文字の光学的点灯表示または消灯表示と合わせて、メータ内のより広域な領域を光学的に照明するアンビエント「Ambient」表示により、運転者の視線がメータ内に無いときでも、計器の表示変化に気づかせ、確認を促す構造を提供している。
【0006】
すなわち、ある特定のインジケータでウォーニング内容が表示されると、広域の表示領域を持つアンビエント表示が帯状等に発光し、警告表示がなされたことを運転者に告知するようにしている。このアンビエント表示のために導光体の形状や光源の配置、光源の色等を工夫している。
【0007】
このうち特許文献1は、車両の各部位の異常状態を警告表示する集中インジケータとは別に、当該異常状態が発生していないときこれを積極的に発光表示するアンビエント表示器を設け、乗員が、安心感をもって、車両の各部位が正常状態にあることを認識できる車両用表示装置を提供するものである。
【0008】
このために、アンビエント表示器は、集中インジケータとは別に、コンビネーションメータに設けられている。このアンビエント表示器は、集中インジケータによる異常表示のないときには、その旨を、各光源の緑色発光により表示するものである。
【0009】
また、特許文献2は、アンビエント効果を得つつ、異常状態の発生時においても計器の良好な視認性を確保できる車両用指針計器を提供するものである。このために、表示板上に配置した目盛板に設けた目盛を発光ダイオードからの光により常時発光表示するとともに、表示板の目盛板に対応する部分である第1部分の発光色を、通常時と異常事態発生時とで切り替える構成としている。
【0010】
これにより、異常事態発生時おいても、スピードメータの高い視認性、つまり高い読取り易さを確保することができている。従って、異常状態の発生時においても指針計器であるスピードメータの良好な視認性を確保できるコンビネーションメータを提供することができている。
【0011】
また、特許文献3は、多色発光ダイオード等を使うことなく、通常時も警告時等とは異なる発光色にてアンビエント表示部を発光させるものである。具体的には、導光プリズムの第1導光部の一部を延出させて、表示板用光源が発する光をアンビエント表示部に導く第3導光部を構成している。
【0012】
これによれば、通常時は、第1導光部と第3導光部を通して、計器表示部とアンビエント表示部とを同じ表示板用光源が発する光で発光させることができる。また、警告時などには、第2導光部を通して、アンビエント表示部を表示板用光源とは異なる色のアンビエント表示用光源の発する光で発光させることができている。
【0013】
また、特許文献4は、運転者に認識させ易いインジケータを備える車両用表示装置を提供するものである。このために、表示板と見返し板との間から延出されて表示板の一部の領域上に配置された導光板によって、インジケータの表示部を形成している。
【0014】
この導光板の見返し板で隠蔽された部分の端面には、導光板用光源として発光ダイオードを配置し、端面から導光板内に光を入光させるようにしている。マイクロコンピュータは、車両の状態に応じて発光ダイオードの発光を制御して、導光板の表示部を点灯表示、もしくはアンビエント表示させるようにしている。これによれば、表示板の一部の領域上で、導光板の表示部が広い面積で点滅表示、もしくはアンビエント表示することにより、車両の状態を運転者に認識させ易くすることができる。
【0015】
また、近年白色LEDランプが普及している。これは青を白に変換する青白色変換蛍光体(黄蛍光体ともよばれる)を使用したり、青を赤に変換する青赤色変換蛍光体(赤蛍光体)と青を緑に変換する青緑色変換蛍光体(緑蛍光体)の両方を使用したりして、白色光を作り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002−79847号公報
【特許文献2】特開2007−155613号公報
【特許文献3】特開2010−223826号公報
【特許文献4】特開2010−266409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、求められる表示色が異なる通常表示とアンビエント表示とにおいて、光学的導光構造を隔離して相互混色を防ぐ必要から、構成部品の相互隔離によるコスト増加を招く。また、構成部品の相互隔離に伴うデッドスペースが、グラフィックデザインの配置自由度を阻害し、また、相互混色を許容しているという事象もある。
【0018】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、少なくとも2色の表示部相互間の光学的干渉を防止する遮光壁や、光学的干渉防止用プリズム等を不要とし、これによって、表示部間混色及び漏光等の光学的干渉をデッドスペースの少ない状態で防ぐことのできる車両用計器を提供することにある。
【0019】
従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、各々異なる発光色で点灯及び消灯する複数の隣り合う表示部を表示板上に有する車両用計器において、点灯により異なる光を放射する複数の光源と、各々の表示部の要求色に対応して表示部に配置され、光源から放射された光が入射されて、要求色の光を生成する生成手段と、光源からの異なる光を混ぜて、表示部に生成手段を介して導く導光体または空気層からなる導光路とを有することを特徴としている。
【0021】
この発明によれば、複数の光源からの光を混合した上で、表示部に生成手段を介して導くから、要求色を表示部の生成手段で発生することができ、遮光壁や、干渉防止用プリズム等の、光を個別に干渉なく導光させるための導光構造が不要になり、この導光構造のために必要となる余分な空間、すなわちデッドスペースを少なくすることができる。よって、表示部の境界での表示部間混色及び漏光等の光学的干渉をデッドスペースの少ない状態で防ぐことのできる車両用計器を提供することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明では、複数の表示部に、警告表示時に発光する表示領域と、表示板上の複数の指標からなる指標表示部とを有し、指標表示部は表示領域と隣り合って設けられていることを特徴としている。
【0023】
この発明によれば、警告表示時に発光する表示領域と、この表示領域と隣り合って形成され、表示板上の指標を表示する指標表示部とを有するが、混合された光から生成手段で要求色を生成できるから、表示領域と指標表示部との間の混色及び漏光等の光学的干渉をデッドスペースの少ない状態で防ぐことができる。
【0024】
請求項3に記載の発明では、表示領域内に指標表示部が設けられており、表示領域の形状に沿って生成手段を構成する表示領域用生成手段が設けられ、指標表示部の形状に沿って生成手段を構成する指標表示用生成手段が設けられ、該指標表示用生成手段は表示領域用生成手段とは異なる色調の光を生成することを特徴としている。
【0025】
この発明によれば、表示領域用生成手段を通過した光で表示領域を特定の発光色で発光させることができる。また、特定の発光色とは異なる色調で指標表示部を発光させることができ、表示領域内に指標表示部が設けられていても、表示領域と指標表示部の区別が可能となる。
【0026】
請求項4に記載の発明では、表示領域用フィルタの表面は、スモーク層に覆われていることを特徴としている。
この発明によれば、表示領域用フィルタが発光していない場合に、スモーク層によって、表示領域が運転者から視認され難くすることができる。
【0027】
請求項5に記載の発明では、指標は、複数の数字指標と複数の目盛とからなり、該複数の目盛は複数の第1目盛と該第1目盛の各々の間に配設された第2目盛からなり、第1目盛に、第2目盛とは異なる色を生成する生成手段が設けられ、表示領域は円弧状に配置され、該表示領域の外周側に複数の第1目盛が配列されており、第1目盛と表示領域とは、同時に発光することを特徴としている。
【0028】
この発明によれば、第1目盛を第2目盛とは異なる色で発光させることができ、かつ円弧状の表示領域の外周側に、第1目盛が配列されているから、表示領域が発光するときに、表示領域と第1目盛とで、まつげ状の表示形態を形成でき、注意喚起作用が大きい。
【0029】
請求項6に記載の発明では、表示部相互間の境目に、該境目を覆う遮光部が設けられていることを特徴としている。
【0030】
この発明によれば、境目に遮光部が設けられているから、たとえ表示部同士が重なっても遮光部で重なり部分を覆い隠すことができるため、表示部相互間の光学的干渉や混色が防止できる。
【0031】
請求項7に記載の発明では、光源は、赤色光と青色光を発生し、生成手段は、青色光を白色光に変換し、かつ赤色光を透過させる青白色変換蛍光体を有することを特徴としている。
【0032】
この発明によれば、青色光を光源が発生した場合に表示部が白色で発光し、青色光と赤色光とを光源が発生した場合に、赤色(ピンク色)に表示部を発光させることができる。
【0033】
請求項8に記載の発明では、光源は、赤色光と青色光を発生し、生成手段として、赤色光を透過させ、青色光を不透過とする赤色フィルタが設けられていることを特徴としている。
【0034】
この発明によれば、青色光のみが点灯しているときは、赤色フィルタが青色光を透過しないため、表示部が発光せず、光源が赤色光を発生したときに赤色で表示部が発光する注意喚起に適した表示部を形成することができる。
【0035】
請求項9に記載の発明では、光源は、赤色光と青色光を発生し、生成手段として、青色光を透過させ、赤色光を不透過とする青色フィルタが設けられていることを特徴としている。
【0036】
この発明によれば、青色光のみが点灯しているときは、青色フィルタが青色光を透過するため、表示部が青色で発光し、光源が青色光と赤色光とを発生したときに青色を透過させて青色で表示部が発光する表示部を形成することができる。
【0037】
請求項10に記載の発明では、光源は、赤色光と青色光を発生し、生成手段として、青色光を白色光に変換する青白色変換蛍光体を有し、青白色変換蛍光体の光源側に、青色光を透過して赤色光を不透過とする青色フィルタが設けられていることを特徴としている。
【0038】
この発明によれば、青色光のみを光源が発光した場合に、表示部が白色で表示し、赤色光と青色光とを光源が発光した場合にも、青色フィルタで赤色光を不透過として、表示部の白色を維持することができる。
【0039】
請求項11に記載の発明では、光源は、赤色光と青色光を発生し、生成手段として、青色光を赤色光に変換する青赤色変換蛍光体が設けられていることを特徴としている。
【0040】
この発明によれば、青色光のみを光源が発光した場合に、赤色に発光し、赤色光と青色光の両方を光源が発光した場合に、青色光が赤色光に変換されると共に光源からの赤色光が青赤色変換蛍光体を透過するから、表示部が赤色に強く発光する表示部を持った車両用計器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用計器板における表示板の発光状態の変化を示す正面図である。
【図2】上記実施形態の車両用計器の複数の光源と反射壁の配置形状を示す車両用計器内の導光路を、図3の矢印Z2−Z2方向から見た場合における光源配置図である。
【図3】図2の矢印Z3−Z3線に沿う模式断面図である。
【図4】図1の矢印Z4−Z4線に沿う表示板の模式拡大断面図である。
【図5】上記第1実施形態の作動を説明する光源の点灯状態と各表示部の発光状態を示す表である。
【図6】上記実施形態に対する比較例を示し、従来の表示部相互間の境界部の寸法を示す模式説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示す表示板の正面図である。
【図8】図7の矢印Z8−Z8線に沿う表示板の模式拡大断面図である。
【図9】上記第2実施形態の複数の光源の状態に対する各表示部の状態を説明するための表である。
【図10】本発明の第3実施形態を示すスピードメータとタコメータからなる車両用計器の正面図である。
【図11】図10においてアンビエント表示がなされた状態を示す車両用計器の正面図である。
【図12】図1の(b)部分の数字指標と目盛とが位置する部分Z12の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0043】
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0044】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図5を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態における車両用計器板の表示板を示す正面図である。図1の(a)の部分は、通常時の表示状態を示し、図1の(b)は、インジケータが作動した場合のアンビエント表示の状態を示している。
【0045】
図2は、上記実施形態の車両用計器の複数の光源と反射壁の配置形状を示す車両用計器内の導光路を図3の矢印Z2−Z2方向から見た場合における光源配置図である。この図2においては、回路基板上の光源の配置に重ねて、本来は見えない指針や指標を仮想的に表示している。また、指針6のキャップ部を除き表示板5やケース部材の一部を除去して図示している。図3は、図2の矢印Z3−Z3線に沿う模式断面図である。
【0046】
図4は、図1の矢印Z4−Z4線に沿う模式拡大断面図である。図4は縮尺をフリー状態で図示している。図5は、上記第1実施形態の作動を説明する光源の点灯状態と各表示部の発光状態を示す表である。また、図6は、比較例を示す遮光壁の模式構成図である。
【0047】
図1において、車両用計器1となるスピードメータは、通常時は目盛2や数字指標3等のグラフィックが主として青色で発光する。このように主として青色で発光する表示部に隣接して、あるいは、この青色で発光する表示部を包み込んで、赤色で面発光して注意喚起を行うアンビエント表示を行う。このアンビエント表示を行うアンビエント表示領域4は、この実施形態では図示しないインジケータ(例えば図10のインジケータ35と同等)が発光したときと同期して発光表示する。
【0048】
図3のように、ポリカーボネイトシートやアクリル樹脂シートからなる透光性の表示板5の表面側(運転者側)には指針6が回転可能である。表示板5の裏面側(車両進行方向側)には、図2、図3のように回路基板7が設けられている。
【0049】
回路基板7には、図2のように、発光ダイオード(LEDともいう)から成る赤色光源8a、8b、8c(代表して赤色光源8という)が3個と、同じく発光ダイオードからなる青色光源9a、9b、9c、9d(代表して青色光源9という)が4個設けられている。
【0050】
図3のように、表示板5と回路基板7との間には隙間11が設けられている。この隙間11の上方(指針6側)には、計器のケース部材からなる反射壁12と導光路13を構成する透明の樹脂材料からなる導光体が設けられている。なお、この導光路13は、導光プリズムから構成されているが、樹脂等の部材が無くてただの空気層であっても良い。
【0051】
複数の光源8、9(図2)からの複数の色(赤と青)は、上記樹脂材料からなる導光路13または空気層からなる導光路13内で混合される。そして表示板5の裏面に混合された光が到達する。なお、複数の光源8、9が発光せず、赤色もしくは青色のみの光源(8または9)が発光するときは、単一色の光が表示板5の裏面に到達する。指針6は、指針軸6aに駆動され、指針軸6aは、ステップモータ等の指針駆動用ムーブメント6bに駆動される。15は、指針照明用光源である。
【0052】
図1において、表示板5には指標となる目盛2と数字指標3と単位16とが印刷されている。また、複数の目盛2を橋絡または包みこむように、円弧状にアンビエント表示領域4が設定されている。
【0053】
このアンビエント表示領域4と重なるように、表示板5上には図4に示すアンビエント表示用フィルタ20、21が形成されている。このアンビエント表示用フィルタ20、21は、赤色光を透過させ青色光を不透過とする赤色フィルタ20から構成されている。
【0054】
アンビエント表示領域4を画定するアンビエント表示用フィルタ20、21となる赤色フィルタ20は、表示板5の基材5aとなるポリカーボネイトシートの上に印刷された赤色インク層からなる。この赤色フィルタ20の表面側、つまり運転者側(図4の上方)には、スモーク層21が形成されている。
【0055】
このスモーク層21は、スモークインクの層からなる。スモーク層21の存在によって光源8からの光が来ないときに、車両外側からの外来光では、アンビエント表示領域4が見えにくいようになっている。なお、スモーク層21は省略が可能である。
【0056】
図1において、目盛2は、指標表示部用フィルタをなす青色インク層で印刷された青色フィルタ2a(図4)から構成されている。数字指標3の「20」の表示(図1)のうちの「2」の数字を表す数字指標3の数字指標部3a(図4)も、青色インク層で印刷された青色フィルタ3bから構成されている。青色フィルタ3bは、青色光源9の青色光を透過し、赤色光源8の赤色光は非透過とする。
【0057】
各表示部の境界部、つまり、目盛2とアンビエント表示領域4の間の境界部22、「2」の数字を表す数字指標部3aとアンビエント表示領域4の境界部24とには黒色インクで印刷された黒色インク層が形成されている。この黒色インク層は遮光部を画定している。
【0058】
円弧状(扇状)のアンビエント表示領域4の内周側の境界部25にはグラフィック形成用の遮光部が黒色インクの印刷層で形成されている。このように複数の表示部は隣り合って配置され、表示部相互間には境界部(遮光部)22、24、25、26を形成する黒色インク層が形成されている。図4の4aはアンビエント表示領域4の一部であり、アンビエント表示領域4、4aの中に、数字指標表示部3bの少なくとも一部が存在している。
【0059】
また、赤色光と青色光の光源8、9をなすLEDによって、概ね単波長スペクトルを放射する光源8、9が形成されている。この光源8、9と表示板5の間には、光源8、9からの光線に対する不透過材からなる遮光壁(後に図6を用いて説明する遮光壁29)が配置されていない。
【0060】
また、光源8、9と表示板5の間には、光源8、9からの光線に対する透過材料表面(粗密境界面)における全反射構造が配置されていない。従って、従来のように光源8、9から表示板5の間に、着色光を隔離する光学的遮光壁構造を形成する必要がない。
【0061】
赤色と青色の光源8、9は、状況に応じて個別に図示しない制御装置によって電気的に点灯及び消灯制御される。通常時に青色で照明される目盛2や数字指標3等のグラフィックには、概ね青色単波長スペクトルを透過させ、かつ概ね赤色単波長スペクトルを遮蔽するフィルタである青色インク層からなる青色フィルタ2a、3b(図4)が存在する。
【0062】
次に、上記の構成からなる第1実施形態の作動を図5の表に基づいて説明する。図5は第1実施形態の複数光源8、9の状態に対する各表示部の状態を説明するための表である。先ず、図4のアンビエント表示領域4、4aについて説明する。
【0063】
アンビエント表示領域4、4aには、上述したように、表示板5の表面側に、アンビエント表示用フィルタ20、21が設けられ、これは赤色インク層からなる赤色フィルタ20とスモーク層21とからなる。
【0064】
従って、図5の番号1のように、青色光源9が点灯(ON)し、赤色光源8が消灯(OFF)している状態では、赤色フィルタ20を青色の光源からの光が透過しないため、アンビエント表示領域4は消灯状態となる。
【0065】
一方、目盛2や数字指標3、単位16の指標表示部2、3、16(図1)は、青色フィルタが用いられているため、目盛2や数字指標3、単位16は、図5の番号5のように、青色の光を透過する。よって、指標表示部内の目盛2と数字指標3と単位16とが青く光る。
【0066】
次に、番号2のように、青色光源9がONし、赤色光源8もONしている状態では、アンビエント表示用フィルタ20、21の赤色フィルタ20を赤色光源8からの光が透過するため、アンビエント表示領域4は、図5の番号2のように、赤色に発光する。
【0067】
また、目盛2、数字指標3、単位16の指標表示部2、3、16は、青色フィルタが用いられているため、赤色の光を阻止し、青色の光のみ透過する。従って、図5の番号6のように目盛2と数字指標3と単位16とが青く発光する。
【0068】
次に、番号3のように、青色光源9がOFFし、赤色光源8もOFFしている状態では、アンビエント表示領域4は消灯している。また、番号7のように、目盛2や数字指標3、単位16も消灯しており透過照明はなされない。
【0069】
次に、番号4、8のように青色光源9がOFFし、赤色光源8がONしている状態では、アンビエント表示用フィルタ20、21の赤色フィルタ20を赤色光源8からの光が透過するため、アンビエント表示領域4は赤色に発光する。また、目盛2や数字指標3、単位16は、青色フィルタが用いられているため、赤い光は吸収されるため、発光せず消灯している。
【0070】
図6は比較例を示し、従来の表示部相互間の境界部の寸法を示す模式説明図である。第1表示部R1と第2表示部R2の間には、メータケースからなる樹脂製の遮光壁29が有るため、夫々に第1、第2表示部R1、R2に個別に設けられた矢印Y61、Y62にて示す光源からの光は、隣の領域に進入せず、干渉することが防止できる。しかし、少なくとも3mm程度の表示部間のデッドスペース(dead space)DSを確保する必要がある。
【0071】
この点、上記第1実施形態では、図4に示すように、数字指標の「20」の表示のうちの「2」の数字を表す数字指標部3aは、青色フィルタ3bから構成されている。また、アンビエント表示用フィルタ20、21は、表示板5の基材5a上に印刷された赤色フィルタ20を有する。表示部相互間に、メータケースからなる遮光壁29(図6)相当部を設ける必要はなく、2つの表示部を極力接近させることができるから、0.5mm程度の最小限のデッドスペースで済む。
【0072】
以上のように、第1実施形態では、導光路13(図3)内で一度混合されたLED(発光ダイオード)等を光源とする複数の単波長スペクトルの光は、その波長に対応するフィルタで濾光されることにより、波長ごとの光に分離可能である。そして、それぞれ異なる発光色で個別に点灯及び消灯が必要な複数の表示部を有する車両用計器において、少なくとも2色以上の表示色による表示部を混色なく配置できる。
【0073】
このような混合伝播及び再分離を行う構造により、少なくとも2色の表示部間の光学的干渉を防止する遮光壁29相当部(図6)、または、遮光用プリズム等の全反射を利用した光学的遮光壁を不要としている。その為、大きなデッドスペースDS(図6)を不要として表示部間混色及び漏光等の光学的干渉を防ぐことができる。
【0074】
また、この第1実施形態では、図4のアンビエント表示領域4の境界部(遮光部)22、24等のように黒色インクで印刷された黒色インク層が形成されている。この理由は以下のとおりである。赤と青の表示部の境界部(遮光部)22、24、25、26において、赤と青が明確に分かれる境目が設定しにくい。
【0075】
つまり、お互いに寸法ずれによって表示部の位置がずれる。そうすると、赤と青が重なり紫になる。そのような紫色は不要である。そこで重なる部分にデッドスペースとなる黒白インク層を配置している。すなわち、色のずれ分を黒色インク層で覆っている。これにより、最小のデッドスペースで2色以上の表示の切り替えが可能となる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。図7は、本発明の第2実施形態を示す表示板の正面図である。
【0077】
図8は図7の矢印Z8−Z8線に沿う模式断面図である。図8の縮尺はフリー状態で図示している。また、図8は図7の矢印Z8−Z8線に沿う構成ではあるが、正確な断面を示していない。代表する各部の構成がわかるように模式的に示している。
【0078】
図8において、表示板5の表面側、つまり運転席の運転手側(図8の左側)には、先ず、数字指標3を構成する数字「100」の目盛2(図7)の発光を制御するために、表示板5の基材5aの上に青色の光のスペクトルを白色光に変換する青白色変換蛍光体30の層が形成されている。この青白色変換蛍光体30は、青色光源9が点灯した場合は白く発光し、赤色光源8と青色光源9の両方が点灯したときは、赤い光を透過して赤色(ピンク)で発光する。
【0079】
次に、図8の下の方に、アンビエント表示領域4が存在する。アンビエント表示領域4を画定するアンビエント表示用フィルタ20、21は、表示板5の基材5a上に印刷された赤色フィルタ(赤色インク層)20とスモーク層21からなる。
【0080】
このスモーク層21は、スモークインクの層からなる。スモーク層21の存在によって光源8、9からの光が来ないときに、車両外側からの外来光では、アンビエント表示領域4が見えにくいようになっている。
【0081】
次の下の方に、数字指標3の数字「100」の「0」の一部が存在する。数字指標3を画定する数字指標表示用フィルタ23は、表示板5の基材5a上に印刷された青色インク層からなる。次の下の方に、再びアンビエント表示領域4aが存在する。アンビエント表示領域4aを画定するフィルタは、上述のアンビエント表示用フィルタ20、21と同じである。
【0082】
次の下の方に、グラフィック形成用の遮光部(境界部)26が形成されている。これらの境界部(遮光部)22、24、25、26、27、28には、黒色インクで印刷された黒色インク層が形成されている。更にその下には、「km/h」と記載された単位16を表す指標表示部が存在する。この単位16を表す指標表示部は、青色インク層からなる青色フィルタ31の表面側に、青色スペクトルを白色光に変換する青白色変換蛍光体32が形成されている。
【0083】
また、図8では図示しないが、裏面側の奥に、青色と赤色のLED等の概ね単波長スペクトルを放射する光源8、9が設けられている。この光源8、9と表示板5の間には、光源8、9からの光線に対する不透過材からなる遮光壁29相当部(図6)が配置されていない。また、光源8、9と表示板5の間には、光源8、9からの光線に対する全反射を利用した遮光壁も配置されていない。従って、従来のように光源8、9から表示板5の間にデッドスペース拡大要因となる光学的遮蔽構造を形成する必要がない。
【0084】
次に、上記の構成から成る第2実施形態の作動を図9から成る表に基づいて説明する。図9は上記第2実施形態の複数の光源8、9の状態に対する各表示部の状態を説明するための表である。
【0085】
図9の表では、各表示部を、上から、図7の数字指標の数字「100」の目盛2を表示する指標表示部、アンビエント表示領域4、4a、数字指標の数字「100」を表示する指標表示部、「km/h」と記載された単位16を表す指標表示部の順序で表を作成している。そして赤色と青色の光源8、9となるLEDの点灯および消灯に応じて、各表示部の発光状態がどのようになるのかを表している。
【0086】
図9において、先ず、数字「100」の目盛2を表示する指標表示部について説明する。目盛2を表示する指標表示部には、上述したように、表示板5の基材5aの上に青色の光のスペクトルを白色光に変換する青白色変換蛍光体30の層が形成されている。従って、図9の表の番号1に示すように、青色光源9が点灯(ON)し、赤色光源8が消灯(OFF)している状態では、目盛2を表示する指標表示部は、白色で発光する。
【0087】
また、番号2のように、青色光源9がONし、赤色光源8もONしている状態では、目盛2を表示する指標表示部は、青白色変換蛍光体30が青色を白色に変換しつつ赤い光を透過させるために、赤色(ピンク色)で発光する。また、番号3のように、青色光源9がOFFし、赤色光源8もOFFしている状態では、目盛2を表示する指標表示部は、消灯している。
【0088】
また、番号4のように、青色光源9がOFFし、赤色光源8がONしている状態では、目盛2を表示する指標表示部は、青白色変換蛍光体30を赤い光が透過するため、赤色で発光する。
【0089】
このように、目盛2を表示する指標表示部は、通常表示状態では白色系とし、かつアンビエント発光表示状態では、赤色系とするために、当該領域に青色スペクトルを白色に変換し、かつ赤色スペクトルを透過する青白色変換蛍光体30を配置した構造を有する。
【0090】
次に、アンビエント表示領域4を画定するアンビエント表示用フィルタ20、21(図8)は、表示板5の基材5a上に印刷された赤色フィルタ(赤色インク層)20とスモーク層21からなる。なお、スモーク層21は省略が可能である。
【0091】
図9の番号5のように、青色光源9が点灯(ON)し、赤色光源8が消灯(OFF)している状態では、赤色フィルタが青い光をブロックするため、アンビエント表示領域4は、消灯している。また、番号6のように、青色光源9がONし、赤色光源8もONしている状態では、アンビエント表示領域4は、赤色で発光してアンビエント表示を行う。
【0092】
また、番号7のように、青色光源9がOFFし、赤色光源8もOFFしている状態では、アンビエント表示領域4は消灯する。また、番号8のように、青色光源9がOFFし、赤色光源8がONしている状態では、アンビエント表示領域4は赤色で発光する。
【0093】
次に、数字指標3の数字「100」を表示する数字指標表示部を画定する指標表示用フィルタ23(図8)は、基材5a上に印刷された青色インク層からなる。従って、番号9のように、青色光源9が点灯(ON)し、赤色光源8が消灯(OFF)している状態では、数字「100」を表示する数字指標表示部3aは、青色で発光する。
【0094】
また、番号10のように、青色光源9がONし、赤色光源8もONしている状態では、数字「100」を表示する指標表示部は、青色のみを透過するため、青色で発光する。また、番号11のように、青色光源9がOFFし、赤色光源8もOFFしている状態では、数字「100」を表示する指標表示部は、消灯している。
【0095】
また、番号12のように、青色光源9がOFFし、赤色光源8がONしている状態では、青色インク層が赤色を透過しないため、数字「100」を表示する指標表示部は、消灯している。
【0096】
次に、「km/h」の単位16を表す指標表示部を画定する指標表示用フィルタは、図8のように、基材5a上に印刷された青色フィルタ(青色インク層)31の表面側に、青色スペクトルを白色光に変換する青白色変換蛍光体32の層が形成されている。
【0097】
従って、図9の番号13のように、青色光源9が点灯(ON)し、赤色光源8が消灯(OFF)している状態では、青色光が青色インク層31を通過して青白色変換蛍光体32で白色光に変換されるため、単位16を表示する指標表示部は白色で発光する。
【0098】
また、番号14のように、青色光源9がONし、赤色光源8もONしている状態では、「km/h」の単位16を表す指標表示部は、青色フィルタ(青色インク層)31が赤い光をブロックし、青い光のみを通して青白色変換蛍光体32が白色に変換するため白色で発光している。
【0099】
また、番号15のように、青色光源9がOFFし、赤色光源8もOFFしている状態では、単位16を表示する指標表示部は、消灯している。また、番号16のように、青色光源9がOFFし、赤色光源8がONしている状態では、青色フィルタが赤い光をブロックするため、単位16を表示する指標表示部は、消灯している。このように、「km/h」の単位16を表す指標表示部を画定する指標表示用フィルタが発光するときは、常時白色系である。
【0100】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。第3実施形態はタコメータを追加し、レッドゾーンの表示形態とアンビエント表示形態を除き、上記第2実施形態の考え方を応用している。
【0101】
図10は、本発明の第3実施形態を示すスピードメータとタコメータ(エンジン回転計)からなる車両用計器の正面図である。図11は、図10においてアンビエント表示がなされた状態を示す車両用計器の正面図である。この第3実施形態においては、図10から図11において、次の発光色の変化がある。
【0102】
最初の状態(非アンビエント表示状態である通常状態)では、図10のように、表示板5の裏面側の青色光源9のみが発光している。一方、インジケータ35が点灯するアンビエント表示のときには、表示板5の裏面側の青色光源9と赤色光源8が共に発光する。
【0103】
第1に、目盛2には、数字指標の中心に対応する主目盛2maと、この主目盛2ma相互間に位置する補助目盛2auが存在するが、最初の状態では、主目盛2maと補助目盛2auが、共に図10の右側のスピードメータのように白色で発光する。アンビエント表示の状態では、補助目盛2auは白色のままであり、主目盛2maのみが赤く発光する。
【0104】
この理由は、次のとおりである。補助目盛2auは、図9の番号13、14の状態である。補助目盛2auの表示部には、基材5a上に青色フィルタ(青色インク層)31が印刷され、その表面側に、青色スペクトルを白色光に変換する青白色変換蛍光体32の層が形成されている。従って、青色光源9が点灯している限り、補助目盛2auは白色で点灯する。
【0105】
主目盛2maは、図9の番号1、2の状態である。主目盛2maの表示部には、青を白に変える青白色変換蛍光体30が設けられているが、青色光源9のみが発光したときは、主目盛2maは白く発光している。
【0106】
赤色光源8と青色光源9が共に光ったときには、白く光っている青白色変換蛍光体30に赤い光が透過するため、主目盛2maは赤色(ピンク)に変化する。つまり、赤い光に青白色変換蛍光体30(蛍光顔料)が反応せず、赤の光がそのまま透過するから、白く光っていた青白色変換蛍光体30が赤(ピンク)に変化する。
【0107】
第2に、数字指標3相互間を橋絡する位置に円弧状のアンビエント表示領域4が設定されている。アンビエント表示領域4は、図9の番号5、6の状態である。最初の状態(通常表示状態)では、青色光源9のみが点灯し、アンビエント表示領域4が図10のように消灯している。赤色光源8と青色光源9が共に光るアンビエント表示の状態では、図11のようにアンビエント表示領域4が赤く帯状に発光する。
【0108】
第3に、最初の状態(通常表示状態)では、目盛2の外周のアーチ形の輪郭部2d(図10)は白く発光し、図11のアンビエント表示の状態でも、白く発光する。この理由は次のとおりである。目盛2の外周のアーチ形の輪郭部2dは、図9の番号13、14の状態である。輪郭部2dには、青白色変換蛍光体32(図8)が用いられている。
【0109】
この青白色変換蛍光体32は、白く光るが、青白色変換蛍光体32の裏面側に青色フィルタ(青色インク層)31が入っているため、この青色フィルタ31は、赤色光をブロックし、青色光のみを透過させる。透過した青色光は青白色変換蛍光体32で白色光に変換される。
【0110】
第4に、最初の状態では、図10の左側のタコメータ40のレッドゾーン41を表示する数字指標「7」と「8」が赤く発光する状態であり、その外周側の棒状目盛41aも赤く発光している。アンビエント表示の状態では、図11のように、数字指標「7」と「8」の周囲が帯状に赤くアンビエント表示されると共に、この赤いアンビエント表示領域4bの中で、数字指標「7」と「8」と棒状目盛41aとが赤色に強く発光する。
【0111】
この理由は次のとおりである。タコメータ40のレッドゾーン41を表示する数字指標「7」と「8」および、その外周側の棒状目盛41aには、青色光が入射すると赤色光を放射する青赤変換用蛍光体が設けられている。この状態は、図9の表に記載されていない。
【0112】
また、タコメータ41のアンビエント表示領域4bは、図9の番号5、6の状態である。つまり、注意喚起を行うアンビエント表示領域4bには、概ね赤色単波長スペクトルを透過させ、かつ概ね青色単波長スペクトルを遮蔽する赤色フィルタが設けられている。
【0113】
従って、最初の青色光源9のみが点灯する状態では、タコメータ40のレッドゾーン41を表示する数字指標「7」と「8」が赤く発光し、その外周側の棒状目盛41aが、赤く発光している。青色光源9のみでは、アンビエント表示領域4bは消灯している。
【0114】
タコメータ41のアンビエント表示の状態では、青色光源9と赤色光源8が共に点灯する。よって、図9の番号5、6のように、数字指標「7」と「8」の周囲が消灯状態から帯状に赤く輝くアンビエント表示に切り替わる。
【0115】
また、この赤いアンビエント表示の中で、数字指標「7」と「8」および外周側の棒状目盛41aには、赤と青の光が両方来るが、青赤変換用蛍光体によって青は赤に変換され、赤はそのまま透過するため、数字指標「7」と「8」および外周側の棒状目盛41aは、赤い色が強く発光する状態に切り替わる。よって、赤いアンビエント表示領域4aの中に数字表示部「7」と「8」とが埋没してしまわずに視認できる。
【0116】
なお、上記各実施形態における生成手段を構成するフィルタまたは蛍光体の構成および作用をまとめると以下のようになる。以下の説明において番号を言うときは、図9の表の番号を示している。また、光源は、赤色光と青色光を発生する。
【0117】
番号1、2のように、生成手段として、青色光を白色光に変換し、かつ赤色光を透過させる青白色変換蛍光体を有する。これによれば、青色光を光源が発生した場合に表示部が白色で発光し、青色光と赤色光とを光源が発生した場合に、赤色(ピンク色)に表示部を発光させることができる。
【0118】
番号5、6のように、生成手段として、赤色光を透過させ、青色光を不透過とする赤色フィルタが設けられている。これによれば、青色光のみが点灯しているときは、赤色フィルタが青色光を透過しないため、表示部が発光せず、光源が赤色光を発生したときに赤色で表示部が発光する注意喚起に適した表示部を形成することができる。
【0119】
番号9、10のように、生成手段として、青色光を透過させ、赤色光を不透過とする青色フィルタが設けられている。これによれば、青色光のみが点灯しているときは、青色フィルタが青色光を透過するめ、表示部が青色で発光し、光源が青色光と赤色光とを発生したときに青色のみを透過させて青色で表示部が発光する。
【0120】
番号13、14のように、生成手段として、青色光を白色光に変換する青白色変換蛍光体を有し、青白色変換蛍光体の裏面側に、青色光を透過して赤色光を不透過とする青色フィルタが設けられている。これによれば、青色光のみを光源が発光した場合に、表示部が白色で表示し、赤色光と青色光とを光源が発光した場合にも、青色フィルタで赤色光を不透過として、表示部の白色を維持することができる。
【0121】
次に、図9の表には記載しなかったが、第3実施形態において、赤いアンビエント表示領域4bの中で、数字指標「7」と「8」と棒状目盛41aとが赤色に強く発光する例を示した。この数字指標「7」と「8」と棒状目盛41aには、生成手段として、青色光を赤色光に変換する青赤色変換蛍光体が設けられている。
【0122】
これによれば、青色光のみを光源が発光した場合に、赤色に発光し、赤色光と青色光の両方を光源が発光した場合に、青色光が赤色光に変換されると共に光源からの赤色光が青赤色変換蛍光体を透過するから、表示部が赤色に強く発光する表示部を持った車両用計器が得られる。
【0123】
以上述べたように、上記実施形態においては、複数の光源からの光を導光路で混合した上で、表示部に、色変換蛍光体または色フィルタからなる生成手段を介して導くから、要求色を表示部の生成手段で発生することができ、遮光壁や、干渉防止用プリズム等の、光を個別に干渉なく導光させるための導光構造が不要になり、この導光構造のために必要となる余分な空間、すなわちデッドスペースを少なくすることができる。よって、表示部の境界での表示部間混色及び漏光等の光学的干渉をデッドスペースの少ない状態で防ぐことのできる車両用計器を提供することができる。
【0124】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の第1実施形態を示す図1の(b)では、数字指標3の途中でアンビエント領域4を終了させているが、アンビエント領域4の幅は、任意に設定できる。図12は、図1の(b)の数字指標3と目盛2に相当する部分Z12の一部拡大図である。
【0125】
図12において、数字指標3と目盛2とからなる指標表示部とアンビエント表示領域4との境界部24a、24b、24cには、黒色インク層からなる境界部(遮光部)が設定されている。つまり、隣接する表示部の境界部24a、24b、24cに、当該表示部の発光表示色を遮光する黒色インクによる遮光印刷領域を配置し、互いの印刷ずれがその遮光印刷領域に収まるようにしている。また、遮光印刷領域は、印刷層に限らず、不透光性のフィルムを使用しても良い。また、印刷の代わり着色インクの塗布や吹き付けを使用しても良い。
【0126】
次に、上記実施形態では、透明のポリカーボネイトシートまたはアクリル樹脂シートの表示板5の表面側(乗員側)に印刷された着色層をフィルタとしているが、裏面側に印刷された着色層をフィルタとしてもよい。
【0127】
また、フィルタや蛍光体は、インクで印刷する以外にもフィルムを貼り付けたり、蒸着したりして、フィルタや蛍光体を構成しても良い。またフィルタや蛍光体は、表示板5の裏面側のみに存在していてもよいし、裏面側と表面側の両方にあっても良い。
【0128】
上記実施形態では、光源から放射された青色及び赤色の概ね単波長スペクトル(青色光、赤色光)は、導光構造体内で一旦混合状態となる。しかし、プリズムのような導光構造体を特に設けず、空気層内で混合状態としても良い。つまり、導光構造は、アクリル等の透明材による導光プリズムを用いる構造の他、反射構造のみの空気層伝播の活用も可能である。
【0129】
さらに、光源8、9の配置は、図2に示すような指針6の根元近傍配置以外の、例えば、表示部直下や、計器可視範囲外周(間接照明)等も可能で制限はない。更に、概ね赤色スペクトルと概ね青色スペクトルの発光領域の組合せ以外でも、配置されるフィルタが、当該領域の発光色に求められる以外のスペクトルを遮蔽し、かつ求められるスペクトルを透過させることができれば、例えば先述の赤と青に緑を加えた3色以上の発光色領域の任意の色の組み合わせも可能である。
【0130】
上記実施形態においては、光源8、9としてLEDを用いた。LEDはスペクトルの幅が狭く、正確な意味では単波長ではないが、本発明では実質的に単波長の光源として紹介した。LED以外の実質的に単波長の種々の光源を使用することもできる。また、蛍光体を発光させるために非可視光線である紫外線を用いても良い。
【0131】
上記実施形態では、計器板上のインジケータで警告(ウォーニング)する時にアンビエント表示を行った。計器板のスペースは限られているため、ウォーニング項目が増えると、ウォーニング項目ごとの表示面積が小さくなる。よって、運転者が、ウォーニングに気づきにくくなってきている。従って、アンビエント表示により、運転者に何かウォーニング表示が出たことを気づかせるマスターウォーニングとしての効果が発揮できる。なお、インジケータにウォーニング表示が出ていない状態での注意喚起時にアンビエント表示を行ってもよいし、アンビエント表示領域を点滅させてもよい。
【0132】
アンビエント表示は、ウォーニング表示時または注意喚起時に行われる。つまり、ウォーニングのシンボルマークが光ったとき等に、アンビエント表示が同期して発光する。この場合、シンボルマークの表示とアンビエント表示が同期しているが、多少ずらせても良い。つまり、アンビエント表示で注意を喚起してから、ウォーニング表示を行っても良いし、その逆でも良い。
【符号の説明】
【0133】
1 車両用計器
2 目盛
2、3、16 指標表示部
2a 目盛2の青色フィルタ(青色インク層)
2au 補助目盛
2ma 主目盛
3 数字指標
3a 数字指標部
3b 数字表示部3aの青色フィルタ(青色インク層)
4、4a、4b アンビエント表示領域
5 表示板
6 指針
7 回路基板
8、8a〜8c 赤色光源
9、9a〜9d 青色光源
11 隙間
12 反射壁
13 導光路(導光体)
15 指針照明用光源
20、21 アンビエント表示用フィルタ
20 赤色フィルタ
21 スモーク層
22、24、24a〜24c、25、26、27、28 境界部(遮光部)
23 数字指標表示用フィルタ
30、32 青白色変換蛍光体
31 青白色変換蛍光体31と共に用いられる青色フィルタ
35 インジケータ
40 タコメータ
41 レッドゾーン
41a 青赤色変換蛍光体が用いられた棒状目盛
DS デッドスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々異なる発光色で点灯及び消灯する複数の隣り合う表示部を表示板上に有する車両用計器において、
点灯により異なる光を放射する複数の光源と、
各々の前記表示部の要求色に対応して前記表示部に配置され、前記光源から放射された光が入射されて、前記要求色の光を生成する生成手段と、
前記光源からの前記異なる光を混ぜて、前記表示部に前記生成手段を介して導く導光体または空気層からなる導光路とを有することを特徴とする車両用計器。
【請求項2】
前記複数の表示部に、警告表示時に発光する表示領域と、前記表示板上の複数の指標からなる指標表示部とを有し、前記指標表示部は前記表示領域と隣り合って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用計器。
【請求項3】
前記表示領域内に前記指標表示部が設けられており、
前記表示領域の形状に沿って前記生成手段を構成する表示領域用生成手段が設けられ、
前記指標表示部の形状に沿って前記生成手段を構成する指標表示用生成手段が設けられ、該指標表示用生成手段は前記表示領域用生成手段とは異なる色調の光を生成することを特徴とする請求項2に記載の車両用計器。
【請求項4】
前記表示領域用フィルタの表面は、スモーク層に覆われていることを特徴とする請求項3に記載の車両用計器。
【請求項5】
前記指標は、複数の数字指標と複数の目盛とからなり、該複数の目盛は複数の第1目盛と該第1目盛の各々の間に配設された第2目盛からなり、前記第1目盛に、前記第2目盛とは異なる色を生成する前記生成手段が設けられ、
前記表示領域は円弧状に配置され、該表示領域の外周側に複数の前記第1目盛が配列されており、
前記第1目盛と前記表示領域とは、同時に発光することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項6】
前記表示部相互間の境目に、該境目を覆う遮光部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項7】
前記光源は、赤色光と青色光を発生し、
前記生成手段として、青色光を白色光に変換し、かつ赤色光を透過させる青白色変換蛍光体を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項8】
前記光源は、赤色光と青色光を発生し、
前記生成手段として、赤色光を透過させ、青色光を不透過とする赤色フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項9】
前記光源は、赤色光と青色光を発生し、
前記生成手段として、青色光を透過させ、赤色光を不透過とする青色フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項10】
前記光源は、赤色光と青色光を発生し、
前記生成手段として、青色光を白色光に変換する青白色変換蛍光体を有し、前記青白色変換蛍光体の前記光源側に、青色光を透過して赤色光を不透過とする青色フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の車両用計器。
【請求項11】
前記光源は、赤色光と青色光を発生し、
前記生成手段として、青色光を赤色光に変換する青赤色変換蛍光体が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の車両用計器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−154812(P2012−154812A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14396(P2011−14396)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】