説明

車両用警報装置

【課題】車外の第三者に対して進入禁止を報知すべき警報領域の発生場所及び発生範囲を視覚によって認識させる。
【解決手段】 車両2に搭載される車両用警報装置であって、警報領域発生判定部20と噴射装置12とを備える。警報領域発生判定部20は、車外の第三者に対して進入禁止を報知すべき警報領域が車両2の周囲に発生したか否かを判定する。噴射装置20は、警報領域が発生したと警報領域発生判定部20が判定したとき、所望の反射特性を有する粒子を警報領域に噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車外の第三者に対して警報を発する車両用警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008−90748号公報には、車外警報出力装置を備え、車輌に搭載される車輌用警報装置が記載されている。車外警報出力装置は、車外の歩行者、又は、軽車両、自動二輪車若しくは原動機付自転車を運転する運転者等(以下、「歩行者等」という。)に対して警報を出力するための装置であり、例えば、スピーカ、拡声器、ホーン、ブザー等の音声出力装置や、HID(High Intensity Discharge)ランプ、LED(Light Emitting Diode)ランプ等の光出力装置である。上記車輌用警報装置は、運転者による方向指示器の操作を検知し、車輌に搭載された赤外線カメラ又はTOFセンサの出力に基づいて巻き込み危険領域(仮に歩行者等が存在した場合に接触事故を発生させる可能性が高いとして予め設定される領域)に物体が存在するか否かを判定する。巻き込み危険領域に物体が存在すると判定され、また、運転者によるステアリング操作を検知した場合、巻き込み危険領域に存在する物体の形状と予め登録された登録形状パターン(歩行者等の典型的な画像パターン)とを照合し、赤外線カメラ又はTOFセンサが生成した生成画像中に登録形状パターンが存在するか否かを判定する。そして、存在すると判定された場合は、車外警報出力装置によって警報を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−90748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車輌用警報装置では、歩行者等は、警報によって巻き込み危険領域が発生していることは認識できるが、巻き込み危険領域の発生場所及び発生範囲を把握することはできない。このため、歩行者等は、発生した巻き込み危険領域に対して適切な移動を行うことができず、脱出したつもりが巻き込み危険領域に留まってしまう可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、車外の第三者に対して進入禁止を報知すべき警報領域の発生場所及び発生範囲を視覚によって認識させることが可能な車両用警報発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の車両用警報装置は、警報領域発生判定手段と、噴射手段と、を備える。
【0007】
警報領域発生判定手段は、車外の第三者に対して進入禁止を報知すべき警報領域が車両の周囲に発生したか否かを判定する。噴射手段は、警報領域が発生したと警報領域発生判定手段が判定したとき、所望の反射特性を有する粒子を警報領域に噴射する。
【0008】
車外の第三者に対して進入禁止を報知すべき警報領域とは、仮に歩行者等が存在した場合に車両の内輪差による巻き込み事故や車両との接触事故が発生する可能性が高い領域であり、予め設定された所定の領域、又は車両用警報装置が諸条件から算出して設定する領域である。また、所望の反射特性を有する粒子には、例えば、水蒸気や微細な水滴が含まれる。
【0009】
上記構成によれば、警報領域発生判定手段が、警報領域が車両の周囲に発生したと判定するとき、噴射手段が所望の反射特性を有する粒子を警報領域に噴射するので、噴射された粒子によって、警報領域の発生場所及び発生範囲を歩行者等に視認させることができる。したがって、歩行者等が警報領域に進入していない場合は、歩行者等に警報領域の進入前に進入を防止するような行動を促すことができる。また、歩行者等が警報領域に進入していた場合は、歩行者等に警報領域内から脱出するための適切な行動を促すことができる。
【0010】
また、上記車両用警報装置は、走行状態検出手段と、警報領域決定手段と、を備えてもよい。
【0011】
走行状態検出手段は、車両の走行状態を検出する。警報領域決定手段は、警報領域が発生したと前記警報領域判定手段が判定したとき、走行状態検出手段が検出した走行状態に基づいて、警報領域の発生場所及び発生範囲を決定する。この場合、噴射手段は、警報領域決定手段が決定した警報領域に前記粒子を噴射する。
【0012】
走行状態検出手段が検出する車両の走行状態には、車両のステアリングの操舵角や車両の走行速度が含まれる。
【0013】
上記構成によれば、警報領域決定手段は、走行状態検出手段が検出した走行状態に基づいて、警報領域の発生場所及び発生範囲を決定するので、車両の走行状態に応じた最適な警報領域を決定することができる。
【0014】
また、上記車輌用警報装置は、車外の明るさを判定可能な情報を取得する情報取得手段を備えてもよい。
【0015】
この場合、警報領域決定手段は、走行状態検出手段が検出した走行状態と情報取得手段が取得した情報とに基づいて、警報領域の発生場所及び発生範囲を決定する。
【0016】
車外の明るさを判定可能な情報とは、車外の照度や天候情報や日時情報を含む。
【0017】
上記構成によれば、警報領域決定手段は、走行状態検出手段が検出した走行状態と情報取得手段が取得した情報とに基づいて、警報領域の発生場所及び発生範囲を決定するので、車両の走行状態と車外の明るさに応じた最適な警報領域を決定することができる。
【0018】
また、上記車輌用警報装置は、情報取得手段と、照射手段と、車外環境判定手段と、照射制御手段と、を備えてもよい。
【0019】
情報取得手段は、車外の明るさを判定可能な情報を取得する。照射手段は、警報領域に光を照射する照射状態と照射しない非照射状態とに設定可能である。車外環境判定手段は、車外の明るさが、噴射手段から噴射された粒子の視認が比較的容易な第1の状態か、或いは困難な第2の状態であるかを、情報取得手段が取得した情報に基づいて判定する。照射制御手段は、噴射手段が警報領域に粒子を噴射するとき、第1の状態であると車外環境判定手段が判定した場合は照射手段を非照射状態に設定し、第2の状態であると前記車外環境判定手段が判定した場合は照射手段を照射状態に設定する。
【0020】
上記構成によれば、車外環境判定手段によって、車外の明るさが、噴射手段から噴射された粒子の視認が比較的困難な状態であると判定された場合、照射手段は警報領域に光を照射するので、照射された光が粒子に反射されることによって、歩行者等に警報領域を視認させることができる。また、車外環境判定手段によって、車外の明るさが、噴射手段から噴射された粒子の視認が比較的容易な状態と判定された場合は、照射制御手段は照射手段を非照射状態に設定するので、必要のないときに照射手段を照射状態に設定することを防止し、省エネルギーを実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車外の第三者に対して進入禁止を報知すべき警報領域の発生場所及び発生範囲を視覚によって認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両用警報装置のブロック構成図である。
【図2】図1の車両用警報装置を搭載する車両の略側面図である。
【図3】図1の車両用警報装置を搭載し、警報領域に粒子を噴射している状態の車両の略上面図である。
【図4】図1の車両用警報装置を搭載し、警報領域に粒子を噴射し、且つ光を照射している状態の車両の略上面図である。
【図5】図1の車両用警報装置を搭載し、警報領域に粒子を噴射し、且つ光を照射している状態の車両の略背面図である。
【図6】噴射テーブルの一例を示す図である。
【図7】照射テーブルの一例を示す図である。
【図8】図1の車両用警報装置が実行する警報処理を示すフローチャートである。
【図9】図1の警報領域決定部が実行する警報領域決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態の車両用警報装置1は、車両2に搭載され、車外の第三者に対して進入禁止を報知すべき警報領域に、微細な水滴を霧状(スクリーン状)に噴射し、警報を発する。なお、図中Wは、噴射装置12によって粒子が噴射される噴射領域を、Lは照射装置13によって光が照射される照射領域を示す。
【0024】
図1に示すように、車両用警報装置1は、速度センサ3と、操舵角センサ4と、方向指示器5と、照度センサ6と、通信装置7と、計時部8と、物体検出装置9と、警報スイッチ10と、制御部11と、噴射装置12と、照射装置13と、を有している。
【0025】
速度センサ3は、車両2(図2参照)の走行速度を検出するためのセンサであり、所定時間毎に検出結果を含む速度信号を制御部11に出力する。
【0026】
操舵角センサ4は、車両2のステアリング(図示省略)に入力された操舵角を検知し、検知した操舵角を含む操舵角信号を制御部11へ出力する。操舵角センサ4は、車両2の直進状態において、操舵角を0度と検知するように設定されている。また、操舵角センサ4は、運転者によってステアリングが左方向に回転操作されたとき(車両2が左折するとき)はマイナスの値の操舵角を含む操舵角信号を制御部11へ出力し、ステアリングが右方向に回転操作されたとき(車両2が右折するとき)はプラスの値の操舵角を含む操舵角信号を制御部11へ出力する。
【0027】
上記のように速度センサ3と操舵角センサ4は、車両2の走行状態を検出する走行状態検出手段を構成する。
【0028】
方向指示器5は、車両2の右左折時に車両2の進路を指示するための装置であり、車両2のステアリング付近に取付けられたターンシグナルスイッチ(図示省略)を有する。方向指示器5は、運転者によるターンシグナルスイッチの操作に応じて、車両2の四隅に設置されたウィンカーランプを点滅させる。また、方向指示器5は、運転者によるターンシグナルスイッチの操作に応じて、操作内容(右折又は左折の指示)を示す方向指示信号を制御部11へ出力する。方向指示器5は、ターンシグナルスイッチが運転者によって操作されている間は所定時間毎に方向指示信号を出力する。
【0029】
照度センサ6は、車外の照度を計測するためのセンサであり、車室内のインストルメントパネル(図示省略)上に設置され、車両2の周囲の環境光の照度を検出する。照度センサ6は、所定時間毎に検出結果を含む照度信号を制御部11へ出力する。
【0030】
通信装置7は、車両2の運行管理を行う管理センターとの間で、ネットワークを介して、車両2の走行状態(走行速度や操舵角を含む)の送信や管理センターから天候情報の受信を行う。管理センターから受信する天候情報は、例えば、晴天、曇り、雨天を含む。なお、通信装置7は、上記情報の送受信を、移動通信ネットワークを利用して行ってもよい。
【0031】
計時部8は、日時を計時し、制御部11からの要求に応じて、現在の日付及び時刻情報(日時情報)を含む日時信号を制御部11に出力する。
【0032】
物体検出装置9は、車両2の側方及び後方周辺の所定領域内の物体を検出する装置であり、車両2の側部及び後部に取付けられた超音波センサ(図示省略)を有する。超音波センサが車両2の側方及び後方周辺の所定領域内の物体及び物体との距離を検出すると物体検出装置9は、車両2と物体との距離を含む物体検出信号を制御部11へ出力する。物体検出装置9は、超音波センサが物体を検出している間は、所定時間毎に物体検出信号を制御部11へ出力する。なお、上記所定領域は、上記警戒領域と等しい広さ又は上記警戒領域よりも広く設定される。また、超音波センサに代えて、発光素子と受光素子とからなる光センサを用いてもよい。
【0033】
警報スイッチ10は、車室内のインストルメントパネル上に設置される。警報スイッチ10は、運転者の押下操作に応じて、車両用警報装置1を起動状態と停止状態とに切り替えるスイッチ押下信号を制御部11へ出力する。なお、警報スイッチ10は、車両用警報装置1が起動状態のときに点灯する表示ランプ(図示省略)を有する。このため、運転者は、車両用警報装置1が起動中か、停止中かを把握した上で警報スイッチ10の押下操作を行うことができる。
【0034】
噴射装置12は、車両2に取付けられたタンク14と、ポンプ15と、噴射口16と、を有する。噴射装置12は、後述する噴射制御部22から噴射指示信号を受信すると、タンク14に貯留された水を、ポンプ15によって噴射口16に送り、加圧して、噴射口16から水の微細な粒子を霧状に噴射する。また、噴射制御部22から噴射終了指示信号を受信すると噴射を停止する。噴射装置12が所定時間中に噴射する水量は予め設定されている。噴射口16は、図2乃至図4に示すように、車両2の両側部に、6つずつ(合計12口)設けられる。車両2の側部の前方には、前方噴射口16aが上下に2つ設けられる。車両2の側部の前後方向略中央には、中央噴射口16bが上下に2つ設けられる。また、車両2の側部の後方には、後方噴射口16cが上下に2つ設けられる。噴射装置12は、所定時間中に噴射する水量を噴射制御部22の指示に応じて増減できる。水の粒子の大きさ及び水の粒子によって形成される霧の密度は、照射装置13から照射される光を効率よく屈折あるいは反射するように、また、形成された霧の内部及び周辺の歩行者等の視界を遮ることなく見通しが効くように予め設定されている。なお、ポンプ15は、水の粒子を噴射するための空気圧源として、エンジン(図示省略)に取付けられ、圧縮空気を貯留したエアタンク(図示省略)を利用してもよい。また、ポンプ15は、エンジンの廃熱を利用して水を水蒸気化し、水蒸気を噴射口16から霧状に噴射してもよい。また、タンク14は、図示しない車両2の上面に設けられた雨水回収口と連通し、上面に降り注いだ雨水を雨水回収口で回収し、貯留してもよい。また、タンク14は、走行中に車両2のエアコン(図示省略)から排出される、いわゆるビルジ水を貯留してもよい。
【0035】
照射装置13は、図5に示すように、車両2の上方に取付けられ下方に光を照射するLED(Light Emitting Diode)ランプを有する。LEDランプ17は、図2乃至図4に示すように、車両2の両側部に、3個ずつ、合計6個設けられる。車両2の側部の前方には、前方LEDランプ17aが設けられる。車両2の側部の前後方向略中央には、中央LEDランプ17bが設けられる。また、車両2の側部の後方には、後方LEDランプ17cが設けられる。照射装置13は、後述する照射制御部23から照射指示信号を受信すると、非照射状態から照射状態に移行し、所定の光量でLEDランプ17を点灯し、光を照射する。また、照射装置13は、照射制御部23から照射終了指示信号を受信すると、照射状態から非照射状態に移行し、LEDランプ17を消灯する。なお、照射装置13は、照射制御部23の指示に応じて、LEDランプ17の光量を増減させて点灯させることができる。また、照射装置13は、LEDランプ17の発光パターン、例えば、常時点灯や所定周期での点滅を照射制御部23の指示に応じて切り換えることができる。
【0036】
制御部11は、起動制御部18、車外環境判定部19、警報領域発生判定部20と、警報領域決定部21と、噴射制御部22と、照射制御部23と、記憶部24とを備える。また、図示しないCPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを備える。ROM及びRAMは、制御部11の記憶部24を構成し、ROMは、CPUによって読み出される種々のプログラム(起動制御プログラム、車外環境判定プログラム、警報領域発生判定プログラム、警報領域決定プログラム、噴射制御プログラム、照射制御プログラムを含む)や種々のデータ(後述の噴射テーブル25及び照射テーブル26を含む)を予め記憶している。なお、ROMに記憶される種々のデータは、実験やシミュレーションなどによって得られた測定値や理論値に基づいて設定される。また、これらのデータは、各プログラムに含まれた状態で記憶されてもよい。
【0037】
図6に示すように、噴射テーブル25には、後述する警報領域決定部21が決定する警報領域の発生場所及び発生範囲(「車両右側部全体」、「車両右側部の前方から略中央まで」、「車両右側部の前方」、「車両左側部全体」、「車両左側部の前方から略中央まで」、「車両左側部の前方」)に応じて、水の粒子を霧状に噴射する噴射口16が設定されている。例えば、「車両右側部全体」に対応する噴射口16として「全右側噴射口」が設定され、「車両右側部の前方から略中央まで」に対応する噴射口16として「右側前方噴射口及び右中央噴射口」が設定され、「車両右側部の前方」に対応する噴射口16として「右前方噴射口」が設定されている。また、「車両左側部全体」に対応する噴射口16として「全左側噴射口」が設定され、「車両左側部の前方から略中央まで」に対応する噴射口16として「左前方噴射口及び左中央噴射口」が設定され、「車両左側部の前方」に対応する噴射口16として「左前方噴射口」が設定されている。すなわち警報領域決定部21が決定する警報領域の発生範囲が広い程、噴射口16の数が多くなるように設定されている。
【0038】
図7に示すように、照射テーブル26には、後述する警報領域決定部21が決定する警報領域の発生場所及び発生範囲(「車両右側部全体」、「車両右側部の前方から略中央まで」、「車両右側部の前方」、「車両左側部全体」、「車両左側部の前方から略中央まで」、「車両左側部の前方」)に応じて、点灯し、光を照射するLEDランプ17が設定されている。例えば、「車両右側部全体」に対応するLEDランプ17として「全右側LEDランプ」が設定され、「車両右側部の前方から略中央まで」に対応するLEDランプ17として「右前方LEDランプ及び右中央LEDランプ」が設定され、また、「車両右側部の前方」に対応するLEDランプ17として「右前方LEDランプ」が設定されている。また、「車両左側部全体」に対応するLEDランプ17として「全左側LEDランプ」が設定され、「車両左側部の前方から略中央まで」に対応するLEDランプ17として「左前方LEDランプ及び左中央LEDランプ」が設定され、また、「車両左側部の前方」に対応するLEDランプ17として「左前方LEDランプ」が設定されている。すなわち警報領域決定部21が決定する警報領域の発生範囲が広い程、発光するLEDランプ17の数が多くなるように設定されている。
【0039】
RAMには、後述する警報領域決定部21が決定する警報領域の発生場所及び発生範囲(「車両右側部全体」、「車両右側部の前方から略中央まで」、「車両右側部の前方」、「車両左側部全体」、「車両左側部の前方から略中央まで」、「車両左側部の前方」)毎にフラグ設定領域が設定されている。すなわち、「車両右側部全体」に対応する右側部全体フラグ、「車両右側部の前方から略中央まで」に対応する右側部前方・中央フラグ、「車両右側部の前方」に対応する右側部前方フラグ、「車両左側部全体」に対応する左側部全体フラグ、「車両左側部の前方から略中央まで」に対応する左側部前方・中央フラグ、「車両左側部の前方」に対応する左側部前方フラグについて、それぞれの設定領域が設定されている。また、RAMには、車外環境フラグ設定領域と起動状態フラグ設定領域が設定されている。車外環境フラグは、後述する車外環境判定部19が、車外の明るさが噴射装置12から噴射された水の粒子の視認が比較的困難な第2の状態と判定した場合、オンに設定される。起動状態設定フラグは、後述する起動制御部18によって、車両用警報装置1が起動されるときにオンに、停止されるときにオフに設定される。
【0040】
また、RAMには、速度センサ3、操舵角センサ4、照度センサ6の検出結果及び通信装置7が受信する天候情報を記憶するデータ記憶領域が予め設定されている。データ記憶領域は、記憶可能なデータ数の上限(上限データ数)が予め設定された領域であり、記憶されているデータ数が上限データに達すると、制御部11は、新規の検出結果又は天候情報を記憶する際に、既に記憶されている検出結果及び天候情報のうち最初に記憶された最も古いものを削除し、新規の検出結果及び天候情報を記憶させる。
【0041】
CPUは、起動制御プログラムに従って起動制御処理を実行する起動制御部18、車外環境判定プログラムに従って車外環境判定処理を行う車外環境判定部19、警報領域発生判定プログラムに従って警報領域発生判定処理を実行する警報領域発生判定部20、警報領域決定プログラムに従って警報領域決定処理を実行する警報領域決定部21、噴射制御プログラムに従って噴射制御処理を行う噴射制御部22、照射制御プログラムに従って照射制御処理を行う照射制御部23として機能する。
【0042】
起動制御部18は、車両用警報装置1の起動及び停止を制御する。起動制御部18は、警報スイッチ10からスイッチ押下信号が制御部11に入力されると、入力時に車両用警報装置1が起動中のときは停止させ、停止中のときは起動させる。起動制御部18は、車両用警報装置1を起動させるときに記憶部24の起動状態フラグをオンに設定し、停止させるときにオフに設定する。
【0043】
車外環境判定部19は、車外の明るさが、噴射装置12から噴射された水の粒子の視認が比較的容易な第1の状態か、或いは困難な第2の状態であるかを、照度センサ6が検知した照度に基づいて判定する。具体的には、照度センサ6で検知した照度と予め設定した基準照度とを比較し、検知した照度が基準照度を超えている場合は、第1の状態と判定する。一方、検知した照度が基準照度以下の場合は、第2の状態と判定する。車外環境判定部19は、第2の状態と判定した場合、記憶部24の車外環境フラグをオンに設定する。基準照度は、車外環境判定プログラム上で規定されている。なお、基準照度を記憶部24に予め記憶しておき、上記判定の際に、社外環境判定部が記憶部24から読み出してもよい。なお、車外環境判定部19は、上記第1の状態か、第2の状態であるかを、通信装置7から天候情報を受信し、受信した天候情報に基づいて判定してもよい。この場合、例えば、天候情報が晴天を示す場合は、第1の状態と判定し、天候情報が曇り又は雨天を示すときは第2の状態と判定する。また、車外環境判定部19は、計時部8に現在日時情報の出力を要求し、計時部8から受信する日時信号に含まれる現在日時情報に基づいて上記第1の状態か、第2の状態かを判定してもよい。例えば、日時情報が、日中の時間帯(午前5時から午後6時)に含まれるときは第1の状態と判定し、夜間の時間帯(午後6時から午前5時)に含まれるときは第2の状態と判定する。日中の時間帯及び夜間の時間帯は、車外環境判定プログラム上で、季節(例えば、4月から9月は夏季、10月から3月は冬季)ごとに規定(例えば、夏季の日中の時間帯として午前5時から午後6時が、冬季の日中の時間帯として午前6時から午後5時が規定されている)されており、車外環境判定部19は、上記判定の際に取得した日時信号に含まれる日付情報に基づき季節及び季節に対応する時間帯を特定し、判定を行う。
【0044】
以上のように、照度センサ6が検出する照度、通信装置7が受信する天候情報及び計時部8が計時する日時情報は、車外の明るさを判定可能な情報であるため、照度センサ6、通信装置7及び計時部8は、車外の明るさを判定可能な情報を取得する情報取得手段を構成する。
【0045】
警報領域発生判定部20は、上記警報領域が発生したかを判定する。具体的には、方向指示器5から出力された方向指示信号が制御部11に入力されると、警報領域発生判定部20は、方向指示信号を検知し、また、記憶部24から最新の走行速度を読み出し、読み出した走行速度と予め設定されている第1基準速度(例えば、時速15キロメートル)とを比較する。走行速度が第1基準速度以下の場合、警報領域発生判定部20は、記憶部24の起動状態フラグを参照し、フラグがオンのとき、警報領域が発生したと判定する。一方で、読み出した走行速度が第1基準速度を超えていた場合、又は記憶部24の起動状態フラグがオフのときは、警報領域発生判定部20は、警報領域が発生していないと判定する。第1基準速度は、警報領域発生プログラム上で規定されている。なお、第1基準速度を記憶部24に予め記憶しておき、上記判定の際に、警報領域発生判定部20が記憶部24から読み出してもよい。
【0046】
警報領域決定部21は、警報領域発生判定部20が警報領域が発生したと判定すると、警報領域の発生場所及び発生範囲を決定する。具体的には、記憶部24から最新の操舵角を読み出し、読み出した操舵角に基づき、警報領域の発生場所を車両2の側部の左右いずれかに決定する。例えば、操舵角がマイナスの値のときは、警報領域の発生場所を車両2の左側部に決定する。一方で、操舵角がプラスの値のときは、警報領域の発生場所を車両2の右側部に決定する。また、警報領域決定部21は、記憶部24から読み出した最新の操舵角及び走行速度に基づいて、警報領域の発生範囲を決定する。具体的には、操舵角の絶対値が基準角度(例えば、30度)を超え、且つ走行速度が第2基準速度(例えば、時速10キロ)を超えていた場合は、発生範囲を「車両側部全体」に決定する。操舵角の絶対値が基準角度を超え、且つ走行速度が第2基準速度以下の場合は、発生範囲を「車両側部の前方から略中央まで」と決定する。また、操舵角の絶対値が基準角度以下で、且つ走行速度が第2基準速度以下の場合は、発生範囲を「車両側部の前方」と決定する。基準角度及び第2基準速度は、警報領域決定プログラム上で規定されている。なお、基準角度及び第2基準速度を記憶部24に予め記憶しておき、上記決定の際に、警報領域決定部21が記憶部24から読み出してもよい。また、警報領域決定部21は、決定した警報領域の発生場所及び発生範囲に応じて、記憶部24の右側部全体フラグ、右側部前方・中央フラグ、右側部前方フラグ、左側部全体フラグ、左側部前方・中央フラグ、左側部前方フラグのいずれかを、オンに設定する。
【0047】
また、警報領域決定部21は、警報領域の発生範囲を「車両側部の前方から略中央まで」、又は、「車両側部の前方」と決定すると、記憶部24の車外環境フラグを参照し、車外環境フラグがオンのとき、決定した警報領域の発生範囲を「車両側部全体」に変更する。すなわち、警報領域決定部21は、車外環境判定部19が車外の明るさが噴射装置12から噴射された水の粒子の視認が比較的困難な第2の状態であると判定したとき、警報領域の発生範囲を最大の範囲である「車両側部全体」に決定する。
【0048】
噴射制御部22は、警報領域発生判定部20が警報領域が発生したと判定したとき、噴射装置12に、噴射指示信号を送信する。具体的には、噴射制御部22は、記憶部24の右側部全体フラグ、右側部前方・中央フラグ、右側部前方フラグ、左側部全体フラグ、左側部前方・中央フラグ、左側部前方フラグを参照し、また、記憶部24に記憶されている噴射テーブル25を参照し、オン状態のフラグが示す警報領域の発生場所及び発生範囲に対応する噴射口16を特定する。噴射制御部22は、特定した噴射口16から水の粒子を霧状に噴射するよう指示する噴射指示信号を噴射装置12に送信する。例えば、記憶部24の左側部全体フラグがオン状態のとき、噴射制御部22は、全左側噴射口から水の粒子を霧状に噴射するよう噴射指示信号を噴射装置12へ送信する。
【0049】
照射制御部23は、噴射装置12が警報領域に粒子を噴射するとき、車外環境判定部19が第1の状態と判定した場合は、照明装置を、光を照射しない非照射状態に設定する。一方、車外環境判定部19が第2の状態と判定した場合は、照明装置を、光を照射する照射状態に設定する。具体的には、照射制御部23は、記憶部24の車外環境フラグを参照し、車外環境フラグがオフのとき、すなわち照射判定部によって車外の明るさが第1の状態(噴射装置12から噴射された水の粒子の視認が比較的容易な状態)と判定されたときは、照明装置を、光を照射しない非照射状態のまま維持する。一方、記憶部24の車外環境フラグがオンのとき、すなわち照射判定部によって車外の明るさが第2の状態(噴射装置12から噴射された水の粒子の視認が比較的困難な状態)と判定されたときは、記憶部24の右側部全体フラグ、右側部前方・中央フラグ、右側部前方フラグ、左側部全体フラグ、左側部前方・中央フラグ、左側部前方フラグを参照し、また、記憶部24に記憶されている照射テーブル26を参照し、オン状態のフラグが示す警報領域の発生場所及び発生範囲に対応するLEDランプ17を特定する。照射制御部23は、特定したLEDランプ17を発光し、警報領域に光を照射するよう照射指示信号を照射装置13に送信する。例えば、記憶部24の左側部全体フラグがオン状態のとき、照射制御部23は、全左側LEDランプを発光し、警報領域に光を照射するよう照射指示信号を噴射装置12へ送信する。
【0050】
次に本車両用警報装置1の警報処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
図8のステップS1において、方向指示器5から出力される方向指示信号が制御部11へ入力されると、警報領域発生判定部20は、方向指示信号を検知し、ステップS2に移行する。
【0052】
ステップS2において、警報領域発生判定部20は、記憶部24に記憶されている最新の走行速度を読み出し、ステップS3に移行する。
【0053】
ステップS3において警報領域発生判定部20は、読み出した走行速度と予め設定されている第1基準速度(例えば、時速15キロメートル)とを比較し、走行速度が第1基準速度以下か否かを判定する。走行速度が第1基準速度以下と判定する場合(ステップS3:YES)は、ステップS4に移行する。一方で、読み出した走行速度が第1基準速度を超えている判定する場合(ステップS3:NO)は、警報領域発生判定部20は、警報領域が発生していないと判定し、車両用警報装置1は、警報処理を終了する。
【0054】
ステップS4において、警報領域発生判定部20は、記憶部24の起動状態フラグを参照し、起動状態フラグがオンか否かを判定する。警報領域発生判定部20は、起動状態フラグがオンと判定する場合(ステップS4:YES)は、警報領域が発生したと判定し、ステップS5に移行する。一方で、起動状態フラグがオフと判定する場合(ステップS4:NO)は、警報領域発生判定部20は、警報領域が発生していないと判定し、車両用警報装置1は、警報処理を終了する。
【0055】
ステップS5において、警報領域決定部21は、警報領域決定処理を実行し、警報領域を決定する。以下、警報領域決定部21が実行する警報領域決定処理について、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
図9のステップS11において、警報領域決定部21は、記憶部24に記憶されている最新の走行速度と操舵角とを読み出し、ステップS12に移行する。
【0057】
ステップS12において、警報領域決定部21は、読み出した操舵角に基づいて、警報領域の発生場所を決定し、ステップS13に移行する。例えば、読み出した操舵角がマイナス45度のときは、警報領域の発生場所を車両2の左側部に決定する。
【0058】
ステップS13において、警報領域決定部21は、読み出した操舵角の絶対値が基準角度(例えば、30度)を超えているか否かを判定する。超えていると判定する場合(ステップS13:YES)は、ステップS14に移行する。一方で、操舵角の絶対値が基準角度以下であると判定する場合(ステップS13:NO)は、ステップS17に移行する。
【0059】
ステップS14において、警報領域決定部21は、読み出した走行速度が第2基準速度(例えば、時速10キロ)を超えているか否かを判定する。超えていると判定する場合(ステップS14:YES)は、ステップS15に移行する。一方で、走行速度が第2基準速度以下であると判定する場合(ステップS14:NO)は、ステップS16に移行する。
【0060】
ステップS15において、警報領域決定部21は、警報領域の発生範囲を「車両側部全体」に決定し、警報領域決定処理を終了する。したがって、例えば運転者が車両2を左折させるために、ステアリングを左に45度回転しつつ、車両2の走行速度を時速12キロに減速させた場合、警報領域決定部21は、警報領域の発生場所及び警報領域の発生範囲を「車両左側部全体」に決定する。また、警報領域決定部21は、記憶部24の左側部全体フラグをオンに設定する。
【0061】
ステップS16において、警報領域決定部21は、警報領域の発生範囲を「車両側部の前方から略中央まで」に決定し、ステップS18に移行する。したがって、例えば運転者が車両2を左折させるために、ステアリングを左に45度回転しつつ、車両2の走行速度を時速8キロに減速させた場合、警報領域決定部21は、警報領域の発生場所及び警報領域の発生範囲を「車両左側部の前方から略中央まで」に決定する。また、警報領域決定部21は、記憶部24の左側部前方・中央フラグをオンに設定する。
【0062】
ステップS17において、警報領域決定部21は、警報領域の発生範囲を「車両側部の前方」に決定し、ステップS18に移行する。したがって、例えば運転者が車両2を左折させるために、ステアリングを左に20度回転させた場合、警報領域決定部21は、警報領域の発生場所及び警報領域の発生範囲を「車両左側部の前方」に決定する。また、警報領域決定部21は、記憶部24の左側部前方フラグをオンに設定する。
【0063】
ステップS18において、警報領域決定部21は、記憶部24の車外環境フラグを参照し、車外環境フラグがオンか否かを判定する。車外環境フラグがオンと判定する場合(ステップS18:YES)は、ステップS19に移行する。一方で、車外環境フラグがオフと判定する場合(ステップS18:NO)は、警報領域決定処理を終了する。
【0064】
ステップS19において、警報領域決定部21は、ステップS16又はステップS17で決定した警報領域の発生範囲を「車両側部全体」に変更する。すなわち、警報領域決定部21は、例えばステップS16及びステップS17の上記例において決定した警報領域の発生場所及び発生範囲である「車両左側部の前方から略中央まで」及び「車両左側部の前方」を、「車両左側部全体」に変更し、決定し、記憶部24の左側部全体フラグをオンに設定し、警報領域決定処理を終了する。
【0065】
図8のフローチャートに説明を戻すと、ステップS5で警報領域決定部21が警報領域の発生場所及び発生範囲を決定すると、ステップS6に移行する。
【0066】
ステップS6において、噴射制御部22は、記憶部24の右側部全体フラグ、右側部前方・中央フラグ、右側部前方フラグ、左側部全体フラグ、左側部前方・中央フラグ、左側部前方フラグを参照し、また、記憶部24に記憶されている噴射テーブル25を参照し、オン状態のフラグが示す警報領域の発生範囲に対応する噴射口16を特定する。噴射制御部22は、特定した噴射口16から水の粒子を霧状に噴射するよう指示する噴射指示信号を噴射装置12に送信し、噴射指示信号を受信した噴射装置12は噴射指示信号に応じた噴射口16から水の粒子を噴射し(図3乃至図5参照)、ステップS7に移行する。
【0067】
ステップS7において、照射制御部23は、記憶部24の車外環境フラグを参照し、車外環境フラグがオンか否かを判定する。オンと判定する(ステップS7:YES)、ステップS8に移行する。一方で、オフと判定する場合(ステップS7:NO)は、ステップS9に移行する。
【0068】
ステップS8において、照射制御部23は、記憶部24の右側部全体フラグ、右側部前方・中央フラグ、右側部前方フラグ、左側部全体フラグ、左側部前方・中央フラグ、左側部前方フラグを参照し、また、記憶部24に記憶されている照射テーブル26を参照し、オン状態のフラグが示す警報領域の発生場所及び発生範囲に対応するLEDランプ17を特定する。照射制御部23は、照射制御部23は、特定したLEDランプ17を発光し、警報領域に光を照射するよう照射指示信号を照射装置13に送信し、照射装置13を照射状態に設定し、照射状態に設定された照射装置13は照射指示信号に応じたLEDランプ17を点灯させ(図4及び図5参照)、ステップS9に移行する。
【0069】
ステップS9において、警報領域発生判定部20は、方向指示信号の検知が継続しているか否かを判定する。方向指示信号の検知が継続していると判定する場合(ステップS9:YES)は、ステップS5に移行する。一方で、検知が継続していないと判定する場合(ステップS9:NO)は、ステップS10に移行する。
【0070】
ステップS10において、噴射制御部22は、噴射終了指示信号を送信し、また、照射制御部23がステップS7で照射装置13に照射指示信号を送信している場合は、照射終了指示信号を送信し、警報処理を終了する。噴射終了指示信号を受領した噴射装置12は噴射を停止する。また、照射終了指示信号を受信した照射装置13はLEDランプ17を消灯する。
【0071】
本実施形態によれば、警報領域発生判定部20が、方向指示信号を検知し、また、走行速度が第1基準速度以下で、記憶部24の起動状態フラグがオンのとき、警報領域が発生したと判定するとき、噴射装置12は、噴射制御装置から噴射指示信号を受信し、タンク14に貯留された水を、ポンプ15によって噴射口16に送り、加圧して、噴射口16から警報流域へ水の粒子を霧状に所定時間噴射する。このため、警報領域に噴射された水の粒子によって、警報領域の発生場所及び発生範囲を歩行者等に視認させることができる。したがって、歩行者等に警報領域の進入前に進入を防止するような行動を促すことができる。また、歩行者等に警報領域内の歩行者等に警報領域内から脱出するための適切な行動を促すことができる。
【0072】
また、車両用警報装置1の警報領域決定部21は、操舵角及び走行速度に基づき、警報領域の発生場所及び発生範囲を決定し、噴射制御部22は、警報領域の発生場所及び発生範囲に対応する噴射口16から水の粒子を霧状に噴射するよう指示する噴射指示信号を噴射装置12に送信し、噴射指示信号を受信した噴射装置12は、水の粒子を警報領域の発生場所及び発生範囲に対応する噴射口16から警報領域に噴射する。このため、車両2の走行状態に応じた最適な警報領域を決定することができる。また、この警報領域に水の粒子を噴射することによって、歩行者等に警報領域を視認させることができる。
【0073】
また、車両用警報装置1の警報領域決定部21は、車外環境判定部19が車外の明るさが噴射装置12から噴射された水の粒子の視認が比較的困難な第2の状態であると判定したとき、操舵角及び走行速度に基づき、決定した警報領域の発生場所及び発生範囲の内、発生範囲を最大の範囲である「車両側部全体」に変更し、決定する。このため、車外環境判定部19が車外の明るさが噴射装置12から噴射された水の粒子の視認が比較的困難な状態のときは、警報領域の発生範囲を最大にすることによって、歩行者等が警報領域をより容易に視認できるようにすることができる。
【0074】
また、照射制御部23は、記憶部24の車外環境フラグを参照し、車外環境フラグがオフのとき、すなわち照射判定部によって車外の明るさが第1の状態(噴射装置12から噴射された水の粒子の視認が比較的容易な状態)と判定されたときは、照明装置を、光を照射しない非照射状態のまま維持する。一方、記憶部24の車外環境フラグがオンのとき、すなわち照射判定部によって車外の明るさが第2の状態(噴射装置12から噴射された水の粒子の視認が比較的困難な状態)と判定されたときは、警報領域に光を照射するよう照射指示信号を照射装置13に送信する。このため、車外の明るさが、噴射手段から噴射された粒子の視認が比較的困難な状態である場合、照射装置13は警報領域に光を照射するので、照射された光が粒子に反射されることによって、歩行者等に警報領域を視認させることができる。また、車外の明るさが、噴射手段から噴射された粒子の視認が比較的容易な状態である場合は、照射制御部23は照射装置13を非照射状態に設定するので、必要のないときに照射装置13のLEDランプ17から光を照射することを防止し、省エネルギーを実現できる。
【0075】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明に限定されることはない。
【0076】
例えば、起動制御部18は、物体検出装置9から出力される物体検出信号を常に監視し、物体検出信号が制御部11に入力されると車両用警報装置1を起動させ、物体検出信号が入力されなくなると車両用警報装置1を停止させてもよい。この場合、車両2の側方及び後方周辺の所定領域内に歩行者等が存在する場合は、物体検出装置9から物体検出信号が制御部11へ入力され、起動制御部18は車両用警報装置1を起動させるので、運転者等が警報スイッチ10の押下を忘れた場合であっても、車両警報装置1は警報を発することができる。また、車両2の側方及び後方周辺の所定領域内に歩行者等が存在しない場合は、物体検出信号は制御部11へ入力されず、起動制御部18は車両用警報装置1を停止させるので、警報を発する必要のないときの噴射装置12による水の粒子の噴射や照射装置13によるLEDランプ17の発光を防止できるので、省エネルギーを実現できる。
【0077】
また、本実施形態では、警報領域決定部21は、操舵角、走行速度、車外の明るさに基づき、予め設定されている複数の警報領域の発生範囲から最適な警報領域の発生範囲を決定する例を説明したが、操舵角、走行速度、車外の明るさをパラメータとし、所定の演算式に代入し、発生範囲を演算し、決定してもよい。
【0078】
また、本実施形態では、噴射装置12が噴射口16から所定量の水の粒子を霧状に所定時間噴射し、照射装置13が所定の光量でLEDランプ17を点灯し、警報領域に光を照射する例を説明したが、車両2の走行状態(操舵角、走行速度)や車外の明るさや物体検出装置9の検出結果に応じて、水量や光量を可変にしてもよい。例えば、操舵角が比較的大きく、また、走行速度が比較的速い場合は、水量や光量を増大させるようにしてもよい。また、物体検出装置9の検出結果が物体と車両2とが比較的接近している状態を示す場合は、水量や光量を増大させるようにしてもよい。水量及び光量の増大によって、歩行者はより容易に警報領域を視認することができる。
【0079】
また、本実施形態では、噴射装置12の噴射口16を車両2の両端部に6つずつ設け、また、照射装置13のLEDランプ17を車両2の両端部に3つずつ設ける例を説明したが、両端部に噴射口16とLEDランプ17を1つずつ設け、噴射装置12によって水量を、照射装置13によって光量を増減させて、変化する警報領域に適切に水の粒子を噴射し、光を照射するようにしてもよい。
【0080】
また、照射制御部23は、車両2の走行状態(操舵角、走行速度)や車外の明るさや物体検出装置9の検出結果に応じて、LEDランプ17の発光パターンを切り換えるように照射装置13に照射指示信号を送信し、照射装置13は照射指示信号に応じて発光パターンを切り換えてLEDランプ17を発光させてもよい。例えば、操舵角が比較的大きく、また、走行速度が比較的速い場合や物体検出装置9の検出結果が物体と車両2とが比較的接近している状態を示す場合は、歩行者等の注意を強く引くように、LEDランプ17の発光パターンを短い周期で点滅するように切り換えて発光させてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、噴射制御部22は、警報領域決定部21が決定した警報領域の発生場所及び発生範囲に対応する噴射口16を特定し、特定した噴射口16から水の粒子を霧状に噴射するよう指示する噴射指示信号を噴射装置12に送信する例を説明したが、車外環境判定部19が、車外の明るさが噴射装置12から噴射された水の粒子の視認が比較的困難な第2の状態であると判定したときは、噴射制御部22は、警報領域の発生範囲が最大の場合(すなわち車両右側部全体又は車両左側部全体)に対応する噴射口16(すなわち全右側噴射口又は全左側噴射口)から水の粒子を霧状に噴射するよう指示する噴射指示信号を噴射装置12に送信してもよい。
【0082】
また、本実施形態では、警報領域を車両2の側部に設ける例を説明したが、警報領域を車両後方に設けてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、LEDランプを有する照射装置13について説明したが、LEDランプに代えて、HIDランプ、ハロゲンランプ、蛍光ランプ、白熱電球などの他の光源を用いてもよい。また、照射装置13として、可視光レーザーを放射するレーザー装置を用いてもよい。
【0084】
すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、車外の第三者に対して警報を発する車両用の警報装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1:車両用警報装置
2:車両
3:速度センサ(走行状態検出手段)
4:操舵角センサ(走行状態検出手段)
5:方向指示器
6:照度センサ(情報取得手段)
7:通信装置(情報取得手段)
8:計時部(情報取得手段)
9:物体検出装置
10:警報スイッチ
11:制御部
12:噴射装置(噴射手段)
13:照射装置(照射手段)
14:タンク
15:ポンプ
16:噴射口
16a:前方噴射口
16b:中央噴射口
16c:後方噴射口
17:LEDランプ
17a:前方LEDランプ
17b:中央LEDランプ
17c:後方LEDランプ
18:起動制御部
19:車外環境判定部(車外環境判定手段)
20:警報領域発生判定部(警報領域発生判定手段)
21:警報領域決定部(警報領域決定手段)
22:噴射制御部
23:照射制御部(照射制御手段)
24:記憶部
25:噴射テーブル
26:照射テーブル
W:噴射領域
L:照射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用警報装置であって、
車外の第三者に対して進入禁止を報知すべき警報領域が前記車両の周囲に発生したか否かを判定する警報領域発生判定手段と、
前記警報領域が発生したと前記警報領域発生判定手段が判定したとき、所望の反射特性を有する粒子を前記警報領域に噴射する噴射手段と、を備えた
ことを特徴とする車両用警報装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用警報装置であって、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記警報領域が発生したと前記警報領域判定手段が判定したとき、前記走行状態検出手段が検出した走行状態に基づいて、前記警報領域の発生場所及び発生範囲を決定する警報領域決定手段と、を備え、
前記噴射手段は、前記警報領域決定手段が決定した警報領域に前記粒子を噴射する
ことを特徴とする車両用警報装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用警報装置であって、
車外の明るさを判定可能な情報を取得する情報取得手段を備え、
前記警報領域決定手段は、前記走行状態検出手段が検出した走行状態と前記情報取得手段が取得した情報とに基づいて、前記警報領域の発生場所及び発生範囲を決定する
ことを特徴とする車両用警報装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の車両用警報装置であって、
車外の明るさを判定可能な情報を取得する情報取得手段と、
前記警報領域に光を照射する照射状態と照射しない非照射状態とに設定可能な照射手段と、
車外の明るさが、前記噴射手段から噴射された粒子の視認が比較的容易な第1の状態か、或いは困難な第2の状態であるかを、前記情報取得手段が取得した情報に基づいて判定する車外環境判定手段と、
前記噴射手段が前記警報領域に粒子を噴射するとき、前記第1の状態であると前記車外環境判定手段が判定した場合は前記照射手段を前記非照射状態に設定し、前記第2の状態であると前記車外環境判定手段が判定した場合は前記照射手段を前記照射状態に設定する照射制御手段と、を備えた
ことを特徴とする車両用警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−216132(P2012−216132A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81974(P2011−81974)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】