説明

車両用通信装置

【課題】狭域通信回線および広域通信回線の双方を確立可能な通信装置において、特に広域通信回線のスループットの低下を抑える。
【解決手段】車両用通信装置10は、狭域通信回線確立処理部21によって、車両の車室に持ち込まれた携帯電話機100との間に狭域通信回線を確立し、広域通信回線確立処理部22によって、車両の外部に存在するアクセスポイント200との間に広域通信回線を確立する。そして、車両が停車したことを停車検出処理部23によって検出し、この停車検出処理部23が車両の停車を検出した場合に、狭域通信回線確立処理部21が確立している狭域通信回線を狭域通信回線切断処理部24によって切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室に持ち込まれた通信機器との間に狭域通信回線を確立可能であり、且つ、車両の外部に存在するアクセスポイントとの間に広域通信回線を確立可能な車両用通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1,2に開示されているように、車両の車室に持ち込まれた例えば携帯電話機などの通信機器との間に狭域通信回線としてBluetooth通信回線(Bluetooth:登録商標)を確立する通信装置が考えられている。
また、例えば特許文献3に開示されているように、車両の外部に存在する例えばカフェ、コンビニエンスストア、ディーラなどに設置された無線通信用のアクセスポイント、いわゆるホットスポットとの間に広域通信回線を確立する通信装置が考えられている。
【0003】
このような広域通信回線の確立に関する規格のうちIEEE802.11b、IEEE802.11g、IEEE802.11nは、Bluetooth通信回線に使用される2.4GHzの通信帯域を使用する。そのため、IEEE802.11b、IEEE802.11g、IEEE802.11nによる広域通信回線とBluetoothによる狭域通信回線とを同時に使用する場合には、例えば、それぞれに使用する通信アンテナ間の距離を離したり、通信制御を時分割で行ったりすることで対処することが考えられている。
【0004】
ところが、このような対処では、狭域通信回線による通信動作の分、広域通信回線のスループットが低下してしまう。特に広域通信回線では、アクセスポイントを介して大容量のデータを通信することが想定されている。そのため、狭域通信回線および広域通信回線の双方を確立可能な通信装置においては、狭域通信回線による通信動作に伴う広域通信回線のスループットの低下をいかに抑えるかが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−287321号公報
【特許文献2】特開2011−087026号公報
【特許文献3】特開2003−309865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、狭域通信回線および広域通信回線の双方を確立可能な通信装置において、特に広域通信回線のスループットの低下を抑えることができる車両用通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
車両の外部に存在するアクセスポイントとの通信、つまり、広域通信回線によるアクセスポイントとの通信は、車両が一時的にアクセスポイントに近接する場合や車両が一時的に停車した場合ではなく、車両がある程度の時間停車している場合に行うと効率的である。そこで、本発明では、車両がある程度の時間停車している場合に、広域通信回線のスループットの低下を抑えるための制御を実行するように構成した。
【0008】
即ち、請求項1に記載した発明によれば、車両用通信装置は、狭域通信回線確立手段によって、車両の車室に持ち込まれた通信機器との間に狭域通信回線を確立し、広域通信回線確立手段によって、車両の外部に存在するアクセスポイントとの間に広域通信回線を確立する。そして、車両用通信装置は、車両が停車したことを停車検出手段によって検出し、この停車検出手段が車両の停車を検出した場合に、狭域通信回線確立手段が確立している狭域通信回線を狭域通信回線切断手段によって切断する。
この構成によれば、車両が停車している場合、つまり、広域通信回線によるアクセスポイントとの通信を効率的に行うことができる場合には、狭域通信回線が切断されるようになり、これにより、狭域通信回線による通信動作に伴う広域通信回線のスループットの低下を抑えることができる。
【0009】
この場合、請求項2に記載した発明のように、停車検出手段は、車両が「駐車」した場合に当該車両の停車を検出する構成とするとよい。これにより、車両の外部に存在するアクセスポイントとの間に広域通信回線を確立する処理、さらには、狭域通信回線を切断して広域通信回線のスループットの低下を抑える処理を、車両がある程度の長い時間継続して停車する場合に実行することができる。また、例えば信号待ちなどにより車両が一時的に停車した場合、つまり、広域通信回線によるアクセスポイントとの通信が不要な場合に、狭域通信回線が無用に切断されてしまうことを回避することができる。
【0010】
請求項3に記載した発明によれば、車両用通信装置は、通信機器が携帯電話機である場合に当該携帯電話機との間でハンズフリー通話を実行する機能、いわゆるハンズフリー通話機能を備える。そして、車両用通信装置は、停車検出手段が車両の停車を検出したときにハンズフリー通話が実行されている場合には、当該ハンズフリー通話が終了した後に、または、通話を継続するために必要な通話継続情報を携帯電話機に転送した後に、狭域通信回線切断手段によって狭域通信回線を切断する。
【0011】
車両の停車に伴い直ちにハンズフリー通話が切断されてしまうのでは、ユーザにとって使い勝手が悪くなる場合が有り得る。この請求項3に記載した発明は、車両が停車したとしても、ハンズフリー通話を実現する狭域通信回線を直ちに切断するのではなく、当該ハンズフリー通話が終了するまで、あるいは、携帯電話機で通話を継続可能とするまでは、狭域通信回線が確立された状態を維持する。これにより、車両の停車に伴い直ちにハンズフリー通話が切断されてしまうことを回避することができ、使い勝手の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用通信装置の機能ブロック図
【図2】アクセスポイントの一覧の表示例を示す図
【図3】動作内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、車両用通信装置10の構成を概略的に示す機能ブロック図である。この車両用通信装置10は、通信機能がオンに設定されている場合に、車両の車室内に持ち込まれた例えば携帯電話機100などの通信機器との間に無線の狭域通信回線を確立し、その携帯電話機100との間で例えばハンズフリー通話などの種々の動作を実行したり、種々の情報を相互に送受信したりする装置である。また、この車両用通信装置10は、通信機能がオンに設定されている場合に、車両の外部に存在する例えばカフェ、コンビニエンスストア、ディーラなどに設置された無線通信用のアクセスポイント200、いわゆるホットスポットとの間に無線の広域通信回線を確立し、そのアクセスポイント200から例えば、音声情報や映像情報などの各種のコンテンツ情報、渋滞情報や工事情報などの交通情報、周辺で開催されているイベント情報など種々の情報を受信する装置である。即ち、この車両用通信装置10は、狭域通信回線および広域通信回線の双方を確立可能な通信装置である。
【0014】
この車両用通信装置10は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータを主体として構成された制御部11を備える。この制御部11には、広域無線通信部12、狭域無線通信部13、記憶部14、表示部15、操作入力部16、ハンズフリー機能部17などが接続されている。また、この制御部11は、CPUにおいて制御プログラムを実行することにより、狭域通信回線確立処理部21、広域通信回線確立処理部22、停車検出処理部23、狭域通信回線切断処理部24、広域通信回線切断処理部25、ハンズフリー通話実行処理部26、アクセスポイント検出処理部27、アクセスポイント表示処理部28、アクセスポイント抽出処理部29、優先アクセスポイント設定処理部30をソフトウェアによって仮想的に実現する。
【0015】
狭域通信回線確立処理部21は、特許請求の範囲に記載した狭域通信回線確立手段に相当し、広域通信回線確立処理部22は、特許請求の範囲に記載した広域通信回線確立手段に相当し、停車検出処理部23は、特許請求の範囲に記載した停車検出手段に相当し、狭域通信回線切断処理部24は、特許請求の範囲に記載した狭域通信回線切断手段に相当し、ハンズフリー通話実行処理部26は、特許請求の範囲に記載したハンズフリー通話実行手段に相当する。
【0016】
広域無線通信部12は、車両の外部に存在するアクセスポイント200との間に無線の広域通信回線を確立する通信モジュールである。車両用通信装置10は、この広域通信回線を介して外部のアクセスポイント200から種々の情報を受信可能となっている。この広域通信回線としては、例えばWi−Fi通信回線(Wi−Fi:登録商標)などが考えられる。
【0017】
狭域無線通信部13は、車両の車室内に持ち込まれた例えば携帯電話機100などの通信機器との間に狭域通信回線を確立する通信モジュールである。車両用通信装置10は、この狭域通信回線を介して携帯電話機100との間で各種の情報を送受信可能となっている。この狭域通信回線としては、例えばBluetooth通信回線(Bluetooth:登録商標)などが考えられる。なお、上記の広域通信回線は、この狭域通信回線として採用される通信回線、この場合、Bluetooth通信回線とは異なる通信回線であればよい。従って、広域通信回線には、例えばWANやLANなどの通信回線も含まれる。
【0018】
記憶部14は、例えばハードディスクドライブなどの不揮発性の記憶媒体からなり、各種データを記憶する記憶領域を有して構成されている。制御部11は、広域無線通信部12を介して外部のアクセスポイント200から受信した各種の情報や、狭域無線通信部13を介して携帯電話機100から受信した各種の情報を、この記憶部14に記憶するようになっている。表示部15は、例えば液晶や有機ELなどのディスプレイ装置を有して構成されている。この表示部15には、例えば各種の操作説明用の画面や各種の設定用の画面、さらには、アクセスポイント200や携帯電話機100から取得した各種の情報などが表示される。操作入力部16は、表示部15の画面の近傍に設けられているメカニカルスイッチや、表示部15の画面に設けられているタッチパネルスイッチなど各種のスイッチ群から構成されている。ユーザは、操作入力部16の各スイッチを用いて各種の設定操作が可能である。
【0019】
ハンズフリー機能部17は、周知のハンズフリー機能を提供する機能ブロックであり、ユーザが発した音声をマイクロホン17aにより集音して変調処理し、その音声情報を狭域通信回線を介して送話音声情報として携帯電話機100に送信する機能、携帯電話機100から狭域通信回線を介して受信した受話音声情報を復調処理し、その音声をスピーカ17bから出力する機能、エコーをキャンセルする機能、通話相手の電話番号など通話に関する種々の情報を携帯電話機100との間で送受信する機能などを有する。
【0020】
狭域通信回線確立処理部21は、狭域無線通信部13を介して、車両の車室内に持ち込まれた例えば携帯電話機100などの通信機器との間に無線の狭域通信回線を確立する処理を実行する。
広域通信回線確立処理部22は、広域無線通信部12を介して、車両の外部に存在するアクセスポイント200との間に無線の広域通信回線を確立する処理を実行する。
【0021】
停車検出処理部23は、車両用通信装置10が搭載された車両つまり自車両が「停車」したことを検出する。この場合、停車検出処理部23は、車両が「駐車」した場合に当該車両の停車を検出するように構成されており、例えば、図示しない車両のギアシフトがパーキングあるいはニュートラルに入った場合、図示しない車両の速度センサが検出する車両の速度が、所定時間以上連続して所定値以下となった場合、図示しない車両のサイドブレーキが操作された場合などに、車両が「駐車した」と判断するように構成されている。
【0022】
狭域通信回線切断処理部24は、停車検出処理部23が車両の「停車」、この場合、車両の「駐車」を検出した場合に、狭域通信回線確立処理部21が確立している狭域通信回線を切断する処理を実行する。なお、この狭域通信回線切断処理部24は、ユーザが狭域通信回線の切断指示を操作入力部16を介して車両用通信装置10に入力した場合にも、狭域通信回線を切断する処理を実行するようになっている。
広域通信回線切断処理部25は、例えば、アクセスポイント200との情報通信が終了した場合やユーザが広域通信回線の切断指示を操作入力部16を介して車両用通信装置10に入力した場合などに、広域通信回線確立処理部22が確立した広域通信回線を切断する処理を実行する。
【0023】
ハンズフリー通話実行処理部26は、狭域通信回線確立処理部21が携帯電話機100との間に狭域通信回線を確立した場合には、ハンズフリー機能部17を介して、当該携帯電話機100との間でいわゆるハンズフリー通話を実行する。なお、上記の狭域通信回線切断処理部24は、停車検出処理部23が車両の「停車」を検出したときにハンズフリー通話実行処理部26が携帯電話機100との間でハンズフリー通話を実行している場合には、当該ハンズフリー通話が終了した後に、または、当該通話を継続するために必要な通話継続情報を携帯電話機100に転送した後に、狭域通信回線を切断するようになっている。この通話継続情報には、例えば、通話相手の電話番号、狭域通信回線の切断時点において車両用通信装置10が有している送話音声情報、受話音声情報などが含まれる。この通話継続情報を受信した携帯電話機100は、狭域通信回線が切断されたとしても、この通話継続情報に基づいて当該携帯電話機100単独で通話を継続することが可能である。
アクセスポイント検出処理部27は、広域通信回線確立処理部22が広域通信回線を確立可能なアクセスポイント200、つまり、自車両を中心に設定された所定の通信可能エリア内に存在するアクセスポイント200を、常時あるいは定期的に検出する。
【0024】
アクセスポイント表示処理部28は、アクセスポイント検出処理部27が検出したアクセスポイント200の一覧を表示部15にリスト表示する。図2に示すように、この一覧には、アクセスポイント検出処理部27が検出した各アクセスポイント200に対応付けて、各アクセスポイント200の電界強度、つまり、各アクセスポイント200との広域通信回線の確立のし易さを示す電界強度情報Aや、各アクセスポイント200のセキュリティーの設定の有無を示すセキュリティー設定情報Bなどが表示される。なお、図2に示す符号Cは、画面をスクロールするためのスクロールバーである。また、各アクセスポイント200の左部に設けられたチェックボックスDは、詳しくは後述するように、ユーザが各アクセスポイント200の何れかを優先アクセスポイントとして選択して設定する場合にタッチ操作する要素である。
【0025】
アクセスポイント抽出処理部29は、アクセスポイント表示処理部28が表示する各アクセスポイント200の一覧から通信回線を確立するアクセスポイント200を抽出する。この場合、アクセスポイント表示処理部28が表示する各アクセスポイント200の一覧は、それぞれのアクセスポイント200ごとにタッチパネルスイッチ、つまり、操作入力部16の一部として表示されている。そして、所望のアクセスポイント200が表示されている部分をユーザがタッチ操作することに応じて、アクセスポイント抽出処理部29は、そのタッチ操作された部分に対応するアクセスポイント200を抽出するように構成されている。
【0026】
優先アクセスポイント設定処理部30は、アクセスポイント検出処理部27が検出した各アクセスポイント200のうち少なくとも何れか1つを、優先して広域通信回線を確立する優先アクセスポイントとして設定する。この優先アクセスポイント設定処理部30は、例えば、直近に広域通信回線を確立したアクセスポイント200を自動的に優先アクセスポイントとして設定したり、あるいは、ユーザが操作入力部16の一部である上記したチェックボックスDを介して選択したアクセスポイント200を優先アクセスポイントとして設定したりすることが可能である。なお、上記したアクセスポイント表示処理部28は、アクセスポイント検出処理部27が検出したアクセスポイント200の一覧に優先アクセスポイントが含まれる場合には、図2に示すように、その優先アクセスポイントをリスト内にて強調表示するように構成されている。この強調表示の態様としては、例えば図2に示すように優先アクセスポイントの背面を異なる色で表示したり、あるいは、優先アクセスポイントが表示されている部分を点滅させたり、優先アクセスポイントの名称を太くして表示したりするなど、種々の表示態様を採用することができる。
【0027】
次に、上記のように構成された車両用通信装置10の動作について図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
車両用通信装置10の制御部11は、当該車両用通信装置10が搭載された車両が「駐車」したか否かを監視している(ステップS1)。そして、制御部11は、車両が「駐車したこと」を検出すると(ステップS1:YES)、通信機能が「オン」されているか否かを判断する(ステップS2)。
制御部11は、通信機能が「オフ」されている場合(ステップS2:NO)には、この処理を終了する。一方、制御部11は、通信機能が「オン」されている場合(ステップS2:YES)には、車両の「駐車」を検出してから所定時間、例えば、5秒程度のうちにアクセスポイント検出処理部27によって検出されたアクセスポイント200の一覧を作成する(ステップS3)。そして、制御部11は、そのアクセスポイント200の一覧に優先アクセスポイントが含まれているか否かを判断する(ステップS4)。
【0028】
制御部11は、アクセスポイント200の一覧に優先アクセスポイントが含まれている場合(ステップS4:YES)には、例えば携帯電話機100などの通信機器との間に無線の狭域通信回線が確立されているか否かを判断する(ステップS5)。そして、制御部11は、通信機器との間に無線の狭域通信回線が確立されている場合(ステップS5:YES)には、狭域通信回線切断処理(ステップS6)を実行して当該狭域通信回線を切断する。そして、制御部11は、アクセスポイント200の一覧に含まれる優先アクセスポイントとの間に無線の広域通信回線を確立(ステップS7)して、この処理を終了する。一方、制御部11は、通信機器との間に無線の狭域通信回線が確立されていない場合(ステップS5:NO)には、狭域通信回線切断処理(ステップS6)を実行することなく、アクセスポイント200の一覧に含まれる優先アクセスポイントとの間に無線の広域通信回線を確立(ステップS7)して、この処理を終了する。
【0029】
制御部11は、アクセスポイント200の一覧に優先アクセスポイントが含まれていない場合(ステップS4:NO)には、表示確認処理(ステップS8)を実行する。この表示確認処理では、制御部11は、表示部15に、例えば「通信回線を確立可能なアクセスポイントを表示しますか?」といった確認メッセージとともに、アクセスポイントの一覧の表示を許可する図示しない許可ボタンおよび表示を不許可とする図示しない不許可ボタンを表示する。そして、制御部11は、許可ボタンが操作された場合(ステップS9:YES)には、アクセスポイント200の一覧を表示部15に表示する(ステップS10)。一方、制御部11は、不許可ボタンが操作された場合(ステップS9:NO)には、この処理を終了する。
【0030】
制御部11は、上記のステップS10においてアクセスポイント200の一覧を表示すると、その一覧に含まれる複数のアクセスポイント200のうち何れか1つのアクセスポイント200が選択されたか否かを判断する(ステップS11)。そして、制御部11は、何れか1つのアクセスポイント200が選択された場合(ステップS11:YES)には、例えば携帯電話機100などの通信機器との間に無線の狭域通信回線が確立されているか否かを判断する(ステップS12)。そして、制御部11は、通信機器との間に無線の狭域通信回線が確立されている場合(ステップS12:YES)には、狭域通信回線切断処理(ステップS13)を実行して当該狭域通信回線を切断する。そして、制御部11は、選択されたアクセスポイント200との間に広域通信回線を確立(ステップS14)して、この処理を終了する。一方、制御部11は、通信機器との間に無線の狭域通信回線が確立されていない場合(ステップS12:NO)には、狭域通信回線切断処理(ステップS13)を実行することなく、選択されたアクセスポイント200との間に広域通信回線を確立(ステップS14)して、この処理を終了する。
なお、制御部11は、何れのアクセスポイント200も選択されなかった場合(ステップS11:NO)には、何れのアクセスポイント200とも広域通信回線を確立することなく、この処理を終了する。
【0031】
以上に説明したように本実施形態によれば、車両用通信装置10は、車両が「停車」、この場合、特に「駐車」したことを停車検出処理部23によって検出し、この停車検出処理部23が車両の「駐車」を検出した場合に、狭域通信回線確立処理部21が確立している狭域通信回線を狭域通信回線切断処理部24によって切断する。
この構成によれば、車両が「駐車」している場合、つまり、車両がある程度の長い時間継続して停車し、広域通信回線によるアクセスポイント200との通信を効率的に行うことができる場合には、携帯電話機100などの通信機器との間に確立されている狭域通信回線が切断されるようになり、これにより、狭域通信回線による通信動作に伴う広域通信回線のスループットの低下を抑えることができる、
【0032】
また、本実施形態によれば、車両の外部に存在するアクセスポイント200との間に広域通信回線を確立する処理、さらには、狭域通信回線を切断して広域通信回線のスループットの低下を抑える処理を、車両がある程度の長い時間継続して停車する場合に実行することができる。また、例えば信号待ちなどにより車両が一時的に停車した場合、つまり、広域通信回線によるアクセスポイントとの通信が不要な場合に、狭域通信回線が無用に切断されてしまうことを回避することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、車両用通信装置10は、通信機器が携帯電話機100である場合には、当該携帯電話機100との間でハンズフリー通話を実行する機能、いわゆるハンズフリー通話機能を備える。そして、車両用通信装置10は、停車検出処理部23が車両の停車を検出したときにハンズフリー通話実行処理部26による携帯電話機100とのハンズフリー通話が実行されている場合には、当該ハンズフリー通話が終了した後に、または、通話を継続するために必要な通話継続情報を携帯電話機100に転送した後に、狭域通信回線切断処理部24によって狭域通信回線を切断する。
【0034】
即ち、車両用通信装置10は、車両が停車したとしても、ハンズフリー通話を実現する狭域通信回線を直ちに切断するのではなく、当該ハンズフリー通話が終了するまで、あるいは、携帯電話機100で通話を継続可能とするまでは、狭域通信回線が確立された状態を維持する。これにより、車両の停車に伴い直ちにハンズフリー通話が切断されてしまうことを回避することができ、使い勝手の向上を図ることができる。
【0035】
この場合、車両用通信装置10は、表示部15に、例えば「ハンズフリー通話が終了するまで狭域通信回線を切断せず維持しますか?」あるいは「携帯電話機で通話を継続しますか?」といった確認メッセージとともに、これら確認メッセージに応答するための許可ボタンおよび不許可ボタンを表示するように構成するとよい。そして、車両用通信装置10は、許可ボタンが操作された場合には、ハンズフリー通話が終了するまで、あるいは、携帯電話機100で通話を継続可能とするまでは、狭域通信回線が確立された状態を維持し、一方、不許可ボタンが操作された場合には、直ちに狭域通信回線を切断するように構成してもよい。
【0036】
車両の外部に存在するアクセスポイントとの通信、つまり、広域通信回線によるアクセスポイントとの通信は、車両が一時的にアクセスポイントに近接する場合や車両が一時的に停車した場合ではなく、車両がある程度の長い時間継続して停車している場合に行うと効率的である。そこで、本実施形態では、車両がある程度の長い時間継続して停車する場合には、広域通信回線が使用される可能性が高いことに着目し、このような広域通信回線を介して通信が行われる場合、つまり、車両がある程度の長い時間継続して停車している場合に、広域通信回線とは異なる狭域通信回線を切断することで、広域通信回線のスループットの低下を抑えるという効果を奏するものである。
【0037】
なお、本発明は、上述した一実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
ステップS6およびステップS13の狭域通信回線切断処理では、車両用通信装置10の制御部11は、ユーザによる切断の意思を確認した上で、狭域通信回線を切断するように構成してもよい。即ち、制御部11は、表示部15に、例えば「狭域通信回線を切断しますか?」といった確認メッセージとともに、狭域通信回線の切断を許可する図示しない許可ボタンおよび切断を不許可とする図示しない不許可ボタンを表示する。そして、制御部11は、許可ボタンが操作された場合には、狭域通信回線を切断し、一方、不許可ボタンが操作された場合には、狭域通信回線を切断せず当該狭域通信回線が確立された状態を維持するように構成してもよい。
【0038】
車両用通信装置10は、車両が停車して携帯電話機100との間に確立されている狭域通信回線を切断した後に車両の停車状態が解除された場合には、自動的に当該携帯電話機100との間に再び狭域通信回線を確立する機能をさらに備える構成とするとよい。このとき、車両用通信装置10は、再び狭域通信回線を確立した場合には、アクセスポイント200との間に確立されている広域通信回線を、広域通信回線切断処理部25によって自動的に切断する機能をさらに備える構成とするとよい。これにより、広域通信回線による通信動作に伴う狭域通信回線のスループットの低下を抑えることができる。
車両用通信装置10は、車両に搭載される例えばナビゲーション装置などの各種装置に一体に設けてもよいし、別体に設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
図面中、10は車両用通信装置、21は狭域通信回線確立処理部(狭域通信回線確立手段)、22は広域通信回線確立処理部(広域通信回線確立手段)、23は停車検出処理部(停車検出手段)、24は狭域通信回線切断処理部(狭域通信回線切断手段)、26はハンズフリー通話実行処理部(ハンズフリー通話実行手段)、100は携帯電話機(通信機器)、200はアクセスポイントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室に持ち込まれた通信機器との間に狭域通信回線を確立する狭域通信回線確立手段と、
前記車両の外部に存在するアクセスポイントとの間に広域通信回線を確立する広域通信回線確立手段と、
前記車両が停車したことを検出する停車検出手段と、
前記停車検出手段が前記車両の停車を検出した場合に、前記狭域通信回線確立手段が確立している前記狭域通信回線を切断する狭域通信回線切断手段と、
を備えることを特徴とする車両用通信装置。
【請求項2】
前記停車検出手段は、前記車両が駐車した場合に当該車両の停車を検出することを特徴とする請求項1に記載の車両用通信装置。
【請求項3】
前記通信機器が携帯電話機であって、前記狭域通信回線確立手段が前記携帯電話機との間に前記狭域通信回線を確立した場合には、前記携帯電話機との間でハンズフリー通話を実行するハンズフリー通話実行手段をさらに備え、
前記狭域通信回線切断手段は、前記停車検出手段が前記車両の停車を検出したときに前記ハンズフリー通話実行手段が前記ハンズフリー通話を実行している場合には、当該ハンズフリー通話が終了した後に、または、通話を継続するために必要な通話継続情報を前記携帯電話機に転送した後に、前記狭域通信回線を切断することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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