説明

車両用電力線通信装置

【課題】装置構成に要する費用を削減し、装置の重量を低減し、適切な通信を行なう。
【解決手段】車両用電力線通信装置10は、送信用スレーブ電力通信ノード22に接続され、操作者の操作によって動作可能かつ操作信号を送信用スレーブ電力通信ノード22から第2電力線27に出力させる送信側車載機器25と、受信用スレーブ電力通信ノード23に接続され、送信用スレーブ電力通信ノード22から出力された操作信号を受信した場合に動作可能である受信側車載機器26とを備え、マスター電力通信ノード21および各スレーブ電力通信ノード22,23は周期的なデータ通信を行なうタイムトリガ方式の通信プロトコルによって相互に多重通信し、各スレーブ電力通信ノード22,23は、マスター電力通信ノード21から出力されるトークン信号によって相互間の送受信動作が制御され、第2電力線27には各電力通信ノード21,22,23のみが接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用電力線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば複数の車載コンポーネントを、情報伝送のみが可能なデータバス構造と、電力供給および情報伝送が可能な供給線構造とによって接続し、重要度の低い情報はデータバス構造のみで伝送し、重要度の高い情報をデータバス構造および供給線構造により冗長的に伝送する車載通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3948407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る車載通信システムによれば、車載コンポーネント間での情報伝送のためにデータバス構造および供給線構造の2つの伝送構造を必要とすることから、システムの構成に要する費用が増大してしまうと共に、システムの重量が嵩み、車両搭載性が損なわれるという問題が生じる。
しかも、車両において、単に、複数の車載コンポーネントを供給線構造で接続するだけでは、各種の車載コンポーネントから発生したノイズが供給線構造で伝送される情報に重畳されることを防止することはできず、供給線構造で伝送される信号が各種の車載コンポーネントによって吸収あるいは減衰されることを抑制することはできず、情報の伝送を適切に行なうことが困難であるという問題が生じる。
このような問題に対して、例えばノイズタフネスを向上させるための特別な変調方式を供給線構造での情報の伝送に採用すると、システムの構成に要する費用が、より一層、増大し、処理負荷が増大してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、装置構成に要する費用を削減し、装置の重量を低減し、適切な通信を行なうことが可能な車両用電力線通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る車両用電力線通信装置は、車両に搭載された電力線通信ネットワーク(例えば、実施の形態での電力線通信ネットワーク11)およびバッテリ(例えば、実施の形態でのバッテリ12)を第1電力線(例えば、実施の形態での第1電力線13)によって接続して成る車両用電力線通信装置であって、前記電力線通信ネットワークは、前記第1電力線によって前記バッテリに接続され、前記バッテリから電力が供給されるマスター電力通信ノード(例えば、実施の形態でのマスター電力通信ノード21)と、第2電力線(例えば、実施の形態での第2電力線27)によって前記マスター電力通信ノードに接続され、前記マスター電力通信ノードを介して前記バッテリから電力が供給されると共に、前記第2電力線によって相互に多重通信可能に接続された、少なくとも送信用スレーブ電力通信ノード(例えば、実施の形態での送信用スレーブ電力通信ノード22)および受信用スレーブ電力通信ノード(例えば、実施の形態での受信用スレーブ電力通信ノード23)を有する複数のスレーブ電力通信ノード(例えば、実施の形態での送信用スレーブ電力通信ノード22および受信用スレーブ電力通信ノード23)と、前記送信用スレーブ電力通信ノードに接続され、操作者の操作によって動作可能であり、前記操作者の操作が行なわれたことを示す操作信号を前記多重通信によって前記送信用スレーブ電力通信ノードから前記第2電力線に出力させる送信側車載機器(例えば、実施の形態での送信側車載機器25)と、前記受信用スレーブ電力通信ノードに接続され、前記送信用スレーブ電力通信ノードから出力された前記操作信号を受信した場合に動作可能である受信側車載機器(例えば、実施の形態での受信側車載機器26)とを備え、前記マスター電力通信ノードおよび前記複数のスレーブ電力通信ノードは、周期的なデータ通信を行なうタイムトリガ方式の通信プロトコルによって相互に通信し、前記複数のスレーブ電力通信ノードは、前記マスター電力通信ノードから出力されるトークン信号によって相互間の送受信動作が制御され、前記第2電力線には、前記マスター電力通信ノードおよび前記複数のスレーブ電力通信ノードのみが接続されている。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係る車両用電力線通信装置は、前記第1電力線に設けられたチョークコイル(例えば、実施の形態でのチョークコイル14)を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1態様に係る車両用電力線通信装置によれば、第1電力線および第2電力線のみにより電力線通信ネットワーク内で通信を行なうことができ、通信用の特別な通信線を必要とせずに、装置構成に要する費用を削減し、装置の軽量化に資することができる。
【0009】
さらに、第2電力線には、マスター電力通信ノードおよび複数のスレーブ電力通信ノードのみが接続され、マスター電力通信ノード以外の他の制御ユニットから出力される制御信号によって制御される他の機器は接続されていない。
これにより、例えば他の機器の電子素子などから発生するノイズが第2電力線で通信される信号に重畳されてしまうことを容易に防止することができ、ノイズタフネスを向上させるための特別な変調方式などを必要とせずに、装置構成に要する費用を削減し、処理負荷の増大を防止することができる。
さらに、例えば第2電力線で通信される信号が他の機器によって吸収あるいは減衰されてしまうことを防止することができる。
【0010】
また、マスター電力通信ノードおよび複数のスレーブ電力通信ノードは、タイムトリガ方式の通信プロトコルによって相互に通信することから、同一の信号が周期的に複数回に亘って第2電力線で通信されており、例えば各通信ノードが適宜のタイミングでノイズなどに起因して適正な信号の受信が困難であっても、これ以後のタイミングで適正な信号の受信が可能であり、第2電力線での通信の所望の安定性を確保することができる。
【0011】
しかも、このように信号の受信に遅延が生じる場合であっても、第2電力線での通信は、送信側車載機器に対する操作者の操作に起因して行なわれるものであって、操作者に違和感を与えない程度あるいは操作者が感知不能な程度の適宜の時間遅れが許容される機器動作(例えば、車両ドアの解施錠や、車両ウィンドウの開閉など)に対する通信に限定されている。
すなわち、信号の受信に遅延が生じることが好ましくない機器動作(例えば、エンジンの運転制御など)は、操作者の操作に依らずに時間遅れ無しに自律的に制御されるものであって、このような機器動作に対する通信は、第2電力線での通信として採用されないように設定されている。
これにより、商品性を損なうこと無しに、装置構成に要する費用を削減することができる。
【0012】
本発明の第2態様に係る車両用電力線通信装置によれば、電力線通信ネットワークの上流側、つまり電力線通信ネットワークとバッテリとの間にチョークコイルを備えることにより、バッテリから発生するノイズが第2電力線で通信される信号に重畳されてしまうことを防止することができ、第2電力線で通信される信号がバッテリによって吸収あるいは減衰されてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用電力線通信装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用電力線通信装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用電力線通信装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両用電力線通信装置10は、例えば図1に示すように、車両に搭載された電力線通信ネットワーク11およびバッテリ12を第1電力線13によって接続して構成され、第1電力線13に設けられたチョークコイル14を備えている。
【0015】
電力線通信ネットワーク11は、例えば、マスター電力通信ノード21と、複数(例えば、2個など)の送信用スレーブ電力通信ノード22と、複数(例えば、2個など)の受信用スレーブ電力通信ノード23と、複数(例えば、2個など)の送信側車載機器25と、複数(例えば、2個など)の受信側車載機器26と、各通信ノード21,22,23を接続する第2電力線27とを備えて構成されている。
【0016】
マスター電力通信ノード21は、第1電力線13によってバッテリ12に接続され、バッテリ12から第1電力線13を介して電力が供給される。
さらに、マスター電力通信ノード21は、複数の送信用スレーブ電力通信ノード22および複数の受信用スレーブ電力通信ノード23の相互間の送受信動作を、周期的なデータ通信を行なうタイムトリガ方式の通信プロトコルによって制御するためのトークン信号を第2電力線27に出力する。
【0017】
このトークン信号は、複数の送信用スレーブ電力通信ノード22に対するデータ送信のスケジュールと、複数の受信用スレーブ電力通信ノード23に対するデータ受信のスケジュールとを指示する信号である。
例えば、トークン信号は、複数の送信用スレーブ電力通信ノード22毎に異なる所定のタイミングで周期的にデータ送信が実行されることを指示すると共に、複数の受信用スレーブ電力通信ノード23毎に異なる所定のタイミングで周期的にデータ受信が実行されることを指示する。
【0018】
なお、マスター電力通信ノード21は、バッテリ12から第1電力線13を介して供給された電力の信号と、トークン信号とを多重化して第2電力線27に出力する。
これにより、各送信用スレーブ電力通信ノード22および各受信用スレーブ電力通信ノード23には、電力の信号とトークン信号とが多重化された状態で伝送される。
【0019】
なお、マスター電力通信ノード21は、電力線通信ネットワーク11以外の他の通信ライン、例えば車両のCAN(Controller Area Network)通信ラインやLIN(Local Interconnect Network)通信ラインなどに接続されて、これらの通信ラインに対するゲートウェイとしての機能を兼ね備えていてもよい。
【0020】
複数の送信用スレーブ電力通信ノード22および複数の受信用スレーブ電力通信ノード23は、第2電力線27によって相互に多重通信可能に接続され、マスター電力通信ノード21から出力される電力の信号によって電力が供給される。
さらに、複数の送信用スレーブ電力通信ノード22および複数の受信用スレーブ電力通信ノード23は、マスター電力通信ノード21から出力されるトークン信号によって相互間の送受信動作が制御される。
【0021】
各送信用スレーブ電力通信ノード22は、トークン信号によって指示される固有の所定のタイミングで周期的にデータ送信を実行し、各受信用スレーブ電力通信ノード23は、トークン信号によって指示される固有の所定のタイミングで周期的にデータ受信を実行する。
【0022】
例えば図1に示すように、適宜のタイミングでマスター電力通信ノード21から出力されるトークン信号によって、第2ノードである送信用スレーブ電力通信ノード22のデータ送信の実行と、第3ノードである受信用スレーブ電力通信ノード23のデータ受信の実行とが指示されると、他の送信用スレーブ電力通信ノード22(例えば、第4ノード)のデータ送信および他の受信用スレーブ電力通信ノード23(例えば、第1ノード)のデータ受信は実行されない。
これにより、第2ノードである送信用スレーブ電力通信ノード22から出力されたデータは第3ノードである受信用スレーブ電力通信ノード23のみによって受信可能となる。
【0023】
なお、タイムトリガ方式の通信プロトコルにおいては、同一の指示内容を有するトークン信号は、所定のタイミングで周期的にマスター電力通信ノード21から出力される。
このため、データ受信の実行が指示された受信用スレーブ電力通信ノード23が、データ送信の実行が指示された送信用スレーブ電力通信ノード22から出力されたデータを、ノイズなどに起因して適正に受信できないタイミングが存在したとしても、これ以後の周期的な所定のタイミングで適正なデータ受信を実行可能である。
【0024】
送信側車載機器25は、例えば操作者の操作によって動作可能なスイッチなどから成り、通信線31によって送信用スレーブ電力通信ノード22に接続され、操作者の操作が行なわれたことを示す操作信号を多重通信によって送信用スレーブ電力通信ノード22から第2電力線27に出力させる。
通信線31は、操作者の送信側車載機器25に対する所定操作に応じた信号を送信側車載機器25から送信用スレーブ電力通信ノード22に送信するために用いられる。
【0025】
受信側車載機器26は、例えば送信用スレーブ電力通信ノード22から出力された操作信号に応じて駆動制御されるアクチュエータや、このアクチュエータの駆動制御を操作者の操作によって指示するスイッチなどから成り、電力線32によって受信用スレーブ電力通信ノード23に接続され、送信用スレーブ電力通信ノード22から出力されて操作信号が受信用スレーブ電力通信ノード23により受信された場合に、この操作信号に応じて動作可能となる。
電力線32は、受信用スレーブ電力通信ノード23により受信された多重化された信号のうち、マスター電力通信ノード21から出力された電力の信号のみを、受信用スレーブ電力通信ノード23により受信された操作信号に応じた所定のタイミングで受信側車載機器26に供給する。
【0026】
そして、第2電力線27には、マスター電力通信ノード21以外の他の制御ユニットから出力される制御信号によって制御される他の機器は接続されておらず、電力線通信ネットワーク11は、マスター電力通信ノード21のみによって制御される閉じたシステムを成している。
【0027】
なお、送信側車載機器25および受信側車載機器26は、一体に構成されて、送信と受信との機能を兼ね備える送受信用スレーブ電力通信ノードとされてもよい。
【0028】
例えば図2には車両ドア(例えば、左ドア)内に設けられる閉じたシステムを成す電力線通信ネットワーク11の一例を示した。
この電力線通信ネットワーク11において、例えば、第2電力線27を成す電力線通信(PLC)ラインに接続された送信用スレーブ電力通信ノード22は、送信側車載機器25を成すドアロックスイッチ25Aを内蔵する送信用スレーブ電力通信ノード22Aと、送信側車載機器25を成す運転席側ウィンドウスイッチ25Bを内蔵する送信用スレーブ電力通信ノード22Bとである。
【0029】
また、例えば、第2電力線27を成す電力線通信(PLC)ラインに接続された受信用スレーブ電力通信ノード23は、受信側車載機器26を成す後部席側ドアロックアクチュエータ26Bを内蔵する受信用スレーブ電力通信ノード23Bと、受信側車載機器26を成す後部席側ウィンドウスイッチ26Cを内蔵する受信用スレーブ電力通信ノード23Cと、受信側車載機器26を成すドアミラーアクチュエータ26Dを内蔵する受信用スレーブ電力通信ノード23Dとである。
【0030】
また、第2電力線27を成す電力線通信(PLC)ラインには、送信側車載機器25および受信側車載機器26が一体に構成されて、送信と受信との機能を兼ね備える送受信用スレーブ電力通信ノードとして、受信側車載機器26を成す運転席側ドアロックアクチュエータ26Aを内蔵する送受信用スレーブ電力通信ノード23Aが接続されている。
【0031】
また、送信側車載機器25を成す運転席側ウィンドウスイッチ25Bを内蔵する送信用スレーブ電力通信ノード22Bには、通信線31を成すスイッチ信号ライン(入力)によって、送信側車載機器25を成すトランクオープンスイッチ25Cが接続されている。
【0032】
また、送信側車載機器25を成す運転席側ウィンドウスイッチ25Bを内蔵する送信用スレーブ電力通信ノード22Bには、電力線32を成すアクチュエータ駆動ライン(出力)によって、受信側車載機器26を成すパワーウィンドウモータ26Eが接続されている。
また、受信側車載機器26を成す後部席側ウィンドウスイッチ26Cを内蔵する受信用スレーブ電力通信ノード23Cには、電力線32を成すアクチュエータ駆動ライン(出力)によって、受信側車載機器26を成すパワーウィンドウモータ26Fが接続されている。
【0033】
また、マスター電力通信ノード21は、CAN通信ラインやLIN通信ラインなどの車内LAN(Local Area Network)通信ライン31によって、携帯機(図示略)と無線通信可能な無線通信ユニットに接続されている。
【0034】
そして、第2電力線27には、マスター電力通信ノード21以外の他の制御ユニットから出力される制御信号によって制御される他の機器は接続されておらず、電力線通信ネットワーク11は、マスター電力通信ノード21のみによって制御される閉じたシステムを成している。
【0035】
この電力線通信ネットワーク11において、ドアロックスイッチ25Aが操作者により操作されると、送信用スレーブ電力通信ノード22Aから第2電力線27に操作信号が出力され、この操作信号を受信した送受信用スレーブ電力通信ノード23Aおよび受信用スレーブ電力通信ノード23Bによって運転席側ドアロックアクチュエータ26Aおよび後部席側ドアロックアクチュエータ26Bが駆動される。
【0036】
また、送受信用スレーブ電力通信ノード23Aは、車両のメカニカルキー(図示略)により機械的に回転させられるキーシリンダ(図示略)を備えている。
【0037】
例えば、車両のキーシリンダがメカニカルキーにより機械的に回転させられると、送受信用スレーブ電力通信ノード23Aに内蔵された運転席側ドアロックアクチュエータ26Aが駆動されると共に、送受信用スレーブ電力通信ノード23Aから第2電力線27に操作信号が出力される。
そして、この操作信号を受信した受信用スレーブ電力通信ノード23Bによって後部席側ドアロックアクチュエータ26Bが駆動される。
【0038】
また、例えば、携帯機(図示略)に対する操作者の操作に応じて車両ドアの解施錠を指示する指令信号が携帯機から無線送信され、この指令信号が無線通信ユニットにより受信されると、この指令信号は車内LAN通信ライン31によってマスター電力通信ノード21に送信される。
そして、マスター電力通信ノード21は、この指令信号に応じて各ドアロックアクチュエータ26A,26Bの駆動を指示する信号と、電力の信号と、トークン信号とを多重化して第2電力線27に出力する。
そして、これらの信号を受信した送受信用スレーブ電力通信ノード23Aおよび受信用スレーブ電力通信ノード23Bによって運転席側ドアロックアクチュエータ26Aおよび後部席側ドアロックアクチュエータ26Bが駆動される。
【0039】
また、運転席側ウィンドウスイッチ25Bは、運転席側に加えて他の座席側のウィンドウの開閉を指示可能であって、例えば、運転席側ウィンドウスイッチ25Bが操作者により操作されると、送信用スレーブ電力通信ノード22Bに接続されたパワーウィンドウモータ26Eが駆動されたり、送信用スレーブ電力通信ノード22Bから第2電力線27に操作信号が出力され、この操作信号を受信した受信用スレーブ電力通信ノード23Cに接続されたパワーウィンドウモータ26Fが駆動される。
また、後部席側ウィンドウスイッチ26Cが操作者により操作されると、受信用スレーブ電力通信ノード23Cに接続されたパワーウィンドウモータ26Fが駆動される。
【0040】
上述したように、本実施の形態による車両用電力線通信装置10によれば、第1電力線13および第2電力線27のみにより電力線通信ネットワーク11内で通信を行なうことができ、通信用の特別な通信線を必要とせずに、装置構成に要する費用を削減し、装置の軽量化に資することができる。
【0041】
さらに、第2電力線27には、マスター電力通信ノード21および複数の送信用スレーブ電力通信ノード22および受信用スレーブ電力通信ノード23のみが接続され、マスター電力通信ノード21以外の他の制御ユニットから出力される制御信号によって制御される他の機器は接続されていない。
これにより、例えば他の機器の電子素子などから発生するノイズが第2電力線27で通信される信号に重畳されてしまうことを容易に防止することができ、ノイズタフネスを向上させるための特別な変調方式などを必要とせずに、装置構成に要する費用を削減し、処理負荷の増大を防止することができる。
さらに、例えば第2電力線27で通信される信号が他の機器によって吸収あるいは減衰されてしまうことを防止することができる。
【0042】
また、マスター電力通信ノード21および複数の送信用スレーブ電力通信ノード22および受信用スレーブ電力通信ノード23は、タイムトリガ方式の通信プロトコルによって相互に通信することから、同一の信号が周期的に複数回に亘って第2電力線27で通信されており、例えば各受信用スレーブ電力通信ノード23が適宜のタイミングでノイズなどに起因して適正な信号の受信が困難であっても、これ以後のタイミングで適正な信号の受信が可能であり、第2電力線27での通信の所望の安定性を確保することができる。
【0043】
しかも、このように信号の受信に遅延が生じる場合であっても、第2電力線27での通信は、送信側車載機器25に対する操作者の操作に起因して行なわれるものであって、操作者に違和感を与えない程度あるいは操作者が感知不能な程度の適宜の時間遅れが許容される機器動作(例えば、車両ドアの解施錠や、車両ウィンドウの開閉など)に対する通信に限定されている。
すなわち、信号の受信に遅延が生じることが好ましくない機器動作(例えば、エンジンの運転制御など)は、操作者の操作に依らずに時間遅れ無しに自律的に制御されるものであって、このような機器動作に対する通信は、第2電力線27での通信として採用されないように設定されている。
これにより、商品性を損なうこと無しに、装置構成に要する費用を削減することができる。
【0044】
さらに、電力線通信ネットワーク11の上流側、つまり電力線通信ネットワーク11とバッテリ12との間にチョークコイル13を備えることにより、バッテリ12から発生するノイズが第2電力線27で通信される信号に重畳されてしまうことを防止することができ、第2電力線27で通信される信号がバッテリ12によって吸収あるいは減衰されてしまうことを防止することができる。
【0045】
なお、上述した実施の形態において、チョークコイル14は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 車両用電力線通信装置
11 電力線通信ネットワーク
12 バッテリ
13 第1電力線
14 チョークコイル
21 マスター電力通信ノード
22 送信用スレーブ電力通信ノード
23 受信用スレーブ電力通信ノード
25 送信側車載機器
26 受信側車載機器
27 第2電力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電力線通信ネットワークおよびバッテリを第1電力線によって接続して成る車両用電力線通信装置であって、
前記電力線通信ネットワークは、
前記第1電力線によって前記バッテリに接続され、前記バッテリから電力が供給されるマスター電力通信ノードと、
第2電力線によって前記マスター電力通信ノードに接続され、前記マスター電力通信ノードを介して前記バッテリから電力が供給されると共に、前記第2電力線によって相互に多重通信可能に接続された、少なくとも送信用スレーブ電力通信ノードおよび受信用スレーブ電力通信ノードを有する複数のスレーブ電力通信ノードと、
前記送信用スレーブ電力通信ノードに接続され、操作者の操作によって動作可能であり、前記操作者の操作が行なわれたことを示す操作信号を前記多重通信によって前記送信用スレーブ電力通信ノードから前記第2電力線に出力させる送信側車載機器と、
前記受信用スレーブ電力通信ノードに接続され、前記送信用スレーブ電力通信ノードから出力された前記操作信号を受信した場合に動作可能である受信側車載機器とを備え、
前記マスター電力通信ノードおよび前記複数のスレーブ電力通信ノードは、周期的なデータ通信を行なうタイムトリガ方式の通信プロトコルによって相互に通信し、
前記複数のスレーブ電力通信ノードは、前記マスター電力通信ノードから出力されるトークン信号によって相互間の送受信動作が制御され、
前記第2電力線には、前記マスター電力通信ノードおよび前記複数のスレーブ電力通信ノードのみが接続されていることを特徴とする車両用電力線通信装置。
【請求項2】
前記第1電力線に設けられたチョークコイルを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用電力線通信装置。

【図1】
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【図2】
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