車両用電動ミラー
【課題】 ミラーを締結支持する締結用ナットの締結緩みによる視界ぶれがない車両用電動ミラーの提供。
【解決手段】 ミラーアーム8と、ミラーアーム8を駆動する電動モータ5と動力伝達機構(ギヤ)を介して接続されているシャフト12と、ミラーアーム8をシャフト12に締結する締結用ナット20と、締結用ナット20の緩み止め手段とを備え、シャフト12の緩み止め手段に対応する領域には切り欠き13aが形成されており、前記緩み止め手段にはシャフト12が貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔はシャフト12の対応する領域における横断面(切り欠きを設けた横断面)と同一形状をしており、シャフト12に挿入された緩み止め手段はシャフト12に対して相対回転不可能に構成されている。
【解決手段】 ミラーアーム8と、ミラーアーム8を駆動する電動モータ5と動力伝達機構(ギヤ)を介して接続されているシャフト12と、ミラーアーム8をシャフト12に締結する締結用ナット20と、締結用ナット20の緩み止め手段とを備え、シャフト12の緩み止め手段に対応する領域には切り欠き13aが形成されており、前記緩み止め手段にはシャフト12が貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔はシャフト12の対応する領域における横断面(切り欠きを設けた横断面)と同一形状をしており、シャフト12に挿入された緩み止め手段はシャフト12に対して相対回転不可能に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電動ミラーに関し、特にアウトサイド用の車両用電動ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全運転のために運転者の外部視界を広くする傾向が強まり、とくに室内から外部をみるインサイドミラーからの視界情報の少ない大型トラックやバスでは、アウトサイドミラーの大型化の傾向がある。
【0003】
本発明にかかわる車両用電動ミラーは、上記のような車種に使用されることの多いミラーであって、図8に左アウトサイドミラーを例示するように、トラックのキャビン2の前方、上部に運転席から見やすい位置に取付けられている。
【0004】
側方視界を主体とするミラー10と車両直前の下方の地上視界を主体とするアンダーミラー9とが上部のミラーアーム8と下部の下部のミラーアーム7によって水平方向に回動可能に取付けられている。
【0005】
図9は、ミラー10、9を支持する部分を俯瞰する図を示している。
キャビン2の前方に突出したカバー3に鉛直方向に取付けられたシャフト32にミラーアーム8がワッシャー22Aを介した締結用ナット20によって回動可能に取付けられている。符号7Aは下部のミラーアーム7を回動可能に支持するアームに連結する補助アームである。
【0006】
図10は、図9のミラーアーム8の従来の取付部の模式的な詳細側断面図である。
キャビン2に連結されているカバー3と、電動装置収納体4によって格納プレート15が格納可能に支持され、格納プレート15にシャフト32が垂直に取付けられかつ水平方向に回動可能に取り付けられている。
【0007】
格納プレート15の上部にミラーアーム8の端部がワッシャー22Aを介した締結用ナット20によって緊締されている。
シャフト32は、シャフト主部34が電動モータ5と動力伝達機構5Aによって、運転者のリモート操作で回動されるように構成されている。
【0008】
そして、通常は運転者が自分のアイポイントに合うようにミラー位置の調整をしている。
しかしながら、運転席からのリモート調整では微調整が思うようにならないときは、車外に出て、ミラー10を手動で調整することがままある。この場合はミラーアーム8とともに図11に示す通常の不錆ワッシャー22Aが、つれ回りしてナット20を緩め側に回すことがある。とくに微調整ではミラーアーム8を左右に回すことが多いのでこの機会が多い。
【0009】
そして、一旦僅かな緩みが生ずると車両走行時にミラー10が微小振動して視界がぶれることになる。また、微小振動が緩みを増大させることにもなる。
【0010】
ミラー10は上記の手動のほかに街路樹、街路灯等への接触によっても回動することがあり、時によっては走行振動だけによるワッシャー22Aとナット20間の緩みもある。その結果は何れもミラー振動となって良好な視界保持を妨げることになる。
【0011】
このようなワッシャーの緩みに対処できる車両用電動ミラーが求められているが、現状では、未だに提案されていない。
【0012】
その他の従来技術としては、例えば、ミラー板を急速変角させる角度調整装置をコンパクトに構成することが出来る電動ミラー装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、その様な電動ミラー装置は、上述したワッシャーの緩みに対処することは出来ない。
【特許文献1】特開2003−2118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、ミラーを締結支持する締結用ナットの締結緩みによる視界ぶれがない車両用電動ミラーの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の車両用電動ミラーは、ミラーアーム(8)と、該ミラーアーム(8)を駆動する電動モータ(5)と動力伝達機構(ギヤ)を介して接続されているシャフト(12)と、ミラーアーム(8)をシャフト(12)に締結する締結用ナット(20)と、該締結用ナット(20)の緩み止め手段とを備え、前記シャフト(12)の緩み止め手段に対応する領域には切り欠き(13a)が形成されており、前記緩み止め手段にはシャフト(12)が貫通する貫通孔(22h)が形成されており、該貫通孔(22h)はシャフト(12)の対応する領域における横断面(切り欠きを設けた横断面)と同一形状をしており、シャフト(12)に挿入された緩み止め手段はシャフト(12)に対して相対回転不可能に構成されていることを特徴としている(請求項1)。
【0015】
前記緩み止め手段はワッシャであることが好ましい(請求項2)。
格別な部品でないので、製造コスト上昇がほとんどない。
【0016】
前記ワッシャは複数枚積層してミラーアーム(8)と締結用ナット(20)との間の領域に介装されていることが好ましい(請求項3)。
シャフトその他の製造公差や組み付け公差を吸収することが容易である。
【0017】
複数枚積層された前記ワッシャは、シャフト(12)軸線方向の公差を吸収するための領域(δ)が設けられていることが好ましい(請求項4)。
製造公差や組み付け公差を予め吸収することで、組み付け時の緩みあるいは干渉が予防できる。
【0018】
前記緩み止め手段はミラーアーム(8)と締結用ナット(20)との間の領域に介装されているカラー(34)であることが好ましい(請求項5)。
ここでいうカラーとは短筒状のスペーサーである。
前記の公差を格別に配慮することが不要となり、組み付けが容易になり、かつ部品点数が少なくなる。
【発明の効果】
【0019】
上述した様な構成を具備する本発明によれば、
(a) ワッシャーがシャフトとともに回転するように構成されているので(請求項1)、ワッシャーとシャフトとの相対的な回転を不可能にしていてナットの緩み発生がなく、ミラー振動と視界不良が起こらない利点がある。
【0020】
(b) また、緩み止め手段をワッシャーにすれば(請求項2)、格別な部品でないので、製造コスト上昇がほとんどない利点がある。
【0021】
(c) ワッシャーを複数枚積層してミラーアームと締結用ナットとの間の領域に介装すれば(請求項3)、シャフトその他の製造公差や組み付け公差を吸収することが容易となる利点がある。
【0022】
(d) 複数枚積層された前記ワッシャは、シャフト軸線方向の公差を吸収するための領域を設ければ(請求項4)、製造公差や組み付け公差を予め吸収することができて、組み付け時の緩みあるいは干渉が予防できる利点がある。
【0023】
(e) 緩み止め手段をミラーアームと締結用ナットとの間の領域に介装するカラーにすれば(請求項5)、前記の公差を格別に配慮することが不要となり、組み付けが容易になり、かつ部品点数が少なくなる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の車両用電動ミラーの回転機構の主要部を示す断面図である。
【0025】
図1において、キャビン2に連結されているカバー3と、電動装置収納体4によって格納プレート15が格納可能に支持されている。
電動装置収納体4は明示しない電源に結線された電動モータ5と動力伝達機構5Aを内蔵している。
格納プレート15にシャフト32が垂直に取付けられ、かつ水平方向に回動可能に取り付けられている。
【0026】
格納プレート15の上部にミラーアーム8の端部が複数で構成されるワッシャー22Aを介した締結用ナット20によって緊締されている。
シャフト12は、シャフト主部36が動力伝達機構5Aを介した電動モータ5に連結され、運転者のリモート操作で回動されるように構成されている。
【0027】
シャフト12は、図2〜図4を参照して、円柱状のシャフト主部36と、嵌合部13と、ねじ14aが形成された螺着部14、とで一体に構成されている。
【0028】
嵌合部13は、図2のA矢視を示す図3と、X−X断面を示す図4とを参照して、外径Dがシャフト主部36の外径と同径であり、その外径Dの1部が軸心を挟んだ幅Bの並行線とで切り欠き13aが形成されている。幅Bは螺着部14のねじ14aの外径より僅かに大寸に形成されている。
【0029】
螺着部14は嵌合部13の上端部13bに連結され、前述のように、切り欠き13aの幅Bより僅かに大きく、締結用ナット20と螺合するねじ諸元が形成されている。
【0030】
締結用ナット20は、図1に例示のものは下部が広がる袋ナット状に形成されてワッシャーとの接面を広げた形状にしている。しかし、締結上の問題がなくかつ、美観を特に問題にしなければ、通常の不錆ナットでもよい。
【0031】
格納プレート15と締結用ナット20との間に、ワッシャー22Aを構成するミラーアーム8がシャフト主部36と切り欠き13aに嵌合されている。
ミラーアーム8と締結用ナット20の間に第1、第2及び第3のワッシャー22、23及び24が挿入されている。
【0032】
図5は第1のワッシャー22を示していて、外径は前記従来のワッシャー22Aと同径であり、内部が相対する内径D1の円弧22aと中心を挟んで平行な直線22bとで貫通孔22hが形成されている。貫通孔22hはシャフト12の切り欠き13aに対応して遊嵌めとなるように形成されている。
【0033】
図6は第2のワッシャー23を示していて、内部が第1のワッシャー22の内径D1より僅かに大きな内径D2に形成され、外径D3は第1のワッシャー22の外径より小径に形成されてスペーサー機能を果たすように形成されている。
【0034】
第3のワッシャー24は、前記従来の不錆ワッシャー22Aと同寸である。
図1に戻って、第1のワッシャー22はシャフト12の嵌合部13に嵌合され、その上部に第2のワッシャー23が嵌合部13に遊嵌めされ、第2のワッシャー23の上に第3のワッシャー24が配置されている。
【0035】
この配置構成によって、締結用ナット20の底面20aと嵌合部13の上端部13bとの間に領域δが形成されていて、シャフト12の軸長寸法の製作公差あるいは組み付け公差の限界幅にあっても締結用ナット20が確実にミラーアーム8を緊締できるように構成されている。
【0036】
例えばこの領域δがマイナスであれば、締結用ナット20の下面20aが嵌合部13の上端部13bに当たってミラーアーム8の確実な緊締は困難となり、ミラーアーム8の振動、ぶれの発生が避けられない。
【0037】
上記の構成、とくにシャフト12と第1のワッシャー22との嵌着による緩み止め手段によって、ミラーアーム8が電動駆動でない手動等の強制回転によっても、シャフト12と第1のワッシャー22との間に相対回転が不可能で締結用ナット20の緩みは生じない。したがって、締結用ナット20の緩みが原因のアウトサイドミラー10の振動や視界ぶれが発生しない。
【0038】
図7は、複数のワッシャー22Aで構成した緩みのない、かつシャフト軸線方向の公差δを吸収する機能を持たせた短筒状のカラー34である。厚さ方向以外の形状、諸元は図5に示した第1のワッシャー22と同じである。
シャフト12の軸長方向の公差、ミラーアームの公差、あるいはワッシャー自体の公差を総合して勘案する手間がなく、間違いのない組み付けが可能である。
【0039】
上記で説明した電動ミラーは、助手席側のアウトサイドミラーの例示であるが、右側のアウトサイドミラーにも適用できる。また、振動を伴う場所例えば工場内のミラーや路端のミラー等の取付緩みのでるものへの適用も可能であって、この技術は例示の車両用電動ミラーに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の車両用電動ミラーの主要部を示す構成断面図。
【図2】図1のシャフトの側面図。
【図3】図2のA矢視上面図。
【図4】図2のX−X断面図。
【図5】第1のワッシャーの平面図。
【図6】第2のワッシャーの平面図。
【図7】別形態の厚ワッシャーの斜視図。
【図8】本発明の車両用電動ミラーが装着される部位を示す図。
【図9】図8のミラーアーム取付部の拡大俯瞰図。
【図10】ミラーアーム取付部の詳細側断面図。
【図11】従来のワッシャーを示す平面図。
【符号の説明】
【0041】
2・・・キャビン
3・・・カバー
4・・・電動装置収納体
5・・・電動モータ
5A・・・動力伝達機構
7A・・・補助アーム
8・・・ミラーアーム
9・・・アンダーミラー
10・・・(サイド)ミラー
12・・・シャフト
13・・・嵌合部
13a・・・切り欠き
13b・・・上端部
14・・・螺着部
14a・・・外ねじ
15・・・格納プレート
22・・・第1のワッシャー
22h・・・貫通穴
23・・・第2のワッシャー
24・・・第3のワッシャー
34・・・カラー(別形態のワッシャー)
36・・・シャフト主部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電動ミラーに関し、特にアウトサイド用の車両用電動ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全運転のために運転者の外部視界を広くする傾向が強まり、とくに室内から外部をみるインサイドミラーからの視界情報の少ない大型トラックやバスでは、アウトサイドミラーの大型化の傾向がある。
【0003】
本発明にかかわる車両用電動ミラーは、上記のような車種に使用されることの多いミラーであって、図8に左アウトサイドミラーを例示するように、トラックのキャビン2の前方、上部に運転席から見やすい位置に取付けられている。
【0004】
側方視界を主体とするミラー10と車両直前の下方の地上視界を主体とするアンダーミラー9とが上部のミラーアーム8と下部の下部のミラーアーム7によって水平方向に回動可能に取付けられている。
【0005】
図9は、ミラー10、9を支持する部分を俯瞰する図を示している。
キャビン2の前方に突出したカバー3に鉛直方向に取付けられたシャフト32にミラーアーム8がワッシャー22Aを介した締結用ナット20によって回動可能に取付けられている。符号7Aは下部のミラーアーム7を回動可能に支持するアームに連結する補助アームである。
【0006】
図10は、図9のミラーアーム8の従来の取付部の模式的な詳細側断面図である。
キャビン2に連結されているカバー3と、電動装置収納体4によって格納プレート15が格納可能に支持され、格納プレート15にシャフト32が垂直に取付けられかつ水平方向に回動可能に取り付けられている。
【0007】
格納プレート15の上部にミラーアーム8の端部がワッシャー22Aを介した締結用ナット20によって緊締されている。
シャフト32は、シャフト主部34が電動モータ5と動力伝達機構5Aによって、運転者のリモート操作で回動されるように構成されている。
【0008】
そして、通常は運転者が自分のアイポイントに合うようにミラー位置の調整をしている。
しかしながら、運転席からのリモート調整では微調整が思うようにならないときは、車外に出て、ミラー10を手動で調整することがままある。この場合はミラーアーム8とともに図11に示す通常の不錆ワッシャー22Aが、つれ回りしてナット20を緩め側に回すことがある。とくに微調整ではミラーアーム8を左右に回すことが多いのでこの機会が多い。
【0009】
そして、一旦僅かな緩みが生ずると車両走行時にミラー10が微小振動して視界がぶれることになる。また、微小振動が緩みを増大させることにもなる。
【0010】
ミラー10は上記の手動のほかに街路樹、街路灯等への接触によっても回動することがあり、時によっては走行振動だけによるワッシャー22Aとナット20間の緩みもある。その結果は何れもミラー振動となって良好な視界保持を妨げることになる。
【0011】
このようなワッシャーの緩みに対処できる車両用電動ミラーが求められているが、現状では、未だに提案されていない。
【0012】
その他の従来技術としては、例えば、ミラー板を急速変角させる角度調整装置をコンパクトに構成することが出来る電動ミラー装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、その様な電動ミラー装置は、上述したワッシャーの緩みに対処することは出来ない。
【特許文献1】特開2003−2118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、ミラーを締結支持する締結用ナットの締結緩みによる視界ぶれがない車両用電動ミラーの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の車両用電動ミラーは、ミラーアーム(8)と、該ミラーアーム(8)を駆動する電動モータ(5)と動力伝達機構(ギヤ)を介して接続されているシャフト(12)と、ミラーアーム(8)をシャフト(12)に締結する締結用ナット(20)と、該締結用ナット(20)の緩み止め手段とを備え、前記シャフト(12)の緩み止め手段に対応する領域には切り欠き(13a)が形成されており、前記緩み止め手段にはシャフト(12)が貫通する貫通孔(22h)が形成されており、該貫通孔(22h)はシャフト(12)の対応する領域における横断面(切り欠きを設けた横断面)と同一形状をしており、シャフト(12)に挿入された緩み止め手段はシャフト(12)に対して相対回転不可能に構成されていることを特徴としている(請求項1)。
【0015】
前記緩み止め手段はワッシャであることが好ましい(請求項2)。
格別な部品でないので、製造コスト上昇がほとんどない。
【0016】
前記ワッシャは複数枚積層してミラーアーム(8)と締結用ナット(20)との間の領域に介装されていることが好ましい(請求項3)。
シャフトその他の製造公差や組み付け公差を吸収することが容易である。
【0017】
複数枚積層された前記ワッシャは、シャフト(12)軸線方向の公差を吸収するための領域(δ)が設けられていることが好ましい(請求項4)。
製造公差や組み付け公差を予め吸収することで、組み付け時の緩みあるいは干渉が予防できる。
【0018】
前記緩み止め手段はミラーアーム(8)と締結用ナット(20)との間の領域に介装されているカラー(34)であることが好ましい(請求項5)。
ここでいうカラーとは短筒状のスペーサーである。
前記の公差を格別に配慮することが不要となり、組み付けが容易になり、かつ部品点数が少なくなる。
【発明の効果】
【0019】
上述した様な構成を具備する本発明によれば、
(a) ワッシャーがシャフトとともに回転するように構成されているので(請求項1)、ワッシャーとシャフトとの相対的な回転を不可能にしていてナットの緩み発生がなく、ミラー振動と視界不良が起こらない利点がある。
【0020】
(b) また、緩み止め手段をワッシャーにすれば(請求項2)、格別な部品でないので、製造コスト上昇がほとんどない利点がある。
【0021】
(c) ワッシャーを複数枚積層してミラーアームと締結用ナットとの間の領域に介装すれば(請求項3)、シャフトその他の製造公差や組み付け公差を吸収することが容易となる利点がある。
【0022】
(d) 複数枚積層された前記ワッシャは、シャフト軸線方向の公差を吸収するための領域を設ければ(請求項4)、製造公差や組み付け公差を予め吸収することができて、組み付け時の緩みあるいは干渉が予防できる利点がある。
【0023】
(e) 緩み止め手段をミラーアームと締結用ナットとの間の領域に介装するカラーにすれば(請求項5)、前記の公差を格別に配慮することが不要となり、組み付けが容易になり、かつ部品点数が少なくなる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の車両用電動ミラーの回転機構の主要部を示す断面図である。
【0025】
図1において、キャビン2に連結されているカバー3と、電動装置収納体4によって格納プレート15が格納可能に支持されている。
電動装置収納体4は明示しない電源に結線された電動モータ5と動力伝達機構5Aを内蔵している。
格納プレート15にシャフト32が垂直に取付けられ、かつ水平方向に回動可能に取り付けられている。
【0026】
格納プレート15の上部にミラーアーム8の端部が複数で構成されるワッシャー22Aを介した締結用ナット20によって緊締されている。
シャフト12は、シャフト主部36が動力伝達機構5Aを介した電動モータ5に連結され、運転者のリモート操作で回動されるように構成されている。
【0027】
シャフト12は、図2〜図4を参照して、円柱状のシャフト主部36と、嵌合部13と、ねじ14aが形成された螺着部14、とで一体に構成されている。
【0028】
嵌合部13は、図2のA矢視を示す図3と、X−X断面を示す図4とを参照して、外径Dがシャフト主部36の外径と同径であり、その外径Dの1部が軸心を挟んだ幅Bの並行線とで切り欠き13aが形成されている。幅Bは螺着部14のねじ14aの外径より僅かに大寸に形成されている。
【0029】
螺着部14は嵌合部13の上端部13bに連結され、前述のように、切り欠き13aの幅Bより僅かに大きく、締結用ナット20と螺合するねじ諸元が形成されている。
【0030】
締結用ナット20は、図1に例示のものは下部が広がる袋ナット状に形成されてワッシャーとの接面を広げた形状にしている。しかし、締結上の問題がなくかつ、美観を特に問題にしなければ、通常の不錆ナットでもよい。
【0031】
格納プレート15と締結用ナット20との間に、ワッシャー22Aを構成するミラーアーム8がシャフト主部36と切り欠き13aに嵌合されている。
ミラーアーム8と締結用ナット20の間に第1、第2及び第3のワッシャー22、23及び24が挿入されている。
【0032】
図5は第1のワッシャー22を示していて、外径は前記従来のワッシャー22Aと同径であり、内部が相対する内径D1の円弧22aと中心を挟んで平行な直線22bとで貫通孔22hが形成されている。貫通孔22hはシャフト12の切り欠き13aに対応して遊嵌めとなるように形成されている。
【0033】
図6は第2のワッシャー23を示していて、内部が第1のワッシャー22の内径D1より僅かに大きな内径D2に形成され、外径D3は第1のワッシャー22の外径より小径に形成されてスペーサー機能を果たすように形成されている。
【0034】
第3のワッシャー24は、前記従来の不錆ワッシャー22Aと同寸である。
図1に戻って、第1のワッシャー22はシャフト12の嵌合部13に嵌合され、その上部に第2のワッシャー23が嵌合部13に遊嵌めされ、第2のワッシャー23の上に第3のワッシャー24が配置されている。
【0035】
この配置構成によって、締結用ナット20の底面20aと嵌合部13の上端部13bとの間に領域δが形成されていて、シャフト12の軸長寸法の製作公差あるいは組み付け公差の限界幅にあっても締結用ナット20が確実にミラーアーム8を緊締できるように構成されている。
【0036】
例えばこの領域δがマイナスであれば、締結用ナット20の下面20aが嵌合部13の上端部13bに当たってミラーアーム8の確実な緊締は困難となり、ミラーアーム8の振動、ぶれの発生が避けられない。
【0037】
上記の構成、とくにシャフト12と第1のワッシャー22との嵌着による緩み止め手段によって、ミラーアーム8が電動駆動でない手動等の強制回転によっても、シャフト12と第1のワッシャー22との間に相対回転が不可能で締結用ナット20の緩みは生じない。したがって、締結用ナット20の緩みが原因のアウトサイドミラー10の振動や視界ぶれが発生しない。
【0038】
図7は、複数のワッシャー22Aで構成した緩みのない、かつシャフト軸線方向の公差δを吸収する機能を持たせた短筒状のカラー34である。厚さ方向以外の形状、諸元は図5に示した第1のワッシャー22と同じである。
シャフト12の軸長方向の公差、ミラーアームの公差、あるいはワッシャー自体の公差を総合して勘案する手間がなく、間違いのない組み付けが可能である。
【0039】
上記で説明した電動ミラーは、助手席側のアウトサイドミラーの例示であるが、右側のアウトサイドミラーにも適用できる。また、振動を伴う場所例えば工場内のミラーや路端のミラー等の取付緩みのでるものへの適用も可能であって、この技術は例示の車両用電動ミラーに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の車両用電動ミラーの主要部を示す構成断面図。
【図2】図1のシャフトの側面図。
【図3】図2のA矢視上面図。
【図4】図2のX−X断面図。
【図5】第1のワッシャーの平面図。
【図6】第2のワッシャーの平面図。
【図7】別形態の厚ワッシャーの斜視図。
【図8】本発明の車両用電動ミラーが装着される部位を示す図。
【図9】図8のミラーアーム取付部の拡大俯瞰図。
【図10】ミラーアーム取付部の詳細側断面図。
【図11】従来のワッシャーを示す平面図。
【符号の説明】
【0041】
2・・・キャビン
3・・・カバー
4・・・電動装置収納体
5・・・電動モータ
5A・・・動力伝達機構
7A・・・補助アーム
8・・・ミラーアーム
9・・・アンダーミラー
10・・・(サイド)ミラー
12・・・シャフト
13・・・嵌合部
13a・・・切り欠き
13b・・・上端部
14・・・螺着部
14a・・・外ねじ
15・・・格納プレート
22・・・第1のワッシャー
22h・・・貫通穴
23・・・第2のワッシャー
24・・・第3のワッシャー
34・・・カラー(別形態のワッシャー)
36・・・シャフト主部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーアームと、該ミラーアームを駆動する電動モータと動力伝達機構を介して接続されているシャフトと、ミラーアームをシャフトに締結する締結用ナットと、該締結用ナットの緩み止め手段とを備え、前記シャフトの緩み止め手段に対応する領域には切り欠きが形成されており、前記緩み止め手段にはシャフトが貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔はシャフトの対応する領域における横断面と同一形状をしていることを特徴とする車両用電動ミラー。
【請求項2】
前記緩み止め手段はワッシャである請求項1の車両用電動ミラー。
【請求項3】
前記ワッシャは複数枚積層してミラーアームと締結用ナットとの間の領域に介装されている請求項2の車両用電動ミラー。
【請求項4】
複数枚積層された前記ワッシャは、シャフト軸線方向の公差を吸収するための領域が設けられている請求項3の車両用電動ミラー。
【請求項5】
前記緩み止め手段はミラーアームと締結用ナットとの間の領域に介装されているカラーである請求項1の車両用電動ミラー。
【請求項1】
ミラーアームと、該ミラーアームを駆動する電動モータと動力伝達機構を介して接続されているシャフトと、ミラーアームをシャフトに締結する締結用ナットと、該締結用ナットの緩み止め手段とを備え、前記シャフトの緩み止め手段に対応する領域には切り欠きが形成されており、前記緩み止め手段にはシャフトが貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔はシャフトの対応する領域における横断面と同一形状をしていることを特徴とする車両用電動ミラー。
【請求項2】
前記緩み止め手段はワッシャである請求項1の車両用電動ミラー。
【請求項3】
前記ワッシャは複数枚積層してミラーアームと締結用ナットとの間の領域に介装されている請求項2の車両用電動ミラー。
【請求項4】
複数枚積層された前記ワッシャは、シャフト軸線方向の公差を吸収するための領域が設けられている請求項3の車両用電動ミラー。
【請求項5】
前記緩み止め手段はミラーアームと締結用ナットとの間の領域に介装されているカラーである請求項1の車両用電動ミラー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−62534(P2006−62534A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247775(P2004−247775)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
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