説明

車両用電動ロック装置

【課題】電動モータの回転に応じて直線的に作動するとともにロック部材に連動、連結されるスライダにマグネットが設けられ、ロック部材がロック位置およびアンロック位置の少なくとも一方にあることを、マグネットの磁界によって磁気センサで検出するようにした車両用電動ロック装置において、小型化およびロック部材の正確な位置検出を可能とする。
【解決手段】スライダ18が、剛性を有する強磁性体で形成されてねじ軸17に螺合する螺合部材50と、常磁性体によって形成されて螺合部材50を覆うとともにマグネット19を保持するマグネット保持部材51とから成り、マグネット保持部材51がねじ軸17の軸線に沿う方向での相対移動ならびにねじ軸17の軸線まわりの相対回転を不能として螺合部材50に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータと、作動部材に係合するロック位置ならびに該作動部材との係合を解除するアンロック位置間での直線的な移動を可能としたロック部材と、前記電動モータで回転駆動されるねじ軸と、該ねじ軸の軸線まわりに回転することを不能として前記ねじ軸に螺合されるとともに前記ロック部材に連動、連結されるスライダと、該スライダに設けられるマグネットと、前記ロック部材が前記ロック位置および前記アンロック位置の少なくとも一方にあることを前記マグネットの磁界によって検出する磁気センサとを備える車両用電動ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングシャフトに係合可能なロック部材が、電動モータでねじ軸が回転駆動されるのに応じてねじ軸の軸線方向に移動するスライダに連動、連結されるようにした車両用電動ロック装置が、特許文献1および特許文献2等で開示されている。而して特許文献1のものでは、スライダにその側方に突出する作動腕が設けられ、一対のマイクロスイッチを前記作動腕で択一的にスイッチング作動せしめることにより、ロック部材がロック位置およびアンロック位置のいずれの位置にあるかを機械的に検出するようにしている。一方、特許文献2で開示されるものでは、スライダの側方に固定配置されたホールセンサでロック部材がロック位置にあることを検出するようにしており、明記されてはいないが、ホールセンサで磁界を検出するためのマグネットが前記スライダに設けられているものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4502538号公報
【特許文献2】特開2000−233716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示されるものでは、スライダの側方に延びる作動腕ならびに該作動腕によってスイッチング作動する一対のマイクロスイッチを配置するスペースを確保する必要があり、電動ロック装置の大型化を招き、電動ロック装置を配置する場所の制約を受けることになる。それに対して、特許文献2で開示されるものでは、ホールセンサ等の磁気センサはマイクロスイッチに比べて小さく、しかも磁気センサはスライダに近接配置されるので、電動ロック装置の小型化が可能となる。しかるにスライダがねじ軸に直接螺合されるものである場合には、ねじ軸との螺合のための摩耗や運動変化に対応した強度がスライダに求められることになり、鉄等の強磁性体でスライダが形成されることなるが、そのようなスライダにマグネットが設けられる構成では、マグネットの磁界がスライダによって影響を受けて不安定になり、磁気センサによる位置検知が不正確となる可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、小型化およびロック部材の正確な位置検出を可能とした車両用電動ロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、電動モータと、作動部材に係合するロック位置ならびに該作動部材との係合を解除するアンロック位置間での直線的な移動を可能としたロック部材と、前記電動モータで回転駆動されるねじ軸と、該ねじ軸の軸線まわりに回転することを不能として前記ねじ軸に螺合されるとともに前記ロック部材に連動、連結されるスライダと、該スライダに設けられるマグネットと、前記ロック部材が前記ロック位置および前記アンロック位置の少なくとも一方にあることを前記マグネットの磁界によって検出する磁気センサとを備える車両用電動ロック装置において、前記スライダが、剛性を有する強磁性体で形成されて前記ねじ軸に螺合する螺合部材と、常磁性体によって形成されて前記螺合部材を覆うとともに前記マグネットを保持するマグネット保持部材とから成り、マグネット保持部材が前記ねじ軸の軸線に沿う方向での相対移動ならびに前記ねじ軸の軸線まわりの相対回転を不能として前記螺合部材に結合されることを特徴とする。
【0007】
なお実施の形態の歯付きリング13が本発明の作動部材に対応し、実施の形態のホールセンサ71,72,73,74が本発明の磁気センサに対応する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記特徴によれば、ねじ軸に螺合する螺合部材が剛性を有する強磁性体で形成されるので、ねじ軸との螺合のための摩耗や運動変化に対応した強度を確保することが可能となり、常磁性体によって形成されて螺合部材を覆うマグネット保持部材にマグネットが保持されるので、磁気センサで検出されるマグネットの磁界に螺合部材からの影響が及ぶことを抑制してロック部材のロック位置およびアンロック位置を正確に検出することができ、磁気センサをスライダに近接配置することで電動ロック装置の小型化を図り、電動ロック装置の配置上の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ロック部材がロック位置にある状態での車両用伝動ロック装置の縦断面図であって図2の1−1線に沿う断面図である。
【図2】蓋部材を外した状態での図1の2矢視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】スライダおよびロック部材の分解斜視図である。
【図6】ロック部材がアンロック位置にある状態での図1に対応した断面図である。
【図7】基板の一部を図1の7−7線矢視方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、添付の図1〜図7を参照しながら説明すると、先ず図1において、乗用車両のステアリングコラム11内に回動可能に配置されるステアリングシャフト12には、作動部材としての歯付きリング13が、前記ステアリングシャフト12を同軸に囲繞するようにして固着されており、前記歯付きリング13の外周に係合することで該歯付きリング13すなわち前記ステアリングシャフト12の回動を阻止する車両用電動ロック装置のハウジング14が前記ステアリングコラム11に固定される。
【0011】
図2を併せて参照して、車両用電動ロック装置は、前記ハウジング14と、電動モータ15と、前記歯付きリング13に係合するロック位置ならびに該歯付きリング13との係合を解除するアンロック位置間での直線的な移動を可能としたロック部材16と、前記電動モータ15で回転駆動されるねじ軸17と、該ねじ軸17の軸線まわりに回転することを不能として前記ねじ軸17に螺合されるとともに前記ロック部材16に連動、連結されるスライダ18と、該スライダ18に設けられる一対のマグネット19…とを備え、前記電動モータ15、前記ロック部材16、前記ねじ軸17、前記スライダ18および前記マグネット19…は前記ハウジング14内に収納、保持される。
【0012】
前記ハウジング14は、前記ステアリングコラム11とは反対側に開放した第1および第2収容凹部20,21を有するハウジング主体22と、第1および第2収容凹部20,21の開口端を閉じるようにしてハウジング主体22に締結される蓋部材23とから成り、前記ハウジング主体22および前記蓋部材23は、常磁性体たとえば亜鉛合金やマグネシウム合金によって形成される。
【0013】
前記ハウジング主体22には、前記蓋部材23に挿通される一対のねじ部材24,24をそれぞれ螺合せしめる有底のねじ孔25,25を有する一対のボス部26,26が、第1収容凹部20内に配置されるようにして一体に設けられる。
【0014】
また前記ステアリングコラム11側で前記ハウジング主体22には、前記ステアリングコラム11の外周の一部に接触する円弧面28aを有する収容凹部28が前記ステアリングコラム11の略半周を収容するようにして設けられるとともに、前記ステアリングコラム11に設けられた係合孔29に挿入、係合される突部30が前記円弧面28aから突出するようにして一体に突設される。しかも前記ステアリングコラム11の外周のうち前記収容凹部28から突出した残余の略半周の外周には、コラムホルダ31が有する円弧部31aが当接されており、前記ステアリングコラム11の両側で前記コラムホルダ31の両端部が、通常の工具では外れない特殊なねじ部材32,32で前記ハウジング主体22に締結され、これによってハウジング主体22がステアリングコラム11に固定される。
【0015】
前記歯付きリング13の外周には、複数の歯33,33…が、相互間に係止凹部34,34…をそれぞれ形成するようにして周方向等間隔に設けられており、各係止凹部34,34…の1つに係合し得る係合突部16aを先端に有する前記ロック部材16は、前記ステアリングコラム11および前記ステアリングシャフト12の軸線と直交する方向に長く延びて横断面形状を矩形状とした平板状に形成されるものであり、前記ハウジング主体22に設けられるガイド孔35に摺動可能に嵌合される。前記ガイド孔35は、前記ステアリングコラム11および前記ステアリングシャフト12の軸線と直交する方向に延びて前記ハウジング主体22に設けられるものであり、前記ステアリングコラム11の係合孔29に係合するようにしてハウジング主体22に設けられる前記突部30の先端中央部に前記ガイド孔35の一端が開口され、該ガイド孔35の他端は第1収容凹部20に開口する。
【0016】
前記ステアリングシャフト12および前記ステアリングコラム11と平行な軸線を有する電動モータ15は、前記ステアリングシャフト12および前記ステアリングコラム11の軸線に直交する平面への投影図上では、前記ロック部材16を前記ステアリングシャフト12との間に挟む位置に配置されるものであり、この電動モータ15のモータハウジング36の一部が、第1収容凹部20よりも浅く形成された第2収容凹部21に収容される。前記モータハウジング36の外周には弾性シート37が巻き付けられており、前記モータハウジング36の第2収容凹部21から突出した部分には前記弾性シート37を介してモータホルダ38が当接され、そのモータホルダ38がモータハウジング36の両側に配置されるねじ部材39,39でハウジング主体22に締結されることで、モータハウジング36がハウジング主体22に固定的に支持される。
【0017】
前記電動モータ15は、前記モータハウジング36から第1収容凹部20側に突出したモータ軸42を有しており、このモータ軸42の突出端部を回転自在に支持するための支持凹部43がハウジング主体22に形成される。
【0018】
前記電動モータ15および前記ロック部材16間には、電動モータ15の回転運動を前記ロック部材16の直線運動に変換する運動変換手段40が介設されており、該運動変換手段40は、前記モータ軸42の軸方向中間部に固設されるウォームギヤ44と、該ウォームギヤ44に噛合するウォームホイル45と、該ウォームホイル45が一端部に固定されるねじ軸17と、該ねじ軸17の軸線まわりに回転することを不能として前記ねじ軸17に螺合されるとともに前記ロック部材16に連動、連結されるスライダ18とで構成される。
【0019】
前記ウォームギヤ44、前記ウォームホイル45、前記ねじ軸17および前記スライダ18は第1収容凹部20に配置される。前記ねじ軸17には、その両端間にわたる支持孔46が同軸に設けられており、前記ガイド孔35と平行に延びる軸線を有する支持軸47が前記支持孔46を貫通することにより、前記ねじ軸17は支持軸47で回転自在に支承される。
【0020】
ねじ軸17から突出した前記支持軸47の両端部は、前記ハウジング主体22および前記蓋部材23に嵌合、支持され、前記ハウジング主体22および前記蓋部材23間には、前記支持軸47を囲繞する円筒状のブッシュ48および前記ねじ軸17が配置され、前記ねじ軸17の前記ブッシュ48側端部に設けられた大径軸部17aの外周に雄ねじ49が設けられる。
【0021】
図3〜図5を併せて参照して、前記スライダ18は、剛性を有する強磁性体たとえば鉄材で形成されて前記ねじ軸17の雄ねじに螺合する螺合部材50と、常磁性体たとえば亜鉛合金によって形成されて前記螺合部材50を覆うマグネット保持部材51とから成り、前記螺合部材50および前記マグネット保持部材51は、前記ねじ軸17の軸線に沿う方向での相対移動ならびに前記ねじ軸17の軸線まわりの相対回転を不能として相互に結合される。
【0022】
前記マグネット保持部材51は、円形孔部52aと、略矩形状の非円形孔部52bとが連なって成る圧入孔52を有する保持部材主部51aと、該保持部材主部51aから前記ロック部材16側に延びる腕部51bと、前記保持部材主部51aの両側部に連設されて前記ねじ軸17と平行に延びる一対のガイド突部51c,51cとを一体に有し、前記腕部51bにはその全長にわたる溝53が、前記ステアリングコラム11および前記ステアリングシャフト12側に開放するとともに前記圧入孔52に内端を通じさせるようにして設けられる。
【0023】
前記ハウジング主体22における第1収容凹部20の両側面には、前記マグネット保持部材51のガイド突部51c,51cを摺動自在に嵌合せしめるガイド溝54,54が、前記支持軸47および前記ねじ軸17と平行に延びるようにして設けられており、前記マグネット保持部材51および前記螺合部材50は、前記両ガイド溝54…でガイドされることによって前記支持軸47および前記ねじ軸17の軸線まわりに回転することを不能としつつ前記支持軸47および前記ねじ軸17の軸線方向に移動することが可能となる。
【0024】
前記螺合部材50は、前記マグネット保持部材51の保持部材主部51aにおける圧入孔52に圧入される螺合部材主部50aと、前記マグネット保持部材51における腕部51bの溝53に挿入されるようにして前記螺合部材主部50aから延設される連結腕部50bと、該連結腕部50bの先端部から前記ステアリングコラム11側に向けて突設されるばね受け突部50cとを一体に有し、前記保持部材主部51aには、前記ねじ軸17の雄ねじ49を螺合せしめるねじ孔55が設けられる。
【0025】
一方、前記ロック部材16の他端側には、前記マグネット保持部材51の腕部51bおよび前記螺合部材50の連結腕部50bを両側から挟む一対の連結壁部16b,16bが一体に設けられており、それらの連結壁部16b…には、前記ガイド孔35の長手方向に長く延びる長孔56,56がそれぞれ設けられる。また前記マグネット保持部材51の腕部51bおよび前記螺合部材50の連結腕部50bにはピン57が貫通するように圧入されており、そのピン57の両端部が前記長孔56…に挿入される。
【0026】
前記ロック部材16の両連結壁部16b…間にはコイルばね58が収容されており、このコイルばね58の一端部は、前記螺合部材50のばね受け突部50cを嵌入せしめるようにして前記マグネット保持部材51における腕部51bの先端部に当接され、前記コイルばね58の他端部はロック部材16に当接される。このコイルばね58が発揮するばね力によって、前記ロック部材16は、前記ピン57が前記長孔56…内で移動し得る範囲で前記歯付きリング13側すなわちロック位置側に向けて付勢されることになる。
【0027】
而して前記電動モータ15の一方向回転に応じて前記ねじ軸17が一方向に回転し、前記スライダ18が、図1で示すように、前記歯付きリング13側に移動したときには前記スライダ18から前記コイルばね58を介してロック部材16がロック位置側に押圧され、歯付きリング13が外周に備える係止凹部34…の1つがロック部材16の係合突部16aに対応した位置にあるときには、ロック部材16がロック位置まで移動して係合突部16aがその係止凹部34に係合する。また前記係合突部16aが、歯付きリング13が外周に備える歯33…の1つに当接したときには、スライダ18が前記コイルばね58を圧縮しつつ前記歯付きリング13側に移動し、係止凹部34…の1つを前記係合突部16aに対応させる位置まで前記ステアリングシャフト12をわずかに回動させることによって、前記ロック部材16は前記コイルばね58のばね力で前記係合突部16aを係止凹部34に係合させるロック位置まで移動する。
【0028】
また前記電動モータ15の他方向回転に応じて前記ねじ軸17が他方向に回転し、前記スライダ18が、図6で示すように、前記歯付きリング13から離反する側に移動したときには、前記ロック部材16の連結壁部16b…に設けられた長孔56…の前記歯付きリング13とは反対側の端部にピン57が当接し、スライダ18とともにロック部材16がアンロック位置に移動する。
【0029】
而して前記ロック部材16およびスライダ18の前記アンロック位置側への移動時に、後述の位置検出手段70がアンロック位置を検出したにもかかわらず、何らかの不具合によって電動モータ15の回転が止まらない場合の移動端を規制するとともに、その電動モータ15の作動不停止によってねじ軸17の雄ねじ49およびスライダ18のねじ孔55の螺合が解除された場合に電動モータ15の逆回転時に再螺合させるために、板ばねから成るストッパ58がねじ部材59でハウジング主体22に締結されている。
【0030】
前記マグネット保持部材51における前記保持部材主部51aには、該保持部材主部51aの前記腕部51bが連設される側とは反対側の側面に開口する一対のマグネット収容凹部60,60が、前記スライダ18の移動方向に沿う位置を同一として設けられており、それらのマグネット収容凹部60…にマグネット19…が収容され、マグネット収容凹部60…内でマグネット19…を収容、保持するためのホルダ61,61が前記保持部材主部51aに取付けられる。
【0031】
前記ホルダ61…は、常磁性体たとえば銅合金によって形成されて略U字状に形成されるものであり、前記保持部材主部51aの前記腕部51bが連設される側とは反対側の側部に、前記マグネット収容凹部60…を覆うように嵌装される。而してホルダ61…の両端部に設けられる係合孔62,62…に前記保持部材主部51aに突設される係合突部63,63…が係合することによって、ホルダ61…がマグネット19…をマグネット保持部材51に保持するようにして該マグネット保持部材51に装着されることになる。
【0032】
ハウジング主体22の第1収容凹部20には、前記スライダ18とは反対側を開放した函状に形成されるとともに前記ロック部材16とは反対側から前記スライダ18に対向する合成樹脂製のケース65が挿入されており、このケース65の前記蓋部材23側の端部には、蓋部材23に弾発的に当接する板ばね66の両端部が保持され、その板ばね66が発揮する弾発力でケース65は、ハウジング主体22の内端に設けられる当接支持面22aに押しつけられるようにして、第1収容凹部20内に収容、固定される。
【0033】
前記ケース65内には、前記電動モータ15の作動を制御する制御ユニット67の基板68が複数のねじ部材69,69…によって取付けられる。
【0034】
図7を併せて参照して、前記ロック部材16が前記ロック位置および前記アンロック位置の少なくとも一方にあること、この実施の形態では、ロック位置およびアンロック位置にあることに加えてアンロック位置になる直前の位置にあることが位置検出手段70で検出されるものであり、この位置検出手段70は、一対の前記マグネット19…と、それらのマグネット19…の磁界によって前記ロック部材16の位置を検出するようにして前記基板68の固定位置に配置される磁気センサであるホールセンサ71,72,73,74とで構成される。
【0035】
而して前記ホールセンサ71は、前記ロック部材16をロック位置とすべく前記スライダ18とともにマグネット19…が位置P1に移動したときに、一方のマグネット19の磁界によってロック部材16がロック位置にあることを検出する位置で前記基板68に固定され、前記ホールセンサ72,73は、前記ロック部材16をアンロック位置とすべく前記スライダ18とともにマグネット19…が位置P2に移動したときに、両マグネット19…の磁界によってロック部材16がアンロック位置にあることを検出する位置で前記基板68に固定される。また前記ホールセンサ74は、ロック部材16をアンロック位置側に移動させる際に、アンロック位置となる直前で事前検知するためのものであり、前記ロック部材16をアンロック位置からアンロック位置に移動させる際に前記スライダ18とともにマグネット19…が位置P2の直前まで移動したときに、一方のマグネット19の磁界によってロック部材16がアンロック位置の直前位置にあることを検出する位置で前記基板68に固定される。
【0036】
而して前記制御ユニット67は、前記ホールセンサ71によるロック位置検出時ならびのホールセンサ72,73によるアンロック位置検出時には、電動モータ15への通電を停止するとともに車両側制御回路にその状態を伝達する。またホールセンサ74によってロック部材16がアンロック位置の直前位置にあることを検出したときに、制御ユニット67はステアリングロック状態が解除された後の車両側の対応を行わせるために車両側制御回路にその状態を事前に伝達し、それによって車両側制御回路はID照合等を行うことになる。
【0037】
前記ハウジング14におけるハウジング主体22の内面のうち前記ホールセンサ71〜74に対応する部分には、前記ホールセンサ71〜74を前記マグネット19…とは反対側から、すなわち外方から覆うようにして磁気遮蔽部材75が固定される。
【0038】
この磁気遮蔽部材75は、鉄等の強磁性体によってハウジング主体22の内側面に沿うようにしつつ前記スライダ18の移動方向に延びる板状に形成されるものであり、磁気遮蔽部材75の内端部に直角にかつ一体に連設される取付け板部75aがねじ部材76でハウジング主体22に取付けられる。
【0039】
また前記ケース65には、前記基板68から導かれる導線に連なる端子が配置されるコネクタ部65a(図2参照)が一体に設けられており、このコネクタ部65aを外部に望ませる開口部(図示せず)がハウジング主体22に設けられ、外部コネクタ77が前記コネクタ部65aに接続される。
【0040】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、電動モータ15の回転運動をロック部材16の直線運動に変換する運動変換手段40の一部が、ねじ軸17と、該ねじ軸17の軸線まわりに回転することを不能として前記ねじ軸17に螺合されるとともに前記ロック部材16に連動、連結されるスライダ18とで構成され、スライダ18には、ロック部材16の位置を検出するための位置検出手段70をホールセンサ71〜74と協働して構成するマグネット19…が保持されるのであるが、前記スライダ18が、剛性を有する強磁性体で形成されてねじ軸17に螺合する螺合部材50と、常磁性体によって形成されて螺合部材50を覆うとともに前記マグネット19…を保持するマグネット保持部材51とから成り、マグネット保持部材51が前記ねじ軸17の軸線に沿う方向での相対移動ならびに前記ねじ軸17の軸線まわりの相対回転を不能として前記螺合部材50に結合されている。
【0041】
したがってねじ軸17との螺合のための摩耗や運動変化に対応した強度を強磁性体製の螺合部材50で確保することが可能となるとともに、ホールセンサ71〜74で検出されるマグネット19…の磁界に螺合部材50からの影響が及ぶことを常磁性体製のマグネット保持部材51で抑制してロック部材16のロック位置およびアンロック位置を正確に検出することができ、ホールセンサ71〜74をスライダ18に近接配置することで電動ロック装置の小型化を図り、電動ロック装置の配置上の自由度を高めることができる。
【0042】
またハウジング14内に、前記マグネット19…と、該マグネット19…の磁界によって前記ロック部材16の位置を検出するようにして前記ハウジング14内の基板68の固定位置に配置されるホールセンサ71,72,73,74とで構成される位置検出手段70が収納されるのであるが、ハウジング14におけるハウジング主体22の内面のうち前記ホールセンサ71〜74に対応する部分に、ホールセンサ71〜74を外方から覆うようにして強磁性体から成る磁気遮蔽部材75が固定されるので、常磁性体から成るハウジング14の外面近傍に、前記スライダ18のマグネット保持部材51で保持されるマグネット19…とは別のマグネットが配置されていてもその外部のマグネットによる影響がホールセンサ71〜74に及んで誤検知が生じることを防止し、ロック部材16の位置を正確に検出することができる。
【0043】
この結果、車両ユーザーが保持する正規の携帯器に設定されるIDと、車両に搭載されたエンジン側で設定されたIDとを照合した状態でロック部材16がアンロック位置にあることを前記エンジンの始動条件としたときに、万一、車両ユーザーが前記携帯器を車室内に一時的に置いたままにした状態で電動ロック装置の近傍にマグネットが置かれたときにも、ロック部材16がロック位置にあるにもかかわらずアンロック位置にあると誤検知して、エンジンが不用意に始動してしまうような事態が生じるのを防止することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0045】
たとえば本発明は、ステアリングロック装置に限定されず、作動部材にロック部材を係合して作動部材をロック状態に保持し得るようにした車両用電動ロック装置として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
13・・・作動部材である歯付きリング
15・・・電動モータ
16・・・ロック部材
17・・・ねじ軸
18・・・スライダ
19・・・マグネット
50・・・螺合部材
51・・・マグネット保持部材
71,72,73,74・・・磁気センサであるホールセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(15)と、作動部材(13)に係合するロック位置ならびに該作動部材(13)との係合を解除するアンロック位置間での直線的な移動を可能としたロック部材(16)と、前記電動モータ(15)で回転駆動されるねじ軸(17)と、該ねじ軸(17)の軸線まわりに回転することを不能として前記ねじ軸(17)に螺合されるとともに前記ロック部材(16)に連動、連結されるスライダ(18)と、該スライダ(18)に設けられるマグネット(19)と、前記ロック部材(16)が前記ロック位置および前記アンロック位置の少なくとも一方にあることを前記マグネット(19)の磁界によって検出する磁気センサ(71,72,73,74)とを備える車両用電動ロック装置において、前記スライダ(18)が、剛性を有する強磁性体で形成されて前記ねじ軸(17)に螺合する螺合部材(50)と、常磁性体によって形成されて前記螺合部材(50)を覆うとともに前記マグネット(19)を保持するマグネット保持部材(51)とから成り、マグネット保持部材(51)が前記ねじ軸(17)の軸線に沿う方向での相対移動ならびに前記ねじ軸(17)の軸線まわりの相対回転を不能として前記螺合部材(50)に結合されることを特徴とする車両用電動ロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−126354(P2012−126354A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282059(P2010−282059)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000155067)株式会社ホンダロック (164)
【Fターム(参考)】