説明

車両用電波受信外装品

【課題】簡便な構造で電波の受信を行う。
【解決手段】絶縁体の中空外装品である中空ドアパネル21,22と、中空ドアパネル21,22内側の外周部分に略環状に設けられる金属製の補強部材24と、を備える車両用バックドア20で、補強部材24に接続される信号線を含み、補強部材24は車両ボデーと絶縁され、電波を受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電波受信外装品の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にはラジオ、テレビ、無線等の多くの受信装置が搭載されており、これらの受信装置それぞれの周波数に応じたアンテナが装備されている。従来、これらのアンテナには車体のピラーやバンパ或いはルーフに取り付けられるポールアンテナ或いはロッドアンテナが用いられていた(例えば、特許文献1参照)が、ポールアンテナやロッドアンテナは車外に突出することから見栄えが悪い上、風きり音が発生する等の問題があった。このため、車両に取り付けられているエアスポイラや車両用バンパー等の樹脂製外装品の内部空間にアンテナを設置することによりスペースの共用化並びに車両外観の向上を図る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
デジタルテレビやFM放送など比較的波長が短い電波を受信するためのアンテナはエレメントが小型になることから、上記のような車両用外装品の内部にアンテナエレメントを設置することが容易であるが、波長の長いAM放送波(中波放送波)用アンテナはスペースの関係から車両外装品の内部に設置することが難しい場合もある。このような場合には、リアウインドウガラスに電線を埋め込むガラスアンテナが用いられることが多い(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−188614号公報
【特許文献2】特開2003−309420号公報
【特許文献3】特開2007−141684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された従来技術のように、車両用外装品の内部にアンテナエレメントを組み込む場合、AMアンテナのようにアンテナエレメントが大きい場合にはアンテナエレメントを組み込むのに手間が掛かるという問題があった。また、特許文献3に記載されたリアウインドウガラスにアンテナエレメントを組み込む場合には、リアウインドウガラス組み立ての際にアンテナエレメントと車両内部の配線とを接続するのに手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、簡便な構造で電波の受信を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用電波受信外装品は、絶縁体の中空外装品と、中空外装品内側の外周部分に略環状に設けられる金属製の補強部材と、を備える車両用電波受信外装品であって、補強部材に接続される信号線を含み、補強部材は車両ボデーと絶縁され、電波を受信すること、を特徴とする。また、本発明の車両用電波受信外装品において、補強部材は、AM波を受信すること、としても好適であるし、補強部材は、少なくとも1箇所が電気的に切断されていることとしても好適である。
【0008】
ここで、車両用電波受信用外装品とは、車両の外部を構成する一部および、車両の外部に取り付けられる部品を含むもので、例えば、車両のドア、車両のルーフを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、簡便な構造で電波の受信を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における車両用電波受信外装品が取り付けられた車両を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における車両用電波受信外装品の断面図とインナーパネル取りつけ前のアウターパネルと補強部材を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態における車両用電波受信外装品の補強部材を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における車両用電波受信外装品の補強部材と信号線を示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態における車両用電波受信外装品の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態における車両用電波受信外装品の補強部材と信号線を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態における車両用電波受信外装品の補強部材と信号線を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、車両100はハッチバック型の自動車で、ボデー10の後方に車両用電波受信外装品であるバックドア20を備えている。図2(a)に示すように、バックドア20は、樹脂を成形したアウターパネル21と、インナーパネル22とを内部が中空となるように接合したもので、アウターパネル21とインナーパネル22との間には金属製の補強部材24が取り付けられ、図1に示すボデー10のルーフ11に回転自在に取り付けられている。
【0012】
アウターパネル21は、上部と、窓ガラス23の直下の中央部とにそれぞれ第1、第2のエアスポイラ26,27を備えている。各エアスポイラ26,27はいずれもアウターパネル21と一体に成形され、その内部は中空となっている。また、アウターパネル21、インナーパネル22ともに窓の部分は開口23aとなっており、アウターパネル21の開口23aには窓ガラス23が取り付けられている。
【0013】
図2(b)は、インナーパネル22を組み付ける前のアウターパネル21を内面側から見た図で、図2(a)のAA断面である。図2(b)に示すように、補強部材24は、バックドア20内側の外周部分に略環状に配置されている環状部24aと、窓の開口23aの直下の部分で車両幅方向に環状部24aを接続する幅方向部24bとを有している。補強部材24は、アウターパネル21に組みつけられ、その後アウターパネル21にインナーパネル22が接着などで接合され、バックドア20が製造される。
【0014】
図3に示すように、補強部材24の環状部24aは、バックドア20内側の外周部分の車両前後方向のふくらみ形状に沿って成形されており、バックドア20の外周の直内側にバックドア20の形状に沿って配置されている。また、同様に幅方向部24bも車両前後方向のふくらみに合わせた形状で車両幅方向に環状部24aの間を接続している。
【0015】
図2(a)に示すように、補強部材24には、車両100のルーフ11の段部12に設けられたルーフ側ブラケット13とヒンジ15によって回転自在に接続されるドア側ブラケット25が取り付けられている。金属製の補強部材24は、金属製のルーフ11と電気的に絶縁されるよう構成されている。例えば、ルーフ側ブラケット13をルーフ11の段部12と電気的に絶縁できるように、絶縁シートを介し段部12に接続し、固定ボルトには絶縁ブッシュを通して固定孔に挿入するようにして接続してもよいし、ドア側ブラケット25を絶縁シートを介して補強部材24に取りつけてもよいし、ヒンジ15のピンを絶縁部材によって構成し、各ブラケット13,25の間に絶縁シートを挟んで各ブラケット13,25の間を絶縁するようにしてもよい。
【0016】
アウターパネル21とインナーパネル22とは絶縁体の樹脂によって構成され、補強部材24はアウターパネル21に取り付けられ、インナーパネル22はアウターパネル21に接続されており、補強部材24は車両100のルーフと電気的に絶縁されていることから、金属製の補強部材24は金属製の車両100のボデー10と同電位ではなくなる。このため、電波によって電流が誘起される。つまり、補強部材24は車両100のボデー10と電気的に絶縁することによってアンテナとしての機能を果たすことが出来、電気信号を取り出すことが出来る。
【0017】
図4に示すように、補強部材24の環状部24aの車両幅方向の中央はナット28が溶接され、ナット28にはボルト31によって信号線32の端子29が取り付けられている。信号線32の他端は接地が取られている電気信号を増幅するアンプ33に接続されている。増幅された信号は車両のボデー10内部の同軸ケーブル34によって車室内に設けられたラジオなどのオーディオ機器に接続されている。本実施形態では、補強部材24と信号線32とはモノポールアンテナのエレメントと同様の機能を果たし、電波を受信する。つまり、補強部材24と信号線32とは、変形したモノポールアンテナのエレメントとなる。なお、本実施形態では、ナット28は環状部24aの車両幅方向中央に溶接されていることとして説明したが、ナット28の溶接位置は、環状部24aの中央に限定されず、どこにあってもよい。
【0018】
補強部材24の環状部24aは、バックドア20の外周の直内側にバックドア20の形状に沿って配置され、幅方向部24bはバックドア20の幅に近い長さとなっているので、FM波やデジタルテレビ用の電波よりも波長の長いAM波を捉えるには好適である。
【0019】
以上説明したように、本実施形態の車両用電波受信外装品であるバックドア20は、内部の補強部材24を車両100のボデー10と電気的に絶縁して配置することによって電波を受信可能としているので、別途アンテナエレメントを設けることのない簡便な構造で電波の受信を行うことができる。
【0020】
図5を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。先に図1から図4を参照して説明した部分には同様の符号を付して説明は省略する。図5に示す実施形態は、樹脂成形されているアウターパネル21の第1のエアスポイラ26内部の空洞部分に発泡ウレタン42によってFM用のアンテナエレメント41を固定し、第2のエアスポイラ27の内部の空洞に発泡ウレタン44によってデジタルテレビ用のアンテナエレメント43を固定したものである。デジタルテレビ用のアンテナエレメント43はバックドア20の車両幅方向に対称に2個取り付けられ、ダイバーシチを構成するように配置されている。また、各アンテナエレメント41,43はアンプ33に接続され、信号を取り出せるように構成されている。本実施形態の車両用電波受信外装品であるバックドア20は複数の周波数帯域に対応することか出来、アンテナをスペース効率よく収納することが出来るという効果を奏する。
【0021】
以下、図6、図7を参照して本発明の他の実施形態について説明する。図1から図5を参照して説明した部分には同様の符号を付して説明は省略する。図1から図5を参照して説明した各実施形態においては、バックドア20の補強部材24は環状部24aと幅方向部24bとによって構成されているとして説明したが、図6に示すように、環状部24aは、機械構造として環状であれば、電気的に環状となっていなくともよく、電気的に切断されている電気的切断部45を備えていてもよい。電気的切断部45は、例えば、樹脂等の絶縁部材で構成され、環状部24aを形成するものである。その場合には、電気的切断部45を境に両側に変形したモノポールアンテナとして動作する。また、図7に示すように、環状部24a、幅方向部24bにそれぞれ電気的切断部45を設け、電気的切断部45を境に両側に変形したモノポールアンテナとして動作するようにしてもよい。図6、図7において、電気的に切断する部分は中央付近に限定する必要はなく、左右いずれかに寄せて配置してもよい。この場合には、電気的切断部45を境に両側に長さの異なるアンテナエレメントが配置されたと同様の動作をするので、FM波など他の周波数帯の電波を受信することも出来る。
【0022】
以上説明した実施形態では、車両用電波受信外装品の例としてバックドア20について説明したが、本発明は、バックドア20に限らず、中空の絶縁体の内部に補強部材を備える車両の外部を構成する部分或いは部品にも適用することができ、例えば、内部に補強材を含み中空樹脂で形成された車両側面に取り付けられているドアや、同様の構成のルーフなどにも適用することが出来る。
【符号の説明】
【0023】
10 ボデー、11 ルーフ、12 段部、13 ルーフ側ブラケット、15 ヒンジ、20 バックドア、21 アウターパネル、22 インナーパネル、23 窓ガラス、23a 開口、24 補強部材、24a 環状部、24b 幅方向部、25 ドア側ブラケット、26 第1のエアスポイラ、27 第2のエアスポイラ、28 ナット、29 端子、31 ボルト、32 信号線、33 アンプ、34 同軸ケーブル、41,43 アンテナエレメント、42,44 発泡ウレタン、45 電気的切断部、100 車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体の中空外装品と、
中空外装品内側の外周部分に略環状に設けられる金属製の補強部材と、を備える車両用電波受信外装品であって、
補強部材に接続される信号線を含み、
補強部材は車両ボデーと絶縁され、電波を受信すること、
を特徴とする車両用電波受信外装品。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電波受信外装品であって、
補強部材は、AM波を受信すること、
を特徴とする車両用電波受信外装品。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用電波受信外装品であって、
補強部材は、少なくとも1箇所が電気的に切断されていること、
を特徴とする車両用電波受信外装品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−10082(P2011−10082A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152186(P2009−152186)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】