説明

車両用電源装置

【課題】バッテリに電気二重層キャパシタを並列に接続して、エンジンを始動させる能力の低下を簡単に検知することができる車両用電源装置の提供。
【解決手段】エンジン1を始動させるスタータ8の駆動を、バッテリ7に並列に接続した電気二重層キャパシタ3により補助するように構成してある車両用電源装置。電気二重層キャパシタ3の容量は、単独でエンジン1を始動させることが可能な容量よりも小さく、スタータ8の駆動時のバッテリ7の電圧を時系列的に検出する電圧検出手段4と、電圧検出手段4が検出した電圧の高低を比較し、検出し始めてから最低電圧を検出する迄の時間を検出する時間検出手段5と、時間検出手段5が検出した時間が所定時間以上であるか否かを判定する手段5と、所定時間以上であると判定したときは、バッテリ7の過放電を報知する手段6とを備える構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを始動させるスタータの駆動を、バッテリに並列に接続した電気二重層キャパシタにより補助する車両用電源装置、特に、アイドリング時にエンジンを停止させるアイドルストップ車に好適に使用される車両用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃費を向上させる為に、停車時にアイドリングを停止するアイドルストップを行なう車両が増加しつつある。このような車両では、従来の車両に比べて頻繁にエンジンを再始動させるので、エンジンを始動させるスタータの電源が重要である。その為、バッテリに電気二重層キャパシタを並列に接続して、キャパシタからの放電によりスタータの駆動を補助させることが考えられている。
【0003】
特許文献1には、発電機により充電されるバッテリとキャパシタバンクとを有し、このキャパシタバンクは主に制動エネルギにより充電され、このキャパシタバンクにバッテリを直列接続してスタータモータを駆動するように構成されたエンジン始動装置が開示されている。バッテリを収納するケース内にキャパシタバンクとエンジン制御部を一体化した構成により、取付スペースの効率化を図り小型高性能化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−190324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、バッテリに電気二重層キャパシタを並列に接続しておくと、バッテリの過放電及び劣化によるエンジンを始動させる能力の低下を検知することが従来よりも難しくなり、突然再始動できない事態が発生する可能性があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、バッテリに電気二重層キャパシタを並列に接続して、エンジンを始動させる能力の低下を簡単に検知することができる車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
バッテリのみの場合、残容量が十分有れば(例えば、開放電圧11.875V)、図3(a)に示すように、エンジンを始動させるスタータ駆動時のバッテリ電圧は、スタータ始動時に突入電流により最低となり、エンジンのクランキングに応じて上下しながら元の電圧値付近まで戻って行く。
バッテリのみの場合、バッテリが充分放電し過放電状態であれば(例えば、開放電圧11.697V)、図3(b)に示すように、バッテリ電圧は、スタータ始動時に最低とならず、エンジンのクランキングに応じて上下しながら低下して行く。バッテリ電圧は、スタータスイッチのオフにより、元の電圧値より少し低い値まで戻って行くが、エンジンは始動しない。
【0008】
ここで、図3(b)に示すバッテリ(開放電圧11.697V)に電気二重層キャパシタを並列に接続した場合、スタータ駆動時のバッテリ電圧は、図4(a)に示すように、スタータ始動時に最低とならず、エンジンのクランキングに応じて上下しながら最低電圧になる。その後、バッテリ電圧は、元の電圧値より大分低い値までしか戻って行かないが、エンジンは始動する。
上述したように、バッテリに電気二重層キャパシタを並列に接続した場合、バッテリが充分放電し過放電状態(開放電圧11.614V)であれば、図4(b)に示すように、スタータ始動時に最低とならず、エンジンのクランキングに応じて上下しながら低下して行く。バッテリ電圧は、スタータスイッチのオフにより、元の電圧値よりかなり低い値までしか戻らず、バッテリに電気二重層キャパシタを並列に接続した場合でも、エンジンは始動しない。
【0009】
但し、これらの場合の電気二重層キャパシタの容量は、単独でエンジンを始動させることが可能な容量よりも小さい。単独でエンジンを始動させることが可能な容量を有する電気二重層キャパシタでは、上述したような現象は殆ど生じない。
以上より、単独でエンジンを始動させることができない容量の電気二重層キャパシタをバッテリに並列に接続しておき、スタータ駆動時のバッテリ電圧が、始動時でない時点で最低になれば、エンジンを始動させる能力が低下している(例えば、開放電圧11.697Vのバッテリのみでは始動できない)と分かる。
【0010】
第1発明に係る車両用電源装置は、エンジンを始動させるスタータの駆動を、バッテリに並列に接続した電気二重層キャパシタにより補助するように構成してある車両用電源装置において、前記電気二重層キャパシタの容量は、単独で前記エンジンを始動させることが可能な容量よりも小さく、前記スタータの駆動時の前記バッテリの電圧を時系列的に検出する電圧検出手段と、該電圧検出手段が検出した電圧の高低を比較し、検出し始めてから最低電圧を検出する迄の時間を検出する時間検出手段と、該時間検出手段が検出した時間が所定時間以上であるか否かを判定する手段と、該手段が所定時間以上であると判定したときは、前記バッテリの過放電を報知する手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
この車両用電源装置では、エンジンを始動させるスタータの駆動を、バッテリに並列に接続した電気二重層キャパシタにより補助する。電気二重層キャパシタの容量は、単独でエンジンを始動させることが可能な容量よりも小さく、電圧検出手段が、スタータの駆動時のバッテリの電圧を時系列的に検出する。時間検出手段が、電圧検出手段が検出した電圧の高低を比較し、検出し始めてから最低電圧を検出する迄の時間を検出し、判定する手段が、時間検出手段が検出した時間が所定時間以上であるか否かを判定する。判定する手段が所定時間以上であると判定したときは、報知する手段が、バッテリの過放電を報知する。
【0012】
第2発明に係る車両用電源装置は、前記バッテリに電気二重層キャパシタを並列に接続する為のスイッチ回路を更に備え、前記スタータの駆動時に該スイッチ回路をオンにし、前記エンジンのアイドルストップを示す信号を受けたときは、前記スイッチ回路をオフにし、その後のアイドルストップ解除を示す信号を受けたときは、前記スイッチ回路をオンにするように構成してあることを特徴とする。
【0013】
この車両用電源装置では、スイッチ回路が、バッテリに電気二重層キャパシタを並列に接続し、スタータの駆動時にスイッチ回路をオンにする。エンジンのアイドルストップを示す信号を受けたときは、スイッチ回路をオフにし、その後のアイドルストップ解除を示す信号を受けたときは、スイッチ回路を再度オンにする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用電源装置によれば、バッテリに電気二重層キャパシタを並列に接続して、エンジンを始動させる能力の低下を簡単に高い精度で検知することができる車両用電源装置を実現することができる。また、エンジン始動限界となるバッテリの起電力をより低く設定することが可能となる。また、電気二重層キャパシタの容量を適正に設定することにより、バッテリの過放電をエンジン始動が可能な状態で検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車両用電源装置の実施の形態の要部構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す車両用電源装置の動作の例を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る車両用電源装置の動作を説明する為の説明図である。
【図4】本発明に係る車両用電源装置の動作を説明する為の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る車両用電源装置の実施の形態の要部構成を示すブロック図である。
この車両用電源装置は、エンジン1に連動してオルタネータ(交流発電機)2が発電し、オルタネータ2が発電した電力は、オルタネータ2内で直流に変換されて、バッテリ(鉛蓄電池)7及び車両に搭載された負荷群9に与えられる。
バッテリ7には、電気二重層キャパシタ3がリレー接点11を通じて並列に接続されている。電気二重層キャパシタ3は、負荷調整の為の抵抗がそれぞれ並列に接続されたセルが、複数直列に接続されている。
【0017】
電圧検出器4(電圧検出手段)が、バッテリ7の出力電圧値を検出し、検出した電圧値を制御部5に与える。制御部5には表示部6が接続されている。
エンジン1を始動させるスタータ8は、バッテリ7から電力を与えられ、スタータ8内の図示しないスイッチ回路でオン/オフされる。スイッチ回路は制御部5からオン/オフ制御される。
【0018】
制御部5は、図示しないイグニッションキー(スタータキー)の操作信号、与えられたアイドルストップ情報、及び図示しないアクセルの操作信号に基づき、リレー接点(スイッチ回路)11のリレー10をオン/オフ制御する。制御部5は、リレー10及びそのリレー接点11を通じて、バッテリ7及び電気二重層キャパシタ3間の接続をオン/オフする。
アイドルストップは、アイドリング時に車速情報及びアクセルの操作信号等に基づき実行される。制御部5は、アイドルストップ時には、リレー10及びそのリレー接点11をオフにする。その後、エンジン1(スタータ8)を再始動させるときに、リレー10及びそのリレー接点11をオンにする。
【0019】
以下に、このような構成の車両用電源装置の動作を、それを示す図2のフローチャートを参照しながら説明する。
制御部5は、イグニッションキー(スタータキー)の操作信号又はアクセルの操作信号により、スタータ8を始動させるべきか否かを判定し(S1)、始動させるべきと判定したときは、リレー接点11をオンにし、スタータ8のスイッチ回路をオンにすると共に、計時を開始する(S3)。次いで、電圧検出器4が検出したバッテリ7の電圧値Vnを読み込む(S5)。
制御部5は、読込んだ電圧値Vn(S5)が計時開始以来の最低電圧値(暫定最低電圧値)であるか否かを判定し(S7)、暫定最低電圧値でなければ、再度、電圧検出器4が検出したバッテリ7の電圧値Vnを読み込む(S5)。
【0020】
制御部5は、読込んだ電圧値Vn(S5)が計時開始以来の最低電圧値(暫定最低電圧値)であれば(S7)、その電圧値Vnと計時開始以来の経過時間Tnとを記憶する(S9)。制御部5は、記憶した電圧値Vnと読込んだ電圧値(S5)との高低を比較し、暫定最低電圧値を判定する(S7)。
制御部5は、次に、エンジン1のクランキング期間が経過したか否かを判定し(S11)、クランキング期間が経過していなければ、電圧検出器4が検出したバッテリ7の電圧値Vnを読み込む(S5)。
【0021】
制御部(時間検出手段、判定する手段)5は、エンジン1のクランキング期間が経過していれば(S11)、つまり、エンジン1が始動していれば、計時を終了する(S13)。次いで、そのときの記憶している暫定最低電圧値Vn(S9)を最低電圧値として、記憶している経過時間Tn(S9)が、始動時の突入電流の通流時間より長い所定時間以上であるか否かを判定する(S15)。
【0022】
制御部5は、記憶している経過時間Tn(S9)が、所定時間以上でなければ(S15)、記憶している電圧値Vn及び経過時間Tnを消去して終了する。
制御部5は、記憶している経過時間Tn(S9)が、所定時間以上であれば(S15)、バッテリ7が過放電状態であることを、表示部6により報知した(S17)後、記憶している電圧値Vn及び経過時間Tnを消去して終了する。
【符号の説明】
【0023】
1 エンジン
2 オルタネータ
3 電気二重層キャパシタ
4 電圧検出器(電圧検出手段)
5 制御部(時間検出手段、判定する手段)
6 表示部
7 バッテリ
8 スタータ
9 負荷群
10 リレー
11 リレー接点(スイッチ回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを始動させるスタータの駆動を、バッテリに並列に接続した電気二重層キャパシタにより補助するように構成してある車両用電源装置において、
前記電気二重層キャパシタの容量は、単独で前記エンジンを始動させることが可能な容量よりも小さく、前記スタータの駆動時の前記バッテリの電圧を時系列的に検出する電圧検出手段と、該電圧検出手段が検出した電圧の高低を比較し、検出し始めてから最低電圧を検出する迄の時間を検出する時間検出手段と、該時間検出手段が検出した時間が所定時間以上であるか否かを判定する手段と、該手段が所定時間以上であると判定したときは、前記バッテリの過放電を報知する手段とを備えることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記バッテリに電気二重層キャパシタを並列に接続する為のスイッチ回路を更に備え、前記スタータの駆動時に該スイッチ回路をオンにし、前記エンジンのアイドルストップを示す信号を受けたときは、前記スイッチ回路をオフにし、その後のアイドルストップ解除を示す信号を受けたときは、前記スイッチ回路をオンにするように構成してある請求項1記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−47380(P2011−47380A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198722(P2009−198722)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】