説明

車両用顔画像撮像装置

【課題】チルト機構によるステアリングホイールの鉛直方向の角度調整に拘らず、常に運転者の顔の正面を適切に撮像することのできる車両用顔画像撮像装置を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール13はチルト機構15によって鉛直方向の傾斜角度を調整可能とされている。ステアリングホイール13よりも前方側には、運転者mの顔を撮像するCCDカメラ20と、視線方向の検知のために運転者mの眼球に光を照射する近赤外線LED21を設置する。CCDカメラ20は、ステアリングホイール13の正面視において、ステアリングホイール13の中心軸線Aの鉛直上方で、かつ、チルト機構15によりステアリングホイール13が上限位置に変位したときにステアリングホイール13の上端部13aよりも鉛直上方となる位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されて運転者の顔の向きや視線方向等を検知するために運転者の顔画像を撮像する車両用顔画像撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転中の運転者の挙動を認識するための装置として、顔画像撮像装置を搭載した車両が知られている。この顔画像撮像装置は、運転席に着座した運転者の顔をCCDカメラ等の撮像手段によって撮像し、その撮像画像を解析して運転者の顔の向きや視線方向等を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
引用文献1に記載の顔画像撮像装置は、撮像手段であるカメラと赤外線投光器がカメラアッシーとして一体化され、そのカメラアッシーが、チルト機構を有するステアリングコラムに取付けられている。この顔画像撮像装置においては、カメラアッシーがステアリングコラムに連動して移動するため、チルト機構の操作によってステアリングホイールの鉛直方向の傾斜角度が調整されても、ステアリングホイールのスポーク間の開口を通してカメラによって運転者の顔画像を撮像することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来の顔画像撮像装置においては、ステアリングホイールのスポーク間の開口を通してカメラが運転者の顔を撮像するものであるため、運転者がステアリングホイールを操舵する際等にカメラと運転者の顔の間が運転者の腕先やステアリングホイールによって遮られてしまうことがあり、このような場合には適切に運転者の顔を撮像できなくなってしまう可能性がある。
【0006】
また、従来の顔画像撮像装置は、カメラアッシーがチルト機構の動作に伴って鉛直方向の傾斜角度を変える構成であるため、ステアリングホイールのスポーク間の開口に対するカメラの位置は適切に維持されるが、チルト角度に応じてカメラが適切に運転者の顔の位置に向けられるとは限らず、結果的にカメラの撮像方向が不適切な方向に向けられてしまう場合も起こり得る。
【0007】
これに対処する手段として、運転席と助手席の間付近にカメラを固定設置することも考えられるが、この場合には、設置されたカメラが見る者に外観上の違和感を与えたり、運転者の視界の妨げとなったりするばかりでなく、カメラが運転者の顔、特に、両目を正面から適切に撮像することが難しいという問題が生じる。
【0008】
そこでこの発明は、チルト機構によるステアリングホイールの鉛直方向の角度調整に拘らず、常に運転者の顔の正面を適切に撮像することのできる車両用顔画像撮像装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る車両用顔画像撮像装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両室内の運転席の前方に配置されたステアリングホイール(例えば、実施形態のステアリングホイール13)と、このステアリングホイールの鉛直方向の傾斜角度を調整するチルト機構(例えば、実施形態のチルト機構15)と、車室内の前記ステアリングホイールよりも車両前方側に配置され、運転席に着座した運転者の顔画像を撮像する撮像手段(例えば、実施形態のCCDカメラ20)と、を備えた車両用顔画像撮像装置において、前記撮像手段は、前記ステアリングホイールの正面視において、当該ステアリングホイールの中心軸線(例えば、実施形態の中心軸線A)の鉛直上方で、かつ、前記チルト機構により前記ステアリングホイールが上限位置に変位したときに当該ステアリングホイールの上端部(例えば、実施形態の上端部13a)よりも鉛直上方となる位置に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る車両用顔画像撮像装置において、可視光または非可視光を前記運転者に向けて投光する投光手段(例えば、実施形態の近赤外線LED21)を備え、前記投光手段は、前記ステアリングホイールの正面視において、当該ステアリングホイールを操作する前記運転者の腕先の可動範囲と重ならない位置であって、当該ステアリングホイールの中心軸線の車幅方向側方で、かつ、当該ステアリングホイールの外側となる位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、撮像手段がチルト機構によるステアリングホイールの調整位置に拘らず、常に、ステアリングホイールの正面視で、当該ステアリングホイールの上端部よりも鉛直上方となる位置に配置されることから、ステアリングホイールの操舵の際等に運転者の腕先やステアリングホイール自体が撮像手段と運転者の顔の間を遮るのを未然に防止することができる。また、この発明の場合、撮像手段がステアリングホイールの正面視で、当該ステアリングホイールの中心軸線の鉛直上方となる位置に配置されることから、運転者の顔の正面をより適切に撮像することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、投光手段がステアリングホイールの正面視において、当該ステアリングホイールの中心軸線の車幅方向側方で、かつ、当該ステアリングホイールの外側となる位置で、運転者の腕先の可動範囲と重ならない位置に配置されていることから、運転者の腕先やステアリングホイール自体が投光手段と運転者の顔の間を遮るのを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態の顔画像撮像装置の概略構成を示す車室内の模式的な側面図である。
【図2】この発明の一実施形態の顔画像撮像装置を採用した車両の車室内を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この実施形態に係る顔画像撮像装置1の構成を示す図であり、図2は、顔画像撮像装置1を設置した車両の車室内を示す図である。
これらの図において、11は、運転者mの着座する運転席のシートであり、12は、運転席の前面に設置されたインストルメントパネル、13は、ステアリングホイール、14は、図示しないステアリングシャフトを支持するステアリングコラムである。
ステアリングホイール13は、ステアリングコラム14に設けられたチルト機構15によって鉛直方向の傾斜角度が調整可能にされるとともに、ステアリングシャフトに設けられたテレスコピック機構16によって前後方向の位置調整が可能にされている。なお、図1において、網掛けで示した範囲は、チルト機構15とテレスコピック機構16によるステアリングホイール13の概略的な可動範囲である。
【0015】
顔画像撮像装置1は、運転者mの顔を撮像する撮像手段であるCCDカメラ20と、運転者mの眼球に光を照射する投光手段である近赤外線LED21と、CCDカメラ20と近赤外線LED21を制御するとともに、CCDカメラ20の検出信号を基にして画像処理と解析を行う制御装置22と、を備えている。制御装置22で画像処理と解析を行った結果は、例えば、脇見警報装置で用いられ、運転者mが脇見をしているものと判定されたときに警報手段23を作動させる。なお、投光手段は、近赤外線LED21に限るものではなく、可視光または非可視光を乗員の眼球に向けて照射する点光源であれば他のものであっても良い。
【0016】
この顔画像撮像装置1での画像処理と解析では、例えば、運転者mの顔画像を基にして運転者mの顔の向きを検知するとともに、近赤外線LED21から運転者mの眼球に光を照射したときの虹彩上の反射点(眼球上輝点)の位置と、瞳孔の位置を検知し、虹彩上の反射点と瞳孔との距離を基にして運転者mの視線方向を求める。
【0017】
ところで、この顔画像撮像装置1の場合、CCDカメラ20は、ステアリングホイール13の正面視において、ステアリングホイール13の中心軸線Aの鉛直上方で、かつ、ステアリングホイール13がチルト機構15やテレスコピック機構16で最大上昇位置(上限位置)に位置調整されたときでも、ステアリングホイール13の上端部13aよりも上方となるように、例えば、インストルメントパネル12の上面に設置されている。
なお、CCDカメラ20の設置高さは、ステアリングホイール13が最大上昇位置に位置調整された状態で、ステアリングホイール13を回転操作する運転者mの手hがステアリングホイール13の上端部13aに達しても、その手hよりも上方となる高さであることが望ましい。
【0018】
また、この顔画像撮像装置1の場合、近赤外線LED21は、運転席の前方のフロントピラー17の付根部に近接したインストルメントパネル12上に設置されている。この近赤外線LED21の設置位置は、ステアリングホイール13の正面視において、ステアリングホイール13を回転操作する運転者mの腕先と重ならない位置であり、ステアリングホイール13の中心軸線Aの車幅方向側方で、かつ、ステアリングホイール13の外側となる位置である。
【0019】
以上のように、この顔画像撮像装置1は、近赤外線LED21が、ステアリングホイール13の正面視で、中心軸線Aの鉛直上方で、かつ、チルト機構15やテレスコピック機構16によってステアリングホイール13が上限位置に変位したときでも、ステアリングホイール13の上端部13aよりも鉛直上方となる位置に配置されているため、ステアリングホイール13の調整位置に拘わらず、ステアリングホイール13の操舵の際等に運転者mの腕先やステアリングホイール13がCCDカメラ20と運転者mの顔の間を遮るのを未然に防止することができる。
【0020】
また、この顔画像撮像装置1においては、CCDカメラ20がステアリングホイール13の正面視で、ステアリングホイール13の中心軸線Aの鉛直上方となる位置に配置されているため、運転者mの顔、特に、運転者mの両眼を正面から適切に撮影することができる。
【0021】
また、この顔画像撮像装置1においては、ステアリングホイール13の正面視において、ステアリングホイール13を回転操作する運転者mの腕先と重ならない位置であって、ステアリングホイール13の中心軸線Aの車幅方向側方で、かつ、ステアリングホイール13の外側となる位置に近赤外線LED21が配置されているため、運転者mの腕先やステアリングホイール13が近赤外線LED21と運転者mの顔(眼球)の間を遮るのを未然に防止することができる。
【0022】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、近赤外線LED21(投光手段)が運転席正面に向かってステアリングホイール13の右側に一つのみ設置されているが、投光手段は、ステアリングホイール13の右側と左側に同様に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0023】
1…顔画像撮像装置
11…ステアリングホイール
13…ステアリングホイール
13a…上端部
15…チルト機構
20…CCDカメラ(撮像手段)
21…近赤外線LED(投光手段)
A…中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内の運転席の前方に配置されたステアリングホイールと、
このステアリングホイールの鉛直方向の傾斜角度を調整するチルト機構と、
車室内の前記ステアリングホイールよりも車両前方側に配置され、運転席に着座した運転者の顔画像を撮像する撮像手段と、
を備えた車両用顔画像撮像装置において、
前記撮像手段は、前記ステアリングホイールの正面視において、当該ステアリングホイールの中心軸線の鉛直上方で、かつ、前記チルト機構により前記ステアリングホイールが上限位置に変位したときに当該ステアリングホイールの上端部よりも鉛直上方となる位置に配置されていることを特徴とする車両用顔画像撮像装置。
【請求項2】
可視光または非可視光を前記運転者に向けて投光する投光手段を備え、
前記投光手段は、前記ステアリングホイールの正面視において、当該ステアリングホイールを操作する前記運転者の腕先の可動範囲と重ならない位置であって、当該ステアリングホイールの中心軸線の車幅方向側方で、かつ、当該ステアリングホイールの外側となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用顔画像撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−11975(P2012−11975A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153021(P2010−153021)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】