説明

車両用駆動装置

【課題】噛み合い式係合装置を備えた車両用駆動装置において、従来に比べて駆動装置全体のエネルギ効率を更に向上させ得る構成を実現する。
【解決手段】係合装置22は、車輪7に駆動連結される車輪側係合部42と、第二回転電機12に駆動連結される回転電機側係合部52と、車輪側係合部42及び回転電機側係合部52の少なくとも一方に対して選択的に係合することで当該係合装置22の状態を切り替える状態切替部材32と、を備えた噛み合い式の係合装置であり、状態切替部材32は、車輪側係合部42と回転電機側係合部52との間を非連結状態とするための非連結位置として、車輪側係合部42に係合し、回転電機側係合部52から分離する第一位置P1と、回転電機側係合部52に係合し、車輪側係合部42から分離する第二位置P2と、を選択可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に駆動連結される第一回転電機と、係合装置と、当該係合装置を介して車輪に駆動連結される第二回転電機と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置の従来技術として、例えば特開平6−153325号公報(特許文献1)に記載された技術がある。この背景技術の欄の説明では、〔〕内に特許文献1における部材名を引用して説明する。特許文献1の図3には、複数備えられる回転電機〔モータM1’,M2’,M3’,M4’〕のそれぞれが、係合装置〔可変制御クラッチC1’,C2’,C3’,C4’〕を介して車輪〔車輪22〕に駆動連結された構成が記載されている。このような係合装置を備えることで、駆動力を発生しない回転電機を車輪から切り離すことができ、当該回転電機の連れ回りを回避することによるエネルギ損失の低減が可能とされている。
【0003】
ところで、装置全体のエネルギ効率の向上を図るべく、回転電機と車輪との間の動力伝達経路に配置される上記の係合装置として、ドグクラッチのような噛み合い式の係合装置を用いることが考えられる。しかしながら、特許文献1には、噛み合い式の係合装置を用いることに言及した記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−153325号公報(図3等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、噛み合い式係合装置を備えた車両用駆動装置において、従来に比べて駆動装置全体のエネルギ効率を更に向上させ得る構成の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、車輪に駆動連結される第一回転電機と、係合装置と、当該係合装置を介して前記車輪に駆動連結される第二回転電機と、エアコンディショナ用のコンプレッサに駆動連結されるコンプレッサ連結部材と、を備えた車両用駆動装置の特徴構成は、前記第二回転電機は、前記係合装置と前記コンプレッサ連結部材との間の動力伝達経路に配置され、前記係合装置は、前記車輪に駆動連結される車輪側係合部と、前記第二回転電機に駆動連結される回転電機側係合部と、前記車輪側係合部及び前記回転電機側係合部の少なくとも一方に対して選択的に係合することで当該係合装置の状態を切り替える状態切替部材と、を備えた噛み合い式の係合装置であり、前記状態切替部材は、前記車輪側係合部と前記回転電機側係合部との間を非連結状態とするための非連結位置として、前記車輪側係合部に係合し、前記回転電機側係合部から分離する第一位置と、前記回転電機側係合部に係合し、前記車輪側係合部から分離する第二位置と、を選択可能に構成されている点にある。
【0007】
本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。
また、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0008】
上記の特徴構成によれば、第二回転電機と車輪との間の動力伝達経路に、係合の状態を切替可能な係合装置が配置される。これにより、第二回転電機に車輪を駆動するための駆動力を発生させる必要がない場合に第二回転電機を車輪から切り離すことができ、第二回転電機の連れ回りに起因するエネルギ損失を抑制して駆動装置全体のエネルギ効率の向上を図ることができる。さらに、第二回転電機が係合装置とコンプレッサ連結部材との間の動力伝達経路に配置されているため、第二回転電機に車輪を駆動するための駆動力を発生させる必要がない場合に、車輪から切り離された第二回転電機によりコンプレッサを駆動することができる。この際、コンプレッサの駆動のために最適な回転速度で第二回転電機を駆動することができるため、この点からも駆動装置全体のエネルギ効率の向上を図ることができる。
このように、係合装置を必要に応じて非連結状態に切り替えることで、駆動装置全体のエネルギ効率の向上を図ることが可能となっている。そして、上記の特徴構成によれば、この係合装置が噛み合い式の係合装置とされるとともに、状態切替部材の非連結位置を、当該状態切替部材と係合する係合部が互いに異なる2つの位置から選択することができる。すなわち、係合装置の非連結状態において、状態切替部材が係合して一体回転する係合部を、車輪側係合部及び回転電機側係合部の内の回転速度の低い方とすることが可能に構成されている。これにより、状態切替部材の位置を押圧して切り替えるための部材が、当該状態切替部材に係合する非回転部材により構成される場合に、状態切替部材と当該非回転部材との間の回転速度差を抑制して、これらの摺動に起因するエネルギ損失を抑制することができる。
以上のように、上記の特徴構成によれば、必要に応じて非連結状態に切り替えることで装置全体のエネルギ効率の向上を可能とする噛み合い式の係合装置に関して、非連結状態におけるエネルギ損失の抑制が可能に構成されている。これにより、噛み合い式係合装置を備えた車両用駆動装置において、従来に比べて駆動装置全体のエネルギ効率を更に向上させ得る構成を実現することができる。
【0009】
ここで、前記係合装置を制御する制御装置を更に備え、前記制御装置は、前記係合装置の状態を、前記車輪側係合部と前記回転電機側係合部とが連結した連結状態から前記非連結状態に切り替える際に、前記非連結位置を前記第一位置と前記第二位置との中から選択する非連結位置選択部を備え、前記非連結位置選択部は、前記係合装置を前記非連結状態に切り替えた後における前記車輪側係合部の予測回転速度と前記回転電機側係合部の予測回転速度との大小関係の判定を行い、前記車輪側係合部の予測回転速度が前記回転電機側係合部の予測回転速度より低い場合には前記第一位置を選択し、前記回転電機側係合部の予測回転速度が前記車輪側係合部の予測回転速度より低い場合には前記第二位置を選択する構成とすると好適である。
【0010】
この構成によれば、係合装置が非連結状態とされる期間の内の、少なくとも当該非連結状態への切替直後を含む期間において、状態切替部材を、車輪側係合部及び回転電機側係合部の内の回転速度の低い方と一体回転させることができる。これにより、状態切替部材の位置を押圧して切り替えるための部材が、当該状態切替部材に係合する非回転部材により構成される場合に、少なくとも係合装置の非連結状態への切替直後を含む期間において、非連結状態にある係合装置に起因するエネルギ損失を抑制することができる。
【0011】
上記のように前記制御装置が前記非連結位置選択部を備える構成において、前記非連結位置選択部は、前記エアコンディショナの状態が前記コンプレッサの駆動が不要な状態である場合には、前記大小関係の判定を行うことなく前記第二位置を選択する構成とすると好適である。
【0012】
この構成によれば、エアコンディショナの状態がコンプレッサの駆動が不要な状態である場合に、非連結位置の選択に係る処理を簡素なものとして演算に係る負荷を抑制することができる。なお、エアコンディショナの状態がコンプレッサの駆動が不要な状態である場合には、第二回転電機をコンプレッサを駆動するために回転させる必要はない。そのため、係合装置の非連結状態においては、第二回転電機の回転速度は一般的に低くなり、当該第二回転電機に駆動連結される回転電機側係合部の回転速度も低くなる。例えば、係合装置の非連結状態において、第二回転電機がコンプレッサの駆動以外の用途に用いられない場合には、第二回転電機や回転電機側係合部の回転速度は基本的に零となる。そのため、エアコンディショナの状態がコンプレッサの駆動が不要な状態である場合は、高い確率で、上記の大小関係の判定を行った場合に第二位置が選択される場合と一致し、このような場合に上記の大小関係の判定を行うことなく非連結位置として第二位置を選択する構成としても、非連結状態にある係合装置に起因するエネルギ損失を多くの場合に抑制することが可能となる。
【0013】
上記のように前記制御装置を備える構成において、前記係合装置の前記非連結状態において、前記車輪側係合部の回転速度と前記回転電機側係合部の回転速度との大小関係が逆転する場合には、前記制御装置は、前記車輪側係合部の回転速度と前記回転電機側係合部の回転速度との間の回転速度差が差回転閾値未満である同期状態において、前記状態切替部材の位置を前記第一位置と前記第二位置との間で切り替える非連結位置切替制御を実行する構成とすると好適である。
【0014】
この構成によれば、係合装置が非連結状態とされる期間の全体に亘って、状態切替部材を、車輪側係合部及び回転電機側係合部の内の回転速度の低い方と一体回転させることができるため、非連結状態にある係合装置に起因するエネルギ損失を抑制することが容易となる。
【0015】
また、この構成によれば、前記制御装置が、前記係合装置の前記非連結状態において、前記車輪側係合部の回転速度が前記回転電機側係合部の回転速度より低い場合には前記状態切替部材が前記第一位置に位置し、前記回転電機側係合部の回転速度が前記車輪側係合部の回転速度より低い場合には前記状態切替部材が前記第二位置に位置するように、前記状態切替部材の位置を制御する構成を容易に実現することができ、非連結状態にある係合装置に起因するエネルギ損失を抑制することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る第二状態切替部材が第三位置にある状態での車両用駆動装置の一部断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る第二状態切替部材が第二位置にある状態での車両用駆動装置の一部断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る第二状態切替部材が第一位置にある状態での車両用駆動装置の一部断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に係る第二係合装置制御処理の全体手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る連結状態時判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る非連結状態時判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、特に区別して明記している場合を除き、「軸方向L」、「径方向R」、「周方向」は、第二係合装置22の軸心を基準として定義している。そして、「軸第一方向L1」は、軸方向Lに沿って第二回転電機12側から第二係合装置22側へ向かう方向(図1及び図2における左方向)を表し、「軸第二方向L2」は、軸第一方向L1とは反対方向(図1及び図2における右方向)を表す。なお、各部材についての方向は、当該部材が車両用駆動装置1に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態も含む概念として用いている。
【0018】
1.車両用駆動装置の全体構成
図1に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、第一回転電機11と、第二回転電機12と、第一係合装置21と、第二係合装置22と、これらを収容するケース3と、を備えている。第一回転電機11は、第一係合装置21を介して車輪7に駆動連結され、第二回転電機12は、第二係合装置22を介して車輪7に駆動連結されている。これにより、この車両用駆動装置1は、第一回転電機11及び第二回転電機12の一方又は双方のトルクを車輪7に伝達して車両を走行させる。このような車両用駆動装置1は、例えばハイブリッド車両や電動車両に備えられる。なお、本実施形態では、車両用駆動装置1は、車輪7の駆動力源として回転電機11,12のみを備え、車輪7に伝達する駆動力を回転電機11,12のみにより発生させる。
【0019】
第一回転電機11は、ケース3に固定された第一ステータ11aと、当該第一ステータ11aに対して回転自在に配置された第一ロータ本体11bとを有している。本例では、第一ロータ本体11bは、第一ステータ11aの径方向Rの内側に配置されている。また、第一ロータ本体11bは、当該第一ロータ本体11bから軸方向Lの両側に突出するように配置された第一回転軸71と一体回転するように、当該第一回転軸71に固定されている。第二回転電機12は、第一回転電機11と基本的に同様に構成されており、第一ステータ11aに対応する第二ステータ12aと、第一ロータ本体11bに対応する第二ロータ本体12bとを備え、第二ロータ本体12bは、第一回転軸71に対応する第二回転軸72に固定されている。なお、本実施形態では、第一回転電機11及び第二回転電機12として、出力可能なトルクの上限値については第一回転電機11が第二回転電機12よりも大きく、トルクを出力可能な回転速度の上限値については第二回転電機12が第一回転電機11よりも大きくなるものが用いられている。
【0020】
車両用駆動装置1は、エアコンディショナ用のコンプレッサ9に駆動連結されるコンプレッサ連結軸73を備えている。コンプレッサ9は、エアコンディショナに用いられる熱媒体を圧縮する装置である。本実施形態では、コンプレッサ連結軸73は、第二回転軸72における第二ロータ本体12bより軸第二方向L2側の部分に、当該第二回転軸72と一体回転するように駆動連結されている。また、本実施形態では、コンプレッサ連結軸73は、コンプレッサ9を駆動するコンプレッサ駆動軸と一体回転するように、当該コンプレッサ駆動軸に駆動連結されている。これにより、コンプレッサ連結軸73に伝達される第二回転電機12のトルクにより、コンプレッサ9を駆動することが可能となっている。なお、第二回転電機12は、第二係合装置22とコンプレッサ連結軸73との間の動力伝達経路に配置されている。これにより、第二係合装置22を非連結状態(非係合状態)とすることで第二回転電機12を車輪7から切り離すことができ、車両の停止状態(車輪7が回転していない状態)においても、第二回転電機12によりコンプレッサ9を駆動することが可能となっている。本実施形態では、コンプレッサ連結軸73が本発明における「コンプレッサ連結部材」に相当する。
【0021】
本実施形態では、図1に示すように、第一係合装置21と車輪7との間の動力伝達経路、及び第二係合装置22と車輪7との間の動力伝達経路のそれぞれには、駆動ギヤ10、カウンタギヤ機構5、出力用差動歯車装置6が配置されている。すなわち、本実施形態では、第一回転電機11は、第一係合装置21を介して駆動ギヤ10に駆動連結されており、第二回転電機12は、第二係合装置22を介して駆動ギヤ10に駆動連結されている。そして、駆動ギヤ10は、カウンタギヤ機構5及び出力用差動歯車装置6を介して車輪7に駆動連結されている。これにより、車両の走行時には、カウンタドライブギヤとして機能する駆動ギヤ10の回転方向と同方向のトルク、言い換えれば、第一回転電機11や第二回転電機12の回転と同方向のトルクが、車輪7に伝達される。なお、本実施形態では、出力用差動歯車装置6は、互いに噛み合う複数の傘歯車を用いた差動歯車機構により構成されている。また、本実施形態では、駆動ギヤ10、カウンタギヤ機構5、及び出力用差動歯車装置6は、互いに平行な異なる3つの軸上に分かれて配置されており、第一回転電機11、第二回転電機12、第一係合装置21、及び第二係合装置22は、駆動ギヤ10と同軸上に配置されている。
【0022】
ケース3は、図1に示すように、第一回転電機11、第二回転電機12、第一係合装置21、第二係合装置22、駆動ギヤ10、カウンタギヤ機構5、及び出力用差動歯車装置6を収容する。具体的には、ケース3は、第一回転電機11や第二回転電機12の外周を覆う周壁部90と、当該周壁部90の軸第一方向L1側の開口を覆う第一端壁部91と、当該周壁部90の軸第二方向L2側の開口を覆う第二端壁部92と、を備えている。また、ケース3は、第一支持壁部81、第二支持壁部82、及び第三支持壁部83を備え、周壁部90の径方向Rの内側に形成されるケース内空間を軸方向Lに区画するように、第一支持壁部81、第三支持壁部83、及び第二支持壁部82が、軸第一方向L1側から記載の順に配置されている。
【0023】
第一回転電機11は、軸方向Lにおける第一端壁部91と第一支持壁部81との間に形成された第一回転電機収容空間に収容されており、第一回転軸71は、第一支持壁部81に形成された第一貫通孔81a(図2参照)に挿通されている。そして、第一回転軸71は、第一端壁部91に配置された第四軸受64と、第一貫通孔81aに配置された第一軸受61とにより、ケース3に対して回転可能な状態で支持されている。第二回転電機12は、軸方向Lにおける第二端壁部92と第二支持壁部82との間に形成された第二回転電機収容空間に収容されており、第二回転軸72は、第二支持壁部82に形成された第二貫通孔82a(図2参照)に挿通されている。そして、第二回転軸72は、第二端壁部92に配置された第五軸受65と、第二貫通孔82aに配置された第二軸受62とにより、ケース3に対して回転可能な状態で支持されている。なお、本実施形態では、コンプレッサ9が第二端壁部92に対して軸第二方向L2側から取り付けられており、第二回転軸72と一体回転するコンプレッサ連結軸73は、第二端壁部92に形成された貫通孔に挿通されている。
【0024】
第一係合装置21は、軸方向Lにおける第一支持壁部81と第三支持壁部83との間に形成された第一係合装置収容空間に収容されており、第二係合装置22は、軸方向Lにおける第二支持壁部82と第三支持壁部83との間に形成された第二係合装置収容空間に収容されている。このように、第一係合装置21と第二係合装置22とは、第三支持壁部83に対して軸方向Lの両側に分かれて配置されている。そのため、第一係合装置21の係合部(後述する第一車輪側係合部41)と、第二係合装置22の係合部(後述する第二車輪側係合部42)との双方を有する駆動ギヤ軸13は、図2に示すように、第三支持壁部83に形成された第三貫通孔83aに挿通されるように配置されている。そして、駆動ギヤ軸13は、第三貫通孔83aに配置された第三軸受63により、ケース3に対して回転可能な状態で支持されている。
【0025】
2.係合装置の構成
次に、本実施形態に係る第一係合装置21及び第二係合装置22の構成について説明する。図1及び図2に示すように、第二係合装置22は噛み合い式の係合装置とされている。第二係合装置22は、第二回転電機12と駆動ギヤ10との間の動力伝達経路に備えられており、第二係合装置22の係合の状態を切り替えることで、第二回転電機12と駆動ギヤ10(車輪7)との間の連結の状態が切り替わる。本実施形態では、第二係合装置22が、本発明における「係合装置」に相当する。
【0026】
具体的には、第二係合装置22は、第二車輪側係合部42と、第二回転電機側係合部52と、第二車輪側係合部42及び第二回転電機側係合部52の少なくとも一方に対して選択的に係合することで当該第二係合装置22の状態を切り替える第二状態切替部材32と、を備えている。ここで、第二回転電機側係合部52は、第二回転電機12に駆動連結された係合部であり、本実施形態では、第二回転軸72と一体回転する外歯の係合部とされている。また、第二車輪側係合部42は、駆動ギヤ10を介して車輪7に駆動連結された係合部であり、本実施形態では、駆動ギヤ10と一体回転する外歯の係合部とされている。本実施形態では、第二車輪側係合部42、第二回転電機側係合部52、及び第二状態切替部材32が、それぞれ、本発明における「車輪側係合部」、「回転電機側係合部」、及び「状態切替部材」に相当する。
【0027】
本実施形態では、図2に示すように、駆動ギヤ10の回転軸である駆動ギヤ軸13は、中軸14と外軸15と係合部形成部材16とを備え、軸方向Lにおける第一回転軸71と第二回転軸72との間に配置されている。外軸15は、径方向Rの内側が中空であるとともに外周部に駆動ギヤ10が形成された円筒状部材とされ、中軸14が外軸15の上記中空の部分に挿入された状態で、中軸14と外軸15とがスプライン係合により連結されている。そして、外軸15の軸第二方向L2側端部の外周面には、当該外周面に対して嵌合(外嵌)するように、外軸15より大径の円筒状部材である係合部形成部材16が固定されている。そして、係合部形成部材16の軸第二方向L2側端部の外周部に、第二車輪側係合部42が形成されている。また、第二回転軸72は、軸第一方向L1側の端部にフランジ部を備え、当該フランジ部の外周部に第二回転電機側係合部52が形成されている。
【0028】
第二状態切替部材32は、軸方向Lに沿って移動可能な円筒状(スリーブ状)部材とされている。第二状態切替部材32は、互いに同径に形成された第二車輪側係合部42及び第二回転電機側係合部52の双方に外嵌可能な形状を備え、内周部に、第二車輪側係合部42及び第二回転電機側係合部52に対して選択的に係合する内歯の係合部が形成されている。
【0029】
そして、第二状態切替部材32は、軸方向Lの位置として、第一位置P1と、第二位置P2と、第三位置P3と、を選択可能に構成されている。ここで、第一位置P1は、図4に示すように、第二車輪側係合部42に係合し、第二回転電機側係合部52から分離する位置である。すなわち、第一位置P1は、第二車輪側係合部42及び第二回転電機側係合部52の内の第二車輪側係合部42のみに係合する位置である。第二位置P2は、図3に示すように、第二回転電機側係合部52に係合し、第二車輪側係合部42から分離する位置である。すなわち、第二位置P2は、第二車輪側係合部42及び第二回転電機側係合部52の内の第二回転電機側係合部52のみに係合する位置である。これらの第一位置P1及び第二位置P2の双方は、第二車輪側係合部42と第二回転電機側係合部52との間を非連結状態とするための非連結位置である。すなわち、第二状態切替部材32は、非連結位置として、第一位置P1及び第二位置P2の2つの位置を選択可能に構成されている。ここで、「非連結状態」とは、対象とする2つの回転部材の間での連結が解除され、当該2つの回転部材の間で駆動力の伝達が行われない状態である。
【0030】
一方、第三位置P3は、図2に示すように、第二車輪側係合部42と第二回転電機側係合部52との双方に係合する位置である。すなわち、第三位置P3は、第二車輪側係合部42と第二回転電機側係合部52との間を連結状態とするための連結位置である。ここで、「連結状態」とは、対象とする2つの回転部材の間での連結が維持され、当該2つの回転部材の間で駆動力の伝達が行われる状態である。すなわち、「連結状態」では、対象とする2つの回転部材が連動して回転する状態となり、本例では、第二車輪側係合部42と第二回転電機側係合部52とが一体回転する状態となる。なお、本明細書では、第二係合装置22の状態(係合の状態)を、第二車輪側係合部42と第二回転電機側係合部52との間の連結の状態(連結状態又は非連結状態)により表す。
【0031】
第二状態切替部材32の外周部には、径方向Rの内側に窪むとともに周方向に延びる溝部32aが形成されている。車両用駆動装置1には、第二状態切替部材32を軸方向Lに移動(スライド)させるための移動機構が備えられており、当該移動機構の第二係合部8b(例えば、スライドフォークの爪部)が溝部32aに係合している。そして、移動機構が備えるアクチュエータにより第二係合部8bを軸方向Lに移動させることで、第二状態切替部材32の軸方向Lの位置を、第一位置P1、第二位置P2、及び第三位置P3の間で切り替えることが可能となっている。なお、第二状態切替部材32は、当該第二状態切替部材32が係合する第二係合装置22の係合部と一体回転するのに対し、第二係合部8bは非回転部材とされる。そのため、第二状態切替部材32の回転時には、溝部32aと第二係合部8bとが摺動する。
【0032】
第一係合装置21は、本実施形態では、図1及び図2に示すように、第二係合装置22と同様、噛み合い式の係合装置とされている。第一係合装置21は、第一回転電機11と駆動ギヤ10との間の動力伝達経路に備えられており、第一係合装置21の係合の状態を切り替えることで、第一回転電機11と駆動ギヤ10(車輪7)との間の連結の状態が切り替わる。
【0033】
第一係合装置21は、第二係合装置22と基本的に同様に構成されており、第二車輪側係合部42に対応する第一車輪側係合部41と、第二回転電機側係合部52に対応する第一回転電機側係合部51と、第二状態切替部材32に対応する第一状態切替部材31とを備えている。図2に示すように、第一係合装置21を構成する各部は、概ね、第二係合装置22における対応する部分を、駆動ギヤ軸13を通る軸方向Lに直交する面に関して対称移動させた位置に配置されている。なお、第一回転電機側係合部51は、第一回転軸71に形成されており、第一回転電機11と一体回転する。また、第一車輪側係合部41は、第二車輪側係合部42とは異なり、駆動ギヤ軸13の外軸15ではなく中軸14に形成されている。具体的には、中軸14は、軸第一方向L1側の端部にフランジ部を備えており、当該フランジ部の外周部に第一車輪側係合部41が形成されている。
【0034】
第一状態切替部材31は、軸方向Lの位置として、第一車輪側係合部41と第一回転電機側係合部51との双方に係合する位置(図2に示す位置)と、第一回転電機側係合部51に係合し、第一車輪側係合部41から分離する位置(図示は省略)と、を選択可能に構成されている。前者の位置は、第一車輪側係合部41と第一回転電機側係合部51との間を連結状態とするための連結位置であり、後者の位置は、第二車輪側係合部42と第二回転電機側係合部52との間を非連結状態とするための非連結位置である。なお、本明細書では、第一係合装置21の状態(係合の状態)を、第一車輪側係合部41と第一回転電機側係合部51との間の連結の状態(連結状態又は非連結状態)により表す。
【0035】
第一状態切替部材31の外周部には、移動機構の第一係合部8aが係合されており、当該移動機構が備えるアクチュエータにより第一係合部8aを軸方向Lに移動させることで、第一状態切替部材31の軸方向Lの位置を、連結位置と非連結位置との間で切り替えることが可能となっている。なお、移動機構は、第一係合部8aと第二係合部8bとを互いに独立に動作可能に構成され、第一係合装置21の係合の状態と第二係合装置22の係合の状態とを、互いに独立に切り替えることが可能となっている。
【0036】
3.制御装置の構成
車両用駆動装置1は、少なくとも第二係合装置22を制御する制御装置30を備えている。本実施形態では、制御装置30は、第二係合装置22に加えて、第一回転電機11、第二回転電機12、及び第一係合装置21を制御するように構成されている。具体的には、図5に示すように、制御装置30は、回転電機制御部33、予測回転速度取得部34、及び係合装置制御部35を備えている。なお、制御装置30は、CPU等の演算処理装置を中核として備えるとともに、RAMやROM等の記憶装置等を有して構成されている。そして、ROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置30の各機能部が構成されている。これらの各機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。
【0037】
制御装置30は、車両用駆動装置1を搭載する車両の各部の情報を取得するために、車両の各部に設けられたセンサ等からの情報を取得可能に構成されている。具体的には、図5に示すように、制御装置30は、第一回転速度センサSe1、第二回転速度センサSe2、エアコンディショナ状態センサSe3、及びアクセル開度センサSe4からの情報を取得可能に構成されている。
【0038】
第一回転速度センサSe1は、第二車輪側係合部42の回転速度を検出するセンサである。具体的には、第一回転速度センサSe1は、第二車輪側係合部42と一体回転する駆動ギヤ10、又は当該駆動ギヤ10と常に一定の変速比で連動して回転する回転部材(例えば、出力用差動歯車装置6の差動入力ギヤ)の回転速度を検出することで、第二車輪側係合部42(駆動ギヤ10)の回転速度を直接或いは間接的に検出する。駆動ギヤ10の回転速度は車速に比例するため、制御装置30は、第一回転速度センサSe1の検出結果に基づき車速を導出する。第二回転速度センサSe2は、第二回転電機側係合部52の回転速度を検出するセンサである。具体的には、第二回転速度センサSe2は、第二回転電機側係合部52と一体回転する第二回転軸72、又は当該第二回転軸72と常に一定の変速比で連動して回転する回転部材(例えば、コンプレッサ連結軸73)の回転速度を検出することで、第二回転電機側係合部52(第二回転軸72)の回転速度を直接或いは間接的に検出する。本実施形態では、第二回転速度センサSe2として、第二回転電機12に備えられた回転センサ(レゾルバ等)が用いられている。アクセル開度センサSe4は、運転者によるアクセルペダル(図示せず)の操作量を検出することによりアクセル開度を検出するセンサである。
【0039】
エアコンディショナ状態センサSe3は、運転者の操作等により選択されているエアコンディショナの状態(運転状態)を検出するセンサである。本実施形態では、制御装置30は、エアコンディショナ状態センサSe3の検出結果に基づき、エアコンディショナの状態が、コンプレッサ9の駆動を必要とする状態(以下、「第一状態」という。)と、コンプレッサ9の駆動が不要な状態(以下、「第二状態」という。)とのいずれの状態であるかを判別する。すなわち、第二状態では、コンプレッサ9の駆動が必要でないため当該コンプレッサ9は非駆動状態とされる。第二状態には、エアコンディショナが作動しているものの単に送風している状態が含まれる。また、制御装置30は、エアコンディショナの状態が第一状態である場合には、エアコンディショナ状態センサSe3の検出結果に基づき、コンプレッサ9の目標回転速度を取得する。
【0040】
制御装置30は、車両側から駆動力源(本例では、第一回転電機11及び第二回転電機12)に要求される車両要求トルクを決定し、当該決定した車両要求トルクに基づき、回転電機11,12の動作制御を行う。ここで、車両要求トルクには、車輪7へ伝達されるトルクに加えて、コンプレッサ9を駆動するためのトルクが含まれる。本実施形態では、制御装置30は、アクセル開度、車速、エアコンディショナの状態、蓄電装置39の状態(蓄電量や温度等)等に基づいて、第一回転電機11及び第二回転電機12のそれぞれに要求される出力トルク(目標トルク)を車両のエネルギ効率も考慮して決定するとともに、第一係合装置21及び第二係合装置22のそれぞれが実現すべき係合の状態を決定する。すなわち、制御装置30は、第一係合装置21及び第二係合装置22のそれぞれについて、連結状態にある場合に非連結状態への切替条件が成立したか否かの判定や、非連結状態にある場合に連結状態への切替条件が成立したか否かの判定を行う。
【0041】
3−1.回転電機制御部の構成
回転電機制御部33は、上述した車両要求トルクに基づき、第一回転電機11及び第二回転電機12を制御する機能部である。図5に示すように、第一回転電機11は、第一インバータ37を介して蓄電装置39(例えばバッテリやキャパシタ等)に電気的に接続されており、第二回転電機12は、第二インバータ38を介して蓄電装置39に電気的に接続されている。回転電機制御部33は、第一インバータ37を制御することで第一回転電機11の動作点(出力トルク及び回転速度)を制御し、第二インバータ38を制御することで第二回転電機12の動作点を制御する。具体的には、回転電機制御部33は、出力トルクを目標トルクに合わせるトルク制御、又は回転速度を目標回転速度に合わせる回転速度制御により、第一回転電機11や第二回転電機12の制御を行う。
【0042】
3−2.予測回転速度取得部の構成
予測回転速度取得部34は、現在より先の時点における、第二車輪側係合部42の回転速度(すなわち予測回転速度)と第二回転電機側係合部52の回転速度(すなわち予測回転速度)とを取得する機能部である。予測回転速度取得部34は、第二係合装置22を連結状態から非連結状態に切り替えるための切替条件が成立した際に、第二係合装置22を非連結状態に切り替えた後における予測回転速度を取得する。また、予測回転速度取得部34は、第二係合装置22の非連結状態において、言い換えれば、第二係合装置22の状態が非連結状態である場合にも予測回転速度を取得する。本実施形態では、予測回転速度取得部34は、制御装置30に入力される車両の各部の情報に基づき予測回転速度を導出して取得する。そして、予測回転速度取得部34が取得した予測回転速度は、後述する係合装置制御部35による第二係合装置22の制御に用いられる。なお、現在より先の時点における予測回転速度は、瞬間値(瞬時値)とすることも時間平均値とすることもできる。
【0043】
ここで、本実施形態では、第二車輪側係合部42の回転速度は車速に応じて定まるため、第二車輪側係合部42の予測回転速度は、車速の推移を予測する種々の方法に基づき取得することが可能である。例えば、車両要求トルク(具体的には、当該車両要求トルクに基づき決定される第一回転電機11や第二回転電機12の目標トルク)、現在までの車速の推移、及び道路の勾配の内の何れか1つ又は2つ以上の組み合わせと、現在の車速と、に基づき、第二車輪側係合部42の予測回転速度が導出される構成とすることができる。本実施形態では、予測回転速度取得部34は、第一回転電機11の目標トルクと現在の車速とに基づき、第二車輪側係合部42の予測回転速度を導出する。
【0044】
また、本実施形態では、第二係合装置22が非連結状態にある場合には、第二回転電機12は、コンプレッサ9を駆動するために用いられる。そのため、本実施形態では、第二係合装置22の非連結状態における第二回転電機側係合部52の回転速度は、エアコンディショナの状態が第二状態である場合には零となるように制御され、エアコンディショナの状態が第一状態である場合には、コンプレッサ9(コンプレッサ駆動軸)の目標回転速度に合わせるように制御される。そこで、本実施形態では、予測回転速度取得部34は、エアコンディショナの状態(第一状態及び第二状態の内の何れであるか)及びコンプレッサ9の目標回転速度に基づき、第二回転電機側係合部52の予測回転速度を導出する。なお、コンプレッサ9の目標回転速度は、設定温度、設定風量、外気の温度、車室内の温度等に基づき設定されるエアコンディショナに要求される出力に応じて、例えばマップ等を参照して決定される。エアコンディショナの状態が第一状態である場合に、コンプレッサ9の目標回転速度が所定値に固定される場合には、第二回転電機側係合部52の予測回転速度が、エアコンディショナの状態(第一状態及び第二状態の内の何れであるか)のみに基づき導出される構成とすることができる。
【0045】
3−3.係合装置制御部の構成
係合装置制御部35は、第一係合装置21及び第二係合装置22の動作制御を行う機能部である。各係合装置21,22が実現すべき係合の状態は、上述したように、車両要求トルクと共に決定される。また、第一係合装置21及び第二係合装置22は、第一係合部8a及び第二係合部8bの位置を変更させる移動機構により、係合の状態を切替可能に構成されている。よって、係合装置制御部35は、当該移動機構に切替指令を出すことで、第一係合装置21及び第二係合装置22の係合の状態を切り替える。
【0046】
ここで、第二係合装置22の状態を非連結状態とするための第二状態切替部材32の位置(非連結位置)は、第一位置P1及び第二位置P2の2つの位置から選択可能である。そして、本実施形態では、制御装置30は、第二係合装置22の非連結状態において、第二車輪側係合部42の回転速度が第二回転電機側係合部52の回転速度より低い場合には第二状態切替部材32が第一位置P1に位置し、第二回転電機側係合部52の回転速度が第二車輪側係合部42の回転速度より低い場合には第二状態切替部材32が第二位置P2に位置するように、第二状態切替部材32の位置を制御するように構成されている。このような構成を実現すべく、係合装置制御部35は、以下に説明する非連結位置選択部36を備えるとともに、後述する非連結位置切替制御を実行するように構成されている。
【0047】
非連結位置選択部36は、第二係合装置22の状態を連結状態から非連結状態に切り替える際に、非連結位置を第一位置P1と第二位置P2との中から選択する機能部である。具体的には、非連結位置選択部36は、予測回転速度取得部34が取得した第二車輪側係合部42の予測回転速度と第二回転電機側係合部52の予測回転速度とに基づき、第二係合装置22を非連結状態に切り替えた後における第二車輪側係合部42の予測回転速度と第二回転電機側係合部52の予測回転速度との大小関係の判定を行う。ここで、「非連結状態に切り替えた後」は、切り替えの直後とすることができるが、一時的に大小関係が入れ替わる過渡時期がある場合には、当該過渡時期の終了直後とすることが好ましい。
【0048】
そして、非連結位置選択部36は、第二車輪側係合部42の予測回転速度が第二回転電機側係合部52の予測回転速度より低い場合には第一位置P1を選択し、第二回転電機側係合部52の予測回転速度が第二車輪側係合部42の予測回転速度より低い場合には第二位置P2を選択する。なお、予測回転速度取得部34が取得した第二車輪側係合部42の予測回転速度と第二回転電機側係合部52の予測回転速度とが同じ値である場合には、予測回転速度取得部34が更に先の時点の予測回転速度を取得して大小関係の比較を行う構成とすることができる。
【0049】
本実施形態では、上述したように、第二係合装置22の非連結状態において、第二回転電機側係合部52の回転速度は、エアコンディショナの状態が第二状態である場合には零となるように制御される。そのため、エアコンディショナの状態が第二状態である場合には、第二係合装置22を非連結状態に切り替えた後における第二回転電機側係合部52の回転速度は、基本的に、車速に比例する第二車輪側係合部42の回転速度を越えることはない。この点に鑑み、本実施形態では、非連結位置選択部36は、第二係合装置22の状態を連結状態から非連結状態に切り替える際に、エアコンディショナの状態がコンプレッサ9の駆動が不要な第二状態である場合には、上記大小関係の判定を行うことなく第二位置P2を選択するように構成されている。
【0050】
また、係合装置制御部35は、第二係合装置22の非連結状態において、第二車輪側係合部42の回転速度と第二回転電機側係合部52の回転速度との大小関係が逆転する場合には、第二車輪側係合部42の回転速度と第二回転電機側係合部52の回転速度との間の回転速度差が差回転閾値未満である同期状態において、第二状態切替部材32の位置を第一位置P1と第二位置P2との間で切り替える非連結位置切替制御を実行するように構成されている。すなわち、非連結位置切替制御による非連結位置切替処理では、第二状態切替部材32が現在、第一位置P1に位置する場合には、第二状態切替部材32の位置を第二位置P2に切り替え、第二状態切替部材32が現在、第二位置P2に位置する場合には、第二状態切替部材32の位置を第一位置P1に切り替える。ここで、係合装置制御部35は、第一回転速度センサSe1及び第二回転速度センサSe2の双方の検出結果に基づき、同期状態であるか否かの判定を行う。また、同期状態を判定するための上記差回転閾値は、予め設定された閾値(所定の閾値)であり、例えば10rpm以上100rpm以下の値とすることができる。なお、この差回転閾値を固定値とはせずに、車速等の要因に応じて可変に設定される構成とすることもできる。
【0051】
なお、係合装置制御部35は、予測回転速度取得部34が取得した第二車輪側係合部42の予測回転速度と第二回転電機側係合部52の予測回転速度とに基づき、第二車輪側係合部42の回転速度と第二回転電機側係合部52の回転速度との大小関係が逆転するか否かを予測する。このような大小関係の逆転は、例えば、エアコンディショナの状態が第一状態である場合に車両を加速させた場合や、車両の走行中にエアコンディショナの状態が第一状態から第二状態に変化した場合等に起こり得る。そして、大小関係の逆転が予測される場合には、係合装置制御部35は、第二車輪側係合部42と第二回転電機側係合部52とが同期状態になるまで待ち、すなわち、第二係合装置22が同期状態になるまで待ち、同期状態になったことを条件に上記の非連結位置切替制御を実行する。
【0052】
なお、係合装置制御部35は、上記大小関係の逆転が予測された後に予測が変化した場合には、同期状態を待つ待機処理を含む非連結位置切替処理の実行を中断するように構成されている。また、先の制御における誤判定や、例外処理の実行等により、上記大小関係の逆転後に、第二車輪側係合部42及び第二回転電機側係合部52の内の第二状態切替部材32が現在係合している係合部が、他方の係合部より回転速度が低くなる場合もあり得る。このような場合にも、係合装置制御部35は非連結位置切替処理の実行を中断するように構成されている。
【0053】
4.第二係合装置制御処理の手順
次に、本実施形態に係る第二係合装置制御処理の手順について、図6から図8のフローチャートを参照して説明する。なお、図6は、制御装置30が実行する第二係合装置制御処理の全体手順を示すフローチャートである。図7は、図6のステップ#03における連結状態時判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図8は、図6のステップ#04における非連結状態時判定処理の処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する各処理手順は、制御装置30の各機能部により実行される。各機能部がプログラムにより構成される場合には、制御装置30が備える演算処理装置が、上記の各機能部を構成するプログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0054】
4−1.第二係合装置制御処理の全体手順
図6に示すように、車両が発進してから(ステップ#01:Yes)、車両が停止する(ステップ#05:Yes)までの間に、ステップ#02を始点とする処理が繰り返し実行される。このステップ#02の処理では、第二係合装置22が連結状態であるか否かの判定が行われ、第二係合装置22が連結状態にある場合には(ステップ#02:Yes)、連結状態時判定処理(ステップ#03)が実行され、第二係合装置22が非連結状態にある場合には(ステップ#02:No)、非連結状態時判定処理(ステップ#04)が実行される。これらの連結状態時判定処理や非連結状態時判定処理の詳細については、後に説明する。
【0055】
車両が停止するまでの間は(ステップ#05:No)、ステップ#02を始点とする処理が繰り返し実行され、車両が停止すると(ステップ#05:Yes)、第二状態切替部材32の第一位置P1への切替処理が実行される。なお、車両が停止した時点で第二状態切替部材32が第一位置P1に位置する場合には、その状態が維持される。このように、本実施形態では、車両が停止すると第二状態切替部材32の第一位置P1への切替処理が実行されるため、車両の発進前の状態では、基本的に、第二状態切替部材32は第一位置P1に位置し、第二係合装置22は非連結状態とされる。
【0056】
そして、車両の発進時には、第二係合装置22を連結状態に切り替えるか否かの判定が実行され、連結状態への切替条件が成立している場合には、第二状態切替部材32の位置を連結位置(第三位置P3)に切り替えて車両を発進させる。一方、連結状態への切替条件が成立していない場合には、第二車輪側係合部42の予測回転速度と第二回転電機側係合部52の予測回転速度とを取得して、予測回転速度が低い方の係合部に第二状態切替部材32を係合させる処理を実行する。これにより、例えば、車両の発進時にエアコンディショナの状態が第一状態である場合には、車両の発進後少なくとも所定の期間は第二車輪側係合部42の回転速度が第二回転電機側係合部52の回転速度より低くなるため、第二状態切替部材32の位置を第一位置P1に維持したまま車両を発進させる。一方、車両の発進時にエアコンディショナの状態が第二状態である場合には、車両の発進後少なくとも所定の期間は第二回転電機側係合部52の回転速度が第二車輪側係合部42の回転速度より低くなるため、第二状態切替部材32の位置を第二位置P2に切り替えた後、車両を発進させる。
【0057】
4−2.連結状態時判定処理
次に、図6のステップ#03の連結状態時判定処理について、図7を参照して説明する。まず、第二係合装置22の非連結状態への切替条件が成立しているか否かの判定を行い(ステップ#11)、当該切替条件が成立している場合には(ステップ#11:Yes)、ステップ#12以降の処理が順に実行されて第二係合装置22が非連結状態へと切り替えられる。一方、第二係合装置22の非連結状態への切替条件が成立していない場合には(ステップ#11:No)、連結状態時判定処理は終了する。
【0058】
第二係合装置22の非連結状態への切替条件が成立している場合(ステップ#11:Yes)、非連結位置の選択処理が実行される。まず、エアコンディショナの状態が第二状態であるか否かの判定が行われ(ステップ#12)、エアコンディショナの状態が第二状態である場合には(ステップ#12:Yes)、非連結位置として第二位置P2が選択される(ステップ#15)。一方、エアコンディショナの状態が第二状態でない場合(ステップ#12:No)、すなわち、第一状態である場合には、第二係合装置22を非連結状態に切り替えた後における、第二車輪側係合部42の予測回転速度と第二回転電機側係合部52の予測回転速度とを取得し、取得された2つの予測回転速度に基づき、ステップ#13の大小関係の判定を実行する。
【0059】
ステップ#13の判定で、第二車輪側係合部42の予測回転速度が第二回転電機側係合部52の予測回転速度より低いと判定された場合には(ステップ#13:Yes)、非連結位置として第一位置P1が選択され(ステップ#14)、第二回転電機側係合部52の予測回転速度が第二車輪側係合部42の予測回転速度より低いと判定された場合には(ステップ#13:No)、非連結位置として第二位置P2が選択される(ステップ#15)。なお、図示は省略しているが、第二車輪側係合部42の予測回転速度と第二回転電機側係合部52の予測回転速度とが等しい場合には、予測回転速度に差が生じるまで、更に先の時点の予測回転速度を取得して大小関係の比較を行う。そして、ステップ#16において、第二状態切替部材32の位置を、ステップ#14又はステップ#15にて選択された非連結位置に切り替えることで、第二係合装置22の状態が連結状態から非連結状態に切り替えられる。
【0060】
4−3.非連結状態時判定処理
次に、図6のステップ#04の非連結状態時判定処理について、図8を参照して説明する。まず、第二係合装置22の連結状態への切替条件が成立しているか否かの判定を行い(ステップ#21)、当該切替条件が成立している場合には(ステップ#21:Yes)、第二係合装置22を連結状態へと切り替えるための処理を実行し(ステップ#25)、非連結状態時判定処理は終了する。なお、この連結状態への切替処理では、第二回転電機12の回転速度を制御して、第二回転電機側係合部52の回転速度を第二車輪側係合部42の回転速度に近づけた後、第二状態切替部材32の位置を非連結位置(第一位置P1又は第二位置P2)から連結位置(第三位置P3)に切り替える。
【0061】
一方、第二係合装置22の連結状態への切替条件が成立していない場合には(ステップ#21:No)、第二車輪側係合部42の予測回転速度と第二回転電機側係合部52の予測回転速度とを取得し、取得された2つの予測回転速度に基づき、第二車輪側係合部42の回転速度と第二回転電機側係合部52の回転速度との大小関係が逆転するか否かを予測する(ステップ#22)。そして、当該大小関係の逆転が予測されない場合には(ステップ#22:No)、非連結状態時判定処理は終了する。
【0062】
一方、上記大小関係の逆転が予測される場合には(ステップ#22:Yes)、第二係合装置22が同期状態になるまで待ち(ステップ#23:No)、第二係合装置22が同期状態になると(ステップ#23:Yes)、第二状態切替部材32の位置を第一位置P1と第二位置P2との間で切り替える非連結位置切替処理を実行し(ステップ#24)、非連結状態時判定処理は終了する。なお、上述したように、ステップ#22でYesと判定された場合でも、特定の場合には非連結位置切替処理が中断され、非連結状態時判定処理が終了される。
【0063】
5.その他の実施形態
最後に、本発明に係る車両用駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
【0064】
(1)上記の実施形態では、非連結位置選択部36が、第二係合装置22の状態を連結状態から非連結状態に切り替える際にエアコンディショナの状態が第二状態である場合には、第二車輪側係合部42の予測回転速度と第二回転電機側係合部52の予測回転速度との大小関係の判定を行うことなく、第二位置P2を選択するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、非連結位置選択部36が、エアコンディショナの状態が第二状態である場合にも、すなわち常に、第二車輪側係合部42の予測回転速度と第二回転電機側係合部52の予測回転速度との大小関係の判定を行って非連結位置を選択する構成とすることもできる。このような構成は、例えば、第二係合装置22が非連結状態にある場合に、第二回転電機12が、コンプレッサ9以外の別の補機(例えばオイルポンプ等)を駆動するためにも用いられる場合に好適である。なお、このような別の補機を備える場合には、予測回転速度取得部34が、当該別の補機に関する状態も考慮して、第二回転電機側係合部52の予測回転速度を導出する構成とすると好適である。
【0065】
(2)上記の実施形態では、係合装置制御部35が、第二係合装置22の非連結状態において、第二車輪側係合部42の回転速度と第二回転電機側係合部52の回転速度との大小関係が逆転する場合には、第二車輪側係合部42と第二回転電機側係合部52とが同期状態になった状態で、第二状態切替部材32の位置を第一位置P1と第二位置P2との間で切り替える非連結位置切替制御を実行する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二係合装置22の非連結状態における第二状態切替部材32の位置を、当該非連結状態への切替時に非連結位置選択部36により選択された位置に維持する構成とすることも可能である。すなわち、制御装置30が、第二係合装置22の非連結状態における全ての期間ではなく、少なくとも一部の期間において、第二車輪側係合部42の回転速度が第二回転電機側係合部52の回転速度より低い場合には第二状態切替部材32が第一位置P1に位置し、第二回転電機側係合部52の回転速度が第二車輪側係合部42の回転速度より低い場合には第二状態切替部材32が第二位置P2に位置するように、第二状態切替部材32の位置を制御する構成とすることができる。
【0066】
(3)上記の実施形態では、コンプレッサ連結軸73が、コンプレッサ駆動軸と一体回転するように当該コンプレッサ駆動軸に駆動連結されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、コンプレッサ連結軸73とコンプレッサ駆動軸との間の動力伝達経路に、これら2つの回転軸の間の係合の状態を変更可能な係合装置(例えば、電磁クラッチ等)が配置され、コンプレッサ9の駆動時にのみ、コンプレッサ連結軸73とコンプレッサ駆動軸とが連結した状態とされる構成とすることもできる。このような構成は、例えば、第二回転電機12が、コンプレッサ9以外の別の補機(例えばオイルポンプ等)を駆動するためにも用いられる場合に好適である。
【0067】
(4)上記の実施形態では、第二車輪側係合部42及び第二回転電機側係合部52の双方が、外歯の係合部とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二車輪側係合部42及び第二回転電機側係合部52の少なくとも何れかが内歯の係合部とされ、第二状態切替部材32が外歯の係合部を有する構成とすることもできる。
【0068】
(5)上記の実施形態では、第一係合装置21が噛み合い式の係合装置とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一係合装置21を摩擦係合装置とすることも可能である。また、第一係合装置21を、一方向にのみトルクを伝達し、逆方向には空転しトルクを伝達しない一方向係合装置(ワンウェイクラッチ)とすることも可能である。
【0069】
(6)上記の実施形態では、第一回転電機11が第一係合装置21を介して駆動ギヤ10に駆動連結された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一回転電機11が、係合装置を介することなく駆動ギヤ10に駆動連結される構成とすることもできる。この場合、例えば、第一回転電機11と駆動ギヤ10とが一体回転する構成とすることができる。
【0070】
(7)上記の実施形態では、第一回転軸71が第一回転電機側係合部51と一体回転し、第二回転軸72が第二回転電機側係合部52と一体回転する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一回転軸71の回転を変速して第一回転電機側係合部51に伝達する変速機構(例えば、減速機構)を備える構成や、第二回転軸72の回転を変速して第二回転電機側係合部52に伝達する変速機構(例えば、減速機構)を備える構成とすることも可能である。
【0071】
(8)上記の実施形態では、第一回転電機11及び第二回転電機12として、出力可能なトルクの上限値については第一回転電機11が第二回転電機12よりも大きく、トルクを出力可能な回転速度の上限値については第二回転電機12が第一回転電機11よりも大きくなるものが用いられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、出力可能なトルクの上限値について、第二回転電機12が第一回転電機11より大きい構成や、トルクを出力可能な回転速度の上限値について、第一回転電機11が第二回転電機12より大きい構成とすることも可能である。
【0072】
(9)上記の実施形態では、駆動ギヤ10の回転軸である駆動ギヤ軸13が、複数の部材(具体的には、中軸14、外軸15、及び係合部形成部材16)を備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、駆動ギヤ軸13として、単一の部材により形成されたものを用いることも可能である。
【0073】
(10)上記の実施形態では、車両用駆動装置1がカウンタギヤ機構5を備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、車両用駆動装置1がカウンタギヤ機構5を備えず、駆動ギヤ10が直接、出力用差動歯車装置6に駆動連結された構成、すなわち、駆動ギヤ10と出力用差動歯車装置6が備えるギヤ(差動入力ギヤ)とが直接噛み合う構成とすることもできる。
【0074】
(11)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、車輪に駆動連結される第一回転電機と、係合装置と、当該係合装置を介して車輪に駆動連結される第二回転電機と、を備えた車両用駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:車両用駆動装置
7:車輪
9:コンプレッサ
11:第一回転電機
12:第二回転電機
22:第二係合装置(係合装置)
30:制御装置
32:第二状態切替部材(状態切替部材)
35:非連結位置選択部
42:第二車輪側係合部(車輪側係合部)
52:第二回転電機側係合部(回転電機側係合部)
73:コンプレッサ連結軸(コンプレッサ連結部材)
P1:第一位置
P2:第二位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に駆動連結される第一回転電機と、係合装置と、当該係合装置を介して前記車輪に駆動連結される第二回転電機と、エアコンディショナ用のコンプレッサに駆動連結されるコンプレッサ連結部材と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第二回転電機は、前記係合装置と前記コンプレッサ連結部材との間の動力伝達経路に配置され、
前記係合装置は、前記車輪に駆動連結される車輪側係合部と、前記第二回転電機に駆動連結される回転電機側係合部と、前記車輪側係合部及び前記回転電機側係合部の少なくとも一方に対して選択的に係合することで当該係合装置の状態を切り替える状態切替部材と、を備えた噛み合い式の係合装置であり、
前記状態切替部材は、前記車輪側係合部と前記回転電機側係合部との間を非連結状態とするための非連結位置として、前記車輪側係合部に係合し、前記回転電機側係合部から分離する第一位置と、前記回転電機側係合部に係合し、前記車輪側係合部から分離する第二位置と、を選択可能に構成されている車両用駆動装置。
【請求項2】
前記係合装置を制御する制御装置を更に備え、
前記制御装置は、前記係合装置の状態を、前記車輪側係合部と前記回転電機側係合部とが連結した連結状態から前記非連結状態に切り替える際に、前記非連結位置を前記第一位置と前記第二位置との中から選択する非連結位置選択部を備え、
前記非連結位置選択部は、前記係合装置を前記非連結状態に切り替えた後における前記車輪側係合部の予測回転速度と前記回転電機側係合部の予測回転速度との大小関係の判定を行い、前記車輪側係合部の予測回転速度が前記回転電機側係合部の予測回転速度より低い場合には前記第一位置を選択し、前記回転電機側係合部の予測回転速度が前記車輪側係合部の予測回転速度より低い場合には前記第二位置を選択する請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記非連結位置選択部は、前記エアコンディショナの状態が前記コンプレッサの駆動が不要な状態である場合には、前記大小関係の判定を行うことなく前記第二位置を選択する請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記係合装置の前記非連結状態において、前記車輪側係合部の回転速度と前記回転電機側係合部の回転速度との大小関係が逆転する場合には、前記制御装置は、前記車輪側係合部の回転速度と前記回転電機側係合部の回転速度との間の回転速度差が差回転閾値未満である同期状態において、前記状態切替部材の位置を前記第一位置と前記第二位置との間で切り替える非連結位置切替制御を実行する請求項2又は3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記係合装置の前記非連結状態において、前記車輪側係合部の回転速度が前記回転電機側係合部の回転速度より低い場合には前記状態切替部材が前記第一位置に位置し、前記回転電機側係合部の回転速度が前記車輪側係合部の回転速度より低い場合には前記状態切替部材が前記第二位置に位置するように、前記状態切替部材の位置を制御する請求項4に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107506(P2013−107506A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254146(P2011−254146)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】