説明

車両盗難警報装置

【課題】ガラス割れの検出精度を向上し、ガラス破損を手口とする車両盗難,車上狙いを抑制することができる車両盗難警報装置を提供する。
【解決手段】車両の室外に予め定められたプレ警報音を出力するためのプレ警報音出力条件が成立したと判定したときにプレ警報音を出力し、プレ警報音の出力により生ずる車両の室内の圧力変化量が予め定められたプレ警報音閾値を超えたと判定したときに、車両の窓ガラスに異常が発生したとして、予め定められた異常対応動作を実行制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両盗難警報装置、特に、圧力センサを利用し、ガラス破損による車両盗難,車上狙いを抑制する車両盗難警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両盗難警報装置や車上狙い防止装置は、大別して車両の運転に必要なペダル,レバー,ステアリングなどを固定して運転操作を不能にする機械的な装置と、各種センサを利用して警報信号などを発生する電子的な装置がある。このうち電子的な装置の代表例としては、車体に衝撃(車体振動検出)センサを取り付け、車体に振動が加わったことを検知する方式がある。また、可聴帯域用マイクロフォンを利用し、車体に加わる打音やガラスの破損などの異常音を検出する装置もある。
【0003】
ガラスの破損を検出するものとして、車両のガラス破損時に生ずる急激な負圧を圧電型マイクロフォンや無指向性コンデンサマイクロフォンのような圧力センサで検知し、警報信号を発生する車両のガラス破損警報装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、ガラスが割れた可能性があることを示唆する情報を得た段階で、直ちにガラスが割れたことを特定せず、そのような情報を得た段階で、その情報が確かであるか否かを検証し、その検証結果に基づいて、ガラスが割れたことを特定することで、ガラスが割れたことの検出に関する信憑性を高めるガラス割れ検出装置が考案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−128620号公報
【特許文献2】特開2008−077167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、ガラス割れ時に急激な正圧(低周波)が発生することがあり、この場合はガラス割れを検出できないという問題がある。また、面積が比較的小さく開閉しない窓ガラス(いわゆる、はめ殺し窓)が割れた時は、低周波の圧力レベルが小さいことがあり、この場合はガラス割れを検出できないという問題もある。
【0007】
特許文献2の構成では、ガラスが割れる場合に特有の振動である基準振動と一致する振動を取得したとき、ガラスが割れた可能性があることを示唆するガラス割れ検出信号を出力する構成となっているが、検知感度を上げると車両に人が触れただけで反応したり、近傍を車両が通過しただけで動作するような誤作動を行う可能性がある。
【0008】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、ガラス割れの検出精度を向上し、ガラス破損を手口とする車両盗難,車上狙いを抑制することができる車両盗難警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するための車両盗難警報装置は、車両の状態を検出する車両状態検出手段と、車両の室外に予め定められたプレ警報音を出力するプレ警報音出力手段と、車両の状態に基づいて、プレ警報音を出力するためのプレ警報音出力条件が成立したか否かを判定するプレ警報音出力条件判定手段と、プレ警報音出力条件判定手段が、プレ警報音出力条件が成立したと判定したときに、プレ警報音を出力するプレ警報音出力制御手段と、車両の室内に設置され、車両の室内の圧力変化を検出する圧力検出手段と、圧力検出手段が検出した、プレ警報音の出力により生ずる車両の室内の圧力変化量が予め定められたプレ警報音閾値を超えたか否かを判定する圧力判定手段と、圧力判定手段が、圧力変化量がプレ警報音閾値を超えたと判定したときに、車両の窓ガラスに異常が発生したとして、予め定められた異常対応動作を実行制御する異常対応動作制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明は、車室外に出力されたプレ警報音の出力により生ずる車両の室内の圧力変化量(以降、「音圧レベル」ともいう)を、車両の室内に取り付けられた圧力検出手段により検出するもので、ガラス割れ等のガラスに異常が発生しているときには、音圧レベルはガラスに異常がないときに比べて異なる(異常時には音圧レベルが大きくなる)ことに着目している。上記構成によって、圧力センサのみでは検知できない正圧が発生した場合、圧力の変化レベルが小さい場合のいずれにおいても、ガラス割れ等の窓ガラスの異常を検知することができ、ガラス割れの検出精度を向上し、ガラス破損を手口とする車両盗難,車上狙いを抑制することができる。また、マイクの感度を上げる必要はないので誤作動を行う可能性もない。
【0011】
また、本発明の車両盗難警報装置における車両状態検出手段は、圧力検出手段を含み、圧力判定手段は、車両の室内の圧力変化量が予め定められた圧力変化量閾値を超えたか否かを判定し、プレ警報音出力条件判定手段は、圧力判定手段が、車両の室内の圧力変化が圧力変化量閾値を超えたと判定してから予め定められた時間が経過したときにプレ警報音出力条件が成立したと判定とする。
【0012】
上記構成によって、車両に人が触れただけや、近傍を車両が通過しただけでは、窓ガラスに異常が発生したと誤認することを防止できる。
【0013】
また、本発明の車両盗難警報装置における異常対応動作制御手段は、予め定められた本警報を出力する本警報出力手段を含む。
【0014】
上記構成によって、窓ガラスに異常が発生したときには、車両の周囲に報知することができる。
【0015】
また、本発明の車両盗難警報装置における異常対応動作制御手段は、車両の窓ガラスの閉動作を行う窓ガラス閉動作手段を含む。
【0016】
上記構成によって、単に窓を閉め忘れただけの場合は、窓を閉めて安全な状態とすることができる。
【0017】
また、本発明の車両盗難警報装置における異常対応動作制御手段は、車両の窓ガラスの閉動作を、モータを駆動制御することにより行う窓ガラス閉動作手段と、モータの動作状態を検出するモータ動作状態検出手段と、モータの動作状態に基づいて、予め定められた本警報を出力するための本警報出力条件が成立したか否かを判定する本警報出力条件判定手段と、を含み、窓ガラス閉動作手段は、プレ警報音出力条件が成立したときに、車両の窓ガラスの閉動作を開始し、本警報出力条件判定手段が、本警報出力条件が成立したと判定したときに、本警報を出力する本警報出力手段をさらに含む。
【0018】
上記構成によって、単に窓を閉め忘れただけなのか、窓ガラスに異常が発生したのかを正確に判定することができる。
【0019】
また、本発明の車両盗難警報装置におけるモータ動作状態検出手段は、モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段を含み、本警報出力条件判定手段は、窓ガラス閉動作手段が窓ガラスの閉動作を開始してから予め定められた時間が経過した後に、モータ回転速度検出手段が検出したモータ回転速度が、予め定められた回転速度閾値を超えているときに本警報出力条件が成立したと判定する。
【0020】
窓ガラスの閉動作を開始してから予め定められた時間が経過した後、窓が完全に閉まっていれば(すなわち、窓ガラスに異常がなければ)、モータは停止するのでモータ回転速度はゼロに近づくはずである。上記構成によっても、単に窓を閉め忘れただけなのか、窓ガラスに異常が発生したのかを正確に判定することができる。
【0021】
また、本発明の車両盗難警報装置におけるモータ動作状態検出手段は、モータの回転トルクを検出するモータ回転トルク検出手段を含み、本警報出力条件判定手段は、窓ガラス閉動作手段が窓ガラスの閉動作を開始してから予め定められた時間が経過した後に、モータ回転トルク検出手段が検出したモータ回転トルクが、予め定められた回転トルク閾値を下回るときに本警報出力条件が成立したと判定する。
【0022】
窓ガラスの閉動作を開始してから予め定められた時間が経過した後に、窓が完全に閉まっていれば(すなわち、窓ガラスに異常がなければ)、窓ガラスを無理に動かそうとするのでモータ回転トルクは増大するはずである。上記構成によって、単に窓を閉め忘れただけなのか、窓ガラスに異常が発生したのかを正確に判定することができる。
【0023】
また、本発明の車両盗難警報装置は、車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段と、車両のエンジンの起動を検出するエンジン起動検出手段と、車両の室内に予め定められた基準音を出力する基準音出力手段と、を備え、基準音出力手段は、エンジン停止検出手段がエンジンの停止を検出してから、エンジン起動検出手段がエンジンの起動を検出するまでの間に基準音を出力し、圧力検出手段が検出した基準音の出力により生ずる車両の室内の圧力変化に基づいて、圧力変化量閾値およびプレ警報音閾値の少なくとも一方を変更する閾値変更手段と、をさらに備える。
【0024】
上記構成によって、車両の周囲の騒音レベルに応じて、圧力変化量閾値およびプレ警報音閾値を適切なものに設定することができる。また、圧力検出手段の感度の変化(経年劣化、温度依存性等)による検出精度低下を補正することができる。
【0025】
また、本発明の車両盗難警報装置における車両状態検出手段は、車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段を含み、プレ警報音出力条件判定手段は、エンジン停止検出手段がエンジンの停止を検出したときにプレ警報音出力条件が成立したと判定する。
【0026】
上記構成によって、車両のエンジンが停止したときをトリガにして、窓ガラスに異常が発生したか否かを判定できる。
【0027】
また、本発明の車両盗難警報装置における異常対応動作制御手段は、予め定められた本警報を発生する本警報出力手段を含む。
【0028】
上記構成によって、車両のエンジンが停止したときに、窓ガラスに異常が発生したことを検知したときには、車両の周囲に報知することができる。
【0029】
また、本発明の車両盗難警報装置における異常対応動作制御手段は、車両の窓ガラスの閉動作を行う窓ガラス閉動作手段を含む。
【0030】
上記構成によって、エンジン停止後に単に窓を閉め忘れただけの場合は、窓を閉めて安全な状態とすることができる。
【0031】
また、本発明の車両盗難警報装置は、車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段と、車両のエンジンの起動を検出するエンジン起動検出手段と、車両の室内に予め定められた基準音を出力する基準音出力手段と、を備え、基準音出力手段は、エンジン停止検出手段がエンジンの停止を検出してから、エンジン起動検出手段がエンジンの起動を検出するまでの間に基準音を出力し、圧力検出手段が検出した、基準音の出力により生ずる車両の室内の圧力変化に基づいて、プレ警報音閾値を変更するプレ警報音閾値変更手段をさらに備える。
【0032】
上記構成によって、車両の周囲の騒音レベルに応じて、プレ警報音閾値を適切なものに設定することができる。また、圧力検出手段の感度の変化(経年劣化、温度依存性等)による検出精度低下を補正することができる。
【0033】
また、本発明の車両盗難警報装置は、プレ警報音出力手段が出力するプレ警報音に含まれる、予め定められた周波数帯域の信号成分のみを出力するプレ警報音用フィルタを備え、圧力検出手段は、プレ警報音用フィルタを通過した信号成分に基づいて、プレ警報音の出力により生ずる車両の室内の圧力変化を検出する。
【0034】
上記構成によって、不要な周波数成分を除去することにより、プレ警報音の出力により生ずる車両の室内の圧力変化を精度よく検出することが可能となる。
【0035】
また、本発明の車両盗難警報装置は、圧力検出手段が検出した圧力変化の大きさと周波数を演算する演算手段を備え、圧力判定手段は、演算手段の演算結果に基づいて、圧力変化の状態を判定する。
【0036】
上記構成によって、プレ警報音の周波数に近い周波数を有する信号を選択し、その信号の大きさを検出することができるので、例えば、プレ警報音の出力により生ずる車両の室内の圧力変化を精度よく検出することが可能となる。
【0037】
また、本発明の車両盗難警報装置は、プレ警報音出力手段および本警報出力手段の少なくとも一方が車両に取り付けられたホーンである。
【0038】
上記構成によって、専用のブザー等、他の装置を取り付けることなく本発明の構成を実現することが可能となる。
【0039】
また、本発明の車両盗難警報装置は、圧力検出手段が検出した圧力変化の信号を増幅する増幅手段と、車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段と、車両のエンジンの起動を検出するエンジン起動検出手段と、車両の室内に予め定められた基準音を出力する基準音出力手段と、を備え、基準音出力手段は、エンジン停止検出手段がエンジンの停止を検出してから、エンジン起動検出手段がエンジンの起動を検出するまでの間に基準音を出力し、増幅手段による圧力変化の信号の増幅結果に基づいて、該増幅手段の増幅率を変更する増幅率変更手段をさらに備える。
【0040】
上記構成によって、車両の周囲の騒音レベルの影響を受けることなく圧力の信号を検出でき、窓ガラスに異常が発生したか否かを判定することができる。また、圧力検出手段の感度の変化(経年劣化、温度依存性等)による検出精度低下を補正することができる。
【0041】
また、本発明の車両盗難警報装置は、基準音出力手段が出力する基準音に含まれる、予め定められた周波数帯域の信号成分のみを出力する基準音用フィルタを備え、圧力検出手段は、基準音用フィルタを通過した信号成分に基づいて、基準音の出力により生ずる車両の室内の圧力変化を検出する。
【0042】
上記構成によって、不要な周波数成分を除去することにより、基準音の出力により生ずる車両の室内の圧力変化を精度よく検出することができ、圧力変化量閾値,プレ警報音閾値,増幅手段の増幅率を最適な値に設定することが可能となる。
【0043】
また、本発明の車両盗難警報装置は、基準音出力手段が車両の室内に取り付けられたスピーカである。
【0044】
車両にはオーディオ装置が搭載され、車両の室内にはスピーカが取り付けられていることが多い。上記構成によって、新たな部品を追加することなく、車両の室内に基準音を出力することが可能となる。
【0045】
また、本発明の車両盗難警報装置は、車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段と、車両の窓ガラスの閉動作を行う窓ガラス閉動作手段と、を備え、窓ガラス閉動作手段は、エンジン停止検出手段がエンジンの停止を検出したときに、車両の窓ガラスの閉動作を開始する。
【0046】
上記構成によって、窓ガラスの異常を検知する前には、車両の窓ガラスは全て閉状態となり、エンジン停止以降に窓ガラスが開状態となるのは乗員の操作以外の要因によることが明白となり、ガラス割れ等の窓ガラスの異常を、より精度よく検知することができる。
【0047】
また、本発明の車両盗難警報装置は、車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段と、車両のエンジンの起動を検出するエンジン起動検出手段と、車両の窓ガラスの閉動作を行う窓ガラス閉動作手段と、車両の室外の照度を検出する照度検出手段と、を備え、窓ガラス閉動作手段は、エンジン停止検出手段がエンジンの停止を検出してから、エンジン起動検出手段がエンジンの起動を検出するまでの間に、検出された前記照度が予め定められた照度閾値を下回るときに、車両の窓ガラスの閉動作を開始する。
【0048】
上記構成によって、照度が小さい夜間等は車両盗難、車上ねらいの頻度が高いため、エンジン停止時に自動的に窓を閉め、ガラス割れの検出精度を上げることができる。一方、真夏の炎天下等は車室内温度の上昇を抑えるために、乗員が窓ガラスを開けた状態で降車する場合があり、このときは乗員の操作を優先して窓ガラスを閉めないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】車両盗難警報装置の構成を示すブロック図。
【図2】窓ガラス,マイク,ホーン,スピーカの配置例を示す図。
【図3】盗難警報制御処理を説明するフロー図。
【図4】マイクからの音圧信号の出力例を示す図。
【図5】盗難警報制御処理の別例を説明するフロー図(図3の変形例)。
【図6】盗難警報制御処理の別例を説明するフロー図。
【図7】閾値変更処理を説明するフロー図。
【図8】増幅率変更処理を説明するフロー図。
【図9】窓閉動作制御処理を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の車両盗難警報装置の一実施例を、図面を用いて説明する。図1に、本発明の車両盗難警報装置100の構成を表すブロック図を示す。車両盗難警報装置100は、主制御装置1と、主制御装置1に接続されたマイク11,ホーン13,スピーカ14,照度センサ15,および車内LAN(Local Area Network)12を介して主制御装置1に通信可能に接続された、エンジンECU(Electronic Control Unit)21,パワーウィンドウECU30を含んで構成される。
【0051】
主制御装置1は、周知の増幅器であるAMP2,周知の帯域通過フィルタであるBPF(Band Pass Filter)3,LAN I/F(インターフェース)4,メモリ5,通信装置6,フィルタ10,およびこれらの接続された制御回路8を備えている。
【0052】
AMP2は、マイク11が検出した車両の室内の圧力変化を示す信号(音圧信号)のレベルを、制御回路8において処理可能な状態に増幅してBPF3あるいはフィルタ10に出力するためのものである。AMP2を含まない構成としてもよい。なお、AMP2が本発明の増幅手段に相当する。また、マイク11が検出する音源(プレ警報音あるいは基準音)に応じて、制御回路8からの制御信号によりAMP2の増幅率を変更可能な構成となっている。
【0053】
本発明のプレ警報音用フィルタであるBPF3は、マイク11が検出したホーン13が出力するプレ警報音による音圧信号から、必要な周波数成分のみを通過させて制御回路8に出力するためのものである。なお、BPF3を含まない構成としてもよい。また、帯域通過フィルタの代わりに、周知のLPF(Low Pass Filter:低域通過フィルタ)あるいはHPF(High Pass Filter:高域通過フィルタ)を用いてもよい。
【0054】
LAN I/F4は、車内LAN12を介して、エンジンECU21,パワーウィンドウECU30等の車載機器やセンサとのデータの遣り取りを行うためのインターフェース回路である。なお、LAN I/F4が本発明の車両状態検出手段,エンジン停止検出手段,エンジン起動検出手段に相当する。
【0055】
メモリ5はEEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory:電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ)やフラッシュメモリ等の書き換え可能なデバイスによって構成され、主制御装置1の動作に必要な情報が記憶されている。なお、メモリ5は、主制御装置1がオフ状態になっても記憶内容が保持されるようになっている。
【0056】
通信装置6は、例えば乗員の所持する携帯通信端末(携帯キー,携帯電話等:図示せず)との間でデータ通信を行うためのものである。
【0057】
制御回路8は、周知のコンピュータとして構成されており、CPU81,ROM82,RAM83,入出力回路であるI/O84,ブザー回路86,およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。CPU81は、ROM82に記憶された制御プログラム82pおよびデータにより制御を行う。なお、制御回路8が本発明のプレ警報音出力条件判定手段,プレ警報音出力制御手段,圧力判定手段,異常対応動作制御手段,警報出力条件判定手段,閾値変更手段,プレ警報音閾値変更手段,演算手段,増幅率変更手段に相当する。
【0058】
ブザー回路86は、電子音(ブザー音ともいう)を生成するためのもので、この電子音はスピーカ14から出力される。スピーカ14は、図2のように、例えば、車両50の前席ドアの内側や後席の後のリアトレイ上面に取り付けられている。後席ドアの内側にも取り付けてよい。なお、スピーカ14が本発明の基準音出力手段に相当する。また、基準音出力手段として、車室内に取り付けられたブザー(図示せず)を用いてもよい。
【0059】
本発明の基準音用フィルタであるフィルタ10は、マイク11が検出したスピーカ14が出力する基準音による音圧信号から、必要な周波数成分のみを通過させて制御回路8に出力するためのものである。なお、フィルタ10を含まない構成としてもよい。また、フィルタ10は、上述のBPF,LPF,HPFのいずれを用いてもよい。
【0060】
マイク11は、例えば周知のコンデンサ型(静電型ともいう)マイクロフォンが用いられる。図2に、マイク11の取り付け例を示す。図2の例では、マイク11は、無指向性マイクとして、車両50の車室内の天井の中心部近傍に取り付けられている。また、車両50の車室内の天井において、各窓ガラス(フロントガラス61,運転席側三角窓ガラス62,助手席側三角窓ガラス63,運転席側窓ガラス64,助手席側窓ガラス65,運転席側後部窓ガラス66,助手側後部窓ガラス67,運転席側リアクォータガラス68,助手席側リアクォータガラス69,リアガラス70)の近傍に、指向性のマイク(61a〜70a)を取り付けてもよい。
【0061】
そして、マイク11は、ホーン13あるいはスピーカ14が出力した音を、空気中の圧力の変化として検出し、音圧信号として出力する。なお、マイク11が本発明の車両状態検出手段,圧力検出手段に相当する。
【0062】
ホーン13は、法規に基づいて、図2のように、例えば、車両50のエンジンルームのフロントグリル近傍に取り付けられている。なお、ホーン13が本発明のプレ警報音出力手段,本警報出力手段に相当する。また、プレ警報音出力手段、本警報出力手段として、周知にキーレスエントリーシステムで、ドアの解錠/施錠の際に乗員に動作状態を報知するアンサーバックに用いられるブザーを用いてもよい。
【0063】
照度センサ15は、光センサともいわれ、車両50の室外の照度を検出するためのもので、室外の照度に応じてヘッドライト等の灯火の点灯制御を行うオートライトシステムに用いられているものと同様のものである。照度センサ15は、図2のように、例えば車両50のダッシュパネル上部に取り付けられる。なお、照度センサ15が本発明の照度検出手段に相当する。
【0064】
図1に戻り、エンジンECU21は、車両の状態(アクセル開度,速度,吸気温,水温等)に基づいて燃料噴射量や点火時期を演算し、エンジンの回転制御を行うものである。また、エンジンECU21は、エンジン回転数などのエンジンの状態に関する情報(エンジン動作情報)を、車内LAN12を介して他の車載機器に出力している。
【0065】
パワーウィンドウECU30は、車両50の窓ガラスの開閉を行うためのものである。図2の例では、運転席側窓ガラス64,助手席側窓ガラス65,運転席側後部窓ガラス66,助手側後部窓ガラス67の開閉を行う。パワーウィンドウECU30は、モータ制御部31,窓開閉機構32,モータ33,モータの回転速度を検出する周知のロータリエンコーダ等の回転速度センサ(図1では「速度センサ」と表記)34,モータの回転トルクを検出する周知の回転トルクセンサ(図1では「トルクセンサ」と表記)35を含んで構成されている。なお、窓開閉機構,モータについては、各窓ガラス(64〜67)について同様の構成をとるため、運転席側窓ガラス64に関係するのもののみを図示してある。
【0066】
なお、パワーウィンドウECU30が本発明の窓ガラス閉動作手段に相当する。また、回転速度センサ34が本発明のモータ動作状態検出手段,モータ回転速度検出手段に相当する。また、回転トルクセンサ35が本発明のモータ動作状態検出手段,モータ回転トルク検出手段に相当する。
【0067】
パワーウィンドウECU30は、乗員の図示しない操作スイッチの操作を検出した場合、あるいは主制御装置1からの制御命令を受信した場合(詳細は後述)、これら操作内容あるいは受信内容に基づいて該当する窓ガラスの開閉制御を行う。
【0068】
図3を用いて、主制御装置1における盗難警報制御処理について説明する。なお、本処理は、ROM82に記憶されてCPU81が実行する制御プログラム82pに含まれ、制御プログラム82pに含まれる他の処理とともに繰り返し実行される。
【0069】
まず、マイク11が検出した車両の室内の圧力変化を、音圧信号として取得する(S11)。このとき、AMP2あるいはBPF3が含まれる構成であれば、それぞれ音圧信号の増幅,音圧信号の特定の周波数成分のみの通過も行われる(他の処理においても同様)。このとき、AMP2の増幅率は、制御回路8によって、圧力変化量をより正確に検知可能な値に設定される。次に、その圧力変化量が予めメモリ5に記憶されている圧力変化量閾値を超えているか否か(すなわち、音圧信号のレベル値が該閾値を超えているか否か)を判定する。音圧信号の圧力変化量が圧力変化量閾値を超えていると判定した(すなわち、プレ警報音出力条件が成立した)とき(S12:Yes)、判定した時点からの経過時間を計測し、例えば1秒(ガラスが割れてから地面に落ちるまでの時間に相当)のような予め定められた時間(所定時間)が経過したか否かを判定する。
【0070】
圧力変化量が予め定められた圧力変化量閾値を超えてから予め定められた時間が経過したと判定したとき(S13:Yes)、ホーン13から予め定められた音量の音(すなわち、プレ警報音)を出力する(S14)。
【0071】
続いて、プレ警報音を出力後にマイク11が検出した車両の室内の圧力変化を、音圧信号として取得し(S15)、その圧力変化量が、予めメモリ5に記憶されているプレ警報音閾値を超えたか否かを判定する。このとき、AMP2の増幅率は、制御回路8によって、プレ警報音による圧力変化量をより正確に検知可能な値に設定される。まず、音圧信号の周波数を測定して、その音圧信号が、プレ警報音によるものであるか否かを判定する。周波数は、例えば、音圧信号を周知のA/D変換器でAD変換し、そのA/D変換値が予め定められた値(例えばゼロ、あるいは最大値)と一致する周期から算出できるので、この周波数と、予めROM82に記憶されたプレ警報音の周波数とを比較すれば、プレ警報音であるか否かを判定できる。また、A/D変換値とプレ警報音閾値とを比較すれば、プレ警報音閾値を超えたか否かを判定できる。
【0072】
図4に、マイク11がプレ警報音による圧力変化を検出したことにより出力する音圧信号の例を示す。図4の例では、プレ警報音の周波数は2kHzである。そして、窓ガラスに割れがないときの音圧信号の波形をAで示し、窓ガラスに割れがあるときの音圧信号の波形をBで示している。つまり、窓ガラスが割れているときにマイク11が検出したプレ警報音による音圧信号は、窓ガラスに割れていないときに比べて大きくなる。ここで、値THをプレ警報音閾値とすれば、音圧信号から窓ガラスの割れを判定することができる。
【0073】
図3に戻り、プレ警報音による圧力変化量(すなわち、音圧信号のレベル)がプレ警報音閾値を超えたと判定したとき(S16:Yes)、ホーン13によるプレ警報音の出力を停止する(S17)。そして、ホーン13により本警報を出力する(本発明の異常対応動作,S18)。本警報は、例えば、プレ警報音とは異なる吹鳴パターン,あるいは異なる音量とする。また、出力時間をプレ警報音は短く(1秒程度)、本警報は長く(60秒程度)してもよい。また、上述のアンサーバック用ブザーのような、ホーン13とは異なる音源を用いて本警報を出力してもよい。
【0074】
本警報の出力後、例えば60秒のような所定時間が経過したとき(S19:Yes)、本警報の出力を停止する(S20)。
【0075】
一方、プレ警報音による音圧信号における圧力変化量がプレ警報音閾値を超えないと判定したとき(S16:No)、ホーン13によるプレ警報音の出力を停止し(S21)、本処理を終了する。
【0076】
なお、上述の処理において、ステップS18の本警報の出力開始時に、パワーウィンドウECU30に、全ての窓(運転席側窓ガラス64,助手席側窓ガラス65,運転席側後部窓ガラス66,助手側後部窓ガラス67)の閉動作を行うように制御命令を送ってもよい。また、このとき本警報を出力せずに窓閉動作を行ってもよい。
【0077】
また、上述のステップS17での本警報の出力において、通信装置6を用いて、乗員の所持する携帯通信端末あるいは管理センタ等の施設に設置されているサーバ(図示せず)に、窓ガラスに異常がある旨の情報を送信してもよい。
【0078】
また、上述のステップS17での本警報の出力において、車内LAN12を介して、ヘッドライトあるいはハザードランプ等の灯火の点灯制御を行っている制御ユニット(図示せず)に、予め定められた灯火を所定の点灯パターンで所定時間点灯させるよう制御指令を出力してもよい。
【0079】
図5を用いて、主制御装置1における盗難警報制御処理の別例について説明する。なお、本処理は図3の変形例であるため、図3と同じ処理ステップについては同一のステップ番号を付与し、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0080】
まず、マイク11が検出した車両の室内の圧力変化を、音圧信号として取得し(S11)、圧力変化量が圧力変化量閾値を超えてから(S12:Yes)、予め定められた時間が経過したと判定したとき(S13:Yes)、ホーン13からプレ警報音を出力する(S14)。
【0081】
続いて、パワーウィンドウECU30に、全ての窓(運転席側窓ガラス64,助手席側窓ガラス65,運転席側後部窓ガラス66,助手側後部窓ガラス67)の閉動作を行うように制御命令を送る(S141)。そして、制御命令を送った時点からの経過時間を計測し、例えば10秒(窓ガラスが全開状態から全閉状態となるまでの時間)のような予め定められた時間(所定時間)が経過したか否かを判定する。
【0082】
上述の所定時間が経過したと判定したとき(S142:Yes)、パワーウィンドウECU30からモータ動作状態情報を取得する(S143)。モータ動作状態は、以下のうちの少なくとも一方を含む。以下の例は、運転席側窓ガラス64についてのモータ動作状態情報であるが、他の窓ガラス(助手席側窓ガラス65,運転席側後部窓ガラス66,助手側後部窓ガラス67)についてのモータ動作状態情報も同様に取得する。
・回転速度センサ34により検出されるモータ回転速度。
・回転トルクセンサ35により検出されるモータ回転トルク。
【0083】
次に、取得したモータ動作状態情報に基づいて、下記のうちの少なくとも一方を用いて、本警報出力条件が成立したか否かを判定する。
・全ての窓ガラスのうち、モータ回転速度が予めメモリ5に記憶されている回転速度閾値を超えているものが1つ以上あるときに本警報出力条件が成立したと判定する。
・全ての窓ガラスのうち、モータ回転トルクが予めメモリ5に記憶されている回転トルク閾値を下回るものが1つ以上あるときに本警報出力条件が成立したと判定する。
【0084】
本警報出力条件が成立したと判定したとき(S144:Yes)、運転席側窓ガラス64,助手席側窓ガラス65,運転席側後部窓ガラス66,助手側後部窓ガラス67のいずれかに異常が発生したと判断し、ホーン13によるプレ警報音の出力を停止し(S17)、ホーン13により本警報を所定時間出力する(S18〜S20)。
【0085】
一方、本警報出力条件が成立しないと判定したとき(S144:No)、プレ警報音を出力後にマイク11が検出した車両の室内の圧力変化を、音圧信号として取得し(S15)、プレ警報音による音圧信号における圧力変化量がプレ警報音閾値を超えたと判定したとき(S16:Yes)、はめ殺し窓(フロントガラス61,運転席側三角窓ガラス62,助手席側三角窓ガラス63,運転席側リアクォータガラス68,助手席側リアクォータガラス69,リアガラス70)のいずれかに異常が発生したと判断し、ホーン13によるプレ警報音の出力を停止し(S17)、ホーン13により本警報を所定時間出力する(S18〜S20)。なお、ステップS141〜S20が、本発明の異常対応動作に相当する。
【0086】
また、一方、プレ警報音による音圧信号における圧力変化量がプレ警報音閾値を超えないと判定したとき(S16:No)、全ての窓ガラスに異常はないと判断し、ホーン13によるプレ警報音の出力を停止し(S21)、本処理を終了する。
【0087】
図6を用いて、主制御装置1における盗難警報制御処理の別例について説明する。まず、車内LAN12を介してエンジンECU21から上述のエンジン動作情報を取得する(S31)。次に、エンジン動作情報に、エンジンが停止状態に遷移した旨の情報が含まれているか否かを判定する。エンジンが停止状態に遷移した旨の情報が含まれている(すなわち、プレ警報音出力条件が成立した)とき(S32:Yes)、ホーン13から予め定められた音量の音(すなわち、プレ警報音)を出力する(S33)。
【0088】
続いて、プレ警報音を出力後の車室内の圧力変化(音圧信号)をマイク11により検出し(S34)、プレ警報音による音圧信号における圧力変化量が、予めメモリ5に記憶されているプレ警報音閾値を超えたか否かを判定する。判定方法は、図3の例と同様である。
【0089】
プレ警報音による音圧信号における圧力変化量がプレ警報音閾値を超えたと判定したとき(S35:Yes)、いずれかの窓ガラスが開いていると判断し、ホーン13によるプレ警報音の出力を停止し、ホーン13により本警報を出力する(本発明の異常対応動作,S37)。本警報の出力方法については、図3の例と同様である。
【0090】
続いて、パワーウィンドウECU30に、全ての窓(運転席側窓ガラス64,助手席側窓ガラス65,運転席側後部窓ガラス66,助手側後部窓ガラス67)の閉動作を行うように制御命令を送る(本発明の異常対応動作,S38)。
【0091】
本警報の出力後、例えば60秒のような所定時間が経過したとき(S39:Yes)、本警報の出力を停止する(S40)。
【0092】
一方、プレ警報音による音圧信号における圧力変化量がプレ警報音閾値を超えないと判定したとき(S35:No)、全ての窓ガラスが開いていないと判断し、ホーン13によるプレ警報音の出力を停止し(S41)、本処理を終了する。
【0093】
なお、上述の処理において、ステップS38の窓閉動作を行わないようにしてもよい。
【0094】
また、上述のステップS37での本警報の出力において、通信装置6を用いて、乗員の所持する携帯通信端末あるいは管理センタ等の施設に設置されているサーバ(図示せず)に、窓が開いたままの状態である旨の情報を送信してもよい。
【0095】
図3,図5,あるいは図6の盗難警報制御処理を実行する前に、車両50の全ての窓(運転席側窓ガラス64,助手席側窓ガラス65,運転席側後部窓ガラス66,助手側後部窓ガラス67)の閉動作を行ってもよい。図9を用いて、主制御装置1における窓閉動作制御処理について説明する。なお、本処理は、ROM82に記憶されてCPU81が実行する制御プログラム82pに含まれる。
【0096】
まず、車内LAN12を介してエンジンECU21から上述のエンジン動作情報を取得する(S91)。次に、エンジン動作情報に、エンジンが停止状態に遷移した旨の情報が含まれているか否かを判定する。エンジンが停止状態に遷移した旨の情報が含まれているとき(S92:Yes)、照度センサ15から車両50の室外の照度に関する情報を取得する(S93)。そして、照度が予めメモリ5に記憶されている照度閾値を超えたか否かを判定する。
【0097】
照度が照度閾値を下回ったと判定したとき(S94:Yes)、パワーウィンドウECU30に、全ての窓の閉動作を行うように制御命令を送る(S95)。この後、図3,図5,あるいは図6の盗難警報制御処理を実行する。なお、窓の閉動作を開始するとき、あるいは全ての窓の閉動作が完了したときに、ホーン13を例えば1秒のような所定期間吹鳴させてもよい。
【0098】
上述の例で、車両50の室外の照度に関係なく全ての窓の閉動作を行うようにしてもよい。この場合、ステップS93,S94は実行されない。また、窓の閉動作を行う際、全ての窓の開閉状態を調べ、開状態の窓に対してのみ閉動作を行うようにしてもよい。この場合、運転席側窓ガラス64,助手席側窓ガラス65,運転席側後部窓ガラス66,助手側後部窓ガラス67には、窓の開閉状態を検知するセンサが取り付けられる。このセンサとして、例えば、窓ガラスの上下に応じて抵抗値が変化して、その抵抗値に応じた電圧を発生するポテンショメータを用いる。
【0099】
図7を用いて、主制御装置1における閾値変更処理について説明する。なお、本処理は、ROM82に記憶されてCPU81が実行する制御プログラム82pに含まれ、制御プログラム82pに含まれる他の処理とともに繰り返し実行される。
【0100】
まず、車内LAN12を介してエンジンECU21から上述のエンジン動作情報を取得する(S51)。次に、エンジン動作情報に、エンジンが停止状態に遷移した旨の情報が含まれているか否かを判定する。エンジンが停止状態に遷移した旨の情報が含まれているとき(S52:Yes)、例えばブザー回路86を用いて、スピーカ14から予め定められた音量,周波数の基準音を出力する(S53)。
【0101】
ステップS52の判定処理において、上述の盗難警報制御処理(図3,図5,図6)が実行されていないことを判定条件に加えてもよい。
【0102】
次に、マイク11により基準音による車室内の圧力変化を検出する(S54)。このとき、AMP2あるいはフィルタ10が含まれる構成であれば、それぞれ音圧信号の増幅,音圧信号の特定の周波数成分のみの通過も行われる。このとき、AMP2の増幅率は、制御回路8によって、基準音による圧力変化量をより正確に検知可能な値に設定される。そして、基準音の音圧信号の信号レベルを測定し、その信号レベルに基づいて、圧力変化量閾値,プレ警報音閾値を変更する(S55,S56)。例えば、圧力変化量と圧力変化量閾値,プレ警報音閾値との対応関係をそれぞれマップデータとして、予めメモリ5に記憶しておき、検出した基準音による圧力変化量に対応する圧力変化量閾値あるいはプレ警報音閾値を、それぞれの新たな閾値としてメモリ5に記憶する。
【0103】
なお、上述の盗難警報制御処理において、図6のように圧力変化量閾値を用いていない場合は、ステップS55を実行しなくてもよい。
【0104】
図8を用いて、主制御装置1における増幅率変更処理について説明する。なお、本処理は、ROM82に記憶されてCPU81が実行する制御プログラム82pに含まれ、制御プログラム82pに含まれる他の処理とともに繰り返し実行される。
【0105】
まず、車内LAN12を介してエンジンECU21から上述のエンジン動作情報を取得する(S71)。次に、エンジン動作情報に、エンジンが停止状態に遷移した旨の情報が含まれているか否かを判定する。エンジンが停止状態に遷移した旨の情報が含まれているとき(S72:Yes)、例えばブザー回路86を用いて、スピーカ14から予め定められた音量の基準音を出力する(S73)。
【0106】
ステップS72の判定処理において、上述の盗難警報制御処理が実行されていないことを判定条件に加えてもよい。
【0107】
次に、マイク11により基準音による車室内の圧力変化を検出する(S74)。そして、検出した車室内の圧力変化(音圧信号)をAMP2において増幅する(S75)。フィルタ10が含まれる構成であれば、音圧信号の特定の周波数成分のみの通過も行われる。増幅した基準音の音圧信号の信号レベルを測定し、その信号レベルに基づいて、増幅率を変更する(S76)。例えば、基準音の信号レベルと増幅率との対応関係をマップデータとして、予めメモリ5に記憶しておき、検出した基準音の信号レベルに対応する増幅率を、新たな増幅率としてメモリ5に記憶する。
【0108】
そして、以降の盗難警報制御処理でAMP2を用いる場合、メモリ5から増幅率を読み出して、その増幅率となるようにAMP2を制御する。例えば、周知のオペアンプを用いて増幅を行う場合、増幅率調整用の抵抗を可変抵抗とし、制御回路8により、定められた増幅率となるように可変抵抗の値を調整制御する。
【0109】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 主制御装置
2 AMP(増幅手段)
3 BPF(プレ警報音用フィルタ)
4 LAN I/F(車両状態検出手段,エンジン停止検出手段,エンジン起動検出手段)
5 メモリ
8 制御回路(プレ警報音出力条件判定手段,プレ警報音出力制御手段,圧力判定手段,異常対応動作制御手段,本警報出力条件判定手段,閾値変更手段,プレ警報音閾値変更手段,演算手段,増幅率変更手段)
10 フィルタ(基準音用フィルタ)
11 マイク(車両状態検出手段,圧力検出手段)
12 車内LAN
13 ホーン(プレ警報音出力手段,本警報出力手段)
14 スピーカ(基準音出力手段)
15 照度センサ(照度検出手段)
21 エンジンECU
30 パワーウィンドウECU(窓ガラス閉動作手段)
33 モータ
34 回転速度センサ(モータ動作状態検出手段,モータ回転速度検出手段)
35 回転トルクセンサ(モータ動作状態検出手段,モータ回転トルク検出手段)
100 車両盗難警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
前記車両の室外に予め定められたプレ警報音を出力するプレ警報音出力手段と、
前記車両の状態に基づいて、前記プレ警報音を出力するためのプレ警報音出力条件が成立したか否かを判定するプレ警報音出力条件判定手段と、
前記プレ警報音出力条件判定手段が、前記プレ警報音出力条件が成立したと判定したときに、前記プレ警報音を出力するプレ警報音出力制御手段と、
前記車両の室内に設置され、前記車両の室内の圧力変化を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段が検出した、前記プレ警報音の出力により生ずる前記車両の室内の圧力変化量が予め定められたプレ警報音閾値を超えたか否かを判定する圧力判定手段と、
前記圧力判定手段が、前記圧力変化量が前記プレ警報音閾値を超えたと判定したときに、前記車両の窓ガラスに異常が発生したとして、予め定められた異常対応動作を実行制御する異常対応動作制御手段と、
を備えることを特徴とする車両盗難警報装置。
【請求項2】
前記車両状態検出手段は、前記圧力検出手段を含み、
前記圧力判定手段は、前記車両の室内の圧力変化量が予め定められた圧力変化量閾値を超えたか否かを判定し、
前記プレ警報音出力条件判定手段は、前記圧力判定手段が、前記車両の室内の圧力変化が前記圧力変化量閾値を超えたと判定してから予め定められた時間が経過したときに前記プレ警報音出力条件が成立したと判定とする請求項1に記載の車両盗難警報装置。
【請求項3】
前記異常対応動作制御手段は、予め定められた本警報を出力する本警報出力手段を含む請求項2に記載の車両盗難警報装置。
【請求項4】
前記異常対応動作制御手段は、前記車両の窓ガラスの閉動作を行う窓ガラス閉動作手段を含む請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両盗難警報装置。
【請求項5】
前記異常対応動作制御手段は、
前記車両の窓ガラスの閉動作を、モータを駆動制御することにより行う窓ガラス閉動作手段と、
前記モータの動作状態を検出するモータ動作状態検出手段と、
前記モータの動作状態に基づいて、予め定められた本警報を出力するための本警報出力条件が成立したか否かを判定する本警報出力条件判定手段と、を含み、
前記窓ガラス閉動作手段は、前記プレ警報音出力条件が成立したときに、前記車両の窓ガラスの閉動作を開始し、
前記本警報出力条件判定手段が、前記本警報出力条件が成立したと判定したときに、前記本警報を出力する本警報出力手段をさらに含む請求項1または請求項2に記載の車両盗難警報装置。
【請求項6】
前記モータ動作状態検出手段は、前記モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段を含み、
前記本警報出力条件判定手段は、前記窓ガラス閉動作手段が前記窓ガラスの閉動作を開始してから予め定められた時間が経過した後に、前記モータ回転速度検出手段が検出した前記モータ回転速度が、予め定められた回転速度閾値を超えているときに前記本警報出力条件が成立したと判定する請求項5に記載の車両盗難警報装置。
【請求項7】
前記モータ動作状態検出手段は、前記モータの回転トルクを検出するモータ回転トルク検出手段を含み、
前記本警報出力条件判定手段は、前記窓ガラス閉動作手段が前記窓ガラスの閉動作を開始してから予め定められた時間が経過した後に、前記モータ回転トルク検出手段が検出した前記モータ回転トルクが、予め定められた回転トルク閾値を下回るときに前記本警報出力条件が成立したと判定する請求項5に記載の車両盗難警報装置。
【請求項8】
前記車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段と、
前記車両のエンジンの起動を検出するエンジン起動検出手段と、
前記車両の室内に予め定められた基準音を出力する基準音出力手段と、を備え、
前記基準音出力手段は、前記エンジン停止検出手段が前記エンジンの停止を検出してから、前記エンジン起動検出手段が前記エンジンの起動を検出するまでの間に前記基準音を出力し、
前記圧力検出手段が検出した前記基準音の出力により生ずる前記車両の室内の圧力変化に基づいて、前記圧力変化量閾値および前記プレ警報音閾値の少なくとも一方を変更する閾値変更手段と、
をさらに備える請求項2ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両盗難警報装置。
【請求項9】
前記車両状態検出手段は、前記車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段を含み、
前記プレ警報音出力条件判定手段は、前記エンジン停止検出手段が前記エンジンの停止を検出したときに前記プレ警報音出力条件が成立したと判定する請求項1に記載の車両盗難警報装置。
【請求項10】
前記異常対応動作制御手段は、予め定められた本警報を発生する本警報出力手段を含む請求項9に記載の車両盗難警報装置。
【請求項11】
前記異常対応動作制御手段は、前記車両の窓ガラスの閉動作を行う窓ガラス閉動作手段を含む請求項9に記載の車両盗難警報装置。
【請求項12】
前記車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段と、
前記車両のエンジンの起動を検出するエンジン起動検出手段と、
前記車両の室内に予め定められた基準音を出力する基準音出力手段と、を備え、
前記基準音出力手段は、前記エンジン停止検出手段が前記エンジンの停止を検出してから、前記エンジン起動検出手段が前記エンジンの起動を検出するまでの間に前記基準音を出力し、
前記圧力検出手段が検出した、前記基準音の出力により生ずる前記車両の室内の圧力変化に基づいて、前記プレ警報音閾値を変更するプレ警報音閾値変更手段をさらに備える請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の車両盗難警報装置。
【請求項13】
前記プレ警報音出力手段が出力する前記プレ警報音に含まれる、予め定められた周波数帯域の信号成分のみを出力するプレ警報音用フィルタを備え、
前記圧力検出手段は、前記プレ警報音用フィルタを通過した前記信号成分に基づいて、前記プレ警報音の出力により生ずる前記車両の室内の圧力変化を検出する請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の車両盗難警報装置。
【請求項14】
前記圧力検出手段が検出した前記圧力変化の大きさと周波数を演算する演算手段を備え、
前記圧力判定手段は、前記演算手段の演算結果に基づいて、前記圧力変化の状態を判定する請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の車両盗難警報装置。
【請求項15】
前記プレ警報音出力手段および前記本警報出力手段の少なくとも一方が前記車両に取り付けられたホーンである請求項3、または請求項5ないし請求項7のいずれか1項、または請求項10に記載の車両盗難警報装置。
【請求項16】
前記圧力検出手段が検出した前記圧力変化の信号を増幅する増幅手段と、
前記車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段と、
前記車両のエンジンの起動を検出するエンジン起動検出手段と、
前記車両の室内に予め定められた基準音を出力する基準音出力手段と、を備え、
前記基準音出力手段は、前記エンジン停止検出手段が前記エンジンの停止を検出してから、前記エンジン起動検出手段が前記エンジンの起動を検出するまでの間に前記基準音を出力し、
前記増幅手段による前記圧力変化の信号の増幅結果に基づいて、該増幅手段の増幅率を変更する増幅率変更手段をさらに備える請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の車両盗難警報装置。
【請求項17】
前記基準音出力手段が出力する前記基準音に含まれる、予め定められた周波数帯域の信号成分のみを出力する基準音用フィルタを備え、
前記圧力検出手段は、前記基準音用フィルタを通過した前記信号成分に基づいて、前記基準音の出力により生ずる前記車両の室内の圧力変化を検出する請求項8または請求項12または請求項16に記載の車両盗難警報装置。
【請求項18】
前記基準音出力手段が前記車両の室内に取り付けられたスピーカである請求項8または請求項12または請求項16に記載の車両盗難警報装置。
【請求項19】
前記車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段と、
前記車両の窓ガラスの閉動作を行う窓ガラス閉動作手段と、を備え、
前記窓ガラス閉動作手段は、エンジン停止検出手段が前記エンジンの停止を検出したときに、前記車両の窓ガラスの閉動作を開始する請求項1ないし請求項18のいずれか1項に記載の車両盗難警報装置。
【請求項20】
前記車両のエンジンの停止を検出するエンジン停止検出手段と、
前記車両のエンジンの起動を検出するエンジン起動検出手段と、
前記車両の窓ガラスの閉動作を行う窓ガラス閉動作手段と、
前記車両の室外の照度を検出する照度検出手段と、を備え、
前記窓ガラス閉動作手段は、前記エンジン停止検出手段が前記エンジンの停止を検出してから、前記エンジン起動検出手段が前記エンジンの起動を検出するまでの間に、検出された前記照度が予め定められた照度閾値を下回るときに、前記車両の窓ガラスの閉動作を開始する請求項1ないし18のいずれか1項に記載の車両盗難警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−159117(P2011−159117A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20411(P2010−20411)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】