説明

車両盗難通報装置

【課題】車両盗難状況の迅速な通知、周囲への安全性を確保された車両盗難通報装置を提供する。
【解決手段】運転者の携帯電話機及び警備会社との間で無線パケット通信を行う無線パケット通信モジュールと、車両の窓ガラス破壊を検知し、車両のキーロック解除を検知し、車両のエンジンのONを検知する3つのセンサーと、車両の室内状態を撮影する撮像装置と、警笛音を発する警笛装置と、車両の所在位置を表示するGPS装置と、車両の走行を停止させるエンジン減速・停止装置とを備え、第1〜3のセンサー、撮像装置およびGPS装置からの異常情報は、無線パケット通信モジュールを介して携帯電話機および警備会社の少なくとも一方の異常受信装置に通知され、この異常受信装置からの指令により、警笛装置からの警笛音が発せられて、GPS装置による当車両の所在位置が追跡されるとともにエンジン減速・停止装置により走行停止が行われるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報状態の所在を他局に通報する警報システムであって無線伝送システムを使用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機の内部機能を利用してユニット化し、これを例えば自動販売機に組み込み、自動販売機内の在庫状況をデータにして、多数の自動販売機を携帯電話ネットワーク経由で在庫状況の集中管理するような効率化されたシステム構築が広まって来た。このようなユニット化したものを無線パケット通信モジュールと称することがある。
本発明では、第3世代の携帯電話ネットワークのような高速データ通信を可能とした無線パケット通信モジュールを自動車などの車両に搭載し、当該車両が盗難された際に、車両の所有者が携帯している携帯電話機との間で遠隔操作によって、車両状況のデータを入手し、携帯電話機から指令を出すようにして、車両の盗難の未然防止に寄与させる車両防犯システムに関するものである。
従来の車両盗難防止システムは、次のような装置であった。
車両が移動されたときに、車両の現在位置を車両に搭載されたGPSシステムで測位して、そのデータを警備会社へ通報するシステム。
車両が盗難にあったときに、エンジンおよびドアをロックさせるシステム。
車両が盗難にあったときに、振動センサー又は赤外線センサーによる検知によって、警報を発するシステム。
車両が移動されたときに、当該車両のエンジンを強制停止させるシステム。
このような個別のシステムを単一システムとして備えて車両盗難防止システムとしたり、又は個別のシステムを複数システムとして備えて車両盗難防止システムとするようなものであった。
以上の従来システムのうち、振動センサー又は赤外線センサーによる検知するシステムでは、当該車両の近傍に通行人が通るときにも警報を発するような、誤報により周囲に迷惑となるものであった。
また、エンジンの強制停止では、後続車両の追突を招き、当該車両がそのことによる事故を起こしかねない恐れがあった。
【0003】
上記のシステムを更に改善した公知のものとして、車両に位置測位部、ビデオカメラを搭載し、この情報がインターネットを介して車両所有者などに通報され、エンジンを強制停止させるなどを行うものがあった。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−29051号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上説明したように従来技術の車両防犯システムに対して、車両盗難の発覚に時間を要する、警告音の誤発報が生ずる、車両事故を誘発させるような問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、車両盗難状況の迅速な通知、周囲への安全性を確保された車両盗難通報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の車両盗難通報装置は、車両の運転者が該車両のキーロック後に当該車両から離れた状態にあるときに、当該車両が窃盗犯により盗まれることを防止するために当該車両に配置される車両盗難通報装置であって、
前記車両の運転者が所有する携帯電話機および予め定められた警備会社との間で無線パケット通信を行うためのアンテナに接続された無線パケット通信モジュールと、
前記車両の窓ガラス破壊を検知する第1のセンサーと、
前記車両のキーロック解除を検知する第2のセンサーと、
前記車両のエンジンのONを検知する第3のセンサーと、
前記車両の室内状態を撮影する撮像装置と、
警笛音を発する警笛装置と、
前記車両の所在位置を表示するGPS装置と、
前記車両の走行を停止させるエンジン減速・停止装置とを備え、
前記第1のセンサー、前記第2のセンサー、第3のセンサー、前記撮像装置および前記GPS装置からの異常情報は、前記無線パケット通信モジュールを介して前記携帯電話機および前記警備会社の少なくとも一方の異常受信装置に通知され、
前記異常情報を受信した該異常受信装置からの指令により、少なくとも前記警笛装置からの警笛音が発せられて、前記GPS装置による当該車両の所在位置が追跡されるとともに前記エンジン減速・停止装置により当該車両の走行停止が行われるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明を実施すれば、車両盗難時に当該車両の所有者は即座に盗難発覚ができ、所有者の携帯電話から当該車両へ遠隔操作により警笛音の正確な発報による周囲に異状を知らしめ、かつ、周囲への安全性を極力確保しながら車両停止の処置を行い、窃盗犯から盗難車両を速やかに保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の車両盗難通報装置の実施例のブロック図を図1に示し、主要な構成の内容について説明する。
1は、車両の運転者又は所有者が携帯する携帯電話機および車両の運転者又は所有者が予め登録して定められた警備会社との間で無線パケット通信を行うことができ、センサーが検知した検知電圧などの外部信号を入力する入力端子および警笛装置などで得られた情報を外部信号として出力する出力端子を有する無線パケット通信モジュールである。2は車両の所有者が携帯する携帯電話機および車両の所有者が登録した警備会社と間の携帯電話の通信ネットワークを介して送受信可能なアンテナである。3は、車両エンジンの動作オン、オフを検知するエンジンONセンサーである。4は、車両キーのロック状態を検知するキーロック解除センサーである。5は、車両の室内状態を撮影する撮像装置としてのデジタルカメラ形の車内監視カメラである。6は、窓ガラス破壊を検知する窓ガラス破壊センサーである。7は、警笛音を発する警笛装置である。8は、車両位置を測位して、所在位置を表示し、所在位置データを出力するGPS装置である。9は、走行中の車両を減速し停止させるエンジン減速・停止装置である。
10は、上記符号の1から9が車両の運転者又は所有者の車両に備えられた車両盗難通報装置である。20は、当該車両の運転者又は所有者が携帯している携帯電話機である。30は、車両の運転者又は所有者が予め登録して定められた警備会社である。
【0010】
図1は、車両の運転者または所有者がその車両のキーロック後に当該車両から離れた状態にあるときに、当該車両が窃盗犯により盗まれることを防止するために当該車両に配置される車両盗難通報装置のシステムであって、本発明の詳細な構成を以下に説明する。
無線パケット通信モジュール1は、無線周波信号の入出力端子がアンテナ1に接続され、制御信号の入出力端子がエンジンONセンサー3、キーロック解除センサー4、社内監視カメラ5、窓ガラス破壊センサー6、警笛装置7、GPS装置8およびエンジン減速・停止装置9に接続されている。
無線パケット通信モジュール1は、エンジンONセンサー3によって検知されたエンジンON情報の入力、キーロック解除センサー4によって検知されたキーロック解除情報の入力、車内監視カメラ5によって撮影された犯人情報の入力、窓ガラス破壊センサー6によって検知された窓ガラス破壊情報の入力、GPS装置8によって測位された車両位置情報の入力、の各異常情報を入力端子より入力する。
次に、入力された各異常情報を無線パケット通信モジュール1にて無線パケット伝送形式のデータに形成して、このデータを車両の運転者または所有者が携帯する異常受信装置としての携帯電話機20および車両の所有者が登録した警備会社30が備えた異常受信装置としての携帯電話機等に通知する。
各異常情報を受信した異常受信装置、即ち、各異常情報の状況を把握された車両の所有者が自身の携帯する携帯電話機20から、又は警備会社30から無線パケット通信モジュール1に対して所定の指令を無線パケット通信モジュール1に向けて送信する。
無線パケット通信モジュール1では、所定の指令を受信することによって、警笛装置7に警笛発報指令を出力し警笛音が発せられる、エンジン減速・停止装置9にエンジン停止指令を出力し当該車両が走行停止され、かつ、GPS装置8によって測位され続けた車両位置情報によって当該車両の所在位置が追跡されるものである。
【0011】
図2〜図5に示される概念図によって本発明の車両盗難通報装置を用いた動作の実施例を説明する。
図2に示す概念図によって、本発明の装置を備えた車両bが盗難時の発覚状況を説明する。図2のように車の運転者または所有者(以下「所有者」とする。)aが車両bから離れた場所にいる時に、窃盗犯cにより車両ドアロックを強制的に解除されたり、窓ガラスを破壊したりされた場合には、発生と同時に所有者aに車両ドアロックの強制解除の情報とか窓ガラスの破壊情報などの異常情報として盗難通知メールが車両bから所有者aの携帯電話機20に対して送信される。これにより所有者aは窃盗犯cが車両bを窃盗しようとしていることを即座に認識する。
図3に示す概念図によって、本発明の車両盗難時の警笛発報による周囲への異常の周囲への通報状況を説明する。図3のように所有者aが車両盗難の状況を認識したら、警笛音発報を指令するメールを車両bに向けて送信することで、車両bに備えた警笛装置7から警笛音を任意の時間間隔で発生させ、確実に窃盗車bであることを周囲の住民などに認識してもらうようにする。
図4に示す概念図によって、本発明の車両盗難時の窃盗犯の窃盗状況の通知の説明をする。図4のように車両bの車内に設置した監視用の小型カメラである車内監視カメラ5で窃盗犯cの顔写真などを撮影し、この写真をディジタルカメラのデータにして所有者aへ送信した盗難通知メールの添付とともに警備会社30へも送信する。
図5に示す概念図によって、本発明の盗難車両の走行時の車両停止から警察処置までを説明する。当該車両に乗車した窃盗犯cがエンジンをONにすると同時に所有者aに対し車両bから車両移動通知メールを送信し、それにより図5のように所有者aが車両停車指令のメールを移動された車両bに対して送信することで走行中の車両bのギアを段階的に落とし速度を減速させながら停車に至らしめる。このように安全に停車させることにより周辺に迷惑となるような事故発生を防ぐ。
車両bが移動し続ければ、車両bに設置されたGPS装置8で車両bの現在地の位置測位データを定期的に所有者aおよび警備会社30に送信する。
【0012】
図6は、本発明の車両盗難通報装置の通報手順の実施例として状態遷移図を示す。
S1は、車の所有者aが車から離れる際に車のドアロックを行った後に、自身が携帯する携帯電話機20から車両bに設置された無線パケット通信モジュール1に対して「監視モードON」指令をメールなどの手段によって伝送するステップである。
S2は、車両bに備えた各種装置のうち、キーロック解除センサー4が「キーロック状態」を検知して、その信号を無線パケット通信モジュール1に通知する監視モード中での正常状態のステップである。
S3は、当該車両の窃盗犯cが車のドアのキーロックを強制的に解除し、または、および、窓ガラスを強制的に破壊するような監視モード中での異常状態が発生したステップである。
S4は、キーロック解除センサー4が「キーロック強制解除」を検知して、その信号を無線パケット通信モジュール1に伝達し、および、車両に備えた各種装置のうち窓ガラス破壊センサー6が「窓ガラス破壊」を検知して、その信号を無線パケット通信モジュール1に伝達するステップである。
S5は、S4で無線パケット通信モジュール1に伝達された「キーロック強制解除」信号および「窓ガラス破壊」信号である異常情報を車の所有者aが携帯する携帯電話機20にメールなどの手段によって伝送するステップである。ここで車の所有者aは自身が所有する車が盗難にあったことを察知する。盗難発生から携帯電話機20に盗難と判断できる情報が到着するまでの時間は極めて短い。この段階で警備会社30へ異常情報を伝送してもよい。
S6は、車の所有者aが所有する車両bが盗難されたことを認識したため、携帯電話機20によって、「警笛発報指令」をメールなどの手段によって無線パケット通信モジュール1へ伝送し、更に、無線パケット通信モジュール1は車両に備えた各種装置のうち警笛装置7に警笛の発報指令信号を送り、警笛装置7では警笛音を所定時間の間鳴らし、周囲の住民などに当該車両の異状を認識してもらうようにするステップである。
S7、S8は、S6の指令に加え更に、携帯電話機20によって、「車内監視カメラ起動指令」および「GPS装置起動指令」をメールなどの手段によって無線パケット通信モジュール1伝送し、更に、無線パケット通信モジュール1は車両に備えた各種装置のうち車内監視カメラ5およびGPS装置8にこれらの指令信号を送り、車内監視カメラ5では撮影が開始され、GPS装置8では車両位置の測位が行われるステップである。
S9は、S7,S8で得られた異常情報である写真データおよび車両位置データが無線パケット通信モジュール1へ転送されるステップである。
S10は、S9で得られた写真データおよび車両位置データが異常情報の盗難情報通知として警備会社30へ伝送され、警備会社30では得られた情報から盗難状況を把握し、要すれば警察へ通報するステップ。この異常情報は車の所有者aが携帯する携帯電話機20に伝送されてもよい。
S11は、当該車両の窃盗犯cが車のエンジンを強制始動させるステップである。このステップはS3以降の任意のときに発生することもある。
S12は、エンジンONセンサー3が「エンジンON」を検知して、その信号を無線パケット通信モジュール1に伝達し、更に、この異常情報を車の所有者aが携帯する携帯電話機20にメールなどの手段によって伝送するステップである。ここでは、車両が移動させられたと車の所有者aが判断し、要すれば警察へ通報するステップでもある。
S13は、S12で得られた「エンジンON」信号はその信号を無線パケット通信モジュール1から異常情報である盗難情報通知として警備会社30へ伝送され、警備会社30では得られた情報から盗難状況を把握し、車両が移動させられたと判断し、車両の位置を追跡し、要すれば警察へ通報するステップである。
S14は、車の所有者aが所有する車両bが盗難され、かつ車が発進されたと判断し、携帯電話機20によって、「エンジン停止指令」をメールなどの手段によって無線パケット通信モジュール1へ伝送し、更に、無線パケット通信モジュール1は車両に備えた各種装置のうちエンジン減速・停止装置9にエンジン停止指令信号を送り、エンジン減速・停止装置9では走行中の当該車両の変速ギアを上げられないように制御し、車を減速させ、停車に至らしめるステップである。「エンジン停止指令」は警備会社30から発せられてもよい。
S15は、上記一連の処理が完了して、必要により監視モードを解除するため、携帯電話機20を用いて、「監視モードOFF指令」をメールなどの手段によって無線パケット通信モジュール1へ伝送し、更に、無線パケット通信モジュール1は車両に備えた各種装置に監視モードOFF指令信号を送り、車両内の各種装置は監視モードを解除されるステップである。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、自動車に用いられる自動車窃盗防止システムに適用されて車窃盗犯罪の再発防止に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の車両盗難通報装置のブロック図である。
【図2】本発明の車両盗難時の発覚状況を示す概念図である。
【図3】本発明の車両盗難時の警笛発報による周囲への異常通報状況を示す概念図である。
【図4】本発明の車両盗難時の窃盗犯の状況を通知する概念図である。
【図5】本発明の盗難車両の走行時の車両停止から警察処置までを示す概念図である。
【図6】本発明の車両盗難通報装置の通報動作の状態遷移図である。
【符号の説明】
【0015】
1 無線パケット通信モジュール
2 アンテナ
3 エンジンONセンサー
4 キーロック解除センサー
5 社内監視カメラ
6 窓ガラス破壊センサー
7 警笛装置
8 GPS装置
9 エンジン減速・停止装置
10 車両盗難通報装置
20 携帯電話機
30 警備会社


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者が該車両のキーロック後に当該車両から離れた状態にあるときに、当該車両が窃盗犯により盗まれることを防止するために当該車両に配置される車両盗難通報装置であって、
前記車両の運転者が所有する携帯電話機および予め定められた警備会社との間で無線パケット通信を行うためのアンテナに接続された無線パケット通信モジュールと、
前記車両の窓ガラス破壊を検知する第1のセンサーと、
前記車両のキーロック解除を検知する第2のセンサーと、
前記車両のエンジンのONを検知する第3のセンサーと、
前記車両の室内状態を撮影する撮像装置と、
警笛音を発する警笛装置と、
前記車両の所在位置を表示するGPS装置と、
前記車両の走行を停止させるエンジン減速・停止装置とを備え、
前記第1のセンサー、前記第2のセンサー、第3のセンサー、前記撮像装置および前記GPS装置からの異常情報は、前記無線パケット通信モジュールを介して前記携帯電話機および前記警備会社の少なくとも一方の異常受信装置に通知され、
前記異常情報を受信した該異常受信装置からの指令により、少なくとも前記警笛装置からの警笛音が発せられて、前記GPS装置による当該車両の所在位置が追跡されるとともに前記エンジン減速・停止装置により当該車両の走行停止が行われるように構成された車両盗難通報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−99173(P2007−99173A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294350(P2005−294350)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】